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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】彩紋表示物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20220720BHJP
   B42D 25/337 20140101ALI20220720BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/337
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017154163
(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公開番号】P2019031037
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591064379
【氏名又は名称】昌栄印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】信濃 義朗
(72)【発明者】
【氏名】田渕 健一
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184134(JP,A)
【文献】特開2011-022478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B42D 25/337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形、楕円形、多角形、直線、波状線、弧線の複数の組み合わせで構成される幾何学模様が印刷される彩紋表示物であって、
前記幾何学模様を構成する前記複数の組み合わせのそれぞれは、基準点から同心円状に規則的に複数配置された描線の数、描線の太さ、配置順位又は線の色の違いによって特定の識別子が割り当てられ、
前記特定の識別子が割り当てられた前記幾何学模様の複数が、前記基準点を同じくして重ね合わされて表示されることにより複数の前記特定の識別子の組合せを表示し、
当該組合せの識別子を表示する前記複数の幾何学模様が、一定の権利や価値を表象する証券類又はカード上に印刷表示されることにより、当該証券類又はカードの識別又は認証に用いられる、ことを特徴とする彩紋表示物。
【請求項2】
前記幾何学模様は、図形の軌跡に別の軌跡で図形を描画することにより、前記基準点から規則的に配置される複数の前記描線が描画される請求項1に記載の彩紋表示物。
【請求項3】
複数の前記幾何学模様は階層化され、前記階層に沿った配列で前記識別子が割り付けられる請求項1又は2に記載の彩紋表示物。
【請求項4】
前記特定の識別子が、数字の0乃至9の何れか一つの数字を表すことを特徴とする請求項3に記載の彩紋表示物。
【請求項5】
前記軌跡同士が一部で重なる請求項に記載の彩紋表示物。
【請求項6】
前記一定の権利や価値を表象する証券類は、商品券、ギフトカードを含む有価証券、手形、小切手を含む債権証券、物権証券、株券、社員証券、受益証券又は金券である請求項1乃至の何れかの項に記載の彩紋表示物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、彩紋を表示している彩紋表示物に関する。
【背景技術】
【0002】
この明細書での「彩紋表示物」とは、一般的には、商品券、ギフトカード、図書券等の有価証券、手形、小切手、預り証券、地方債証券等の債権証券、質入証券等の物権証券、株券、投資証券等の社員証券、投資信託等の受益証券、収入印紙、郵便切手等の金券類、入場券等の一定の権利や価値を表象する証券類、及び、個人や個人の権限を識別するIDカード、アクセスカード等の彩紋が印刷される各種媒体を指すが、こうした紙等による媒体に限らず、画面表示プラグラムにより彩紋を表示することができるスマートフォン等の可搬ターミナルも含むものとする。
【0003】
彩紋とは、円形、楕円形、多角形、直線、波状線、弧線等の組み合わせで構成される幾何学模様であり、かつては、彩紋彫刻機と呼ばれる特殊な機械的歯車やギアを複雑に組み合わせて作成するため、経験を積んだ専門の熟練者によってしか描画できなかった。そのため、彩紋を再現することはかなりの困難を伴うことから、有価証券等のセキュリティ印刷物の偽造防止策の一つとして用いられてきた。
【0004】
しかしながら、デジタル技術が発達した昨今では、彩紋を複写し、補正をかけながら、同様な彩紋を複製することは比較的容易な状況となってきている。こうした偽造や変造への対策としては、彩紋は描線が複雑な繰り返しで描画されることから、この規則的な配置に情報を埋め込む技術が知られており、この情報を識別することで高精度での真偽判別を可能にし、又はその情報に基づき偽造等に利用する複写機等デジタル機器の動作停止等のアクションを可能にしている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5652787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、彩紋は緻密且つ重厚感が感じられる芸術性を有する幾何学模様であるため、それ自体に社会的な価値を有する媒体に印刷したとき親和性がよく、媒体の装飾性の面でその下地模様に広く採用されている。
【0007】
その場合、媒体個々の識別番号等の識別子、例えば、有価証券であれば当該有価証券に割り振られた通し番号、またIDカードであれば所有者のID番号に対応した模様の彩紋を媒体の表面に印刷すれば、彩紋の模様を通して当該彩紋が印刷された媒体の識別子を機械的に読み取ることができるようになる。
【0008】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、印刷されている彩紋が印刷物(媒体)の固有の識別子を表す彩紋表示物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の彩紋表示物は、円形、楕円形、多角形、直線、波状線、弧線の複数の組み合わせで構成される幾何学模様が印刷される彩紋表示物であって、前記幾何学模様を構成する前記複数の組み合わせのそれぞれは、基準点から同心円状に規則的に複数配置され描線の数、線の太さ配置順位又は線の色の違いによって特定の識別子が割り当てられ、前記特定の識別子が割り当てられた前記幾何学模様の複数が、前記基準点を同じくして重ね合わされて表示されることにより複数の前記特定の識別子の組合せを表示し、当該組合せの識別子を表示する前記複数の幾何学模様が、一定の権利や価値を表象する証券類又はカード上に印刷表示されることにより、当該証券類又はカードの識別又は認証に用いられる、ことを特徴とする
【0011】
又は、前記幾何学模様は、図形の軌跡に別の軌跡で前記図形を描画することで、前記基準点から規則的に配置される複数の前記描線を描画することができる。このとき、前記軌跡同士が一部で重なっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
彩紋表示物は、印刷されている彩紋で当該印刷物の識別子が表されているために、偽造又は変造や、紛失・盗難等の事故が起きた印刷物を容易に特定して追跡でき、彩紋表示物の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る彩紋表示物を提供する彩紋印刷システムの全体構成の説明図を示す。
図2】彩紋表示物としての有価証券を例示する説明図を示す。
図3図1の彩紋印刷システムを構成する印刷制御部の具体的な構成をブロック図で示す。
図4A】彩紋表示物される彩紋の例を示し、通し番号の下1桁目の0から9までの各数値に対応している幾何学模様を示す。
図4B】有価証券等に表記される彩紋の例を示し、通し番号の下2桁目の0から9までの各数値に対応している幾何学模様を示す。
図4C】有価証券等に表記される彩紋の例を示し、通し番号の下3桁目の0から9までの各数値に対応している幾何学模様を示す。
図4D】有価証券等に表記される彩紋の例を示し、通し番号の下4桁目の0から9までの各数値に対応している幾何学模様を示す。
図5図2の有価証券に印刷されている彩紋を拡大して示す。
図6】印刷制御部による有価証券9の印刷を制御する動作を説明するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、媒体に彩紋を印刷して本発明に係る彩紋表示物を提供する彩紋印刷システム10の構成の実施例を示す図で、本例においては媒体としての有価証券に彩紋を印刷する。彩紋印刷システム10は、有価証券を印刷するためのデジタルプリンタ1と、処理装置2と、イメージスキャナー5とを備える。
【0015】
デジタルプリンタ1は、プリント・オン・デマンド(Print
On Demand)を実現するプリンタであり、インクジェットやレーザー、電子写真(トナー)、昇華転写、熱溶融転写又はデジタルオフセットなどの各方式による周知のプリンタが使用される。
【0016】
処理装置2は、メモリ7を備える汎用のコンピュータで構成されて、所定のプログラムを実行することで、デジタルプリンタ1に有価証券の券面に印刷するための画像情報を供給する印刷制御部3と、イメージスキャナー5が有価証券から取得した画像情報に基づき当該有価証券の真偽を判別する解析部4の各機能を実現する。イメージスキャナー5と解析部4は、処理装置2とは異なる別の装置に格納されてもよい。また、有価証券から画像情報を取得するには、カメラ等の撮像装置を用いてもよい。また、別の実施例としては、印刷制御部3を有する第1の処理装置と、解析部4を有する第2の処理装置とに、処理装置2を分割することも可能である。その場合、メモリ7は、第1及び第2の処理装置の何れからも参照可能な構成となる。
【0017】
図2は、デジタルプリンタ1が印刷する有価証券9、例えば商品券の一例を示している。この有価証券9は、彩紋8が印刷されると共に、「○○商店街共通」に使用できること、「¥1,000」の価値を有する券であること、記番号が「010123」であることなどの有価証券情報が印刷されている。記番号は同じ種類の有価証券9毎に割り振られる通し番号である。したがって、この実施形態では、記番号が個々の有価証券9毎の識別子となる。そして、彩紋8は、各有価証券9の記番号の数値に基づいてその模様が決定される。よって、一連の通し番号が割り振られた同種の有価証券9であっても、通し番号に応じて模様が異なり、同じ模様の彩紋8が印刷されている有価証券9は存在しない。
【0018】
有価証券9の券面フォーマット、すなわち彩紋8や有価証券情報の券面上での配置箇所、及びこれら有価証券情報を示す具体的な文字や数字は、事前に決定されて、その図形や文字、配置箇所などを表わすコマンドデータを集合させたデジタル文書6で入力されて印刷制御部3に送られる。しかし、有価証券9の券面には、各有価証券9の券面上にそれぞれ異なる独自の彩紋8が印刷されて、この彩紋8記番号である識別子を読み取ることが可能であるため、記番号は特に記載する必要はない。記番号に基づいて、各有価証券9の券面上にそれぞれ異なる独自の彩紋を作成する仕組みについては、後に明らかとなる。
【0019】
図3は、印刷制御部3の機能構成をブロック図で示しており、印刷制御部3は、彩紋作成部11と、印刷する各有価証券9の記番号による識別子を管理する識別子管理部12と、レイヤ13と、ラスターイメージプロセッサRIP(Raster Image Processor)14と、画像メモリ15とを有する。
【0020】
彩紋作成部11は、上述したように、印刷する各有価証券9の記番号の数値に基づいて彩紋8の模様を作成するが、本例では、6桁(列)の記番号のうちの下4桁を対象桁にして、この各桁にそれぞれ0から9までの10通りの幾何学模様が予め設定されている。
【0021】
図4A乃至図4Dはこの幾何学模様を例示しており、図4Aは下1桁目の0から9までの各数値に対応している幾何学模様を示し、図4Bは下2桁目の0から9までの各数値に対応している幾何学模様を示し、図4Cは下3桁目の0から9までの各数値に対応している幾何学模様を示し、図4Dは下4桁目の0から9までの各数字に対応している幾何学模様を示している。このように4桁の各0から9までの数値に対応する40通りの幾何学模様は、メモリ7内に予め確保されている彩紋メモリ16に格納されている。
【0022】
各幾何学模様について説明すると、図4Aに示す幾何学模様は、各角部が弧線で描かれる星形正十角形の図形を、一部に重なっている部分があるものの、それぞれ異なる軌跡で描くことで、同じ図形を規則正しく略同心円状に複数のパターンで描画したものである。これによって、図形の中心の基準点から規則的に配置された複数の描線が描画されている。そして、図4Aの10通りの幾何学模様にはそれぞれに特徴要素を持たせて、0から9までの各数値による識別子がそれぞれ割り振られている。
【0023】
具体的には、図4Aにおいては、識別子「0」(×××0)に相当する幾何学模様は、星形正十角形の図形が7通りのパターンで描画されおり、このパターン毎の描線が規則的に7本配置されていることになる。この場合、何れのパターンの描線も太線で描画されていない。そして、識別子「1」(×××1)乃至「4」(×××4)に相当する各幾何学模様は、何れも同様に星形正十角形の図形が7通りのパターンで描画されているが、それぞれ図形の中心の基準点から1番目、3番目、5番目、7番目の描線は太線で描かれている。また、識別子「5」(×××5)に相当する幾何学模様は、星形正十角形の図形が6通りのパターンで描画されており、何れのパターンの描線も太線で描画されていない。そして、識別子「6」(×××6)乃至「9」(×××9)に相当する各幾何学模様は、何れも同様に星形正十角形の図形が6通りのパターンで描画されているが、それぞれ図形の中心の基準点から2番目、3番目、4番目、5番目の描線は太線で描かれている。このようにして、図4Aにおける各幾何学模様は、パターンの数と何れのパターンの図形を太い描線とするかで10通りの識別子が割り付けられている。よって、図4Aに示す各幾何学模様は、描線の数と、太線の描線の配置順位とを特徴要素として、それぞれ識別子が割り付けられている。
【0024】
図4Bに示す幾何学模様も、同じく各角部が弧線で描かれる星形正十角形の図形を同心円状に複数通りのパターンで描画されているが、この幾何学模様は何れの星形正十角形の図形も重なることなく描画されて、複数の描線が図形の中心の基準点から規則的に配置されている。そして、識別子「0」(××0×)に相当する幾何学模様は、星形正十角形の図形が7通りのパターンで描画されて、何れのパターンの描線も太線で描画されていない。そして、識別子「1」(××1×)乃至「4」(××4×)に相当する各幾何学模様は、何れも同様に星形正十角形の図形が7通りのパターンで描画されているが、それぞれ図形の中心の基準点から1番目、3番目、5番目、7番目の描線は太線で描かれている。また、識別子「5」(××5×)に相当する幾何学模様は、星形正十角形の図形が8通りのパターンで描画されて、何れのパターンの描線も太線で描画されていない。そして、識別子「6」(××6×)乃至「9」(××9×)に相当する各幾何学模様は、何れも同様に星形正十角形の図形が8通りのパターンで描画されているが、それぞれ図形の中心の基準点から2番目、4番目、6番目、7番目の描線は太線で描かれている。よって、図4Bにおける各幾何学模様も、描線の数と、太線の描線の配置順位とを特徴要素として、それぞれ識別子が割り付けられている。
【0025】
図4Cに示す幾何学模様は、互いに隣り合う角部がループ状に繋がっている星形正十角形の図形を、一部に重なっている部分があるものの、それぞれ異なる軌跡で描くことで、同じ図形を規則正しく略同心円状に複数のパターンで描画されている。この場合、識別子「0」(×0××)乃至「4」(×4××)に相当する各幾何学模様は、星形正十角形の角部が曲線形状であるのに対し、識別子「5」(×5××)乃至「9」(×9××)に相当する各幾何学模様は、曲線の角部の先端部は鋭角となる形状に変えている。さらに、星形正十角形の角部が曲線形状の識別子「0」(×0××)乃至「4」(×4××)に相当する各幾何学模様は、略同心円状に配置した7通りのパターンで星形正十角形の図形が描画されている。そして、図4A図4Bで説明したのと同様に、図形の中心の基準点から太線の描線の配置順位を違えることで差別化している。よって、図4Cにおける各幾何学模様は、同種の図形でも一部の形状に特徴要素を持たせて、且つ何れかのパターンの図形を太い描線で描画することで、10通りの識別子が割り付けられている。よって、図4Bにおける各幾何学模様は、描線の数と、それが描く形状を特徴要素として、それぞれ識別子が割り付けられている。
【0026】
図4Dの彩紋もやはり基本は星形正十角形の図形であり、図4Cの彩紋と同様に先端部は鋭角となっているが、ここでは一つ置いて隣り合う同士の角部をループ状に繋げた図形となっている。そして、この図形を、一部に重なっている部分があるものの、それぞれ異なる軌跡で描くことで、同じ図形を規則正しく略同心円状に複数のパターンで描画されていて、図形の中心の基準点から太線の描線の配置順位を違えることで差別化している。よって、太線の描線の配置順位を特徴要素として、それぞれ識別子が割り付けられている。
【0027】
このように、各幾何学模様に識別子を割り付けるための特徴要素としては、上記した描線の太さや数、そして描く形状以外にも、例えば、色や線種がある。
【0028】
図3の説明に戻って、印刷制御部3は、有価証券印刷開始の印刷要求が入力されて有価証券9の印刷を開始する。そして、識別子管理部12は、有価証券9が印刷される度に記番号を1ずつカウントして付与することで、識別子である各有価証券の6桁の記番号を管理する。識別子管理部12は、印刷される度にカウントする機能ではなく、あらかじめ決められたルールに基づき、記番号の大量のデータを作成しておき、それをレイヤ13に順次送り込む機能を持っていてもよい。
【0029】
彩紋作成部11は、識別子管理部12がカウントした記番号の下4桁の各数値に応じた幾何学模様を彩紋メモリ16から抽出し、抽出した幾何学模様を組み合わせることで彩紋8を作成する。例えば、記番号が「010123」の有価証券9の場合には、下4桁の数値「0123」に対応している、図4Aの(×××3)、図4Bの(××2×)、図4Cの(×1××)及び図4Dの(0×××)の各幾何学模様を選択し、これらを一つに組み合わせることで、図5に示す模様の彩紋8が作成される。
【0030】
彩紋メモリ16には複数のファイル25乃至25nが格納されており、彩紋作成部11は、彩紋メモリ16に格納しているファイル25乃至25nから一つのファイルを選択して、このファイルから各桁の数字に対応している彩紋を読み出す。図4A乃至図4Dに示されている4桁の0から9までの数字に対応している40通りの彩紋は、この中の一つのファイル25kに格納されている。
【0031】
レイヤ13は、識別子管理部12が有価証券9の印刷毎に管理している記番号やその記番号に基づき彩紋作成部11で作成される彩紋8を表わすコマンドデータを、印刷する有価証券9の券面フォーマットが示されているデジタル文書6と重ねてラスターイメージプロセッサ14へと送る。デジタル文書6は、券面フォーマットに応じて予め複数設定されており、レイヤ13はこの中から指定のデジタル文書6を選択して上記コマンドデータを重ねる。
【0032】
ソフトウエアであるラスターイメージプロセッサ14は、上記コマンドデータが重ねられたデジタル文書6に表現されている文字、図形などと、記番号に対応し構成された彩紋画像の組み合わせたものを実際にプリンタ出力するための2次元のビットマップイメージへと展開する。
【0033】
画像メモリ15は、展開されたビットマップイメージを一時的に格納することで画像データに変換してデジタルプリンタ1へ受け渡す。これにより、デジタルプリンタ1によって、印刷表示物である有価証券9に彩紋が印刷される。一方、彩紋表示物が可搬ターミナルであれば、この画像データを可搬ターミナルへ出力して、記憶させる。
【0034】
解析部4は、イメージスキャナー5で読み取った有価証券9の彩紋8の画像を彩紋メモリ16に格納している各彩紋とパターンマッチング処理によるパターン認識処理を行うことで、彩紋8を読み取った有価証券9の真贋及び印字画像の正確性を判別する。上記したように、解析部4は、必ずしも処理装置2に組み込まれるものではなく、別の検証装置に組み込まれて、彩紋の構成に関するロジックを共有することで、真贋鑑別を別の主体が実施するよう構成してもよい。
【0035】
上記構成の彩紋印刷システム10において、印刷制御部3による有価証券9の印刷を制御する動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
印刷制御部3は、印刷要求を受信すると、彩紋作成部11は、彩紋メモリ16に格納されている彩紋のファイル25乃至ファイル25nの内から一つのファイルを選択する(ステップS1)。ここでは、印刷制御部3によって、図4A乃至図4Dに示されている彩紋を格納しているファイル25kが選択されたものとする。
【0037】
そして、彩紋作成部11は、彩紋のファイルの選択後、識別子管理部12のカウント値から印刷する有価証券9の枚数が1万枚未満か否かを判別する(ステップS2)。すなわち、カウント値の下4桁の数値が「9999」未満であるか否かを判定する。そして、「YES」で1万枚未満のときには、識別子管理部12は「1」を加算して記番号をカウントする(ステップS4)。但し、最初の1枚目の有価証券9の印刷時のステップS4の処理では、識別子管理部12には初期値の「010000」がセットされるものとする。
【0038】
彩紋作成部11は、識別子管理部12で記番号がカウントされると、カウントした記番号に基づき彩紋8の模様を決定する。この場合、最初の1枚目の有価証券9のときは、記番号の下4桁は「0000」であるから、ステップS1で選択した彩紋ファイル25kから各桁「0」の幾何学模様を抽出して、この4通りの幾何学模様を組み合わせることで彩紋8の模様を作成する(ステップS5)。
【0039】
印刷制御部3は、彩紋作成部11で彩紋が作成されると、レイヤ13によって、入力された券面フォーマットを表わすデジタル文書6に、この彩紋と識別子管理部12がカウントしている記番号「010000」を表わすコマンドデータを重ねてラスターイメージプロセッサ14へと送る(ステップS6)。
【0040】
ラスターイメージプロセッサ14は、デジタル文書をビットマップイメージに展開する(ステップS7)。画像メモリ15は、ビットマップイメージを一時的に格納することで画像データに変換してプリンタ5へ受け渡す(ステップS8)。これにより、プリンタ5は画像データを印刷する。
【0041】
印刷制御部3は、こうして1枚の有価証券9の印刷を終了すると、識別子管理部12のカウント値から有価証券9の印刷枚数が指定枚数に到達したかを判別し(ステップS9)、達していないときにはステップS2の処理に戻る。一方、有価証券9の印刷枚数が指定枚数に到達していると、印刷制御部3は有価証券9の印刷を終了する。尚、彩紋表示物が可搬ターミナルであるときには、ここでの処理は、彩紋の画像データを可搬ターミナルに出力する。
【0042】
ステップS2の処理に戻り、識別子管理部12のカウント値から印刷した商品券の枚数が1万枚未満であることを判別すると、識別子管理部12には1が加算されて記番号「010001」をカウントする(ステップS4)。このとき、記番号の下4桁の数値は「0001」となるため、彩紋作成部11は、4桁目から2桁目まではそれぞれ「0」、1桁目は「1」に対応している幾何学模様を彩紋ファイル25kから抽出して、この4通りの幾何学模様を組み合わせることで彩紋8の模様を作成する(ステップS5)。そして、レイヤ13は、この彩紋8と識別子管理部12による記番号「010001」とをデジタル文書に重ねて(ステップS6)、ラスターイメージプロセッサ3へ出力することで、ビットマップイメージに展開されて(ステップS7)、画像メモリ15で画像データに変換されて(ステップS8)、有価証券9が印刷される。
【0043】
このようにして、印刷制御部3は、有価証券9の印刷指定枚数に未到達の間は、ステップS2からステップS9までの処理を繰り返し、識別子管理部12がカウントした記番号の下4桁の各数値に対応する幾何学模様を組み合わせて彩紋8を作成し、記番号及びこの彩紋を重ねたデジタル文書をラスターイメージプロセッサ14へ出力してビットマップイメージに展開し、さらに画像メモリ15により画像データに変換することで、有価証券9の印刷が行われる。この間、123枚目の記番号が「010123」の有価証券9には、図5に示す模様の彩紋8が印刷される。尚、彩紋表示物が可搬ターミナルであるときには、印刷枚数に応じた台数の可搬ターミナルに各彩紋の画像データを記憶させる。又は1台の可搬ターミナルに画像データを記憶させるか、或いは彩紋を複数に分けてその台数分の可搬ターミナルに分けて記憶させる。
或いは1台の可搬メモリへの彩紋の画像データの出力が終了すると、
有価証券9の印刷指定枚数が1万枚以上の場合には、ステップS2からステップS9までの処理が繰り返されることで、ステップS4において、識別子管理部12は、「010000」から記番号を1ずつ加算していく。そして、1万枚の有価証券9が印刷されたとき記番号は「019999」となり、印刷制御部3は、ステップS2の処理からステップS3の処理となって、彩紋作成部11は、彩紋メモリ16の中からファイル25kとは別のファイルを選択する。
【0044】
そして、ファイルの選択後、ステップS4で識別子管理部12が1を加算すると、記番号のカウント値は「020000」となる。したがって、彩紋作成部11は、新たに選択したファイルから記番号の下4桁「0000」の各数値に対応する幾何学模様を読み出して彩紋8を作成する。レイヤ13は、デジタル文書にこの彩紋と識別子管理部12による記番号「010000」と重ねてラスターイメージプロセッサ3に出力してビットマップイメージに展開し、さらに画像メモリ15により画像データに変換することで、有価証券9の印刷が行われる。
【0045】
以後、同様に、有価証券9の印刷指定枚数に未到達の間は、識別子管理部12が「020000」から「029999」までの記番号をカウントする間は、新たに選択したこのファイルから記番号の下4桁の各数値に対応する幾何学模様を読み出す。そして、これら幾何学模様を組み合わせて彩紋8の模様が作成される。
【0046】
この間に、印刷枚数が指定枚数に到達したときは、有価証券9の印刷が終了するが、指定枚数に到達していなければ、同様に、記憶部25から次の彩紋メモリ16の中からさらに別のファイルをランダムに選択して、識別子管理部12が「030000」から「039998」までの記番号をカウントする間、その記番号の下4桁の彩紋8の模様が作成されて、記番号と共に有価証券9に印刷される。
【0047】
記番号に応じた彩紋を作成する仕組みは、上記のように、印刷が必要とされる枚数に応じて作成していく方法を取ることもできるし、あらかじめ、必要な印刷枚数に対応する彩紋を作成して一旦メモリに格納しておいて、それをデジタル文書6に対応させて、順次レイヤに送り込むことで実現する方法を取ることもできる。
【0048】
このように、各有価証券9に印刷されている彩紋8の模様は、それぞれに記載されている識別子である記番号の数字に関連して決定される。よって、印刷後の有価証券9の彩紋8の模様が作成されるのと逆のプロセスを実行すれば、解析した4桁の数値は、当該有価証券9に記載されている記番号の下4桁の数値と等しいことになる。これを利用して、有価証券9の真贋を鑑別することができる。
【0049】
有価証券9に印刷されている彩紋8から記番号の4桁の部分の識別子を読み取るには、鑑別する有価証券9の彩紋8の画像をイメージスキャナー5やカメラ等の撮像装置で読みとる。そして、読み取った画像を解析部4に送ることで、解析部4は、送られてきた彩紋8の画像を彩紋メモリ16に格納している各彩紋とパターン認識処理を行うことで、彩紋8が図4A乃至図4Dの何れかの4通りの幾何学模様によって構成されているかを判別する。この場合、認識されない幾何学模様があると、偽造又は変造された有価証券であると判別する。
【0050】
そして、解析部4は、パターン認識処理により認識した4通りの幾何学模様に割り付けられている数値を、それぞれ対応している各桁に割り当てて4桁の識別子を検出する。よって、彩紋8から有価証券9の識別子の検出と共に、真贋の判定を行うことができる。
【0051】
真贋判定では、解析部4は、印刷制御部3は表示装置23に割り出した数字を表示することで、人が鑑別する有価証券に記載の記番号と突き合わせて真贋を判定してもよいし、又は印刷制御部3が送られてきた鑑別を行う有価証券の画像から記番号の数値を認識して、解析部4が解析した数値と照合することで、鑑別結果を報知するようにしてもよい。尚、解析部4は、彩紋を参照する場合に、解析するたびに彩紋メモリ16から読み取ってもよいし、予め彩紋メモリ16から読み取って内部メモリに保持している彩紋を参照してよい。
【0052】
解析部4は、処理装置2とは別の装置に格納され、スマートフォン、タブレット端末等からインターネット経由で、解析部に送られた画像データから識別子の検出と真贋判定とを行っても良く、その結果を、スマートフォン、タブレット端末等へ返送する。
【0053】
本発明での識別子に関して、上記の実施形態では、印刷する個々の有価証券9に割り振る記番号としているが、記番号は通し番号による数字列に限らず、アルファベットや仮名文字等による文字の列或いは文字と数字との列によって構成されることもある。例えば、「キハ01234」のような場合である。このような文字を含む記番号を識別子とする場合には、数字列の場合と同様に、全列又は一部の複数列を対象列として、これらの列に表記される文字又は数字にそれぞれ対応させた彩紋を彩紋メモリ16に予め格納しておく。
【0054】
そして、彩紋作成部11は、識別子管理部12が印刷する有価証券9毎に割り振った識別子の対象列の文字又は数字に対応している彩紋を抽出し、これらを組み合わせて彩紋8を作成する。この場合も、彩紋メモリ16に格納している各彩紋とパターン認識処理を行うことで、対象桁の文字又は数字を認識して、当該有価証券9に表記されている識別子とを比較することで、その真贋を鑑別することができる。
【0055】
また、各彩紋に対応する識別子としては暗号化された情報であってもよい。例えば、通し番号の「010123」を所定の暗号キーを用いて暗号化すれば、暗号化した文字又は数字或いは文字と数字も識別子となる。そうすることで、記番号と彩紋との関連性を解析することが一層困難となり、偽造防止の確実性が高まる。さらには、記番号だけでなく、有価証券の表面に印刷されている文字や数字の情報、図2では「○○商店街共通」や「¥1,000」を組み合わせた文章をデータ圧縮し、圧縮したデータを暗号化キーで暗号化したものを識別子としてもよい。
【0056】
本発明に係わる有価証券9は、印刷されている彩紋8の模様が識別子を表わすために、特定の有価証券9の記番号に応じた彩紋8の特徴を、あらかじめ、有価証券9を取り扱う商店等の窓口に通知しておくことで、何らの特別の装置を用いずに、目視において、偽造、変造を識別できる。この場合、偽造、変造された有価証券9に印刷されている彩紋8の注意書を提供することで、贋の有価証券9を速やかに排除できる。また、画像認識では判別できなくとも、拡大鏡などを用いた詳細な目視解析を通じて、彩紋の特徴を分析することができる。
【0057】
上記実施形態では、4通りの幾何学模様を組み合わせて彩紋8を構成し、それぞれの幾何学模様の特徴要素の総合で有価証券9に識別子を割り付けている。すなわち、4通りの幾何学模様を階層化して4桁の記番号の各桁に対応させ、各幾何学模様の識別子を階層(ここでは桁)に沿って配列することで4桁の記番号を構成している。しかし、このように幾何学模様を階層化して彩紋を形成せずとも、一つの幾何学模様での基準点から規則的に配置されて描画されている複数の描線の数、線の太さに特徴のある前記描線の配置順位、線の色に特徴のある前記描線の配置順位、前記描線が描く形状のうちの少なくとも一つの特徴要素を彩紋表示物に応じて差別化することで識別子を割り付けてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、彩紋表示物を有価証券9の場合で説明したが、彩紋表示物がIDカード等の場合には、ID番号等の識別子を目視可能に記載することはセキュリティの面で避けるのが好ましい。したがって、IDカード等に印刷されている彩紋8からID番号を読み取ることで個人認証されることになる。
【符号の説明】
【0059】
1 プリンタ
4 解析部
8 彩紋
9 有価証券(彩紋表示物)
10 彩紋印刷システム
11 彩紋作成部
12 識別子管理部
16 彩紋メモリ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6