IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎エナジーシステム株式会社の特許一覧

特許7107647無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置
<>
  • 特許-無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置 図1
  • 特許-無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置 図2
  • 特許-無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置 図3
  • 特許-無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置 図4
  • 特許-無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置 図5
  • 特許-無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置 図6
  • 特許-無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20220720BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220720BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220720BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G08G1/00 X
G06T7/00 660B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017132907
(22)【出願日】2017-07-06
(65)【公開番号】P2019016150
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 哲也
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191264(JP,A)
【文献】特開2016-218895(JP,A)
【文献】特開2015-191641(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人タクシー車両が、道路上で自車両に乗車する可能性のある見込み客を獲得するための無人タクシー制御方法であって、
コンピュータが、前記自車両外側の情景を撮影する車載カメラの映像に基づき、人物を検出する手順と、
コンピュータが、検出した前記人物の姿勢の特徴に基づいて、前記人物が見込み客か否かを識別する手順と、
コンピュータが、前記自車両の現在位置と、見込み客と識別された前記人物の現在位置とに基づいて、前記自車両が前記人物に接近して停車するように前記自車両の移動を制御する手順と、
を有し、
前記人物の姿勢の特徴は、前記人物が歩道側から車道側に身を乗り出す姿勢を含み、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の左前方である場合、コンピュータが、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御し、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の右前方である場合、コンピュータが、前記自車両がUターンするための移動経路を作成し、作成した前記移動経路に従って前記自車両の移動を制御し、前記自車両のUターンが完了した後、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御する、
ことを特徴とする無人タクシー制御方法。
【請求項2】
無人タクシー車両が、道路上で自車両に乗車する可能性のある見込み客を獲得するための無人タクシー制御装置であって、
前記自車両外側の情景を撮影する車載カメラと、
前記車載カメラの映像に基づき、人物を検出する人物検出部と、
前記人物検出部が検出した前記人物の姿勢の特徴に基づいて、前記人物が見込み客か否かを識別する乗客候補識別部と、
前記自車両の現在位置と、見込み客と識別された前記人物の現在位置とに基づき、前記自車両が前記人物に接近して停車するように前記自車両の移動を制御するタクシー移動制御部と、
を備え、
前記人物の姿勢の特徴は、前記人物が歩道側から車道側に身を乗り出す姿勢を含み、
前記タクシー移動制御部は、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の左前方である場合、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御し、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の右前方である場合、前記自車両がUターンするための移動経路を作成し、作成した前記移動経路に従って前記自車両の移動を制御し、前記自車両のUターンが完了した後、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御する、
ことを特徴とする無人タクシー制御装置。
【請求項3】
前記乗客候補識別部は、道路上でタクシーを利用する可能性の高い人物の姿勢の特徴を表すデータを事前に登録した基準姿勢テーブルを有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の無人タクシー制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タクシーの運行サービスにおいては、タクシーを必要とする乗客に対して効率よく各車両を配車することや、運転手の負担を軽減することが望まれている。また、将来的にはコンピュータの自動運転により無人でタクシーを運行可能にすることも想定される。
【0003】
例えば特許文献1に示されたタクシー配車システムは、タクシー送迎を依頼した乗客を迅速かつ、確実にピックアップするための技術を示している。具体的には、携帯電話端末から、乗客の画像と位置情報をコントロールセンターへ送ると、コントロールセンターは稼動中のタクシーから最適なタクシーを検索して該当タクシーの運転手に送迎指令を出す。また、コントロールセンターは受付番号を乗客の携帯電話端末へメール通知し、該当タクシーの車載システムへ受付番号と、乗客の位置情報と乗客の画像を送信する。車載システムは、モニタ画面の地図上に乗客の位置を表示し、送迎場所に到着すると、モニタ画面に受付番号と、乗客の画像を表示する。
【0004】
また、特許文献2のタクシー用判定装置は、乗客を探す際に、自車両前方を撮影した映像に基づいてタクシー乗車希望者を自動判定するための技術を示している。すなわち、自車両前方を撮影する撮影手段と、撮影した映像中の人物の顔を認識する顔認識手段と、撮影した映像中の人物の腕を認識する腕認識手段と、これらの認識結果に基づいて自車両前方の人物がタクシー乗車希望者であるか否かを判定する判定手段とを備えている。また、撮影した映像中の人物について、顔が自車両であるタクシーを向いていると認識し、かつ、腕が上がっていると認識したときに、タクシー乗車希望者であると判定することを示している。
【0005】
また、特許文献3には、実際に存在する見込み客の位置を正確に把握するための見込み客位置情報検出システムが開示されている。すなわち、特徴記憶手段は、乗客の特徴を記憶し、人物抽出手段は、位置情報と関連付けられた画像データから人物画像を抽出する。判定手段は、抽出された人物画像を乗客の特徴と比較して、その人物画像が見込み客を示しているか判定する。送信手段は、見込み客を示していると判定された人物画像を含む画像データに関連付けられた位置情報を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-250614号公報
【文献】特開2012-14482号公報
【文献】特開2016-126405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献2や特許文献3の技術を利用すれば、タクシー車両を利用する可能性のある見込み客を、カメラで撮影した映像から自動的に探すことができるので、タクシー運転手の負担を減らしたり、タクシー車両を効率的に配車することが可能になる。
【0008】
しかしながら、このような従来技術においては人間の乗務員がタクシー車両を運転する場合を前提としているので、実際に見込み客を迎えに行くためのタクシー車両の運転は、乗務員の判断及び運転操作にゆだねられている。したがって、運転手を必要としない完全自動運転車両が実用化されたとしても、その車両を無人タクシーとして効率よく利用するための技術はまだ存在しない。
【0009】
すなわち、特許文献2や特許文献3の技術を利用することにより、見込み客を自動的に探すことが可能であるが、その見込み客を実際の乗客として獲得するためには、運転手の判断と運転操作が必要になる。もしも完全自動運転車両のタクシーに特許文献2や特許文献3の技術を適用したとしても、必ずしも効率よく乗客を獲得できるとは限らない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、空車で流し運転状態の無人タクシー車両が、タクシーを必要とする道路上の見込み客を、実際の乗客として効率よく獲得するために役立つ無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置は、下記(1)~(3)を特徴としている。
(1) 無人タクシー車両が、道路上で自車両に乗車する可能性のある見込み客を獲得するための無人タクシー制御方法であって、
コンピュータが、前記自車両外側の情景を撮影する車載カメラの映像に基づき、人物を検出する手順と、
コンピュータが、検出した前記人物の姿勢の特徴に基づいて、前記人物が見込み客か否かを識別する手順と、
コンピュータが、前記自車両の現在位置と、見込み客と識別された前記人物の現在位置とに基づいて、前記自車両が前記人物に接近して停車するように前記自車両の移動を制御する手順と、
を有し、
前記人物の姿勢の特徴は、前記人物が歩道側から車道側に身を乗り出す姿勢を含み、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の左前方である場合、コンピュータが、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御し、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の右前方である場合、コンピュータが、前記自車両がUターンするための移動経路を作成し、作成した前記移動経路に従って前記自車両の移動を制御し、前記自車両のUターンが完了した後、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御する、
ことを特徴とする無人タクシー制御方法。
【0012】
上記(1)の構成の無人タクシー制御方法によれば、無人タクシー車両が空車状態で道路上を流し運転している時に、タクシーを必要としている見込み客を自動的に検知し、この見込み客に向かって直ちに接近し乗車できるように停車することができる。したがって、他のタクシーよりも先に、この見込み客を実際の乗客として獲得することが可能になる。
更に、見込み客が道路の左右のどちら側に存在する場合であっても、適切な移動経路を通って無人タクシーで直ちに迎えに行くことができる。例えば、自車両が走行している道路の対向側の車線を跨いだ反対側の位置(自車両から視て道路の右側)に見込み客が存在するような場合には、自車両がUターンするような移動経路を通ることにより、見込み客が乗車できるように接近して停車することができる。したがって、道路の左右どちら側に存在する見込み客も実際の乗客として獲得できる。
【0013】
(2) 無人タクシー車両が、道路上で自車両に乗車する可能性のある見込み客を獲得するための無人タクシー制御装置であって、
前記自車両外側の情景を撮影する車載カメラと、
前記車載カメラの映像に基づき、人物を検出する人物検出部と、
前記人物検出部が検出した前記人物の姿勢の特徴に基づいて、前記人物が見込み客か否かを識別する乗客候補識別部と、
前記自車両の現在位置と、見込み客と識別された前記人物の現在位置とに基づき、前記自車両が前記人物に接近して停車するように前記自車両の移動を制御するタクシー移動制御部と、
を備え、
前記人物の姿勢の特徴は、前記人物が歩道側から車道側に身を乗り出す姿勢を含み、
前記タクシー移動制御部は、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の左前方である場合、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御し、
検出された前記見込み客の人物の位置が前記自車両の右前方である場合、前記自車両がUターンするための移動経路を作成し、作成した前記移動経路に従って前記自車両の移動を制御し、前記自車両のUターンが完了した後、左折用方向指示器の点滅を直ちに開始すると共に、前記自車両が左寄りの位置に移動して前記見込み客の人物に接近するように前記自車両の移動を制御する、
ことを特徴とする無人タクシー制御装置。
【0014】
上記(2)の構成の無人タクシー制御装置によれば、無人タクシー車両が空車状態で道路上を流し運転している時に、タクシーを必要としている見込み客を自動的に検知し、この見込み客に向かって直ちに接近し乗車できるように停車することができる。したがって、他のタクシーよりも先に、この見込み客を実際の乗客として獲得することが可能になる。
更に、見込み客が道路の左右のどちら側に存在する場合であっても、適切な移動経路を通って無人タクシーで直ちに迎えに行くことができる。例えば、自車両が走行している道路の対向側の車線を跨いだ反対側の位置(自車両から視て道路の右側)に見込み客が存在するような場合には、自車両がUターンするような移動経路を通ることにより、見込み客が乗車できるように接近して停車することができる。したがって、道路の左右どちら側に存在する見込み客も実際の乗客として獲得できる。
【0019】
) 前記乗客候補識別部は、道路上でタクシーを利用する可能性の高い人物の姿勢の特徴を表すデータを事前に登録した基準姿勢テーブルを有する、
ことを特徴とする上記(2)記載の無人タクシー制御装置。
【0020】
上記()の構成の無人タクシー制御装置によれば、道路上でタクシーを利用する可能性の高い人物(見込み客)の姿勢の特徴と、実際の映像から検出した人物の姿勢とを比較できるので、検出した各人物が見込み客か否かを容易に識別できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置によれば、空車で流し運転状態の無人タクシー車両が、タクシーを必要とする道路上の見込み客を、実際の乗客として効率よく獲得できる。
【0022】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態の無人タクシー制御装置を搭載した無人タクシー車両の車室内で後部側から前方を視た状態の具体例を示す正面図である。
図2図2は、図1の無人タクシー車両上に搭載された主要な構成要素を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態のタクシーメータシステムに含まれる外部サーバの構成例を示すブロック図である。
図4図4は、無人タクシー車両におけるタクシーメータシステムの動作の概要を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施形態の無人タクシー制御装置における乗客探索処理の動作例を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態の無人タクシー制御装置における迎車処理の動作例を示すフローチャートである。
図7図7は、乗客の乗車から降車までの間のタクシーメータ車載器の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
まず、システムの概要を説明する。
本発明の無人タクシー制御装置は、例えばタクシーメータ車載器に内蔵された機能としてタクシー車両に搭載される。また、このタクシーメータ車載器と車両外の適当な箇所に設置される外部サーバとでタクシーメータシステムを構成する。タクシーメータ車載器と、外部サーバとの間は無線通信により接続され、これらの間で必要なデータの送受信を相互に実施する。無人タクシーの運行に必要な各種制御は、タクシーメータ車載器、および外部サーバのいずれか一方の制御、又は両者の協調的な制御により実施される。
【0026】
次に、無人タクシーの車室内の構成例を説明する。
本発明の実施形態のタクシーメータシステムを使用する無人タクシー車両の車室内で後部側から前方を視た状態の具体例を図1に示す。
【0027】
図1に示した例では、無人タクシー車両の前方窓(ウインドシールド)の上部中央付近に車載カメラ17、マイク18、およびディスプレイ21aが配置されている。車載カメラ17は無人タクシー車両の後部座席等に着座している乗客の様子を撮影できるように配置されている。マイク18は、乗客の音声やその他の車室内の音響を検出できるように配置されている。ディスプレイ21aは後部座席等に着座している乗客が視認しやすい状態で配置されており、無人のタクシー車両において乗客が必要とする様々な情報を表示するために利用される。
【0028】
また、後部座席前方の中央部には、タクシー料金の決済を行うために必要な決済端末16およびプリンタ16Aが配置されている。この決済端末16は、乗客が所持しているスマートフォン22との間で通信を行い、クレジットカードなどを利用して電子的に運賃の料金決済を行うために必要な機能を搭載している。プリンタ16Aは、料金決済した際に領収書を発行するために備わっている。
【0029】
決済端末16の右側には、ETC(電子料金収受:Electronic Toll Collection)車載器23が設置されている。このETC車載器23を用いて乗客が料金の支払いを行うこともできる。また、後部座席前方の左側方の位置に、マイク付きリモコン19が設置されている。このマイク付きリモコン19は、乗客の操作用の端末であり、無人タクシーにおいて行き先などの情報を入力したり、乗客が必要とする情報を表示するために利用される。マイク付きリモコン19のマイクを利用して行き先などの情報を音声で入力することもできる。マイク付きリモコン19の代わりに、各乗客が所持しているスマートフォン22を用いて操作することも可能である。
【0030】
また、後部座席前方右側の位置に、スピーカ20が配置されている。このスピーカ20は、乗客に対して音声によるアナウンスなどを行うために設けてある。例えば、タクシーが目的地へ到着した際に、それを乗客に知らせるためにスピーカ20から音声のメッセージを出力する。
【0031】
次に、無人タクシー車両上の主要な構成要素を説明する。図1の無人タクシー車両上に搭載された主要な構成要素を図2に示す。
【0032】
図2に示したタクシーメータ車載器10には、タクシー管理部11、乗客状態検知部12、無線通信モジュール13、乗降検知部14、GPS受信機15、決済端末16、プリンタ16A、および音声合成部24が備わっている。
【0033】
タクシー管理部11は、マイクロコンピュータを主体とする電気回路で構成されており、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、タクシーメータ車載器10に必要とされる各種機能を実現する。
【0034】
一般的なタクシーメータの場合には、「空車」、「実車」、「支払い」等のタクシーの状態が運転手のボタン操作で切り替わるが、無人タクシーの場合には、運転手が存在しないので、タクシーメータの状態の切替を自動的に実施する必要がある。そこで、本実施形態では、タクシー管理部11が組み込まれたプログラムに基づき状態を自動識別するか、又は図3に示した外部サーバ30からの指示を受けて、タクシーメータの状態を自動的に切り替える。
【0035】
乗客状態検知部12の入力には、複数の車載カメラ17、17B、およびマイク18が接続されている。車載カメラ17Bは、車室内に固定された状態で設置されており、一般的な車両の運転手の視界と同じように、自車両の進行方向前方における道路などの情景を被写体として撮影できるように位置決めされている。
【0036】
乗客状態検知部12は、車載カメラ17が撮影した車室内の乗客の映像や、マイク18が集音した音声の信号を監視してリアルタイムで解析することにより、この無人タクシー車両に乗車している乗客の状態を検知する。検知する乗客の状態には、健康状態を表す情報も含まれる。映像の解析により、乗客の乗降を検知することもできる。
【0037】
また、空車状態の自車両が乗客となり得る人物、すなわち見込み客を探しながら流し状態で運行している時には、乗客状態検知部12は、車載カメラ17Bが撮影した車外の映像を画像処理して監視することにより、見込み客を検出することができる。見込み客を検出するための詳細な動作については後で説明する。
【0038】
無線通信モジュール13は、無人タクシーの運行中に、タクシーメータ車載器10と図3に示した外部サーバ30との間で常時データの送受信ができるように無線接続するための通信モジュールである。
【0039】
乗降検知部14は、タクシー車両のドアの開閉を表す信号SG2や、乗客の座席への着座を検知するスイッチの信号SG3を監視することにより、乗客の乗車、および降車を検知することができる。なお、映像や音声に基づいて乗客状態検知部12が乗客の乗降を検知する場合には、乗降検知部14はなくてもよい。
【0040】
GPS(Global Positioning System)受信機15は、GPS等の複数の衛星からの電波を受信して所定の演算処理を実施することにより、タクシー車両の現在位置(緯度/経度)を表す位置情報を取得することができる。
【0041】
自動運転制御部21は、タクシー等の車両を自動運転するための様々な制御を実施する。すなわち、行き先や行き先までの走行経路の情報が入力された場合に、自動運転制御部21が状況を適切に把握しながら、車両のアクセル操作、ステアリング操作、ブレーキ操作などの運転動作を自動的に制御して車両を無人で目的地である行き先まで運行する。道路の状況、道路と自車両との位置関係、自車両と他車両あるいは障害物との位置関係を把握するために、図示しない複数の車載カメラで車外各部の映像を撮影して解析したり、レーダ装置を利用する。
【0042】
図2に示したタクシー管理部11は、自動運転制御部21と接続されているので、行き先や行き先までの走行経路の情報をタクシー管理部11から自動運転制御部21に入力することができる。また、自動運転制御部21が把握している様々な車両情報をタクシー管理部11は取得することができる。
【0043】
タクシーメータがタクシーの運賃を算出する際には、タクシーの走行距離の情報が必要になる。したがって、タクシー管理部11は、一般的なタクシーメータと同じように、車両側から与えられる車速パルス信号SG1を監視して走行距離を把握する。すなわち、車速パルス信号SG1のパルス数を計数することにより、乗客の乗車地点からの走行距離を算出する。
【0044】
音声合成部24は、タクシー管理部11が出力するデータに基づいて、そのメッセージを表す疑似音声信号を合成しスピーカ20に与えることができる。したがって、例えば「目的地に到着しました」などの音声メッセージをスピーカ20から出力することができる。
【0045】
また、タクシー管理部11は自車両のドアロック機構(図示せず)の施錠/解錠を制御するためのドアロック信号SG4を生成し、ドアロック機構に与えることができる。
【0046】
一方、乗客のスマートフォン22は、所定のカードリーダ22Aを接続した状態で、乗客が所持しているクレジットカード25の情報を読み取ることができる。また、スマートフォン22上で料金決済のための所定のアプリケーションソフトウェアを実行することにより、決済端末16との間で通信を行い、クレジットカード25から読み取った情報を決済端末16に与えたり、クレジットカード25の本人認証に必要な暗証番号などの情報を入力して、運賃の料金決済を行うことができる。決済端末16は、クレジットカード25の情報を管理している車両外部の管理センタとの間で、無線通信モジュール13を介して無線通信を行い、料金決済のために必要な手続きを行うことができる。
【0047】
次に、外部サーバの構成例を説明する。
本発明の実施形態のタクシーメータシステムに含まれる外部サーバ30の構成例を図3に示す。この外部サーバ30は、例えば所定のデータセンタ内に設置される。また、図3に示すように外部サーバ30には無線通信装置38が接続されている。無線通信装置38は、各無人タクシー車両に搭載されているタクシーメータ車載器10との間で無線通信するために必要な通信回線を確保する。
【0048】
外部サーバ30は、サーバとして動作可能なコンピュータの本体と、大容量記憶装置、通信装置などにより構成されている。この外部サーバ30は、無線通信装置38を経由して各タクシーメータ車載器10と接続されているので、タクシーメータ車載器10との間でデータの送受信を行うことにより、タクシーメータ車載器10を遠隔操作することができる。
【0049】
図3に示した外部サーバ30の内部には、経路算出部31、料金算出部32、車両点検部33、配車処理部34、情報提供部35、乗客管理部36、地図情報データベース(DB)37a、車両情報データベース37b、乗車需要データベース37c、商業施設データベース37d、および個人情報データベース37eの各機能が含まれている。
【0050】
経路算出部31は、各無人タクシー車両について、乗客から指定された行き先情報と、車両の現在位置と、地図情報データベース37aとに基づき、現在位置から行き先までの道路上の経路を表す適切な走行経路を算出する機能を有している。
【0051】
料金算出部32は、該当するタクシー車両の運行に関して事前に定めた料金体系と、乗客が乗車した時点からの該当するタクシー車両の実際の走行距離、経過時間などに基づいて、適切な料金(運賃)を自動的に算出する機能を有している。
【0052】
車両点検部33は、例えば車両各部の油圧、水温、電源電圧、電流、車速、エンジン回転速度等を表す車両情報を各タクシー車両から定期的に取得して、車両情報データベース37bに蓄積し管理する。また、車両点検部33は車両情報データベース37bが蓄積している車両情報を自動的に解析して、当該車両の異常の有無を識別する。異常を検知した場合には、車両点検や整備のための処置を実行する。
【0053】
配車処理部34は、各タクシー車両から取得した行き先や乗客が乗車した位置の位置情報を乗車需要データベース37cに蓄積して管理する。また、配車処理部34は、乗車需要データベース37cに蓄積されている様々な位置情報を解析することにより、地点毎の乗車需要の大きさの予想値を算出する。また、配車処理部34は、現在空車状態の各タクシー車両に対して、乗車需要の予想値が大きい地点に優先的に移動して待機するように指示を与える。
【0054】
情報提供部35は、各無人タクシー車両に乗車している乗客に対して、該当する乗客が必要とする商業施設情報を商業施設データベース37dから自動的に抽出して該当する車両に提供する。
【0055】
商業施設データベース37dは、様々な商業施設について、例えば該当する商業施設の種類、営業時間、料金などの情報を所在地の位置情報に対応付けて保持しており、必要に応じて最新の情報に更新される。したがって、情報提供部35は各乗客の現在位置や行き先の位置に近い商業施設の情報を自動的に抽出できる。
【0056】
また、事前に個人情報の利用を承諾した乗客については、情報提供部35は、過去に利用した際の乗車地点、行き先、各地点の近傍に存在する商業施設の種類などの個人情報を、ユーザ毎に個別に個人情報データベース37eで蓄積して管理している。また、個人情報データベース37eで個人情報を管理している乗客に対しては、情報提供部35は該当する個人情報を利用してより適切な商業施設の情報を商業施設データベース37dから抽出する。例えば、過去に利用した可能性の高い商業施設と同じ種類の商業施設の情報を優先的に抽出する。
【0057】
乗客管理部36は、各無人タクシー車両に乗車している各乗客について、健康状態を主体とする状態情報をタクシーメータ車載器10から取得して管理している。そして、乗客に異常が発生したことを検知した場合には、乗客管理部36は特別な処理を実施する。例えば、該当するタクシー車両の予定走行経路を自動的に修正する。これにより、例えば乗客が意識を失った場合や病気を発症したような場合には、無人タクシー車両が行き先(目的地)に到着する前に、近くの病院や警察署に立ち寄って救助を求めることが可能になる。
【0058】
次に、システムの動作の概要を説明する。
無人タクシー車両におけるタクシーメータシステムの動作の概要を図4に示す。
無人タクシー車両の運行を開始する場合には、この無人タクシーを利用する乗客の情報をステップS01で外部サーバ30に自動的に入力する。例えば、乗車前のユーザが電話や携帯端末などを利用してタクシーの配車を要求した場合には、その要求に応じた乗客の情報が外部サーバ30に入力される。
【0059】
この要求に従って、指定先の地点まで無人タクシー車両を運行するように、外部サーバ30がタクシーメータ車載器10に対して配車指定先および走行経路の指示を与える。タクシーメータ車載器10は、この配車指定先および走行経路を自動運転制御部21に与える。その結果、無人タクシー車両は最初の地点からユーザの配車指定先まで自動運転で運行する(S02)。
【0060】
また、ユーザの要求が存在しない場合には、事前に定めた初期情報の地域について、無人タクシー車両が流し運転する(S02)ように外部サーバ30がタクシーメータ車載器10に指示を与える。
【0061】
無人タクシー車両が流し運転している時には、後述するように、タクシーメータ車載器10が所定の乗客探索処理を実行することにより、自車両の乗客となり得る見込み客を、撮影した車外の映像に基づいて自律的に探すことができる。
【0062】
無人タクシー車両が配車指定先に到着した後で、あるいは流し運転している時に、タクシーメータ車載器10又は自動運転制御部21が車載カメラの映像に基づき乗車前の乗客を検知すると(S03)、所定の乗車処理を実施する(S04)。すなわち、ドアの自動開閉を実施して乗客を乗車させた後、マイク付きリモコン19又はスマートフォン22のユーザ操作による行き先情報の入力をタクシーメータ車載器10が受け付ける。そして、入力された行き先情報に基づき、外部サーバ30が行き先までの最適な走行経路を決定する。この走行経路の情報が、タクシーメータ車載器10を経由して自動運転制御部21に入力されると、自動運転制御部21は指定された走行経路に沿って無人タクシー車両を運行する。
【0063】
無人タクシー車両がユーザ(現在乗車している乗客)により指定された行き先に到着すると、外部サーバ30およびタクシーメータ車載器10が所定の終了処理を実施する(S05)。すなわち、乗客の今回の乗車から到着までの運行に関する運賃を確定し、決済端末16による料金の精算を実施する。更に、ドアの解錠および自動開閉を実施して、乗客の降車を完了させる。
【0064】
乗客の降車後、つまり「空車」に切り替わった後で、システムが別の乗客を検知した場合には、ステップS01又はS02に戻って無人タクシー車両の運行を繰り返す。
【0065】
<システムの特徴的な動作>
<概要の説明>
タクシーを効率的に運行するためには、乗客を乗せていない「空車」の状態を減らす必要がある。したがって、「空車」の状態になったタクシーは、なるべく早く新たな乗客を見つける必要がある。また、配車センタなどから特別な配車の指示を受けることができないタクシーの場合には、各タクシー車両が適当な道路上で流し運転をしながら運転手の判断で新たな乗客を探すことになる。
【0066】
一方、図2に示したタクシーメータ車載器10は、運転手が存在しない無人タクシーにおいて、新たな乗客となり得る見込み客を、流し運転をしながら自動的に探索するための「乗客探索」機能を搭載している。
【0067】
<乗客探索処理の説明>
上記の「乗客探索」機能を実現するための乗客探索処理の動作例を図5に示す。すなわち、タクシーメータ車載器10が、図4のステップS02において図5に示した乗客探索処理を実行することにより、上記の「乗客探索」機能を実現する。図5の乗客探索処理について以下に説明する。
【0068】
図5のステップS11では、タクシーメータ車載器10が車載カメラ17Bを利用して、車外風景の映像を撮影する。この撮影は一定の周期で繰り返し実施する。
【0069】
ステップS12では、車載カメラ17Bの撮影した映像の信号をタクシーメータ車載器10内の乗客状態検知部12が画像処理し、人物基準テーブルTB1を利用して、映像の中から人物のパターンを検出する。
【0070】
人物基準テーブルTB1は、タクシーメータ車載器10内の不揮発性メモリ(図示せず)上に用意されており、人物とそれ以外とを区別するために利用可能な様々な特徴を表す基準データ(定数)が基準姿勢テーブルTB1上に予め登録されている。乗客状態検知部12は、入力された映像中の様々なパターンについて、その特徴を人物基準テーブルTB1内の基準データと比較することにより、当該パターンが人物か否かを識別できる。
【0071】
入力された映像中に一人以上の人物が含まれている場合には、S13からS14の処理に進む。ステップS14では、乗客状態検知部12が検出した人物毎に、その姿勢(ポーズ)の特徴をタクシー管理部11が特定する。例えば、人物の顔の向き、視線の方向、片手を挙げている、歩道側から車道側に身を乗り出して(タクシーなど)を探しているなどの姿勢を検出する。
【0072】
次のステップS15では、タクシー管理部11が基準姿勢テーブルTB2を利用して、タクシーに乗る人の基準姿勢と、S14で検出した人物毎の姿勢の特徴とを比較することにより、乗客の候補、すなわち見込み客の人物を検出する。
【0073】
基準姿勢テーブルTB2は、タクシーメータ車載器10内の不揮発性メモリ(図示せず)上に用意されており、タクシーに乗ろうとしている人やタクシーを探している人に特有のポーズの特徴を表す基準データ(定数)が基準姿勢テーブルTB2上に予め登録されている。したがって基準姿勢テーブルTB2を利用することにより、乗客状態検知部12が検出した各人物の姿勢が、タクシーに乗ろうとしている人やタクシーを探している人に特有のポーズの特徴と一致しているかどうかを識別できる。
【0074】
タクシー管理部11が乗客の候補、すなわち見込み客の人物を検出している時には、S16からS17の処理に進む。ステップS17では、タクシー管理部11がS15で検出した見込み客を自車両に乗る予定の乗客として認識する。
【0075】
次のステップS18では、タクシー管理部11が検出した乗客と自車両との相対的な位置関係を、撮影した映像内の位置と車載カメラ17Bの撮影範囲とに基づいて特定し、この乗客が自車両に乗車できる場所に向けて自車両の走行を制御し、その乗車場所で停車するように制御する。つまり、タクシー管理部11がS17で認識した乗客を無人タクシー(自車両)が迎えに行くための「迎車処理」をS18で実行する。
【0076】
<「迎車処理」の具体例>
本発明の実施形態の無人タクシー制御装置における「迎車処理」の動作例を図6に示す。すなわち、図2に示したタクシーメータ車載器10が図5のS18で「迎車処理」を実行する場合の具体的な動作例が図6に示されている。図6の動作例について以下に説明する。
【0077】
ステップS21では、タクシー管理部11は車載カメラ17Bが撮影した映像に基づき、検出した乗客の位置が自車両の左前方/右前方のいずれであるのかを識別する。撮影した映像の中で自車両が走行している車道の左端側に乗客が存在する場合は「左前方」、車道の右端側に乗客が存在する場合は「右前方」とする。「左前方」の場合はS21からS22に進み、「右前方」の場合はS26に進む。
【0078】
ステップS22では、タクシー管理部11は自動運転制御部21に指示を与えて自車両の方向指示器の点滅動作を開始する。すなわち、自車両が現在の走行レーン又は車道左側の走行レーンの左寄りの位置に移動することを周囲の車両の運転手に知らせるために、左折用方向指示器の点滅を開始する。
【0079】
ステップS23では、タクシー管理部11は自動運転制御部21に進路変更の指示を与えて、自車両が現在の走行レーン又は車道左側の走行レーンの左寄りの位置に移動するように制御する。同時に、乗客が存在する位置の近傍を目的地点とする指示をタクシー管理部11が自動運転制御部21に与える。
【0080】
これにより、自車両は低速で移動しながら目的の乗客に近づく。また、自車両が目的地点、すなわち乗客の乗車位置に近づくと、S24からS25に進む。このとき、これから乗客を乗せるので、周囲の車両の運転手に対して注意を喚起するためにハザードランプを点滅する。これにより、乗客を乗せる際の安全性を確保できる。そして、自動運転制御部21が自車両を停車する。また、例えば所定時間が経過した時に自動運転制御部21又はタクシーメータ車載器10がハザードランプの点滅を停止する。
【0081】
一方、乗客が「右前方」の位置に存在する場合には、この乗客の現在位置に基づいて、自車両がUターンするための移動経路の情報を、S26でタクシーメータ車載器10が作成する。また、適切な移動経路をタクシーメータ車載器10だけでは作成できない場合には、自車両の現在位置と、乗客の現在位置とを含む情報をタクシーメータ車載器10が外部サーバ30に送信し、これらの情報に基づいて外部サーバ30が移動経路を作成する。具体的には、道路の形状や、各地点のUターン禁止などの規制情報の条件を考慮して、最短の経路を通って見込み客に接近できるようなUターンのための移動経路を作成する。外部サーバ30は、作成した移動経路の情報をタクシーメータ車載器10に送信する。
【0082】
タクシーメータ車載器10は、S26で作成した移動経路に従って自車両が走行するように、自動運転制御部21に対して指示を与える。自動運転制御部21は、タクシーメータ車載器10から与えられた移動経路に従って、S27で自車両の走行を制御する。そして、自車両のUターンが完了すると、S28からS22に進み、既に説明した動作(S22~S25)を実行する。
【0083】
図6に示した「迎車処理」を実行する場合には、対向する隣の走行レーンを跨いで車道の反対側に見込み客が存在する場合であっても、この見込み客に近い位置まで直ちに無人タクシーである自車両を移動できるので、見込み客を実際の乗客として獲得することができる。
【0084】
<乗客の無人タクシー乗車から降車までの間の動作例>
図4に示したステップS04、S05に相当する乗客の乗車から降車までの間のタクシーメータ車載器の動作例を図7に示す。図7に示した動作について以下に説明する。
【0085】
ステップS31では、タクシーメータ車載器10のタクシー管理部11が、自車両(無人タクシー車両)が「空車」状態で新たな乗客の乗車を検知したか否かを識別する。乗車を検知すると次のステップS32に進む。
【0086】
ステップS32では、タクシー管理部11は自車両(無人タクシー車両)の運行状態を「空車」から「実車」状態に切り替えた後、マイク付きリモコン19又はスマートフォン22によるユーザからの行き先情報の入力を受け付ける。
【0087】
ステップS33では、タクシー管理部11は、GPS受信機15を利用して自車両の現在位置の情報を取得する。
【0088】
ステップS34では、タクシー管理部11は、ステップS32で入力された行き先情報と、ステップS33で取得した現在地の位置情報とを、無線通信モジュール13を経由して外部サーバ30に送信する。
【0089】
一方、外部サーバ30においては、各無人タクシー車両のタクシーメータ車載器10がステップS34で送信する情報を受信すると、この情報に基づいて経路算出部31が該当する無人タクシー車両の適切な走行経路を自動的に算出する。そして、外部サーバ30は算出した予定走行経路を表す経路情報をタクシーメータ車載器10に対して無線送信する。
【0090】
タクシーメータ車載器10のタクシー管理部11は、外部サーバ30が送信する前記経路情報をステップS35で受信すると、次のステップS36の処理に進む。
【0091】
ステップS36では、タクシー管理部11は、外部サーバ30から受信した前記経路情報に基づき、乗客が指定した行き先までの予定走行経路の情報を自動運転制御部21に与える。その結果、自動運転制御部21は自動運転による自車両の運行を開始する。
【0092】
ステップS37では、タクシー管理部11は、「実車」状態における自車両の走行中の処理を実行する。具体的には、車速パルスSG1に基づく走行距離の算出、「実車」に切り替わった時点からの経過時間の算出、現在位置情報の更新、外部サーバ30への各情報の無線送信などをタクシー管理部11が実施する。
【0093】
一方、外部サーバ30においては、料金算出部32が各無人タクシー車両における乗客の料金(運賃)を、タクシーメータ車載器10から送信された最新の情報に基づいて常時算出している。すなわち、事前に定めた基本料金、走行距離に応じた加算料金、経過時間に応じた加算料金などの総和を料金算出部32が料金として算出する。外部サーバ30は、料金算出部32が算出した料金の情報を該当する無人タクシー車両に搭載されたタクシーメータ車載器10に対して逐次無線送信する。
【0094】
タクシーメータ車載器10のタクシー管理部11は、外部サーバ30が送信する料金の情報をステップS38で受信する。そして、最新の料金の情報を受信したタクシー管理部11は、ステップS39で乗客に提示する料金の表示内容を更新する。この料金の表示は、例えばディスプレイ21aの画面、マイク付きリモコン19の画面、スマートフォン22の画面などに表示される。
【0095】
外部サーバ30およびタクシーメータ車載器10の少なくとも一方は、乗客により指定された無人タクシー車両の行き先の位置と、現在位置とを逐次比較することにより、行き先、すなわち目的地に到着したか否かを識別する。行き先の到着すると、ステップS40からS41の処理に進む。
【0096】
ステップS41では、タクシー管理部11の指示により、あるいは外部サーバ30上の料金算出部32の自動識別により、料金算出部32が料金を確定する。これにより、タクシーメータ車載器10の状態は「支払い」状態に移行し、決済処理を実行する。すなわち、料金算出部32が確定した料金に対する乗客の支払いを、決済端末16を用いて処理する。乗客の支払いが完了し、乗客の降車を検知すると、タクシーメータ車載器10の状態は「支払い」から「空車」に自動的に切り替わり、ステップS31又は図4のS06の処理に進んで上記と同じ動作を繰り返す。
【0097】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る無人タクシー制御方法および無人タクシー制御装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 無人タクシー車両が、道路上で自車両に乗車する可能性のある見込み客を獲得するための無人タクシー制御方法であって、
自車両外側の情景を撮影する車載カメラ(17B)の映像に基づき、人物を検出する手順(S12)と、
検出した前記人物の姿勢の特徴に基づいて、前記人物が見込み客か否かを識別する手順(S13~S17)と、
前記自車両の現在位置と、見込み客と識別された前記人物の現在位置とに基づいて、自車両が前記人物に接近して停車するように自車両の移動を制御する手順(S18)と、
を有することを特徴とする無人タクシー制御方法。
【0098】
[2] 無人タクシー車両が、道路上で自車両に乗車する可能性のある見込み客を獲得するための無人タクシー制御装置(タクシーメータ車載器10)であって、
前記自車両外側の情景を撮影する車載カメラ(17B)と、
前記車載カメラの映像に基づき、人物を検出する人物検出部(乗客状態検知部12、S12)と、
前記人物検出部が検出した前記人物の姿勢の特徴に基づいて、前記人物が見込み客か否かを識別する乗客候補識別部(タクシー管理部11、S13~S17)と、
自車両の現在位置と、見込み客と識別された前記人物の現在位置とに基づき、前記自車両が前記人物に接近して停車するように前記自車両の移動を制御するタクシー移動制御部(タクシー管理部11、S18)と、
を備えたことを特徴とする無人タクシー制御装置。
【0099】
[3] 前記タクシー移動制御部は、前記車載カメラの映像に含まれる前記見込み客の人物と前記自車両との相対的な位置関係を特定し、前記位置関係に基づき前記自車両の移動方向を決定する(S18)、
ことを特徴とする上記[2]に記載の無人タクシー制御装置。
【0100】
[4] 前記タクシー移動制御部は、検出された前記見込み客の人物が、前記自車両の左右いずれの方向に存在するかに応じて、異なる移動経路を選択する(S21~S25)、
ことを特徴とする上記[3]に記載の無人タクシー制御装置。
【0101】
[5] 前記乗客候補識別部は、道路上でタクシーを利用する可能性の高い人物の姿勢の特徴を表すデータを事前に登録した基準姿勢テーブル(TB2)を有する、
ことを特徴とする上記[2]乃至[4]のいずれかに記載の無人タクシー制御装置。
【符号の説明】
【0102】
10 タクシーメータ車載器
11 タクシー管理部
12 乗客状態検知部
13 無線通信モジュール
14 乗降検知部
15 GPS受信機
16 決済端末
16A プリンタ
17,17B 車載カメラ
18 マイク
19 マイク付きリモコン
20 スピーカ
21 自動運転制御部
21a ディスプレイ
22 スマートフォン
22A カードリーダ
23 ETC車載器
24 音声合成部
25 クレジットカード
30 外部サーバ
31 経路算出部
32 料金算出部
33 車両点検部
34 配車処理部
35 情報提供部
36 乗客管理部
37a 地図情報データベース
37b 車両情報データベース
37c 乗車需要データベース
37d 商業施設データベース
37e 個人情報データベース
38 無線通信装置
SG4 ドアロック信号
TB1 人物基準テーブル
TB2 基準姿勢テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7