(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20220720BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C04B24/26 F
C04B24/26 E
C04B24/26 B
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2021513117
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015825
(87)【国際公開番号】W WO2020208781
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 多朗
(72)【発明者】
【氏名】澤田 陽
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-144906(JP,A)
【文献】特開2001-220440(JP,A)
【文献】特開平11-349369(JP,A)
【文献】特開2001-276595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位中にビニル基及び酸基を有し、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Aと、
下記の化1で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Bと、
下記の化2で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Cと
を共重合した共重合体として構成される水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(但し、R
1、R
2、R
3は水素原子またはメチル基を示し、R
4は水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示し、R
5Oは炭素数2~4の1または複数のオキシアルキレン基を示し、pは0~5の整数を示し、qは0または1を示し、mは1~
29の整数を示す)
【化2】
(但し、R
6、R
7、R
8は水素原子またはメチル基を示し、R
9は下記の化3で示され、R
10Oは炭素数2~4の1または複数のオキシアルキレン基を示し、sは0~5の整数を示し、tは0または1を示し、nは0~300の整数を示す)
【化3】
(但し、R
11、R
12は水素原子またはメチル基を示し、aは、
1~3の整数を示す)
【請求項2】
構成単位中にビニル基及び酸基を有し、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Aと、
下記の化4で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Bと、
下記の化5で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Dと
を共重合した共重合体として構成される水硬性組成物用添加剤。
【化4】
(但し、R
1、R
2、R
3は水素原子またはメチル基を示し、R
4は水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示し、R
5Oは炭素数2~4の1または複数のオキシアルキレン基を示し、pは0~5の整数を示し、qは0または1を示し、mは1~300の整数を示す)
【化5】
(但し、R
13は水素原子またはメチル基を示し、R
14は環状構造
(フェノキシ基を除く)を含む炭素数3~22のアルキル基またはエーテル基を示す)
【請求項3】
構成単位中にビニル基及び酸基を有し、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Aと、
下記の化6で示され、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Bと、
下記の化7で示され、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Cと
下記の化9で示され、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Dと
を共重合した共重合体として構成される水硬性組成物用添加剤。
【化6】
(但し、R
1、R
2、R
3は水素原子またはメチル基を示し、R
4は水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示し、R
5Oは炭素数2~4の1または複数のオキシアルキレン基を示し、pは0~5の整数を示し、qは0または1を示し、mは1~
29の整数を示す)
【化7】
(但し、R
6、R
7、R
8は水素原子またはメチル基を示し、R
9は下記の化8で示され、R
10Oは、炭素数2~4の1または複数のオキシアルキレン基を示し、sは0~5の整数を示し、tは0または1を示しnは、0~300の整数を示す)
【化8】
(但し、R
11、R
12は水素原子またはメチル基を示し、aは
1~3の整数を示す)
【化9】
(但し、R
13は水素原子またはメチル基を示し、R
14は環状構造を含む炭素数3~22のアルキル基またはエーテル基を示す)
【請求項4】
全質量に対する前記単量体Aの質量比が1~25質量%であり、
全質量に対する前記単量体Bの質量比が65~95質量%であり、
全質量に対する前記単量体Cの質量比が1~20質量%である請求項1または3記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
全質量に対する前記単量体Aの質量比が1~25質量%であり、
全質量に対する前記単量体Bの質量比が65~95質量%であり、
全質量に対する前記単量体
Dの質量比が1~
10質量%である請求項
2または3記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
全質量に対する前記単量体Aの質量比が1~25質量%であり、
全質量に対する前記単量体Bの質量比が65~95質量%であり、
全質量に対する前記単量体Cの質量比が1~20質量%であり、
全質量に対する前記単量体Dの質量比が1~10質量%である請求項3記載の水硬性組成物用添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤に関する。更に詳しくは、水硬性組成物に対する優れた分散性を発揮するとともに、当該水硬性組成物の粘性の低減効果を備えた水硬性組成物用添加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水硬性結合材と水等の各種材料を混練した水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させた後、当該型枠から脱型することで所望の形状の硬化体が作製されている。特に、水硬性組成物の一種であるコンクリート組成物は、セメント、水、骨材、及び分散剤等の各種材料から構成され、これらを所定の条件の下で混合及び混練の各処理を実施した後、予め設置された型枠内に流し込み、硬化させることでコンクリート硬化体を得ることができる。かかるコンクリート組成物によって構成されたコンクリート硬化体は、強度及び耐久性等に優れた特性を有し、これらの特性を活かした種々の建築物や土木構造物等に広く採用されている。
【0003】
コンクリート組成物等の水硬性組成物は、各種材料を混練する混練時において、空気連行性や流動性の向上を図るために、添加剤(水硬性組成物用添加剤)が一般に添加されている。添加剤の使用によって、水硬性組成物の減水を行った場合でも良好な分散性を保つことができる。加えて、混練時や施工時におけるハンドリング性或いは施工性を良好にすることができる。すなわち、添加剤の添加によって、コンクリート組成物の耐久性や強度等の向上とともに、経時的安定性及び作業性に優れたコンクリート組成物等を構築することができる。
【0004】
ここで、混練されたコンクリート組成物等の水硬性組成物は、主にポンプ等の圧送装置を用いて施工場所に設置された型枠に向かって配管内を圧送される。そのため、水硬性組成物の粘性が高い場合、ポンプ等から圧送され、配管内を通過する水硬性組成物の搬送速度(圧送速度)が遅くなり、施工性や作業性が悪化することがあった。更に、水硬性組成物を圧送するために多くの力が必要となり、高い圧送性能の圧送装置を用いたり、或いは圧送装置に過大な負荷が加わることがあった。更に粘性が高い場合には、配管内で水硬性組成物が詰まり、圧送不良を引き起こすことがあった。
【0005】
そこで、ポンプ等の圧送装置による水硬性組成物の圧送性を改善するために、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造単位と、カルボン酸系構造単位と、カルボン酸アルキルエステル系構造単位とをそれぞれ特定の含有割合で含むポリカルボン酸共重合体から構成され、ポンプ等の圧送性を改善するためのセメント分散剤またはコンクリート混和剤等の添加剤が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/088528号
【文献】国際公開第2018/088529号
【文献】特開2018-154711号公報
【文献】特開2018-154712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水硬性組成物の粘性を低減させるために、例えば、水セメント比を高くすると、得られる水硬性組成物の硬化体(コンクリート硬化体等)の強度が低下する問題を生じ、一方、水セメント比を低くすると、混練時の分散性に影響を及ぼすことがあった。そのため、水硬性組成物の分散性及び水硬性組成物の粘性の低減をバランスよく両立させることは困難であった。
【0008】
そこで、本発明の水硬性組成物用添加剤は、上記実情に鑑み、水硬性組成物に対する優れた分散性、及び、水硬性組成物の優れた粘性低減効果をバランスよく発揮することが可能な水硬性組成物用添加剤の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究をした結果、ポリカルボン酸系分散剤(PCE)に特定の単量体を組み込むことにより、良好な分散性を備えるとともに、水硬性組成物の粘性を低減させることの可能な水硬性組成物用添加剤を見出した。
【0010】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、構成単位中にビニル基及び酸基を有し、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Aと、下記の化1で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Bと、下記の化2で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Cとを共重合した共重合体として構成されるものである。
【0011】
単量体Aは、不飽和カルボン酸及び/またはその塩、不飽和スルホン酸及び/またはその塩、不飽和リン酸及び/またはその塩である。例えば、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等が挙げられ、不飽和スルホン酸としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メタンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-エタンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等が挙げられ、不飽和リン酸等の酸含有単量体としては、リン酸2-((メタ)アクロイルオキシ)エチル等が挙げられる。塩として構成するものとしてはナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアミン塩が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸及び/またはそれらの塩を1種または2種以上、単量体Aとして使用することが好適である。
【0012】
一方、単量体Bは、下記の化1に示されるような、ポリアルキレングリコール(PAG)系単量体であって、例えば、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレン(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールビニルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(2-メチル-2-プロペニル)エーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールモノ(2-メチル-2-プロペニル)エーテル等の単量体が挙げられる。これらの単量体は1種または2種以上使用してもよい。
【0013】
【0014】
化1において、R1、R2、R3は水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示し、R5Oは炭素数2~4の1または複数のオキシアルキレン基を示し、pは0~5の整数を示し、qは0または1を示し、mは1~29の整数を示すものである。
【0015】
単量体Cは、下記の化2に示されるような、芳香族AO付加物の(メタ)アクリル酸エステル及び/または芳香族AO付加物アルケニルエーテルであり、芳香族AO付加物の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェノールAO付加物(メタ)アクリル酸エステル、モノスチレン化フェノールAO付加物(メタ)アクリル酸のエステル、ジスチレン化フェノールAO付加物(メタ)アクリル酸エステル、トリスチレン化フェノールAO付加物(メタ)アクリル酸エステル、クミルフェノールAO付加物(メタ)アクリル酸エステル等の単量体が挙げられる。芳香族AO付加物のアルケニルエーテルとしては例えば、α-アリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-(ジスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-(ジスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-(トリスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-(トリスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-(ジスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-(ジスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-(トリスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-(トリスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3―メチル-3―ブテニル)-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-(3―メチル-3―ブテニル)-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3―メチル-3―ブテニル)-ω-(ジスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-(3―メチル-3―ブテニル)-ω-(ジスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3―メチル-3―ブテニル)-ω-(トリスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン、α-(3―メチル-3―ブテニル)-ω-(トリスチレン化フェノキシ)-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3―メチル-3―ブテニル)-ω-クミルフェノキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等が挙げられる。上記において、“AO”はオキシアルキレン基を示す。これらの単量体は1種または2種以上使用してもよい。
【0016】
【0017】
化2において、R6、R7、R8は水素原子またはメチル基を示し、R9は下記の化3で示され、R10Oは炭素数2~4の1または複数のオキシアルキレン基を示し、sは0~5の整数を示し、tは0または1を示し、nは0~300の整数を示すものである。
【0018】
【0019】
化3において、R11、R12は水素原子またはメチル基を示し、aは1~3の整数を示すものである。
【0020】
更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、構成単位中にビニル基及び酸基を有し、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Aと、下記の化4で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Bと、下記の化5で示され、全質量に対する質量比が1~98質量%の範囲で含まれる単量体Dとを共重合した共重合体として構成されるものであっても構わない。
【0021】
【0022】
ここで、単量体A及び単量体Bについては、上記において既に説明したものと同一のため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、化4において、R1,R2,R3,R4,R5O,p、q、mの各符号は、化1において説明したものと同一である。
【0023】
一方、単量体Dは、下記の化5に示されるような、(メタ)アクリル酸環状アルキル(エーテル)エステル等の単量体である。(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸―1-メチルシクロペンチル、(メタ)アクリル酸―1-エチルシクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸環状アルキルエーテルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、グリセロールホルマール(メタ)アクリル酸エステル、ソルケタール(メタ)アクリル酸エステル、テトラヒドロピラノール(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、或いは(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリルの単量体を使用することが好適である。これらの単量体は1種または2種以上使用してもよい。
【0024】
【0025】
化5において、R13は水素原子またはメチル基を示し、R14は環状構造(フェノキシ基を除く)を含む炭素数3~22のアルキル基またはエーテル基を示すものである。
【0026】
更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、構成単位中にビニル基及び酸基を有し、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Aと、下記の化6で示され、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Bと、下記の化7で示され、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Cと、下記の化9で示され、全質量に対する質量比が1~97質量%の範囲で含まれる単量体Dとを共重合した共重合体として構成されるものであっても構わない。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
ここで、単量体A、単量体B、単量体C、及び単量体Dについては、上記において既に説明したものと同一のため、ここでは詳細な説明を省略する。すなわち、上記単量体A、単量体B、単量体C、及び単量体Dを全て含んだ水硬性組成物用添加剤を構成するものであってもよい。なお、化6において、R1,R2,R3,R4,R5O,p、q、mの各符号は、化1(または化4)において説明したものと同一であり、化7において、R6,R7,R8,R9,R10O,s,t,nの各符号は、化2において説明したものと同一であり、化8において、R11,R12,aの各符号は、化3において説明したものと同一であり、化9においてR13,R14は、化5において説明したものと同一である。
【0032】
更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、単量体A、単量体B、及び単量体Cを含んで構成される場合、単量体Bにおけるmの値が1~29の範囲であり、単量体Cにおけるaの値が1~3の範囲であるのが好ましい。
【0033】
加えて、単量体A、単量体B、及び単量体Cを含んで構成される水硬性組成物用添加剤の場合、全質量に対する単量体Aの質量比が1~25質量%であり、全質量に対する単量体Bの質量比が65~95質量%であり、全質量に対する単量体Cの質量比が1~20質量%であるものが好適である。
【0034】
一方、単量体A、単量体B、及び単量体Dを含んで構成される水硬性組成物用添加剤の場合、全質量に対する単量体Aの質量比が1~25質量%であり、全質量に対する単量体Bの質量比が65~95質量%であり、全質量に対する単量体Dの質量比が1~10質量%であるものが好適である。
【0035】
更に、単量体A、単量体B、単量体C、及び単量体Dを含んで構成される水硬性組成物用添加剤の場合、全質量に対する単量体Aの質量比が1~25質量%であり、全質量に対する単量体Bの質量比が65~95質量%であり、全質量に対する単量体Cの質量比が1~20質量%であり、全質量に対する単量体Dの質量比が1~10質量%であるものが好適である。
【0036】
本発明の共重合体の製造方法において、共重合可能なその他の単量体を用いることができる。共重合可能なその他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキル(環状構造を除く)やアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、スチレンなどが挙げられる。
【0037】
共重合体の製造方法としては、ラジカル発生部位を有するラジカル重合開始剤の存在下で、上記ビニル系単量体を重合させる方法などが挙げられる。ラジカル発生部位を有するラジカル重合開始剤の存在下で、ビニル系単量体を重合させる方法においては、熱等によりアゾ基等のラジカル発生部位からラジカルが発生し、これによって重合が開始されることとなる。ラジカル重合に使用するラジカル重合開始剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物や、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられ、重合反応温度下において分解し、ラジカルを発生するものであれば、その種類は特に制限されない。これらは、亜硫酸塩やL-アスコルビン酸等の還元性物質、更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤として使用することもできる。ラジカル重合開始剤の使用量は、その種類によって適宜調節すればよい。
【0038】
上記ラジカル重合反応としては、各種溶媒中で反応を行うことができる。中でもセメント等の水硬性組成物は、水溶液として使用されるので、水を溶媒として使用する水溶液重合で行うのが好ましい。水溶液重合は、回分式でも連続式でも、また、これらの2種以上の組み合わせでもよい。
【0039】
ラジカル重合反応における反応温度は、ラジカル重合開始剤の種類に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、好ましく0~120℃であり、より好ましくは20~100℃であり、更に好ましくは50~90℃である。
【0040】
重合反応において、分子量を調整する目的で、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、特に制限されるものではないが、本発明で使用される連鎖移動剤としては、共重合体の分子量の調整ができる化合物であれば特に制限されず、公知の連鎖移動剤が使用できる。具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、2-メルカプトエタンスルホン酸、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;α-メチルスチレンダイマー、α-テルピネン、γ-テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物;2-アミノプロパン-1-オール等の1級アルコール;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩などが挙げられる。
【0041】
また、ラジカル重合反応に使用する各単量体成分の反応容器への添加方法としては、特に限定されず、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割または連続投入する方法、一部を反応容器に反応初期に投入し、残りを反応容器に分割または連続投入する方法のいずれであってもよい。また、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤は、反応容器に初めから投入してもよく、反応容器に滴下してもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
【0042】
共重合体の質量平均分子量は本発明の目的においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド換算で5000~200000の範囲が適当であるが、好ましくは7000~150000、より好ましくは、8000~100000である。
【0043】
本発明にかかる水硬性組成物用添加剤は、土木、建築、二次製品等の水硬性結合材を含有する水硬性組成物に使用されるものである。このような水硬性組成物としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート等が挙げられる。
【0044】
本発明にかかる水硬性組成物用添加剤は、既存の水硬性組成物用添加剤と併用することができる。このような水硬性組成物用添加剤としては、AE減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、消泡剤、収縮低減剤、増粘剤、硬化促進剤等が挙げられる。
【0045】
本発明にかかる水硬性組成物用添加剤の使用対象となる水硬性組成物の調製に用いる水硬性結合材としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。また、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石微粉末、膨張材などの各種混和材を、先に示した各種セメントと併用してもよい。
【0046】
また水硬性組成物の調製に骨材を用いる場合の骨材としては、細骨材と粗骨材が挙げられ、細骨材としては川砂、山砂、海砂、砕砂、及びスラグ細骨材等が挙げられ、粗骨材としては川砂利、砕石、軽量骨材等が挙げられる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の水硬性組成物用添加剤によれば、水硬性組成物に添加された場合、水硬性組成物を均一に分散する優れた分散性を備えるとともに、水硬性組成物の粘性を低減させる効果を備えている。これにより、水硬性組成物からコンクリート硬化体等の硬化体を生成する場合の施工性やハンドリング性が良好となり作業効率を向上させることができる。更に、ポンプ等の圧送装置の負担を軽減したり、配管内での水硬性組成物の詰まりの発生等を抑えたりすることができ、作業負担や作業コストの低減の効果も有している。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りのない限り、“部”は質量部、“%”は質量%を意味する。また、“EO”はオキシエチレン基を示し、“PO”はオキシプロピレン基を示す。
【0049】
1.共重合体(水硬性組成物用添加剤)の合成
下記表1の示す通り、共重合体の構成単位種である単量体A、単量体B、単量体C及び/または単量体Dを、それぞれ既定の質量比(%)となるように組み合わせ、実施例1~16(PC-1~PC-16)及び比較例(R-1~R-8)の共重合体の合成を行った。なお、共重合体の合成手法の具体例は下記に示す。
【0050】
1-1.合成例1(α-メタリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-ポリ(n=30)オキシエチレンの合成)
滴下ロートを備えた温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、モノスチレン化フェノールEO30モル付加物330g、およびKOH6.2gを仕込み、乾燥した窒素ガスを流入しながら、120℃で120分間攪拌し、KOHの溶解、および脱水を行った。内液を70℃に維持しながら、メタリルクロライド10.0gを60分間かけてゆっくりと滴下した。その後、70℃で120分間、さらに90℃で120分間反応させた。生成した塩化カリウムの沈殿を取り除き、他の副生物等を減圧留去、精製し、α-メタリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-ポリ(n=30)オキシエチレンを得た。
【0051】
1-2.実施例1の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水121.1gを仕込み、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。反応系に、アリルスルホン酸ナトリウム3.6g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=9)オキシエチレン262.2g、モノスチレン化フェノールEO10モル付加物のメタクリル酸エステル29.1g、メタクリル酸68.3g、メタクリル酸シクロヘキシル10.8g、アクリル酸メチル8.9g、3-メルカプトプロピオン酸9.3g、イオン交換水95.5gを均一に攪拌した溶液を2時間かけて滴下した。さらに、35%過酸化水素水4.3gをイオン交換水43.5gで希釈した溶液を同時に3時間かけて反応系に滴下し、すべての溶液を滴下後、反応系の温度を70℃に1時間保持した。反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6とし、さらにイオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量9000であった。この反応混合物を共重合体(PC-1)とした。なお、実施例2の共重合体(PC-2)については、原料と仕込み量を変更した以外は、上記実施例1と同様の処理によって合成を行った。
【0052】
1-3.実施例3の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水27.0gを仕込み、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。反応系に、アリルスルホン酸ナトリウム3.7g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=9)オキシエチレン269.6g、ジスチレン化フェノールEO12モル付加物のメタクリル酸エステル30.0g、メタクリル酸70.3g、チオグリセロール9.0g、イオン交換水95.4gを均一に攪拌した溶液を2時間かけて滴下した。さらに、35%過酸化水素水4.5gをイオン交換水44.8gで希釈した溶液を同時に3時間かけて反応系に滴下し、すべての溶液を滴下後、反応系の温度を70℃に1時間保持した。反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6とし、さらにイオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量11000であった。この反応混合物を共重合体(PC-3)とした。
【0053】
1-4.実施例4の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水152.7gを仕込み、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。反応系に、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレン331.5g、メタクリル酸45.2g、アクリル酸テトラヒドロフルフリル15.0g、3-メルカプトプロピオン酸3.9g、イオン交換水248.6gを均一に攪拌した溶液を2時間かけて滴下した。さらに、過硫酸ソーダ5.8gをイオン交換水50.1gで希釈した溶液を同時に3時間かけて反応系に滴下し、すべての溶液を滴下後、反応系の温度を65℃に1時間保持した。反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6とし、さらにイオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量24000であった。この反応混合物を共重合体(PC-4)とした。なお、実施例5~14の共重合体(PC-5)~(PC-14)については、原料と仕込み量を変更した以外は、上記実施例1,3,4と同様の処理によって合成を行った。
【0054】
1-5.実施例15の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLのフラスコにイオン交換水188.5g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=53)オキシエチレン264.2gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。アクリル酸24.3g、α-メタリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-ポリ(n=30)オキシエチレン15.2g、アクリル酸テトラヒドロフルフリル15.2g、アクリル酸ブチル9.1gをイオン交換水161.5gで希釈した溶液を3時間かけて滴下し、同時に3.5%過酸化水素水2.9gを反応系に3時間かけて滴下し、さらに同時に3-メルカプトプロピオン酸3.1g、L-アスコルビン酸3.1gをイオン交換水14.7gで希釈した溶液を反応系に4時間かけて滴下した。さらに反応系の温度を65℃に保持して1時間熟成を行なった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量20000であった。この反応混合物を共重合体(PC-15)とした。なお、共重合体(PC-16)については、原料と仕込み量を変更した以外は実施例15と同様の処理により合成を行った。
【0055】
1-6.比較例1の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水494.8g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=9)オキシエチレン284.1g、メタクリル酸66.6g、3-メルカプトプロピオン酸8.9g、アリルスルホン酸ナトリウム3.5gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。次に、過硫酸ソーダ6.9gをイオン交換水34.5gで希釈したものを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を60℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、過硫酸ソーダ2.6gをイオン交換水20.31gで希釈したものを反応系に更に加え、反応系の温度を60℃に保持して2時間、重合反応を行なった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH6に調整し、さらにイオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量12000であった。この反応混合物を共重合体(R-1)とした。
【0056】
1-7.比較例2の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水152.7gを仕込み、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。反応系に、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレン331.6g、メタクリル酸45.2g、3-メルカプトプロピオン酸3.5g、イオン交換水248.6gを均一に攪拌した溶液を2時間かけて滴下した。さらに、過硫酸ソーダ5.78gをイオン交換水24.51gで希釈した溶液を同時に3時間かけて反応系に滴下し、すべての溶液を滴下後、反応系の温度を70℃に1時間保持した。反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6とし、さらにイオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量25000であった。この反応混合物を共重合体(R-2)とした。なお、共重合体(R-3)~(R-6)については、原料と仕込み量を変更した以外は、上記比較例1と同様の処理により合成を行った。
【0057】
1-8.比較例7の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLのフラスコにイオン交換水201.2g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=53)オキシエチレン361.0gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。アクリル酸31.39g、アクリル酸ブチル11.8gをイオン交換水157.0gで希釈した溶液を3時間かけて滴下し、同時に3.5%過酸化水素水2.83gを反応系に3時間かけて滴下し、さらに同時に3-メルカプトプロピオン酸3.1g、L-アスコルビン酸3.1gをイオン交換水15.1gで希釈した溶液を反応系に4時間かけて滴下した。さらに反応系の温度を65℃に保持して1時間熟成を行なった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量34000であった。この反応混合物を共重合体(R-7)とした。なお、共重合体(R-8)は、原料と仕込み量を変更した以外は、比較例7と同様の処理により合成を行った。
【0058】
1-9.共重合体の重量平均分子量の測定
共重合体の重量平均分子量は、下記の測定条件により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した。
<測定条件>
装置:Shodex GPC-101
カラム:昭和電工社製OHpak SB-G+SB-806M HQ+SB-806M HQ
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5重量%の溶離液溶液
標準物質:アジレントテクノロジー社ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール
なお、各共重合体については水を除去した後に、重水にて5%となるように溶液を調整し、300MHzのNMRにて測定を行い各単量体が重合されていることを確認した。
【0059】
【0060】
上記表1において示されたA-1~A-3、B-1~B-10、C-1~C-8、D-1~D-6、及び、MA、BAは、下記の単量体をそれぞれ示す。
A-1: メタクリル酸
A-2: アリルスルホン酸ナトリウム
A-3: アクリル酸
B-1: α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=9)オキシエチレン
B-2: α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレン
B-3: ヒドロキシエチルメタクリレート
B-4: α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=25)オキシエチレン
B-5: ヒドロキシエチルアクリレート
B-6: α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン
B-7: α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=68)オキシエチレン
B-8: α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-オキシプロピレンポリ(n=113)オキシエチレン
B-9: α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=53)オキシエチレン
B-10: α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=70)オキシエチレン
C-1: モノスチレン化フェノールEO10モル付加物のメタクリル酸エステル
C-2: ジスチレン化フェノールEO12モル付加物のメタクリル酸エステル
C-3: トリスチレン化フェノールEO15モル付加物のメタクリル酸エステル
C-4: クミルフェノールEO23モル付加物のメタクリル酸エステル
C-5: モノスチレン化フェノールEO20モル付加物のメタクリル酸エステル
C-6: α-メタリル-ω-(モノスチレン化フェノキシ)-ポリ(n=30)オキシエチレン
C-7: トリスチレン化フェノールEO23モルPO4モル付加物のメタクリル酸エステル
C-8: ジスチレン化フェノールEO23モル付加物のメタクリル酸エステル
D-1: メタクリル酸シクロヘキシル
D-2: アクリル酸テトラヒドロフルフリル
D-3: メタクリル酸ジシクロペンタニル
D-4: メタクリル酸テトラヒドロフルフリル
D-5: アクリル酸シクロヘキシル
D-6: メタクリル酸ジシクロペンタニル
MA: アクリル酸メチル
BA: アクリル酸ブチル
【0061】
ここで、実施例1~16(PC-1~PC-16)において、実施例3(PC-3)は単量体C(C-2)を含有するものの、単量体Dの構成単位種は含有しないものであり、一方、実施例4(PC-4)は単量体D(D-2)を含有するものの、単量体Cの構成単位種は含有しないものである。更に、実施例6,8(PC-6,PC-8)は単量体C(C-4またはC-5)を含有するものの、実施例3と同様に単量体Dの構成単位種は含有しないものである。上記以外の実施例は、単量体C及び単量体Dをいずれも含有するものである。
【0062】
上記の通り、実施例1~16(PC-1~PC-16)は、単量体C及び単量体Dの構成単位種の少なくともいずれか一方を含有して構成されるものである。これに対し、比較例は、単量体C及び単量体Dの構成単位種をいずれも含有しないものである。
【0063】
2.モルタル組成物
2-1.モルタル組成物の調製(水セメント比=40%)
表2に記載した配合条件で、JIS R5201準拠のモルタルミキサーに、上記1.の共重合体の合成により調製された共重合体(添加剤)(実施例1~11、比較例1~3)を所定量、ポリエーテル系消泡剤0.2g、水(蒲郡市上水道)を加え、ミキサーを低速で攪拌しながら普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製)を30秒で、細骨材(大井川水系産陸砂、2.5mmのふるいにとどまるものを除いたもの)を次の30秒で加え、そのまま180秒混練しモルタル組成物(適用例1~11、比較適用例1~3)を調製した。なお、添加剤のセメント質量に対する添加量(%)は後述する表4にそれぞれ試験結果とともに示す。共重合体(添加剤)とポリエーテル系消泡剤は水の一部とした。
【0064】
【0065】
2-2.モルタル組成物の調製(水セメント比=30%)
上記2-1.と同様に、表3に記載された配合条件で、JIS R5201準拠のモルタルミキサーに、上記1.の共重合体の合成により調製された共重合体(添加剤)(実施例12~16、比較例4~8)を所定量、ポリエーテル系消泡剤0.2g、水(蒲郡市上水道)を加え、ミキサーを低速で攪拌しながら中庸熱ポルトランドセメント(宇部三菱セメント製)を30秒で、細骨材(大井川水系産陸砂、2.5mmのふるいにとどまるものを除いたもの)を次の30秒で加え、そのまま180秒混練しモルタル組成物(適用例12~16、比較適用例4~8)を調製した。なお、添加剤のセメント質量に対する添加量(%)は後述する表4にそれぞれ試験結果とともに示す。共重合体(添加剤)とポリエーテル系消泡剤は水の一部とした。
【0066】
【0067】
3.モルタルフロー試験及びJ14漏斗流下試験
上記によって調製されたモルタル組成物(適用例1~16、比較適用例1~8)に対し、練り上げ直後(0min)及び練り上げ完了から30min経過後のモルタルフロー(mm)及びJ14漏斗流下時間(s)をそれぞれ計測した。
モルタルフロー値(mm):タッピングを行わないこと以外は、JIS R 5201に準拠して行った。
J14漏斗流下時間(s):土木学会コンクリート標準示方書JSCE-F541の「充てんモルタルの流動性試験方法」に準拠して行った。
【0068】
水セメント比が40%のモルタル組成物(適用例1~11及び比較的適用例1~3)の上記試験結果を下記の表4に示し、水セメント比が30%のコンクリート組成物(適用例12~16及び比較適用例4~8)の上記試験結果を下記の表5に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
表4及び表5に示される結果から明らかなように、本発明の水硬性組成物用添加剤(実施例1~16)を添加して調製されたコンクリート組成物(適用例1~16)は、比較適用例1~8のコンクリート組成物に対し、練り混ぜ直後(0min)及び30min経過後のいずれにおいてもスランプフロー値及びJ14漏斗流下時間の値から、モルタル組成物(水硬性組成物)の粘性の改善が認められる。そのため、ポンプ等による圧送の際の搬送性に優れたものとなることが確認された。