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特許7107788電気モジュールおよび電気モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電気モジュールおよび電気モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
H01G9/20 203B
H01G9/20 303C
H01G9/20 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018164578
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020038877
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】馬場 英輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】井川 博之
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025822(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047550(WO,A1)
【文献】特開2014-080567(JP,A)
【文献】特開2012-064559(JP,A)
【文献】特開2014-063673(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084317(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017776(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/142086(WO,A1)
【文献】特開平07-140481(JP,A)
【文献】特開平05-163023(JP,A)
【文献】特開平02-310089(JP,A)
【文献】特開2007-298969(JP,A)
【文献】特開2001-044474(JP,A)
【文献】特開2015-005537(JP,A)
【文献】特開平07-118617(JP,A)
【文献】特開2014-063592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0031520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材をそれぞれ備え、互いに対向する第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に充填される電解液と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間に前記電解液を封止して前記第1電極および前記第2電極を含む発電部を複数形成する封止材と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極および前記第2電極を電気的に接続することで複数の前記発電部同士を電気的に接続する導通材と、
前記第1電極の基材と前記第2電極の基材とが接合されることで形成され、前記封止材とともに前記電解液を封止する接合部と、を備え、
前記導通材は、樹脂製のコアと、前記コアを被覆する導電性の被覆層と、を備え、
前記コアを形成する樹脂のガラス転移点Tg0は、前記第1電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg1、および前記第2電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg2以下であり、
前記接合部を形成するために、前記第1電極と前記第2電極とを融着させるときに、前記第1電極の基材および前記第2電極の基材の各流動性よりも、前記導通材のコアの流動性を先行して高める、電気モジュール。
【請求項2】
前記ガラス転移点Tg0は、前記ガラス転移点Tg1および前記ガラス転移点Tg2それぞれの50%以上である請求項1に記載の電気モジュール。
【請求項3】
前記封止材は、前記第1電極および前記第2電極が積層される積層方向に対して直交する第1の方向に間隔をあけて複数設けられ、
前記接合部は、前記発電部を、前記積層方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に挟み込むように複数設けられ、
前記発電部は、前記封止材により前記第1の方向に複数区画されて前記接合部により前記第2の方向の両側から封止され、
前記導通材は、前記発電部を前記第2の方向に挟み込む一対の前記接合部間を前記第2の方向に横断している請求項1または2に記載の電気モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気モジュールの製造方法であって、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記導通材が配置された状態で前記第1電極および前記第2電極に超音波を付与し、前記第1電極の基材、前記第2電極の基材および前記コアの各温度を上昇させて前記第1電極の基材と前記第2電極の基材とを融着し、前記接合部を形成する電気モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モジュールおよび電気モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に記載の電気モジュールが知られている。この電気モジュールは、太陽電池モジュールである。太陽電池モジュールは、第一電極と、第二電極と、電解液と、封止材と、導通材と、絶縁ラインと、を備えている。第一電極の第一基材の表面には、透明導電膜が成膜されている。透明導電膜の表面には、第一の方向に延在する色素が吸着した帯状の半導体層が複数形成されている。第二基材の表面には、第一電極に対向するように対向導電膜が成膜されている。電解液は、第一電極の半導体層と第二電極との間に封止されている。封止材は、電解液を封止する。封止材は、平面視で第一の方向に直交する第二の方向に分割された複数のセルを配列する。導通材は、封止材に覆われた状態で設けられている。導通材は、第一電極と第二電極とを電気的に接続する。絶縁ラインは、第一電極及び第二電極に対して第二の方向に沿って延在する。第二の方向に配列される複数のセルは、直列配線により電気的に接続されている。第二の方向に隣り合うセル同士の間に配置された第一基材の第一絶縁部と、第二基材の第二絶縁部と、の間には、導通材が配置されている。これにより、隣り合うセル同士が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-82137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の電気モジュールでは、耐久性を向上させることについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る電気モジュールは、樹脂製の基材をそれぞれ備え、互いに対向する第1電極および第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に充填される電解液と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間に前記電解液を封止して前記第1電極および前記第2電極を含む発電部を複数形成する封止材と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極および前記第2電極を電気的に接続することで複数の前記発電部同士を電気的に接続する導通材と、前記第1電極の基材と前記第2電極の基材とが接合されることで形成され、前記封止材とともに前記電解液を封止する接合部と、を備え、前記導通材は、樹脂製のコアと、前記コアを被覆する導電性の被覆層と、を備え、前記コアを形成する樹脂のガラス転移点Tg0は、前記第1電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg1、および前記第2電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg2以下である。
【0007】
コアを形成する樹脂のガラス転移点Tg0が、第1電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg1、および第2電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg2以下である。したがって、例えば、接合部を形成するために、第1電極と第2電極とを融着(超音波融着)させるときに、第1電極の基材および第2電極の基材の各流動性よりも導通材のコアの流動性を先行して高めること等ができる。これにより、第1電極および第2電極の両基材を、導通材のコアを介して接合し易くすることができる。その結果、接合部の接合強度を高めることが可能になり、耐久性を向上させることができる。
【0008】
前記ガラス転移点Tg0は、前記ガラス転移点Tg1および前記ガラス転移点Tg2それぞれの50%以上であってもよい。
【0009】
コアを形成する樹脂のガラス転移点Tg0が、第1電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg1、および第2電極の基材を形成する樹脂のガラス転移点Tg2それぞれの50%以上である。したがって、例えば、第1電極と第2電極とを融着(超音波融着)させるときに、導通材のコアおよび第1電極の基材、第2電極の基材の各流動性が比較的近い温度領域で並行して高まる。これにより、第1電極および第2電極の両基材と、導通材のコアと、の相溶性を高めることが可能になり、接合部の接合強度を一層高めることができる。
【0010】
前記封止材は、前記第1電極および前記第2電極が積層される積層方向に対して直交する第1の方向に間隔をあけて複数設けられ、前記接合部は、前記発電部を、前記積層方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に挟み込むように複数設けられ、前記発電部は、前記封止材により前記第1の方向に複数区画されて前記接合部により前記第2の方向の両側から封止され、前記導通材は、前記発電部を前記第2の方向に挟み込む一対の前記接合部間を前記第2の方向に横断していてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る電気モジュールの製造方法は、前記電気モジュールの製造方法であって、前記第1電極と前記第2電極との間に前記導通材が配置された状態で前記第1電極および前記第2電極に超音波を付与し、前記第1電極の基材、前記第2電極の基材および前記コアの各温度を上昇させて前記第1電極の基材と前記第2電極の基材とを融着し、前記接合部を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る保護層付き色素増感型太陽電池を対向電極側から見た平面図であって、防湿層を透過した状態を示す図である。
図2図1に示すII-II矢視断面図に相当する断面図であって、保護層付き色素増感型太陽電池の一部を拡大した図である。
図3図2に示す保護層付き色素増感型太陽電池を構成する導通材の拡大図である。
図4図1に示す保護層付き色素増感型太陽電池のシール部を形成するときにおける導通材の状態を示す断面図である。
図5図1に示す保護層付き色素増感型太陽電池を構成する色素増感型太陽電池の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る電気モジュール(太陽電池モジュール)の実施の形態について、図1図5を適宜参照しながら、その構成を詳細に説明する。なお、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
なお、以下の説明においては、本発明に係る電気モジュールの一例として、RtoR方式を用いて製造されるフィルム型の色素増感型太陽電池を挙げて説明する。ここで、本発明を適用した電気モジュールは、色素増感型太陽電池に限定されない。本発明は、絶縁処理が施された二枚の電極同士を、封止材を介在させて貼り合わせた構成であれば、色素増感型太陽電池以外の電気モジュールも全て含む。また、本発明に係る電気モジュールは、上記のRtoR方式を用いて製造される構成、即ち、基材を所定の方向に搬送しつつ連続的に製造されるものには限定されない。本発明は、例えば、予め切り分けられた基材毎にセル構造が形成されているものも含む。
【0016】
[保護層付き電気モジュール(保護層付き色素増感型太陽電池)の構成]
図1及び図2に示すように、本発明を適用した本実施形態の保護層付き色素増感型太陽電池(保護層付き電気モジュール)1は、色素増感型太陽電池(電気モジュール)10と、色素増感型太陽電池10を保護する保護層2と、を備えている。
【0017】
[電気モジュール(色素増感型太陽電池)の構成]
本発明を適用した本実施形態の色素増感型太陽電池10は、光電極41(第1電極)と、対向電極42(第2電極)と、発電部44と、封止材46と、導通材48と、備えている。
図2に示すように、光電極41および対向電極42の表面同士は、間隔をあけて対向している。以下では、光電極41および対向電極42が対向する方向を積層方向D3(第3の方向、対向方向)という。
【0018】
光電極41は、光電極支持体21(絶縁性の基材、樹脂製の基材)と、この光電極支持体21の表面21aに設けられた光電極導電層31(透明電極膜)と、色素が吸着され光電極導電層31に間欠的に積層された複数の無機半導体層12(半導体層)と、を有する。
【0019】
光電極支持体21は、光電極導電層31、無機半導体層12や封止材46、及び導通材48の基台となる部材である。光電極支持体21の材質は、RtoR方式を用いた太陽電池の連続生産に適用できる程度に柔軟性を有し、大面積フィルム状に形成可能な材質であれば、特に限定されない。このような光電極支持体21の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はポリイミド等の透明の樹脂材料が挙げられる。
なお、図1に示すような光電極支持体21の平面視において、光電極支持体21は矩形状に形成されている。以下では、前記平面視において光電極支持体21の各辺が延びる方向をD1方向(第1の方向)およびD2方向(第2の方向)という。D1方向およびD2方向は、互いに直交する。D1方向およびD2方向は、積層方向D3に直交する。
【0020】
図2に示すように、光電極導電層31は、光電極支持体21の表面21a(即ち、光電極支持体21における対向電極42側の面)のD1方向全体にわたって成膜されている。光電極導電層31は、光電極支持体21の表面21aに全域にわたって積層されている。光電極導電層31の材質としては、例えば、酸化スズ(ITO)、酸化亜鉛等が挙げられる。
光電極支持体21および光電極導電層31は、いずれも透明であり、光電極支持体21の裏面から入射する光を透過させる。
【0021】
無機半導体層12は、光電極導電層31の表面(即ち、光電極導電層31における対向電極42側の面)に形成されている。言い換えると、無機半導体層12は、D1方向に間隔をあけて複数配置されている。各無機半導体層12は、D2方向に長い帯状に形成されている。
【0022】
無機半導体層12は、例えば、金属酸化物等に増感色素が担持されることによって染色された多孔質層であり、増感色素から電子を受け取って輸送する機能を有する。このような金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化スズ(SnO)等が挙げられる。
【0023】
上述の増感色素は、有機色素又は金属錯体色素から構成される。有機色素としては、例えば、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、又はチオフェン系等の各種有機色素等が挙げられる。金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム錯体等が挙げられる。
【0024】
対向電極42は、光電極支持体21に対向する対向電極支持体22(絶縁性の基材、樹脂製の基材)と、対向電極支持体22の表面22a(対向電極支持体22における光電極41側の面)に設けられた対向電極導電層32(透明電極膜)とを有する。
【0025】
対向電極支持体22は、対向電極導電層32の基台となる部材である。対向電極支持体22の材質は、光電極支持体21と同様に、RtoR方式を用いた太陽電池の連続生産に適用できる程度に柔軟性を有し、大面積フィルム状に形成可能な材質であれば、特に限定されない。対向電極支持体22の材質としては、例えば、光電極支持体21と同様の樹脂材料が挙げられる。
【0026】
対向電極導電層32は、対向電極支持体22の表面22aのD1方向全体にわたって成膜されている。対向電極導電層32は、対向電極支持体22の表面22aに積層されている。対向電極導電層32の材質としては、例えば、光電極導電層31と同様の化合物等が挙げられる。
【0027】
発電部44は、光電極41と対向電極42との間に挟まれ、光電極41及び対向電極42の面方向(図2中に示すD1方向)に沿って間隔をおいて複数設けられている。発電部44は、前述した無機半導体層12と、電荷移動体(電解液、電解質)14と、を含む。
【0028】
電荷移動体14は、光電極41と対向電極42との間に充填される。電荷移動体14は、無機半導体層12に接触するように充填されている。電荷移動体14としては、例えば、アセトニトリル、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム又はヨウ化ブチルメチルイミダゾリウム等のイオン液体等の液体成分に、ヨウ化リチウム等の支持電解質とヨウ素とが混合された溶液(具体的には、プロピオニトリル等の非水系溶剤)等が挙げられる。
【0029】
封止材46は、光電極41と対向電極42との間に電荷移動体14を封止して発電部44を形成する。封止材46は、図1中に示すシール部60とともに、電荷移動体14を含む発電部44を封止する。封止材46は、図1及び図2中に示すD1方向に沿って発電部44の両側に設けられている。封止材46は、D1方向において発電部44と隣接して設けられている。封止材46は、無機半導体層12をD1方向に挟み込むように複数設けられている。封止材46は、D1方向に隣り合う無機半導体層12の間に配置されている。封止材46は、発電部44をD1方向に沿って複数形成している。なお封止材46は、D1方向に隣り合う発電部44の間に一対配置されている。封止材46は、D2方向に延びる帯状に形成されている。
【0030】
封止材46は、さらに、光電極41と対向電極42とを貼り合わせて互いを接着するための樹脂等を含む。このような封止材46の材質としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂のうち少なくとも一種を含む樹脂材料が挙げられる。
【0031】
D1方向に隣り合う発電部44の間に配置された一対の封止材46同士の間には、導通材48が設けられている。導通材48は、無機半導体層12、電荷移動体14を含む発電部44同士を電気的に接続し、導通させる。図示の例では、導通材48の一例として、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の接着剤38に適量の導電粒子36を混合した導通ペーストを採用している。この構成は、色素増感型太陽電池10を所望のパターンで切り出す際に、導通材48を容易に切断できる構成であるため好ましい。導通材48には、封止材46と同様の材料からなるバインダーを用いてもよい。
【0032】
図示の例では、導電粒子36は球状に形成されている。導電粒子36としては、例えば、平均粒子径が50.0±0.5μm、粒子径の標準偏差が2.3±0.2μmの材料(粒子群)を採用することができる。導電粒子36は、コア36aと、被覆層36bと、を備えている。コア36aは、例えば樹脂材料(一例としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂)等が挙げられる。被覆層36bは、コア36aの表面を全面にわたって被覆する。被覆層36bの導電性は、コア36aの導電性よりも高い。被覆層36bは、例えば、金属材料により形成される。被覆層36bは、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、被覆層36bとして、ニッケル(内層36c)に金(外層36d)が積層された構成を採用している。内層36cは、コア36aの表面にニッケルのメッキ処理をすることで形成される。外層36dは、内層36cの表面に金のメッキ処理をすることで形成される。外層36dは、内層36cよりも薄い。
被覆層36bの厚さ(膜厚、層厚)は、導電粒子36の粒子径に比べて、例えば、5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下となっている。前述したように、導電粒子36の平均粒子径が50.0±0.5μmであるのに対して、内層36cは、例えば、0.14~0.20μmであり、外層36dは、例えば、0.034~0.052μmである。
【0034】
なお、導電粒子36全体の体積(例えば、65416μm)に対する内層36cの体積(例えば、780μm)の割合は、1.2vol%程度である。導電粒子36全体の体積(例えば、65416μm)に対する外層36dの体積(例えば、196μm)の割合は、0.3vol%程度である。導電粒子36全体の体積(例えば、65416μm)に対するコア36aの体積(例えば、64440μm)の割合は、98.5vol%程度である。
また、導電粒子36全体の質量に対する内層36cの質量の割合は、9.6~13.6wt%程度である。導電粒子36全体の質量に対する外層36dの質量の割合は、5.0~8.0wt%程度である。
【0035】
コア36aを形成する樹脂のガラス転移点Tg0は、光電極支持体21を形成する樹脂のガラス転移点Tg1、および対向電極支持体22を形成する樹脂のガラス転移点Tg2以下である。ガラス転移点Tg0は、ガラス転移点Tg1およびガラス転移点Tg2それぞれの50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より一層好ましくは70%以上である。例えば、ガラス転移点Tg0は、90℃程度であり、ガラス転移点Tg1およびガラス転移点Tg2は110℃程度である。
【0036】
なお本実施形態では、封止材46を形成する樹脂のガラス転移点Tg3も、前記ガラス転移点Tg1および前記ガラス転移点Tg2以下である。ガラス転移点Tg3は、ガラス転移点Tg1およびガラス転移点Tg2それぞれの50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より一層好ましくは70%以上である。例えば、ガラス転移点Tg3は、85℃程度である。
【0037】
ガラス転移点Tg0は、ガラス転移点Tg1、Tg2よりも、ガラス転移点Tg3に近い。言い換えると、コア36aに係るガラス転移点Tg0は、光電極支持体21や対向電極支持体22に係るガラス転移点Tg1、2よりも、封止材46に係るガラス転移点Tg3に近い。
【0038】
光電極導電層31及び対向電極導電層32には、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bがそれぞれ設けられている。第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、図2中に示したD1方向に直交する断面において、光電極導電層31及び対向電極導電層32の封止材46と重なる部分に設けられている。言い換えると、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、封止材46と積層方向D3に重なっている。第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、平面視においてD2方向に長い帯状に設けられている。
【0039】
光電極41の光電極導電層31には第一絶縁部50Aが設けられている。対向電極42の対向電極導電層32には第二絶縁部50Bが設けられている。図2に示す例においては、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、光電極導電層31又は対向電極導電層32を厚み方向で貫通している。換言すると、第一絶縁部50Aは、光電極導電層31をD1方向に分断(電気的に遮断)している。第二絶縁部50Bは、対向電極導電層32をD1方向に分断(電気的に遮断)している。
【0040】
以上のように、導通材48が、光電極41および対向電極42を積層方向D3に電気的に接続している。かつ、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bが、光電極41および対向電極42をD1方向に局所的に絶縁している。これにより、D1方向に隣り合う発電部44は、互いに電気的に直列に接続される。
【0041】
図1に示すように、色素増感型太陽電池10には、シール部60(融着部、超音波融着部、接合部)が設けられている。シール部60は、色素増感型太陽電池10のD2方向における所定の位置に設けられている。シール部60は、無機半導体層12を、D2方向に挟み込むように一対(複数)設けられている。シール部60では、色素増感型太陽電池10におけるD1方向の全長にわたって光電極41と対向電極42とが貼り合わされている。
【0042】
シール部60は、光電極支持体21と対向電極支持体22とが圧着(接合)されることで、電気的に絶縁された部分である。光電極支持体21と対向電極支持体22とは、光電極41及び対向電極42の厚み方向(積層方向D3)の外方(即ち、色素増感型太陽電池10の上方及び下方)から、例えば、超音波融着等の方法を用いて光電極41及び対向電極42に力を加えるか、又は押圧することによって、圧着することができる。なお、圧着された光電極支持体21と対向電極支持体22との間には、僅かな厚みで、光電極導電層31、対向電極導電層32、無機半導体層12及び電荷移動体14が介在している場合がある。しかしながら、これの各層は、シール部60においてほぼ分断された状態なので、シール部60に隣接する発電部44同士を電気的に接続しない。例えば図4に示すように、シール部60が形成される過程で、導通材48では導電粒子36が破壊される。このとき、コア36aの破片36a1および被覆層36bの破片36b1が形成されるが、これらは発電部44同士を導通しない。
なお図1に示すように、各発電部44は、封止材46によりD1方向に複数区画され、シール部60によりD2方向の両側から封止されている。無機半導体層12、封止材46および導通材48は、一対のシール部60間をD2方向に横断している。
【0043】
光電極41および対向電極42には、取り出し電極部71が設けられている。取り出し電極部71は、発電部44に電気的に接続されている。取り出し電極部71は、発電部44が発電した電力を取り出す。本実施形態では、取り出し電極部71は、光電極41におけるD1方向の端部に設けられている。取り出し電極部71は、光電極導電層31が、積層方向D3に沿う対向電極42側に露出されることで形成されている。図示の例では、光電極41が対向電極42よりもD1方向に大きく、光電極41の端部が対向電極42に対してD1方向に張り出している。その結果、光電極導電層31が、取り出し電極部71を形成している。取り出し電極部71は、D1方向よりもD2方向に長い。
【0044】
[保護層2の構成]
図1および図2に示すように、保護層2は、色素増感型太陽電池10を封止する。図2に示すように、保護層2は、色素増感型太陽電池10を積層方向D3に挟み込む光電極側防湿フィルム81および対向極側防湿フィルム82を備えている。
光電極側防湿フィルム81は、透光性が高いことが好ましい。光電極側防湿フィルム81は、光電極側バリア層83と、光電極側接着層84と、を備えている。光電極側バリア層83は、例えば樹脂基板にバリア性が付与されたフィルムであってもよい。
対向極側防湿フィルム82は、対向電極側バリア層85と、対向電極側接着層86と、を備えている。対向電極側バリア層85は、アルミニウム等の金属箔や、アルミニウムとポリエチレンテレフタレートとの複合フィルム等であってもよい。
なお、色素増感型太陽電池10が発電した電力は、図示しない配線によって保護層2の外部に取り出される。前記配線は、取り出し電極部71に導通される。前記配線は、例えば、光電極側防湿フィルム81および対向極側防湿フィルム82の間から、または、光電極側防湿フィルム81や対向極側防湿フィルム82に形成された開口から、外部に引き出されている。
【0045】
[電気モジュールの製造方法]
次いで、本発明に係る電気モジュールの製造方法について説明する。
本実施形態の電気モジュールの製造方法は、図5に例示する製造装置170を用いて、所定の方向D41に沿って連続的に搬送される光電極41と、所定の方向D42に沿って連続的に搬送される対向電極42とを貼り合わせることによって、図1及び図2に示すような色素増感型太陽電池10を製造する方法である。
なお、以下の説明では、図5中に示す搬送方向D41,D42において、始点側を上流側とし、終点側を下流側として説明する。
【0046】
本実施形態の色素増感型太陽電池10の製造方法は、以下の(1)~(4)の各工程を備えている。
(1)光電極41を切り込み加工することにより、光電極支持体21の表面21aに設けられた光電極導電層31を厚み方向で貫通するか、あるいは、凹状とされた、平面視帯状の第一絶縁部50Aを形成する第一絶縁工程。
(2)対向電極42を切り込み加工することにより、対向電極支持体22の表面22aに設けられた対向電極導電層32を厚み方向で貫通するか、あるいは、凹状とされた、平面視帯状の第二絶縁部50Bを形成する第二絶縁工程。
(3)光電極導電層31の表面における第一絶縁部50Aが形成された部分に封止材46を形成するとともに、面方向における封止材46同士の間に、無機半導体層12を含む発電部44を形成する発電部形成工程。
(4)光電極導電層31と対向電極導電層32とを対向させ、光電極41と対向電極42とを貼り合わせる貼合工程。
【0047】
<第一絶縁工程>
まず、図示略のRtoR方式を採用した装置を用いて、光電極支持体21を所定の方向に沿って連続的に搬送しながら、公知のスパッタリング法や印刷法等により、光電極支持体21の表面21aに光電極導電層31を形成し、光電極導電層31を外側に向けた状態でロール状に巻き取る。なお、予め、表面21aに光電極導電層31が形成されている光電極支持体21を用いても構わない。
【0048】
次いで、図5に示すように、製造装置170にロール状の光電極支持体21を設置し、光電極支持体21を所定の方向、図示例ではD41方向に巻き出し、絶縁部形成装置172を用いて、光電極導電層31の表面に、図1及び図2に示すような第一絶縁部50Aを形成する。このような絶縁部形成装置172としては、例えば、ダイカットロールを備えた加工装置の他、レーザー加工装置、押圧用の金型、エッチング液の塗布装置等が挙げられる。即ち、第一絶縁部50Aの形成方法及び絶縁部形成装置172は、各絶縁部を貫通、又は、凹状に形成し、絶縁性を担保することができる方法又は装置であれば、特に限定されるものではない。また、例えば、絶縁部形成装置172を用いて、光電極導電層31の表面の複数の位置に、断続的にレーザー光を照射することによって、第一絶縁部50Aを形成しながら光電極41を得ることができる。この場合、レーザー光を出射するタイミングやレーザー光の照射パワー等は、絶縁部形成装置172に内蔵されたプログラム等によって適宜制御することができる。
【0049】
<発電部形成工程(a)>
次に、公知のエアロゾルデポジション法(Aerosol Deposition method:AD法)等により、光電極導電層31の表面に、酸化チタン等の金属酸化物からなる多孔質層を形成する。その後、多孔質層に増感色素を担持させることで、無機半導体層12を形成する。なお、無機半導体層12は、ロール状の光電極支持体21に予め形成されていてもよい。
【0050】
次に、D41方向に沿って搬送される光電極41に対して、封止材塗布装置176の塗布口から、封止材料の粘性や光電極41の搬送速度等を勘案した適切な流量で封止材料を排出させ、光電極導電層31の表面における第一絶縁部50Aが形成された部分に封止材料を塗布することで封止材46を形成する。
【0051】
<導通材形成工程>
次に、D41方向に沿って搬送される光電極41に対して、導通材形成装置178の排出口から、導通材48の粘性や光電極41の搬送速度等を勘案した適切な流量で導通材48を排出させ、光電極41に導通材48を形成する。
【0052】
<発電部形成工程(b)>
次に、電荷移動体塗布装置174の塗布口から、電荷移動体14の粘性や光電極41の搬送速度等を勘案した適切な流量で電荷移動体14を排出させ、無機半導体層12に電荷移動体14を塗布する。
上述した発電部形成工程(a)、発電部形成工程(b)により、発電部44が形成される。
【0053】
<第二絶縁工程>
次に、第一絶縁工程と同様に図示略のRtoR方式を採用した装置を用いて、対向電極支持体22を所定の方向に沿って連続的に搬送しながら、上記同様の方法によって対向電極支持体22の表面22aに対向電極導電層32を形成し、対向電極導電層32を外側に向けた状態でロール状に巻き取る。また、上記同様、予め、表面22aに対向電極導電層32が形成されている対向電極支持体22を用いても構わない。
【0054】
次いで、第一絶縁工程と同様、図5に示すように、製造装置170にロール状の対向電極支持体22を設置し、対向電極支持体22を所定の方向、図示例ではD42方向に巻き出し、上記同様の絶縁部形成装置172を用いて、対向電極導電層32の表面に、図1及び図2に示すような第二絶縁部50Bを形成する。これにより、対向電極42が得られる。
【0055】
<貼合工程>
次に、第一押圧ロール91と、その下方に配置された第二押圧ロール92との間に、略水平なD41方向に沿って光電極41を導入するとともに、斜め上方のD42方向から対向電極42を導入し、発電部44、封止材46及び導通材48を介して光電極41と対向電極42とを重ね合わせる。
次いで、重ね合わせた光電極41と対向電極42とを、第一押圧ロール91と第二押圧ロール92との間を通過させ、光電極41及び対向電極42を互いに押圧する。
【0056】
次いで、押圧された状態の光電極41及び対向電極42に対して、図示略のUVランプ等を用いて紫外線を照射する等の方法により、封止材46を硬化させ、光電極41と封止材46とを貼り合わせるとともに、対向電極42と封止材46とを貼り合わせる。
【0057】
光電極41及び対向電極42と封止材46とを貼り合わせた後に、D2方向に沿う所定の位置(以下、「シール部形成領域」という)において、超音波付与装置95を用いて、光電極41と対向電極42に超音波振動を付与し、シール部60を形成する。
このとき、超音波付与装置95が、光電極41および対向電極42を積層方向D3に挟み込んだ状態で、光電極41および対向電極42に対して超音波を付与する。この超音波が光電極41および対向電極42を介して導通材48等に伝達される。すると、シール部形成領域に位置する導通材48は、図3に示すように破壊される。また破壊された破片36a1、36b1のうち、コア36aの破片36a1は、その温度がガラス転移点Tg0まで上昇すると流動性が高まる。このとき、光電極支持体21および対向電極支持体22の温度もそれぞれのガラス転移点Tg1、Tg2まで上昇すると、各支持体21、22の流動性も高められる。これにより、各支持体21、22がコア36a(破片36a1)と相溶し、各支持体21、22がコア36aを介して融着される。その結果、シール部60が形成される。
【0058】
以上の工程により、図1及び図2に示すような電気モジュールである色素増感型太陽電池10を製造することができる。この後、必要に応じて、実際に使用される色素増感型太陽電池10を1枚ごとに切り出してもよく、各色素増感型太陽電池10に前記保護層2を設けてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る色素増感型太陽電池10によれば、コア36aを形成する樹脂のガラス転移点Tg0が、光電極支持体21を形成する樹脂のガラス転移点Tg1、および対向電極支持体22を形成する樹脂のガラス転移点Tg2以下である。したがって、例えば、シール部60を形成するために、光電極41と対向電極42とを融着(超音波融着)させるときに、光電極支持体21および対向電極支持体22の各流動性よりも導通材48のコア36aの流動性を先行して高めること等ができる。これにより、光電極41および対向電極42の両基材を、導通材48のコア36aを介して接合し易くすることができる。その結果、シール部60の接合強度を高めることが可能になり、耐久性を向上させることができる。
【0060】
なお本実施形態では、コア36aに係るガラス転移点Tg0が、光電極支持体21や対向電極支持体22に係るガラス転移点Tg1、2よりも、封止材46に係るガラス転移点Tg3に近い。したがって、例えば、前述のように光電極41と対向電極42とを融着させるときに、導通材48のコア36aに加えて封止材46の流動性も、光電極支持体21や対向電極支持体22の各流動性に対して先行して高めること等ができる。その結果、シール部60の接合強度を一層高めることができる。
【0061】
コア36aを形成する樹脂のガラス転移点Tg0が、光電極支持体21を形成する樹脂のガラス転移点Tg1、および対向電極支持体22を形成する樹脂のガラス転移点Tg2それぞれの50%以上である。したがって、例えば、光電極41と対向電極42とを融着(超音波融着)させるときに、導通材48のコア36aおよび光電極支持体21、対向電極支持体22の各流動性が比較的近い温度領域で並行して高まる。これにより、光電極41および対向電極42の両基材と、導通材48のコア36aと、の相溶性を高めることが可能になり、シール部60の接合強度を一層高めることができる。
【0062】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0063】
保護層2がなくてもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 色素増感型太陽電池(電気モジュール)
14 電荷移動体(電解液)
21 光電極支持体(基材)
22 対向電極支持体(基材)
36a コア
36b 被覆層
41 光電極(第1電極)
42 対向電極(第2電極)
44 発電部
46 封止材
60 シール部(接合部)
図1
図2
図3
図4
図5