(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】設計支援システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20220720BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20220720BHJP
E04B 1/18 20060101ALN20220720BHJP
E04B 1/348 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/27
E04B1/18 A ESW
E04B1/348 C
(21)【出願番号】P 2018150366
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】前川 佳也
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-123161(JP,A)
【文献】特開2016-218818(JP,A)
【文献】特開2015-088081(JP,A)
【文献】特開2014-227691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
E04B 1/18 - 1/30
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状をなすとともに、隅部に立設される複数の柱と前記柱に連結される天井大梁及び床大梁とを有して構成される建物ユニットを備え、その建物ユニットが複数組み合わされることにより構築されるユニット式建物において、前記柱とは異なる位置であってかつ間仕切壁の内部となる位置に前記天井大梁及び前記床大梁にそれぞれ連結される補強柱を設置する際の設計支援を行う設計支援システムであって、
前記設計支援の対象となる前記ユニット式建物である対象建物について、その対象建物に関する設計情報として、当該対象建物を構成する前記建物ユニットのサイズに関するユニットサイズ情報と、当該建物ユニットの配置に関するユニット配置情報と、当該対象建物の間取りに関する間取り情報とを取得する対象建物設計情報取得手段と、
過去に設計が行われた前記ユニット式建物である既設建物ごとに、前記既設建物に関する設計情報として、当該既設建物を構成する前記建物ユニットのサイズに関するユニットサイズ情報と、当該建物ユニットの配置に関するユニット配置情報と、当該既設建物の間取りに関する間取り情報と、前記補強柱の配置位置に関する補強柱位置情報と、当該補強柱に連結された前記天井大梁のたわみ量に関するたわみ量情報とを記憶する既設建物設計情報記憶手段と、
前記対象建物設計情報取得手段により取得された前記対象建物の前記ユニットサイズ情報、前記ユニット配置情報及び前記間取り情報と、前記既設建物設計情報記憶手段に記憶された前記既設建物の前記ユニットサイズ情報、前記ユニット配置情報、前記間取り情報、前記補強柱位置情報及び前記たわみ量情報とに基づいて、前記対象建物における前記補強柱の配置位置と間取りとを算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
前記算出手段は、前記対象建物の前記ユニットサイズ情報及び前記ユニット配置情報に基づいて、前記対象建物における前記補強柱の配置位置を算出する補強柱位置算出手段を備え、
前記補強柱位置算出手段は、その算出に際し、前記既設建物の前記ユニットサイズ情報、前記ユニット配置情報、前記補強柱位置情報及び前記たわみ量情報を深層学習することで、前記対象建物に適した前記補強柱の配置位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直方体状をなす複数の建物ユニットが互いに組み合わされて構成されるユニット式建物が知られている。ユニット式建物では、各建物ユニットが、四隅に立設された柱と、その柱の上端部及び下端部に連結された天井大梁及び床大梁とを有して構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ユニット式建物では、その内部空間を広く形成する等の目的で、建物ユニットにおける一部の柱が省略されることがある。かかる建物では、柱を省略したことにより天井大梁が下方へたわむのを抑制するため、建物ユニットにおける四隅位置とは異なる位置に補強柱が設けられることがある。補強柱は、その上端部が天井大梁に連結され、その下端部が床大梁に連結された状態で配置される。
【0004】
ここで、補強柱は、通常、間仕切壁の内部に配置され、屋内から見えないようにされている。そのため、補強柱の配置位置を決めるにあたっては、まず建物の間取りの設計を行って間仕切壁の配置位置を決め、それから、その間仕切壁内に補強柱を配置していくことになると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補強柱を間仕切壁内に配置しても、その配置位置では天井大梁のたわみを十分に抑えられない場合が想定される。例えば、天井大梁のたわみ量があらかじめ規定された許容値を上回ってしまう場合が想定される。その場合、間取りの設計をやり直して間仕切壁の配置位置を再度決め、それから、その間仕切壁内に補強柱を配置し直すといった面倒な作業が発生することになる。
【0007】
また、天井大梁のたわみ量が許容値の範囲内にある場合でも、間仕切壁の位置を少しずらせば、すなわち間取りを少し変更すれば、天井大梁のたわみ量をより小さくできる適切な位置に補強柱を配置できる場合があると考えられる。しかしながら、間取り優先の上述した補強柱の配置の決め方では、そこまで配慮して補強柱の配置を行うのが難しいと考えられる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物に補強柱が設けられる場合において、天井のたわみを抑制することができる補強柱の配置位置と建物の間取りとの最適設計を行うことができる設計支援システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の設計支援システムは、直方体状をなすとともに、隅部に立設される複数の柱と前記柱に連結される天井大梁及び床大梁とを有して構成される建物ユニットを備え、その建物ユニットが複数組み合わされることにより構築されるユニット式建物において、前記柱とは異なる位置であってかつ間仕切壁の内部となる位置に前記天井大梁及び前記床大梁にそれぞれ連結される補強柱を設置する際の設計支援を行う設計支援システムであって、前記設計支援の対象となる前記ユニット式建物である対象建物について、その対象建物に関する設計情報として、当該対象建物を構成する前記建物ユニットのサイズに関するユニットサイズ情報と、当該建物ユニットの配置に関するユニット配置情報と、当該対象建物の間取りに関する間取り情報とを取得する対象建物設計情報取得手段と、過去に設計が行われた前記ユニット式建物である既設建物ごとに、前記既設建物に関する設計情報として、当該既設建物を構成する前記建物ユニットのサイズに関するユニットサイズ情報と、当該建物ユニットの配置に関するユニット配置情報と、当該既設建物の間取りに関する間取り情報と、前記補強柱の配置位置に関する補強柱位置情報と、当該補強柱に連結された前記天井大梁のたわみ量に関するたわみ量情報とを記憶する既設建物設計情報記憶手段と、前記対象建物設計情報取得手段により取得された前記対象建物の前記ユニットサイズ情報、前記ユニット配置情報及び前記間取り情報と、前記既設建物設計情報記憶手段に記憶された前記既設建物の前記ユニットサイズ情報、前記ユニット配置情報、前記間取り情報、前記補強柱位置情報及び前記たわみ量情報とに基づいて、前記対象建物における前記補強柱の配置位置と間取りとを算出する算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、取得された対象建物のユニットサイズ情報、ユニット配置情報及び間取り情報と、記憶手段に記憶された既設建物のユニットサイズ情報、ユニット配置情報、間取り情報、及び補強柱位置情報とに基づいて、対象建物における補強柱の配置位置と間取りとが算出される。この場合、例えば対象建物のユニットサイズ、ユニット配置と同じ又は類似したユニットサイズ、ユニット配置を有する既設建物の補強柱位置情報に基づいて、対象建物の補強柱位置を算出することが可能となる。つまり、対象建物と同じ又は類似したユニット構造を有する既設建物の補強柱位置を参照して、対象建物の補強柱位置を算出することが可能となる。したがって、既設建物の設計情報を利用して、天井のたわみが小さくなる補強柱位置を算出することが可能となる。
【0011】
また、その算出した補強柱位置に、補強柱を配置可能か否かを対象建物の間取り情報に基づいて判定することが可能となる。つまり、算出した補強柱位置が間仕切壁の内部であるか否かを間取り情報に基づいて判定することが可能となる。そして、算出した補強柱位置に補強柱を配置できない場合には、既設建物の間取り情報に基づいて、対象建物の間取りを見直す(算出する)ことが可能となる。
【0012】
よって、以上より、建物に補強柱が設けられる場合において、天井のたわみを抑制できる補強柱の配置位置と建物の間取りとの最適設計を行うことができる。
【0013】
第2の発明の設計支援システムは、第1の発明において、前記算出手段は、前記対象建物の前記ユニットサイズ情報及び前記ユニット配置情報に基づいて、前記対象建物における前記補強柱の配置位置を算出する補強柱位置算出手段を備え、前記補強柱位置算出手段は、その算出に際し、前記既設建物の前記ユニットサイズ情報、前記ユニット配置情報、前記補強柱位置情報及び前記たわみ量情報を深層学習することで、前記対象建物に適した前記補強柱の配置位置を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、対象建物のユニットサイズ情報及びユニット配置情報に基づき、対象建物の補強柱位置が算出される。そして、その算出に際しては、既設建物のユニットサイズ情報、ユニット配置情報、補強柱位置情報及びたわみ量情報が参照され、それらの情報が深層学習されることにより、対象建物に適した補強柱の配置位置が算出される。
【0015】
例えば、対象建物のユニットサイズ、ユニット配置と同じ又は類似したユニットサイズ、ユニット配置を有する既設建物の補強柱位置情報及びたわみ量情報からは、対象建物と同じ又は類似するユニット構造を有する建物では、どこに補強柱を配置すればたわみ量が小さくなるか、その傾向を把握することが可能となる。そのため、上記のように、既設建物のユニットサイズ情報、ユニット配置情報、補強柱位置情報及びたわみ量情報を深層学習することによれば、対象建物に適した補強柱の配置位置を好適に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】ユニット式建物を構成する建物ユニットの一部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。建物として、柱及び梁を有してなる複数の建物ユニットが互いに連結されて構成されるユニット式建物が知られている。ユニット式建物では、建物ユニットの四隅に配置される柱の一部が省略されたワイドスパン工法が採用されることがある。その場合、天井部の補強を行うために、柱とは異なる位置に補強柱が設けられることがある。そこで、本実施形態では、その補強柱を配置設計する際の設計支援を行う設計支援装置について具体化している。以下では、その設計支援装置の説明を行うのに先立ち、まず設計支援の対象となるユニット式建物について説明する。
図3は、ユニット式建物を構成する建物ユニットの一部を示す斜視図である。
【0018】
図3に示すユニット式建物40は、下階部としての一階部分と、上階部としての二階部分とを有する二階建ての住宅とされている。ユニット式建物40を構成する各建物ユニット45は直方体状をなしており、その四隅に配設された柱46と、各柱46の上端部に連結された天井大梁47と、各柱46の下端部に連結された床大梁48とを有している。これら柱46、天井大梁47及び床大梁48により建物ユニット45の骨格(躯体)が構成されている。なお、図示は省略するが、対向する天井大梁47の間には複数の天井小梁が架け渡され、それら天井小梁により天井材が支持されている。また、対向する床大梁48の間には複数の床小梁が架け渡され、それら床小梁により床面材が支持されている。
【0019】
ユニット式建物40では、柱46の一部が省略されたワイヤスパン工法が採用されている。ユニット式建物40では、一階部分の建物ユニット45において柱46の一部が省略されている。
図3では、その柱46が省略された柱省略部49が二点鎖線にて示されている。なお、以下では、柱46の一部が省略された上記建物ユニット45(下階ユニット)の符号にaを付し、その建物ユニット45aの上に設けられた建物ユニット45(上階ユニット)の符号にbを付す。
【0020】
建物ユニット45aには、その四隅とは異なる位置、つまり柱46の設置位置とは異なる位置に、補強柱51が設けられている。補強柱51は、その上端部が天井大梁47に連結され、その下端部が床大梁48に連結されている。この補強柱51が設けられていることで、柱省略部49を有する建物ユニット45aにあって、天井大梁47が下方へたわむのを抑制することが可能となっている。なお、以下では、補強柱51が連結された天井大梁47を天井大梁47aという。また、補強柱51は、建物40内において屋内空間を仕切る間仕切壁の内部に配置される。
【0021】
ここで、柱省略部49が設けられた建物ユニット45aにおいて、補強柱51を配置する際には、天井大梁47のたわみができるだけ小さくなるように補強柱51の配置位置を決める必要がある。その一方で、補強柱51は間仕切壁の内部に配置されるため、補強柱51の配置位置は建物の間取りによって制約を受けることになる。そこで、本実施形態では、天井大梁47のたわみと、建物内の間取り(詳しくは間仕切壁の位置)との双方を考慮しながら、補強柱51を建物内に配置すべく、設計支援装置10を用いることとしている。そこで、以下では、その設計支援装置10について
図1を用いながら説明する。
図1は、設計支援装置10の概略構成を示す図である。なお、設計支援装置10は、例えば建物メーカに設けられ、同メーカの設計者により用いられる。
【0022】
図1に示すように、設計支援装置10は、パーソナルコンピュータにより構成され、建物についての各種設計を行うためのCADプログラムを有している。設計支援装置10は、制御部11と、操作部12と、表示部13と、記憶部14とを備える。制御部11は、建物に補強柱を配置する際の設計支援を行う設計支援処理を行うものである。操作部12は、設計支援処理に必要な各種情報を入力するためのもので、キーボードやマウス等を備えて構成されている。表示部13は、設計支援処理に関する各種情報を表示するもので、ディスプレイからなる。記憶部14は、設計支援処理に必要な各種情報を記憶するものである。
【0023】
次に、設計支援装置10により行われる設計支援処理について
図2に基づいて説明する。
図2は、設計支援処理の流れを示す機能ブロック図である。なお、
図2中の各機能ブロック21,22,25~29は制御部11により実現され、データベース23は記憶部14により構築されている。
【0024】
設計支援装置10は、あらかじめ設計されたユニット式建物40を対象として、設計支援処理を行う。記憶部14には、ユニット式建物40の設計データ(CADデータ)があらかじめ記憶されている。なお、以下では、ユニット式建物40を対象建物40という。
【0025】
図2に示すように、対象建物設計情報取得部21は、記憶部14から対象建物40の設計データを読み出し、その読み出した設計データに基づき対象建物40の設計情報を取得する。対象建物設計情報取得部21により取得される対象建物40の設計情報には、対象建物40を構成する建物ユニット45のサイズに関するユニットサイズ情報と、当該建物ユニット45の配置に関するユニット配置情報とが含まれている。例えば、対象建物40の設計情報には、対象建物40を構成する各建物ユニット45それぞれのユニットサイズ情報及びユニット配置情報が含まれている。但し、各建物ユニット45a,45bのユニットサイズ情報及びユニット配置情報だけ含まれていてもよい。これらユニットサイズ情報及びユニット配置情報は、対象建物40の構造強度に関わる情報となっている。
【0026】
また、対象建物設計情報取得部21により取得される対象建物40の設計情報には、対象建物40の間取りに関する間取り情報が含まれている。この間取り情報には、対象建物40における間仕切壁の配置に関する間仕切情報が含まれている。
【0027】
算出部22は、対象建物設計情報取得部21により取得されたユニットサイズ情報、ユニット配置情報及び間取り情報に基づいて、対象建物40における補強柱51の配置位置と間取りとを算出する。ここで、本設計支援装置10では、算出部22が、過去に設計された建物(以下、既設建物という)の設計情報を基に、対象建物40において最適な補強柱51の配置位置と間取りとを算出することとしている。この場合、既設建物は、対象建物40と同様、補強柱が設けられたユニット式建物となっており、その既設建物の設計情報があらかじめ既設建物設計情報データベース23に記憶されている。そして、算出部22は、その既設建物設計情報データベース23に記憶された既設建物の設計情報に基づき、最適な補強柱51の配置位置と間取りとを算出することとしている。
【0028】
既設建物設計情報データベース23には、多数の既設建物の設計情報が記憶されている。既設建物設計情報データベース23には、各既設建物ごとに、その既設建物の設計情報として、当該既設建物を構成する建物ユニットのサイズに関するユニットサイズ情報と、当該建物ユニットの配置に関するユニット配置情報と、当該既設建物の間取りに関する間取り情報と、当該既設建物における補強柱の配置位置に関する補強柱位置情報と、当該補強柱に連結された天井大梁の(下方への)たわみ量に関するたわみ量情報とが記憶されている。ユニットサイズ情報、ユニット配置情報及び間取り情報(間仕切り情報を含む)は、上述した対象建物40におけるユニットサイズ情報、ユニット配置情報及び間取り情報と同様の情報である。
【0029】
続いて、算出部22の詳細について説明する。算出部22は、補強柱位置算出部25と、柱配置可否判定部26と、間取り算出部27とを有している。
【0030】
補強柱位置算出部25は、対象建物40のユニットサイズ情報及びユニット配置情報に基づいて、対象建物40における補強柱51の配置位置を算出する。この場合、補強柱位置算出部25は、既設建物設計情報データベース23に記憶された既設建物のユニットサイズ情報、ユニット配置情報、補強柱位置情報及びたわみ量情報を参照して、補強柱51の配置位置を算出する。具体的には、補強柱位置算出部25は、対象建物40のユニットサイズ、ユニット配置と同じ又は類似したユニットサイズ、ユニット配置を有する既設建物、換言すると対象建物40と同じ又は類似したユニット構造を有する既設建物の補強柱位置情報及びたわみ量情報を参照して、補強柱51の配置位置を算出する。
【0031】
より具体的には、対象建物40のユニットサイズ、ユニット配置と同じ又は類似したユニットサイズ、ユニット配置を有する既設建物の補強柱位置情報及びたわみ量情報からは、対象建物40と同じ又は類似するユニット構造を有する建物では、どこに補強柱を配置すればたわみ量が小さくなるか、その傾向を把握することが可能となる。そこで、本実施形態では、補強柱位置算出部25において、対象建物40のユニットサイズ、ユニット配置と同じ又は類似したユニットサイズ、ユニット配置を有する既設建物の補強柱位置情報及びたわみ量情報を深層学習することで、たわみ量が小さくなる(最小となる)補強柱51の配置位置を算出するようにしている。これにより、対象建物40に適した補強柱51の配置位置を好適に算出することが可能となる。
【0032】
柱配置可否判定部26は、補強柱位置算出部25により算出された補強柱51の配置位置において、当該補強柱51を対象建物40における間仕切壁の内部に配置可能か否かを判定する。この判定は、対象建物40の間取り情報詳しくは間仕切情報に基づいて行われる。
【0033】
間取り算出部27は、柱配置可否判定部26により補強柱51を間仕切壁の内部に配置可能と判定された場合には、対象建物40の間取り情報に含まれる間取りを対象建物40の間取りとして算出する。また、間取り算出部27は、柱配置可否判定部26により補強柱51を間仕切壁の内部に配置不可と判定された場合には、既設建物設計情報データベース23に記憶された既設建物の間取り情報に基づいて、対象建物40の間取りを算出する(見直す)。例えば、間取り算出部27は、既設建物の間取り情報(間仕切情報)のうちで、補強柱51を間仕切壁内に配置可能となる間取り情報を既設建物設計情報データベース23から抽出し、その抽出した間取り情報を対象建物40の間取りとして算出する。
【0034】
以上のように、算出部22では、対象建物40における補強柱51の配置位置と間取りとがそれぞれ算出される。
【0035】
たわみ量算出部28は、算出部22により算出された補強柱51の配置位置に当該補強柱51を配置した場合における天井大梁47aのたわみ量を算出する。この算出は、例えば対象建物40を構造解析(応力解析等)することにより行われる。なお、この算出に先立ち、建物ユニット45で用いる柱46や梁47,48の板厚を決定しておく。
【0036】
設計情報記憶実施部29は、対象建物40について、たわみ量算出部28により算出された天井大梁47aのたわみ量に関するたわみ量情報と、算出部22により算出された補強柱51の配置位置に関する補強柱位置情報とを既設建物設計情報データベース23に記憶する。この際、設計情報記憶実施部29は、たわみ量情報及び補強柱位置情報を対象建物設計情報取得部21により取得されたユニットサイズ情報、ユニット配置情報及び間取り情報と対応付けて既設建物設計情報データベース23に記憶する。これにより、既設建物設計情報データベース23には、対象建物40における上記各情報が既設建物の設計情報として記憶される。
【0037】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0038】
対象建物設計情報取得部21により取得した対象建物40のユニットサイズ情報、ユニット配置情報及び間取り情報と、既設建物設計情報データベース23に記憶された既設建物のユニットサイズ情報、ユニット配置情報、間取り情報、及び補強柱位置情報とに基づいて、対象建物40における補強柱51の配置位置と間取りとを算出するようにした。具体的には、対象建物40のユニットサイズ、ユニット配置と同じ又は類似したユニットサイズ、ユニット配置を有する既設建物の補強柱位置情報に基づいて、対象建物40の補強柱位置を算出するようにした。つまり、対象建物40と同じ又は類似したユニット構造を有する既設建物の補強柱位置を参照して、対象建物40の補強柱位置を算出するようにした。したがって、この場合、既設建物の設計情報を利用して、天井のたわみが小さくなる補強柱位置を算出することが可能となる。
【0039】
また、その算出した補強柱位置に、補強柱51を配置可能か否かを対象建物40の間取り情報に基づいて判定するようにした。つまり、算出した補強柱位置が間仕切壁の内部であるか否かを間取り情報に基づいて判定するようにした。そして、算出した補強柱位置に補強柱を配置できないと判定された場合には、既設建物の間取り情報に基づいて、対象建物40の間取りを見直す(算出する)ようにした。
【0040】
よって、上記の構成によれば、対象建物40に補強柱51が設けられる場合において、天井のたわみを抑制できる補強柱51の配置位置と対象建物40の間取りとの最適設計を行うことができる。
【0041】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、柱省略部を有する建物ユニットに補強柱が設けられる場合を例に説明したが、補強柱は必ずしもかかる建物ユニットに設けられるとは限らない。すなわち、補強柱が柱省略部を有しない建物ユニットに設けられる場合も考えられる。例えば、一階部分の建物ユニット(下階ユニット)が、その上方に設けられる二階部分の建物ユニット(上階ユニット)よりも大きく形成される場合等には、下階ユニットの天井大梁の上に上階ユニットの柱が配置されることが考えられる。その場合、下階ユニットの天井大梁には、上階ユニットの柱からの荷重が作用することになるため、天井大梁が当該荷重により下方へ大きくたわむおそれがある。そこで、このような場合にも、下階ユニットにおいて当該天井大梁とその下方の床大梁とを連結するように補強柱が設けられることが考えられる。そこで、かかる補強柱をユニット式建物に設置する際に、本発明の設計支援装置を用いるようにしてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、補強柱位置算出部25において、深層学習を行うことで補強柱51の配置位置を算出するようにしたが、かかる配置位置の算出は必ずしも深層学習によって行う必要はなく、制御プログラムによる処理により行ってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…設計支援装置、11…制御部、21…対象建物設計情報取得手段としての対象建物設計情報取得部、22…算出手段としての算出部、23…既設建物設計情報記憶手段としての既設建物設計情報データベース、25…補強柱位置算出手段としての補強柱位置算出部、40…対象建物。