(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両及びハイブリッド車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/10 20160101AFI20220720BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220720BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20220720BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220720BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20220720BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20220720BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20220720BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220720BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220720BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B60W20/10 ZHV
B60K6/48
B60W10/02 900
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60K6/543
F02D29/00 G
F02D29/00 C
B60L50/16
B60L15/20 S
B60L9/18 P
(21)【出願番号】P 2017045127
(22)【出願日】2017-03-09
【審査請求日】2019-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬田 行宣
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-236601(JP,A)
【文献】特開2015-131534(JP,A)
【文献】特開2015-098209(JP,A)
【文献】特開2015-131535(JP,A)
【文献】特開2000-025490(JP,A)
【文献】特開2015-203323(JP,A)
【文献】特開2002-118903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンと駆動輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた無段変速機と、
前記エンジンによって駆動され発電する第1モータと、
前記第1モータによって充電されるバッテリと、
前記動力伝達経路における前記無段変速機と前記エンジンとの間に設けられ、前記第1モータによって発電された電気エネルギー、または前記バッテリから供給される電気エネルギーによって前記駆動輪を駆動する第2モータと、
前記動力伝達経路における前記エンジンと前記第2モータとの間に設けられた第1クラッチと、
要求される出力が第1所定値未満
であって、前記バッテリの残容量が第1所定量未満のときには、前記第1クラッチを解放して、
前記エンジンを最適効率で駆動して前記第1モータによって発電させるとともに、前記第1モータによって発電された電気エネルギーによって前記第2モータを最適効率で駆動させ、前記要求される出力が前記第1所定値以上のときには、前記第1クラッチを締結して、前記エンジンを最適効率で駆動させる制御部と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項
1に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部は、前記要求される出力が前記第1所定値よりも大きな第2所定値以上であるときには、前記第2モータによるアシスト走行を実行することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項
2に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部は、前記要求される出力が前記第2所定値以上であるときであって、前記バッテリの残容量が第2所定量未満のときには、前記第2モータによるアシスト走行を実行しないことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1つに記載のハイブリッド車両であって、
前記第2モータと前記無段変速機との間に第2クラッチをさらに備えることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンと駆動輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた無段変速機と、
前記エンジンによって駆動され発電する第1モータと、
前記第1モータによって充電されるバッテリと、
前記動力伝達経路における前記無段変速機と前記エンジンとの間に設けられ、前記第1モータによって発電された電気エネルギー、または前記バッテリから供給される電気エネルギーによって前記駆動輪を駆動する第2モータと、
前記動力伝達経路における前記エンジンと前記第2モータとの間に設けられた第1クラッチと、を備えたハイブリッド車両の制御方法であって、
要求される出力が第1所定値未満
であって、前記バッテリの残容量が第1所定量未満のときには、前記第1クラッチを解放して、
前記エンジンを最適効率で駆動して前記第1モータによって発電させるとともに、前記第1モータによって発電された電気エネルギーによって前記第2モータを最適効率で駆動させ、前記要求される出力が前記第1所定値以上のときには、前記第1クラッチを締結して、前記エンジンを最適効率で駆動させることを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両及びハイブリッド車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンおよびエンジンで駆動される発電機とからなる発電モジュールを備えた電気自動車が記載されている。この電気自動車では、発電機によって発電された電力で走行用のモータを駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電気自動車では、エンジンは発電のみに使用されている。このため、要求駆動力が高くエンジンで走行した方が燃費効率が良い場合でも、モータを駆動源とする走行になっていた。
【0005】
また、特許文献1の電気自動車においては、モータによる走行時には、車速によりモータの回転速度が決まってしまう。このため、モータを常に最適効率の回転速度で駆動することができず、その分燃費効率が悪化していた。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両において燃費効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様のハイブリッド車両は、エンジンと、エンジンと駆動輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた無段変速機と、エンジンによって駆動され発電する第1モータと、第1モータによって充電されるバッテリと、動力伝達経路における無段変速機とエンジンとの間に設けられ、第1モータによって発電された電気エネルギー、またはバッテリから供給される電気エネルギーによって駆動輪を駆動する第2モータと、動力伝達経路におけるエンジンと第2モータとの間に設けられた第1クラッチと、要求される出力が第1所定値未満であって、バッテリの残容量が第1所定量未満のときには、第1クラッチを解放して、エンジンを最適効率で駆動して第1モータによって発電させるとともに、第1モータによって発電された電気エネルギーによって第2モータを最適効率で駆動させ、要求される出力が前記第1所定値以上のときには、第1クラッチを締結して、エンジンを最適効率で駆動させる制御部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様のハイブリッド車両の制御方法は、エンジンと、エンジンと駆動輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた無段変速機と、エンジンによって駆動され発電する第1モータと、第1モータによって充電されるバッテリと、動力伝達経路における無段変速機とエンジンとの間に設けられ、第1モータによって発電された電気エネルギー、またはバッテリから供給される電気エネルギーによって駆動輪を駆動する第2モータと、動力伝達経路におけるエンジンと第2モータとの間に設けられた第1クラッチと、を備えたハイブリッド車両の制御方法であって、要求される出力が第1所定値未満であって、バッテリの残容量が第1所定量未満のときには、第1クラッチを解放して、エンジンを最適効率で駆動して第1モータによって発電させるとともに、第1モータによって発電された電気エネルギーによって第2モータを最適効率で駆動させ、要求される出力が第1所定値以上のときには、第1クラッチを締結して、エンジンを最適効率で駆動させる。
【発明の効果】
【0009】
これらの態様によれば、第2モータ及びエンジンを最適効率で駆動させることで、燃費効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るMG効率マップである。
【
図3】本発明の実施形態に係るエンジン効率マップである。
【
図4】本発明の実施形態に係る統合コントローラが実行する制御のフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る統合コントローラが実行する制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、ハイブリッド車両(以下、単に「車両」という。)100の模式的な構成図である。車両100は、エンジン1と、第1モータとしての発電モータ2と、第1クラッチ3と、第2モータとしてのモータジェネレータ(以下、「MG」という。)4と、第2クラッチ5と、エンジン1と駆動輪7とを結ぶ動力伝達経路(以下、単に「動力伝達経路」という。)に設けられた無段変速機(以下、「CVT」という。)6と、制御部としての統合コントローラ50と、を備える。
【0013】
エンジン1は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、統合コントローラ50からの指令に基づいて、回転速度、トルク等が制御される。
【0014】
発電モータ2は、エンジン1によって駆動され発電する。発電モータ2によって発電された電気エネルギーは、インバータ8を介してバッテリ9に貯められる。
【0015】
MG4は、動力伝達経路におけるCVT6とエンジン1との間に設けられる。MG4は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型回転電機である。MG4は、統合コントローラ50からの指令に基づいて、インバータ8により作り出された三相交流を印加することにより制御される。MG4は、バッテリ9からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することができる。また、MG4は、ロータが駆動輪7から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に電気エネルギーを生じさせる発電機として機能し、バッテリ9を充電することができる。
【0016】
第1クラッチ3は、動力伝達経路におけるエンジン1とMG4との間に介装されたノーマルオープンの油圧式クラッチである。第1クラッチ3は、統合コントローラ50からの指令に基づき、油圧コントロールバルブユニット71によって調圧された油圧によって、締結・解放状態が制御される。なお、油圧コントロールバルブユニット71には、図示しないオイルポンプの吐出圧が元圧として供給される。第1クラッチ3としては、例えば、乾式多板クラッチが用いられる。
【0017】
第2クラッチ5は、動力伝達経路におけるMG4とCVT6との間に設けられる。第2クラッチ5は、統合コントローラ50からの指令に基づき、油圧コントロールバルブユニット71によって調圧された油圧により、締結・解放が制御される。第2クラッチ5としては、例えば、ノーマルオープンの湿式多板クラッチが用いられる。
【0018】
CVT6は、動力伝達経路におけるMG4の下流に配置され、車速やアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更することができる。CVT6は、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、両プーリに掛け渡されたベルトと、を備える。図示しないオイルポンプからの吐出圧を元圧として油圧コントロールバルブユニット71によってプライマリプーリ圧とセカンダリプーリ圧を作り出し、プーリ圧によりプライマリプーリの可動プーリとセカンダリプーリの可動プーリとを軸方向に動かし、ベルトのプーリ接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更する。
【0019】
CVT6の出力軸には、図示しない終減速ギヤ機構を介してディファレンシャル12が接続される。ディファレンシャル12には、ドライブシャフト13を介して駆動輪7が接続される。
【0020】
統合コントローラ50は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/O インタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。統合コントローラ50は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0021】
統合コントローラ50には、エンジン1の回転速度Neを検出する回転速度センサ51、第2クラッチ5の出力回転速度Nout(=CVT6の入力回転速度)を検出する回転速度センサ52、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ53、CVT6のセレクトポジション(前進、後進、ニュートラル及びパーキングを切り替えるセレクトレバー又はセレクトスイッチの状態)を検出するインヒビタスイッチ54、車速を検出する車速センサ55、バッテリ9の残容量を検出するSOCセンサ56等からの信号が入力される。統合コントローラ50は、入力されるこれらの信号に基づき、エンジン1、MG4(インバータ8)、CVT6に対する各種制御を行う。MG4の回転速度Nmは、インバータ8の周波数から計算によって求めることができる。
【0022】
統合コントローラ50は、車両100の運転モードとして、バッテリ9からの電力に基づいてMG4を駆動し、MG4のみの駆動力によって走行するモータ走行モードと、エンジン1のみの駆動力によって走行するエンジン走行モードと、発電モータ2によって発電された電力に基づいてMG4を駆動し、MG4のみの駆動力によって走行するシリーズ走行モードと、エンジン1の駆動力とMG4の駆動力によって走行するアシスト走行モードと、を切り換える。
【0023】
モータ走行モードでは、車両100は、第1クラッチ3を解放するとともに第2クラッチ5を締結した状態で、バッテリ9からの電力によってMG4のみを駆動して走行する。モータ走行モードは、車両100の要求出力Prが低い時であって、バッテリ9の残容量が充分にあるときに選択される。
【0024】
エンジン走行モードでは、車両100は、第1クラッチ3及び第2クラッチ5を締結した状態で、エンジン1のみを駆動して走行する。エンジン走行モードは、車両100の要求出力Prが比較的高い時に選択される。
【0025】
シリーズ走行モードでは、車両100は、第1クラッチ3を解放するとともに第2クラッチ5を締結した状態で、MG4のみを駆動して走行する。シリーズ走行モードでは、エンジン1によって発電モータ2を駆動して発電し、この発電した電力によってMG4を駆動する。シリーズ走行モードは、車両100の要求出力Prが低い時であって、バッテリ9の残容量が低下している時に選択される。
【0026】
アシスト走行モードでは、車両100は、第1クラッチ3及び第2クラッチ5を締結した状態で、エンジン1とMG4とを駆動して走行する。アシスト走行モードは、車両100の要求出力Prが高い時、具体的には、車両100の要求出力Prがエンジン1による出力のみでは補えないときに選択される。
【0027】
次に、
図2を参照して、モータ走行モードにおけるMG4の駆動力の制御について説明する。
【0028】
図2は、MG4の回転速度NmとトルクTmとMG効率との関係を示すMG効率マップである。
図2における曲線Lm1~Lm5は、それぞれMG4のある出力値での回転速度NmとトルクTmとの関係を示す等出力線である。本実施形態では、MG4は、動作点が等高線(細い実線)の内側に向かうにつれて燃費効率が高くなる。さらに、
図2における太い実線(最適効率線Mm)は、MG4の各回転速度における燃費効率が最も高くなる最適効率点を結んだ線である。なお、
図2では、等出力線をLm1~Lm5として図示しているが、実際には、段階的に変化するものではなく、曲線Lm1~Lm5の間で連続的に特性が変化する。もちろん、特性を段階的に変化させてもよい。
【0029】
統合コントローラ50は、車両100の要求出力Prに基づいて、
図2に示すマップから、要求出力Prに対応するMG4の目標回転速度Ntm及び目標トルクTtmを算出する。以下に具体的に説明する。
【0030】
統合コントローラ50は、アクセル開度センサ53によって検出されたアクセル開度と、車速センサ55によって検出された車速とに基づいて、MG4が出力する出力(要求出力Pr)を求める。
【0031】
統合コントローラ50は、
図2に示すMG効率マップから、上述のようにして求めた要求出力Prに対応する等出力線Lmと最適効率線Mmの交点を求める。そして、統合コントローラ50は、求めた交点における回転速度Nm及びトルクTmをMG4の目標回転速度Ntm及び目標トルクTtmとしてMG4を駆動する。このとき、統合コントローラ50は、目標回転速度Ntmと車速とに基づいてCVT6の変速比を制御する。具体的には、MG4を目標回転速度Ntmで駆動したときに所望の車速になるようにCVT6の変速比を制御する。このように、本実施形態のモータ走行モードでは、目標回転速度Ntmと車速に応じてCVT6の変速比を制御することで、MG4を常に最適効率で駆動させて車両100を走行させることができる。
【0032】
次に、
図3を参照して、エンジン走行モードにおけるエンジン1の駆動力の制御について説明する。
【0033】
図3は、エンジン1の回転速度NeとトルクTeとエンジン効率との関係を示すエンジン効率マップである。
図3における曲線Le1~Le5は、それぞれエンジン1のある出力値での回転速度NeとトルクTeとの関係を示す等出力線である。本実施形態では、エンジン1は、動作点が等高線(細い実線)の内側(
図3における右上)に向かうにつれて燃費効率が高くなる。さらに、
図3における太い実線(最適効率線Me)は、エンジン1の各回転速度における燃費効率が最も高くなる最適効率点を結んだ線である。なお、
図3では、等出力線をLe1~Le5として図示しているが、実際には、段階的に変化するものではなく、曲線Le1~Le5の間で連続的に特性が変化する。もちろん、特性を段階的に変化させてもよい。
【0034】
統合コントローラ50は、車両100の要求出力Prに基づいて、
図3に示すマップから、要求出力Prに対応するエンジン1の目標回転速度Nte及び目標トルクTteを算出する。以下に具体的に説明する。
【0035】
統合コントローラ50は、アクセル開度センサ53によって検出されたアクセル開度と、車速センサ55によって検出された車速とに基づいて、エンジン1が出力する出力を求める。さらに、統合コントローラ50は、バッテリ9の残容量を検出するSOCセンサ56からの出力信号に基づいて、バッテリ9を充電するための要求発電量を求める。そして、統合コントローラ50は、図示しない補機類を駆動するための出力と要求発電量を満たすための出力とに基づいて、エンジン1に対する要求出力Prを求める。
【0036】
統合コントローラ50は、
図3に示すエンジン効率マップにおいて、上述のようにして求めた要求出力Prに対応する等出力線Leと最適効率線Meの交点を求める。そして、統合コントローラ50は、求めた交点における回転速度Ne及びトルクTeをエンジン1の目標回転速度Nte及び目標トルクTteとしてエンジン1を駆動する。このとき、統合コントローラ50は、目標回転速度Nteと車速とに基づいてCVT6の変速比を制御する。具体的には、エンジン1を目標回転速度Nteで駆動したときに所望の車速になるようにCVT6の変速比を制御する。このように、本実施形態のエンジン走行モードでは、目標回転速度Nteと車速に応じてCVT6の変速比を制御することで、エンジン1を常に最適効率で駆動させて車両100を走行させる。
【0037】
次に、シリーズ走行モードにおけるエンジン1及びMG4の駆動力の制御について説明する。
【0038】
バッテリ9にMG4が車両100を一定時間駆動するために必要な容量が残っていない場合には、シリーズ走行モードが選択される。シリーズ走行モードが選択されると、統合コントローラ50は、エンジン1を駆動して発電モータ2を駆動する。このとき、統合コントローラ50は、MG4によって車両100を駆動するための電力とバッテリ9を充電するための電力とを満たすような発電量となるように発電モータ2(エンジン1)を駆動する。シリーズ走行モードでは、第1クラッチ3が解放されているので、エンジン1の出力は、車両100を走行させるための駆動力としては使用されず、発電モータ2による発電(MG4の駆動及びバッテリ9の充電)のために使用される。
【0039】
統合コントローラ50は、バッテリ9の残容量を検出するSOCセンサ56からの出力信号に基づいて、バッテリ9を充電するための要求発電量を求める。そして、図示しない補機類を駆動するための出力と、要求発電量を満たすための出力と、MG4が要求出力Prを出力するために必要な出力とに基づいて、最終的にエンジン1に対する要求出力Preを求める。そして、統合コントローラ50は、
図3におけるエンジン1の最適効率線Meと要求出力Preに対応する等出力線Leとの交点を求める。統合コントローラ50は、求めた交点における回転速度Ne及びトルクTeをエンジン1の目標回転速度Nte及び目標トルクTteとしてエンジン1を駆動する。
【0040】
また、統合コントローラ50は、要求出力Prに基づいてMG4の駆動力を制御する。MG4の駆動力の制御については、モータ走行モード時と同様であるので説明を省略する。
【0041】
このように、本実施形態のシリーズ走行モードでは、モータ走行モード時と同様に、目標回転速度Ntmと車速に応じてCVT6の変速比を制御することで、MG4を常に最適効率で駆動させて車両100を走行させることができる。また、エンジン1を最適効率で駆動し発電モータ2によって要求された発電量を発電する。これにより、エンジン1を最適効率で駆動させてバッテリ9を充電するとともに、MG4に電力を供給することができる。
【0042】
次に、アシスト走行モードにおけるエンジン1及びMG4の駆動力の制御について説明する。
【0043】
車両100の要求出力Prがエンジン1による出力のみでは補えない場合には、アシスト走行モードが選択される。アシスト走行モードが選択されると、統合コントローラ50は、要求出力Prとエンジン1による出力との差分をMG4によって出力するように制御する。具体的には、統合コントローラ50は、
図3に示すマップの最適効率線Meと
図2に示すマップの最適効率線Mmにおいて、エンジン1及びMG4が同一回転速度で駆動したときの出力の和が要求出力Prとなるような目標回転速度Nte(=Ntm)及び目標トルクTte,Ttmを求める。そして、統合コントローラ50は、エンジン1及びMG4を同じ目標回転速度Nte(=Ntm)で、かつ、それぞれの目標トルクTte,Ttmで駆動したときの出力の和がと要求出力Prとなるように、エンジン1及びMG4を駆動する。さらに、統合コントローラ50は、目標回転速度Nte(=Ntm)と車速とに基づいてCVT6の変速比を制御する。このように、本実施形態のアシスト走行モードでは、目標回転速度Nte(=Ntm)と車速に応じてCVT6の変速比を制御することで、エンジン1及びMG4を最適効率で駆動させつつ、要求出力Prを満たして車両100を走行させることができる。なお、MG4が変速機構を有している場合には、最終的な回転速度がエンジン1の目標回転速度Nteと同じになるようにして制御する。
【0044】
次に、統合コントローラ50が実行する車両100の運転モードの切り換えについて、
図4及び
図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
ステップS11では、要求出力Prが閾値P1未満であるかを判定する。具体的には、ステップS11では、要求出力PrをMG4のみで出力可能か否かを判定する。閾値P1は、要求出力PrをMG4のみで出力可能であって、MG4を最適効率で駆動した方がエンジン1を最適効率で駆動するよりも燃費効率が良い値に設定される。要求出力Prが閾値P1未満である場合、つまり、要求出力PrをMG4のみで出力可能な場合には、ステップS12に進み、要求出力Prが閾値P1以上である場合、つまり、要求出力PrをMG4のみで出力できない場合には、ステップS22(
図5参照)に進む。
【0046】
ステップS12では、バッテリ9の残容量が閾値E1以上であるかを判定する。具体的には、統合コントローラ50が、SOCセンサ56からの出力信号に基づいてバッテリ9の残容量が閾値E1(第1所定量)以上であるかを判断する。閾値E1は、MG4が車両100を一定時間駆動するために必要な残容量に設定される。バッテリ9の残容量が閾値E1以上であればステップS13に進み、バッテリ9の残容量が閾値E1未満であればステップS17に進む。
【0047】
ステップS13では、第1クラッチ3をOFFにし、第2クラッチ5をONにする。具体的には、油圧コントロールバルブユニット71によって調圧された油圧によって、第1クラッチ3を解放するとともに第2クラッチ5を締結する。これにより、エンジン1からの動力伝達経路が遮断されて、MG4からの動力伝達経路のみが接続されるので、車両100はMG4からの出力のみによって走行する。
【0048】
ステップS14では、MG4を最適効率で駆動する。具体的には、統合コントローラ50は、上述のようにして、
図2に示すMG効率マップからMG4の目標回転速度Ntm及び目標トルクTtmを求め、MG4を目標回転速度Ntm及び目標トルクTtmとなるように駆動する。
【0049】
ステップS15では、CVT6を変速する。具体的には、統合コントローラ50は、目標回転速度Ntmと車速とに基づいてCVT6の変速比を制御する。
【0050】
ステップS16では、アクセル開度変化量が閾値α未満であるかを判定する。具体的には、アクセル開度センサ53によって検出されたアクセル開度の変化量が閾値α未満であるかを判定する。アクセル開度変化量が閾値α未満であれば、そのままの状態を維持する。アクセル開度変化量が閾値α以上であれば、車両100の要求出力Prが変化しているので、ステップS11に戻る。
【0051】
このように、要求出力Prが閾値P1未満であって、かつ、バッテリ9の残容量が閾値E1以上である場合には、統合コントローラ50は、MG4のみによって駆動するモータ走行モードを選択する。モータ走行モードでは、CVT6を制御することでMG4を最適効率で駆動して車両100を走行させるので、燃費効率を向上することができる。
【0052】
続いて、ステップS12においてバッテリ9の残容量が閾値E1未満と判定された場合について説明する。上述のようにステップS12においてバッテリ9の残容量が閾値E1未満と判定されるとステップS17に進む。
【0053】
ステップS17では、第1クラッチ3をOFFにし、第2クラッチ5をONにする。具体的には、油圧コントロールバルブユニット71によって調圧された油圧によって、第1クラッチ3を解放するとともに第2クラッチ5を締結する。これにより、エンジン1からの動力伝達経路が遮断されて、MG4からの動力伝達経路のみが接続されるので、車両100はMG4からの出力のみによって走行する。
【0054】
ステップS18では、エンジン1を最適効率で駆動する。具体的に説明すると、この状態では、バッテリ9には、MG4が車両100を一定時間駆動するために必要な容量が残っていない。このため、統合コントローラ50は、エンジン1を駆動して発電モータ2を駆動する(ステップS19)。発電モータ2は、上述のようにMG4によって車両100を駆動するための電力とバッテリ9を充電するための電力とを満たす発電量となるように駆動される。このとき、第1クラッチ3が解放されるので、エンジン1の出力は、車両100を走行させるための駆動力としては使用されず、MG4の駆動及びバッテリ9の充電のために使用される。
【0055】
そして、統合コントローラ50は、上述のようにして、
図3に示すエンジン効率マップからエンジン1の目標回転速度Nte及び目標トルクTteを求め、エンジン1を目標回転速度Nte及び目標トルクTteとなるように駆動する。
【0056】
ステップS20では、MG4を最適効率で駆動する。具体的には、統合コントローラ50は、上述のようにして、
図2に示すMG効率マップからMG4の目標回転速度Ntm及び目標トルクTtmを求め、MG4を目標回転速度Ntm及び目標トルクTtmとなるように駆動する。
【0057】
ステップS21では、CVT6を変速する。具体的には、統合コントローラ50は、目標回転速度Ntmと車速とに基づいてCVT6の変速比を制御する。なお、ステップS16については前述のとおりであるので、説明を省略する。
【0058】
このように、要求出力Prが閾値P1未満であって、かつ、バッテリ9の残容量が閾値E1未満である場合には、統合コントローラ50は、エンジン1によって発電モータ2を駆動して発電し、この発電した電力によってMG4を駆動しつつ、バッテリ9を充電するシリーズ走行モードを選択する。シリーズ走行モードでは、エンジン1を最適効率で駆動して発電モータ2によって発電するとともに、CVT6を制御することでMG4を最適効率で駆動して車両100を走行させることができるので、燃費効率を向上することができる。
【0059】
続いて、ステップS11において要求出力Prが閾値P1以上であると判定された場合について説明する。上述のようにステップS11において要求出力Prが閾値P1以上であると判定されるとステップS22に進む。
【0060】
ステップS22では、要求出力Prが閾値P2未満であるかを判定する。具体的には、ステップS22では、要求出力Prをエンジン1のみで出力可能か否かを判定する。閾値P2は、閾値P1よりも大きな値であり、具体的には、エンジン1を最適効率で駆動した方がMG4を最適効率で駆動するよりも燃費効率が良く、かつ、エンジン1のみで出力可能な値以下に設定される。これにより、要求出力Prが閾値P2未満である場合、つまり、要求出力Prをエンジン1のみで出力可能である場合にはステップS23に進み、要求出力Prが閾値P2以上である場合、つまり、要求出力Prをエンジン1のみで出力できない場合にはステップS26に進む。
【0061】
ステップS23では、第1クラッチ3及び第2クラッチ5をONにする。具体的には、油圧コントロールバルブユニット71によって調圧された油圧によって、第1クラッチ3及び第2クラッチ5を締結する。これにより、エンジン1からの動力伝達経路が接続され、車両100はエンジン1からの出力によって走行する。
【0062】
ステップS24では、エンジン1を最適効率で駆動する。具体的には、統合コントローラ50は、上述のようにして、
図3に示すエンジン効率マップからエンジン1の目標回転速度Nte及び目標トルクTteを求め、エンジン1を目標回転速度Nte及び目標トルクTteとなるように駆動する。
【0063】
ステップS25では、CVT6を変速する。具体的には、統合コントローラ50は、目標回転速度Nteと車速とに基づいてCVT6の変速比を制御する。なお、ステップS16については前述のとおりであるので、説明を省略する。
【0064】
このように、要求出力Prが閾値P1以上であって閾値P2未満である場合には、統合コントローラ50は、エンジン1のみによって駆動するエンジン走行モードを選択する。エンジン走行モードでは、CVT6を制御することでエンジン1を最適効率で駆動して車両100を走行させることができるので、燃費効率を向上することができる。
【0065】
なお、エンジン走行モード時にバッテリ9の残容量が不足していれば、エンジン1によって発電モータ2を駆動しバッテリ9を充電する。この場合、要求出力Prは、バッテリ9の要求発電量を満たすための出力を付加した値になる。
【0066】
続いて、ステップS22において要求出力Prが閾値P2以上であると判定された場合について説明する。上述のようにステップS22において要求出力Prが閾値P2以上であると判定されるとステップS26に進む。
【0067】
ステップS26では、バッテリ9の残容量が閾値E2以上であるかを判定する。具体的には、統合コントローラ50が、SOCセンサ56からの出力信号に基づいてバッテリ9の残容量が閾値E2(第2所定量)以上であるかを判断する。閾値E2は、MG4が一定時間アシスト駆動するために必要な残容量に設定される。バッテリ9の残容量が閾値E2以上であればステップS27に進み、バッテリ9の残容量が閾値E2未満であればステップS23に進む。なお、ステップS23以降のフローについては前述のとおりであるので、説明を省略する。
【0068】
ステップS27では、第1クラッチ3及び第2クラッチ5をONにする。具体的には、油圧コントロールバルブユニット71によって調圧された油圧によって、第1クラッチ3及び第2クラッチ5を締結する。これにより、エンジン1及びMG4からの動力伝達経路が接続され、車両100はエンジン1及びMG4からの出力によって走行する。
【0069】
ステップS28では、エンジン1を最適効率で駆動し、ステップS29では、MG4を最適効率で駆動する。具体的には、ステップS28、S29では、上述のように、統合コントローラ50は、
図2に示すマップの最適効率線Mmと
図3に示すマップの最適効率線Meとにおいて、エンジン1及びMG4が同一回転速度で駆動したときの出力の和が要求出力Prとなるような目標回転速度Nte(=Ntm)及び目標トルクTte,Ttmを求める。そして、統合コントローラ50は、エンジン1及びMG4を同じ目標回転速度Nte(=Ntm)で、かつ、それぞれの目標トルクTte,Ttmで駆動したときの出力の和がと要求出力Prとなるように、エンジン1及びMG4を駆動する。
【0070】
ステップS30では、CVT6を変速する。具体的には、統合コントローラ50は、目標回転速度Nte(=Ntm)と車速とに基づいてCVT6の変速比を制御する。なお、ステップS16については前述のとおりであるので、説明を省略する。
【0071】
このように、統合コントローラ50は、要求出力Prが閾値P2以上であって、かつ、バッテリ9の残容量が閾値E2以上である場合には、エンジン1の出力をMG4の出力によってアシストするアシスト走行モードを選択する。つまり、要求出力Prがエンジン1の出力のみでは賄えない場合であって、バッテリ9の残容量がMG4を駆動するのに充分である場合には、統合コントローラ50は、エンジン1及びMG4によって駆動するアシスト走行モードを選択する。アシスト走行モードでは、CVT6を制御することでエンジン1及びMG4を最適効率で駆動して車両100を走行させることができるので、燃費効率を向上することができる。
【0072】
以上のように、統合コントローラ50を備えた車両100によれば、バッテリ9からの電力に基づいてMG4を駆動し、MG4のみの駆動力によって走行するモータ走行モード、エンジン1のみの駆動力のみによって走行するエンジン走行モード、発電モータ2によって発電された電力に基づいてMG4を駆動し、MG4のみの駆動力によって走行するシリーズ走行モード、エンジン1の駆動力とMG4の駆動力によって走行するアシスト走行モードのいずれにおいても、CVT6の変速比を制御することでエンジン1及びMG4を最適効率で駆動して、車両100を走行させることができる。これにより、車両100の燃費効率を向上することができる。
【0073】
以上の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0074】
車両100では、統合コントローラ50(制御部)は、要求出力Prが閾値P1(第1所定値)未満のときには、第1クラッチ3を解放して、MG4(第2モータ)を最適効率で駆動させ、要求出力Prが閾値P1(第1所定値)以上のときには、第1クラッチ3を締結して、エンジン1を最適効率で駆動させる。
【0075】
この構成では、MG4(第2モータ)及びエンジン1のいずれかによって車両100を走行させるときに、MG4(第2モータ)及びエンジン1をそれぞれ最適効率で駆動させる。よって、燃費効率を向上させることができる(請求項1、6に対応する効果)。
【0076】
統合コントローラ50は、要求出力Prが閾値P1(第1所定値)未満のときであって、バッテリ9の残容量が閾値E1(第1所定量)未満のときには、エンジン1を最適効率で駆動して発電モータ2(第1モータ)によって発電させるとともに、発電モータ2(第1モータ)によって発電された電力(電気エネルギー)によってMG4(第2モータ)を駆動する。
【0077】
この構成では、バッテリ9の残容量が不足した場合であっても、発電モータ2(第1モータ)によって発電された電力(電気エネルギー)によってMG4(第2モータ)を駆動することができる。さらに、エンジン1及びMG4(第2モータ)を最適効率で駆動して車両100を走行させることができる。よって、燃費効率を向上させることができる(請求項2に対応する効果)。
【0078】
統合コントローラ50は、要求出力Prが閾値P1(第1所定値)よりも大きな閾値P2(第2所定値)以上であるときには、MG4(第2モータ)によるアシスト走行を実行する。
【0079】
この構成によれば、エンジン1の出力が不足する場合に、MG4(第2モータ)によってアシストされるので、エンジン1を小型化しても出力不足になることを回避できる(請求項3に対応する効果)。
【0080】
統合コントローラ50は、要求出力Prが閾値P2(第2所定値)以上であるときであって、バッテリ9の残容量が閾値E2(第2所定量)未満のときには、MG4(第2モータ)によるアシスト走行(アシスト走行モード)を実行しない。
【0081】
この構成によれば、バッテリ9の一定の残容量を確保できるので、バッテリ9からの電力によって駆動する図示しない補機の作動に支障をきたすことがない(請求項4に対応する効果)。
【0082】
車両100は、MG4(第2モータ)とCVT6(無段変速機)との間に第2クラッチ5をさらに備える。
【0083】
この構成によれば、第2クラッチ5を解放することで、MG4による駆動輪7から回転エネルギーの回生を中断することができる。これにより、車両100の慣性走行をする際に、車速が低下することを防止できる(請求項5に対応する効果)。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0085】
例えば、車両100において、第2クラッチ5は必要がなければ設けなくてもよい。また、第2モータとして回生機能を有しないモータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
100 車両(ハイブリッド車両)
1 エンジン
2 発電モータ(第1モータ)
3 第1クラッチ
4 モータジェネレータ(第2モータ)
5 第2クラッチ
6 CVT (無段変速機)
7 駆動輪
9 バッテリ
50 統合コントローラ(制御部)
56 SOCセンサ