(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】半導体実装装置および半導体実装方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220720BHJP
H01L 21/603 20060101ALI20220720BHJP
H01L 21/50 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/603 C
H01L21/50 A
(21)【出願番号】P 2017239860
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100140534
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】諸石 史孝
(72)【発明者】
【氏名】梶並 将人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡哲
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-026512(JP,A)
【文献】特開2016-051857(JP,A)
【文献】特開2014-195247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00-21/52
H01L 21/60-21/607
H05K 13/00-13/08
B23P 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの押圧接着機構と
、
互いに対向する部分球面形状の凸部または凹部を有する固定部と回動部を有して前記押圧接着機構の傾きを調整する倣い機構
と、
前記回動部の第1回動位置を検知する第1位置検知部と、
前記第1位置検知部が前記第1回動位置を検知する第1検知位置と異なる第2検知位置で、前記回動部の第2回動位置を検知する第2位置検知部と
、
前記第1位置検知部が検知した前記第1回動位置を表す第1情報と前記第2位置検知部が検知した前記第2回動位置を表す第2情報とを取得する取得部と、
取得した前記第1情報および前記第2情報に対応する基準位置情報を記憶する記憶部と、
新たに取得した前記第1情報および前記第2情報と、前記記憶部が記憶する前記基準位置情報とに基づいて前記回動部の変位を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記変位がしきい値よりも大きい場合に、前記回動部の回動位置が前記基準位置情報の示す位置と一致するように、前記倣い機構を回動する回動駆動部を制御する倣い機構制御部と、
を備える
半導体実装装置。
【請求項2】
前記第1位置検知部が前記回動部に非接触で前記第1回動位置を検知し、
前記第2位置検知部が前記回動部に非接触で前記第2回動位置を検知する
請求項1に記載の
半導体実装装置。
【請求項3】
前記第1位置検知部が、前記第1検知位置を含む前記回動部の回動中心を中心とする第1円の接線の方向と略平行に第1反射面を有するよう前記回動部に設けられた第1反射部と、前記第1反射面に対して光を照射するよう前記固定部に設けられた第1発光部と、前記第1反射面で反射された光を受光するよう前記固定部に設けられた第1受光部を用いて、前記第1回動位置を検知し、
前記第2位置検知部が、前記第2検知位置を含む前記回動部の回動中心を中心とする第2円の接線の方向と略平行に第2反射面を有するよう前記回動部に設けられた第2反射部と、前記第2反射面に対して光を照射するよう前記固定部に設けられた第2発光部と、前記第2反射面で反射された光を受光するよう前記固定部に設けられた第2受光部を用いて、前記第2回動位置を検知する
請求項1または2に記載の
半導体実装装置。
【請求項4】
前記第1円と前記第2円のなす角が略直角である
請求項3に記載の
半導体実装装置。
【請求項5】
半導体チップの押圧接着機構と、互いに対向する部分球面形状の凸部または凹部を有する固定部と回動部を有して前記押圧接着機構の傾きを調整する倣い機構
と、
前記回動部の第1回動位置を検知する第1位置検知部と、
前記第1位置検知部が前記第1回動位置を検知する第1検知位置と異なる第2検知位置で、前記回動部の第2回動位置を検知する第2位置検知部と
、
前記第1位置検知部が検知した前記第1回動位置を表す第1情報と前記第2位置検知部が検知した前記第2回動位置を表す第2情報とを取得する取得部と、
取得した前記第1情報および前記第2情報に対応する基準位置情報を記憶する記憶部と、
新たに取得した前記第1情報および前記第2情報と、前記記憶部が記憶する前記基準位置情報とに基づいて前記回動部の変位を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記変位がしきい値よりも大きい場合に、前記回動部の回動位置が前記基準位置情報の示す位置と一致するように、前記倣い機構を回動する回動駆動部を制御する倣い機構制御部とを用いて、
前記回動部の回動位置を制御する
半導体実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検知装置、半導体チップ接着装置、半導体実装装置および位置検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の後工程装置(ダイボンダ装置)において半導体チップ(以下、チップともいう。)を実装するプロセスでは、個片化されたチップが例えばフリップチップボンディングによって基板や他のチップ(ウエハ)等に接着される。フリップチップボンディングでは、ダイボンダ装置のボンディングツールにチップが吸着され、ボンディングツールからの荷重と例えばチップや基板の加熱によって、チップ裏面に配置された半田バンプが溶融され、チップが基板や他のチップに接着される。その際、チップを保持する機構であるボンディングツールと基板または他のチップの平行があっていないと、搭載後のチップに傾きがでてしまい、接合不良となってしまう場合がある。
【0003】
そこで、ダイボンダ装置では、例えば特許文献1や特許文献2に示されているようにボンディングツールを先端に装着したボンディングヘッドに倣い機構を設けて、基板等との平行を調整した上で、チップの実装が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4713966号公報
【文献】特開2003-229457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、平行を調整したのち、例えば、操作者など作業者がボンディングヘッド等に触れてしまったり、ボンディングヘッドの移動中等に意図しない力が加わったことによるずれが発生したりした場合、ボンディングツールの平行状態の変化に気づくことなく生産を行ってしまう可能性があるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、ボンディングツールの平行状態の変化を検知することができる位置検知装置、半導体チップ接着装置、半導体実装装置および位置検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、半導体チップの押圧接着機構と、互いに対向する部分球面形状の凸部または凹部を有する固定部と回動部を有して前記押圧接着機構の傾きを調整する倣い機構と、前記回動部の第1回動位置を検知する第1位置検知部と、前記第1位置検知部が前記第1回動位置を検知する第1検知位置と異なる第2検知位置で、前記回動部の第2回動位置を検知する第2位置検知部と、前記第1位置検知部が検知した前記第1回動位置を表す第1情報と前記第2位置検知部が検知した前記第2回動位置を表す第2情報とを取得する取得部と、取得した前記第1情報および前記第2情報に対応する基準位置情報を記憶する記憶部と、新たに取得した前記第1情報および前記第2情報と、前記記憶部が記憶する前記基準位置情報とに基づいて前記回動部の変位を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記変位がしきい値よりも大きい場合に、前記回動部の回動位置が前記基準位置情報の示す位置と一致するように、前記倣い機構を回動する回動駆動部を制御する倣い機構制御部と、を備える半導体実装装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記半導体実装装置であって、前記第1位置検知部が前記回動部に非接触で前記第1回動位置を検知し、前記第2位置検知部が前記回動部に非接触で前記第2回動位置を検知する。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記半導体実装装置であって、前記第1位置検知部が、前記第1検知位置を含む前記回動部の回動中心を中心とする第1円の接線の方向と略平行に第1反射面を有するよう前記回動部に設けられた第1反射部と、前記第1反射面に対して光を照射するよう前記固定部に設けられた第1発光部と、前記第1反射面で反射された光を受光するよう前記固定部に設けられた第1受光部を用いて、前記第1回動位置を検知し、前記第2位置検知部が、前記第2検知位置を含む前記回動部の回動中心を中心とする第2円の接線の方向と略平行に第2反射面を有するよう前記回動部に設けられた第2反射部と、前記第2反射面に対して光を照射するよう前記固定部に設けられた第2発光部と、前記第2反射面で反射された光を受光するよう前記固定部に設けられた第2受光部を用いて、前記第2回動位置を検知する。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記半導体実装装置であって、前記第1円と前記第2円のなす角が略直角である。
【0015】
また、本発明の一態様は、半導体チップの押圧接着機構と、互いに対向する部分球面形状の凸部または凹部を有する固定部と回動部を有して前記押圧接着機構の傾きを調整する倣い機構と、前記回動部の第1回動位置を検知する第1位置検知部と、前記第1位置検知部が前記第1回動位置を検知する第1検知位置と異なる第2検知位置で、前記回動部の第2回動位置を検知する第2位置検知部と、前記第1位置検知部が検知した前記第1回動位置を表す第1情報と前記第2位置検知部が検知した前記第2回動位置を表す第2情報とを取得する取得部と、取得した前記第1情報および前記第2情報に対応する基準位置情報を記憶する記憶部と、新たに取得した前記第1情報および前記第2情報と、前記記憶部が記憶する前記基準位置情報とに基づいて前記回動部の変位を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記変位がしきい値よりも大きい場合に、前記回動部の回動位置が前記基準位置情報の示す位置と一致するように、前記倣い機構を回動する回動駆動部を制御する倣い機構制御部とを用いて、前記回動部の回動位置を制御する半導体実装方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1位置検知部と第2位置検知部によって、ボンディングツールの平行状態の変化を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体実装装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すボンディングヘッド2の構成例を背面からみた斜視図である。
【
図3】
図2に示す倣い機構22の構成例を示す正面図(
図3(a))と底面図(
図3(b))である。
【
図4】
図2に示す倣い機構22の構成例を示す右側面図である。
【
図5】
図2に示す位置検出部23および位置検出部24の動作例を説明するための模式図である。
【
図6】
図2に示す位置検出部23および位置検出部24の動作例を説明するための模式図である。
【
図7】
図1に示す半導体実装装置1の動作例を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示す半導体実装装置1の動作例を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の一実施例の動作結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る半導体実装装置1の構成例について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体実装装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示す半導体実装装置1は、ダイボンダ装置であり、半田、金メッキ、樹脂等を接合材料として、半導体チップを、基板、他のチップ、リードフレーム等に接着する装置である。
図1に示す半導体実装装置1は、ボンディングヘッド2(半導体チップ接着装置)、移動機構3、倣い機構制御装置4、実装装置制御装置5および制御装置6を備える。
【0019】
ボンディングヘッド2は、押圧接着機構21、倣い機構22、位置検出部23、および位置検出部24を備える。1組の位置検出部23と位置検出部24は、本実施形態の位置検知装置29を構成する。
図2は、ボンディングヘッド2の構成例を示す背面からみた斜視図である。
【0020】
図2に示すように、押圧接着機構21は、先端部(底面)にボンディングツール211を着脱自在に装着している。ボンディングツール211は、チップを吸着したり、接着対象物に圧着したりするための平面を構成する。ボンディングツール211は、使用回数や使用期間等に応じて交換される。押圧接着機構21は、ボンディングツール211にチップを吸着し、ボンディングツール211からの荷重と例えばチップや基板の加熱によって、チップ裏面に配置された半田バンプを溶融し、吸着して荷重をかけたチップを、基板や他のチップに接着する。押圧接着機構21は、内部に図示していない、ボンディングツール211のチップ吸着位置25に負圧を発生させる吸着機構、ボンディングツール211を加熱するヒータや超音波振動させる超音波振動子等を備える。
【0021】
倣い機構22は、例えば、
図3に示すように互いに対向する部分球面形状の凸部または凹部を有する固定部221と回動部222を有して構成されていて、回動部222を回動させることで回動部222に取り付けられた押圧接着機構21の傾きを調整する。
図3(a)は
図2に示す倣い機構22の構成例を示す正面図であり、
図3(b)は底面図である。なお、
図3では、倣い機構22の鉛直方向をZ軸方向とし、水平方向で互いに直交する方向をX方向およびY方向としている。
【0022】
図3に示す構成例において、固定部221は、固定部材2210と、一対の支持部材2213を備える。固定部材2210の底面には部分球面形状の凹部2211が形成されている。凹部2211の中央には磁石2212が設けられている。固定部221の側面にはY方向で互いに対向する1対の支持部材2213が固定されている。各支持部材2213には互いに対向する樽状の形状を有する回動規制部材2214が設けられている。なお、固定部材2210には図示していない複数の気体孔が形成されている。これらの気体孔は、図示していない気体送風管に接続されていて、気体送風管を介して各気体孔から凹部2211へ圧縮気体を送り込むことができるようになっている。
【0023】
一方、回動部222は、回動部材2221と、環状部材2225と、押さえ部材2228を備える。回動部材2221は、凹部2211と勘合する部分球面形状の凸部2222と、凸部2222と一体として構成された円柱部2223から構成されている。凸部2222は、磁性体であり、凸部2222の表面である部分球面2222aが凹部2211に勘合された状態では磁力で磁石2212に引き寄せられて固定される。円柱部2223のX軸方向で直径方向に互いに対向する側面には1対の樽状の形状を有する回動規制部材2224が設けられている。環状部材2225は、所定の隙間を有して円柱部2223と勘合する内周面を有する環状形状を有する。環状部材2225は、X軸方向で直径方向に互いに対向する側面に1対の溝部2226を有するとともに、Y軸方向で直径方向に互いに対向する側面に1対の溝部2227を有している。押さえ部材2228は、各溝部2226に各回動規制部材2224が挿入され、各溝部2227に各回動規制部材2214が挿入されるように、固定部材2210に対して、回動部材2221と環状部材2225を組み付けて保持する。この押さえ部材2228には、
図2に示すように押圧接着機構21が固定されている。各回動規制部材2224と各回動規制部材2214の各中心軸は、Z軸方向で同一高さに保持される。各回動規制部材2224と各溝部2226の形状や空隙と、各回動規制部材2214と各溝部2227の形状や空隙を適切に設定することで、回動部材2221は、各回動規制部材2224を結ぶ直線を回転軸として回動するとともに、各回動規制部材2214を結ぶ直線を回転軸として回動する。回動部222は、ボンディングツール211のチップ吸着位置25が回動中心となるように、部分球面2222aの形状と高さが設定されている。ここで、回動中心とは、回動部222の凸部2222が固定部221の凹部2211に沿って回動する場合に、回動部222を基準として(すなわち回動部222が固定していると仮定して)、固定部221の凹部2211の回動範囲を表す球の中心である。なお、以下ではチップ吸着位置25を回動中心25ともいう。
【0024】
また、倣い機構22は、回動部222を駆動する回動駆動部27(
図2)を備えている。回動駆動部27は、例えば、圧縮気体を利用して回動部222を任意の回動位置に回動させる。あるいは、回動駆動部27は、例えば、モータを利用して回動部222を任意の回動位置に回動させる。その際、回動駆動部27は、例えば、位置検出部23および位置検出部24の検知結果に基づき、フィードバック制御によって回動部222を回動制御する。
【0025】
以上の構成によって倣い機構22は、図示していない気体孔から凹部2211へ圧縮気体が送り込まれた場合、回動部222の凸部2222が固定部221の凹部2211から離間する。また、凸部2222は、凹部2211へ磁力によって引き寄せられる。この離間する力と引き寄せる力が釣り合うことで、凸部2222は、凹部2211と非接触な状態で回動可能に保持される。この状態で、回動部222に固定されている
図2に示す押圧接着機構21のボンディングツール211を平行板などの対象物に押しつけると、ボンディングツール211の平面(チップ吸着面)は対象物に対して平行に倣う。そして、圧縮気体の供給を停止すると倣い機構22の凸部2222と凹部2211は磁力によって引き寄せられて固定される。
【0026】
一方、
図1および
図2に示す位置検出部23(第1位置検知部)は、ボンディングヘッド2に搭載され、回動部222の回動位置(第1回動位置)を検知し、検知した結果を示す情報(第1情報)を制御装置6へ出力する。また、位置検出部24(第2位置検知部)は、ボンディングヘッド2に搭載され、回動部222の回動位置(第2回動位置)を検知し、検知した結果を示す情報(第2情報)を制御装置6へ出力する。ここで、回動部222の回動位置は、回動部222の回動にともなう所定の変化を表す量であり、例えば、所定の計測点の移動量、所定の計測点の傾きの変化量などで表すことができる。また、計測点は、回動部222自体あるいは回動部222の回動にともなって回動する部分とすることができる。なお、位置検出部23および位置検出部24は、回動部222に接触して回動位置を検知してもよいが、非接触で回動位置を検知するものであることが望ましい。回動部222に接触して回動位置を検知する場合、回動部222の回動に対して検知動作による負荷がかかるが、非接触であればその負荷を無くすることができる。また、位置検出部23および位置検出部24は、ボンディングヘッド2の外部に設けることもできるが、ボンディングヘッド2が上下左右に移動されるものであること、サブμm程度の平行度の変化を検知できることが望ましいこと等から、ボンディングヘッド2に搭載することが望ましい。よって、位置検出部23および位置検出部24としては、非接触で回動位置を検知可能で、小型軽量化がしやすいものが好ましい。そこで、本実施形態では、位置検出部23および位置検出部24を光学式のエンコーダで構成している。なお、倣い機構の用途によっては、位置検出部は、例えば、接触式のロータリエンコーダ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レーザ距離測定装置等を用いて構成してもよい。ただし、回動部222に能動素子の取り付けが必要なセンサを用いる場合には、センサからの信号線の取り回しに注意が必要である。また、静電容量センサを用いることもできるが、価格が高い場合がある。
【0027】
次に、
図2~
図6を参照して、本実施形態の位置検出部23および位置検出部24の構成例について説明する。
図4は、
図2に示す倣い機構22の構成例を示す右側面図(部分的に網掛けして示す断面図を含む。)である。
図5および
図6は、
図2に示す位置検出部23および位置検出部24の動作例を説明するための模式図である。
【0028】
図2、
図4等に示すように、位置検出部23は、固定部221に固定された支持部材26に取り付けられている発光部232(第1発光部)および受光部233(第1受光部)と、回動部222の押さえ部材2228に取り付けられた反射部231(第1反射部)とを備える。反射部231は、反射率が高い部分と低い部分を交互に配置して形成された反射面231a(第1反射面)を有している。発光部232は、反射面231aに対して光を照射する。受光部233は、反射面231aで反射された光を受光する。なお、発光部232と受光部233は、一体的に構成されていてもよいし、個別に構成されていてもよい。
【0029】
また、位置検出部24は、固定部221に固定された支持部材26に取り付けられている発光部242(第2発光部)および受光部243(第2受光部)と、回動部222の押さえ部材2228に取り付けられた反射部241(第2反射部)とを備える。反射部241は、反射率が高い部分と低い部分を交互に配置して形成された反射面241a(第2反射面)を有している。発光部242は、反射面241aに対して光を照射する。受光部243は、反射面241aで反射された光を受光する。なお、発光部242と受光部243は、一体的に構成されていてもよいし、個別に構成されていてもよい。
【0030】
なお、
図4に示すように、本実施形態において位置検出部23は、その光軸234が回動部222の回動中心25へ向かうように、反射部231、発光部232および受光部233の向きが設定されている。この場合、反射部231は、回動部222の回動中心25を中心とする円30の接線31の方向と略平行に反射面231aを有する。なお、円30は、回動中心25を中心として部分球面2222aを含む円の同心円である。このように、位置検出部23を構成する場合の効果について
図6を参照して説明する。
【0031】
図6は、回動中心25と反射部202と送受光部201との配置関係を示す模式図である。反射部202は、
図4に示す反射部231と反射部241に対応する。反射部202の反射面202aは、
図4に示す反射面231aと反射面241aに対応する。送受光部201は、
図2に示す発光部232および受光部233と発光部242および受光部243に対応する。
図6(a)は、本実施形態における配置関係を示す模式図である。
図6(a)に示す配置関係では、反射面202aが回動中心25を中心とする円203の接線204の方向と略平行になるよう配置され、送受光部201が反射面202aと対向するよう配置されている。この場合、送受光部201と反射面202aの送信光および反射光の光軸は、送受光部201および反射面202aと回動中心25を結ぶ直線205の方向に略一致する。一方、
図6(b)は、本実施形態との比較のための配置関係を示す模式図である。
図6(b)に示す配置関係では、反射面202aは鉛直方向と平行に配置され、送受光部201が反射面202aと対向するように配置されている。この場合、送受光部201と反射面202aの送信光および反射光の光軸は、送受光部201および反射面202aと回動中心25を結ぶ直線206の方向とは大きくずれている。例えば、回動中心25を中心として一定の角度、回動部222を回動した場合、それにともなう送受光部201と反射面202a間の相対的な位置の変化は、
図6(a)に示す配置関係の変化量212の方が
図6(b)に示す配置関係の変化量213より大きい。
【0032】
なお、
図5に示すように、位置検出部23と位置検出部24は、回動部222の回動位置を互いに異なる検知位置で検知する。すなわち、位置検出部23が回動位置を検知する検知位置23a(第1検知位置)と、位置検出部24が回動位置を検知する検知位置24a(第2検知位置)が異なる。このように2つの位置検出部23と位置検出部24を用いて互いに異なる2つの位置で回動位置を検知した場合、回動の全方向にわたって変化量を検知することができる。
【0033】
また、本実施形態では、検知位置23aと回動中心25間の距離と、検知位置24aと回動中心25間の距離が同一であり、検知位置23aを含む回動中心25を中心とする円33(第1円)と、検知位置24aを含む回動中心25を中心とする円34(第2円)との鉛直方向から見たなす角が略直角である。この場合、回動部222の傾きと変位は、以下の式(1)および式(2)で求めることができる。なお、球面32は、部分球面2222aを含む球面であり、半径がR1であるとする。
【0034】
【0035】
【0036】
ここで、αは位置検出部23が検知した回動位置(移動量)である。βは位置検出部24が検知した回動位置(移動量)である。θは回動部222の傾き角(deg)である。Tdは回動中心25から距離L1での変位である。
【0037】
また、
図1に示す移動機構3は、ボンディングヘッド2を保持し、ボンディングヘッド2を水平および垂直方向に移動させる。移動機構3は、例えば、搬送装置、モータ、位置センサ等としての撮像装置等を備えて構成されている。
【0038】
倣い機構制御装置4は、例えば、圧縮気体の発生装置あるいはその制御部、圧縮機体の供給弁あるいはその制御部等を備えて構成されていて、例えば制御装置6から受信した所定の制御信号に基づき、倣い機構22へ供給する圧縮気体の供給状態を制御したり、回動駆動部27を制御したりする。
【0039】
実装装置制御装置5は、例えば、制御装置6からの所定の制御信号に基づき、移動機構3を制御したり、押圧接着機構21を制御したりする。実装装置制御装置5は、例えば、移動機構3が備える搬送装置、モータ、撮像装置等を制御したり駆動したりするための制御部と、押圧接着機構21が備えるヒータ、吸着機構の駆動装置あるいはその制御部等を備えている。
【0040】
制御装置6は、取得部61、算出部62、記憶部63、判定部64、倣い機構制御部65、実装装置制御部66を備える。制御装置6は、例えば、CPU(中央処理装置)、記憶装置、入出力装置、通信装置等を備えたコンピュータであり、記憶装置に記憶されている所定のプログラムをCPUが実行することで、各部61~66の機能を構成する。
【0041】
取得部61は、位置検出部23が出力した検知結果を示す情報と、位置検出部24が出力した検知結果を示す情報を取得する。取得部61は、取得した各情報を記憶部63に記憶する。
【0042】
算出部62は、取得部61が取得した、位置検出部23が出力した検知結果を示す情報と、位置検出部24が出力した検知結果を示す情報とに基づき、例えば、上記式(1)や式(2)を用いて、回動部222の回動位置に対応する情報を算出する。算出部62は、例えば、記憶部63が記憶している基準位置情報と、取得部61が新たに取得した位置検出部23の検知結果を示す情報および位置検出部24の検知結果を示す情報に基づいて、回動部222の基準位置からの変位を算出する。基準位置情報は、例えば、ボンディングツール211を平行板などの対象物に押しつけて対象物に対して平行に倣わせた状態の回動部222の回動位置(基準位置)に対応する情報である。算出部62は、算出した各情報を記憶部63に記憶する。
【0043】
記憶部63は、取得部61が位置検出部23および位置検出部24から取得した情報、算出部62が算出した情報等を記憶する。また、記憶部63は、取得部61が位置検出部23および位置検出部24から取得した情報に対応する上述したような基準位置情報を記憶する。
【0044】
判定部64は、算出部62が算出した回動部222の変位と所定のしきい値を比較し、変位がしきい値より大きいか否かを判定する。
【0045】
倣い機構制御部65は、倣い機構制御装置4と所定の制御信号を送受信することで、倣い機構22を制御する。
【0046】
実装装置制御部66は、実装装置制御装置5と所定の制御信号を送受信することで、移動機構3と押圧接着機構21を制御する。
【0047】
次に、
図7および
図8を参照して、
図1に示す半導体実装装置1の動作例について説明する。
図7は、
図1に示す半導体実装装置1の動作例を示すフローチャートである。
図8は、ボンディングヘッド2の動作例を模式的に示す斜視図である。なお、以下で説明する動作例では、まず、
図8(a)に示すように、ボンディングヘッド2の先端部に装着されているボンディングツール211が、平行板71に押しつけられて、倣い機構22が平行板71に対して平行に倣わされる。次に、
図8(b)に示すように、チップカセット72に搭載されている複数のチップ7の1つがボンディングツール211に吸着される。次に、
図8(c)に示すように、ボンディングツール211に吸着されたチップ7が、接着対象であるチップ76の上方まで搬送され、チップ7が実装される。なお、
図8(c)では、チップ76は、基板75に実装されていて、チップ76の上面には複数の半田バンプ77が配列されている。また、基板75は、基板ステージ74に搭載されている。基板ステージ74は、固定台73の上に水平方向に微調整可能に支持されている。
【0048】
チップ7をチップ76に接着する場合、まず、半導体実装装置1は、実装装置制御部66の制御によって、ボンディングヘッド2を平行板71の上方に移動し、倣い機構制御部65の制御と実装装置制御部66の制御によって回動部222が回動可能な状態でボンディングツール211を平行板71に押し当ててボンディングツール211の吸着面を平行板71に平行に倣わせた後、回動部222を固定することで、ボンディングツール211の平行度を調整する(ステップS101)。ここで、取得部61が、位置検出部23の検出結果と位置検出部24の検出結果を取得し、基準位置情報として記憶部63に記憶する(ステップS102)。
【0049】
次に、半導体実装装置1は、実装装置制御部66の制御によって、ボンディングヘッド2をチップカセット72に搭載されている吸着するチップ7の上方に移動し、続いてボンディングツール211の吸着面にチップ7を吸着する(ステップS104)。次に、半導体実装装置1は、実装装置制御部66の制御によって、ボンディングツール211に吸着されたチップ7を、接着対象であるチップ76の上方まで搬送する(ステップS105)。ここで、取得部61が、位置検出部23の検出結果と位置検出部24の検出結果を取得し、新たな位置情報として記憶部63に記憶する(ステップS106)。
【0050】
次に、算出部62が、記憶部63に記憶されている基準位置情報と新たな位置情報に基づき、基準位置情報に対応する回動位置(基準位置)と現在の回動位置の変位を算出する(ステップS107)。次に、判定部64が、算出部62が算出した変位と所定のしきい値を比較し、変位がしきい値より小さいか否かを判定する(ステップS108)。
【0051】
変位がしきい値より小さい場合(ステップS108で「YES」の場合)、実装装置制御部66の制御によって、ボンディングツール211に吸着されたチップ7の裏面に形成されている図示していない複数の接合端子が、チップ76の上面に配列されている複数の半田バンプ77に接着される(ステップS109)。
【0052】
一方、変位がしきい値より小さくない場合(ステップS108で「NO」の場合)、倣い機構制御部65の制御によって、倣い機構22の回動部222の回動位置が、基準位置情報が示す回動位置と一致するように、回動駆動部27によって回動部222が駆動される(ステップS110)。次に、取得部61が、再度、位置検出部23の検出結果と位置検出部24の検出結果を取得し、新たな位置情報として記憶部63に記憶する(ステップS106)。この後、上記と同様に、ステップS107以降の処理が実行される。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、位置検出部23と位置検出部24(位置検知装置)によって、ボンディングツール211の平行状態の変化を検知することができる。したがって、例えばチップを連続実装している場合に何らかの要因で調整状態が変化したときには、その状態でチップを実装しないようにすることができる。よって、平行状態の意図しない変化による接合不良を回避することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、ボンディングヘッド2に、その倣い機構22の位置を検知する位置検出部23および位置検出部24を設けている。これによって、常時あるいは適宜に、ボンディングヘッド2の先端部のボンディングツール211のヘッドチルトの状態を監視できるようになり、接合不良を未然に防ぐことができる。
【0055】
また、位置検出部23および位置検出部24は、倣い機構22の円弧状の稼働範囲に合わせて設置され、傾き方向が特定できるように90度違いに配置されている。また、位置検出部23および位置検出部24は。光学式のエンコーダで構成されている。位置検出部23および位置検出部24は、ボンディングヘッド2の先端部に取り付けられるため、小型、軽量であることが望ましい。また、ボンディングヘッド2の先端部に取り付けているので、サブミクロン精度での検知を容易に実現することができる。軽量である理由は、ボンディングヘッド2が上下に稼働する機構になっており、位置と荷重の制御が行われることによる。この荷重制御を行うときに先端重量が重いと荷重制御に影響がでてしまうからである。
【0056】
また、接触式でも検知することができるが、平行調整時にフリーの状態にする必要があるので、接触式はあまり適切ではない場合がある。また、静電容量センサなどの非接触式センサでも可能だが、価格が高いなどのデメリットがある。
【0057】
また、本実施形態によれば、平行状態に所定の変化が発生した場合、回動部222の回動位置を動的に変化させ、平行状態を元の状態に戻した後、接着工程を実施することができる。
【0058】
なお、
図7に示す動作例は、例えば、次のように変更してもよい。すなわち、変位がしきい値より小さくない場合(ステップS108で「NO」の場合)、ステップS110では、倣い機構22を駆動するのではなく、吸着しているチップ7を所定の位置で一旦解放し、ステップS101へ戻り、ステップS101以降の処理を行うようにしてもよい。この場合、回動駆動部27を省略することができる。
【0059】
また、ステップS101の平行調整は、必ずしも、チップ7を1回、接着する毎に実施する必要はない。例えば、ボンディングツール211を交換した場合に平行調整を実行するようにしてもよい。
【0060】
また、
図7に示す動作例において、ステップS109のボンディング処理の前に、基板75のそりや、積層するチップ76の傾きに合わせて、ボンディングツール211の平衡状態を調整する処理を挿入してもよい。この場合、例えば、基板75のそりや積層するチップ76の傾きを予め計測しておき、その計測結果に合わせて、平行調整された状態を再調整する。大型基板のそりや積層チップにチルトが発生した場合に有効である。
【0061】
なお、
図9に、本実施形態の実施例による計測結果を示す。
図9は、横軸を時間、縦軸を式(2)で示す変位とし、回動部222を意図的に回動させた場合の検知位置の変化を示す。「実施形態の計測結果」は、位置検出部23および位置検出部24の検知結果に基づく算出結果である。「外部計測結果」は、外部に設置したレーザ計測装置を用いて非接触で計測した値である。本実施形態の構成によってレーザ計測装置と同等の検知精度が得られることが確認された。
【0062】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、倣い機構22は、例えば特許文献2等に記載されているように積載された2組の固定部および回動部から構成されていてもよい。また、回動部が部分球面形状の凹部を有し、固定部が部分球面形状の凸部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…半導体実装装置、2…ボンディングヘッド(半導体チップ接着装置)、3…移動機構
4…倣い機構制御装置、5…実装装置制御装置、6…制御装置、21…押圧接着機構、22…倣い機構、23…位置検出部、24…位置検出部、26…支持部材、29…位置検知装置、61…取得部、62…算出部、63…記憶部、64…判定部、65…倣い機構制御部、66…実装装置制御部、211…ボンディングツール、221…固定部、222…回動部、231、241…反射部、231a、241a…反射面、232、242…発光部、233、243…受光部、2228…押さえ部材