IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図1
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図2
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図3
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図4
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図5
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図6
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図7
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図8
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図9
  • 特許-排水ヘッダーおよび配管構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】排水ヘッダーおよび配管構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20220720BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L41/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018004496
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019124028
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 武司
(72)【発明者】
【氏名】花木 博章
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-301492(JP,A)
【文献】特開2002-276018(JP,A)
【文献】特開2001-220789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12- 1/33
E03F 1/00-11/00
F16L 41/00-49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の排水設備それぞれに複数の排水枝管を介して接続される排水ヘッダーであって、
前記複数の排水枝管それぞれに接続される複数の開口部が側面に形成されたヘッダー本体と、
前記ヘッダー本体において前記ヘッダー本体の管軸方向に沿う両端部のうち、前記管軸方向の上流側の端部を閉塞する栓体と、を備え、
前記栓体において前記管軸方向の下流側を向く端面は、前記複数の開口部のうち、最も前記上流側に位置する第1開口部の下方において前記下流側に向けて張り出す張り出し部を備え、
前記張り出し部は、前記排水ヘッダーの管軸を含み鉛直方向に沿う縦断面視において前記第1開口部の開口縁に沿って延びる第1案内部を備え
前記縦断面視において、前記張り出し部の前記下流側の端部は、前記第1開口部の開口軸よりも前記上流側に位置する
排水ヘッダー。
【請求項2】
複数の排水設備それぞれに複数の排水枝管を介して接続される排水ヘッダーであって、
前記複数の排水枝管それぞれに接続される複数の開口部が側面に形成されたヘッダー本体と、
前記ヘッダー本体において前記ヘッダー本体の管軸方向に沿う両端部のうち、前記管軸方向の上流側の端部を閉塞する栓体と、を備え、
前記栓体において前記管軸方向の下流側を向く端面は、前記複数の開口部のうち、最も前記上流側に位置する第1開口部の下方において前記下流側に向けて張り出す張り出し部を備え、
前記張り出し部は、前記排水ヘッダーの管軸を含み鉛直方向に沿う縦断面視において前記第1開口部の開口縁に沿って延びる第1案内部と、前記縦断面視において、前記第1案内部から下方かつ前記下流側に延び、前記第1開口部の開口縁から下方に離間する第2案内部と、を備え、
前記第2案内部は、前記縦断面視において、前記第1開口部の開口縁における前記上流側の端部と、前記第1開口部の開口軸と、の間に位置する
排水ヘッダー。
【請求項3】
前記縦断面視において、前記第1開口部は円形状であり、前記第1案内部は前記上流側に向けて突となる曲線状であり、前記第2案内部は前記下流側に向けて突となる曲線状であり、前記第1案内部と前記第2案内部とは変曲部を介して連なっている請求項2に記載の排水ヘッダー。
【請求項4】
前記縦断面視において、前記第1開口部の開口軸が前記ヘッダー本体の鉛直方向の中央に対して上側にずらされて配置され、かつ、前記第1開口部の開口縁の鉛直方向の上端が前記ヘッダー本体の鉛直方向の上端よりも低い位置にある請求項1から3のいずれか1項に記載の排水ヘッダー。
【請求項5】
前記端面は、前記縦断面視において、前記ヘッダー本体の内周面から下方に向けて延びて前記張り出し部の上端に連なる垂下部を更に備えている請求項1から4のいずれか1項に記載の排水ヘッダー。
【請求項6】
複数の排水設備それぞれに接続される複数の排水枝管と、
前記複数の排水設備それぞれに前記複数の排水枝管を介して接続される請求項1から5のいずれか1項に記載の排水ヘッダーと、を備えている配管構造。
【請求項7】
前記複数の排水枝管は、前記第1開口部に接続される第1排水枝管を備え、
前記第1排水枝管には、前記排水設備としての節水形便器が接続される請求項6に記載の配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ヘッダーおよび配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に記載の排水ヘッダーが知られている。排水ヘッダーは、排水設備に排水枝管を介して接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-220789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の排水ヘッダーでは、汚物詰まりを改善する余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、汚物詰まりを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る排水ヘッダーは、複数の排水設備それぞれに複数の排水枝管を介して接続される排水ヘッダーであって、前記複数の排水枝管それぞれに接続される複数の開口部が側面に形成されたヘッダー本体と、前記ヘッダー本体において前記ヘッダー本体の管軸方向に沿う両端部のうち、前記管軸方向の上流側の端部を閉塞する栓体と、を備え、前記栓体において前記管軸方向の下流側を向く端面は、前記複数の開口部のうち、最も前記上流側に位置する第1開口部の下方において前記下流側に向けて張り出す張り出し部を備え、前記張り出し部は、前記排水ヘッダーの管軸を含み鉛直方向に沿う縦断面視において前記第1開口部の開口縁に沿って延びる第1案内部を備えている。
【0007】
この場合、栓体の端面が、張り出し部を備えている。したがって、仮に汚物が、ヘッダー本体内で下流側から上流側に遡上したとしても、この汚物が、ヘッダー本体の管底のうち、第1開口部よりも上流側に位置する部分に堆積することを、張り出し部によって抑えることができる。ここで、汚物が第1開口部よりも下流側に堆積している場合には、第1開口部から流入する排水によって汚物を下流側に押し流すことができるものの、汚物が第1開口部よりも上流側に堆積している場合には、このように押し流すことが難しい。そのため前述のように、汚物が第1開口部よりも上流側に堆積するのを張り出し部によって抑えることにより、ヘッダー本体内を遡上した汚物がヘッダー本体の管底に堆積するのを抑制することができる。
また張り出し部が、第1案内部を備えている。したがって、第1開口部からヘッダー本体内に流入する汚物を、第1案内部によって下流側に向けて案内することができる。これにより、第1開口部からヘッダー本体内に流入する汚物が、ヘッダー本体の管底に堆積するのを抑えることができる。
以上のように、この排水ヘッダーによれば、ヘッダー本体内を遡上した汚物や第1開口部からヘッダー本体内に流入する汚物がヘッダー本体の管底に堆積するのを抑えることができる。これにより、例えば、汚物が管底に堆積して第1開口部を閉塞するのを抑制すること等が可能になり、汚物詰まりを改善することができる。
【0008】
前記張り出し部は、前記縦断面視において、前記第1案内部から下方かつ前記下流側に延び、前記第1開口部の開口縁から下方に離間する第2案内部を更に備えていてもよい。
【0009】
この場合、張り出し部が、第1案内部に加えて第2案内部を更に備えている。したがって、第1開口部からヘッダー本体内に流入し、第1開口部からヘッダー本体の管底に向けて流下する汚物を、第2案内部によって下流側に向けて案内することができる。これにより、汚物詰まりを一層改善することができる。
【0010】
前記縦断面視において、前記第1開口部は円形状であり、前記第1案内部は前記上流側に向けて突となる曲線状であり、前記第2案内部は前記下流側に向けて突となる曲線状であり、前記第1案内部と前記第2案内部とは変曲部を介して連なっていてもよい。
【0011】
この場合、前記縦断面視において、第1案内部が上流側に向けて突となる曲線状である。したがって、例えば、第1案内部が上流側に向けて突でない場合に比べて、排水ヘッダーの容積を大きくし易くすることができる。
また、前記縦断面視において、第2案内部が下流側に向けて突となる曲線状である。これにより、例えば、第2案内部が下流側に向けて突でない場合に比べて、前記縦断面視における第2案内部の勾配をきつくし易くすることができる。
さらに、第1案内部と第2案内部とが変曲部を介して連なっている。したがって、張り出し部を滑らかに形成することが可能になり、例えば、張り出し部に汚物が引っかかるのを抑制すること等ができる。
以上より、汚物詰まりをより一層改善することができる。
【0012】
前記縦断面視において、前記張り出し部は、前記第1開口部の開口軸よりも前記上流側に位置していてもよい。
【0013】
この場合、前記縦断面視において、張り出し部が、第1開口部の開口軸よりも上流側に位置している。したがって、栓体に張り出し部を設けつつも、張り出し部がヘッダー本体内に過度に張り出して排水ヘッダーの容積が減少し過ぎるのを抑えることができる。これにより、例えば、排水ヘッダーに対して大量の排水があったときにおいても、排水ヘッダー内を満水にし難くし、排水が逆流するのを抑えること等ができる。
【0014】
前記端面は、前記縦断面視において、前記ヘッダー本体の内周面から下方に向けて延びて前記張り出し部の上端に連なる垂下部を更に備えていてもよい。
【0015】
この場合、栓体の端面が、垂下部を備えている。したがって、張り出し部の位置を、垂下部の分、下方に位置下げすることができる。これにより、例えば、第1開口部に接続される排水枝管(以下、「第1排水枝管」という。)を下方に位置下げすることが可能になり、第1排水枝管の排水勾配を確保しつつ、第1排水枝管の床下収まり性も確保すること等ができる。
【0016】
本発明に係る配管構造は、複数の排水設備それぞれに接続される複数の排水枝管と、前記複数の排水設備それぞれに前記複数の排水枝管を介して接続される前記排水ヘッダーと、を備えている。
【0017】
この場合、栓体が前記張り出し部を備える排水ヘッダーを備えているので、汚物詰まりを改善することができる。
【0018】
前記複数の排水枝管は、前記第1開口部に接続される第1排水枝管を備え、前記第1排水枝管には、前記排水設備としての節水形便器が接続されてもよい。
【0019】
この場合、第1排水枝管に、排水量が少なく、排水ヘッダーで汚物詰まりが生じ易い節水形便器(例えば、JIS A 5207:2011に規定される節水形大便器の節水I形や節水II形)が接続される。そのため前述したような、汚物詰まりを抑制することができるという作用効果を顕著に奏功させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、汚物詰まりを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る配管構造を示すブロック図である。
図2図1に示す配管構造を構成する排水ヘッダーの斜視図である。
図3図2に示す排水ヘッダーを構成する第1分割体を示す斜視図である。
図4図2に示す排水ヘッダーの横断面図である。
図5図4に示すA-A断面矢視図である。
図6図2に示す排水ヘッダーを構成する栓体の斜視図である。
図7図6に示す栓体を縦断面で破断した上で、図6とは異なる角度から見た栓体の斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る配管構造における排水ヘッダーを構成する第1分割体を示す斜視図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る配管構造における排水ヘッダーの横断面図である。
図10図9に示すB-B断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図1から図7を参照し、本発明の第1実施形態に係る配管構造1を説明する。
図1に示すように、配管構造1は、例えば、住宅用の排水を処理する住宅用排水システムとして用いられる。配管構造1は、例えば、宅地2内に建設された建物3の床下や壁内などに配置され、建物3内の複数の排水設備4から排出される排水を処理する。配管構造1は、複数の排水設備4からの排水を、例えば、建物3の宅地2内に配置された排水マス5に排出する。排水マス5に排出された排水は、公共マス6を通して図示しない下水道本管に排出される。
【0023】
なお本実施形態では、排水設備4として、節水形便器4aと、浴槽4bと、洗濯機4cと、洗面所4dと、流し台4eと、が建物3内に設けられている。
節水形便器4aとしては、例えば、JIS A 5207:2011に規定される節水形大便器であって、洗浄水量が8.5L以下の節水I形の便器や、洗浄水量が6.5L以下の節水II形の便器などが挙げられる。節水II形の便器としては、洗浄水量が4.8L以下の便器が好ましく、洗浄水量が3.8L以下の便器がより好ましい。
【0024】
配管構造1は、複数の排水設備4それぞれに接続される複数の排水枝管7と、複数の排水設備4それぞれに複数の排水枝管7を介して接続される排水ヘッダー10と、を備えている。なお排水枝管7は、例えば、複数の配管および隣り合う配管同士を接続するエルボ等により形成することができる。
図2から図5に示すように、排水ヘッダー10は、ヘッダー本体20と、栓体40と、変換接手60と、を備えている。
【0025】
ヘッダー本体20は、管状に形成されている。ヘッダー本体20は、水平方向に延びる。排水ヘッダー10は、排水勾配をつけた状態で建物3に設置される。排水ヘッダー10が建物3に設置された状態で、ヘッダー本体20の管軸は、水平面に対して傾斜する。排水勾配は、ヘッダー本体20の管軸方向Lに沿って上流側Uから下流側Dに向けて下がる勾配である。ヘッダー本体20における管軸方向Lの両端部のうち、ヘッダー本体20を建物3に設置したときに上側に位置する端部が上流側Uの端部であり、下側に位置する端部が下流側Dの端部である。上流側Uの端部には、栓体40が装着され、下流側Dの端部には、変換接手60が装着される。
なお以下では、管軸方向Lおよび鉛直方向Vの両方向に直交する方向を本体幅方向Wという。
【0026】
図3および図4に示すように、ヘッダー本体20の横断面視形状(管軸に直交する横断面視におけるヘッダー本体20の断面形状)は、鉛直方向Vに長い卵形状(倒立卵形状)である。ヘッダー本体20の本体幅方向Wの大きさ(幅)は、下方に向かうに従い徐々に小さくなっている。ヘッダー本体20の横断面視形状が卵形状であることにより、例えば同一量の汚水を排水する場合に、ヘッダー本体20の横断面視形状が真円形状である構成に比べて水位を高くすることができる。その結果、ヘッダー本体20の管底20aに汚物が堆積し難くなっている。
【0027】
図2に示すように、ヘッダー本体20には、脚部21と、枝管接続部22と、掃除口23と、が設けられている。
脚部21は、ヘッダー本体20を支持する。脚部21は、ヘッダー本体20の下面に設けられている。脚部21は、管軸方向Lに間隔をあけて複数配置されている。排水ヘッダー10が建物3に設置されたときに、脚部21が建物3に固定される。
【0028】
枝管接続部22は、ヘッダー本体20の側面に設けられている。枝管接続部22は、管軸方向Lに間隔をあけて複数配置されている。枝管接続部22は、ヘッダー本体20の側面から本体幅方向Wに突出している。図示の例では、枝管接続部22は、本体幅方向Wに平行に延びている。枝管接続部22は、排水枝管7の端部が挿し込まれる受け口となっている。枝管接続部22の内部は、排水枝管7に接続される開口部24となっている。開口部24は、ヘッダー本体20の側面に複数形成されている。開口部24は、その正面視において円形状(図示の例では真円形状)に形成されている。
【0029】
なお本実施形態では、枝管接続部22は、管軸方向Lに沿う各位置において、ヘッダー本体20に対して本体幅方向Wの片側のみに設けられているが、本体幅方向Wの両側に設けられていてもよい。言い換えると、枝管接続部22が、ヘッダー本体20を本体幅方向Wに挟んで一対配置されていてもよい。この場合、複数の枝管接続部22(開口部24)のうち、排水枝管7が接続されていない枝管接続部22(開口部24)を、図示しない蓋体によって閉塞する構成を採用することができる。
【0030】
掃除口23は、ヘッダー本体20の上面に設けられている。掃除口23は、管軸方向Lに沿って、各枝管接続部22と同等の位置に配置されている。掃除口23には、掃除口23を閉塞するキャップ25が着脱自在に装着されている。
【0031】
本実施形態では、ヘッダー本体20は、管軸方向Lに沿って複数の分割体26に分割される。各分割体26は、互いに同等の形状かつ同等の大きさに形成されている。図3に示すように、各分割体26は、脚部21、枝管接続部22および掃除口23を1つずつ備えている。各分割体26では、枝管接続部22および掃除口23が、管軸方向Lの中央部に配置され、脚部21が、管軸方向Lにおける上流側Uの端部に配置されている。
図5に示すように、各分割体26のうち、上流側Uの端部(以下、「受け口27」という。)は下流側Dの端部(以下、「挿し口28」という。)よりも大径であり、受け口27の開口面積は挿し口28の開口面積よりも大きい。
【0032】
図2に示すように、ヘッダー本体20は、複数の分割体26が管軸方向Lに接続されてなる。管軸方向Lに隣り合う分割体26同士では、下流側Dに位置する分割体26の受け口27内に、上流側Uに位置する分割体26の挿し口28が挿し込まれた状態で接続される(図5参照)。受け口27および挿し口28それぞれには、管軸方向Lを向く係止部27a、28aが設けられている。受け口27の係止部27aは上流側Uを向く。挿し口28の係止部28aは下流側Dを向く。挿し口28が受け口27内に挿し込まれ、互いの係止部27a、28aが管軸方向Lに突き当たることで、挿し口28の更なる挿し込みが規制される。なお係止部27a、28aは、例えば、受け口27や挿し口28において管軸方向Lを向く開口端縁などにより形成することができる。
【0033】
複数の分割体26のうち、最も上流側Uに位置する分割体26(以下、「第1分割体26a」という。)は、ヘッダー本体20の管軸方向Lの上流側Uの端部を形成する。第1分割体26aには、複数の開口部24のうち、最も上流側Uに位置する第1開口部24aが形成されている。
【0034】
排水ヘッダー10の管軸を含み鉛直方向Vに沿う縦断面視において、第1開口部24aは円形状(図示の例では、真円形状)である。前記縦断面視において、第1開口部24a(第1開口部24aの開口軸O)は、ヘッダー本体20の鉛直方向Vの中央に対して上側にずらされて配置されている。第1開口部24aはヘッダー本体20の内周面に開口していて、第1開口部24aの開口縁は、ヘッダー本体20の内周面により形成されている。図4に示すように、第1開口部24aには、複数の排水枝管7のうち、節水形便器4aに接続される第1排水枝管7aが接続される。
【0035】
図5に示すように、栓体40は、ヘッダー本体20の上流側Uの端部を閉塞する。栓体40は、ヘッダー本体20の上流側Uの端部内に嵌合されている。栓体40は、第1開口部24aに対して上流側Uに位置している。言い換えると、栓体40は、第1開口部24aをヘッダー本体20の内側から覆っていない。図示の例では、栓体40は、第1分割体26aの受け口27内に嵌合されている。
【0036】
栓体40には、規制部41が形成されている。規制部41は、栓体40の外周面40aに形成されている。規制部41は、下流側Dを向いている。栓体40が受け口27内に挿し込まれ、栓体40の規制部41が受け口27の係止部27aに対して管軸方向Lに突き当たることで、栓体40の更なる挿し込みが規制される。言い換えると、規制部41および係止部27aは、栓体40をヘッダー本体20に対して管軸方向Lに位置決めする位置決め部42を形成している。位置決め部42により、第1開口部24aに対する栓体40の相対的な位置が精度良く決められる。
【0037】
なお栓体40は、ヘッダー本体20に実質的に着脱不能に装着されていてもよく、着脱自在に装着されていてもよい。ヘッダー本体20に実質的に着脱不能に装着されている場合、栓体40の外周面40aとヘッダー本体20の内周面とが例えば接着などされていてもよい。栓体40がヘッダー本体20に着脱自在に装着されている場合、栓体40の外周面40aとヘッダー本体20の内周面との間に、図示しないリング状のゴム輪(弾性リング)が配置されていてもよい。この場合、ゴム輪を栓体40とヘッダー本体20との間で弾性変形させることで、栓体40とヘッダー本体20との間でのシール性を確保しつつ、栓体40がヘッダー本体20から不用意に離脱するのを抑制することができる。
【0038】
図5から図7に示すように、栓体40は、筒部43と、板部44と、を備えている。筒部43は、ヘッダー本体20内に嵌合されている。筒部43は、多段筒状に形成されている。本実施形態では、筒部43における段部が、前記規制部41を形成している。板部44は、筒部43における下流側Dの端部を閉塞している。
【0039】
栓体40のうち、少なくとも板部44は透明である。これにより、板部44を通してヘッダー本体20内が視認可能となり、例えば、排水ヘッダー10内を容易に点検すること等ができる。また、板部44の肉厚を確保する(例えば、板部44を受け口27や挿し口28よりも厚肉にする)ことにより、遮音性能を高めることもできる。
【0040】
板部44は、栓体40において下流側Dを向く第1端面45を形成している。第1端面45は、垂下部46と、張り出し部47と、を備えている。
垂下部46は、前記縦断面視において、ヘッダー本体20の内周面から下方に向けて延び、張り出し部47の上端に連なる。垂下部46は、前記縦断面視において直線状に延びている。前記縦断面視において、垂下部46の上端は、ヘッダー本体20の内周面上に位置し、垂下部46は、ヘッダー本体20の内周面に直交している。前記縦断面視において、垂下部46の下端は、第1開口部24aの開口縁に外接していて、垂下部46は、第1開口部24aの開口縁から接線方向に延びている。
【0041】
張り出し部47は、第1開口部24aの下方において下流側Dに向けて張り出す。前記縦断面視において、張り出し部47は、第1開口部24aの開口軸Oよりも上流側Uに位置している。張り出し部47の張り出し量は、鉛直方向Vの位置ごとに異なっている。この張り出し量は、下方に向かうに従い徐々に大きくなっている。張り出し部47の下端は、管軸方向Lに沿って第1開口部24aの開口軸Oと同等の位置に配置されている。この下端は、ヘッダー本体20の内周面上に位置している。
【0042】
張り出し部47は、第1案内部48と、第2案内部49と、変曲部50と、を備えている。第1案内部48は、前記縦断面視において第1開口部24aの開口縁に沿って延びる。図示の例では、前記縦断面視において、第1案内部48がその全長にわたって第1開口部24aの開口縁に平行に延びており、更には、第1案内部48がその全長にわたって第1開口部24aの開口縁に重なっている。第2案内部49は、前記縦断面視において、第1案内部48から下方かつ下流側Dに延び、第1開口部24aの開口縁から下方に離間する。
【0043】
前記縦断面視において、第1案内部48は上流側Uに向けて突となる曲線状であり、第2案内部49は下流側Dに向けて突となる曲線状であり、第1案内部48と第2案内部49とは変曲部50を介して連なっている。図示の例では、前記縦断面視において、張り出し部47が、第1案内部48、第2案内部49および変曲部50のみによって構成され、第1案内部48は、第2案内部49よりも鉛直方向Vに短い。言い換えると、前記縦断面視において、変曲部50は、張り出し部47内において鉛直方向Vに沿って上側に偏心していると言え、変曲部50は、張り出し部47における鉛直方向Vの中央よりも上側に位置している。前記縦断面視において、第2案内部49の曲率半径は、第1案内部48の曲率半径よりも大きい。これにより、第2案内部49の勾配をきつくし易くすることができる。
【0044】
図6および図7に示すように、垂下部46は、管軸に直交する直交面に平行である。張り出し部47の張り出し量は、鉛直方向Vの位置ごとでは異なっているものの、張り出し部47のうち、鉛直方向Vの位置が共通している部分では、本体幅方向Wの位置によらず一定になっている。言い換えると、管軸方向Lおよび本体幅方向Wの両方向に沿う断面視において、張り出し部47は、本体幅方向Wに平行である。
【0045】
栓体40は、例えばポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂を、射出成形することにより形成される。栓体40を射出成形する場合、栓体40の表面に、例えば、栓体40を形成する射出成形用の金型のゲート痕やパーティングライン(いずれも不図示)等が形成される。ゲート痕は、金型の空間内に合成樹脂を導入するゲートに起因する。パーティングラインは、金型の分割面に起因する。
【0046】
これらのゲート痕やパーティングライン等(以下、「ゲート痕など」という。)は、栓体40の表面のうち、第1端面45および外周面40aを除く部分(以下、「露出部分」という。)に形成されることが好ましい。前記露出部分としては、栓体40の内周面40b、栓体40において上流側Uを向く第2端面40c、栓体40における下流側Dの開口を閉塞する閉塞面40dが挙げられる。図示の例では、内周面40bは、筒部43の内周面により形成され、第2端面40cは、筒部43の上流側Uの端面により形成され、閉塞面40dは、板部44において上流側Uを向く面により形成される。
【0047】
なおゲート痕などが、栓体40の第1端面45に形成されていると、排水(汚水)に含まれる紙や髪の毛などの異物がゲート痕などに引っかかり、汚物の搬送を阻害するおそれがある。またゲート痕などが、栓体40の外周面40aに形成されていると、栓体40と受け口27との間に隙間が生じるおそれがある。これに対して、ゲート痕などが前記露出部分に形成されている場合、この種の不具合を抑制することができる。
【0048】
図2に示すように、変換接手60は、ヘッダー本体20の下流側Dの端部に装着されている。変換接手60は、ヘッダー本体20と、排水マス5に接続される図示しない配管と、を接続する。図示の例では、変換接手60は、卵形状をなすヘッダー本体20と、真円形状をなす前記配管と、を接続する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る排水ヘッダー10によれば、図5に示すように、栓体40の第1端面45が、張り出し部47を備えている。したがって、仮に汚物が、ヘッダー本体20内で下流側Dから上流側Uに遡上したとしても、この汚物が、ヘッダー本体20の管底20aのうち、第1開口部24aよりも上流側Uに位置する部分に堆積することを、張り出し部47によって抑えることができる。ここで、汚物が第1開口部24aよりも下流側Dに堆積している場合には、第1開口部24aから流入する排水によって汚物を下流側Dに押し流すことができるものの、汚物が第1開口部24aよりも上流側Uに堆積している場合には、このように押し流すことが難しい。そのため前述のように、汚物が第1開口部24aよりも上流側Uに堆積するのを張り出し部47によって抑えることにより、ヘッダー本体20内を遡上した汚物がヘッダー本体20の管底20aに堆積するのを抑制することができる。
また張り出し部47が、第1案内部48を備えている。したがって、第1開口部24aからヘッダー本体20内に流入する汚物を、第1案内部48によって下流側Dに向けて案内することができる。これにより、第1開口部24aからヘッダー本体20内に流入する汚物が、ヘッダー本体20の管底20aに堆積するのを抑えることができる。
以上のように、この排水ヘッダー10によれば、ヘッダー本体20内を遡上した汚物や第1開口部24aからヘッダー本体20内に流入する汚物がヘッダー本体20の管底20aに堆積するのを抑えることができる。これにより、例えば、汚物が管底20aに堆積して第1開口部24aを閉塞するのを抑制すること等が可能になり、汚物詰まりを改善することができる。
【0050】
また張り出し部47が、第1案内部48に加えて第2案内部49を更に備えている。したがって、第1開口部24aからヘッダー本体20内に流入し、第1開口部24aからヘッダー本体20の管底20aに向けて流下する汚物を、第2案内部49によって下流側Dに向けて案内することができる。これにより、汚物詰まりを一層改善することができる。
【0051】
また前記縦断面視において、第1案内部48が上流側Uに向けて突となる曲線状である。したがって、例えば、第1案内部48が上流側Uに向けて突でない場合に比べて、排水ヘッダー10の容積を大きくし易くすることができる。
また、前記縦断面視において、第2案内部49が下流側Dに向けて突となる曲線状である。これにより、例えば、第2案内部49が下流側Dに向けて突でない場合に比べて、前記縦断面視における第2案内部49の勾配をきつくし易くすることができる。
さらに、第1案内部48と第2案内部49とが変曲部50を介して連なっている。したがって、張り出し部47を滑らかに形成することが可能になり、例えば、張り出し部47に汚物が引っかかるのを抑制すること等ができる。
以上より、汚物詰まりをより一層改善することができる。
【0052】
また前記縦断面視において、張り出し部47が、第1開口部24aの開口軸Oよりも上流側Uに位置している。したがって、栓体40に張り出し部47を設けつつも、張り出し部47がヘッダー本体20内に過度に張り出して排水ヘッダー10の容積が減少し過ぎるのを抑えることができる。これにより、例えば、排水ヘッダー10に対して大量の排水があったときにおいても、排水ヘッダー10内を満水にし難くし、排水が逆流するのを抑えること等ができる。
【0053】
また栓体40の第1端面45が、垂下部46を備えている。したがって、張り出し部47の位置を、垂下部46の分、下方に位置下げすることができる。これにより、例えば、第1排水枝管7aを下方に位置下げすることが可能になり、第1排水枝管7aの排水勾配を確保しつつ、第1排水枝管7aの床下収まり性も確保すること等ができる。
【0054】
本実施形態に係る配管構造1によれば、栓体40が前記張り出し部47を備える排水ヘッダー10を備えているので、汚物詰まりを改善することができる。
また、第1排水枝管7aに、排水量が少なく、排水ヘッダー10で汚物詰まりが生じ易い節水形便器4aが接続される。そのため前述したような、汚物詰まりを抑制することができるという作用効果を顕著に奏功させることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る配管構造70を、図8から図10を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0056】
本実施形態に係る配管構造70では、複数の排水枝管7のうち、少なくとも第1排水枝管7aの横断面視形状が、鉛直方向Vに長い卵形状(倒立卵形状)である。図示の例では、複数の排水枝管7のうち、第1排水枝管7aの横断面視形状だけが、節水形便器4aに接続される第1の端部から、ヘッダー本体20に接続される第2の端部に至るまでの全長にわたって卵形状であり、他の排水枝管7の横断面視形状は真円形状である。なお例えば、第1排水枝管7aが複数の配管およびエルボにより形成されている場合、第1排水枝管7aの横断面視形状が全長にわたって卵形状であることは、全ての配管やエルボの横断面視形状が卵形状であることを意味する。
【0057】
また、第1排水枝管7aが接続される第1開口部24aの横断面視形状も、前述の卵形状である。その結果、第1排水枝管7aにおける前記第2の端部の管底や第1開口部24aの底は、他の排水枝管7の管底や他の開口部24の底よりも下方に位置している。図9に示すように、第1排水枝管7aにおける第2の端部の管底(第1開口部24aの底)では、他の排水枝管7(第1開口部24aの底)よりも、ヘッダー本体20の管底20aに対する段差Sが小さい。この段差Sを小さくすることで、ヘッダー本体20の管底20aに汚物が堆積し難くなっている。
【0058】
ところで前述したように、節水形便器4aは排水量が少なく、節水形便器4aに排水枝管7を介して接続される開口部24付近の管底20aでは、汚物詰まりが生じ易い。そのため、節水形便器4aに接続される第1排水枝管7aおよび第1開口部24aの形状が前述の卵形状で段差Sが小さいことで、汚物堆積の抑制効果を顕著に奏功させることができる。この観点からは、例えば、排水ヘッダー10における複数の開口部24のうち、節水形便器4aに接続される開口部24が卵形状であることが好ましい。言い換えると、節水形便器4aが第1開口部24a(最も上流側Uに位置する開口部24)以外の開口部24に接続される場合、その開口部24および対応する排水枝管7の横断面視形状が、卵形状であることが好ましい。
【0059】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
前記実施形態では、枝管接続部22が、ヘッダー本体20の側面から本体幅方向Wに平行に突出しているが、本発明はこれに限られない。例えば、枝管接続部22が、ヘッダー本体20の側面から本体幅方向Wに対して傾斜する方向に延びていてもよい。この場合、前記縦断面視における開口部24の形状が、管軸方向Lに長い楕円形状(円形状)になってもよい。
【0061】
張り出し部47が、第2案内部49を備えていなくてもよい。第1端面45が垂下部46を備えていなくてもよい。
前記縦断面視において、張り出し部47が、第1開口部24aの開口軸Oよりも下流側Dに位置していてもよい。
【0062】
第1開口部24aに、第1排水枝管7aを介して節水形便器4aが接続されているが、本発明はこれに限られない。第1開口部24aに、浴槽4bや洗濯機4c、洗面所4dや流し台4eなどの他の排水設備4が接続されていてもよい。
【0063】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、70 配管構造
4 排水設備
4a 節水形便器
7 排水枝管
7a 第1排水枝管
10 排水ヘッダー
20 ヘッダー本体
24 開口部
24a 第1開口部
40 栓体
45 第1端面(端面)
46 垂下部
47 張り出し部
48 第1案内部
49 第2案内部
50 変曲部
D 下流側
L 管軸方向
O 開口軸
U 上流側
V 鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10