(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
F28F 13/12 20060101AFI20220720BHJP
F28D 1/06 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
F28F13/12 D
F28D1/06 A
(21)【出願番号】P 2018124192
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2017242409
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505292111
【氏名又は名称】ジオシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高杉 真司
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-133232(JP,A)
【文献】特開2004-305206(JP,A)
【文献】特表2010-538190(JP,A)
【文献】特開2005-124434(JP,A)
【文献】特開2016-169932(JP,A)
【文献】特開2017-101906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 13/12
F28D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水等の熱源水が貯留される貯水槽と、利用側の熱媒体が循環され
上記貯水槽内に浸漬される熱交換器と
、上記貯水槽内で上記熱交換器の熱交換面に沿って空気を吹き出す空気噴出手段とを備え、上記熱交換器には、熱媒体流入側の第1端管と熱媒体流出側の第2端管との間に可撓性を有する複数本の熱交換チューブを並列的に接続してなる面状熱交換器が用いられるとともに、上記空気噴出手段として、所定の間隔をもって形成された複数の空気噴出孔を有する空気供給ホースが用いられ、上記面状熱交換器と上記空気供給ホースは、渦巻き状に巻かれた状態で上記貯水槽内に収納され、上記面状熱交換器は、隣接する内層と外層との間の層間に配置される複数本のスペーサパイプを有し、上記各スペーサパイプは、上記面状熱交換器の底部から下方に突出する脚部を備え、上記脚部に上記空気供給ホースが支持され、上記空気噴出孔から上記層間に向けて空気が噴出され、上記熱源水と上記熱媒体との熱交換を行う熱交換装置において、
給水ポンプに接続される熱源水供給ホースをさらに含み、上記熱源水供給ホースには、所定の間隔をもって複数の水噴出孔が形成されており、上記熱源水供給ホースが上記空気供給ホースとともに上記脚部に渦巻き状として支持されており、上記水噴出孔から上記層間に向けて上記熱源水が噴出されることを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
上記熱源水供給ホースは、上記面状熱交換器と上記空気供給ホースとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
地下水等の熱源水が貯留される貯水槽と、利用側の熱媒体が循環され上記貯水槽内に浸漬される熱交換器と、上記貯水槽内で上記熱交換器の熱交換面に沿って空気を吹き出す空気噴出手段とを備え、
上記熱交換器として、上記利用側の熱媒体が流される熱媒体流路管に複数のフィンが取り付けられているフィン型熱交換器が用いられるとともに、上記空気噴出手段として、所定の間隔をもって形成された複数の空気噴出孔を有する空気供給ホースが用いられ、上記フィン型熱交換器は上記フィンの熱交換面がほぼ垂直として上記貯水槽内に浸漬され、上記空気供給ホースは上記フィンの熱交換面に沿って空気を吹き出すように上記フィン型熱交換器の下方に配置されている熱交換装置において、
複数の水噴出孔が所定の間隔をもって形成されていて給水ポンプに接続される熱源水供給ホースをさらに含み、上記熱源水供給ホースが上記空気供給ホースと上記フィン付き熱交換器との間に配置されていることを特徴とする熱交換装置。
【請求項4】
上記空気供給ホースとして、点滴灌漑用ホースを用いることを特徴とする
請求項1または3に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水や河川等の水を熱源水として利用側の熱媒体との間で熱交換を行う熱交換装置に関し、さらに詳しく言えば、その熱交換効率をより高める技術に関するものである。
【0002】
特許文献1には、熱交換器として平面型の可撓性を有する面状熱交換器(熱交換シート)を用い、井戸から汲み上げた地下水(熱源水)を貯留する貯水槽内に、熱交換シートを渦巻き状に丸めた形態として浸漬し、その熱交換シートに利用側の熱媒体を循環させて、地下水と利用側の熱媒体との間で熱交換させる熱交換装置が記載されている。
【0003】
この種の熱交換装置において、貯水槽内に対流を起こすため、その槽底部にまで地下水供給ホースを引き回し、給水ポンプを運転して、槽底部から地下水を供給するようにしているが、給水停止時にも対流が途絶えないようにする必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の発明では、給水停止時にも対流が途絶えないようにするため、また、給水中であっても対流をより促進させることを目的として、空気供給ホースを貯水槽の底部に配置し、ブロワーより空気供給ホースを介して圧搾空気を槽底部から噴出するようにしている。
【0005】
これによれば、貯水槽の底部から噴出する空気泡の上昇に伴って貯水槽内に対流が生ずるが、なおも改善する余地が残されている。すなわち、熱交換効率をより高めるには、熱交換面に沿う対流を促進させることが好ましいが、この点が考慮されていない。
【0006】
特に、可撓性を有する熱交換シートを渦巻き状に丸めて使用する場合、その弾性復元力によって隣接する内層と外層とが密着し、その間に空気泡が通りにくくなるため、対流による効果が活かされない。
【0007】
また、別の問題として、従来装置では、地下水用の給水ホース、圧搾空気用の空気供給ホース、渦巻き状に丸めた熱交換シートを別々に貯水槽内に収納するようにしているため、その搬入・設置作業が繁雑であり、この点も改善する余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、貯水槽内に対流を生じさせる空気噴出手段を有する熱交換装置において、熱交換器の熱交換面に沿って空気泡が上昇するようにして熱交換効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、請求項1に係る発明は、地下水等の熱源水が貯留される貯水槽と、利用側の熱媒体が循環され上記貯水槽内に浸漬される熱交換器と、上記貯水槽内で上記熱交換器の熱交換面に沿って空気を吹き出す空気噴出手段とを備え、上記熱交換器には、熱媒体流入側の第1端管と熱媒体流出側の第2端管との間に可撓性を有する複数本の熱交換チューブを並列的に接続してなる面状熱交換器が用いられるとともに、上記空気噴出手段として、所定の間隔をもって形成された複数の空気噴出孔を有する空気供給ホースが用いられ、上記面状熱交換器と上記空気供給ホースは、渦巻き状に巻かれた状態で上記貯水槽内に収納され、上記面状熱交換器は、隣接する内層と外層との間の層間に配置される複数本のスペーサパイプを有し、上記各スペーサパイプは、上記面状熱交換器の底部から下方に突出する脚部を備え、上記脚部に上記空気供給ホースが支持され、上記空気噴出孔から上記層間に向けて空気が噴出され、上記熱源水と上記熱媒体との熱交換を行う熱交換装置において、
給水ポンプに接続される熱源水供給ホースをさらに含み、上記熱源水供給ホースには、所定の間隔をもって複数の水噴出孔が形成されており、上記熱源水供給ホースが上記空気供給ホースとともに上記脚部に渦巻き状として支持されており、上記水噴出孔から上記層間に向けて上記熱源水が噴出されることを特徴としている。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記熱源水供給ホースは、上記面状熱交換器と上記空気供給ホースとの間に配置されていることを特徴としている。
【0016】
請求項3に係る発明は、地下水等の熱源水が貯留される貯水槽と、利用側の熱媒体が循環され上記貯水槽内に浸漬される熱交換器と、上記貯水槽内で上記熱交換器の熱交換面に沿って空気を吹き出す空気噴出手段とを備え、上記熱交換器として、上記利用側の熱媒体が流される熱媒体流路管に複数のフィンが取り付けられているフィン型熱交換器が用いられるとともに、上記空気噴出手段として、所定の間隔をもって形成された複数の空気噴出孔を有する空気供給ホースが用いられ、上記フィン型熱交換器は上記フィンの熱交換面がほぼ垂直として上記貯水槽内に浸漬され、上記空気供給ホースは上記フィンの熱交換面に沿って空気を吹き出すように上記フィン型熱交換器の下方に配置されている熱交換装置において、
複数の水噴出孔が所定の間隔をもって形成されていて給水ポンプに接続される熱源水供給ホースをさらに含み、上記熱源水供給ホースが上記空気供給ホースと上記フィン付き熱交換器との間に配置されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項4に係る発明は、請求項1または3において、上記空気供給ホースとして、点滴灌漑用ホースを用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱交換器(フィン付き熱交換器であってもよいが、好ましくは可撓性を有する面状熱交換器)の底部に、その熱交換面に沿って空気を吹き出す空気噴出手段を設けたことにより、熱交換面に沿う対流が促進され、熱交換率がより高められる。
【0020】
また、熱交換器の底部に、空気噴出手段(空気供給ホース)を好ましくは熱源水供給ホースを含めて一体として備えることにより、貯水槽内への搬入・設置作業性が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る熱交換装置の構成を示す模式図。
【
図2】上記熱交換装置の
図1における模式的な平面図。
【
図4】上記熱交換装置に適用される平面型熱交換シートを示す斜視図。
【
図5】上記平面型熱交換シートの別の例を示す斜視図。
【
図6】本発明の第2実施形態でフィン付き熱交換器を含む熱交換装置を示す斜視図。
【
図7】空気供給ホースの第1の配管接続例を示す模式図。
【
図8】空気供給ホースの第2の配管接続例を示す模式図。
【
図9】空気供給ホースとして点滴灌漑用ホースを用いた場合の第1の配管接続例を示す模式図。
【
図10】空気供給ホースに点滴灌漑用ホースを用いた場合の第2の配管接続例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、
図1ないし
図5を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
図1および
図2を参照して、この実施形態(第1実施形態)に係る熱交換装置1は、基本的な構成として、貯水槽10と、貯水槽10内に収納される熱交換器20と、貯水槽10内に熱源水を供給する熱源水供給手段30と、積極的に対流を起こす空気噴出手段40とを備えている。
【0024】
貯水槽10は、地面に掘削された貯水池であってもよいし、地表に設置された貯水タンクであってもよい。また、河川の一部が使用されてもよい。この実施形態では、貯水槽10を貯水タンクとしている。
【0025】
熱交換器20は、後述する第2実施形態のように、金属製のフィン型熱交換器であってもよいが、この第1実施形態では、熱交換器20として、
図4に示すように、熱媒体流入側の第1端管211と熱媒体流出側の第2端管212との間に複数本の熱交換チューブ213を並列的に接続してなる面状熱交換器21を採用している。第1端管211は下端に熱媒体流入口を有し、これに対して、第2端管212は上端に熱媒体流出口を備えている。
【0026】
各熱交換チューブ213は、第1端管211と第2端管212とに連通しており、熱媒体は、図示しない利用側機器から第1端管211に供給され、各熱交換チューブ213を通って第2端管212に向けて流れつつ熱源水との間で熱交換し、第2端管212から上記利用側機器に戻される。
【0027】
熱交換チューブ213は、可撓性を有する合成樹脂チューブ、例えばポリエチレン製チューブであってよい。一例として、熱交換チューブ213は、φ6mm×長さ5.6mのチューブで、端管211,212の間に117本が梁部材214により間隔を揃えて平行に配置され、見かけ上1枚のシート状を呈していることから、面状熱交換器21は熱交換シートとも呼ばれ、以下、面状熱交換器21を熱交換シートと言うことがある。
【0028】
この実施形態において、熱交換シート21は、貯水槽10内に配置するにあたって、
図2に示すように、渦巻き状に丸められ、図示しない透水性を有するバスケット内に収納されることから、渦巻き状に丸めた円筒状の熱交換シート21をバスケット型という。
【0029】
熱交換シート21を渦巻き状に丸めると、熱交換チューブ213の弾性復元力によって隣接する内層と外層とが密着するため、その層間には対流水が通りにくくなる。
【0030】
そこで、この実施形態では、熱交換シート21を渦巻き状に丸める際、隣接する内層と外層との間に、例えば塩ビ管からなる複数本のスペーサパイプ23を適宜の間隔で介在させて、隣接する内層と外層との間に隙間が生ずるようにしている。
【0031】
スペーサパイプ23の外径は任意に選択されてよいが、長さ(軸長)は熱交換シート21の幅よりも大きく、
図1,
図3に示すように、スペーサパイプ23は、熱交換シート21の底部から下方に突出する脚部231を備えている。
【0032】
バスケット型の円筒状を呈する熱交換シート21は、縦置き型として、すなわちその軸線がほぼ垂直(複数本の熱交換チューブ213を含む熱交換面がほぼ垂直)となるようにして貯水槽10内に配置される。
【0033】
熱媒体流入側の第1端管211と熱媒体流出側の第2端管212は、図示しない利用側機器が備える例えばヒートポンプの一次側に接続され、熱交換シート21内には、不凍液等の利用側の熱媒体が循環するように流される。
【0034】
この実施形態において、熱源水供給手段30として、熱源水供給ホース31が用いられる。
図2と
図3を併せて参照して、熱源水供給ホース31は、熱交換シート21と同じく渦巻き状として、各スペーサパイプ23の脚部231を貫通し、貯水槽10の底部側において、脚部231にほぼ水平に支持されている。
【0035】
熱源水供給ホース31の上面(熱交換シート21の底部側と対向する面)には、所定の間隔をもって複数の水噴出孔311が形成されている。この実施形態において、熱源水供給ホース31には、給水ポンプP1より接続配管32を介して熱源水が供給される。供給される熱源水は、地下水(井戸水)や河川水、工業排水、農業用水、湧水等を例示することができる。
【0036】
貯水槽10の上部から、排水ポンプP2を有する排水管33が引き出されている。排水ポンプP2は、図示しないフロートスイッチにて熱源水の上限レベルが検知されると、運転を開始し、余剰の熱源水を排水する。なお、排水ポンプP2によらず、オーバーフロー方式で余剰の熱源水を排水するようにしてもよい。
【0037】
この実施形態において、空気噴出手段40として、空気供給ホース41が用いられている。
図2と
図3を併せて参照して、空気供給ホース41は、熱交換シート21と同じく渦巻き状として、各スペーサパイプ23の脚部231を貫通し、貯水槽10の底部側において、熱源水供給ホース31の下側で脚部231にほぼ水平に支持されている。
【0038】
空気供給ホース41の上面(熱交換シート21の底部側と対向する面)には、所定の間隔をもって複数の空気噴出孔411が形成されている。空気供給ホース41には、ブロワーP3より接続配管42を介して圧搾空気が供給される。
【0039】
熱源水供給ホース31と空気供給ホース41は、貯水槽10の上から見て、
図2に示されているように、上下重なるように配置され、この実施形態では、好ましい態様として、熱源水供給ホース31が上側で、空気供給ホース41がその下側に配置されているが、場合によっては、空気供給ホース41を上側とし、熱源水供給ホース31をその下側としてもよい。
【0040】
この熱交換装置1によれば、給水ポンプP1から供給される熱源水は、熱源水供給ホース31の各水噴出孔311より、熱交換シート21のスペーサパイプ23にて間隔が保持されている内層と外層の間の隙間に向けて噴射される。
【0041】
また、ブロワーP3から供給される圧搾空気は、空気供給ホース41の各空気噴出孔411より、同じく、熱交換シート21のスペーサパイプ23にて間隔が保持されている内層と外層の間の隙間に向けて噴射される。
【0042】
これにより、貯水槽10内には、熱交換シート21の隣接する内層と外層の間を通る大きな対流が生ずるため、熱源水と利用側の熱媒体との熱交換率が大幅に高められる。
【0043】
また、熱源水供給ホース31と空気供給ホース41はともに、スペーサパイプ23の脚部231に支持されるため、熱交換シート21、熱源水供給ホース31、空気供給ホース41を一つの熱交換ユニットとして貯水槽10内に収納することができ、貯水槽10内への搬入・設置作業性が大幅に改善される。
【0044】
第1実施形態の別の例として、
図5に示すように、熱交換シート(面状熱交換器)21の下辺に沿って空気供給ホース41を沿わせて、例えば梁部材214にて吊り下げてもよく、このような空気供給ホース41を有する熱交換シート21も本発明に含まれる。
【0045】
この空気供給ホース41を有する熱交換シート21は、空気供給ホース41を下側とし熱交換面(複数本の互いに平行となるように配列された熱交換チューブ213を含む仮想の平面)をほぼ垂直に縦置きすることを条件として、真っ直ぐに延ばされた状態、ジグザク状に折り曲げた状態、また、上記実施形態のように渦巻き状に丸めた状態等として使用することができる。
【0046】
いずれしても、空気供給ホース41より、熱交換シート21の熱交換面に沿ってその下方から圧縮空気が空気泡として噴出され、熱交換面に沿って熱源水の対流が促進されるため、熱源水と利用側熱媒体との熱交換が効率的に行われる。また、熱交換シート21に空気供給ホース41が取り付けられているため、貯水槽への搬入・設置等の取り扱いも容易である。
【0047】
次に、
図6により、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、熱交換器20として、フィン付き熱交換器25が用いられる。
【0048】
図6に例示したフィン付き熱交換器25は、利用側の熱媒体が流される熱媒体流路管251に短冊状の金属板からなる複数のフィン252を取り付けたエアコン等に多用されている熱交換器と同じ形態であるが、暖房機として用いられるオイルヒータや自動車のラジエータのような形態の熱交換器であってもよい。
【0049】
このフィン付き熱交換器25は、フィン252の熱交換面(平板面)がほぼ垂直となるようにして貯水槽内に浸漬され、その下方に、空気噴出手段として、所定の間隔をもって形成された複数の空気噴出孔411を有する空気供給ホース41が配置される。
【0050】
空気供給ホース41は、フィン付き熱交換器25の投影面積内においてほぼ均等に空気泡がフィン付き熱交換器25に向かうように例えばジグザグ状に配置されることが好ましい。
【0051】
図6には図示しないが、この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同じく、所定の間隔を持って形成された複数の水噴出孔311を有する熱源水供給ホース31が用いられてもよい。この場合、熱源水供給ホース31は空気供給ホース41の上方、すなわち、空気供給ホース41とフィン付き熱交換器25との間に配置されることが好ましい。
【0052】
図6において、フィン付き熱交換器25は、短冊状フィン252の短辺側がほぼ垂直、長辺側がほぼ水平となる横に寝かされた状態で貯水槽内に入れられるが、短冊状フィン252の長辺側がほぼ垂直、短辺側がほぼ水平となる縦に起こされた状態で貯水槽内に入れられてもよい。
【0053】
また、空気供給ホース41および/または熱源水供給ホース31は、図示しない連結具を介してフィン付き熱交換器25に連結されユニット化されてもよい。
【0054】
いずれにしても、本発明の熱交換装置によれば、熱交換器の熱交換面に沿って空気を吹き出す空気噴出手段を設けたことにより、熱交換面に沿う対流が促進され、熱交換率がより高められる。
【0055】
ところで、
図2および
図5に示す態様において、空気供給ホース41の両端のうち、その先端(一端)を図示しない閉止キャップ等により閉じて、後端(他端)をブロワーP3からの接続配管42に接続すると、接続側の後端から閉じられている先端に行くにしたがって空気噴出孔411からの噴出空気量が漸次少なくなり、熱交換シート21に対する対流に偏りが生ずる。
【0056】
そこで、
図2に示す空気供給ホース41を円筒状に巻かれる熱交換シート21に沿って渦巻き状に配管する態様の場合、
図7に示すように、チーズ型管継手51を用い、その対向する第1接続口51aと第2接続口51bに、空気供給ホース41の両端を接続し、分岐口である第3接続口51cに、ブロワーP3からの接続配管42を接続するようにしている。
【0057】
また、
図5の空気供給ホース41を平面状に展開した熱交換シート21に沿って直線状に配管する態様の場合にも、
図8に示すように、チーズ型管継手51を用い、その対向する第1接続口51aと第2接続口51bに空気供給ホース41の両端を接続し、分岐口である第3接続口51cにブロワーP3からの接続配管42を接続するようにしている。
【0058】
これによれば、空気供給ホース41の両端から圧搾空気が供給されるため、多数ある空気噴出孔411からの噴出空気量がほぼ均一化されるが、チーズ型管継手51を必要とし、また、その接続作業にも手間がかかる。
【0059】
特に、
図8に示すように、空気供給ホース41を多列に配置する場合には、それに伴って用いるチーズ型管継手51の個数も増える。一例として
図8のように、空気供給ホース41を2列に配置する場合には、チーズ型管継手51が3個必要となる。
【0060】
この点を改善するため、別の実施形態として、空気供給ホース41に点滴(滴下)灌漑用ホース(点滴灌漑用チューブ、ドリップチューブ等とも呼ばれる)を用いる。
図9、
図10に、空気供給ホース41に代えて点滴灌漑用ホース45を用いた例を示す
【0061】
点滴灌漑用ホース45は、所定の間隔で開けられている各吐水口451に水圧制御エミッタが内蔵されており、各吐水口451より植物栽培用の水をほぼ同量として滴下する(点滴灌水)。
【0062】
このように、点滴灌漑用ホースは本来散水用であるが、水圧制御エミッタは空気に対しても同様に機能し、実際に、点滴灌漑用ホース45を空気供給ホースとして貯水槽10内に浸漬し、圧搾空気を供給したところ、各吐水口451(空気噴出口411)よりほぼ同量の噴出空気量が得られた。
【0063】
点滴灌漑用ホース45の場合、その両端をブロワーP3からの接続配管42に接続する必要はなく、
図9に示すように、その一端452を図示しない例えば閉止キャップで閉じて、他端453を単純なソケット型管継手52を介してブロワーP3からの接続配管42に接続すればよい。
【0064】
また、
図10に示すように、点滴灌漑用ホース45を多列(この例では2列)配置とする場合でも、一方の点滴灌漑用ホース45Aの他端453をチーズ型管継手51の第1接続口51aに接続し、他方の点滴灌漑用ホース45Bの他端453を第2接続口51bに接続するとともに、第3接続口51cにブロワーP3からの接続配管42を接続すればよい。
図8の接続例に比べて、チーズ型管継手51を2個減らすことができる。
【0065】
点滴灌漑用ホースに関する文献としては、例えば、特開2010-46094号公報、特開2018-46770号公報、特開2018-82652号公報等を挙げることができる。
【0066】
また、市販品としては、ネタフィム(NETAFIM)社製の点滴チューブ、ストリームライン60/80,スパータイフーン100,ユニラムRC(いずれも商品名)、イリテック社製のハイテープドリップチューブ(商品名)、グリーンコム社製のドリップチューブ(商品名)等がある。
【0067】
なお、水圧制御エミッタによらない点滴灌漑用ホースとして、レーザー孔を採用したタキロンシーアイ社製のセフティ灌水チューブ(商品名)ある。このような点滴灌漑用ホースも対流発生用の空気供給ホースとして使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 熱交換装置
10 貯水槽
20 熱交換器
21 面状熱交換器(熱交換シート)
211,212 端管
213 熱交換チューブ
23 スペーサパイプ
231 脚部
25 フィン付き熱交換器
251 熱源水流路管
252 フィン
30 熱源水供給手段
31 熱源水供給ホース
311 水噴出孔
33 排水管
40 空気噴出手段
41 空気供給ホース
411 空気噴出孔
45 点滴灌漑用ホース
P1 給水ポンプ
P2 排水ポンプ
P3 ブロワー