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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】建物の基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20220720BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20220720BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20220720BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
E02D27/01 A
E04B1/72
E04B1/76 500Z
E04B1/80 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018145958
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020020203
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 翔
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035530(JP,A)
【文献】特開2006-322280(JP,A)
【文献】特開平11-236736(JP,A)
【文献】特開2010-084357(JP,A)
【文献】特開平09-328862(JP,A)
【文献】特開2008-208544(JP,A)
【文献】特開2004-131965(JP,A)
【文献】特開2006-226023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04B 1/72
E04B 1/76
E04B 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートで構築される建物の基礎構造であって、
スラブ状に形成された底板部と、
前記底板部の上面の周縁に沿って間隔を置いて配置された複数の束部と、
前記束部間の開口を埋めるように配置される板状の断熱材と、
前記断熱材の外側面側に配置される保護板とを備え、
前記保護板は、両側縁がそれぞれ前記束部の側縁部を覆うとともに、下縁が前記底板部の上縁部を覆うものであって、
前記束部の外側面と前記保護板の外側面とが、面一に形成されることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項2】
コンクリートで構築される建物の基礎構造であって、
スラブ状に形成された底板部と、
前記底板部の上面の周縁に沿って間隔を置いて配置された複数の束部と、
前記束部間の開口を埋めるように配置される板状の断熱材と、
前記断熱材の外側面側に配置される保護板とを備え、
前記保護板は、両側縁がそれぞれ前記束部の側縁部を覆うとともに、下縁が前記底板部の上縁部を覆うものであって、
前記保護板は、防蟻断熱材であることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項3】
コンクリートで構築される建物の基礎構造であって、
スラブ状に形成された底板部と、
前記底板部の上面の周縁に沿って間隔を置いて配置された複数の束部と、
前記束部間の開口を埋めるように配置される板状の断熱材と、
前記断熱材の外側面側に配置される保護板とを備え、
前記保護板は、両側縁がそれぞれ前記束部の側縁部を覆うとともに、下縁が前記底板部の上縁部を覆うものであって、
前記保護板と、それに対向される前記束部の前記側縁部及び前記底板部の前記上縁部とが、嵌合構造によって接合されていることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項4】
前記嵌合構造は、前記保護板に設けられる断面視略V字形の溝部と、前記束部側に設けられる断面視略V字形の凸部とによって形成されることを特徴とする請求項に記載の建物の基礎構造。
【請求項5】
コンクリートで構築される建物の基礎構造であって、
スラブ状に形成された底板部と、
前記底板部の上面の周縁に沿って間隔を置いて配置された複数の束部と、
前記束部間の開口を埋めるように配置される板状の断熱材と、
前記断熱材の外側面側に配置される保護板とを備え、
前記保護板は、両側縁がそれぞれ前記束部の側縁部を覆うとともに、下縁が前記底板部の上縁部を覆うものであって、
前記底板部の側面並びに前記束部及び前記保護板の外側面に、連続した被覆層が設けられることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項6】
前記束部の内部側に基礎断熱材が配置されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の建物の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、べた基礎などのコンクリートで構築される建物の基礎構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、鉄筋コンクリートによってスラブ状に構築された基礎スラブの周縁に、間隔を置いてプレキャストコンクリート製のブロックを配置することで形成された建物の基礎構造が開示されている。この基礎構造においては、基礎スラブ周縁に配置されたブロック間に断熱材が配置される。
【0003】
一方、特許文献3には、布基礎の側面に取り付けられた断熱材の外側面側を、防蟻シートによって覆った建築物の断熱基礎構造が開示されている。ここで、基礎スラブ周縁に配置されたブロック間に断熱材を配置する場合は、断熱材を覆う保護層も断熱材が配置された箇所にのみ配置するのが経済的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-35530号公報
【文献】特開2018-35531号公報
【文献】特開平11-350502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、部分的に保護層を設ける場合、その両側のコンクリート部分に隙間なく付着させることが求められる。
そこで、本発明は、束部間の開口を埋めるように配置された断熱材の外側面側に保護板が配置される場合に、束部及び底板部と保護板との間で高い密着性能を得ることが可能な建物の基礎構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の建物の基礎構造は、コンクリートで構築される建物の基礎構造であって、スラブ状に形成された底板部と、前記底板部の上面の周縁に沿って間隔を置いて配置された複数の束部と、前記束部間の開口を埋めるように配置される板状の断熱材と、前記断熱材の外側面側に配置される保護板とを備え、前記保護板は、両側縁がそれぞれ前記束部の側縁部を覆うとともに、下縁が前記底板部の上縁部を覆うことを特徴とする。
【0007】
ここで、前記束部の外側面と前記保護板の外側面とが、面一に形成される構成とすることができる。また、前記保護板は、防蟻断熱材であることが好ましい。
【0008】
さらに、前記保護板と、それに対向される前記束部の前記側縁部及び前記底板部の前記上縁部とが、嵌合構造によって接合されている構成とすることができる。この前記嵌合構造は、前記保護板に設けられる断面視略V字形の溝部と、前記束部側に設けられる断面視略V字形の凸部とによって形成することができる。
【0009】
また、前記底板部の側面並びに前記束部及び前記保護板の外側面に、連続した被覆層が設けられる構成とすることができる。さらに、前記束部の内部側に基礎断熱材が配置される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明の建物の基礎構造は、スラブ状に形成された底板部の上面の周縁に沿って間隔を置いて配置された複数の束部間に、その開口を埋めるように板状の断熱材が配置される。そして、断熱材の外側面側に配置される保護板は、両側縁がそれぞれ束部の側縁部を覆うとともに、下縁が底板部の上縁部を覆うように形成される。
このため、束部及び底板部と保護板との間で高い密着性能を得ることができる。
【0011】
また、束部の外側面と保護板の外側面とが面一に形成されていれば、これらに跨る外装材などが設けやすくなる。さらに、保護板が地中に埋設されるような場合に防蟻断熱材であれば、白蟻などの基礎構造内への侵入を効果的に防ぐことができる。
【0012】
そして、保護板とそれに対向される束部の側縁部及び底板部の上縁部とが嵌合構造によって接合されていれば、地震の揺れなどによって水平力が作用しても離れにくくすることができる。このような嵌合構造は、保護板に設けられる断面視略V字形の溝部と、束部側に設けられる断面視略V字形の凸部との組み合わせにすることが好ましい。
【0013】
さらに、底板部の側面並びに束部及び保護板の外側面に連続した被覆層が設けられるのであれば、連続性と一体感のある外装の意匠を創出することが容易にできる。また、束部の内部側に基礎断熱材を配置することで、より断熱性能の高い基礎構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態の建物の基礎構造の構成を拡大して説明する斜視図である。
図2】建物の基礎構造の全体構成を説明する斜視図である。
図3図1のA-A矢視方向で見た平面図である。
図4図1のB-B矢視方向で見た断面図である。
図5】保護板の嵌合構造の密着性能を確認する試験について説明する図で、(a)は試験概念の説明図、(b)は嵌合構造周辺の構成を示した図、(c)は外力を作用させた後に第1剥離が始まった状態を示した図、(d)は保護板に亀裂が発生した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の建物の基礎構造10の構成を拡大して説明する斜視図であり、図2は、基礎構造10の全体構成を示している。
【0016】
本実施の形態の基礎構造10は、コンクリートで構築される建物のべた基礎である。すなわち基礎構造10は、図2に示すように、建物の基礎施工領域となる例えば平面視長方形領域に、鉄筋コンクリートによってスラブ状に構築された底板部としての基礎スラブ1と、その基礎スラブ1の周縁に間隔を置いて配置された複数の束部(2A,2B,2C)と、束部間の開口を埋めるように配置される板状の断熱材3と、断熱材3の外側面側に配置される保護板5とによって、主に構成される。
【0017】
基礎スラブ1は、図示は省略するが、水平方向に向けて格子状に配筋された複数の鉄筋によって構成される配筋部と、現地で打設されるコンクリートとによって主に構成される。
【0018】
基礎スラブ1の下方には、図1に示すように、栗石や捨てコンクリートなどによって捨石層13が形成される。また、板状の基礎スラブ1の下部は、後工程において地面Gの下に埋め戻され(図4参照)、上部は地面Gから突出される。すなわち基礎スラブ1の側面12の上部及び上面11は、地面Gから突出されて露出された状態になる。
【0019】
そして、図2に示すように、基礎スラブ1の周縁に沿って、複数の束部(2A-2C)が間隔を置いて配置される。ここで、基礎スラブ1の隅角部に配置される束部をコーナー束部2Aとし、コーナー束部2A,2A間に配置される束部を中間束部2B又はT型束部2Cとする。
【0020】
束部(2A-2C)は、基礎スラブ1と一体になるように鉄筋コンクリートで構築される。基礎スラブ1と束部(2A-2C)を一度のコンクリート打設で構築することもできるし、別々にコンクリートを二度打ちして構築することもできる。ここで、コーナー束部2Aは平面視略L字形に成形され、中間束部2Bは平面視略長方形に成形され、T型束部2Cは平面視略T字形に成形される。
【0021】
さらに、基礎スラブ1の内部にも、必要に応じてI型束部24や中央束部25が鉄筋コンクリートによって設けられる。対峙するT型束部2C,2C同士の交点には、平面視略長方形の中央束部25が配置され、中間束部2Bと中央束部25との間には、平面視略I字形のI型束部24が配置される。
【0022】
ここで、図2を参照しながら、コーナー束部2Aを例にして束部の構成についてさらに説明する。コーナー束部2Aには、基礎スラブ1の上面11から壁状に立ち上げられる外側面21が形成される。この外側面21は、基礎スラブ1の側面12とほぼ連続する鉛直面を形成する。
【0023】
コーナー束部2Aの上面には、アンカーボルト23を介して建物本体U(図4参照)を連結させるための補強プレート22が配置される。また、束部間の開口を埋めるように板状の断熱材3が配置される。すなわち、コーナー束部2Aと中間束部2Bとの間、中間束部2B,2B間、中間束部2BとT型束部2Cとの間の長方形の開口を塞ぐように長方形板状の断熱材3が配置される。
【0024】
このような断熱材3は、1枚の断熱板によって形成することができるが、複数枚の断熱板を重ねて形成することもできる。この断熱板には、押出法ポリスチレンフォームなどの発泡プラスチック系断熱材が使用できる。
【0025】
この断熱材3の側縁と隣接するコーナー束部2Aの側縁部には、断熱材3の外側面3aとほぼ面一となる深さまで外側面21から窪んだ切欠部26が設けられる。さらに、この切欠部26の下端には、基礎スラブ1の上縁部の切欠部14が接続され、水平方向に延伸された切欠部14の端部には、中間束部2Bの側縁部の切欠部26が接続される。要するに、断熱材3の両側縁及び下縁を囲むように、正面視略U字形の切欠部26,14,26が設けられる。
【0026】
図1に示すように、これらの切欠部26,14には、保護板5の側縁51と下縁52がそれぞれ収容される。すなわち、保護板5は、断熱材3の外側面3aより一回り大きな長方形の板状に形成されていて、断熱材3の外側面3aを覆ったうえで張り出された両側の側縁51と下縁52とが切欠部26,14に収容される。
【0027】
このような保護板5には、防蟻断熱材、押出法ポリスチレンフォームなどの発泡プラスチック系断熱材が使用できる。例えば、ポリカーボネート樹脂を高倍率に発泡させることで硬質にして、防蟻性能を高めることができる。このような防蟻断熱材は、ポリスチレンフォームに比べて高い耐熱性能を備えるとともに、セメント系材料との接着性能も高い。また、複数ひび割れ型繊維補強セメント板(HPFRCC:High Performance Fiber Reinforced Cement Composites)などを保護板5にすることもできる。基礎スラブ1の下部などが地面Gの下に埋め戻されるような場合には、防蟻断熱材など防蟻性能を有する防護板5を使用することが好ましい。
【0028】
さらに、図3に示すように、保護板5の側縁51と、それに対向されるコーナー束部2Aの側縁部となる切欠部26とは、嵌合構造によって接合される。この嵌合構造は、保護板5に設けられる断面視略V字形の溝部511と、コーナー束部2A側に設けられる断面視略V字形の凸部27とによって形成される。すなわち、保護板5の溝部511に嵌り込んだ凸部27との嵌合により、保護板5の延伸方向(水平方向)の力に対して対抗させることができる。
【0029】
この保護板5によるV字形の凹凸嵌合の形状については、これに限定されるものではない。例えば、断面視略U字形、断面視略長方形などのトリマーなどで容易に加工できる形状であれば、いずれの形状の溝部にすることもできる。
【0030】
この保護板の側縁に設ける凹凸嵌合の溝形状の選定においては、1)付着強度、2)コンクリート打設時のジャンカ率、3)加工性、4)溝という欠損を設けたことによる強度低下、などが考慮される。
【0031】
そこで、1)付着強度について検討すると、強度が高い方から、長方形溝>U字形溝>V字形溝となる。一方、2)ジャンカ率については、小さいほど良く、良好な順に、長方形溝<U字形溝<V字形溝となる。また、3)加工性については、作業効率の高い順で、V字形溝>U字形溝>長方形溝となる。さらに、4)欠損による強度低下については、少ないほど良く、強度低下が少ない順に、V字形溝<長方形溝<U字形溝となる。
【0032】
ここで、4)の欠損による強度低下については、保護板の厚みを付着力以上になるように設計することで回避できるため、重要な選定ポイントにはならない。そして、加工コストあたりの付着強度及び施工不良によるジャンカ率を考慮した場合に、V字形の溝部511が最も好ましくなるため、以下ではV字形溝を例に説明する。
【0033】
また、図4に示すように、保護板5の下縁52と、それに対向される基礎スラブ1の上縁部となる切欠部14とは、嵌合構造によって接合される。この嵌合構造は、保護板5に設けられる断面視略V字形の溝部521と、基礎スラブ1側に設けられる断面視略V字形の凸部15とによって形成される。すなわち、保護板5の溝部521に嵌り込んだ凸部15との嵌合により、保護板5の上下方向(鉛直方向)の力に対して対抗させることができる。
【0034】
一方、保護板5の外側面5a側は被覆層6によって覆われる。この被覆層6は、建物本体Uの外壁U1の外側面とほぼ面一となる。また、保護板5の上縁は、建物本体Uの下縁から張り出された水切材U2によって覆われる。
【0035】
さらに、コーナー束部2Aの内部側の側面には、図1及び図3に示すように、基礎断熱材4が配置される。基礎断熱材4は、コーナー束部2Aの内側面に沿って配置される長方形板状の鉛直部41と、基礎スラブ1の上面11に載置される長方形板状の水平部42とによって、側面視略L字形に形成される。基礎断熱材4には、例えば微細な気泡構造の発泡プラスチック系断熱材が使用できる。
【0036】
また、図示しないが、束部(2A-2C)と断熱材3との間に防水材を介在させることができる。例えば、コーナー束部2Aと中間束部2Bとの間などの束部間には、対向する束部の端面と基礎スラブ1の上面11とに連続して、水膨張シーリング材などが防水材として配置される。
【0037】
水膨張シーリング材は、水分と接触すると水を吸収し、体積を膨張させるシール材である。自己給水の膨張機能により、優れた止水性を発揮することができる。例えば水膨張シーリング材によって、束部(2A-2C)の幅方向のほぼ中央に、束部間で連続する防水ラインを形成することができる。
【0038】
また、面一に形成された基礎構造10の外側面には、図1に示すように、外装として連続した被覆層6を設けることができる。例えば、高弾性樹脂モルタルなどを塗布した下地層の表面に、塗装を仕上層として塗布することで被覆層6を形成することができる。
【0039】
次に、本実施の形態の建物の基礎構造10の構築方法について説明する。
まず、基礎施工領域となる地面Gを掘削し、栗石(砕石)が敷き均された後に、捨てコンクリートを打設することで捨石層13を設ける。そして、捨石層13の上に基礎スラブ1用の鉄筋を配筋する。
【0040】
また、基礎スラブ1用の鉄筋の上には、束部(2A-2C)並びにI型束部24及び中央束部25の配筋も行う。さらに、束部(2A-2C)間の開口の形状に合わせて成形された断熱材3を配置する。
【0041】
続いて、断熱材3の外側面3aに保護板5を貼り付け、側縁51,51及び下縁52が断熱材3から突出された状態にする。この保護板5の側縁51及び下縁52の内側面側には、溝部511,521が形成されている。
【0042】
そして、保護板5の外側面5aを覆う位置や束部(2A-2C)の外側面21となる位置などに型枠を組み立て、現場打ちのコンクリートを打設する。ここで、コンクリートは、1度に打設することができるが、基礎スラブ1用とそれ以外の2度に分けて打設することもできる。
【0043】
基礎スラブ1や束部(2A-2C)にコンクリートが打設されると、溝部511,521に流れ込んだコンクリートが硬化して凸部27,15となる。また、保護板5の側縁51及び下縁52が張り出されてコンクリートが充填されなかった箇所が、切欠部26,14となる。
【0044】
コンクリートの養生後に、型枠を撤去し、束部(2A-2C)や基礎スラブ1などの表面に付着しているコンクリートノロなどの汚れや異物を除去する。
そして、束部(2A-2C)の内部側には、束部(2A-2C)に対向させる面の縁部を囲繞するように接着剤が塗布された基礎断熱材4の鉛直部41を貼り付ける。さらに、鉛直部41に隣接して、基礎スラブ1の上面11に貼り付ける水平部42を設置する。また、断熱材3、保護板5及び束部(2A-2C)の上面は、必要に応じて防水シートで覆うことができる。
【0045】
そして、図1に示すように、束部(2A-2C)の外側面21と基礎スラブ1の側面12と保護板5の外側面5aとに、連続して高弾性樹脂モルタルを塗布して下地層を設け、その上から仕上層となる塗装をして被覆層6を完成させる。なお、被覆層6は、一度塗りで完成させることもできる。
【0046】
次に、本実施の形態の建物の基礎構造10の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の建物の基礎構造10は、スラブ状に形成された基礎スラブ1の上面11の周縁に沿って間隔を置いて配置された複数の束部(2A-2C)間に、開口を埋めるように板状の断熱材3が配置される。
【0047】
そして、断熱材3の外側面3a側に配置される保護板5は、両側縁51,51がそれぞれ束部(2A-2C)の側縁部となる切欠部26を覆うとともに、下縁52が基礎スラブ1の上縁部となる切欠部14を覆うように形成される。
【0048】
このように、保護板5と束部(2A-2C)の側縁部となる切欠部26との間、及び保護板5と基礎スラブ1の上縁部となる切欠部14との間で、重なり合う部分が形成されていれば、高い密着性能を得ることができる。
【0049】
特に、保護板5とそれに対向される束部(2A-2C)の切欠部26及び基礎スラブ1の切欠部14とが嵌合構造によって接合されていれば、地震の揺れなどによって水平力が作用しても離れにくくすることができる。
【0050】
この嵌合構造による密着性能について、試験によって確認した結果を、図5を参照しながら説明する。図5(a)は、試験概念を説明するための図である。試験体Mは、断熱材3の両側に束部2,2を模した構成となっている。そして、束部2,2の作用点M1,M1間に介在させたジャッキ(不図示)を伸長して、作用点M1,M1間が広がるような外力P,Pを水平力として作用させる。
【0051】
ここで、保護板5と束部2の側縁部との嵌合構造の密着性能を確認する試験では、図5(b)に嵌合構造周辺の構成を拡大して示したように、断熱材3の外側面3aと束部2の切欠部26とに跨って、保護板5を取り付ける。
【0052】
試験を行う嵌合構造は、保護板5に設けられる断面視略V字形の溝部511と、束部2側に設けられる断面視略V字形の凸部27との組み合わせによって構成される。ここで、保護板5の厚みを15mmとし、溝部511の深さ(凸部27の突出量)を6mmとする。
【0053】
図5(c)は、外力Pを作用させた後に、断熱材3と束部2との間に第1剥離S1が始まった状態を示している。この状態では、保護板5の側縁51において、溝部511の最深点から断熱材3側が伸びて伸長部512となるが、保護板5と束部2の切欠部26との付着は保持された状態で、密着性能は低下していない。
【0054】
さらに、外力Pを大きくすると、図5(d)に示したように、第1剥離S1の間隔が広がって、伸長部512の応力が保護板5の引張強度に達すると、溝部511の最深点付近に亀裂513が発生することになる。
【0055】
このような亀裂513が生じるような大きな外力Pが作用すると、保護板5と束部2の切欠部26との間に第2剥離S2が発生することになる。しかしながら、溝部511の最深点より端部(束部2内部側)では、保護板5と束部2の切欠部26とは依然として付着した状態である。要するに、大地震の揺れや外部衝撃などによって大きな水平力が外力Pとして作用して束部2が変形しても、保護板5はその変形に追従できるので、防水性や防蟻性などの密着性能は保持されると言える。
【0056】
また、保護板5が防蟻断熱材であれば、白蟻などが保護板5の内部に蟻道を設けることを防ぐことができるので、保護板5の側縁51や下縁52などの縁部において密着性能が保持されていれば、基礎構造内への白蟻の侵入を効果的に防ぐことができる。なお、掘り下げ基礎のように保護板が地中に埋設されない場合は、防蟻断熱材を使用しなくてもよい。
【0057】
また、束部(2A-2C)の外側面21と保護板5の外側面5aとが面一に形成されていれば、これらに跨る外装材などが設けやすくなるので、外装の意匠性を高めることが自由にできる。
【0058】
また、基礎スラブ1の側面12側に突出部が発生しないので、外装パネルなどを使用する必要がなく、高い意匠性を保ちつつコスト削減を図ることを、制約の少ない中で自由に行うことができる。
【0059】
そして、基礎スラブ1の側面12並びに束部(2A-2C)の外側面21及び保護板5の外側面5aに連続した被覆層6が設けられるのであれば、連続性と一体感のある外装の意匠を創出することが容易にできる。また、束部(2A-2C)の内部側に基礎断熱材4を配置することで、より断熱性能の高い基礎構造とすることができる。
【0060】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0061】
例えば、前記実施の形態では、現場打ちコンクリートによって構築する束部(2A-2C)を例に説明したが、これに限定されるものではなく、基礎スラブ1の周縁に沿って間隔を置いてプレキャスト製の束部を設置する構成であってもよい。
【0062】
また、前記実施の形態では、保護板5をV字形の凹凸嵌合によって束部(2A-2C)などに接合させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば保護板の縁部に穴を穿孔しておいて、その穴にコンクリートを充填することで凹凸嵌合を形成することができる。さらには、保護板の縁部に、束部(2A-2C)などのコンクリート充填側に突出するビスなどを突き刺しておくことで、保護板を束部などに接合させることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 :建物の基礎構造
1 :基礎スラブ(底板部)
11 :上面
12 :側面
14 :切欠部(上縁部)
15 :凸部
2A :コーナー束部(束部)
2B :中間束部(束部)
2C :T型束部(束部)
21 :外側面
26 :切欠部(側縁部)
27 :凸部
3 :断熱材
3a :外側面
4 :基礎断熱材
5 :保護板
5a :外側面
51 :側縁
511 :溝部
52 :下縁
521 :溝部
6 :被覆層
図1
図2
図3
図4
図5