(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】水性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20220720BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20220720BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220720BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20220720BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/9728
A61K8/81
A61K8/46
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019527500
(86)(22)【出願日】2016-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2016078777
(87)【国際公開番号】W WO2018095532
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2019-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0247444(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136060(US,A1)
【文献】特開2003-055192(JP,A)
【文献】特開2012-241006(JP,A)
【文献】特開平09-143024(JP,A)
【文献】特表2016-523279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単糖として、グルクロン酸とアルドヘキソース環状物
を1種
のみ含む、生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種
(ただし、前記生物由来ポリサッカライドが菌産生のアルカリゲネス産生多糖体であるものを除く)、
エチレン性不飽和基及び
フェニル基を含むモノマー、及び(メタ)アクリロイル基を含むモノマーからなる群より選択される少なくとも2種
のモノマー単位から得られる粒子状コポリマー、
アニオン界面活性剤、及び
水性化粧料の重量に対して50~95重量%の水、を含有する、水性化粧料。
【請求項2】
前記ポリサッカライドが、追加の構成単糖として、デオキシアルドヘキソース環状物の少なくとも1種又はアルドペントース環状物の少なくとも1種を含む、請求項1記載の水性化粧料。
【請求項3】
前記アルドヘキソース環状
物は、グルコース及びマンノースからなる群より選択される、請求項1又は2記載の水性化粧料。
【請求項4】
前記デオキシアルドヘキソース環状物は、フコース及び/又はラムノースである、請求項2又は3記載の水性化粧料。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和基及び
フェニル基を含むモノマーは、スチレン又は置換スチレンであり、前記(メタ)アクリロイル基を含むモノマーは、(メタ)アクリレートである、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項6】
前記粒子状コポリマーの平均粒径は、
10~1000nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項7】
25℃における粘度が10~500mPasである、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項8】
多価アルコールの少なくとも1種を更に含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項9】
前記多価アルコールは、アルキレングリコール及びグリセリンの混合物である、請求項8に記載の水性化粧料。
【請求項10】
前記生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、真菌由来のシロキクラゲ多糖体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項11】
前記粒子状コポリマーは、スチレン/アクリレート コポリマーであ
り、前記アニオン界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである、請求項1~
10のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項12】
(a)シロキクラゲ多糖
体、
(b)スチレン/アクリレート コポリマー、
(c)ラウリル硫酸ナトリウム、
(d)ブチレングリコール及び/又はグリセリン、及び
(e)水性化粧料の重量に対して50~95重量%の水、を含有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の水性化粧料。
【請求項13】
(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の含有量が、水性化粧料の重量に対して、それぞれ0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.00025~0.0125重量%、及び5~30重量%である、請求項
12に記載の水性化粧料。
【請求項14】
前記アルドペントース環状物は、キシロースである、請求項2又は3記載の水性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
洗顔後の肌の乾燥を防ぐことを目的として、保湿性を有するローションが用いられている。
【0003】
このようなローションは、通常、保湿剤と水から構成された液状の化粧料である。そのいくつかは透明性を有しており、他のいくつかは高級感を付与するため、外観を乳白色としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乳白色のローションがすでに提案されている。その1つは、水相に油滴が分散した比較的高粘度のミクロエマルジョンである。このタイプのローションはコク感とナリシング効果を付与するが、増粘剤が多く含まれているため粘度が高い。それはまた肌に触れたときに水感を与えることができない。
【0005】
特開2000-95631号公報には、(a)水、(b)アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤及びイオン性ポリマーから選択される1種以上、並びに(c)疎水性基及びカルボキシル基を有し、0.1~0.3ミクロンの平均粒径を有する水溶性又は水分散性コポリマーと非イオン界面活性剤とを含有する水溶液中でスチレンから本質的になるモノマーの乳化重合によって調製された水性ポリマー分散物を含む乳白剤を含有する乳白色ローションタイプの化粧料が記載されている。乳白剤として作用する増粘剤は、コク感やナリシング効果を与える他の成分との相溶性に劣るので、ローションの保存安定性が得られない。
【0006】
別のタイプの乳白色ローションは、乳白色の外観を作り出すために極めて狭い範囲内で最適化された量のオイル成分、界面活性剤及び水を含有する。このようなタイプのローションは、増粘剤を通常含まないことから肌に触れたときの水感は優れている一方で、コク感やナリシング効果は希薄となる。
【0007】
上述した2つのタイプのローションは、成分、製法、化粧品特性が全く異なる。そのために、両タイプの特徴を併せ持つようなローションを得ることは不可能と考えられており、実際に良好な水感、コク感及びナリシング効果を併せ持つローションは知られていない。
【0008】
そこで本発明の目的は、肌に触れたときに水感を与え、肌に塗り広げる際には、コク感やナリシング効果を与える、不透明な外観の水性化粧料を提供することにある。ここで、「不透明な外観」とは、白、白濁、白濁、半透明又は乳白色の外観を含み、色つきの外観も許容される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る水性化粧料は、(1)構成単糖として、グルクロン酸とアルドヘキソース環状物1種とを含む、生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種、(2)エチレン性不飽和基及びフェニル基を含むモノマー、及び(メタ)アクリロイル基を含むモノマーからなる群より選択される少なくとも2種のモノマー単位から得られる粒子状コポリマー、(3)アニオン界面活性剤、及び(4)水性化粧料の重量に対して50~95重量%の水、を含有する。なお、(メタ)アクリロイルはアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。例えば、(メタ)アクリレートは(メタ)アクリロイルを含む。
【0010】
本発明に係る「水性化粧料」は、50~95重量%、より好ましくは50~99重量%の水を含有する組成物である。
【0011】
本発明者らは、所定のポリサッカライドを共存させて、所定の粒子状コポリマーを水中でアニオン界面活性剤により分散させると、種々の有利な効果が得られることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の水性化粧料は、肌に触れたときの水感が非常に優れているのみならず、従来これと両立が不可能であった性質、すなわち、肌に塗り広げる際のコク感及びナリシング効果をも具備している。したがって、高級感を求める需要者や、居住環境や体質により水感と保湿性の両方を求める需要者の嗜好に適合する。水性化粧料は、このような特性のみならず、保存安定性にも優れている。すなわち、高温条件(例えば50℃)においても、低温条件(例えば4℃)においても、長期間、乳白剤の層分離(沈殿等)が生じることがない。
【0013】
ポリサッカライドは、追加の構成単糖として,デオキシアルドヘキソース環状物の少なくとも1種、及び/又はアルドペントース環状物の少なくとも1種を含むものであってもよい。アルドヘキソース環状物1種としては、好ましくはグルコース及びマンノースからなる群より選択される。デオキシアルドヘキソース環状物は、フコース及び/又はラムノースであってもよい。アルドペントース環状物は、キシロースであってもよい。
【0014】
ポリサッカライドは、構成単糖として、i)グルクロン酸、ii)アルドヘキソース環状物1種、及びiii)デオキシアルドヘキソース環状物の少なくとも1種、及び/又はアルドペントース環状物の少なくとも1種の組み合わせを含むものであってもよい。アルドヘキソース環状物1種としては、グルコース又はマンノースが挙げられ、デオキシアルドヘキソース環状物1種としては、フコース又はラムノースが挙げられ、アルドペントース環状物1種としては、キシロースが挙げられる。
【0015】
このような構成単糖から得られるポリサッカライドは、上述の粒子状コポリマー及び界面活性剤と組み合わせた状態で、特に優れた安定性を不透明な外観の水性化粧料に与える。肌に塗り広げる際のコク感やナリシング効果も一層優れる。
【0016】
エチレン性不飽和基及びフェニル基を含むモノマーは、スチレン又は置換スチレンであることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を含むモノマーは、(メタ)アクリレートであることが好ましい。なお、粒子状コポリマーの平均粒径は、1~1000nmとすることができる。平均粒径(粒径分布)は、動的光散乱法(ベックマン・コールター(株)製 DLS DelsaMax CORE)により測定可能である。このようなモノマーから得られ、粒径を有する粒子状コポリマーは、化粧品を不透明にするのに有効である。また、上記ポリサッカライドや界面活性剤と組み合わせると安定性に優れる。また、肌に触れたときの水感と、肌に塗り広げる際のコク感及びナリシング効果にも寄与する。
【0017】
水性化粧料の25℃における粘度は10~500mPasであるとよい。粘度は、回転粘度計(アントンパール(株)製 Rheolab QC)を用い、回転速度200rpm、25℃で剪断粘度測定により求めることができる。このような粘度範囲にすることで、肌に触れたときの水感が特に顕著になる。
【0018】
なお、水性化粧料は、多価アルコールの少なくとも1種を更に含有していてもよい。多価アルコールは、アルキレングリコール及びグリセリンの混合物であり得る。
【0019】
生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、真菌由来のシロキクラゲ多糖体などの真菌由来ポリサッカライドであり得る。生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、菌産生のアルカリゲネス産生多糖体などの菌産生ポリサッカライドであり得る。粒子状コポリマーは、スチレン/アクリレート コポリマーであり得る。
【0020】
好ましい実施形態において、水性化粧料は、
(a)シロキクラゲ多糖体及び/又はアルカリゲネス産生多糖体、
(b)スチレン/アクリレート コポリマー、
(c)ラウリル硫酸ナトリウム、
(d)ブチレングリコール及び/又はグリセリン、及び
(e)水性化粧料の重量に対して50~95重量%の水、を含有する。
【0021】
本実施形態において、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の含有量は、水性化粧料の重量に対して、それぞれ0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.00025~0.0125重量%、及び5~30重量%であり得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、肌に触れたときに水感を与え、肌に塗り広げる際には、コク感やナリシング効果を与える、水性化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0024】
水性化粧料は、生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種(成分(1)とも称する)を含有し、該ポリサッカライドは、構成単糖として、アルドヘキソース環状物1種とグルクロン酸とを含む、生物由来ポリサッカライドを含有する。成分(1)は増粘剤としても作用する。ここで、「生物由来ポリサッカライド」とは、抽出等により植物(植物由来)又は真菌(真菌由来、例えば、担子菌門、子嚢菌門)から取り出された化合物を意味する。「生物由来」は「菌産生」、すなわち、菌が産生した物質(例えば、高分子物質)を精製、加工した化合物も意味する。
【0025】
アルドヘキソース環状物1種は、好ましくはピラノース、すなわち、5個の炭素原子及び1個の酸素原子から構成される六員環である。アルドヘキソース環状物1種は、好ましくはアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース及びタロースからなる群より選択される。中でもアルドヘキソース環状物1種としては、グルコース又はマンノースが好ましい。
【0026】
生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、追加の構成単糖として、上述のアルドヘキソース環状物1種とグルクロン酸とを含んでいる限りにおいて、他の構成単糖を含んでいてもよい。アルドヘキソース環状物1種は、グルコース及びマンノースからなる群より選択されてもよい。すなわち、追加の構成単糖として、デオキシアルドヘキソース環状物(フコース、フクロース、ラムノース等)の少なくとも1種、及び/又はアルドペントース環状物(リボース、アラビノース、キシロース、リキソース等)の少なくとも1種を含んでいてもよい。デオキシアルドヘキソース環状物1種はフコース、又はフコース及びラムノースであることが好ましい。アルドペントース環状物1種はキシロースであることが好ましい。本発明の一態様によれば、生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、追加の構成単糖として、デオキシアルドヘキソース環状物を含まず、アルドペントース環状物1種(例えば、キシロース)を含む。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、生物由来ポリサッカライド(A)の少なくとも1種は、追加の構成単糖として、デオキシアルドヘキソース環状物2種(例えば、フコース及びラムノース)を含む。別の態様では、生物由来ポリサッカライド(B)の少なくとも1種は、追加の構成単糖として、デオキシアルドヘキソース環状物1種(例えば、フコース)及びアルドペントース環状物1種(例えば、キシロース)の組合せを含む。本発明の更なる態様によれば、生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、ポリサッカライド(A)及びポリサッカライド(B)の混合物を含む。
【0028】
本発明は、グルクロン酸、上述のアルドヘキソース環状物2種、並びに、デオキシアルドヘキソース環状物(フコース、フクロース、ラムノース等)の少なくとも1種、及び/又はアルドペントース環状物(リボース、アラビノース、キシロース、リキソース等)の少なくとも1種を含む生物由来ポリサッカライドに関するものであってもよい。
【0029】
ここで、「アルドヘキソース環状物1種」は、生物由来ポリサッカライドが構成単糖として、環状であるヘキソースを1種のみ含むことを意味する。この用語は、構成単糖として、環状であるヘキソースを2種含む生物由来ポリサッカライドを除外するものである。「デオキシアルドヘキソース環状物1種」との用語は、好ましくはデオキシアルドヘキソースから導かれる環状構造、すなわち、5個の炭素原子及び1個の酸素原子から構成される六員環、を有するピラノースをいう。「アルドペントース環状物」とは、アルドペントースから導かれる、5個の炭素原子及び1個の酸素原子から構成される六員環又は4個の炭素原子及び1個の酸素原子から構成される五員環を有する環状ペントースをいう。
【0030】
生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、高分子量ポリサッカライド鎖と低分子量ポリサッカライド鎖の混合物であってもよい。ここで、「高分子量」とは、サイズ排除クロマトグラフィーによる重量平均分子量が10万以上(好ましくは100万以上)を意味し、分子量の分布が106~109の間におさまることが好ましい。「低分子量」とは同測定方法による重量平均分子量が10万未満(好ましくは100万未満)であることを意味し、分子量の分布が103~107の間におさまることが好ましい。
【0031】
本発明の水性化粧料は、アルドヘキソース環状物1種とグルクロン酸を構成単糖とするポリサッカライド分子以外に、他のポリサッカライド(好ましくは低分子量ポリサッカライド)を含有していてもよい。他のポリサッカライドとしては、グルクロン酸を構成単糖として含まず、a)アルドヘキソース環状物1種(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース等)、及び/又はb)デオキシアルドヘキソース環状物1種(フコース、フクロース、ラムノース等)とを構成単糖として含有するポリサッカライドが挙げられる。他のポリサッカライドとして好ましいものは、構成単糖が、マンノース及びフコースである低分子量ポリサッカライドである。
【0032】
ポリサッカライドとして特に好ましいものは、(i)構成単糖として、グルクロン酸、グルコース、フコース及びラムノースを含む生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種、(ii)構成単糖として、グルクロン酸、マンノース及びキシロースを含む生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種である。いずれにおいても、グルクロン酸の重量百分率は、構成単糖の重量に対して20モル%又はそれ以上であることが好ましい。
【0033】
グルクロン酸、グルコース、フコース及びラムノースを構成単糖とする菌産生ポリサッカライドとしては、Alcaligenes latus B-16菌株が産生したポリマーを精製、加工した、商品名Alcasealan(登録商標)(INCI名 アルカリゲネス産生多糖体)(伯東株式会社製)が挙げられる。Alcasealanには、グルクロン酸、グルコース、フコース及びラムノースを構成単糖とするポリサッカライド(グルクロン酸:グルコース:フコース:ラムノース=1:2:1:1)の他、マンノース及びフコースを構成単糖とするポリサッカライド(マンノース:フコース=1:1)が少量含まれている。このような混合物は、前者のポリサッカライドが含まれる限り増粘剤として使用できる。Alcasealan(登録商標)においては、前者のポリサッカライドは高分子量ポリサッカライドであり、後者のポリサッカライドは低分子量ポリサッカライドであり、高分子量ポリサッカライド:低分子量ポリサッカライドはモル比で、約7:1である。
【0034】
グルクロン酸、マンノース及びキシロースを構成単糖とする真菌由来ポリサッカライドの少なくとも1種としては、シロキクラゲから抽出された、商品名Tremoist(登録商標) TP(INCI名 シロキクラゲ多糖体)(日本精化株式会社製)が挙げられる。この生物由来ポリサッカライドの少なくとも1種は、i)マンノースを主鎖に、ii)キシロースとグルクロン酸を側鎖に有しており、構成単糖のモル数に対するグルクロン酸のモル百分率は約20重量モル%である。Tremoist(登録商標) TPの平均分子量は100万以上である。
【0035】
本発明者らの知見によれば、成分(1)に代えて、i)構成単糖として、グルクロン酸、グルコース及びマンノースを有するキサンタンガム、ii)構成単糖として、グルクロン酸、N-アセチルグルコサミンを有するヒアルロン酸、又は、iii)構成単糖として、グルコースを有するヒドロキシエチルセルロース等を使用しても、水感からコク感及びナリシング効果への変化が生じない。
【0036】
水性化粧料は、上記成分(1)に加え、エチレン性不飽和基及びベンゼン骨格を含むモノマー、及び(メタ)アクリロイル基を含むモノマーからなる群より選択される少なくとも2種のモノマー単位から得られる粒子状コポリマー(成分(2))を含有する。成分(2)は、乳白剤として作用する。
【0037】
水性化粧料の不透明な外観は主に、この粒子状コポリマーに起因する。粒子状コポリマーの平均粒径は光散乱法で1~1000nmであることが好ましい。平均粒径は10~800nmが好ましく、更には20~500nm、特には50~300nmが好ましい。なお平均粒径は、動的光散乱法により測定可能である。
【0038】
エチレン性不飽和基及びベンゼン骨格を有するモノマー(以下、「モノマーA」と略する場合がある。)においては、ビニル基、ビニリデン基等のエチレン性不飽和基が直接又は二価の基を介してベンゼン骨格に結合することができる。ベンゼン骨格の水素の一部はメチル基、水酸基、ハロゲン原子(例えば塩素原子)等の置換基で置換されていてもよい。モノマーAの典型例は、スチレン、置換スチレンである。置換スチレンの置換基は上記例示のとおりである。置換スチレンとしては、α-スチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリロイル基を含むモノマー(以下、「モノマーB」と略する場合がある。)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート[すなわち(メタ)アクリル酸エステル]、(メタ)アクリルアミド等のモノマーを用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、i)炭素数が1~22(好ましくは1~18、更に好ましくは1~12)のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ii)同アルキル基の水素原子の一部が水酸基、アミノ基等に置換された(メタ)アクリレート[ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
【0040】
粒子状コポリマーは、少なくとも2種のモノマー単位(繰返し単位)として、モノマーAの少なくとも1種及びモノマーBの少なくとも1種からなり、これ以外のモノマーを少なくとも2種のモノマー単位として有することは禁じられない。モノマーA及びモノマーB以外のモノマーとしてはエチレン、酢酸ビニル等の「エチレン性不飽和基を有するがベンゼン骨格を有しないモノマー」が挙げられる。モノマーAとモノマーBの比率(その他のモノマーを含む場合はそのモノマーを含む全モノマーの比率)は、コポリマーを形成したときのガラス転移温度(Tg)が、室温(例えば25℃)以上になるように、FOX式等で計算して決定することができる。
【0041】
このようなコポリマーは粒子形状を有している必要がある。粒子形状はコポリマーをバルク重合又は溶液重合し、揮発物を除去して粉砕することにより得ることができるが、コポリマーを乳化重合や懸濁重合して水等の媒体中で粒子形状を形成させることが、製造の容易性及び粒径の均一性の観点から好ましい。乳化重合等では媒体として水を用いてもよい。この含水量は、乳化重合、水及び他の成分を混合することによって調製される水性化粧品中の総水分量を計算するために考慮されなければならない。すなわち、少なくとも2種のモノマー単位としてモノマーAとモノマーBから得られる粒子状コポリマーのエマルジョンをそのまま水性化粧料に配合することができる。さらには、エマルジョン重合等をする場合に界面活性剤としてアニオン界面活性剤を使用すれば、その界面活性剤は、アニオン界面活性剤として使用することができる。スチレン/アクリレート コポリマーが粒子状コポリマーとして好適に用いられる。
【0042】
水性化粧料は、上述した成分(1)及び成分(2)に加え、アニオン界面活性剤(成分(3))を含有する。成分(3)は、成分(2)の分散剤として作用する。成分(3)について、成分(2)の分散能は、水中で発揮されればよい。
【0043】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼン系アニオン界面活性剤、アルキル硫酸エステルナトリウムやアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール系アニオン界面活性剤、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム等のアルファオレフィン系アニオン界面活性剤、アルキルスルホン酸ナトリウム等のノルマルパラフィン系アニオン界面活性剤、脂肪酸ナトリウムやアルファスルホン化脂肪酸エステルナトリウム等の脂肪酸系アニオン界面活性剤が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの典型例は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、アルキル硫酸エステルナトリウムの典型例は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0044】
粒子状コポリマー懸濁液を製造するために使用される界面活性剤は、成分(3)として使用することができる。アニオン界面活性剤によって分散された粒子状コポリマー懸濁液としては、ACUSOL(登録商標)OP 301(INCI名:スチレン/アクリレート コポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、水)(Rohm and Hass社製)が挙げられる。
【0045】
水性化粧料は、アニオン界面活性剤を含有する限りにおいて、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の他の界面活性剤を含有していてもよいが、水性化粧料は、界面活性剤としてアニオン界面活性剤のみ含有することが好ましい。但し、アニオン界面活性剤は一種又は複数種でもよい。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステルナトリウムが特に好ましい。特定の態様において、粒子状コポリマーは、スチレン/アクリレート コポリマーであり、アニオン界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0046】
水性化粧料は、成分(1)~成分(3)に加え、水性化粧料の重量に対して50~95重量%の水を含有してもよい。ここで「水性化粧料の重量に対して」とは「水性化粧料の全重量に対して」という意味である。
【0047】
水は、成分(1)及び成分(3)を溶解する媒体となり、また成分(2)を分散させる媒体となる。水は肌に触れたときの水感のために必須の成分である。水は、蒸留水、精製水、温泉水、深層水の他、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水とすることができる。水の含有量は、水性化粧料の重量に対して60~95重量%が好ましく、70~95重量%がより好ましく、85~95重量%が特に好ましい。
【0048】
水性化粧料の好適な水の含有量は上記のとおりであることから、他の成分で残部を構成することが好ましい。すなわち、成分(1)の含有量は、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.02~0.8重量%、より好ましくは0.03~0.3重量%である。成分(2)の含有量は、好ましくは0.01~0.5重量%、より好ましくは0.05~0.4重量%、より好ましくは0.15~0.35重量%である。成分(3)の含有量は、好ましくは0.00025~0.0125重量%、より好ましくは0.00025~0.01重量%、より好ましくは0.00025~0.008重量%である。
【0049】
粒子状コポリマーは、水性化粧料を調製するために他の成分と混合される原料である。粒子状コポリマーが乾燥粉末の形態で導入される場合、水性化粧料の重量に対する粒子状コポリマーの重量百分率は、水性化粧料の重量に対する粉末の重量百分率を表し得る。さらに、粒子状コポリマーが、コポリマー粒子、水及び界面活性剤を含むエマルジョン粒子状コポリマーの形態である原料として導入される場合、水性化粧料の重量に対する粒子状コポリマーの重量百分率は、水性化粧料の重量に対する乾燥コポリマー粒子の重量百分率、又は水性化粧品の重量に対するエマルジョン粒子状コポリマーの重量百分率のいずれかを表し得る。
【0050】
水性化粧料の粘度は、例えば、回転粘度計(アントンパール(株)製 Rheolab QC)を用いた、回転速度200rpm、25℃での剪断粘度測定で、10~500mPasの範囲内とすることができる。水性化粧料は、肌に触れたときに水感を与え、肌に塗り広げる際にコク感やナリシング効果が生じるようになる。上記のような粘度範囲にすることにより、この変化が顕著に生じるために使用者に意外性を与えるとともに、従来ない性能に対して満足感を与えることとなる。水性化粧料の粘度は、10~500mPasが好ましく、20~400mPasがより好ましい。
【0051】
水性化粧料は、油剤、保湿剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、化粧活性成分、安定化剤、色素、香料及びその他の成分を各種の効果の付与のために適宜配合することができる。
【0052】
保湿剤としては、1種又は2種以上の多価アルコールを用いることができる。多価アルコールとしては、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリンが挙げられる。油剤としては、動物油、植物油、合成油のいずれもが使用でき、このような油剤は、炭化水素油、油脂、ロウ、硬化油、エステル油、脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、フッ素系油等とすることができる。
【0053】
水性化粧料の製造は、例えば、以下のように行うことができる。すなわち、成分(2)が成分(3)で水中に分散された分散物を得、成分(1)を溶解・分散させた水中にこれを加え、十分に攪拌することにより製造可能である。成分(2)がパウダー状である場合は、成分(2)を、成分(1)及び成分(3)を溶解・分散させた水中に加え、十分に攪拌すればよい。水性化粧料が上記添加成分を含有するときは、任意の工程で添加が可能である。
【0054】
水性化粧料は、例えば、ローション、乳液、美容液、化粧下地などして利用することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例及び比較例により、さらに水性化粧料について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0056】
実施例及び比較例で使用した原料の製品名、製造会社及び成分の一覧を表1に示す。INCIは、化粧品原料国際命名法を意味する。
【0057】
【0058】
表2において乳白剤及び界面活性剤として記載されている化合物を、表2において増粘剤及び保湿剤として記載されている化合物が溶解・分散した水に加え、十分に攪拌して、実施例1、比較例1~8の化粧料を得た。配合割合(質量%)は表2に示すとおりである。なお、Acusol(登録商標)OP 301の固形分は約40重量%である。当該製品中において、水の含有量は59~61重量%、スチレン/アクリレート コポリマーの含有量は38~40重量%、ラウリル硫酸ナトリウムの含有量は残量である。実施例1、比較例1~8の化粧料について、以下に示した方法で25℃における粘度、4℃及び50℃での安定性を評価した。
(1)25℃における粘度:回転粘度計(アントンパール(株)製 Rheolab QC)を用いた剪断粘度測定により、回転数200rpm、25℃での粘度を測定した。
(2)4℃及び50℃での安定性:透明容器に実施例1、比較例1~8の化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、4℃又は50℃で1か月保管した。保管後、室温(25℃)に戻し、乳白剤等の沈殿の有無を観察した。4℃及び50℃のいずれでも沈殿がなく安定性に優れるものをY、4℃又は50℃のいずれかで沈殿が生じたものをNと表記した。
【0059】
【0060】
表3において乳白剤及び界面活性剤として記載されている化合物を、表3において増粘剤及び保湿剤として記載されている化合物が溶解・分散した水に加え、十分に攪拌して、実施例1~7、比較例9~10の化粧料を得た。配合割合(重量単位)は表3に示すとおりである。実施例1~7、比較例A及びBの化粧料について、上述した方法で25℃における粘度を測定し、以下に示した方法で、コク感及びナリシング効果、並びに水感を評価した。
(3)コク感及びナリシング効果:10名の社内化粧品専門評価パネルによる、全顔への単回使用試験において評価した。
(4)水感:10名の社内化粧品専門評価パネルによる、全顔への単回使用試験において評価した。
【0061】
コク感、ナリシング効果、及び水感については、A:顕著に認められる、B:認められる。C:十分には認められない、D:認められない、として評価した。
【0062】