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特許7107784呼吸器チューブの固定具、固定具製造装置、固定具製造プログラム、及び、コンピュータ読取可能な記録媒体
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  • 特許-呼吸器チューブの固定具、固定具製造装置、固定具製造プログラム、及び、コンピュータ読取可能な記録媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】呼吸器チューブの固定具、固定具製造装置、固定具製造プログラム、及び、コンピュータ読取可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20220720BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
A61M16/06 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018156457
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020028504
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】512245230
【氏名又は名称】一般社団法人 医科学総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】矢作 尚久
(72)【発明者】
【氏名】北東 功
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027914(JP,A)
【文献】特開2005-207958(JP,A)
【文献】実開昭53-024197(JP,U)
【文献】特開平06-142206(JP,A)
【文献】米国特許第04326515(US,A)
【文献】特表2007-502190(JP,A)
【文献】特表2017-523827(JP,A)
【文献】特開2005-021448(JP,A)
【文献】特表2017-527374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口元を覆うと共に上端を患者の鼻と口との間に位置させたときに下端側より顎を露出させ、所定の大きさの開口部が形成された口当部と、
患者の頭部に対する前記口当部の位置を維持するために当該口当部に一体的に設けられ、患者の後頭部まで連続して前記口当部と共に周状となるバンド部と、を備え、
前記口当部は、呼吸器チューブが前記開口部に挿通された状態で前記呼吸器チューブが固定可能とされ、下端側に顎を露出させるべく上端に向かって窪む窪み部が形成されている
ことを特徴とする呼吸器チューブの固定具。
【請求項2】
前記口当部が患者の口元に位置した状態で前記バンド部が患者の後頭部下側の窪みに巻き回されて患者に取り付けられた後に、前記開口部を通じて前記呼吸器チューブが患者の口内に挿入されていく請求項1に記載の呼吸器チューブの固定具であって、
前記口当部は、その表面に、前記呼吸器チューブの挿入量が表示されている
ことを特徴とする呼吸器チューブの固定具。
【請求項3】
患者の口元を覆うと共に上端を患者の鼻と口との間に位置させたときに下端側より顎を露出させ、所定の大きさの開口部が形成された口当部と、患者の頭部に対する前記口当部の位置を維持するために当該口当部に一体的に設けられ、患者の後頭部まで連続して前記口当部と共に周状となるバンド部と、を備え、前記口当部は、呼吸器チューブが前記開口部に挿通された状態で前記呼吸器チューブが固定可能とされ、下端側に顎を露出させるべく上端に向かって窪む窪み部が形成されている呼吸器チューブの固定具の製造装置であって、
患者の口元を含む頭部を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された頭部の画像に基づいて、患者の口元を含む頭部の形状を把握する形状把握手段と、
前記形状把握手段により把握された頭部の形状に基づいた大きさとなるように、前記固定具を製造する3次元プリンタと、
を備えることを特徴とする固定具製造装置。
【請求項4】
患者の口元を覆うと共に所定の大きさの開口部が形成された口当部と、患者の頭部に対する前記口当部の位置を維持するために当該口当部に一体的に設けられ、患者の後頭部まで連続して前記口当部と共に周状となるバンド部と、を備え、前記口当部は、呼吸器チューブが前記開口部に挿通された状態で前記呼吸器チューブが固定可能とされている呼吸器チューブの固定具の製造装置であって、
患者の口元を含む頭部を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された頭部の画像に基づいて、患者の口元を含む頭部の形状を把握する形状把握手段と、
前記形状把握手段により把握された頭部の形状に基づいた大きさとなるように、前記固定具を製造する3次元プリンタと、
前記撮像手段が患者の頭部を含む全身を撮像することによって得られた患者の身長データ、又は、装置に入力されることにより得られた患者の身長データに基づいて、呼吸器チューブの挿入量を算出する算出手段と、を備え、
前記3次元プリンタは、前記算出手段により算出された挿入量を前記口当部の表面に表示されるように前記固定具を製造する
ことを特徴とする固定具製造装置。
【請求項5】
患者の口元を覆うと共に所定の大きさの開口部が形成された口当部と、患者の頭部に対する前記口当部の位置を維持するために当該口当部に一体的に設けられ、患者の後頭部まで連続して前記口当部と共に周状となるバンド部と、を備え、前記口当部は、呼吸器チューブが前記開口部に挿通された状態で前記呼吸器チューブが固定可能とされている呼吸器チューブの固定具の製造装置であって、
患者の口元を含む頭部を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された頭部の画像に基づいて、患者の口元を含む頭部の形状を把握する形状把握手段と、
前記形状把握手段により把握された頭部の形状に基づいた大きさとなるように、前記固定具を製造する3次元プリンタと、
前記撮像手段が患者の頭部を含む全身を撮像することによって得られた患者の身長データ、又は、装置に入力されることにより得られた患者の身長データに基づいて、呼吸器チューブの径を算出する算出手段と、を備え、
前記3次元プリンタは、前記算出により算出された呼吸器チューブの外径と同じ又は前記外径よりも所定量だけ小さい大きさの開口部を有するように前記固定具を製造する
ことを特徴とする固定具製造装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の固定具製造装置として機能させるための固定具製造プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の固定具製造プログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器チューブの固定具、固定具製造装置、固定具製造プログラム、及び、コンピュータ読取可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工呼吸器から延びる呼吸器チューブを患者の喉奥まで挿管して患者の呼吸を確保することが知られている(例えば特許文献1,2参照)。このような呼吸の確保においては、特許文献1,2のように患者の喉を切開し切開部分から呼吸器チューブを挿管する場合と、患者の口から呼吸器チューブを喉奥まで送り込んでいく場合とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-283329号公報
【文献】特開2008-245988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、患者の口から呼吸器チューブを入れる場合には、呼吸器チューブにテープを巻き付けた後に、テープを口元に貼り付ける方式が採用されている。しかし、このような呼吸器チューブの固定方法では物理的に固定が不安定であるため、患者に意識が出てきた場合には、口元の動作等によって外れ易くなってしまう。成人は麻酔をかけるので口元が動く可能性が非常に低いが、新生児、乳児及び幼児は麻酔をかけることができず、患者が新生児、乳児及び幼児である場合には、意識が出てきたときに、ちょっとした動きでテープが外れてしまうことがある。テープが外れると呼吸器チューブの先端が気管支分岐の手前の位置を維持できず、ひどい場合には呼吸器チューブ自体が抜けてしまうことから、致死的な結果を招く可能性がないとはいえない。加えて、新生児については肌が弱くテープでしっかり固定してもすぐに剥がれてしまい、ひどい場合にはテープで皮膚を剥がしてしまい、2度とテープによる固定ができなくなることから、致死的な結果を招く可能性がないとはいえない。なお、上記問題は、新生児、乳児及び幼児に関するものであるが、特に新生児、乳児及び幼児に限らず、成人であっても生じないとはいえないものである。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、呼吸器チューブの先端位置を所定の位置に維持し易くすることができる呼吸器チューブの固定具、固定具製造装置、固定具製造プログラム、及び、コンピュータ読取可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る呼吸器チューブの固定具は、患者の口元を覆うと共に所定の大きさの開口部が形成された口当部と、患者の頭部に対する前記口当部の位置を維持するために当該口当部に一体的に設けられ、患者の後頭部まで連続して前記口当部と共に周状となるバンド部と、を備え、前記口当部は、呼吸器チューブが前記開口部に挿通された状態で前記呼吸器チューブが固定可能とされている。
【0007】
また、本発明に係る固定具製造装置は、上記のような呼吸器チューブの固定具の製造装置であって、患者の口元を含む頭部を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された頭部の画像に基づいて、患者の口元を含む頭部の形状を把握する形状把握手段と、前記形状把握手段により把握された頭部の形状に基づいた大きさとなるように、前記固定具を製造する3次元プリンタと、を備える。
【0008】
また、本発明に係る固定具製造プログラムは、コンピュータを上記の固定具製造装置として機能させるためのプログラムであり、本発明に係るコンピュータ読取可能な記録媒体は、上記の固定具製造プログラムが記録されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る呼吸器チューブの固定具よれば、口当部に一体的に設けられ患者の後頭部まで連続して口当部と共に周状となるバンド部を備え、口当部は、呼吸器チューブが開口部に挿通された状態で呼吸器チューブが固定可能とされている。このため、患者の口元に呼吸器チューブが固定されることなく、呼吸器チューブは口当部に固定される。また、口当部はバンド部によってテープを使用することなく位置が維持される。このため、たとえ患者の口元が動いても口当部の位置はズレ難くなる。従って、呼吸器チューブの先端位置を所定の位置に維持し易くすることができる。
【0010】
また、本発明に係る固定具製造装置、固定具製造プログラム及びコンピュータ読取可能な記録媒体によれば、撮像された頭部の画像に基づいて患者の口元を含む頭部の形状を把握し、把握された頭部の形状に基づいた大きさとなるように固定具を製造するため、患者個人に合った形状の固定具とすることができ、例えば固定具自身が患者からズレて装着されてしまう等の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る呼吸器チューブの固定具を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る固定具製造装置の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る呼吸器チューブの固定具を示す斜視図である。図1に示す固定具1は、人工呼吸器等から延びる呼吸器チューブT1を固定するためのものである。この固定具1は、患者の体の大きさに合わせて様々な大きさのものを用意可能である。固定具1は、例えば軟質樹脂(例えばシリコン樹脂)によって形成されており、図1に示すように、患者の口元を覆う口当部10と、バンド部21とを備えている。なお、固定具1には全体又は部分的に硬質樹脂が採用されていてもよい。
【0014】
口当部10は、患者の口元を覆う部位である。この口当部10には、その中央部に開口部11が形成されている。開口部11は、呼吸器チューブT1が挿入される例えば円形の貫通孔であり、固定具1が患者に取り付けられたときに口中央と正対する位置に形成されている。
【0015】
バンド部21は、患者の頭部に対する口当部10の位置を維持するために設けられた部位である。このバンド部21は、口当部10と一体的(一体のみならず接着等の接続を含む)に設けられており、口当部10の両側方から延びて形成されている。このバンド部21は、口当部10と共に周状となるバンド部21の締め付けによって、患者の頭部に固定可能となっている。
【0016】
このようなバンド部21は、患者の後頭部下側の窪みに接触するように設計されている。さらに、バンド部21は、耳に接触しないように設計されている。また、バンド部21は、例えば長手方向に沿って中央部に長孔21aが形成されている。これにより、バンド部21のうち一方のバンド21bを後頭部下側の窪みのやや上方に接触させ、他方のバンド21cを後頭部下側の窪みのやや下方に接触させることが可能となり、バンド部21の上下方向へのズレを防止し易い構造となっている。固定具1は、このようなバンド部21により、患者の皮膚にテープを貼り付ける必要がない構造となっている。
【0017】
また、口当部10は、呼吸器チューブT1を固定可能となっている。固定方法としては、例えばテープによる貼り付け、クリップによる固定、及び圧入が挙げられる。特に、本実施形態において口当部10の開口部11は、その径が、患者に使用する対象となる特定の呼吸器チューブT1の外径と同じ又はやや小さくされている。このため、呼吸器チューブT1は、開口部11の内壁に対して摩擦力を発揮するようになり、外れ難くされている。さらに、開口部11の径が特定の呼吸器チューブT1の外径よりも小さい場合には、呼吸器チューブT1が開口部11に圧入されるため、より一層呼吸器チューブT1を開口部11に固定し易くなる(加えて、テープやクリップを利用してもよい)。口当部10は、呼吸器チューブT1を固定し易いようにバンド部21よりも硬度の高い素材によって構成されていることが好ましい。
【0018】
なお、患者に使用する対象となる特定の呼吸器チューブT1とは、患者の身体の大きさによって異なるものであり、例えば成人男性で使用される呼吸器チューブT1と新生児、乳児及び幼児で使用される呼吸器チューブT1とでは太さや長さが異なる。よって、一般的な成人男性については、例えば長さXX1mm、外径YY1mm、及び内径ZZ1mmの呼吸器チューブT1を使用すべきであると定まっており、新生児、乳児及び幼児に対しては例えば長さXX2mm、外径YY2mm、及び内径ZZ2mmの呼吸器チューブT1を使用すべきであると定まっている(新生児、乳児及び幼児でそれぞれ異なる長さ等であってもよい)。本実施形態に係る固定具1についても患者の体の大きさの相違に対応できるように複数種類用意されており、実際の使用時には患者の体の大きさに適した特定の1種類が選択される。従って、患者の体の大きさによって選択された固定具1と患者の体の大きさによって選択された呼吸器チューブT1との関係において、開口部11の径は、呼吸器チューブT1の外径と同じ又は当該外径よりも小さくされていることとなる。
【0019】
具体的な数値で述べると呼吸器チューブT1は、例えば外径が6mm以上12mm以下とされている。よって、開口部11の径は例えば4mm以上10mm以下とされていることとなる。
【0020】
加えて、口当部10は、その表面(開口部11に隣接した位置)に表示部12を備えている。この表示部12は、開口部11の位置からの呼吸器チューブT1の挿入量を示すものである。すなわち、呼吸器チューブT1を表示部12の挿入量の通り開口部11に挿入することで、呼吸器チューブT1の先端位置は、患者の気管支分岐の手前の位置となり易くなる。ここで、口から気管支分岐の手前までの長さについても、患者の体の大きさによって変化するものである。よって、表示部12には、使用される固定具1の種類に応じて異なる数値が記載されていることとなる。すなわち、成人男性用の固定具1については表示部12に成人男性の挿入量が表示され、新生児、乳児及び幼児用の固定具1については表示部12に新生児、乳児及び幼児の挿入量が表示されることとなる。
【0021】
さらに、口当部10は、通常のマスクと異なり、鼻及び顎に接触しない構成となっている。このため、口当部10の上端は鼻と口との間に位置することとなる。さらに、口当部10は顎について覆うことなく露出させる構造であることから、口の動きに伴う擦れを防止して、皮膚が特に弱い新生児に適した形状とすることができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る固定具1の患者への取付方法の一例を説明する。まず、患者の体に応じた適切な種類の固定具1が用意される。次に、患者に対して固定具1を取り付ける。このとき、口当部10が患者の口元に位置した状態でバンド部21が伸ばされるようにして患者の後頭部下側の窪みに巻き回される。
【0023】
次に、対象となる呼吸器チューブT1を選択し、開口部11を通じて患者の口に呼吸器チューブT1を挿入していく。そして、開口部11に対する挿入量が表示部12に記載される挿入量と同じとなると、挿入作業が完了する。その後、呼吸器チューブT1をテープやクリップなどによって口当部10に固定する。以上により、固定具1の患者への取付が完了する。
【0024】
このようにして、本実施形態に係る呼吸器チューブT1の固定具1によれば、口当部10に一体的に設けられ患者の後頭部まで連続して口当部と共に周状となるバンド部21を備え、口当部10は、呼吸器チューブT1が開口部11に挿通された状態で呼吸器チューブT1が固定可能とされている。このため、患者の口元に呼吸器チューブT1が固定されることなく、呼吸器チューブT1は口当部10に固定される。また、口当部10はバンド部21によってテープを使用することなく位置が維持される。このため、たとえ患者の口元が動いても口当部10の位置はズレ難くなる。従って、呼吸器チューブT1の先端位置を所定の位置に維持し易くすることができる。
【0025】
また、口当部10は、その表面に呼吸器チューブT1の挿入量が表示されているため、呼吸器チューブT1をどの程度挿入すべきか明らかとなり、呼吸器チューブT1の先端位置を適切な箇所とし易くすることができる。
【0026】
また、開口部11は、その径が呼吸器チューブT1の外径と同じ又はそれ以下にされているため、呼吸器チューブT1は開口部11の内壁に対して摩擦力が発揮され、位置を維持し易くなる。従って、呼吸器チューブT1の先端位置を所定の位置に維持し易くすることができる。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る固定具の製造装置を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る固定具製造装置の概略を示す構成図である。
【0028】
図1を参照した説明において固定具1は、患者の体の大きさに合わせて複数種類のものが用意されていた。しかし、可能であれば、固定具1は患者個人に合わせて製造された専用品であることが好ましい。固定具製造装置100は、このような専用品となる固定具1を製造するためのものである。
【0029】
図2に示すように、固定具製造装置100は、カメラ(撮像手段)110と、入力部120と、制御装置130と、3次元プリンタ140とを備えて構成されている。カメラ110は、少なくとも患者の口元を含む頭部の画像を撮像するものである。入力部120は、患者のデータを入力するものであって、例えば数値入力可能な操作部であってもよいし、外部機器から患者データを読み込むインターフェース等であってもよい。制御装置130は、カメラ110によって撮像された画像に基づいて、専用品となる固定具1のデータを生成するものである。3次元プリンタ140は、制御装置130にて生成されたデータに基づいて専用品となる固定具1を製造するものである。
【0030】
なお、制御装置130は、内蔵されるROMに予め記憶される固定具製造プログラムを実行することにより、又は、固定具製造プログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体から固定具製造プログラムを読み込んで実行することにより、固定具1のデータ生成や、3次元プリンタ140の制御等を行う。
【0031】
このような制御装置130は、形状把握部(形状把握手段)131と、第1算出部(算出手段)132と、第2算出部(算出手段)133とを備えている。
【0032】
形状把握部131は、カメラ110により撮像された頭部の画像に基づいて、患者の口元を含む頭部の形状を把握する。すなわち、形状把握部131は、撮像画像に基づいて、例えば患者の鼻から顎までの長さ、鼻から口までの長さ、鼻と顎との間における口元の位置、頭部の大きさ等の形状を把握するようになっている。
【0033】
制御装置130は、このように形状把握を行うことで、専用品となる固定具1のデータを生成する。すなわち、制御装置130は、形状把握によって、バンド部21の長さを決定したり、口当部10の大きさを決定したりする。また、制御装置130は、口当部10をやや横長としたり縦長としたりなどの形状についても決定してもよい。
【0034】
また、第1算出部132は、患者の身長データに基づいて開口部11からの呼吸器チューブT1の挿入量を算出するものである。第1算出部132は、カメラ110によって患者の全身が撮像された場合には、撮像画像に基づいて身長データを演算し、演算により得られた身長データに基づいて呼吸器チューブT1の挿入量を算出する。また、第1算出部132は、入力部120に患者の身長データが入力された場合、入力された身長データに基づいて呼吸器チューブT1の挿入量を算出してもよい。さらに、第1算出部132は、身長データのみならず、患者の横幅や体重を考慮して算出してもよい。
【0035】
このように第1算出部132により算出された挿入量は、図1を参照して説明した表示部12として口当部10の表面に記載されることとなる。
【0036】
第2算出部133は、患者の身長データに基づいて呼吸器チューブT1の外径を算出するものである。第2算出部133は、カメラ110によって患者の全身が撮像された場合には、撮像画像に基づいて身長データを演算し、演算により得られた身長データに基づいて呼吸器チューブT1の外径を算出する。また、第2算出部133は、入力部120に患者の身長データが入力された場合、入力された身長データに基づいて呼吸器チューブT1の挿入量を算出してもよい。さらに、第2算出部133は、身長データのみならず、患者の横幅や体重を考慮して算出してもよい。
【0037】
3次元プリンタ140は、第2算出部133により算出された外径と同じ又は外径よりも所定量だけ小さい大きさの開口部11を有するように固定具1を製造することとなる。
【0038】
このようにして、本実施形態に係る固定具製造装置100、固定具製造プログラム、及びこのプログラムが記録された記録媒体によれば、撮像された頭部の画像に基づいて患者の口元を含む頭部の形状を把握し、把握された頭部の形状に基づいた大きさとなるように固定具1を製造するため、患者個人に合った形状の固定具1とすることができる。これにより、例えば固定具1自身が患者に合っておらず固定具1が外的な力の作用によってズレ易くなってしまう等の可能性を低減することができる。
【0039】
また、身長データに基づいて算出された呼吸器チューブT1の挿入量を口当部10の表面に表示するため、新生児、乳児及び幼児と成人とのように呼吸器チューブT1の挿入量が大きく異なる場合であっても、身長データに基づいて挿入量の表示によって呼吸器チューブT1をどの程度挿入するのか明らかとなり、呼吸器チューブT1の先端位置を適切な箇所とし易くすることができる固定具1を提供することができる。
【0040】
また、身長データに基づいて算出された呼吸器チューブT1の外径と同じ又は外径よりも所定量だけ小さい大きさの開口部11を形成するため、新生児、乳児及び幼児と成人とのように呼吸器チューブT1の径が異なる場合であっても、身長データに基づく適切な径の呼吸器チューブT1を選択し易くなり、適切な呼吸器チューブT1を選択させることが可能な固定具1を提供することができる。
【0041】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施形態を組み合わせてもよい。さらには、公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0042】
例えば、上記実施形態において固定具1は、患者の鼻と顎とを露出させる構成となっているが、これに限らず、さらに頬を露出させるようになっていてもよいし、口元のみを覆う構成であってもよい。
【0043】
また、本実施形態に係る固定具1は患者が新生児である場合に特に効果を発揮するものであるが、特に新生児に限らず、乳児、及び幼児に使用されてもよいし、成人に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 :固定具
10 :口当部
11 :開口部
12 :表示部
21 :バンド部
100 :固定具製造装置
110 :カメラ(撮像手段)
120 :入力部
131 :形状把握部(形状把握手段)
132 :第1算出部(算出手段)
133 :第2算出部(算出手段)
140 :3次元プリンタ
T1 :呼吸器チューブ
図1
図2