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  • 特許-コイル導線の相間絶縁検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】コイル導線の相間絶縁検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20220720BHJP
   G01R 31/72 20200101ALI20220720BHJP
   G01R 31/34 20200101ALI20220720BHJP
【FI】
G01R31/12 Z
G01R31/72
G01R31/34 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018107656
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019211336
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 真人
(72)【発明者】
【氏名】長井 信吾
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-172985(JP,A)
【文献】特開2016-161379(JP,A)
【文献】特開2010-8199(JP,A)
【文献】特開2005-214715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/50
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相電動機の直列接続された複数のコイルを形成しているコイル導線の相間絶縁を検査する方法であって、
2相の前記コイル導線の中性点とは反対側の端にパルス電圧を印加するステップと、
前記パルス電圧の印加によって、前記2相のコイル導線の間に生じる放電を検知するステップと、
を含み、
前記パルス電圧、前記2相のコイル導線同士の各隣接位置における相間電圧が、健全なコイル導線において放電が生じる電圧以下となり、さらに、当該電動機が実際に使用される際の電圧以上となるように
(i)前記パルス電圧の上限値定められ
(ii)前記パルス電圧の立ち下がりが急峻にされ
(iii)前記立ち下がり最後に印加する電圧が逆極性となるアンダーシュート電圧を印加する、
ものである、コイル導線の相間絶縁を検査する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相電動機の直列接続された複数のコイルを形成しているコイル導線の相間絶縁を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、ステータコア、特にステータコアの一部であるティースに導線が巻回されて形成されたステータコイルを有する。このコイルを形成している導線をコイル導線と記す。三相電動機においては、三相、つまりU相、V相、W相ごとにコイル導線が設けられ、異なる相のコイル同士が隣接して配置される。各コイル導線には異なる位相で電圧が印加され、この結果、隣接する異なる相のコイル間に電位差が生じる。このとき、コイル導線の絶縁が不完全であると、隣接するコイル間で放電が生じる。よって、絶縁処理が確実になされているかの検査、つまり相間絶縁検査を行う必要がある。
【0003】
相間絶縁検査では、異なる2相のコイル導線間に電圧を印加し、2相の隣接コイル間の絶縁が確保されているかを確認する。各コイル導線の一端を接続して中性点を形成し、コイル全体が完成した後で絶縁検査をする場合、中性点に近い側のコイルの検査に必要な電圧を印加すると、中性点から遠い側のコイルには過大な電圧が印加され、逆に中性点コイルから遠い側のコイルに過大な電圧が印加されないようにすると、中性点に近い側のコイルには十分な電圧が印加されないという問題があった。下記特許文献1においては、各コイル導線の一端を接続して中性点を形成する前と後でそれぞれ検査を行う検査方法が開示されている。中性点を形成する前には、コイル導線に交流電圧を印加して中性点に近い側のコイルの絶縁検査を行い、中性点を形成した後では、パルス電圧を印加して中性点から遠い側のコイルの絶縁検査を行っている。この検査方法においては、中性点の形成前の検査を行う前に、コイル導線の中性点以外の部分の溶接および絶縁処理が済んでいる必要があり、中性点の形成前に溶接および絶縁処理する工程を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-172985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中性点の形成の前後で絶縁検査を行う場合、2回の検査が必要である。また、中性点の形成(溶接)および絶縁処理する工程とは別に中性点以外の部分の溶接および絶縁処理する工程を生産ライン上に設ける必要があり、生産ラインの設備のコストが上昇する。中性点の形成後に各隣接コイルに過不足なく電圧を印加することができれば、検査が1回で済み、生産ラインの設備コストの上昇も抑制できる。
【0006】
本発明は、1回の検査で、2相のコイル導線の各隣接コイル間に過不足なく電圧を印加することができる検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコイル導線の相間絶縁検査方法は、2相のコイル導線の中性点とは反対側の端にパルス電圧を印加するステップと、パルス電圧の印加によって、2相のコイル導線の間に生じる放電を検知するステップと、を含む。そして、パルス電圧を印加するステップにおいては、2相のコイル導線同士の各隣接位置における相間電圧が、健全なコイル導線において放電が生じる電圧以下となり、さらに、当該電動機が実際に使用される際の電圧以上となるように、パルス電圧の上限値を定め、かつパルス電圧の立ち下がりを急峻にし、さらに立ち下がり最後に印加する電圧が逆極性となるアンダーシュート電圧を印加する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パルス電圧の立ち下がりを急峻にし、さらにアンダーシュート電圧を印加することでコイルに逆起電力が生じ、この逆起電力による電圧によってコイル導線の各隣接位置において、過不足なく必要な相間電圧を印加することができる。よって、1回の電圧印加によって2相間の絶縁検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】相間絶縁検査の対象となる電動機のコイル構成を示す模式図である。
図2】1周回配列のコイル列を示す模式図である。
図3】1周回配列のコイル列の場合の隣接コイル間ごとの相間電圧を示す図である。
図4】1周回配列のコイル列の場合の印加されるパルス電圧と相間電圧の時間変化を示す図である。
図5】2周回配列のコイル列を示す模式図である。
図6】2周回配列のコイル列の場合の隣接コイル間ごとの相間電圧を示す図である。
図7】2周回配列のコイル列の場合の印加されるパルス電圧と相間電圧の時間変化を示す図である。
図8】2周回配列のコイル列の場合であって、アンダーシュート電圧がないパルス電圧を印加したときの相間電圧を示す図である。
図9】2周回配列のコイル列の場合であって、アンダーシュート電圧が図6,7の場合に比して小さいパルス電圧を印加したときの相間電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、三相電動機のコイル構成10および相間絶縁検査のための構成を示す模式図である。コイル構成10は、U相のコイル列12U、V相のコイル列12VおよびW相のコイル列12Wを有する。U相のコイル列12Uは、16個のコイルU1~U16が直列に接続されて構成される。同様に、V相のコイル列12VおよびW相のコイル列12Wも、それぞれ16個のコイルV1~V16,W1~W16が直列に接続されて構成される。各コイル列12U,12V,12Wは、コイル導線14U,14V,14Wから構成される。コイル導線14U,14V,14Wは、例えば、いくつかの部分に分けられ、これらの部分がコアに装着された後、互いに溶接されて、ステータコアのティースに巻回されたコイルU1~U16,V1~V16,W1~W16およびコイルが連なったコイル列12U,12V,12Wが形成される。三相のコイル導線14U,14V,14Wの一方の端は接続されており、この接続点が中性点Nである。三相のコイル導線14U,14V,14Wの他方の端を、入力端U,V,Wと記す。図1に示されるように、各コイルの番号は、入力端U,V,Wに近いコイルから順に付けられている。
【0011】
図2には、U相コイル列12Uに属する各コイルU1~U16のステータコア上の配置を示す図である。直列接続されたコイルU1~U16は、入力端Uの側からステータコアの周方向に沿って順に配列され、ステータコアを1周回って、中性点Nに至る。このような、コイルの配列を1周回配列と記す。V相コイル列12VおよびW相コイル列12Wについても同様に各コイルは1周回配列とされている。
【0012】
各コイル導線14U,14V,14Wにおいて、最も中性点N側のコイルU16,V16,W16から中性点Nまでのコイル導線の長さは短い方が好ましく、このためにコイルU16,V16,W16はステータコア上で互いに隣接して配置される。他のコイルも中性点に最も近いコイルU16,V16,W16からコアの周に沿って順に配列されるため、コイルU15,V15,W15、コイルU14,V14,W14、・・・、コイルU1,V1,W1と、同一番号同士のコイルが隣接して配置される。
【0013】
2相のコイル導線間の相間絶縁検査を行うために、電圧発生源16が2相の一方の入力端に接続される。他方の入力端に、異なる相のコイル導線の間での放電(部分放電)を検出する部分放電検出器18が接続される。部分放電検出器18は、コイル導線を流れる電流の波形、高周波成分等に基づき部分放電を検出する。また、放電により周囲に放出される電磁波を検出する検出器により部分放電を検出してもよい。図1は、U相とV相の相間絶縁検査のための構成を示しており、U相入力端Uに電圧発生源16が接続され、V相に部分放電検出器18が接続されている。以下、U相とV相の相間絶縁検査について説明し、他の相については、同様であるので説明を省略する。
【0014】
コイル導線同士の隣接する部分に発生する相間電圧は、コイル導線上の位置、つまり入力端U,Vからの距離により異なる。以下では、各コイルU1~U16,V1~V16の位置を相間電圧の評価における代表位置として、説明を行う。つまり、隣接コイル間の相間電圧とは、この隣接コイルを構成するコイルの位置におけるコイル導線間の相間電圧を意味する。
【0015】
図3は、1周回配列のU相のコイルU1~U16とV相のコイルV1~V16の隣接コイル間U1-V1~U16-V16の相間電圧を示す図である。縦軸の相間電圧は、時間的に変化する相間電圧の最大値を示している。コイル導線の絶縁不良のために生じる放電は、異なる相の隣接するコイル間で発生する。よって、相間絶縁検査においては、隣接コイル間の電圧が必要な電圧となるように、電圧発生源16によってコイル導線間に電圧を印加する。図3においては、入力端U,Vの相間電圧、つまり電圧発生源により印加される電圧が左端に示され、入力端U,Vに近い側の隣接コイルU1,V1から順に右に向けて相間電圧の値が示されている。
【0016】
図3に示す電圧Vcrは、絶縁処理が想定どおりになされた状態、すなわちコイル導線が健全な状態における放電開始電圧である。相間絶縁検査において、各隣接コイル間に生じる電圧は、この電圧Vcr以下にされなければならない。この電圧Vcrを上限電圧Vcrと記す。また、破線で示す電圧Vstrは、この電動機を実際に運転したときに隣接コイル間に生じる電圧であり、この電圧を実機ストレス電圧Vstrと記す。相間絶縁検査のための相間電圧は、実機ストレス電圧Vstr以上、上限電圧Vcr未満であることが必要である。
【0017】
図3に示すように、実機ストレス電圧Vstrは、概略的に右下がり、つまり中性点Nに向けて低下する傾向があるが、各コイル列12U,12V,12Wに印加される電圧が変動するために直線状には低下せず、中性点N側で盛り上がった部分が生じる。図3に示す例では、中性点N側の隣接コイル間U9-V9~U15-V15の相間電圧が、入力端U,V側の半分の隣接コイル間U1-V1~U8-V8の相間電圧を直線近似し外挿した値よりも高くなっている。
【0018】
定常電圧を入力端U,V間に印加すると、各隣接コイル間の相間電圧は、図中に示す相間電圧Vtcのように、中性点Nに向けて直線状に低下する。入力端U,Vに最も近い隣接コイル間U1-V1の相間電圧が最大となり、この相間電圧は、上限電圧Vcr未満とする必要がある。この場合、中性点Nに近い側のいくつかの隣接コイル間U11-V11~U15-V15には、検査に必要な電圧、つまり実機ストレス電圧Vstr以上の電圧が発生しない。定常電圧によって、中性点N側の隣接コイル間U11-V11~U15-V15に実機ストレス電圧Vstr以上の電圧を発生させるために、図中に示す相間電圧Vtdを生じさせる電圧を入力端U,V間に印加すると、入力端U,V側の隣接コイル間U1-V1~U8-V8の相間電圧が上限電圧Vcrを超えてしまう。このように、定常電圧の印加による相間絶縁検査を1回で行うことは難しい。この実施形態の相間絶縁の検査方法においては、パルス電圧を入力端U,V間に印加して、実機ストレス電圧Vstr以上、上限電圧Vcr未満の相間電圧Vtを得ている。
【0019】
図4は、電圧発生源16によって印加されるパルス電圧Vt0(最大値VH[V])と、このパルス電圧によって生じる相間電圧Vt4,Vt8,Vt12の時間変化を模式的に示す図である。U相コイル導線14UとV相コイル導線14Vの間にパルス電圧Vt0を印加すると、隣接コイル間に相間電圧Vt4,Vt8,Vt12が発生する。相間電圧Vt4は入力端U,V側の1つの隣接コイル間U4-V4の電圧を表し、相間電圧Vt8は中央付近の隣接コイル間U8-V8の電圧を表し、相間電圧Vt12は、中性点側の1つの隣接コイル間U12-V12の電圧を表す。この時間変化する相間電圧Vt4,Vt8,Vt12の最大値が図3に示されている。なお、図4において、他の隣接コイル間の電圧については、簡略化のために省略している。
【0020】
パルス電圧Vt0の最後において、電圧を急峻に立ち下げ、さらに入力端U,Vの電圧の極性が逆転するようにアンダーシュート電圧Lを印加すると、中性点N側の相間電圧Vt12が一時的に上昇する(図中の符号Aで示す部分)。この電圧上昇によって、図3に示すように、中性点N側の隣接コイル間U9-V9~U15-V15の相間電圧Vtが増大し、実機ストレス電圧Vstr以上の相間電圧を発生させることができる。パルス電圧Vt0の立ち下げ時間、アンダーシュートLの電圧を変化させることで、電圧上昇を変化させることができ、検査対象となる電動機の実機ストレス電圧Vstrに合わせて、これらを調節する。
【0021】
U相コイル導線14UとV相コイル導線14Vに上述のパルス電圧を印加し、部分放電を監視することで、1回の電圧印加でU相V相間の相間絶縁が検査できる。同様に、V相コイル導線14VとW相コイル導線14W間の検査、W相コイル導線14WとU相コイル導線14U間の検査を順次行う。中性点を形成した後の検査のみで全てのコイルの相間絶縁検査ができ、工程が簡略になる。
【0022】
次に、異なるコイル配列を有する電動機について説明する。図5は、U相コイル列12Uの各コイルU1~U16の配置の別例を示す図である。直列接続されたコイルU1~U16は、入力端Uの側からコアの周方向に沿って順に配列され、1周で太い線で表された半分のコイル、つまりコイルU1~U8が配列されている。細い線で表された残り半分のコイルU9~U16は、2周目において、1周目のコイルと同じ位置に順に配列される。このようなコイルの配列を2周回配列と記す。
【0023】
2周回配列の場合、実機ストレス電圧Vstrは、図6に示すように、中性点N側と、入力端U,V側との2箇所で盛り上がりが形成される。図7に示すパルス電圧Vt0を入力端U,Vに印加することで、相間電圧Vtt,Vtbが中性点N、入力端U,V側で盛り上がり、実機ストレス電圧Vstr以上の相間電圧を発生することができる。相間電圧Vttは、正の値の最大値であり、相間電圧Vtbは負の値の絶対値の最大値を示している。パルス電圧Vt0は、この例では、VH[V]、1μ秒のパルス電圧印加した後、-0.75VH[V]のアンダーシュート電圧Lを印加する電圧であり、立ち上がり時間、立ち下がり時間は、それぞれ0.1μ秒である。パルス電圧Vt0の立ち下がり時には、VH[V]から-0.75VH[V]まで、1,75VH[V]電圧が低下する。
【0024】
図7に示すように、パルス電圧Vt0を入力端U,Vに印加すると、隣接コイル間U4-V4の相間電圧Vt4は、パルス電圧Vt0と同程度まで上昇する。この最大値が正側の最大値Vttとして図6に示されている。相間電圧Vt4は、正側で最大値Vttとなった後、急激に低下し、負側の絶対値の最大値Vtbまで低下する。この負側の最大値Vtbが図6に示されている。隣接コイルU12-V12の相間電圧Vt12は、パルス電圧Vt0が立ち下がるとき、立ち下がり前より上昇し、正側の最大値Vttに達する。その後、負側の絶対値の最大値Vtbまで低下する。この正側および負側の最大値Vtt,Vtbが図6に示されている。他の隣接コイルについても同様に正側および負側の最大値Vtt,Vtbが図6に示されている。隣接コイルの絶縁は、相間電圧が正負のどちらでも検査可能であるので、正側および負側の最大値Vtt,Vtbのいずれかが実機ストレス電圧Vstr以上となればよい。図6に示すように、正側および負側の最大値Vtt,Vtbのいずれか一方が、実機ストレス電圧Vstrを超えているので、相間絶縁検査が可能であることが理解できる。
【0025】
入力端U,V側の隣接コイル間では、入力端U,Vから離れた隣接コイル間、例えば隣接コイル間U4-V4の相間電圧Vt4で示されるように、正側の最大値Vttがパルス電圧Vt0の最大値と同程度まで上昇している。これは、パルス電圧Vt0の立ち上がりを急峻にしたことによる効果である。したがって、パルス電圧Vt0の立ち上がりを急峻にすることで、入力端U,V側において、実機ストレス電圧Vstr以上の相間電圧を発生することができる。また、入力端U,V側の隣接コイルにおいて、負側の最大値Vtbも実機ストレス電圧Vstr以上となっている。これは、パルス電圧Vt0の立ち下げを急峻にし、さらにアンダーシュート電圧Lを印加したことによる効果である。
【0026】
中性点N側の相間コイル間では、例えば隣接コイル間U12-V12の相間電圧Vt12で示されるように、パルス電圧Vt0の立ち下がり直後に正側の最大値Vttが立ち下がり以前に比べて上昇し、実機ストレス電圧Vstr以上となっている。これは、パルス電圧Vt0の立ち下がりを急峻にしたことによる効果である。
【0027】
以上のことから、パルス電圧Vt0の立ち下がりを急峻にし、アンダーシュート電圧Lを印加することで、全ての隣接コイル間の相間電圧を実機ストレス電圧Vstr以上とすることができる。
【0028】
U相コイル導線14UとV相コイル導線14Vに上述のパルス電圧を印加し、部分放電を監視することで、1回の電圧印加でU相V相間の相間絶縁が検査できる。同様に、V相コイル導線14VとW相コイル導線14W間の検査、W相コイル導線14WとU相コイル導線14U間の検査を順次行う。中性点を形成した後の検査のみで全てのコイルの相間絶縁検査ができ、工程が簡略になる。
【0029】
図8,9は、図7に示すパルス電圧Vt0のアンダーシュート電圧を変えたときの隣接コイル間の相間電圧を示す図である。図8は、アンダーシュート電圧を印加しない場合、図9はアンダーシュート電圧を-0.2VH[V]とした場合を示す。入力端U,V側では、パルス電圧の立ち上がりを急峻としたことによる効果により、相間電圧の正側の最大値Vttが実機ストレス電圧Vstr以上となっている。一方、相間電圧の負側の最大値Vtbは、実機ストレス電圧Vstrに比べ大幅に小さい。
【0030】
中性点N側では、パルス電圧の立ち下げを急峻にした効果により、正側の最大値Vttが実機ストレス電圧Vstr近くまで上昇している。アンダーシュート電圧を印加する(図9)ことで正側の最大値Vttがより上昇することが分かる。図9の場合、実機ストレス電圧Vstrに達していないが、電動機のコア形状、コイルの巻数、コイルの形状などが異なる電動機の場合には、アンダーシュート電圧が比較的小さい場合であっても、実機ストレス電圧Vstr以上の相間電圧を発生できることが考えられる。また、立ち下がりをより急峻にすることによっても実機ストレス電圧Vstr以上の相間電圧を発生できることが考えられる。したがって、パルス電圧の立ち上がりを急峻にすることで入力端U,V側の隣接コイル間の相間電圧を上昇させ、パルス電圧の立ち下がりを急峻にすること、またはこれに加えてアンダーシュート電圧を印加することで中性点N側の隣接コイル間の相間電圧を上昇させるようにすることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 コイル構成、12U U相コイル列、12V V相コイル列、12W W相コイル列、14U U相コイル導線、14V V相コイル導線、14W W相コイル導線、16 電圧発生源、18 部分放電検出器、U1~U16 U相コイル、V1~V16 V相コイル、W1~W16 W相コイル、U U相入力端、V V相入力端、W W相入力端、Vcr 上限電圧、Vstr 実機ストレス電圧、Vt0 パルス電圧、Vt 相間電圧 Vtt、相間電圧の正側の最大値、Vtb 相間電圧の負側の最大値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9