(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】庇部の取付構造
(51)【国際特許分類】
E04F 10/00 20060101AFI20220720BHJP
E04H 9/16 20060101ALI20220720BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20220720BHJP
【FI】
E04F10/00
E04H9/16 A ETD
H02S20/23 Z
(21)【出願番号】P 2017099125
(22)【出願日】2017-05-18
【審査請求日】2020-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】小川 祥
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328755(JP,A)
【文献】特開2016-211330(JP,A)
【文献】特開2007-185338(JP,A)
【文献】実開昭53-163835(JP,U)
【文献】実開昭63-162031(JP,U)
【文献】特許第6106302(JP,B1)
【文献】特開2002-221252(JP,A)
【文献】特開2002-194917(JP,A)
【文献】特開昭54-006124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 10/00、10/08
E04H 9/16
E04D 13/18
H02S 20/23
E04B 7/00、7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁部に設けられた庇取付部と、
その庇取付部に取り付けられた庇部と、を備え、
前記庇部は、前記庇取付部又は前記外壁部に粘弾性ダンパを介して接続され、
前記粘弾性ダンパは、前記庇部に上方から衝撃が加わった場合にその衝撃を緩和するものであることを特徴とする庇部の取付構造。
【請求項2】
前記庇部は、前記庇取付部に下方に向けて動作可能に取り付けられているとともに、前記庇取付部又は前記外壁部に前記粘弾性ダンパを介して接続されることで保持されていることを特徴とする請求項1に記載の庇部の取付構造。
【請求項3】
前記庇部は、前記庇取付部に回動軸部を介して回動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の庇部の取付構造。
【請求項4】
軒先に向けて下方傾斜する傾斜屋根部を有する建物に適用され、
前記庇部は、前記軒先の下方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の庇部の取付構造。
【請求項5】
前記傾斜屋根部の上には、その傾斜屋根部に沿ってソーラパネルが設置されていることを特徴とする請求項4に記載の庇部の取付構造。
【請求項6】
前記庇部は、アルミ製であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の庇部の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庇部の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、外壁部に設けられた窓部や出入口等の開口部の上方に庇部が設けられている場合がある(例えば特許文献1参照)。庇部は、外壁部から屋外側に張り出して設けられ、外壁部に取付部材を介して取り付けられている。この場合、取付部材は例えば板状とされ、外壁部の外面に固定される。そして、その取付部材に庇部が取り付けられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、住宅等の建物が切妻式や寄棟式の屋根を有している場合、その傾斜屋根部の上に雪が積もると積もった雪(例えば根雪)が塊となって傾斜屋根部から一気に落下することが想定される。その場合、その傾斜屋根部の下方に庇部が設けられていると、傾斜屋根部からの雪が庇部の上に落下することが考えられる。庇部の上に雪が落下した場合、その落下の衝撃で庇部を外壁部に取り付けている取付部分において破損が生じるおそれがあり、その場合、その破損に伴い庇部が外壁部から脱落するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、庇部の脱落を抑制することができる庇部の取付構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の庇部の取付構造は、外壁部に設けられた庇取付部と、その庇取付部に取り付けられた庇部と、を備え、前記庇部は、前記庇取付部又は前記外壁部に緩衝手段を介して接続され、前記緩衝手段は、前記庇部に上方から衝撃が加わった場合にその衝撃を緩和するものであることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、外壁部に設けられた庇取付部に庇部が取り付けられ、その庇部が庇取付部又は外壁部と緩衝手段を介して接続されている。この場合、落雪等により庇部に上方から衝撃が加わった場合に、その衝撃を緩衝手段により緩和することができる。これにより、庇部に対する衝撃で庇部を庇取付部に取り付けている取付部分で破損が生じるのを抑制することができ、その結果、その破損に伴う庇部の脱落を抑制することができる。
【0008】
第2の発明の庇部の取付構造は、第1の発明において、前記緩衝手段は、弾性変形することで前記衝撃を緩和するものであることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、庇部に上方から衝撃が加わり庇部が下方に変位した場合に、緩衝手段(の一部又は全部)がその庇部の変位に伴い弾性変形することで上記衝撃が緩和される。この場合、弾性変形した緩衝手段は、その後、自己の弾性力(復帰弾性力)により元の形状へ復帰する。そのため、その復帰に伴い庇部が上方に変位し元の設置位置へと自ずと戻ることになる。これにより、庇部に衝撃が加わった場合に、その衝撃で下方に変位した庇部を元の設置位置に戻す作業が不要となるため、その点において好都合となる。
【0010】
第3の発明の庇部の取付構造は、第1又は第2の発明において、前記緩衝手段は、粘弾性ダンパであることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、粘弾性ダンパを用いることで上記第2の発明と同様の効果を得ることができる。
【0012】
第4の発明の庇部の取付構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記庇部は、前記庇取付部に下方に向けて動作可能に取り付けられているとともに、前記庇取付部又は前記外壁部に前記緩衝手段を介して接続されることで保持されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、庇部が庇取付部に下方に向けて動作可能に取り付けられているため、庇部に上方から衝撃が加わった場合には、庇部がスムーズに下方に変位する。このため、庇部が庇取付部にボルト等で取り付けられている場合には、庇部への衝撃により取付部分に大きな負荷がかかることが想定されるが、上記の構成であれば取付部分に大きな負荷がかかるのを抑制することができる。これにより、当該取付部分にて破損が生じるのをより一層抑制することができ、その結果、破損に伴う庇部の脱落をより一層抑制することができる。
【0014】
第5の発明の庇部の取付構造は、第4の発明において、前記庇部は、前記庇取付部に回動軸部を介して回動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、落雪により庇部に上方から衝撃が加わった場合には庇部が下方へ回動して傾斜状態となる。そのため、庇部上に落下した雪を庇部から下方へ落とすことができる。これにより、庇部上に雪が堆積するのを抑制することができるため、庇部上に堆積した雪の重みに落雪の衝撃が加わって庇部が破損し易くなるのを抑制することができる。
【0016】
また、庇部は、緩衝手段による緩衝作用によりゆっくりと傾くことになるため、庇部上の雪はゆっくりと庇部から下方に落ちることになる。このため、庇部から落ちた雪により物が破損する等の不都合が発生するのを防止することができる。
【0017】
第6の発明の庇部の取付構造は、第1の発明において、前記緩衝手段は、前記庇部と前記庇取付部との間に介在されそれら両者に接合されたゴム材からなることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、緩衝手段として、弾性変形可能なゴム材を用いているため、上記第2の発明と同様の効果を得ることができる。また、緩衝手段としてゴム材を用いることで、比較的低コストで上記第1の発明の効果を得ることができる。
【0019】
第7の発明の庇部の取付構造は、第1乃至第6のいずれかの発明において、軒先に向けて下方傾斜する傾斜屋根部を有する建物に適用され、前記庇部は、前記軒先の下方に配置されていることを特徴とする。
【0020】
傾斜屋根部の軒先の下方に庇部が配置されている場合、傾斜屋根部に積もった雪が庇部の上に落下する可能性が高くなると考えられる。その点本発明では、かかる庇部に第1の発明を適用しているため、この場合であっても、落雪の衝撃による庇部の脱落を抑制することができる。
【0021】
第8の発明の庇部の取付構造は、第7の発明において、前記傾斜屋根部の上には、その傾斜屋根部に沿ってソーラパネルが設置されていることを特徴とする。
【0022】
傾斜屋根部の上にソーラパネルが設置されている場合、そのソーラパネル上に雪が積もると、ソーラパネルのパネル面は滑り易くなっていることから、積もった雪が滑り落ち庇部上に落下する可能性が大いに高まることが想定される。その点本発明では、かかる庇部に第1の発明を適用しているため、この場合であっても、落雪の衝撃による庇部の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態における建物の概要を示す概要図。
【
図2】外壁部に対する庇部の取付構造を示す縦断面図であり、(a)が庇部の通常の設置状態を示しており、(b)が庇部が落雪の衝撃で下方に傾いた状態を示している。
【
図3】第2の実施形態における外壁部に対する庇部の取付構造を示す縦断面図であり、(a)が庇部の通常の設置状態を示しており、(b)が庇部が落雪の衝撃で下方に傾いた状態を示している。
【
図4】第3の実施形態における外壁部に対する庇部の取付構造を示す縦断面図であり、(a)が庇部の通常の設置状態を示しており、(b)が庇部が落雪の衝撃で下方に傾いた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物が降雪地域に設けられていることを想定しており、
図1は、その建物の概要を示す概要図である。
【0025】
図1に示すように、住宅等の建物10は二階建てとされており、その屋根部11が切妻式の屋根となっている。屋根部11は、その上端となる棟12を挟んだ両側に一対の傾斜屋根部13を有している。これらの傾斜屋根部13は、棟12から軒先14に向けて下方に傾斜して形成されている。各傾斜屋根部13では、傾斜方向の下端側が外壁部15よりも屋外側に張り出して軒部16となっており、その軒部16が軒先14を含んでいる。
【0026】
各傾斜屋根部13のうち一方の傾斜屋根部13aには、その上にソーラパネル17が設置されている。ソーラパネル17は、太陽光が照射されることにより太陽光発電を行うものである。ソーラパネル17は、傾斜屋根部13a上においてその傾斜屋根部13aの傾斜に沿って設置されている。
【0027】
傾斜屋根部13aの軒部16の下方には、外壁部15から張り出して庇部18が設けられている。庇部18は、外壁部15に設けられた建物出入口19の上方に配置されている。建物出入口19は、例えば勝手口とされている。庇部18は、その上方の軒部16よりも屋外側に張り出して設けられており、そのため、庇部18は、当該軒部16の軒先14の下方(真下)に位置している。
【0028】
ところで、屋根部11が傾斜屋根部13を有する上述の構成では、傾斜屋根部13の上に雪が積もった場合、その雪が塊となって傾斜屋根部13から一気に落下することが想定される。その場合、ソーラパネル17が設置されている側の傾斜屋根部13aから雪が落下すると、その雪が庇部18の上に落ちる場合が想定され、そうなると、その落雪の衝撃で庇部18を外壁部15に取り付けている取付部分で破損が生じ、庇部18が外壁部15から脱落するおそれがある。そこで、本実施形態では、その点を鑑み、外壁部15に対する庇部18の取付構造に特徴的な構成を設けており、以下においては、その取付構造について
図2に基づき説明する。
図2は、外壁部15に対する庇部18の取付構造を示す縦断面図である。なお、
図2において(a)が庇部18の通常の設置状態を示しており、(b)が庇部18が落雪の衝撃で下方に傾いた状態を示している。
【0029】
図2(a)に示すように、外壁部15は、屋外面を形成する外壁面材21と、その外壁面材21の裏面側に固定された下地フレーム22とを備える。外壁面材21は、例えば窯業系サイディングボードにより形成されている。下地フレーム22は、複数のフレーム材22aが矩形枠状に組まれることにより形成されている。各フレーム材22aは、断面コ字状の鋼材からなり、その溝部をフレーム内側に向けた状態で配設されている。
【0030】
外壁部15の屋外側には、庇部18を取り付けるための取付プレート24が固定されている。取付プレート24は、鋼板により平板状に形成され、その板面を外壁面材21の屋外面に当接させた状態で固定されている。取付プレート24は、外壁部15の幅方向(壁幅方向)に延びる長尺状とされ、その長さが庇部18の同方向の長さ(つまり庇部18の幅)と略同じとされている。なお、取付プレート24が庇取付部に相当する。
【0031】
取付プレート24は、複数のボルト25を用いて外壁部15に固定されている。各ボルト25は取付プレート24と外壁面材21とを介して下地フレーム22(詳しくはその縦フレーム材22a)に設けられたねじ孔部(図示略)にねじ込まれている。また、各ボルト25は、取付プレート24の長手方向の両端部に配置されている。なお、取付プレート24を外壁部15に固定する固定具は必ずしもボルト25である必要はなく、ビスやタッピングねじ等、ボルト以外の固定具であってもよい。
【0032】
取付プレート24には、庇部18が取り付けられている。庇部18は、外壁部15に対して水平方向に張り出して設けられ、その外壁部15側の端部が取付プレート24に取り付けられている。庇部18は、略直方体状に形成され、例えばアルミ製とされている。庇部18は、その高さ寸法(上下長さ)が取付プレート24の高さ寸法よりも小さくされており、その下面を取付プレート24の下端部と略同じ高さ位置にして取付プレート24に取り付けられている。この場合、取付プレート24は、その一部が庇部18よりも上方に延出して延出部24aとなっている。
【0033】
庇部18は、取付プレート24に回動軸部27を介して回動可能に取り付けられている。回動軸部27は、外壁部15の幅方向に延びる軸部であり、庇部18と取付プレート24との間において庇部18の下面高さに配置されている。図示は省略するが、庇部18と取付プレート24とにはそれぞれ回動軸部27が挿入される軸受け部が固定され、それら各軸受け部に回動軸部27が挿入されることで、庇部18が取付プレート24に回動軸部27を介して取り付けられている。これにより、庇部18は回動軸部27を中心として下方へ回動可能とされている(
図2(b)参照)。
【0034】
庇部18と取付プレート24とは、長尺状の接続部30を介して接続されている。接続部30は、取付プレート24の延出部24aと庇部18との間に斜めに架け渡されており、その長手方向の一端部が延出部24aに取り付けられ、他端部が庇部18に取り付けられている。これにより、庇部18が所定の設置位置(
図2(a)の位置)において保持(支持)されている。また、接続部30は、庇部18の幅方向において中央部に配置されている。なお、接続部30を、庇部18の幅方向における両端部にそれぞれ配置するようにしてもよい。
【0035】
接続部30は、緩衝手段としてのダンパ装置31を有している。ダンパ装置31は、粘弾性ダンパからなる。ダンパ装置31は、シリンダ31aと、シリンダ31a内で軸線方向に変位するロッド31bとを有している。ダンパ装置31は、シリンダ31aに対しロッド31bが軸線方向に変位することで伸縮可能となっている。詳しくは、ダンパ装置31は、シリンダ31aとロッド31bとの間にゴム材料からなる粘弾性体(図示略)を介在させており、シリンダ31aに対してロッド31bが軸線方向に変位すると、粘弾性体がせん断変形(弾性変形)して減衰力が生じる構成となっている。
【0036】
ダンパ装置31は、その伸縮方向を接続部30の長手方向に向けて配置され、そのシリンダ31aが受け部32を介して庇部18の上面に連結され、ロッド31bが受け部33を介して取付プレート24の延出部24aに連結されている。各受け部32,33はいずれもダンパ装置31の伸縮方向に延びる棒状とされている。詳しくは、受け部32は、庇部18の上面に庇部18の幅方向に延びる軸部32aを介して回動可能に取り付けられ、受け部33は、取付プレート24の延出部24aに庇部18の幅方向に延びる軸部33aを介して回動可能に取り付けられている。
【0037】
続いて、上述した庇部18の取付構造の作用について
図2(b)を参照しながら説明する。なおここでは、傾斜屋根部13aから庇部18の上に落雪があった場合を想定して作用の説明を行う。
【0038】
図2(b)に示すように、傾斜屋根部13aから落ちた雪が庇部18の上に落下すると、その落下の衝撃で庇部18が下方に変位する。この際、庇部18は、回動軸部27を中心として下方へ回動し、屋外側(換言すると外壁部15から離間した側)に向けて下方傾斜した傾斜状態となる。具体的には、この庇部18の下方への変位の際、その庇部18の変位に伴いダンパ装置31が伸張する。そして、ダンパ装置31が伸張すると、装置31内の粘弾性体がせん断変形(弾性変形)して同装置31に減衰力が発生し、その減衰力により庇部18に対する落雪の衝撃が緩和される。これにより、庇部18上に落雪があった場合でも、その落雪の衝撃で庇部18を外壁部15に取り付けている取付部分で破損が生じるのを抑制することができる。そのため、その破損に伴う庇部18の脱落を抑制することができる。
【0039】
なお、ダンパ装置31は、上方からの衝撃力が所定以上である場合に(のみ)伸張し減衰力を発生させるものとなっている。そのため、庇部18の脱落につながるおそれのない小さい落雪がある度に、ダンパ装置31がいちいち伸張(作動)してしまう不都合が生じることが防止されている。
【0040】
上述のように、庇部18の上に落雪があった場合、庇部18は落雪の衝撃で下方に傾斜するため、庇部18上に落下した雪は庇部18から下方に滑り落ちることになる。そのため、庇部18上に落雪があった場合に、庇部18上に雪が堆積するのを抑制することができる。これにより、庇部18上に堆積した雪の重みに落雪の衝撃が加わって庇部18が破損し易くなる事態が生じるのを抑制することができる。
【0041】
また、庇部18は、落雪に伴い下方傾斜する際、ダンパ装置31の緩衝作用によりゆっくりと傾くことになる。そのため、庇部18上に落ちた雪を庇部18からゆっくりと下方に落とすことができる。これにより、庇部18から落ちた雪でその下にある物が破損するといった事態が生じるのを抑制することができる。
【0042】
庇部18が傾斜状態となって庇部18上の雪が下方に落ちた後、ダンパ装置31内の粘弾性体が自己の弾性力により元の形状へと復帰し、それに伴いダンパ装置31が元の長さへ収縮する(復帰する)。そして、このダンパ装置31の収縮に伴い、庇部18は上方へ変位し元の設置位置(
図2(a)の状態)へ自ずと戻る。この場合、落雪の衝撃で下方に変位した庇部18を元の設置位置へ戻す作業が不要となるため、その点で好都合である。
【0043】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
庇部18を取付プレート24に下方に向けて回動可能に取り付けるとともに、ダンパ装置31を介して取付プレート24に接続することで所定の設置位置で保持するようにした。この場合、庇部18に上方から衝撃が加わった場合には、庇部18がスムーズに下方へ変位する。そのため、庇部18が取付プレート24にボルト等で取り付けられている場合には、庇部18への衝撃により取付部分に大きな負荷がかかることが想定されるが、上記の構成であれば取付部分に大きな負荷がかかるのを抑制することができる。これにより、当該取付部分にて破損が生じるのをより一層抑制することができ、その結果、破損に伴う庇部18の脱落をより一層抑制することができる。また、こうした構成では、ダンパ装置31による衝撃緩和機能を好適に発揮させることができるため、その点でも庇部18の脱落をより一層抑制することができる。
【0045】
傾斜屋根部13aの上にソーラパネル17が設置されている場合、そのソーラパネル17上に雪が積もると、ソーラパネル17のパネル面は滑り易くなっていることから、積もった雪が滑り落ち庇部18上に落下する可能性が大いに高まることが想定される。その点上記の構成では、かかる庇部18に本発明の取付構造を適用しているため、この場合であっても、落雪の衝撃による庇部18の脱落を抑制することができる。
【0046】
〔第2の実施形態〕
上記第1の実施形態では、庇部18に対する落雪の衝撃をダンパ装置31を用いて緩和するようにしたが、本実施形態では、ダンパ装置31に代えてゴム材を用いて衝撃を緩和することとしている。以下、かかる本実施形態の構成について
図3に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における外壁部15に対する庇部18の取付構造を示す縦断面図であり、(a)が庇部18の通常の設置状態を示しており、(b)が庇部18が落雪の衝撃で下方に傾いた状態を示している。なお、以下においては、上記第1の実施形態と共通の構成については同じ符号を付してその説明を割愛することとする。
【0047】
図3(a)に示すように、本実施形態では、庇部18が取付プレート24に緩衝手段としてのゴム材41を介して取り付けられている。ゴム材41は、取付プレート24の長手方向に延びる長尺状とされ、その長さが取付プレート24の長さよりも(若干)短くされている。ゴム材41は、所定の厚みを有する板状に形成され、その一方の板面が取付プレート24の屋外側面に接着剤により固定されている。この場合、ゴム材41は、取付プレート24においてその両端部の各ボルト25の間に配置されている。また、ゴム材41は、その厚みが取付プレート24の厚みよりも大きくされ、その上下長さが取付プレート24の上下長さと同じとされている。そして、ゴム材41は、その高さ位置を取付プレート24と同じ高さ位置にして当該取付プレート24に固定されている。
【0048】
ゴム材41を挟んで取付プレート24とは反対側には固定プレート42が設けられている。固定プレート42は、鋼板により平板状に形成され、取付プレート24(ゴム材41)の長手方向に延びる長尺状とされている。固定プレート42は、その長さが庇部18の幅と同じとされ、その上下長さがゴム材41の上下長さと同じとされている。固定プレート42は、ゴム材41の他方の板面(屋外側面)に接着剤により固定されている。この場合、固定プレート42は、その高さ位置をゴム材41と同じ高さ位置にして固定されている。
【0049】
固定プレート42には、庇部18が取り付けられている。庇部18は、その外壁部15側の端部(側面)が固定プレート42にビス等の固定具により固定されている。庇部18は、その高さ寸法(上下長さ)が固定プレート42の高さ寸法よりも小さくされており、その下面を固定プレート42の下端部と略同じ高さ位置にして固定プレート42に固定されている。このように、庇部18は、固定プレート42とゴム材41とを介して取付プレート24に取り付けられている。なお、この場合、取付プレート24、ゴム材41及び固定プレート42にはそれぞれ庇部18よりも上方に延出した延出部が存在している。
【0050】
続いて、上述した庇部18の取付構造の作用について
図3(b)を参照しながら説明する。
【0051】
図3(b)に示すように、庇部18の上に落雪があった場合、庇部18はその衝撃で下方に変位する。この場合、庇部18はその基端部(外壁部15側の端部)がゴム材41を介して取付プレート24に固定されているため、先端側(外壁部15側とは反対側)が下方に傾く(傾斜する)。そして、その庇部18の下方への傾斜に伴いゴム材41が弾性変形し、それにより落雪の衝撃が緩和される。このため、この場合にも、落雪の衝撃で庇部18を外壁部15に取り付けている取付部分で破損が生じるのを抑制することができ、その結果、その破損に伴う庇部18の脱落を抑制することができる。また、庇部18への落雪に伴い庇部18が下方傾斜するため、庇部18上に落下した雪を庇部18から落とすことができ、庇部18上に雪が堆積するのを抑制することができる。
【0052】
庇部18上から雪が落ちた後、ゴム材41は自己の弾性力により元の形状(
図3(a)の形状)に復帰する(戻る)。この際、その復帰に伴い庇部18が上方へ変位し、元の設置位置へ自ずと戻る。そのため、この場合にも、落雪の衝撃で下方に変位した庇部18を元の設置位置へ戻す作業が不要となる。
【0053】
なお、本実施形態では、緩衝手段としてゴム材41を用いたため、比較的低コストで上述した各作用効果を得ることができる。また、本実施形態では、ゴム材41として庇部18の幅方向に延びる長尺状のものを用いたが、ゴム材41として短尺状のものを用いそれを庇部18の幅方向に所定の間隔で複数設けるようにしてもよい。
【0054】
〔第3の実施形態〕
上記第1の実施形態では、庇部18を取付プレート24に下方へ向けて回動可能に取り付けたが、本実施形態では、庇部18を取付プレート24に下方へ向けてスライド可能に取り付けている。以下、かかる本実施形態の構成について
図4に基づいて説明する。
図4は、本実施形態における外壁部15に対する庇部18の取付構造を示す縦断面図であり、(a)が庇部18の通常の設置状態を示しており、(b)が庇部18が落雪の衝撃で下方に傾いた状態を示している。なお、以下においては、上記第1の実施形態と共通の構成については同じ符号を付してその説明を割愛する。
【0055】
図4(a)に示すように、取付プレート24の屋外側面には、上下に延びる一対のレール部材51が取り付けられている。これら各レール部材51は、取付プレート24においてその長手方向の両端側にそれぞれ配置されている。
【0056】
庇部18には、その外壁部15側の端部(側面)に支持プレート52が固定されている。支持プレート52は、鋼板により平板状に形成され、庇部18の幅方向に延びる長尺状とされている。
【0057】
支持プレート52は、各レール部材51に架け渡されて設けられ、その両端部が各レール部材51に取り付けられている。これにより、庇部18は支持プレート52を介して各レール部材51に取り付けられている。支持プレート52は、各レール部材51に沿ってスライド移動可能とされている。これにより、庇部18がレール部材51に沿って上下移動可能とされている。庇部18は、通常の設置状態(
図4(a)の状態)では、レール部材51の上部に位置している。そのため、庇部18は、下方へ向けて動作可能な状態でレール部材51(ひいては取付プレート24)に取り付けられている。
【0058】
取付プレート24は、その一部がレール部材51よりも下方に延出して延出部24bとなっている。取付プレート24の延出部24bと庇部18との間には、緩衝手段としての棒状部材54が斜めに架け渡されて設けられている。棒状部材54は、金属製の棒材(例えば丸棒材)からなり、その長手方向の一端部が庇部18の下面に取り付けられ、他端部が取付プレート24の延出部24bに取り付けられている。これにより、庇部18が所定の設置位置(
図4(a)の位置)において保持されている。詳しくは、棒状部材54は、その長手方向の両端部に庇部18の幅方向に延びる軸部54b,54cを有している。そして、棒状部材54は、軸部54bを介して庇部18に回動可能に取り付けられ、軸部54cを介して取付プレート24に回動可能に取り付けられている。また、棒状部材54は、庇部18の幅方向の中央部に配置されている。但し、棒状部材54を、庇部18の幅方向の両端部に配置する等、同方向に複数配置してもよい。
【0059】
棒状部材54は、その長さ方向の中間部詳しくは中央部に切り欠き部54aを有している。切り欠き部54aは、下側が切り欠かれた切り欠きとなっている。これにより、棒状部材54は、この切り欠き部54aが設けられた中央部分が他の部分と比べて強度の弱い低強度部となっている。
【0060】
続いて、上述した庇部18の取付構造の作用について
図4(b)を参照しながら説明する。
【0061】
図4(b)に示すように、庇部18の上に落雪があった場合、庇部18はその衝撃でレール部材51に沿って下方に移動する。この場合、庇部18の下方への移動に伴い、棒状部材54が切り欠き部54aをきっかけとして屈曲変形する。詳しくは、この際、棒状部材54が切り欠き部54aの設けられた低強度部で上側に凸となるよう屈曲変形する。そして、この棒状部材54の変形(詳しくは塑性変形)によって、庇部18に対する落雪の衝撃が緩和される。このため、この場合にも、落雪の衝撃で庇部18を外壁部15に取り付けている取付部分で破損が生じるのを抑制することができ、その結果、その破損に伴う庇部18の脱落を抑制することができる。
【0062】
また、この場合、庇部18は落雪の衝撃によりレール部材51に沿って下方に向けてスムーズに移動する。このため、庇部18が取付プレート24にボルト等で取り付けられている場合には、落雪の衝撃により取付部分に大きな負荷がかかることが想定されるが、かかる構成であれば取付部分に大きな負荷がかかるのを抑制することができる。これにより、当該取付部分にて破損が生じるのをより一層抑制することができ、その結果、破損に伴う庇部18の脱落をより一層抑制することができる。
【0063】
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0064】
・上記第1の実施形態では、ダンパ装置31(減衰ダンパ)として、粘弾性ダンパを用いたが、油圧ダンパや摩擦ダンパ等、他種類のダンパを用いてもよい。
【0065】
・上記の実施形態では、緩衝手段として、ダンパ装置31、ゴム材41、棒状部材54を用いたが、緩衝手段としてこれら以外のものを用いてもよい。例えば、緩衝手段として、コイルばね等のばね材を用いることが考えられる。具体的には、上記第1の実施形態の構成において、ダンパ装置31に代えてコイルばねを用いることが考えられる。この際、コイルばねを、その伸縮方向の一端部を受け部32を介して庇部18に取り付け、他端部を受け部33を介して取付プレート24に取り付けることが考えられる。かかる構成においても、庇部18に上方から衝撃が加わって庇部18が下方傾斜した場合、その庇部18の傾斜に伴いコイルばねが伸張(弾性変形)することで上記衝撃を緩和することができる。
【0066】
・上記各実施形態では、外壁部15の屋外側面に庇取付部としての取付プレート24を設け、その取付プレート24に庇部18を取り付けるようにしたが、これを変更して、例えば庇部18を外壁部15の下地フレーム22に取り付けるようにしてもよい。この場合、下地フレーム22が庇取付部に相当することとなる。なお、この場合、外壁面材21の一部に庇部18との干渉を回避するための回避部(例えば孔部)を設け、その回避部を通じて庇部18を下地フレーム22に取り付けることが考えられる。
【0067】
・上記第1の実施形態では、取付プレート24の一部を庇部18よりも上方に延出させて延出部24aを設け、その延出部24aにダンパ装置31の一端側を取り付けたが、取付プレート24に延出部24aを設けずに、ダンパ装置31の一端側を外壁部15に取り付けてもよい。この場合、ダンパ装置31の一端側を例えば外壁部15の下地フレーム22に取り付けることが考えられる。
【0068】
また、これと同様に、上記第3の実施形態においても、取付プレート24に延出部24bを設けずに、棒状部材54の一端部を外壁部15に取り付けるようにしてもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、屋根部11が切妻式となっていたが、屋根部が寄せ棟式である場合にも傾斜屋根部が存在する。そのため、その場合に、傾斜屋根部の軒先の下方に庇部が設けられている場合に、その庇部に本発明の取付構造を適用してもよい。また、傾斜屋根部からの落雪は必ずしも軒先で生じるとは限らず、けらば等、軒先以外でも生じる可能性がある。そのため、軒先の下方位置とは異なる位置に配置されている庇部に本発明の取付構造を適用してもよい。
【0070】
また、陸屋根等、傾斜屋根部以外の屋根においても落雪が生じる可能性はあるため、かかる屋根下にある庇部に本発明の取付構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…建物、13…傾斜屋根部、14…軒先、15…外壁部、17…ソーラパネル、18…庇部、24…庇取付部としての取付プレート、27…回動軸、31…緩衝手段及び粘弾性ダンパとしてのダンパ装置、41…緩衝手段としてのゴム材、54…緩衝手段としての棒状部材。