(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電気コネクタおよび電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20220720BHJP
H01R 13/6581 20110101ALI20220720BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/52 301G
H01R13/6581
(21)【出願番号】P 2018202268
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】水江 太郎
(72)【発明者】
【氏名】河崎 崇志
(72)【発明者】
【氏名】上田 彰
(72)【発明者】
【氏名】永野 晃広
(72)【発明者】
【氏名】圖師 浩文
(72)【発明者】
【氏名】ヨンディミトラパープ パッチャラ
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041599(JP,A)
【文献】実開平04-004560(JP,U)
【文献】特開2016-198949(JP,A)
【文献】特開2015-005417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/72
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスの筐体に形成された嵌合孔に挿入されることによって、前記電子デバイスの前記筐体に取り付けられ、先端側から挿入される相手側コネクタとの電気的接続を提供するための電気コネクタであって、
筒状の本体部と、前記本体部の外周の先端に前記本体部から外側に突出するよう形成された環状の係止部とを備えるシェルと、
少なくとも前記シェルの前記本体部の前記外周の先端部を除き、前記シェルの前記本体部の前記外周を覆うように設けられたシールド部材と、
前記相手側コネクタの複数のコンタクトとそれぞれ接触する複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを保持するインシュレーターとを備え、前記シェルの内側に収納されている内部構造体と、
前記シールド部材によって覆われていない前記シェルの前記本体部の前記外周の前記先端部を覆うように設けられた防水シール部材と、を含み、
前記防水シール部材は、硬質材料から形成された芯部と、少なくとも前記芯部の基端側の端面が露出するよう、前記芯部を覆うように形成された弾性部とを備え、
前記防水シール部材は、前記防水シール部材の前記基端側の前記端面が前記シールド部材の前記先端側の端面に接触した状態で、前記シェルの前記係止部と前記シールド部材の前記先端側の前記端面との間で保持されており、
前記電気コネクタが前記電子デバイスの前記筐体の前記嵌合孔内に挿入されたとき、前記防水シール部材が、前記電子デバイスの前記筐体と前記電気コネクタとの間の隙間を液密に封止することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記シェルは、前記本体部の前記外周の前記先端部であって、かつ、前記環状の係止部の基端部に隣接する領域に形成された係合凹部をさらに備え、
前記防水シール部材の前記弾性部は、前記芯部を覆う筒状の本体部と、前記本体部の先端部から内側に向かって突出する係合突部とを備え、
前記防水シール部材の前記係合突部と前記シェルの前記係合凹部とが係合する請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記防水シール部材の前記芯部は、ステンレス、硬質の樹脂材料、または金属材料から構成されている請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記防水シール部材の前記芯部は、前記シールド部材によって覆われていない前記シェルの前記本体部の前記外周の前記先端部を覆う筒状形状を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記防水シール部材の前記芯部は、0.05~0.3mmの厚さおよび0.1~5mmの幅を有しており、
前記防水シール部材の前記芯部の前記筒状形状は、断面図において、前記電気コネクタの幅方向における長さが、前記電気コネクタの高さ方向における長さよりも長い請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
筐体と、
前記筐体内に設けられた回路基板と、
前記筐体内に設けられた前記回路基板に実装された請求項1ないし5のいずれかに記載の電気コネクタと、を含むことを特徴とする電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気コネクタおよび該電気コネクタを含む電子デバイスに関し、より具体的には、電子デバイスの筐体に形成された嵌合孔に挿入されることによって電子デバイスの筐体に取り付けられ、防水シール部材によって電子デバイスとの間の空間を液密に封止することが可能な電気コネクタおよび該電気コネクタを含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイスと他の電子デバイスとを電気的に接続するために電気コネクタが用いられている。電子デバイスと他の電子デバイスとの間の電気的接続を得るために、電子デバイスの筐体内に設けられた回路基板上に実装され、電子デバイスの筐体に設けられた貫通孔から差込口が電子デバイスの外部に露出するレセプタクルコネクタと、レセプタクルコネクタの差込口に挿入するためのプラグコネクタの2種類の電気コネクタが組み合わされて用いられる。
【0003】
このような電子コネクタとしては、USB(Universal Serial Bus)コネクタ等が広く用いられている。例えば、特許文献1は、レセプタクルコネクタを開示しており、レセプタクルコネクタが電子デバイス(例えば、パソコン、ゲーム機、携帯電話、スマートフォン)の筐体内に設けられた回路基板上に実装され、電子デバイスの筐体に設けられた貫通孔を介してレセプタクルコネクタの差込口が電子デバイスの外部に露出する。電子デバイスの外部に露出しているレセプタクルコネクタの差込口に、対応するプラグコネクタを挿入することにより、電子デバイスと他の電子デバイスとの間の電気的接続を提供することが可能となっている。
【0004】
また、携帯電話やスマートフォン等の携帯型デバイスにおいても、前述のようなレセプタクルコネクタが広く用いられている。このような携帯型デバイスをユーザーが持ち歩いた際に、雨が降り携帯型デバイスが水で濡れる事態や、携帯型デバイスを誤って水の中に落としてしまうといった事態が想定される。そのような事態において、レセプタクルコネクタと電子デバイスの筐体との隙間を介して、電子デバイスの筐体内部に水が浸入することを防止するために、
図1および
図2に示すような、シェル810の外周の先端部に設けられた防水シール部材(弾性材料により構成されたガスケット等)820を有する防水機能付きの電気コネクタ800が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
図2に示すように、電気コネクタ800は、電子デバイスの筐体900に形成された嵌合孔910に挿入され、電子デバイスの筐体900に取り付けられる。電気コネクタ800が電子デバイスの筐体900に取り付けられると、電気コネクタ800のシェル810の外周の先端部に設けられた防水シール部材820によって、電気コネクタ800と電子デバイスの筐体900との間の隙間が液密に封止される。このような構成により、電気コネクタ800と電子デバイスの筐体900との間の隙間を介して水が電子デバイスの筐体900内部に侵入することが防止されている。
【0006】
しかしながら、防水シール部材820は、軟質の樹脂材料、シリコン材料、またはゴムのような弾性材料により構成されているので、強度が低い。そのため、電気コネクタ800を電子デバイスの筐体900の嵌合孔910に挿入する際に、防水シール部材820の外周部全域を電子デバイスの筐体900の嵌合孔910の内側面全域に接触させながら挿入するが、その際、防水シール部材820と嵌合孔910の内側面との摩擦力の発生を均等にすることが挿入角度のずれ等により困難であるため、防水シール部材820のヨレ、ねじれ、捲れが発生しやすい。このような防水シール部材820のヨレ、ねじれ、捲れが発生すると、電気コネクタ800による防水機能を提供することができなくなってしまう。
【0007】
このような問題に対し、電気コネクタ800のシェル810の外周に防水シール部材820を直接成型する手法(例えば、LIM:Liquid Injection Molding)が用いられることがある。しかしながら、そのような手法は、電気コネクタ800の製造時間を増加させ、結果として、電気コネクタ800の生産性を悪化させ、電気コネクタ800の製造コストが増加してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国実用新案公告第203871583号明細書
【文献】特開2016-33893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、電気コネクタを電子デバイスの筐体に形成された嵌合孔に挿入した際の防水シール部材のヨレ、ねじれ、捲れの発生を防止することが可能な電気コネクタおよび該電気コネクタを含む電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、以下の(1)~(6)の本発明により達成される。
(1)電子デバイスの筐体に形成された嵌合孔に挿入されることによって、前記電子デバイスの前記筐体に取り付けられ、先端側から挿入される相手側コネクタとの電気的接続を提供するための電気コネクタであって、
筒状の本体部と、前記本体部の外周の先端に前記本体部から外側に突出するよう形成された環状の係止部とを備えるシェルと、
少なくとも前記シェルの前記本体部の前記外周の先端部を除き、前記シェルの前記本体部の前記外周を覆うように設けられたシールド部材と、
前記相手側コネクタの複数のコンタクトとそれぞれ接触する複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを保持するインシュレーターとを備え、前記シェルの内側に収納されている内部構造体と、
前記シールド部材によって覆われていない前記シェルの前記本体部の前記外周の前記先端部を覆うように設けられた防水シール部材と、を含み、
前記防水シール部材は、硬質材料から形成された芯部と、少なくとも前記芯部の基端側の端面が露出するよう、前記芯部を覆うように形成された弾性部とを備え、
前記防水シール部材は、前記防水シール部材の前記基端側の前記端面が前記シールド部材の前記先端側の端面に接触した状態で、前記シェルの前記係止部と前記シールド部材の前記先端側の前記端面との間で保持されており、
前記電気コネクタが前記電子デバイスの前記筐体の前記嵌合孔内に挿入されたとき、前記防水シール部材が、前記電子デバイスの前記筐体と前記電気コネクタとの間の隙間を液密に封止することを特徴とする電気コネクタ。
【0011】
(2)前記シェルは、前記本体部の前記外周の前記先端部であって、かつ、前記環状の係止部の基端部に隣接する領域に形成された係合凹部をさらに備え、
前記防水シール部材の前記弾性部は、前記芯部を覆う筒状の本体部と、前記本体部の先端部から内側に向かって突出する係合突部とを備え、
前記防水シール部材の前記係合突部と前記シェルの前記係合凹部とが係合する上記(1)に記載の電気コネクタ。
【0012】
(3)前記防水シール部材の前記芯部は、ステンレス、硬質の樹脂材料、または金属材料から構成されている上記(1)または(2)に記載の電気コネクタ。
【0013】
(4)前記防水シール部材の前記芯部は、前記シールド部材によって覆われていない前記シェルの前記本体部の前記外周の前記先端部を覆う筒状形状を有している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の電気コネクタ。
【0014】
(5)前記防水シール部材の前記芯部は、0.05~0.3mmの厚さおよび0.1~5mmの幅を有しており、
前記防水シール部材の前記芯部の前記筒状形状は、断面図において、前記電気コネクタの幅方向における長さが、前記電気コネクタの高さ方向における長さよりも長い上記(4)に記載の電気コネクタ。
【0015】
(6)筐体と、
前記筐体内に設けられた回路基板と、
前記筐体内に設けられた前記回路基板に実装された上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の電気コネクタと、を含むことを特徴とする電子デバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、電子デバイスの筐体と電気コネクタとの間の隙間を液密に封止するための防水シール部材が、硬質材料から構成される芯部を備えているため、防水シール部材の強度が向上されている。このような防水シール部材を用いることにより、電気コネクタを電子デバイスの筐体の嵌合孔に挿入する際の防水シール部材のヨレ、ねじれ、捲れを防止することができ、電気コネクタの防水機能を確実に提供することができる。
【0017】
また、本発明の電気コネクタにおいては、防水シール部材がシェルの係止部とシールド部材の本体部の先端側の端面との間で保持されており、かつ、防水シール部材の芯部の基端側の端面とシールド部材の本体部の先端側の端面とが接触している。このような構成により、より安定的に防水シール部材をシェルの本体部の外周において保持することができる。その結果、より確実に防水シール部材のヨレ、ねじれ、捲れの発生を防止することができ、電子デバイスの筐体と電気コネクタとの間の防水機能をより確実に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来技術における電気コネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電気コネクタを電子デバイスの筐体に取り付ける様を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタを示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す電気コネクタを別の角度から示す斜視図である。
【
図5】
図3に示す電気コネクタの分解斜視図である。
【
図6】別の角度から見た
図3に示す電気コネクタの分解斜視図である。
【
図7】
図3に示す電気コネクタの防水シール部材が取り付けられる箇所を示す斜視図である。
【
図8】
図3に示す電気コネクタの内部構造体を示す平面図である。
【
図9】
図8に示す内部構造体のインシュレーターを示す斜視図である。
【
図10】
図8に示す内部構造体が備える複数のコンタクトの第1のグループを示す斜視図である。
【
図11】
図8に示す内部構造体が備える複数のコンタクトの第2のグループを示す斜視図である。
【
図12】
図8に示す内部構造体が備えるグランドプレートを示す平面図である。
【
図13】
図3に示す電気コネクタの防水シール部材の分解斜視図である。
【
図15】
図13に示す防水シール部材の断面図の一部拡大図である。
【
図16】
図3に示す電気コネクタの縦断面図である。
【
図17】
図3に示す電気コネクタが電子デバイスの筐体に取り付けられた状態を示す縦断面図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る電気コネクタの防水シール部材を示す側面図である。
【
図19】
図18に示す防水シール部材の断面図の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電気コネクタおよび電子デバイスを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。以下の説明において、各図のZ軸の正方向を「先端側」といい、Z軸の負方向を「基端側」といい、Y軸の正方向を「上側」といい、Y軸の負方向を「下側」といい、X軸の正方向を「手前側」といい、X軸の負方向を「奥側」ということがある。
【0020】
<第1実施形態>
最初に、
図3~
図17を参照して、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタを詳述する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタを示す斜視図である。
図4は、
図3に示す電気コネクタを別の角度から示す斜視図である。
図5は、
図3に示す電気コネクタの分解斜視図である。
図6は、別の角度から見た
図3に示す電気コネクタの分解斜視図である。
図7は、
図3に示す電気コネクタの防水シール部材が取り付けられる箇所を示す斜視図である。
図8は、
図3に示す電気コネクタの内部構造体を示す平面図である。
図9は、
図8に示す内部構造体のインシュレーターを示す斜視図である。
図10は、
図8に示す内部構造体が備える複数のコンタクトの第1のグループを示す斜視図である。
図11は、
図8に示す内部構造体が備える複数のコンタクトの第2のグループを示す斜視図である。
図12は、
図8に示す内部構造体が備えるグランドプレートを示す平面図である。
図13は、
図3に示す電気コネクタの防水シール部材の分解斜視図である。
図14は、
図13に示す防水シール部材を示す背面図である。
図15は、
図13に示す防水シール部材の断面図の一部拡大図である。
図16は、
図3に示す電気コネクタの縦断面図である。
図17は、
図3に示す電気コネクタが電子デバイスの筐体に取り付けられた状態を示す縦断面図である。
【0021】
図3~
図6に示す本発明の第1実施形態に係る電気コネクタ1は、
図17に示すように、電子デバイスの筐体100内に設けられた回路基板(図示せず)上に、レセプタクルコネクタとして実装される。電気コネクタ1は、電子デバイスの筐体100に形成され、電気コネクタ1の外形に対応する形状を有する嵌合孔110に、電子デバイスの筐体100の内側から挿入されることによって、電子デバイスの筐体100に取り付けられる。
【0022】
電気コネクタ1が電子デバイスの筐体100に取り付けられた状態において、電子デバイスの筐体100の嵌合孔110を介して電気コネクタ1のシェル2の先端側の差込口211が外部に露出する。電気コネクタ1は、外部に露出している電気コネクタ1の差込口211に相手側コネクタ(プラグコネクタ)が挿入されたときに、電気コネクタ1と相手側コネクタとの間の電気的接続を提供するよう構成されている。
【0023】
図3~
図6に示すように、電気コネクタ1は、筒状の本体部21と、本体部21の外周の先端に本体部21から外側に突出するよう形成された環状の係止部22とを備える金属製のシェル2と、シェル2の本体部21の外周の先端部213(
図7参照)を除き、シェル2の本体部21の外周を覆うよう設けられたシールド部材3と、相手側コネクタの複数のコンタクトと接触する複数のコンタクト41と、複数のコンタクト41が配列されている平面と平行に配置されたグランドプレート42と、複数のコンタクト41およびグランドプレート42を保持するインシュレーター43とを備える内部構造体4と、シールド部材3によって覆われていないシェル2の本体部21の外周の先端部213を覆うように設けられ、シェル2の係止部22とシールド部材3の先端側の端面311との間で保持されている防水シール部材5と、を含む。
【0024】
シェル2は、金属材料から構成された筒状部材であり、内部構造体4を外側から覆う。シェル2は、電気コネクタ1の嵌合方向(各図のZ軸方向)の先端側および基端側を除き、内部構造体4を覆った状態で、内部構造体4を内部に収納する。
図5および
図6に示すように、シェル2は、筒状の本体部21と、本体部21の外周の先端から外側に突出するよう形成された環状の係止部22と、本体部21の外周の先端部213であって、かつ、環状の係止部22の基端部に隣接する領域に形成された係合凹部23と、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、シールド部材3の一対のシェル抑え部33を受けるための一対の切り欠き24と、を備えている。
【0025】
シェル2の本体部21は、
図5に示すような扁平な筒状形状を有している。本体部21の筒状形状の内面によって規定される空間内に内部構造体4が収納される。本体部21の先端側には、相手側コネクタを受け入れるための差込口211が形成されている。一方、本体部21の基端側には、シェル2の内部に収納された内部構造体4の複数のコンタクト41およびグランドプレート42を、電子デバイスの回路基板に導くための基端側開口212が形成されている。
【0026】
電気コネクタ1が組み立てられた状態において、本体部21の内部に内部構造体4が収納される。本体部21の基端側開口212から内部構造体4の複数のコンタクト41およびグランドプレート42が電子デバイスの回路基板に向かって延伸し、電子デバイスの回路基板に内部構造体4の複数のコンタクト41およびグランドプレート42が基板接続部413、422(
図10~
図12参照)を介して接続されることで、電気コネクタ1が電子デバイスの回路基板に実装される。
【0027】
電気コネクタ1が組み立てられた状態において先端側から相手側コネクタがシェル2の差込口211内に挿入されると、相手側コネクタの複数のコンタクトが本体部21の内部に収納されている内部構造体4の複数のコンタクト41とそれぞれ接触することにより、先端側から挿入された相手側コネクタと電気コネクタ1との間の電気的接続が提供される。さらに、相手側コネクタのグランド端子がグランドプレート42に接触することにより、相手側コネクタと電気コネクタ1のグランド電位が等しいものとされる。
【0028】
シェル2の係止部22は、本体部21の外周の先端部213を覆うよう設けられた防水シール部材5を先端側から係止する機能を有している。係止部22は、本体部21の外周の先端から外部に突出するよう形成された環状部である。そのため、シェル2において、係止部22が形成されている部分の外径(係止部22の外形)は、係止部22が形成されていない部分の外形(本体部21の外形)よりも大きくなっている。
【0029】
係止部22の高さは、0.05~0.5mmであることが好ましく、0.1~0.3mmであることがより好ましい。係止部22の高さが上記下限値未満であると、防水シール部材5を確実に先端側から係止することができず、電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100の嵌合孔110内に挿入したときの防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れを確実に防止することができない場合がある。一方、係止部22の高さが上記上限値を超えると、電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100内に挿入したときの電気コネクタ1と電子デバイスの筐体100との間の隙間が大きくなり、電気コネクタ1によって提供される防水機能を十分に提供することができない場合がある。
【0030】
なお、本体部21および係止部22は別々の部品として構成され、係止部22が溶接等により本体部21に取り付けられてもよいが、本実施形態において、本体部21および係止部22は一体成型されている。
【0031】
シェル2の本体部21の外周の先端部213であって、かつ、係止部22の基端部に隣接する領域には、係合凹部23が形成されている。係合凹部23は、シェル2の本体部21の外周を一周するよう形成されている。係合凹部23は、防水シール部材5が本体部21の外周の先端部213に取り付けられた際に、防水シール部材5の係合突部523(
図15参照)と係合し、防水シール部材5を固定する。なお、係合凹部23は、防水シール部材5の係合突部523の突出量に対応する深さを有している。
【0032】
一対の切り欠き24は、シェル2の本体部21の上面の基端であって、後述するシールド部材3の一対のシェル抑え部33に対応する位置に形成されている。切り欠き24のそれぞれは、シェル2の本体部21の上面の基端に形成された2つの凹部から構成されている。電気コネクタ1が組み立てられた状態において、一対の切り欠き24とシールド部材3の一対のシェル抑え部33とが係合することにより、シールド部材3の一対のシェル抑え部33によってシェル2の本体部21が基端側から抑えられ、シェル2がシールド部材3の内部において固定的に保持される。
【0033】
シールド部材3は、シェル2および内部構造体4の複数のコンタクト41およびグランドプレート42を外側から覆うことにより、シェル2および内部構造体4の複数のコンタクト41およびグランドプレート42を電磁シールド(EMC)する機能を有している。さらに、シールド部材3は、電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100内に設けられた回路基板上に固定する機能を有している。
【0034】
シールド部材3は、金属材料から構成されており、シェル2に対応した筒状形状を有している。シールド部材3は、筒状の本体部31と、本体部31の両側面の基端側から下方に向かって延伸する二対の係合突部32と、本体部31の上面から下方に向かって突出し、シェル2の本体部21の基端側の端面を抑える一対のシェル抑え部33と、本体部31の基端から下方に向かって延伸し、シェル2の本体部21の内部に収納された内部構造体4のインシュレーター43の基端側の端面を抑える内部構造体抑え部34と、を備えている。
【0035】
シールド部材3の本体部31は、シェル2の本体部21の筒状形状の外径よりも大きく、かつ、シェル2の係止部22の外径よりも小さな内径を有する筒状形状を有している。
図7に示すように、本体部31は、少なくともシェル2の本体部21の外周の先端部213を除き、シェル2の本体部21を外側から覆っている。本実施形態では、本体部31は、シェル2の本体部21の外周の先端部213、並びに、シェル2の本体部21の底面および両側面の一部を除き、シェル2の本体部21を外側から覆っている。
【0036】
図7に示すように、シールド部材3の本体部31によって覆われていないシェル2の本体部21の外周の先端部213、シェル2の本体部21の先端に形成された係止部22、およびシールド部材3の本体部31の先端側の端面311によって、防水シール部材5を収納および保持するための周方向に沿った凹部が形成されている。
【0037】
二対の係合突部32は、電気コネクタ1を電子デバイスの回路基板上に固定するために用いられる。二対の係合突部32のうち一方の対は、シールド部材3の本体部31の両側面の基端側から下方に突出するよう形成されており、他方の対は、シールド部材3の本体部31の両側面の略中心部から下方に突出するよう形成されている。電気コネクタ1が組み立てられた状態において、シールド部材3の二対の係合突部32が電子デバイスの回路基板上に形成された係合孔に挿入され、電気コネクタ1が電子デバイスの回路基板上に固定される。
【0038】
一対のシェル抑え部33は、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、シェル2の本体部21を基端側から抑え、シェル2をシールド部材3の本体部31の内部で固定的に保持するために用いられる。シェル抑え部33のそれぞれは、本体部31の上面と一体的に形成された下方に突出するU字形状の部材である。U字形状の辺に相当する2つの部分が、シェル2の切り欠き24の2つの凹部にそれぞれ係合する。一対のシェル抑え部33は、電気コネクタ1が組み立てられる前の段階においては、下方に突出するU字形状を有していない。電気コネクタ1が組み立てられる際において、シールド部材3の本体部31の内部の所定の位置にシェル2を位置させた後、一対のシェル抑え部33が下方に突出するよう曲げ加工されることにより、U字形状に成形され、シェル2の一対の切り欠き24と係合する。
【0039】
内部構造体抑え部34は、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、シェル2の内部に収納された内部構造体4のインシュレーター43を基端側から抑え、シェル2および内部構造体4を固定的に保持するために用いられる。内部構造体抑え部34は、本体部31の上面の基端から下方に向かって延伸する平板状の部材である。電気コネクタ1が組み立てられた状態において、内部構造体抑え部34がシェル2の内部に収納された内部構造体4のインシュレーター43を基端側から抑える。内部構造体抑え部34は、電気コネクタ1が組み立てられる前の段階においては、本体部31の上面の基端から後方(図のZ軸の負方向)に向かって延伸している。電気コネクタ1が組み立てられる際において、シールド部材3の本体部31の内部の所定の位置に、内部構造体4を収納しているシェル2を位置させた後、内部構造体抑え部34が下方に折り曲げられ、内部構造体4のインシュレーター43を基端側から抑える。
【0040】
シールド部材3の各構成要素(本体部31、二対の係合突部32、シェル抑え部33、および内部構造体抑え部34)は、別々の部材として構成され、溶接等により互いに接合されていてもよいが、本実施形態では、シールド部材3の各構成要素は一体成型されているものとする。
【0041】
本発明の電気コネクタ1においては、このようなシールド部材3によって、シェル2が外側から覆われ、電磁シールドされている。また、
図7に示すように、シールド部材3の本体部31によって覆われていないシェル2の本体部21の外周の先端部213、シェル2の本体部21の先端に形成された係止部22、およびシールド部材3の本体部31の先端側の端面311によって、防水シール部材5を収納および保持するための凹部が形成されている。
【0042】
図8に示すように、内部構造体4は、相手側コネクタの複数のコンタクトとそれぞれ接触することにより、相手側コネクタと電気コネクタ1との間の電気的接続を提供する複数のコンタクト41と、複数のコンタクト41が配列された平面と平行に配置されたグランドプレート42と、複数のコンタクト41およびグランドプレート42を保持するインシュレーター43と、シェル2の本体部21の内側の空間を液密に封止するためにインシュレーター43の外周に取り付けられる内側防水シール部材44と、を備えている。
【0043】
図9に示すように、インシュレーター43は、絶縁性材料から構成されており、複数のコンタクト41およびグランドプレート42が互いに絶縁された状態で、複数のコンタクト41およびグランドプレート42を保持する機能を有している。インシュレーター43は、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、先端側から相手側コネクタがシェル2の差込口211内に挿入されたときに、複数のコンタクト41が相手側コネクタの複数のコンタクトとそれぞれ接触可能となり、さらに、グランドプレート42が相手側コネクタのグランド端子に接触可能となるように複数のコンタクト41およびグランドプレート42を保持している。
【0044】
インシュレーター43は、内部構造体4をシェル2の本体部21に対して固定するためにシェル2の本体部21の基端側開口212に圧入される基部431と、基部431から先端側に向かって延伸する舌状部432と、を備えている。
【0045】
基部431は、XY平面においてシェル2の本体部21の基端側開口212に対応する形状を有する部材であり、基部431をシェル2の本体部21の基端側開口212内に圧入することにより、内部構造体4がシェル2の本体部21の内部に固定的に収納される。基部431の内部に複数のコンタクト41の固定部412(
図10および
図11参照)およびグランドプレート42がそれぞれ離間した状態で埋め込まれ、複数のコンタクト41およびグランドプレート42が互いに絶縁した状態でインシュレーター43によって保持される。
【0046】
図8に示すように、基部431の先端側からは複数のコンタクト41のそれぞれの接点部411が先端側に向かって突出している。一方、
図6に示すように、基部431の基端側からは、複数のコンタクト41のそれぞれの基板接続部413(
図10および
図11参照)およびグランドプレート42の基板接続部422(
図12参照)が基端側に向かって突出している。
【0047】
図9に戻り、基部431の基端側の外周には、凹部433が形成されている。電気コネクタ1の組み立て時において、内側防水シール部材44が凹部433に取り付けられ、シェル2の本体部21の内側と、インシュレーター43の外周との間の隙間が内側防水シール部材44によって液密に封止され、シェル2の本体部21の内部の防水機能が提供される。
【0048】
インシュレーター43の舌状部432は、基部431から先端側に向かって延伸する平板状の部材であり、複数のコンタクト41を載置し、さらに、グランドプレート42を内部において保持するために用いられる。舌状部432の上面および下面上には、
図10および
図11に示す複数のコンタクト41のそれぞれを載置するための複数のコンタクト受け部434が形成されている。さらに、舌状部432の先端面および側面には、グランドプレート42を露出させるための開口435が形成されている。
【0049】
舌状部432の上面に形成された複数のコンタクト受け部434内に複数のコンタクト41がそれぞれ収納され、
図10に示す複数のコンタクト41の第1のグループ41Uが構成される。さらに、舌状部432の下面に形成された複数のコンタクト受け部434内に複数のコンタクト41がそれぞれ収納され、
図11に示す複数のコンタクト41の第2のグループ41Lが構成される。さらに、また、舌状部432には、グランドプレート42が埋設されており、開口435を介しグランドプレート42のいくつかの部分が外部に露出している。
【0050】
図10に示すように、複数のコンタクト41の第1のグループ41Uは、同一平面(上側コンタクト配列平面)上にX軸方向に沿って互いに平行に配列され、舌状部432の上面に形成された複数のコンタクト受け部434内にそれぞれ載置された複数のコンタクト41から構成される。同様に、複数のコンタクト41の第2のグループ41Lは、同一平面(下側コンタクト配列平面)上にX軸方向に沿って互いに平行に配列され、舌状部432の下面に形成された複数のコンタクト受け部434内にそれぞれ載置された複数のコンタクト41から構成される。
【0051】
複数のコンタクト41のそれぞれは、Z軸方向に沿って直線状に延伸する棒状形状を有している。複数のコンタクト41のそれぞれは、相手側コネクタのコンタクトと接触する先端側の接点部411と、インシュレーター43の基部431に埋め込まれる固定部412と、インシュレーター43の基部431から外部に向かって延伸し、電子デバイスの回路基板に接続される基板接続部413と、を有している。
【0052】
コンタクト41の接点部411は、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、先端側からシェル2の本体部21の差込口211を介して相手側コネクタが挿入されたときに、相手側コネクタの対応するコンタクトと接触する。この際、相手側コネクタと電気コネクタ1が嵌合状態となり、相手側コネクタと電気コネクタ1との間の電気的接続が提供される。
【0053】
コンタクト41の固定部412は、接点部411の延伸方向と同一方向に延伸している。固定部412がインシュレーター43の基部431に埋め込まれ、コンタクト41がインシュレーター43によって固定的に保持される。
【0054】
コンタクト41の基板接続部413は、固定部412の基端から固定部412の延伸方向と同一方向に延伸し、インシュレーター43の基部431から外部に向かって延伸する。基板接続部413は、電子デバイスの回路基板に接続される。
【0055】
また、第1のグループ41Uを構成する複数のコンタクト41は、相手側コネクタとの間で信号を伝送するための複数の信号コンタクト41Aと、信号伝送以外の用途で用いられる複数の非信号コンタクト41Bと、を含む。同様に、第2のグループ41Lを構成する複数のコンタクト41は、相手側コネクタとの間で信号を伝送するための複数の信号コンタクト41Aと、信号伝送以外の用途(例えば、電源供給用途)で用いられる複数の非信号コンタクト41Bと、を含む。第1のグループ41Uおよび第2のグループ41Lの信号コンタクト41Aおよび非信号コンタクト41Bの数や配置は特に限定されず、電気コネクタ1は、電気コネクタの規格に応じて適宜設定される。
【0056】
図12に示すように、グランドプレート42は、インシュレーター43の舌状部432に埋設される金属材料から構成される平板状部材である。グランドプレート42は、平板状の本体部421と、本体部421の基端部から下方に向かって延伸し、インシュレーター43の外部に露出する一対の基板接続部422とを備えている。
【0057】
グランドプレート42の本体部421は、インシュレーター43の舌状部432に、複数のコンタクト41が配列されている平面(上側コンタクト配列平面および下側コンタクト配列平面)と平行となるように埋設されている。
【0058】
図5および
図6等に示すように、グランドプレート42の本体部421のいくつかの部分がインシュレーター43の舌状部432の開口435を介して、外部に露出している。電気コネクタ1が組み立てられた状態において相手側コネクタがシェル2の本体部21の差込口211に挿入されると、インシュレーター43の舌状部432の開口435を介して外部に露出しているグランドプレート42の本体部421のいくつかの部分が、相手側コネクタのグランド端子に接触する。
【0059】
グランドプレート42の一対の基板接続部422は、本体部421の基端部の両端のそれぞれから延伸し、インシュレーター43の基端側から外部に向かって延伸する。一対の基板接続部422は、電子デバイスの回路基板に接続される。
【0060】
内側防水シール部材44は、シェル2の本体部21の内側を液密に封止する機能を有している。内側防水シール部材44は、軟質の樹脂材料、ゴム、シリコン材料等のガスケットに一般的に使用される弾性材料から構成されている環状の弾性部材(Oリング)である。内側防水シール部材44は、インシュレーター43の基部431の外周に形成された凹部433に取り付けられる。電気コネクタ1の組み立てられた状態において、内側防水シール部材44が、シェル2の本体部21の内側と、インシュレーター43の外周との間の隙間を液密に封止し、シェル2の本体部21の内部の防水機能を提供する。
【0061】
図13~
図15に示す防水シール部材5は、電気コネクタ1が電子デバイスの筐体に取り付けられたとき、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の隙間を液密に封止し、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間を防水する機能を有する。
図7に示すように、防水シール部材5は、シールド部材3によって覆われていないシェル2の本体部21の外周の先端部213を覆うように設けられる。
【0062】
より具体的には、防水シール部材5は、シールド部材3の本体部31によって覆われていないシェル2の本体部21の外周の先端部213、シェル2の本体部21の先端に形成された係止部22、およびシールド部材3の本体部31の先端側の端面311によって形成された凹部内に位置し、シェル2の係止部22とシールド部材3の本体部31の先端側の端面311との間で保持されている。
【0063】
図14および
図15に示すように、防水シール部材5は、硬質材料から構成された芯部51と、少なくとも芯部51の基端側の端面511が露出するよう、芯部51を覆うように形成された弾性部52と、を備えている。
【0064】
芯部51は、ステンレス、硬質の樹脂材料、金属材料等の硬質材料により構成されている。本実施形態では、芯部51は、シールド部材3の本体部31によって覆われていないシェル2の本体部21の外周の先端部213を覆う筒状形状を有している。
図13および
図14に示すように、本実施形態では、芯部51は、シェル2の本体部21の外周に対応する扁平な筒状形状を有しており、芯部51の断面形状において、電気コネクタ1の幅方向(Z軸方向)における芯部51の長さは、電気コネクタ1の高さ方向(Y軸方向)における芯部51の長さよりも長い。なお、芯部51の形状は、図示の形態に限られず、シェル2の本体部21の外周の先端部213を覆うことができれば、特に限定されない。
【0065】
このように、本発明の防水シール部材5においては、硬質材料により構成された芯部51が弾性部52の内部に埋め込まれているため、防水シール部材5の強度が向上されている。そのため、電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100に形成された嵌合孔110に挿入する際の防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れの発生を防止することができる。
【0066】
芯部51の厚さは、0.05~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。芯部51の厚さが上記下限値未満であると、芯部51の強度が不足し、電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100に形成された嵌合孔110に挿入する際の防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れの発生を防止することができない場合がある。一方、芯部51の厚さが上記上限値を超えると、防水シール部材5の厚みが必要以上に増加し、防水シール部材5を安定的に保持することが困難になる場合がある。また、Z軸方向における芯部51の幅は、0.1~5mmであることが好ましい。
【0067】
また、
図15に示すように、芯部51の基端側の端面511は、弾性部52から露出している。そのため、
図16の縦断面図に示されているように、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、芯部51の基端側の端面511がシールド部材3の本体部31の先端側の端面311と接触する。このように、防水シール部材5は、芯部51の基端側の端面511がシールド部材3の本体部31の先端側の端面311と接触した状態で、シェル2の係止部22とシールド部材3の本体部31の先端側の端面311との間で保持されている。このような構成により、防水シール部材5を基端側からシールド部材3の本体部31の先端側の端面311で安定的に保持することができ、防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れの発生をより確実に防止することが可能となっている。
【0068】
弾性部52は、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間を液密に封止する機能を有している。弾性部52は、ガスケットに一般的に使用される弾性材料から構成されている。このような弾性材料としては、軟質の樹脂材料、ゴム、シリコン材料等が挙げられる。弾性部52は、少なくとも芯部51の基端側の端面511が露出するよう、芯部51を覆うように形成されている。
【0069】
図15に示すように、本実施形態では、弾性部52は、芯部51の基端側の端面511を除く部分を覆う筒状の本体部521と、本体部521の先端部から外側に向かって突出する環状の突起部522と、本体部521の先端部から内側に向かって突出する環状の係合突部523と、を備えている。
【0070】
図16に示すように、本体部521の厚さは、シールド部材3の本体部31の厚さおよびシェル2の係止部22の高さよりも大きい。突起部522は、本体部521の先端から外側に向かって突出するよう形成された環状部であり、電気コネクタ1が電子デバイスの筐体100に形成された嵌合孔110に挿入された際、突起部522が電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の隙間を液密に封止し、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の防水機能を提供する。また、突起部522は、高さが基端側から先端側に向かって漸減(単調減少)するテーパー形状を有している。そのため、電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100に形成された嵌合孔110内に挿入する際に、突起部522のテーパー面に電子デバイスの筐体100が接触し、突起部522のテーパー面上を電子デバイスの筐体100が滑るので、電子デバイスの筐体100に形成された嵌合孔110内に電気コネクタ1を挿入する際の抵抗が少なくなる。
【0071】
突起部522のテーパー形状において、最大の高さを有する基端部の高さは、0.2~1mmであることが好ましく、0.3~0.7mmであることがより好ましい。突起部522の基端部の高さが上記下限値未満であると、突起部522が電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の隙間を液密に封止することができない場合がある。一方、突起部522の基端部の高さが上記上限値を超えると、電子デバイスの筐体100に形成された嵌合孔110に電気コネクタ1を挿入する際の抵抗が大きくなり、電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100に取り付ける工程の難易度が増加する場合がある。
【0072】
係合突部523は、本体部521の先端から内側に向かって突出するよう形成された環状の突部であり、防水シール部材5がシェル2の本体部21の外周に取り付けられた際、シェル2の係合凹部23と係合する。このような構成により、防水シール部材5をより安定的にシェル2の本体部21の外周の先端部213に取り付けることができる。係合突部523の突出量は、0.01~0.3mmであることが好ましく、0.02~0.2mmであることがより好ましい。係合突部523の突出量が上記下限値未満であると、シェル2の係合凹部23と係合突部523との係合が弱くなり、防水シール部材5を安定的に本体部21の外周に取り付けることができない場合がある。一方、係合突部523の突出量が上記上限値を超えると、シェル2の本体部21を防水シール部材5の中央開口部に挿入する際の抵抗が大きくなり、防水シール部材5の取り付けが困難となる場合がある。
【0073】
本実施形態においては、本体部521は、芯部51の下面を覆っている。本体部521の内径は、シェル2の本体部21の外径よりも大きく、シールド部材3の本体部31の外径よりも小さい。そのため、防水シール部材5は、以下の手順により、簡単にシェル2の本体部21の外周の先端部213に取り付けることができる。最初に、基端側から防水シール部材5を取り付け、防水シール部材5の係合突部523がシェル2の本体部21の外周に形成された係合凹部23と係合するまで防水シール部材5を前進させる。その後、基端側からシールド部材3をシェル2の本体部21に取り付け、防水シール部材5の芯部51の基端側の端面511とシールド部材3の本体部31の先端側の端面311とが接触するまでシールド部材3を前進させる。これにより、防水シール部材5が、シールド部材3によって覆われていないシェル2の本体部21の外周の先端部213を覆うように設けることができる。このように、本発明においては、追加的な部品を用いずとも、シェル2の本体部21の外周の先端部213を覆うように、防水シール部材5を容易に取り付け可能である。
【0074】
図16は、電気コネクタ1の縦断面図を示している。
図16から分かるように、防水シール部材5は、シェル2の係止部22とシールド部材3の本体部31の先端側の端面311との間で保持され、さらに、防水シール部材5の芯部51の基端側の端面511が、シールド部材3の本体部31の先端側の端面311に接触している。
【0075】
図17には、上述のような構成を有する本発明の電気コネクタ1を、電子デバイスの筐体100に取り付けた状態の電気コネクタ1および電子デバイスの筐体100の縦断面図が示されている。
図17に示すように、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の隙間が防水シール部材5によって液密に封止されている。さらに、電気コネクタ1のシェル2の本体部21の内部において、シェル2の本体部21の内側面と内部構造体4のインシュレーター43との間の隙間が内側防水シール部材44によって液密に封止されている。このような構成により、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の防水機能および電気コネクタ1内部の防水機能が提供されている。
【0076】
このように、本発明の電気コネクタ1においては、防水シール部材5の弾性部52内に硬質材料により構成された芯部51が埋め込まれているため、防水シール部材5の強度が向上しており、防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れが発生しにくくなっている。そのため、本発明の電気コネクタ1を電子デバイスの筐体100に形成された嵌合孔110に挿入する際の防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れの発生を防止することができ、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の防水機能を確実に提供することができる。
【0077】
また、本発明の電気コネクタ1においては、防水シール部材5がシェル2の係止部22とシールド部材3の本体部31の先端側の端面311との間で保持されており、かつ、防水シール部材5の芯部51の基端側の端面511とシールド部材3の本体部31の先端側の端面311とが接触している。このような構成により、より安定的に防水シール部材5をシェル2の本体部21の外周において保持することができる。その結果、より確実に防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れの発生を防止することができ、電子デバイスの筐体100と電気コネクタ1との間の防水機能をより確実に提供することができる。
【0078】
<第2実施形態>
次に、
図18、
図19を参照して、本発明の第2実施形態に係る電気コネクタを詳述する。
図18は、本発明の第2実施形態に係る電気コネクタの防水シール部材を示す側面図である。
図19は、
図18に示す防水シール部材の断面図の一部拡大図である。
【0079】
以下、第2実施形態の電気コネクタ1について、第1実施形態の電気コネクタ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の電気コネクタ1は、防水シール部材5の構成が変更されている点を除き、電気コネクタ1と同じ構成を有している。
【0080】
図18および
図19に示すように、本実施形態では、防水シール部材5の弾性部52は、芯部51の基端側の端面511および芯部51の外周の基端部512が露出するよう、芯部51を覆うよう形成されている。
【0081】
本実施形態では、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、防水シール部材5の芯部51の外周の基端部512が弾性部52によって覆われておらず、外部に露出している。そのため、露出している芯部51の外周の基端部512と、シールド部材3の本体部31の先端側の部分とを溶接等により接合することが可能となっている。
【0082】
露出している芯部51の外周の基端部512と、シールド部材3の本体部31の先端側の部分とを溶接等により接合することにより、より安定的に、防水シール部材5をシェル2の係止部22とシールド部材3の本体部31の先端側の端面311との間で保持することができる。
【0083】
以上、本発明の電気コネクタ1を図示の実施形態に基づいて説明したが、上述のような本発明の電気コネクタ1を備える電子デバイスもまた、本発明の範囲内である。本発明の電子デバイスは、
図17に示すように、筐体100と、筐体100内に設けられた回路基板(図示せず)と、回路基板上に実装された上述の電気コネクタ1を含む。
【0084】
以上、本発明の電気コネクタおよび電子デバイスを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0085】
例えば、電気コネクタ1の各実施形態において、シェル2の係止部22は、本体部21の外周の先端を一周するよう形成された環状形状を有しているが、係止部22の形状は、係止部22が防水シール部材5を先端側から係止する機能を提供することができれば、これに限られない。例えば、係止部22は、いくつかの箇所において切り欠かれた非連続的な環状形状を有していてもよいし、係止部22が本体部21の外周から外側に向かって突出するよう形成された1つ以上の突部片から構成されていてもよい。
【0086】
また、電気コネクタ1の各実施形態において、防水シール部材5の芯部51は、シェル2の本体部21の外周を覆う環状形状を有しているが、芯部51の形状は、芯部51が防水シール部材5のヨレ、ねじれ、捲れを防止するための防水シール部材5の芯として機能することができれば、これに限られない。例えば、芯部51は、一部が切りかかれた、非連続的な環状形状を有していてもよいし、シェル2の本体部21の外周を囲む非連続的な環状形状を構成するよう、弾性部52内に互いに離間して埋め込まれた複数の硬質片から構成されていてもよい。
【0087】
また、電気コネクタ1の各実施形態において、内部構造体4の複数のコンタクト41は、インシュレーター43の舌状部432および舌状部432に埋設されたグランドプレート42を介して対向する第1のグループ41Uおよび第2のグループ41Lを形成しているが、本発明はこれに限られない。例えば、複数のコンタクト41が第1のグループ41Uおよび第2のグループ41Lの一方のみを形成しているような態様や、複数のコンタクト41が第1のグループ41Uおよび第2のグループ41Lに加え、1つ以上の追加的なグループを形成しているような態様も、本発明の範囲内である。
【0088】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の認証装置の構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する認証装置もまた、本発明の範囲内である。例えば、第1実施形態および第2実施形態の電気コネクタを任意に組み合わせた態様も、本発明の範囲内である。
【0089】
また、
図3~
図19に示された電気コネクタの構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された態様も、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0090】
1…電気コネクタ 2…シェル 21…本体部 211…差込口 212…基端側開口
213…先端部 22…係止部 23…係合凹部 24…切り欠き 3…シールド部材 31…本体部 311…端面 32…係合突部 33…シェル抑え部 34…内部構造体抑え部 4…内部構造体 41…コンタクト 41A…信号コンタクト 41B…非信号コンタクト 41L…第2のグループ 41U…第1のグループ 411…接点部 412…固定部 413…基板接続部 42…グランドプレート 421…本体部 422…基板接続部 43…インシュレーター 431…基部 432…舌状部 433…凹部 434…コンタクト受け部 435…開口 44…内側防水シール部材 5…防水シール部材 51…芯部 511…端面 512…基端部 52…弾性部 521…本体部 522…突起部 523…係合突部 100…筐体 110…嵌合孔 800…電気コネクタ 810…シェル 820…防水シール部材 900…筐体 910…嵌合孔