(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】モーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 23/18 20160101AFI20220720BHJP
【FI】
H02P23/18
(21)【出願番号】P 2017175472
(22)【出願日】2017-09-13
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】10-2016-0143494
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 東 勳
(72)【発明者】
【氏名】柳 昌 錫
(72)【発明者】
【氏名】康 敏 繍
(72)【発明者】
【氏名】金 成 道
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-033936(JP,A)
【文献】特開2013-090546(JP,A)
【文献】特開2016-096051(JP,A)
【文献】特開2004-104861(JP,A)
【文献】特開2014-235739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/18
F04D 27/00
H02P 21/06
H02P 27/06
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの速度実測値が速度指令値を追従するようにモーターの速度を制御するモーターの駆動制御方法であって、
前記速度指令値に基づいて前記モーターのトルクを所定の周期とデューティーで繰り返しオン/オフ駆動する段階
と、
前記オン/オフ駆動する段階の前に、
前記速度実測値が前記速度指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための駆動電流に対する電流指令値を決定する段階と、前記モーターに提供される実際の駆動電流が前記電流指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための電圧指令値を決定する段階と、を更に含み、
前記速度指令値と前記電流指令値とが所定の範囲以内である場合に、前記オン/オフ駆動する段階を行い、
前記速度指令値又は前記電流指令値が前記所定の範囲から外れる場合は、前記モーターのトルクを常にオン駆動し、
前記所定の範囲から外れる場合は、前記モーターが回生制動する場合を含むことを特徴とするモーター駆動制御方法。
【請求項2】
前記オン/オフ駆動する段階は、前記モーターのトルクがオン状態である場合に、前記モーターへ提供される駆動電流を提供し、前記モーターのトルクがオフ状態である場合には、前記モーターへ提供される駆動電流を実質的に0となるように制御することを特徴とする請求項1に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項3】
前記オン/オフ駆動する段階は、前記モーターのトルクがオフ状態である場合に、前記駆動電流をモーターへ提供するインバーターに含まれているスイッチング素子をオフさせることを特徴とする請求項2に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項4】
前記オン/オフ駆動する段階は、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記モーターに印加する駆動電圧を前記モーターの逆起電力と実質的に同一となるように、インバーターに含まれているスイッチング素子のオン/オフデューティーを調整することを特徴とする請求項2に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項5】
前記電圧指令値を決定する段階は、前記モーターの駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を含む制御技法を用いて、前記電圧指令値を決定することを特徴とする請求項
1に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項6】
前記電圧指令値を決定する段階は、前記オン/オフ駆動する段階で、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を中断することを特徴とする請求項
5に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項7】
前記決定する段階は、前記オン/オフ駆動する段階で、前記モーターのトルクがオフの状態で前記電流指令値を0に決定することを特徴とする請求項
1に記載のモーター駆動制御方法。
【請求項8】
モーターの速度実測値が前記モーターに対する速度指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための駆動電流に対する電流指令値を決定する速度制御部と、
前記モーターへ実際に提供されるインバーターのモーター駆動電流実測値が、前記電流指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための電圧指令値を決定する電流制御部と、
前記電圧指令値を変換して、前記インバーター内に含まれているスイッチング素子のデューティーを決定する電圧出力変換部と、
所定の周期とデューティーで前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように前記電圧出力変換部を調整するトルクオン/オフ判断部と、
を含んでな
り
前記トルクオン/オフ判断部は、前記速度指令値又は前記電流指令値が前記所定の範囲から外れる場合に、前記モーターのトルクを常にオン駆動するように前記電圧出力変換部を調整し、
前記電流指令値が前記所定の範囲から外れる場合は、前記モーターが回生制動する場合を含むことを特徴とするモーター駆動制御システム。
【請求項9】
前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、前記電圧出力変換部は、モータートルクがオフの状態で、前記インバーターに含まれているスイッチング素子を開放するように、前記スイッチング素子のデューティーを決定することを特徴とする請求項
8に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項10】
前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、前記電圧出力変換部は、モータートルクがオフの状態で、前記インバーターから前記モーターへ提供される駆動電流が実質的に0となるようにするために、前記モーターに印加する駆動電圧を前記モーターの逆起電力と実質的に同一となるように、前記インバーターに含まれているスイッチング素子のオン/オフデューティーを決定することを特徴とする請求項
8に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項11】
前記電流制御部は、前記駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を含む制御技法を用いて、前記電圧指令値を決定することを特徴とする請求項
8に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項12】
前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、
前記電流制御部は、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を中断することを特徴とする請求項
11に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項13】
前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、
前記速度制御部は、前記モーターのトルクがオフの状態で前記電流指令値を0に決定することを特徴とする請求項
8に記載のモーター駆動制御システム。
【請求項14】
前記トルクオン/オフ判断部は、前記速度指令値と前記電流指令値とが所定の範囲以内である場合に、
前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように前記電圧出力変換部を調整することを特徴とする請求項
8に記載のモーター駆動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法に係り、より詳しくは、高速回転の際に最大効率が発生するように設計されたモーターの低速駆動区間で、モーターの効率を向上させることができるモーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、例えば高温時の上り坂運転のように燃料電池スタックを高出力で運転する場合など、冷却性能に劣る運転条件で燃料電池スタックの運転温度が上昇して供給燃料の湿度低下が発生し、これにより燃料電池スタックがドライ(dry)されて同一電流でのスタック運転電圧が低下することがある。このような場合、スタック電圧の低下により燃料電池スタックの発熱量が増加すると共に、燃料電池の運転温度が更に上昇するという悪循環におちいるおそれがある。
【0003】
このような燃料電池の運転温度の上昇に伴う悪循環を防止するために、最近の車両用燃料電池システムでは、空気極(カソード(cathode))へ供給する空気の圧力を上昇させて空気極側の相対湿度を高めるという制御技術を適用している。このためには、燃料電池スタックの空気極側へ空気を供給する空気圧縮機の圧縮比を更に増加させる必要がある。
【0004】
燃料電池スタックの空気極側へ供給される空気の圧縮比を更に増加させる必要性により空気圧縮機の圧縮比を更に増大させながら、最大圧力運転点で最大効率点が現れるよう空気圧縮機を設定する(例えば特許文献1を参照)。しかし、このような設定は、高流量高圧縮比区間で圧縮機の効率が上昇するものの、相対的に低流量区間では圧縮機の効率が低下するという問題が発生する。これにより、車両の都心部運転の際の主運転領域である低流量区間では、空気圧縮機用動力の消耗が増加して、車両の燃費に悪影響を及ぼすということがあった。
【0005】
更に具体的には、従来の常圧型空気ブロワーに比べて、空気圧縮比を更に向上させた加圧型空気圧縮機は、内蔵されたモーターの駆動速度を更に拡大しなければならないことにより、低流量区間と高流量区間とのモーター駆動速度の差が増大して、空気圧縮機自体の効率が不利であるという欠点がある。
つまり、加圧型空気圧縮機は、モーター回転速度の増加に伴って、高速運転領域での十分な電圧マージンの確保のためにモーターインダクタンスを低減させるので、このようなモーターインダクタンスの減少によって3相リップル電流が増加してモーター/インバーターの効率が減少するのである。
【0006】
特に、相対的に小さな出力を要求する低流量区間は、3相正弦波電流が小さく、リップル電流の増加によって効率減少作用が現れる。即ち、3相リップル電流は2次成分であってモータートルクに寄与できず、モータートルクの小さい低流量区間では、3相正弦波電流成分に比べて3相リップル電流量が相対的に大きく現れるので、高出力区間に比べてモーター/インバーターの効率が減少する。
【0007】
また、高速回転のために、空気圧縮機のモーター回転にはエアフォイルベアリング(air-foil bearing)が適用されるが、このエアフォイルベアリングは、リフト状態を維持するためには一定速度以上の回転が求められる。
【0008】
従って、エアフォイルベアリングがリフト状態を維持するための基準速度以下でモーターを連続駆動する場合は、エアフォイルベアリングがモーター回転軸との摩擦により焼損するおそれがあるという問題が発生する。
【0009】
よって、このようなエアフォイルベアリングの焼損を防止するために、空気圧縮機は最小駆動速度の制限を設けており、これにより、燃料電池を低出力で運転しなければならない場合にも、最小駆動速度以上で空気圧縮機を駆動させて無駄な空気過給が発生し、燃料電池システム自体の効率が減少することになる。
【0010】
前述の背景技術として説明した事項は、本発明の背景に対する理解増進のためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来の技術に該当することを認めるものと受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、高速回転の際に最大効率が発生するように設計されたモーターを低速駆動する場合にも、インバーターのスイッチング損失及び電流リップル損失を低減させることによって、モーターの効率を向上させることができるモーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための手段として、本発明は、モーターの速度実測値が速度指令値を追従するようにモーターの速度を制御するモーターの駆動制御方法であって、前記速度指令値に基づいて、前記モーターのトルクを所定の周期とデューティーで繰り返しオン/オフ駆動する段階を含むモーター駆動制御方法を提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記オン/オフ駆動する段階は、前記モーターのトルクがオン状態である場合に、前記モーターへ提供される駆動電流を提供し、前記モーターのトルクがオフ状態である場合には、前記モーターへ提供される駆動電流を実質的に0となるように制御することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記オン/オフ駆動する段階は、前記モーターのトルクがオフ状態である場合に、前記駆動電流をモーターへ提供するインバーターに含まれているスイッチング素子をオフさせることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記オン/オフ駆動する段階は、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記モーターに印加する駆動電圧を、前記モーターの逆起電力と実質的に同一となるように、インバーターに含まれているスイッチング素子のオン/オフデューティーを調整することができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記オン/オフ駆動する段階の前に、前記速度実測値が前記速度指令値を追従するように前記モーターを駆動するための駆動電流に対する電流指令値を決定する段階と、前記モーターに提供される実際の駆動電流が前記電流指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための電圧指令値を決定する段階と、を更に含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記電圧指令値を決定する段階は、前記モーターの駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を含む制御技法を用いて、前記電圧指令値を決定することができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記電圧指令値を決定する段階は、前記オン/オフ駆動する段階で、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を中断することができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記電圧指令値を決定する段階は、前記オン/オフ駆動する段階で、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記電流指令値を0に決定することができる。
本発明の一実施形態において、前記速度指令値と前記電流指令値とが所定の範囲以内である場合に、前記オン/オフ駆動する段階を行うことができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記速度指令値又は前記電流指令値が前記所定の範囲から外れる場合は、前記モーターのトルクを常にオン駆動することができる。
本発明の一実施形態において、前記所定の範囲から外れる場合は、前記モーターが回生制動する場合を含むことができる。
【0022】
上記目的を達成するための他の手段として、本発明は、モーターの速度実測値が前記モーターに対する速度指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための駆動電流に対する電流指令値を決定する速度制御部と、前記モーターへ実際に提供されるインバーターのモーター駆動電流実測値が、前記電流指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための電圧指令値を決定する電流制御部と、前記電圧指令値を変換して前記インバーター内に含まれているスイッチング素子のデューティーを決定する電圧出力変換部と、所定の周期とデューティーで前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように前記電圧出力変換部を調整するトルクオン/オフ判断部と、を含んでなるモーター駆動制御システムを提供する。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、前記電圧出力変換部は、モータートルクがオフの状態で、前記インバーターに含まれているスイッチング素子を開放するように、前記スイッチング素子のデューティーを決定することができる。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、前記電圧出力変換部は、モータートルクがオフの状態で、前記インバーターから前記モーターへ提供される駆動電流が実質的に0となるようにするために、前記モーターに印加する駆動電圧を前記モーターの逆起電力と実質的に同一となるように、前記インバーターに含まれているスイッチング素子のオン/オフデューティーを決定することができる。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記電流制御部は、前記駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を含む制御技法を用いて、前記電圧指令値を決定することができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、前記電流制御部は、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記駆動電流実測値と前記電流指令値との誤差を積分する過程を中断することができる。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記トルクオン/オフ判断部が前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように指示した場合に、前記速度制御部は、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記電流指令値を0に決定することができる。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記トルクオン/オフ判断部は、前記速度指令値と前記電流指令値が所定の範囲以内である場合に、前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように前記電圧出力変換部を調整することができる。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記トルクオン/オフ判断部は、前記速度指令値又は前記電流指令値が前記所定の範囲から外れる場合に、前記モーターのトルクを常にオン駆動するように前記電圧出力変換部を調整することができる。
本発明の一実施形態において、前記電流指令値が前記所定の範囲から外れる場合には、前記モーターが回生制動する場合を含むことができる。
【0030】
上記目的を達成するための別の手段として、本発明は、燃料電池スタックへ圧縮空気を供給する圧縮機を含む燃料電池システムにおいて、前記圧縮機内のモーターの駆動を制御する方法であって、前記燃料電池スタックの要求出力に応じた前記モーターの速度指令値を生成する段階と、前記モーターの回転速度実測値が前記速度指令値を追従するように、前記モーターを駆動するための駆動電流に対する電流指令値を生成する段階と、前記電流指令値に基づいて前記モーターのトルクを制御し、所定の周期とデューティーで前記モーターのトルクを繰り返しオン/オフ駆動する段階と、を含んでなる燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法を提供する。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記オン/オフ駆動する段階は、前記モーターのトルクがオフの状態で、前記モーターへ駆動電流及び駆動電圧を提供するインバーターに含まれているスイッチング素子を開放させるか、或いは前記駆動電圧が前記モーターの逆起電力と実質的に同一となるように前記スイッチング素子のオン/オフを制御することができる。
【発明の効果】
【0032】
前記モーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機の駆動制御方法によれば、モーターの消耗動力の低減によって、モーターが適用されたシステムの効率を向上させることができる。特に、モーターが適用された空気圧縮機を含む燃料電池車両において、空気圧縮機による消耗動力の低減によって、燃料電池システムの効率及び車両の燃費を向上させることができる。
【0033】
また、前記モーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法によれば、別個のハードウェアの追加に伴う費用が発生せず、簡単に特定の速度区間又は特定のトルク区間でモータートルクをオン/オフ制御することにより、容易にモーターの消耗動力を減少させることができる。
【0034】
また、前記モーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法によれば、モーターの定速運転状態だけでなく、加減速運転状態でも効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法が適用される燃料電池システムの一例を示すブロック構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御システムを示すブロック構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法に適用されるモータートルクのオン/オフ制御状態を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法によるモーター消耗動力と従来のモーター駆動制御方法によるモーター消耗動力とを互いに比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係るモーター駆動制御方法及びシステム、並びにこれを適用した燃料電池システムの圧縮機駆動制御方法を更に詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法が適用される燃料電池システムの一例を簡略に示すブロック構成図である。
【0037】
図1に示すように、燃料電池システムは、燃料である水素と酸化剤である空気との供給を受け、酸化/還元反応によって電力を生成する燃料電池セルを含む燃料電池スタック100と、燃料電池スタック100の空気極(カソード(cathode))へ圧縮空気を供給する空気圧縮機10と、空気圧縮機10の圧縮空気に水分を供給して燃料電池スタック100へ供給する加湿器200と、を含むことができる。ここで、加湿器200は、燃料電池スタック100から排出される高湿の未反応空気の提供を受け、燃料電池スタック100へ供給される空気に水分を提供する。
【0038】
背景技術で既に説明したように、燃料電池スタック100で高出力が要求されるとき、燃料電池スタック100の発熱による水素の乾燥を防止するために、燃料電池スタック100へ供給される空気の圧縮比を上昇させる。つまり、空気圧縮機10を更に高速で動作させて空気の流量を増大させることにより、更に多くの加湿空気が燃料電池スタック100へ提供されるようにして、乾燥現象を減少させるのである。
このような空気圧縮機10の制御を実現するために、燃料電池システムは、空気圧縮機10、より正確には、空気圧縮機10に内蔵されているモーターを制御するための制御器20が設けられ得る。
【0039】
本発明の様々な実施形態ついての説明では、燃料電池システムに内臓されている空気圧縮機10のモーターを制御するための制御器20で実施されるモーター制御方法と、空気圧縮機10及び制御器20を含むモーター制御システムと、を任意の適用例として開示しようとする。しかし、このような適用例についての説明が本発明を燃料電池システムの空気圧縮機に限定されるものではなく、本発明は、燃料電池分野以外の他の技術分野に適用される様々なモーターの制御に幅広く適用できる。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御システムを示すブロック構成図である。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御システムは、速度制御部21、電流制御部23、電圧出力変換部25、インバーター27及びトルクオン/オフ判断部29を含んで構成できる。
図2において、モーターは、
図1の空気圧縮機と同一の参照符号10を使用する。
【0041】
これは、本発明の様々な実施形態が、モーター10の駆動を制御するためのものであり、特に燃料電池システムでは、空気圧縮機に内臓されているモーターの駆動を制御するためのものであるから、空気圧縮機を制御するという意味は、空気圧縮機のモーター10を制御するのと実質的に同じ意味として理解できるためである。また、本明細書全体において、空気圧縮機を制御するという記載は、空気圧縮機のモーター10を制御するという意味として理解できる。
【0042】
速度制御部21は、上位制御器(図示せず)からモーター10の速度を制御するための速度指令の入力を受け、モーターの速度を実際に検出したモーター速度実測値に基づいてモーター10を駆動するための駆動電流に対する電流指令値Id*、Iq*を生成して出力する。ここで、上位制御器は、燃料電池システムを制御するための制御器又は燃料電池システムが適用された車両を制御するための車両制御器であることができる。
【0043】
上位制御器は、車両の車速、上り坂の角度、及び運転者によって操作されるアクセルの開度などに基づいて、燃料電池スタック100の出力を決定することができ、燃料電池スタック100の出力及び温度などを考慮して、空気圧縮機10のモーター回転速度を決定することができる。上位制御器は、このように決定されたモーターの回転速度を速度指令値として速度制御部21に提供する。速度制御部21は、入力された速度指令値とモーター10の実際回転速度に該当するモーター速度実測値とを比較して、モーターの回転速度が速度指令値を追従することができる電流指令値Id*、Iq*を生成して出力する。
【0044】
ここで、電流指令値Id*、Iq*は、モーター10の駆動電流に対する指令値である。一般に、モーターを制御する上で、速度制御部21は、モーターの目標トルクを設定し、モーターが該目標トルクを追従するようにモーターの駆動電流を制御する。本発明は、モーターの速度を制御するために適用されるものなので、速度制御部21は、目標速度である速度指令値を追従するようにモーターを制御するために、速度実測値と速度指令値とに基づいて、速度実測値が速度指令値を追従することができる目標トルクを決定し、目標トルクに対応する電流指令値を生成するのである。更に詳細には、速度制御部21から出力される電流指令値Id*、Iq*は、モーターのD軸及びQ軸電流指令値になることができる。
【0045】
速度制御部21は、通常、比例積分(Proportional Integral:PI)制御器と同様に、指令値と実測値との誤差を積分する過程によって積算して制御量に反映する制御技法が適用できる。つまり、速度制御部21は、速度指令とモーター10の実際速度との誤差を積分して反映する制御技法が適用できる。速度制御部21は、PI制御技法だけでなく、PID(Proportional Integral Differential)制御、IP(Integral Proportional)制御、IP-PI混合制御などの技法が適用されてもよい。
【0046】
一方、モーター10には、モーター回転子の位置を検出するためのホールセンサーやレゾルバなどのセンサー13が備えられる。このようなセンサー13によって、モーター10の実際回転速度を検出した速度実測値を、速度制御部21へ提供することにより、電流指令値を生成することができる。
【0047】
電流制御部23は、インバーター27からモーター10へ提供される電流が、電流指令値Id*、Iq*を追従するように制御を行って、D軸及びQ軸電圧指令値Vd*、Vq*を出力する。電流制御部23は、インバーター27からモーター10へ提供される各相の電流のうち一部又は全部を検出し、D軸電流及びQ軸電流に変換した駆動電流実測値のフィードバックを受け、駆動電流実測値が電流指令値、即ちD軸及びQ軸電流指令値Id*、Iq*を追従するように制御することができる。
【0048】
前述した速度制御部21と同様に、電流制御部23は、PI制御やPID制御、IP制御、IP-PI混合制御などのようにインバーター27からモーターへ提供される実際電流と、電流指令値Id*、Iq*と、の誤差を累積するための積分過程を含む制御技法を使用することができる。
【0049】
電圧出力変換部25は、座標変換(DQ<->三相abc)によって、D軸及びQ軸電圧指令値Vd*、Vq*を3相電圧指令値に変換し、変換された3相の電圧指令値に基づいてインバーター27内のスイッチング素子を駆動するための駆動信号を生成して、インバーター27へ提供する。インバーター27は、この駆動信号によりインバーター27内のスイッチング素子のスイッチングを制御しながら、モーター10を駆動するための3相の電流を出力する。
【0050】
一方、電圧出力変換部25は、電流制御部23で行われる制御のためにフィードバックされるインバーター27の3相の駆動電流を実測した値を、更にDQ電流に変換して電流制御部23へ提供することもできる。
【0051】
トルクオン/オフ判断部29は、電圧出力変換部25からインバーター27へ提供される駆動信号の提供方式を決定することができる。本発明の一実施形態において、トルクオン/オフ判断部29は、モーター10のトルクが所定の周期とデューティーで繰り返しオン/オフされながら発生するように、電圧出力変換部25を調整することができる。また、トルクオン/オフ判断部29の一動作例として、速度制御部21は、提供される速度指令値又は速度制御部21で生成された電流指令値Id*、Iq*の入力を受け、この速度指令値又は電流指令値Id*、Iq*が所定の範囲以内である場合、所定の周期とデューティーでモーター10のトルクを繰り返しオン/オフ駆動するように電圧出力変換部25を調整することができる。
【0052】
トルクオン/オフ判断部29が、モーター10のトルクを繰り返しオン/オフ駆動しなければならないと判断した場合、トルクオン/オフ判断部29による判断結果は、電圧出力変換部25及び電流制御部23へ提供できる。トルクオン/オフ判断部29の判断結果を受信した電圧出力変換部25は、モーター10のトルクがオン/オフされるようにインバーター27内のスイッチング素子を制御するための信号をインバーター27へ提供することができる。また、トルクオン/オフ判断部29からの指示を受信した電流制御部23は、トルクオフ区間で適切な制御が行われるようにすることができる。
【0053】
このようなモーターのトルクオン/オフ制御についての内容は、後述する本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法についての説明によって更に明確に理解できるであろう。
【0054】
図3は本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法を示すフローチャートである。
図3に示した実施形態は、モーターの速度指令値又は電流指令値が所定の範囲内である場合に、モータートルクをオン/オフ制御する一例に関するものである。モーターのトルクをオン/オフ制御する本発明の特徴は、
図3に示した本発明の一例で使用された特定の条件に限定されて適用されるものではなく、速度指令値又は電流指令値の大きさに関係なくモーターの駆動に適用できる。
【0055】
図3に示すように、まず、モーター10が停止した状態で(S11)、0ではなく、速度指令値が速度制御部21に入力されると(S12)、モーターのトルクを発生させる制御が始まる。
【0056】
速度制御部21は、速度指令値が入力されると、モーター10の回転速度実測値が速度指令値を追従することができるように制御するための電流指令値Id*、Iq*を導出して、電流制御部23へ出力する。電流制御部23は、インバーター27からモーター10へ提供される駆動電流を、直接検出した値に該当する電流実測値が電流指令値Id*、Iq*を追従するための電圧指令値Vd*、Vq*を導出して出力し、電圧出力変換部25は、DQ座標の電圧指令値Vd*、Vq*を3相(a相、b相、c相)電圧に変換して各3相電圧を出力することができるようにインバーター27内のスイッチング素子を制御するためのPWMスイッチング信号を生成してインバーター27へ出力する。
【0057】
このような一連の過程によってモーターの駆動が開始されるが、本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法は、モーター10の駆動が開始された後、更にトルクオン/オフ判断部29で速度指令値又は電流指令値をモニタリングして、トルクオン/オフ制御を行うか否かを判断することができる(S131、S132)。つまり、トルクオン/オフ判断部29は、速度指令値が所定の範囲(
図3では0より大きくA(正数)よりは小さい範囲)であるか(S131)、或いは電流指令値が所定の範囲(
図3では0より大きくB(正数)よりは小さい範囲)である場合(S132)に、モーターのトルクをオン/オフ制御すると判断することができる。
【0058】
これらの範囲は、背景技術で説明したように、高速用空気圧縮機の効率が低回転速度又は低トルク区間で急激に低下するという点を考慮して、予め設定された範囲である。しかし、本発明の他の実施形態は、前述した範囲に関係なく、モーターが駆動可能な全体トルク及び速度の範囲で、モーターのトルクをオン/オフ制御することもできる。
【0059】
トルクオン/オフ判断部29は、モータートルクのオン/オフ制御を行わなければならないと判断した場合には、インバーター27に含まれているスイッチング素子のオン/オフを制御する駆動信号を出力する電圧出力変換部25に、モータートルクのオン/オフ制御を行うように指示し、電圧出力変換部25は、この指示に従って、インバーター27内のスイッチング素子を制御することができる(S14)。
【0060】
図4は、本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法に適用されるモータートルクのオン/オフ制御状態を示すグラフである。
図4に示すように、本発明の一実施形態において、段階(S14)では、モータートルクが所定の一定周期及びデューティーをもって繰り返しオン/オフされる。ここで、モータートルクのオン/オフ周期及びデューティーは、インバーターの消耗動力が最小でありながら運転安定性が確保可能な値であって、モーターの速度別に、事前に実験的な方法によって決定できる。
【0061】
このようなモータートルクのオン/オフ繰り返し制御は、モーター10に影響を与える負荷を小さくするため、モーター10が慣性によって駆動されても速度の変化が大きくない条件で適用することが好ましい。モーター10の負荷が大きい場合には、トルクがオフされた区間での減速が大きくなるため、トルクのオン/オフ繰り返しによるモーター速度の加減速が大きく発生し、無駄なエネルギー損失が発生するおそれがある。
【0062】
従って、モーターの負荷が大きい場合には、トルクオン/オフ繰り返し制御の効率が減少し、特にトルクのオン/オフ制御によるモーター速度の加減速量が一定のレベルを超えると、かえってモーター10の消耗動力が増加するという問題が発生するおそれもある。
【0063】
また、モーター10の回転慣性モーメントが大きいほど、モータートルクのオン/オフ制御の効果が増大しうる。つまり、モーター10の回転慣性モーメントが大きい場合は、トルクオフ区間での速度の変動が小さいため、トルクオン/オフ制御の効率が増大しうる。
【0064】
モータートルクをオン/オフ繰り返し制御する具体的な技法として、モータートルクがオフに設定される区間で、インバーター27に含まれているスイッチング素子を全てオフ状態(100%オフデューティー)と決定し、モーターへ提供される駆動電流を遮断する方式が適用できる。即ち、モータートルクがオン状態を維持しなければならない区間では、電圧出力変換部25は、インバーター27のスイッチング素子を通常のモーター駆動に適用される方式で制御するための制御信号をインバーター27へ出力し、モータートルクがオフ状態を維持しなければならない区間では、スイッチング素子を全てオフさせるための制御信号を、インバーター27へ出力することができる。
【0065】
3相モーターを駆動するための駆動電流を提供するインバーター27は、通常、6つのスイッチング素子(例えば、IGBTなど)を用いて3相スイッチングフルブリッジ回路として実現される。電流制御部23は、電流指令値と実測されたモーター駆動電流との差を比較し、その誤差を減少させることができる電圧指令値(DQ座標)を出力する。電圧出力変換部25は、電圧指令値を3相電圧に変換し、変換した3相電圧をモーター10に印加できるようにスイッチング素子のデューティーを決定して各相のスイッチング素子をオン/オフ制御する。
【0066】
本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法において、トルクのオン/オフ制御は、一定の周期とデューティーでモーターのトルクをオン/オフ制御するが、トルクがオンに設定される区間では、前述したような通常のインバーターのスイッチング素子の制御が行われるようにし、トルクがオフに設定された区間では、インバーターのスイッチング素子をすべてオフさせることにより、トルクのオン/オフ制御を達成することができる。
【0067】
トルクがオフに設定された区間でインバーター27のスイッチング素子を制御する別の方法として、モーター10から発生する逆起電力と実質的に同一の電圧を持つ駆動電圧が生成するように、インバーター27内の各相のスイッチング素子をオン/オフ制御する方式を採用できる。モーター10の逆起電力とインバーター27の3相駆動電圧とが同一である場合、電位差が発生しないので、インバーター27からモーター10へ電流が提供されない零電流制御状態になる。
【0068】
モータートルクのオン/オフ制御が実施された場合(S14)、モータートルクがオフに設定された区間では(S15)、電流制御部23によって行われる積分制御を中断することが好ましい(S161)。モータートルクがオフである区間で、電流制御部23で指令値と実測値との誤差を積算することを許容した場合は、トルクを再びオンする時点で、各制御部から累積された誤差により大きな出力が印加されるため、システムの不安定を生じさせるおそれがある。これは、速度指令値及び電流指令値の揺れにより、むしろトルクオン/オフ制御の効果を阻害するおそれがある。もちろん、モータートルクがオンに設定された区間では(S15)、電流制御部23によって積分制御が行われることが好ましい(S162)。
【0069】
他の例として、モータートルクオフ区間で電流制御部23の積分制御を中止する方法の代わりに、速度制御部21でモータートルクをオンからオフに変更する瞬間に全体制御演算を中止し、モータートルクオフ区間では電流指令値を0に出力する方式を適用することもできる。
【0070】
つまり、速度制御部21が電流指令値を0に出力するようにすることにより、3相出力が遮断されてトルクと出力とが発生しないモータートルクオフ区間で、電流制御部23の電流指令値と実測電流との誤差による積分を遮断するのである。これによって、モータートルクを再びオンに設定する時点で、累積された誤差によって過度な出力が発生するのを防ぐことができる。
【0071】
もちろん、モータートルクが更にオフ状態からオン状態に変更されると、通常の速度制御器の演算を再開することができる。モータートルクがオフである区間で速度制御部21の演算が中止されたため、再びモータートルクがオンされる時点では、速度制御部21側の出力はモータートルクがオフされる直前の出力値を維持することになり、無駄な加減速なしに速度制御安定性の確保が可能である。
【0072】
一方、モーターの速度が所定の範囲を超える場合、又は電流制御部23から出力される電流指令が所定の範囲から外れる場合、トルクオン/オフ判断部29は、モータートルクをオン/オフ制御することなく、電流指令値に基づいてインバーター27の3相駆動電流を決定するという通常の制御方法が適用できるようにする(S17)。
【0073】
前述したように、モーター10の速度が一定の速度以上である場合は、一般的にモーター側の負荷トルクが増加するため(例えば、燃料電池システムにおいて、空気圧縮機は速度が増加すると流量、圧力の増加により負荷トルクが増加する)、モーター10のトルクがオフである区間で発生した減速量をトルクオン区間で補償しなければならないことにより、無駄な加減速が発生し、これによる損失がトルクオン/オフ制御によって低減させたスイッチング損失及び3相電流リップル損失を超過するためである。電流指令値が一定値以上である場合は、急加速区間又は高速回転状態と判断することができるため、モータートルクのオン/オフ繰り返し制御を行うことが、通常の連続トルク印加方式よりも低い効率を示すのである。
【0074】
前述した電流指令が所定の範囲から外れる場合の一つとして、モーターに回生制動トルクが印加された状況があり得る。回生制動が行われる場合は、トルクが回転方向の反対に印加される場合であって、トルクが負である状態と看做すことができるので、
図3の段階S132における電流指令値が0より大きくB(正数)よりは小さい範囲を外れた場合と判断することができる。モーターが減速して回生制動が行われる場合にも、モータートルクのオン/オフ制御を中止することが好ましい。これは、回生制動状態では、連続したモータートルクのオン制御によってエネルギーを回収することが効率の面で有利だからである。
【0075】
図5は、本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法によるモーター消耗動力と、従来のモーター駆動制御方法によるモーター消耗動力と、を互いに比較して示すグラフである。特に、
図5は本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御技術を燃料電池システムの空気圧縮機に適用してUDDS(Urban Dynamometer Driving Schedule)モードで評価した結果である。
【0076】
図5に示すように、全体UDDS運転区間で、本発明の一実施形態に係るモーター駆動制御方法であるモータートルクオン/オフ制御技法を適用した場合(53)、通常のモータートルク制御技法を適用した場合(51)に比べて消耗動力が減少したことを確認することができる。
【0077】
以上で説明したように、本発明の様々な実施形態に係るモーター駆動制御方法及びシステムは、モーターの消耗動力の低減によって、モーターが適用されたシステムの効率を向上させることができる。特に、モーターが適用された空気圧縮機を含む燃料電池車両において、空気圧縮機による消耗動力の低減によって燃料電池システムの効率及び車両の燃費を向上させることができる。
【0078】
また、本発明の様々な実施形態に係るモーター駆動制御方法及びシステムは、別個のハードウェアの追加に伴う費用が発生せず、簡単に特定の速度区間又は特定のトルク区間でモータートルクをオン/オフ制御することにより、容易にモーターの消耗動力を減少させることができる。
【0079】
また、
図5に示すように、UDDSモード運転を基準に効率改善の効果が表れるので、モーターの定速運転状態だけでなく、加減速運転状態でも効率が改善されることを確認することができる。
【0080】
本発明は、特定の実施形態について図示及び説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想から外れない範疇内で、本発明に多様な改良及び変更を加え得るのは、当業界における通常の知識を有する者にとっては自明である。
【符号の説明】
【0081】
10 空気圧縮機/モーター
21 速度制御部
23 電流制御部
25 電圧出力変換部
27 インバーター
29 トルクオン/オフ判断部