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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電磁誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
H05B6/12 322
H05B6/12 308
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018100500
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019204733
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇留野 純平
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅哉
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-218942(JP,A)
【文献】国際公開第2010/101135(WO,A1)
【文献】特開2016-143568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0142783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1共振コンデンサと接続されて第1共振回路を構成する加熱コイルと、
前記加熱コイルと磁性材料を介して磁気結合し、それぞれ第2共振コンデンサが直列接続されて第2共振回路を構成する複数の共振加熱コイルと、
直流電源と、
前記直流電源の両端子に接続されて、前記直流電源によって印加される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して、前記第1共振回路に印加するインバータ回路と、
該インバータ回路を制御する制御回路と、
を具備し、
前記共振加熱コイル上の被加熱物の有無により、前記共振加熱コイルに流れる電流が増減する、
ことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱コイルと前記共振加熱コイルとは、同一平面上に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱コイルと各前記共振加熱コイルとの間隔は、前記加熱コイルおよび各前記共振加熱コイルと被加熱物との間隔よりも狭い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱コイルと前記複数の共振加熱コイルの直下に、前記磁性材料が配置されている、
ことを特徴とする請求項1からのうち何れか一項に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記磁性材料と前記加熱コイルおよび各前記複数の共振加熱コイルとの間隔は、前記加熱コイルと各前記共振加熱コイルとの間隔よりも狭い、
ことを特徴とする請求項に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項6】
第1共振コンデンサと接続されて第1共振回路を構成する加熱コイルと、
前記加熱コイルと磁性材料を介して磁気結合し、それぞれ第2共振コンデンサが直列接続されて第2共振回路を構成する複数の共振加熱コイルと、
直流電源と、
前記直流電源の両端子に接続されて、前記直流電源によって印加される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して、前記第1共振回路に印加するインバータ回路と、
該インバータ回路を制御する制御回路と、
を具備し、
前記加熱コイルと前記複数の共振加熱コイルの直下に、前記磁性材料が配置されており、
前記加熱コイルの直下には、第1磁性材料が放射状に配置されており、
前記複数の共振加熱コイルの直下には、第2磁性材料が放射状に配置され、かつ前記第1磁性材料の一部が当該の共振加熱コイルに跨っている、
ことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記加熱コイルの直下には、第1磁性材料が放射状に配置されており、
前記複数の共振加熱コイルの直下には、第2磁性材料が放射状に配置されており、かつ前記第1磁性材料の何れかが当該第2磁性材料に近接して配置されている、
ことを特徴とする請求項に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記加熱コイルの直下と前記複数の共振加熱コイルの直下には、磁性材料が面状に配置されている、
ことを特徴とする請求項に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記インバータ回路は、
上アームと下アームを直列接続したスイッチング回路と、
前記直流電源の両端子に直列接続された2つのコンデンサで構成される前記第1共振コンデンサと、
前記加熱コイルと、
を備えることを特徴とする請求項1ないしのうち何れか一項に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記インバータ回路は、
前記第1共振回路と、
前記第1共振回路に接続されたスイッチング回路と、
を備えることを特徴とする請求項1ないしのうち何れか一項に記載の電磁誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加熱コイルを用いて鍋を加熱する電磁誘導加熱調理器、いわゆるIH(Induction Heating)クッキングヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火を使わずに鍋などの被加熱物を加熱するインバータ方式の電磁誘導加熱調理器、いわゆるIHクッキングヒータが広く用いられるようになってきている。IHクッキングヒータは、加熱コイルに高周波電流を流し、この加熱コイルに近接して配置された鉄やステンレスなどの材質で作られた鍋に渦電流を発生させ、鍋自体の電気抵抗により発熱させるものである。このように、IHクッキングヒータは、火を使わずに調理でき、安全性や調理環境の快適性が高いため、ガスレンジに代わって急速に普及している。
【0003】
従来のIHクッキングヒータでは、ガラス製のトッププレートの下側に加熱コイルが配置され、この加熱コイルには高周波電流を流すインバータが接続されている。トッププレート上に載置された鍋は、1つの加熱コイルを用いて加熱される。
しかしながら、1つの加熱コイルを用いて鍋を加熱する方式では、鍋の大きさや配置によっては、鍋底の一部しか加熱されず、加熱ムラが発生する問題がある。そこで、複数の加熱コイルを用いることで、様々な大きさや配置の鍋を適切に加熱する誘導加熱装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1の請求項1には、「所定の周波数の高周波電力を生成し、出力するインバータ回路と、前記インバータ回路から供給された高周波電力により所定の周波数の磁界を発生し、被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、被加熱物と前記加熱コイル間に設置された自己共振コイルとを備え、前記自己共振コイルは共振用コイルと共振用コンデンサから構成され、前記加熱コイルの発する磁界の周波数で自己共振する誘導加熱装置」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-60631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、被加熱物と加熱コイル間に自己共振用コイルが配置されており、自己共振用コイルから外れた位置に被加熱物が載置された場合に、効率よく加熱することができない。また、加熱コイルと自己共振用コイルが上下に重なることから、被加熱物と加熱コイルの間隔が離れてしまい、磁気結合の低下により加熱効率が悪化してしまう。
そこで、本発明は、電磁誘導加熱調理器において、鍋の載置位置が変化した場合などであっても、効率よく鍋を加熱可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するため、本発明の電磁誘導加熱調理器は、第1共振コンデンサと接続されて第1共振回路を構成する加熱コイルと、前記加熱コイルと磁性材料を介して磁気結合し、それぞれ第2共振コンデンサが直列接続されて第2共振回路を構成する複数の共振加熱コイルと、直流電源と、前記直流電源の両端子に接続されて、前記直流電源によって印加される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して、前記第1共振回路に印加するインバータ回路と、該インバータ回路を制御する制御回路と、を具備し、前記共振加熱コイル上の被加熱物の有無により、前記共振加熱コイルに流れる電流が増減する、ことを特徴とする。
本発明の電磁誘導加熱調理器は、第1共振コンデンサと接続されて第1共振回路を構成する加熱コイルと、前記加熱コイルと磁性材料を介して磁気結合し、それぞれ第2共振コンデンサが直列接続されて第2共振回路を構成する複数の共振加熱コイルと、直流電源と、前記直流電源の両端子に接続されて、前記直流電源によって印加される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して、前記第1共振回路に印加するインバータ回路と、該インバータ回路を制御する制御回路と、を具備し、前記加熱コイルと前記複数の共振加熱コイルの直下に、前記磁性材料が配置されており、前記加熱コイルの直下には、第1磁性材料が放射状に配置されており、前記複数の共振加熱コイルの直下には、第2磁性材料が放射状に配置され、かつ前記第1磁性材料の一部が当該の共振加熱コイルに跨っている、ことを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電磁誘導加熱調理器において、鍋の載置位置が変化した場合などであっても、効率よく鍋を加熱可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における電磁誘導加熱調理器のブロック図である。
図2】電磁誘導加熱調理器の加熱コイルおよびフェライトの配置を示す斜視図である。
図3】電磁誘導加熱調理器の加熱コイルおよびフェライトの配置を示す上面図である。
図4】電磁誘導加熱調理器の加熱コイルおよびフェライトの配置を示す断面図である
図5】電磁誘導加熱調理器の鍋ずれ状態を示す上面図である。
図6】共振回路のインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
図7】第1の実施形態の第1変形例における加熱コイルおよびフェライトの配置を示す斜視図である。
図8】第1の実施形態の第1変形例における加熱コイルおよびフェライトの配置を示す断面図である。
図9】第1の実施形態の第2変形例における加熱コイルおよびフェライトの配置を示す斜視図である。
図10】第1の実施形態の第2変形例における加熱コイルおよびフェライトの配置を示す断面図である。
図11】第2の実施形態における電磁誘導加熱調理器の回路構成図である。
図12】各被加熱物の抵抗値と鉄に対するインダクタンス比率を示す図である。
図13】インバータの動作波形である。
図14】電磁誘導加熱調理器の入力電力の周波数特性である。
図15】電磁誘導加熱調理器の入力電力のDuty特性である。
図16】第3の実施形態における電磁誘導加熱調理器の回路構成図である。
図17】電磁誘導加熱調理器の動作波形である。
図18】電磁誘導加熱調理器の入力電力の周波数特性である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
《第1の実施形態》
先ず、図1図7を用いて、本発明の第1の実施形態における電磁誘導加熱調理器1を説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態における電磁誘導加熱調理器のブロック図である。
第1の実施形態の電磁誘導加熱調理器1は、直流電源として機能する電源回路2、インバータ3a~3c、共振回路4a~4c、ドライブ回路51、共振電流検出回路52、制御回路53、入力電力設定部54を備えている。電磁誘導加熱調理器1は、各インバータ3に対応する複数の加熱コイル33により、図示しないトッププレート上に載置された鍋などの被加熱物を加熱することができる。なお、各インバータ3の構成は同等であるので、以下では、インバータ3aを代表して説明する。
【0012】
インバータ3aは、スイッチング回路31、共振回路32、電流検出器37を含んで構成されている。スイッチング回路31は、電源回路2の正電極pと負電極oとの間に接続されており、電源回路2によって印加される直流電圧を、高周波の交流電圧に変換して共振回路32に印加する。共振回路32は、第1共振回路であり、加熱コイル33と共振コンデンサC0が接続された回路である。加熱コイル33には、スイッチング回路31から高周波電力が供給される。電流検出器37は、共振回路32に流れる電流を検出する。
【0013】
共振回路4aは、第2共振回路であり、共振回路32の加熱コイル33とフェライト(磁性材料の一例)を介して磁気結合する。共振回路4aは、共振加熱コイル41と共振コンデンサC1の直列回路と、共振加熱コイル42と共振コンデンサC2の直列回路と、共振加熱コイル43と共振コンデンサC3の直列回路と、共振加熱コイル44と共振コンデンサC4の直列回路として構成されている。
【0014】
インバータ3aは、制御回路53および共振電流検出回路52、入力電力設定部54、ドライブ回路51によって制御される。インバータ3aの電流検出器37の出力値は、共振電流検出回路52で演算され、その演算結果は制御回路53に出力される。入力電力設定部54は、使用者が入力電力(火力)を設定するインターフェースであり、設定された火力に応じた信号を制御回路53に出力する。制御回路53では、共振電流検出回路52から出力された演算結果と入力電力設定部54から出力された信号に応じた駆動信号を生成する。
ドライブ回路51は駆動信号に基づいて、インバータ3aのスイッチング回路31を制御するドライブ信号波形を生成する。
【0015】
次に、インバータ3aの動作を説明する。IHクッキングヒータでは、一般的に共振型インバータが用いられる。共振型のインバータ3aでは、加熱コイル33上に鍋が載置されたときの共振回路32の共振周波数frより、スイッチング回路31の駆動周波数fsが高くなるように設定して、共振負荷の特性を誘導性にする。これにより共振回路32に流れる共振電流ILは、スイッチング回路31の出力電圧に対し遅れ位相になるため、スイッチング回路31での損失増加が抑制できる。
【0016】
すなわち、共振回路32に流れる共振電流ILが、スイッチング回路31と共振回路32の接続点である出力端子tの電圧に対して遅れ位相になるように制御することでスイッチング回路31の損失を抑制できる。
また、共振加熱コイル41~44に鍋が載置されると、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44が磁気結合して共振回路32と共振回路4の共振周波数が略同一となる。これにより、共振回路32に電流が流れて加熱コイル33上に載置された鍋を加熱すると共に、共振回路4にも電流が流れ、共振加熱コイル41~44上に載置された鍋を加熱する。
【0017】
しかしながら、駆動周波数fsを固定した状態で、スイッチング回路31の導通期間を変化させ電力制御を行うと、スイッチング回路31の導通期間に共振電流ILの極性が反転し、共振電流ILがスイッチング回路31の出力電圧より進み位相になる進相モードへ移行する場合もある。進相モードは、スイッチング回路31の損失増加を招くので、共振型インバータでは避けなければならない。
【0018】
次に、図2図3を用いて、第1の実施形態の電磁誘導加熱調理器1における、複数の加熱コイル33および共振加熱コイル41~44の配列について説明する。一般に、電磁誘導加熱調理器1では、ガラス製のトッププレート(図示せず)の下に、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44が配置されている。ここでは、1つのインバータ3が内蔵する加熱コイル33と共振加熱コイル41~44とを用いて、一つの鍋を加熱する電磁誘導加熱調理器1を例に説明を進める。
【0019】
図2は、電磁誘導加熱調理器1の加熱コイル33、共振加熱コイル41~44およびフェライト34,45の配置を示す斜視図である。
図2に示した電磁誘導加熱調理器1は、上方からみて加熱コイル33の前後左右に、共振加熱コイル41~44が配置されている。これら加熱コイル33および共振加熱コイル41~44の上側には、ガラス製のトッププレート(図示せず)が配置されており、その上に鍋6が載置されている。ここで鍋6は、一点鎖線で示されている。
【0020】
加熱コイル33には、インバータ3が接続される。各共振加熱コイル41~44には、各共振コンデンサC1~C4が接続される。加熱コイル33の下部には、磁性材料のフェライト34が放射状に配置されている。共振加熱コイル41~44の下部には、磁性材料のフェライト45が放射状に配置されている。これらフェライト34,45は、磁束を有効に鍋6に誘導すると共に、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44の磁気結合を向上させる。
【0021】
加熱コイル33の直下に放射状に配置されるフェライト34の一部を共振加熱コイル41~44のフェライト45に近接させる構造とすることで、加熱コイル33との磁気結合がより増大し、漏洩磁束を低減させ、加熱効率を向上させることができる。
【0022】
図4は、電磁誘導加熱調理器1の加熱コイル33および共振加熱コイル41~44と、フェライト34,45の配置を示す断面図である。
加熱コイル33と共振加熱コイル41~44は、略同一平面上に配置されている。加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lは、加熱コイル33および共振加熱コイル41~44と鍋6との間隔Dよりも狭い。これにより加熱コイル33と共振加熱コイル41~44の磁気結合度が高められ、加熱コイル33から共振加熱コイル41~44の電力伝送効率が向上し、高範囲に鍋6を加熱することができる。
更に、加熱コイル33とフェライト34との間隔Fは、加熱コイル33と鍋6との間隔Dよりも小さく、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lよりも小さい。
また、共振加熱コイル41~44とフェライト45との間隔Fは、加熱コイル33と鍋6との間隔Dよりも狭く、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lよりも狭い。
【0023】
図5は、鍋6がずれて共振加熱コイル43上にのみ載置されている場合を示す上面図である。
図5において鍋6は、共振加熱コイル43上にのみ載置されている。この場合、加熱コイル33と共振コンデンサC0から構成される共振回路32と、加熱コイル33と磁気結合される共振加熱コイル43と共振コンデンサC3より構成される共振回路の共振周波数が略同一周波数となる。制御回路53は、その共振周波数よりわずかに高い周波数でインバータ3aを駆動する。これにより、インバータ3aから加熱コイル33を経由して共振加熱コイル43に高周波電流が流れて、鍋6を誘導加熱することができる。一方、鍋6が載置されない共振加熱コイル41,42,44は、インバータ駆動周波数と共振周波数が一致せず電流が流れない。この現象について、図6を用いて説明する。
【0024】
図6は、インバータ駆動周波数と共振回路のインピーダンス特性の関係を示すグラフである。グラフの縦軸は、共振回路のインピーダンスを示し、横軸はインバータの駆動周波数を示している。
破線で示された特性1は、鍋6が載置された共振加熱コイル43と共振コンデンサC3とで構成される共振回路4のインピーダンス特性と、加熱コイル33と共振コンデンサC0で構成される共振回路32を含むインピーダンス特性を示している。
実線で示された特性2は、鍋6が載置されていない共振加熱コイル41と共振コンデンサC1で構成される共振回路のインピーダンス特性である。
【0025】
共振加熱コイル42と共振コンデンサC2で構成される共振回路のインピーダンス特性や、共振加熱コイル44と共振コンデンサC4で構成される共振回路のインピーダンス特性は図示しないが、特性2と略同一となる。
【0026】
特性1のインバータ3aを共振周波数fr1よりわずかに高い周波数f1で駆動すると、共振回路のインピーダンスは、極小値Z0に近いZ1となる。そのため、大きな電流を共振加熱コイル43に流すことができる。これにより、共振加熱コイル43から磁束が発生し、その磁束が鍋6を鎖交することで、鍋6に渦電流が流れて鍋6自体が発熱する。
【0027】
一方、鍋6が載置されない共振加熱コイル41,42,44の共振回路では、特性2となるため、周波数f1におけるインピーダンスはZ2となる。共振加熱コイル41,42,44のインピーダンスZ2は、共振加熱コイル43のインピーダンスZ1に比べ大幅に大きな値となる。このため、共振加熱コイル41,42,44には電流が殆ど流れず、鍋6を誘導加熱することはできない。また、共振加熱コイル41,42,44には電流が殆ど流れないため、不要な放射磁界を抑制することができる。
すなわち、加熱コイル33および鍋6が載置された共振加熱コイル43のみに大きな電流を流すことができるため、コイル上の鍋6をセンサ等で検出することなく加熱することが可能となる。
なお、これは鍋6がずれて載置されている場合に限定されない。例えば共振加熱コイル41~44を覆う大鍋が加熱コイル33の中央に載置されている場合を考える。共振加熱コイル41~44の共振回路は、全て特性1となり、大鍋を効率的に加熱することができる。また、加熱コイル33の直径未満の小鍋が、加熱コイル33の中央に載置されているとき、共振加熱コイル41~44の共振回路は、全て特性2となる。よって、これら共振加熱コイル41~44には電流が殆ど流れないため、不要な放射磁界を抑制することができる。
【0028】
以上で説明したように、本実施形態の電磁誘導加熱調理器1によれば、共振加熱コイル41~44に鍋6が載置されているとき、インバータ3aが供給する電力を加熱コイル33とフェライト34とを経由して共振加熱コイル41~44に供給できる。これにより、共振加熱コイル41~44には、高周波大電流を流すことができ、加熱コイル33と共に鍋6を誘導加熱することができる。
また、共振加熱コイル41~44に鍋6が載置されていない場合は、共振回路のインピーダンスが増大するため、共振加熱コイル41~44には殆ど電流が流れない。これにより不要な放射磁界を抑制することができる。
【0029】
《第1変形例》
図7は、第1の実施形態の第1変形例における加熱コイル33、共振加熱コイル41~44およびフェライト34,45の配置を示す斜視図である。
図7に示した電磁誘導加熱調理器1は、上方からみて加熱コイル33の前後左右に、共振加熱コイル41~44が配置されている。これら加熱コイル33および共振加熱コイル41~44の上側には、ガラス製のトッププレート(図示せず)が配置されており、その上に鍋6が載置されている。ここで鍋6は、一点鎖線で示されている。
【0030】
加熱コイル33には、インバータ3が接続される。各共振加熱コイル41~44には、各共振コンデンサC1~C4が接続される。加熱コイル33の下部には、磁性材料のフェライト35が放射状に配置されており、共振加熱コイル41~44の下部に跨がっている。共振加熱コイル41~44の下部には、フェライト35と共にフェライト45が放射状に配置されている。これらフェライト34,45は、磁束を有効に鍋6に誘導すると共に、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44の磁気結合を向上させる。
加熱コイル33の直下に放射状に配置されるフェライト35の一部を共振加熱コイル41~44の下部に跨がらせる構造とすることで、加熱コイル33との磁気結合がより増大し、漏洩磁界を低減させ、加熱効率を向上させることができる。
【0031】
図8は、第1の実施形態の第1変形例における加熱コイル33、共振加熱コイル41~44およびフェライト35,45の配置を示す断面図である。
加熱コイル33と共振加熱コイル41~44は、略同一平面上に配置されている。加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lは、加熱コイル33および共振加熱コイル41~44と鍋6との間隔Dよりも狭い。これにより加熱コイル33と共振加熱コイル41~44の磁気結合度が高められ、加熱コイル33から共振加熱コイル41~44の電力伝送効率が向上し、高範囲に鍋6を加熱することができる。
【0032】
更に、加熱コイル33とフェライト35との間隔Fは、加熱コイル33と鍋6との間隔Dよりも狭く、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lよりも狭い。
また、共振加熱コイル41~44とフェライト45との間隔Fは、加熱コイル33と鍋6との間隔Dよりも狭く、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lよりも狭い。
【0033】
《第2変形例》
図9は、第1の実施形態の第2変形例における加熱コイル33、共振加熱コイル41~44およびフェライト35の配置を示す斜視図である。
図7に示した電磁誘導加熱調理器1は、上方からみて加熱コイル33の前後左右に、共振加熱コイル41~44が配置されている。これら加熱コイル33および共振加熱コイル41~44の上側には、ガラス製のトッププレート(図示せず)が配置されており、その上に鍋6が載置されている。ここで鍋6は、一点鎖線で示されている。
【0034】
加熱コイル33には、インバータ3が接続される。各共振加熱コイル41~44には、各共振コンデンサC1~C4が接続される。加熱コイル33の下部には、磁性材料のフェライト36が配置されており、共振加熱コイル41~44の下部に跨がっている。共振加熱コイル41~44の下部には、フェライト36が配置されている。フェライト36は、磁束を有効に鍋6に誘導すると共に、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44の磁気結合を向上させる。
【0035】
加熱コイル33の直下に放射状に配置されるフェライト36を共振加熱コイル41~44の下部に跨がらせる構造とすることで、加熱コイル33との磁気結合がより増大し、漏洩磁界を低減させ、加熱効率を向上させることができる。
【0036】
図10は、第1の実施形態の第2変形例における加熱コイル33、共振加熱コイル41~44およびフェライト36を示す断面図である。
加熱コイル33と共振加熱コイル41~44は、略同一平面上に配置されている。加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lは、加熱コイル33および共振加熱コイル41~44と鍋6との間隔Dよりも狭い。これにより加熱コイル33と共振加熱コイル41~44の磁気結合度が高められ、加熱コイル33から共振加熱コイル41~44の電力伝送効率が向上し、高範囲に鍋6を加熱することができる。
【0037】
更に、加熱コイル33とフェライト36との間隔Fは、加熱コイル33と鍋6との間隔Dよりも狭く、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lよりも狭い。
また、共振加熱コイル41~44とフェライト36との間隔Fは、加熱コイル33と鍋6との間隔Dよりも狭く、加熱コイル33と共振加熱コイル41~44との間隔Lよりも狭い。
【0038】
《第2の実施形態》
次に、図11から図15を用いて、スイッチング回路31にハーブブリッジ回路構成を採用した、本発明の第2の実施形態における電磁誘導加熱調理器1を説明する。なお、第1の実施形態との共通点は重複説明を省略する。
【0039】
図11は、第2の実施形態における電磁誘導加熱調理器1の回路構成である。本実施形態の電磁誘導加熱調理器1も第1の実施形態と同様に、3つのインバータ3a~3cを備えているが、インバータ3b,3cの図示は省略して説明を進める。
【0040】
図11において、電源回路2は、商用電源7からの交流電圧を直流電圧に変換し、変換した直流電圧をインバータ3aに印加するものであり、交流電圧を整流する整流回路21とインダクタL1およびフィルタコンデンサC5で構成された平滑回路からなる。そして、フィルタコンデンサC5の正電極pと負電極oとの間に、インバータ3aのスイッチング回路31が接続される。
【0041】
インバータ3aのスイッチング回路31は、パワー半導体スイッチング素子であるIGBT38とIGBT39が直列に接続されて構成される。IGBT38,39にはそれぞれダイオードD1、D2が逆方向に並列接続されている。IGBT38のコレクタ端子にはダイオードD1のカソード端子が接続され、IGBT38のエミッタ端子にはダイオードD1のアノード端子が接続されている。IGBT39のコレクタ端子にはダイオードD2のカソード端子が接続され、IGBT39のエミッタ端子にはダイオードD2のアノード端子が接続されている。
【0042】
以下では、IGBT38とダイオードD1で構成される回路を上アームと称し、IGBT39とダイオードD2で構成される回路を下アームと称する。また、IGBT38,39には、それぞれ並列にスナバコンデンサC6,C7が接続されている。スナバコンデンサC6,C7は、IGBT38またはIGBT39のターンオフ時の遮断電流によって充電あるいは放電される。スナバコンデンサC6,C7の容量は、IGBT38,39のコレクタとエミッタ間の出力容量より十分に大きいため、ターンオフ時にIGBT38,39に印加される電圧の変化は低減され、ターンオフ損失は抑制される。
【0043】
IGBT38,39の接続点である出力端子tと、電源回路2の正電極pおよび負電極oには、共振回路32が接続されている。第2の実施形態の共振回路32は、加熱コイル33と共振コンデンサC0、C8で構成される。ここで、出力端子tから加熱コイル33に向かって流れる方向を共振電流ILの正方向とする。
【0044】
電流検出器37は、共振回路32に流れる電流を検出する。共振電流検出回路52は、各インバータ3の電流検出器37の出力信号レベルを制御回路53の入力レベルに適した信号に変換する。電流検出器22は、商用電源7から入力する電流を検出する。入力電流検出回路55は、電流検出器37の出力信号レベルを制御回路53の入力レベルに適した信号に変換する。
【0045】
制御回路53は、入力電流検出回路55で検出した入力電流と共振電流検出回路52で検出した共振電流の関係から被加熱物の材質や状態を判断し、加熱動作の開始または停止を行う。被加熱物の判別は、磁性体と非磁性体とに区別する。区別する方法としては、加熱前に低電力(300W程度)で通電を行う。そのときの共振電流ILまたはIGBT38,39の電流値を検出し、その電流値により、被加熱物の材質を判別する。電流値が小さい場合には鉄などの磁性体、電流値が大きい場合は、非磁性ステンレスやアルミニウム、銅といった非磁性体の被加熱物と判別する。
【0046】
図12に周波数20kHzにおける各被加熱物の抵抗値を示す。
非磁性ステンレスでは鉄の約1/3の抵抗値となる。アルミニウムでは、鉄の約1/20の抵抗値となる。銅では、鉄の約1/25の抵抗値となる。
【0047】
また、制御回路53は、入力電力設定部54からの信号に応じてスイッチング回路31のIGBT38,39の導通期間を、ドライブ回路51を介して設定し入力電力を制御する。材質の検知は、過電流や過電圧の発生を防ぐために低電力かつ短時間で実施する必要がある。
また、図11に示すように、電流Ic1は、スイッチング回路31の上アームに流れる電流である。電流Ic2は、スイッチング回路31の下アームに流れる電流である。共振電流ILは、加熱コイル33に流れる電流である。共振電流ILrは、共振加熱コイル41に流れる電流である。電圧Vc1は、上アームのIGBT38のコレクタ端子-エミッタ端子間の電圧である。電圧Vc2は、下アームのIGBT39のコレクタ端子-エミッタ端子間の電圧である。電圧Vc3は、共振コンデンサC0の共振電圧である。共振コンデンサC0の共振電圧を、電圧Vcrとする。インバータ3の電源電圧を、電圧Vpとする。
【0048】
次に、第2の実施形態の動作を説明する。
図13は、第2の実施形態におけるインバータ3のモード1からモード4までの動作波形を示すタイムチャートである。
タイムチャートの第1番目は、ハイサイドのIGBT38の駆動信号を示している。タイムチャートの第2番目は、ロウサイドのIGBT39の駆動信号を示している。
タイムチャートの第3番目は、ハイサイドのIGBT38のコレクタに流れる電流Ic1を示している。タイムチャートの第4番目は、ハイサイドのIGBT38のコレクタ-エミッタ間の電圧Vc1を示している。
【0049】
タイムチャートの第5番目は、ロウサイドのIGBT39のコレクタに流れる電流Ic2を示している。タイムチャートの第6番目は、ロウサイドのIGBT39のコレクタ-エミッタ間の電圧Vc2を示している。タイムチャートの第7番目は、共振コンデンサC0の両端に印加される電圧Vcrを示している。
タイムチャートの第8番目は、共振コンデンサC1の両端に印加される電圧ILcを示している。タイムチャートの第9番目は、共振加熱コイル41の両端に印加される電圧ILrを示している。
【0050】
なお、何れのモードにおいても、IGBT38,39の駆動信号にはデッドタイム期間が設けられており、IGBT38,39は、相補的に駆動される。
以下で、モード1~モード4における詳細な動作を説明する。
【0051】
《モード1》
IGBT38の電流Ic1が0Aとなるタイミングからモード1が始まる。モード1の開始時にはIGBT38に電流は流れていないが、IGBT38はすでにオンしているため、モード1の開始直後からIGBT38に電流Ic1が流れ始める。このとき、IGBT38の両端電圧(コレクタ端子-エミッタ端子間の電圧Vc1)は0Vであるため、IGBT38には損失が発生しないZVZCS(Zero Voltage Zero Current Switching)ターンオンとなる。
【0052】
《モード2》
制御回路53がIGBT38を遮断するとモード2に遷移する。モード2において共振電流ILは、電源回路2→スナバコンデンサC6→加熱コイル33→共振コンデンサC0の経路と、加熱コイル33→共振コンデンサC0→スナバコンデンサC7の経路と、加熱コイル33→共振コンデンサC0→スナバコンデンサC6の経路に流れる。このとき、スナバコンデンサC6は充電され、スナバコンデンサC7は放電される。これにより、IGBT38の両端電圧は緩やかに上昇し、ZVS(Zero Voltage Switching)ターンオフとなり、スイッチング損失を小さくできる。
【0053】
スナバコンデンサC6の電圧Vc1が電源電圧(p-o間電圧)以上になると、スナバコンデンサC7の電圧Vc2は0Vとなり、ダイオードD2がオンし、共振電流ILが流れ続ける。ダイオードD2に電流が流れている期間に制御回路53は、IGBT39に対してオン信号を入力する。
【0054】
《モード3》
IGBT39の電流Ic2が0Aとなるタイミングからモード3が始まる。モード3開始時に、IGBT39に電流は流れていないが、IGBT39はすでにオンしているため、モード3の開始直後からIGBT39に電流Ic2が流れ始める。このとき、IGBT39の両端電圧(コレクタ端子-エミッタ端子間の電圧Vc2)は0Vであるため、IGBT39には損失が発生しないZVZCSターンオンとなる。
【0055】
《モード4》
制御回路53がIGBT39を遮断するとモード4に遷移する。モード4において共振電流ILは、加熱コイル33→スナバコンデンサC7→電源回路2→共振コンデンサC0の経路と、加熱コイル33→スナバコンデンサC7→共振コンデンサC0の経路と、加熱コイル33→スナバコンデンサC6→共振コンデンサC0の経路に流れる。このとき、スナバコンデンサC7は充電され、スナバコンデンサC6は放電される。これにより、IGBT39の両端電圧は緩やかに上昇し、ZVSターンオフとなり、スイッチング損失を小さくできる。
【0056】
以上のモード1からモード4までの動作を繰り返すことで、加熱コイル33と磁気結合した共振加熱コイル41を含む共振回路4に高周波電流が流れ、この高周波電流は加熱コイル33と共振加熱コイル41に磁束を発生させる。この磁束により加熱コイル33および共振加熱コイル41の上に配置された鍋6に渦電流が流れ、鍋6自体が誘導加熱によって発熱する。
【0057】
次に電力制御方法について説明する。図14は、周波数と入力電力の関係を示すグラフである。グラフの縦軸は入力電力を示し、横軸は、周波数を示す。
IHクッキングヒータは共振現象を利用して加熱コイル33に高周波の大電流を流す。このため入力電力の周波数特性は、共振特性を示す。図12に示したように、鉄の抵抗は大きいため共振Qが小さくなり、なだらかな共振特性を示す。一方、アルミや銅といった低抵抗の材質では共振Qが大きくなるため、急峻な共振特性を示す。共振Qが小さい鉄鍋などは、緩やかな共振特性を利用して、周波数による電力制御が可能である。
また、図15は、IGBT38のDutyと入力電力の関係を示すグラフである。グラフの縦軸は入力電力を示し、横軸はDutyを示す。
図14のグラフで示されるように共振Qが小さい鉄鍋などでは、Dutyによる電力制御も可能である。一方、アルミなどの急峻な共振特性の場合は、周波数制御やDuty制御では難しく、電源回路2の出力電圧を制御することで電力を制御することができる。
【0058】
以上で説明した第2の実施形態の電磁誘導加熱調理器1によれば、ハーブブリッジ回路構成を採用した場合であっても、インバータ3より加熱コイル33に高周波電力を供給することで、加熱コイル33と磁気結合した共振加熱コイル41~44にも同様の電流が流れるため鍋6を加熱することができる。
【0059】
《第3の実施形態》
次に、図16を用いて、本発明の第3の実施形態における電磁誘導加熱調理器1を説明する。なお、上述した実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0060】
図16は、第3の実施形態における電磁誘導加熱調理器1の回路構成である。
本実施形態のスイッチング回路31A(電圧共振インバータ)は、共振回路32とIGBT39が直列に接続されて構成されている。共振回路32は、加熱コイル33と共振コンデンサC0が並列に接続されて構成されている。また、IGBT39には逆並列にダイオードD2が接続されている。
【0061】
次に、図17のタイムチャートを用いて、通常の加熱動作を説明する。ここで、加熱コイル33の電流の向きは、図16の矢印方向を正とする。
タイムチャートの第1番目は、IGBT39のコレクタに流れる電流Ic1を示している。タイムチャートの第2番目は、IGBT39のコレクタ-エミッタ間の電圧Vc1を示している。タイムチャートの第3番目は、加熱コイル33に流れる電流ILを示している。
【0062】
《モード1》
モード1は、IGBT39のオフからIGBT39のコレクタ電圧がピークになるまでの期間である。モード1において、制御回路50がIGBT39をオフすると、IGBT39に流れていた電流が遮断され、加熱コイル33に蓄えられていたエネルギにより、加熱コイル33と共振コンデンサC0の経路に電流が流れる。この時、IGBT39のコレクタ電圧が正弦波状に上昇し、ゼロ電圧スイッチング(以下、ZVS)ターンオンとなる。
【0063】
《モード2》
モード2は、IGBT39のコレクタ電圧のピークから0Vになるまでの期間である。モード2において、IGBT39のコレクタ電圧がピークになると、加熱コイル33の電流が正から負に切り替わって電流の向きが反転し、共振コンデンサC0、加熱コイル33の経路に電流が流れる。
【0064】
《モード3》
モード3は、ダイオードD2の通電期間である。モード3において、共振コンデンサC0が放電され、IGBT39のコレクタ電圧が0Vになると、ダイオードD2がオンし、加熱コイル33→フィルタコンデンサC5→ダイオードD2の経路に電流が流れる。このダイオードD2の通電期間内にIGBT39のゲートをオンする。
【0065】
《モード4》
モード4は、IGBT39の通電期間である。モード4において、加熱コイル33のエネルギがなくなると、共振電流ILが負から正に切り替わる。このときIGBT39はすでにゲートがオンしているため電流が流れ始める。このときスイッチング損失の発生しないZVSターンオンになる。電流はフィルタコンデンサC5、加熱コイル33、IGBT39の経路と商用電源7、整流回路21、インダクタL1、加熱コイル33、IGBT39、整流回路21の経路に流れる。
【0066】
以上のモード1からモード4までの動作を繰り返すことで、加熱コイル33と磁気結合した共振加熱コイル41を含む共振回路4に高周波電流を流れ、加熱コイル33と共振加熱コイル41から磁束を発生させる。この磁束により加熱コイル33および共振加熱コイル41の上に配置された鍋6に渦電流が流れ、鍋6自体が誘導加熱によって発熱する。
【0067】
図18は、周波数と入力電力の関係を示すグラフである。グラフの縦軸は入力電力を示し、横軸は周波数を示している。
本実施形態は、加熱コイル33と共振コンデンサC0とが並列に接続される並列共振回路となっている。したがって、図18に示す周波数特性は下に凸になる特性を示している。並列共振においては共振点での電力が最低電力となり、周波数を下げることで電力を制御することができる。
【0068】
以上で説明した第1~第3の実施形態の電磁誘導加熱調理器によれば、電圧共振回路構成を採用した場合であっても、インバータ3より加熱コイル33に高周波電力を供給することで、加熱コイル33と磁気結合した共振加熱コイル41~44にも同様の電流が流れるため鍋6を加熱することができる。
【0069】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0070】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0071】
各実施形態において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)~(e)のようなものがある。
【0072】
(a) 加熱コイルや共振加熱コイルの下に配置する磁性材料は、フェライトに限定されず、任意のものであってもよい。
(b) 加熱コイルや共振加熱コイルの下に配置する磁性材料は、前後左右4方向の放射状に限定されず、3方向や5方向や6方向などに放射状に配置してもよい。
(c) 加熱コイルに対する共振加熱コイルの配置は、上から見て前後左右の4個に限定されない。例えば加熱コイルを中心とした三角形状に3個の共振加熱コイルを配置したり、五角形状に五個の共振加熱コイルを配置したり、六角形状に6個の共振加熱コイルを配置してもよい。
(d) 加熱コイルに接続される駆動回路の構成は、ハーフブリッジ回路構成に限られず、フルブリッジ回路構成であってもよい。
(e) 共振加熱コイルに接続される共振コンデンサの容量値をそれぞれ異なる値として、インパータによって周波数を選択的にしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 電磁誘導加熱調理器
2 電源回路 (直流電源)
21 整流回路
22 電流検出器
3,3a~3c インバータ
31 スイッチング回路
32 共振回路 (第1共振回路)
33 加熱コイル
34~36 フェライト (磁性材料)
37 電流検出器
38,39 IGBT
4,4a~4c 共振回路 (第2共振回路)
41~44 共振加熱コイル
45,46 フェライト (磁性材料)
47 電流検出器
51 ドライブ回路
52 共振電流検出回路
53 制御回路
54 入力電力設定部
55 入力電流検出回路
6 鍋 (被加熱物)
7 商用電源
L1 インダクタ
C0,C8 共振コンデンサ (第1共振コンデンサ)
C1~C4 共振コンデンサ (第2共振コンデンサ)
C5 フィルタコンデンサ
C6,C7 スナバコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18