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特許7107817分離膜エレメント、分離膜モジュール、及びろ過システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】分離膜エレメント、分離膜モジュール、及びろ過システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/10 20060101AFI20220720BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20220720BHJP
   B01D 65/00 20060101ALI20220720BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B01D63/10
B01D63/00 500
B01D65/00
C02F1/44 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018208890
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020075203
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 巧真
(72)【発明者】
【氏名】宇田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小西 貴久
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-141846(JP,A)
【文献】特開2018-126706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集水管と、
前記集水管に巻きつけられた分離膜と、
前記集水管の軸線方向における前記分離膜の一方の端を覆う第一端部材と、
前記集水管の軸線方向における前記分離膜の他方の端を覆う第二端部材と、
前記第一端部材の外周に取り付けられた環状の第一シール部材と、
前記第二端部材の外周に取り付けられた環状の第二シール部材と、を備え、
前記軸線方向において原水の流れを逆方向に切り換え可能なろ過システムに用いられ、
前記第一シール部材及び前記第二シール部材の少なくとも1つは、前記集水管の軸線方向において液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、
分離膜エレメント。
【請求項2】
前記第一シール部材及び前記第二シール部材は、前記集水管の軸線方向において、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、請求項1に記載の分離膜エレメント。
【請求項3】
前記第一シール部材及び前記第二シール部材は、円状、楕円状、四角形状、V字状、U字状、及びX字状の断面を有するシール部材並びにスプリットリング状のシール部材からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の分離膜エレメント。
【請求項4】
前記第一端部材及び前記第二端部材の少なくとも1つは、前記軸線方向において前記分離膜に近い端部に対し反対側の端部に形成された環状の端面を有し、かつ、前記環状の端面の内周から外周まで延びている端面溝部を有する、請求項1又は2に記載の分離膜エレメント。
【請求項5】
圧力容器と、
前記圧力容器の内部に配置された複数の請求項1~4のいずれか1項に記載の分離膜エレメントと、
前記分離膜エレメントの前記集水管の軸線方向において前記圧力容器の一方の端部に位置し、原水を前記圧力容器の内部に導くための第一供給口と、
前記分離膜エレメントの前記集水管の軸線方向において前記圧力容器の他方の端部に位置し、前記原水を前記圧力容器の内部に導くための第二供給口と、を備えた、
分離膜モジュール。
【請求項6】
前記軸線方向において、前記複数の分離膜エレメントのうち前記第一供給口に最も近い前記分離膜エレメントの前記第一シール部材及び前記第二シール部材の少なくとも1つは、前記集水管の軸線方向において液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有し、
前記軸線方向において、前記複数の分離膜エレメントのうち前記第二供給口に最も近い前記分離膜エレメントの前記第一シール部材及び前記第二シール部材の少なくとも1つは、前記集水管の軸線方向において液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、
請求項5に記載の分離膜モジュール。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の分離膜モジュールと、
前記原水が前記第一供給口を通過して前記圧力容器の内部に供給される第一モードと、前記原水が前記第二供給口を通過して前記圧力容器の内部に供給される第二モードとを切り換えるための少なくとも1つのバルブと、を備えた、
ろ過システム。
【請求項8】
前記第一モードの継続時間に対する前記第二モードの継続時間の比が0.5~1.5となるように前記少なくとも1つのバルブの作動を制御する、制御器をさらに備えた、請求項7に記載のろ過システム。
【請求項9】
前記分離膜モジュールの運転圧力は、5~15MPaである、請求項8に記載のろ過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分離膜エレメント、分離膜モジュール、及びろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
分離膜エレメントは、海水の淡水化、純水の製造、廃水処理、原油の採掘などの様々な分野で使用されている。分離膜エレメントは、例えば、集水管と、集水管に巻きつけられた分離膜とを備えている。分離膜エレメントが圧力容器に装填されて分離膜モジュールが構成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のスパイラル型膜エレメントがハウジング内に装填された逆浸透膜モジュールが記載されている。この逆浸透膜モジュールの運転方法において、原水の流れ方向が定期又は不定期に反対方向へ変更される。この逆浸透膜モジュールにおいて、スパイラル型膜エレメントの外周とハウジングの内周との間の隙間を閉塞するブラインシールが配置されている。
【0004】
特許文献2には、スパイラル型の分離膜エレメントと、分離膜エレメントの通水時に生じるスラスト荷重を保持するスラスト荷重保持部材とを備える分離膜モジュールが記載されている。この分離膜モジュールにおいて、所定のフラッシング液を用いて逆方向フラッシングが行われる。スラスト荷重保持部材により、逆方向フラッシング時の水の流れで発生する圧力損失によるスラスト荷重が支えられる。分離膜エレメントの一端にはブラインシールが設けられている。
【0005】
特許文献3には、複数の分離膜エレメントが筒状圧力容器内に充填された少なくとも1つの分離膜モジュールからなる分離膜ユニットが記載されている。分離膜エレメントにおいて、分離膜を流路部材と共に巻回した膜巻体の外周が外装体によって覆われており、膜巻体及び外装体の少なくとも片端にテレスコープ防止板が設けられている。テレスコープ防止板の外周と筒状圧力容器の内周面との間に被処理流体シール部材が設けられている。被処理流体シール部材は、被処理流体を筒状圧力容器と分離膜エレメントの間に存在するバイパス流路へバイパスさせる通水路を有する。これにより、分離膜エレメントの圧力損失が上昇した場合において分離膜エレメントを通過する流量を低減し、分離膜エレメントにおける流動抵抗を抑制することが可能となる。その効果として、テレスコープの発生を抑えることを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-141846号公報
【文献】国際公開第2015/41263号
【文献】特開2018-126706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、分離膜モジュールにおいて原水の流れ方向を逆向きに変更する運転を行うときに分離膜エレメントの保護の観点から改良の余地を有する。一方、特許文献2には、原水の流れ方向を逆向きに変更するように分離膜モジュールを運転することは記載されていない。特許文献3には、原水の流れ方向を逆向きに変更するように上記の分離膜モジュールを運転することは記載されていない。
【0008】
そこで、本開示は、例えば分離膜モジュールにおいて複数の分離膜エレメントの膜負荷を均一化するために、原水の流れ方向を逆向きに変更する運転を行うときに、分離膜エレメントの内部を通過することなく原水が排出されることによるエネルギーロスを低減するとともに分離膜エレメントの内部を通過する原水の流速が低下することによる膜面近傍の濃度分極の悪化を抑えて透過水量及び透過水の水質を保ち、分離膜モジュールにおける性能の低下を抑制しつつ自身を適切に保護する観点から有利な分離膜エレメントを提供する。加えて、本開示は、このような分離膜エレメントを備えた、分離膜モジュール及びろ過システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、
集水管と、
前記集水管に巻きつけられた分離膜と、
前記集水管の軸線方向における前記分離膜の一方の端を覆う第一端部材と、
前記集水管の軸線方向における前記分離膜の他方の端を覆う第二端部材と、
前記第一端部材の外周に取り付けられた環状の第一シール部材と、
前記第二端部材の外周に取り付けられた環状の第二シール部材と、を備え、
前記軸線方向において原水の流れを逆方向に切り換え可能なろ過システムに用いられ、
前記第一シール部材及び前記第二シール部材の少なくとも1つは、前記集水管の軸線方向において、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、
分離膜エレメントを提供する。
【0010】
別の側面において、本開示は、
圧力容器と、
前記圧力容器の内部に配置された複数の上記の分離膜エレメントと、
前記分離膜エレメントの前記集水管の軸線方向において前記圧力容器の一方の端部に位置し、原水を前記圧力容器の内部に導くための第一供給口と、
前記分離膜エレメントの前記集水管の軸線方向において前記圧力容器の他方の端部に位置し、前記原水を前記圧力容器の内部に導くための第二供給口と、を備えた、
分離膜モジュールを提供する。
【0011】
さらに別の側面において、本開示は、
上記の分離膜モジュールと、
前記原水が前記第一供給口を通過して前記圧力容器の内部に供給される第一モードと、前記原水が前記第二供給口を通過して前記圧力容器の内部に供給される第二モードとを切り換えるための少なくとも1つのバルブと、を備えた、
ろ過システムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、上記の分離膜エレメントは、例えば分離膜モジュールにおいて複数の分離膜エレメントの膜負荷を均一化するために、原水の流れ方向を逆向きに変更する運転を行うときに、分離膜エレメントの内部を通過することなく原水が排出されることによるエネルギーロスを低減するとともに分離膜エレメントの内部を通過する原水の流速が低下することによる膜面近傍の濃度分極の悪化を抑えて透過水量及び透過水の水質を保ち、分離膜モジュールにおける性能の低下を抑制しつつ自身を適切に保護する観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の分離膜エレメントの一例を示す展開斜視図である。
図2図2は、図1に示す分離膜エレメントを示す断面図である。
図3図3は、分離膜エレメントの端部材の正面図である。
図4図4は、本開示の分離膜モジュールの一例を示す断面図である。
図5A図5Aは、図4のV-V線に沿った断面図である。
図5B図5Bは、本開示の分離膜モジュールの別の一例を示す断面図である。
図5C図5Cは、本開示の分離膜モジュールのさらに別の一例を示す断面図である。
図5D図5Dは、変形例に係るシール部材を示す正面図である。
図6図6は、本開示のろ過システムの一例の構成を模式的に示す図である。
図7A図7Aは、分離膜モジュールにおける原水の流れを概念的に説明する断面図である。
図7B図7Bは、分離膜モジュールにおける原水の流れを概念的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
近年、廃水処理の分野又は原油採掘の分野で使用可能な分離膜エレメントのように、高いTDS(Total Dissolved Solids)濃度を有する原水を処理できる分離膜エレメントのニーズが生まれつつある。例えば、工業廃水は、減容化の目的で濃縮されるため、高いTDS濃度(例えば、質量濃度で30000ppm以上の濃度)を有しうる。原油を採掘すると、大量の随伴水が副産物として得られる。随伴水には様々な物質が高濃度で含まれている。原油採掘の現場では、地下油層の圧力を高めるための注入水の製造も必要である。注入水の製造に分離膜エレメントを使用する場合、特に中東地域で見られるような高濃度の海水などの高いTDS濃度を有する原水を処理する必要がある。
【0015】
分離膜エレメントを用いて高いTDS濃度の原水処理する場合、処理能力の向上のために、直列に接続された複数の分離膜エレメントを圧力容器の中に装填して分離膜モジュールを構成することが考えられる。このような分離膜モジュールにおいて、原水が特定方向にのみ流れると、原水の高いTDS濃度に起因して、特定の分離膜エレメントの膜負荷が著しく大きくなり、特定の分離膜エレメントにおいてファウリングが著しく酷くなる。例えば、原水の流れ方向において最上流の分離膜エレメントの膜負荷が最下流の分離膜エレメントに比べて著しく大きくなる。そこで、分離膜モジュールにおける分離膜エレメント間の膜負荷のばらつきを抑制するために、分離膜モジュールにおいて原水の流れ方向を所定のタイミングで逆向きに変更することが考えられる。なお、分離膜エレメントの膜負荷とは、分離膜エレメントに供給される原水の体積流量を当該分離膜エレメントにおける分離膜の有効膜面積で除した物理量であり、例えば、[L(リットル)/(m2・時間)]の次元を有する。分離膜の「有効膜面積」とは、接着剤によって封止された部分等を除く、原水をろ過処理できる部分の面積を意味する。
【0016】
分離膜モジュールにおいて分離膜エレメントの内部を通過することなく原水が排出されること、換言すると、分離膜エレメントの内部を通過する原水の流速が低下することを防止するために分離膜エレメントに環状のシール部材が取り付けられる。典型的には、分離膜エレメントの内部を通過することなく原水が排出されるとエネルギーロスに繋がり、分離膜エレメント内部を通過する原水の流速が十分でない場合、濃度分極の悪化により分離膜近傍における浸透圧が高まり、透過水量及び透過水の水質が低下する。このシール部材は、分離膜エレメントの外周面と圧力容器の内周面との隙間をシールする。このシール部材は、例えば、原水の圧力を利用して半径方向外側に広がり、分離膜エレメントの外周面と圧力容器の内周面との隙間をシールする。これにより、分離膜エレメントの内部を通過することなく原水が排出されることによるエネルギーロスが低減されるとともに分離膜エレメント内部を通過する原水の流速が低下することを防止でき、膜面近傍の濃度分極の悪化を抑えられて透過水量及び透過水の水質が維持され、分離膜モジュールの性能の低下を防止できる。このシール部材は、典型的には分離膜エレメントの原水の流れの上流に位置する端部材の外周に取り付けられる。一方、分離膜エレメントの原水の流れの下流に位置する端部材と圧力容器の内周面との間の隙間は通常シールされない。これにより、分離膜エレメントを通過した原水の一部を分離膜エレメントの外周面と圧力容器の内周面との間の隙間に導いて、分離膜エレメントの内部の圧力と、分離膜エレメントの外周面と圧力容器の内周面との間の隙間における圧力との差を小さくできる。その結果、分離膜エレメントが適切に保護される。
【0017】
分離膜モジュールにおける原水の流れを所定のタイミングで反転させる場合、原水の流れの変更に関わらず、分離膜エレメントの内部を通過することなく原水が排出されること、換言すると、分離膜エレメント内部を通過する原水の流速が低下することを抑制できることが望ましい。そこで、分離膜エレメントの一対の端部材のそれぞれにシール部材を取り付けることが考えられる。しかし、この場合、分離膜エレメントを通過した原水の一部が分離膜エレメントの外周面と圧力容器の内周面との間の隙間に導かれない。このため、分離膜エレメントの内部の圧力と、分離膜エレメントの外周面と圧力容器の内周面との間の隙間における圧力との差が大きくなる。その結果、分離膜エレメントを適切に保護することが難しくなると考えられる。そこで、本発明者らは、分離膜モジュールにおける原水の流れを所定のタイミングで反転させる場合に、分離膜エレメントの内部を通過することなく原水が排出されること、換言すると、分離膜エレメント内部を通過する原水の流速が低下することを抑制しつつ、分離膜エレメントを適切に保護できる技術について鋭意検討を重ねた。その結果、分離膜エレメントの一対の端部材のそれぞれにシール部材を取り付けつつ、一対の端部材の少なくとも1つに液体が通過可能な穴等を設けることを新たに思いつき、本開示の分離膜エレメントを案出した。
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0019】
図1に示す通り、分離膜エレメント10は、集水管11と、分離膜12とを備えている。分離膜12は、集水管11に巻きつけられている。加えて、図2に示す通り、分離膜エレメント10は、第一端部材16aと、第二端部材16bと、第一シール部材17aと、第二シール部材17bとを備えている。第一端部材16aは、集水管11の軸線方向における分離膜12の一方の端を覆っている。第二端部材16bは、集水管11の軸線方向における分離膜12の他方の端を覆っている。第一シール部材17aは、第一端部材16aの外周に取り付けられた環状の部材である。第二シール部材17bは、第二端部材16bの外周に取り付けられた環状の部材である。第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つは、集水管11の軸線方向において、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。分離膜エレメント10は、後述の通り、集水管11の軸線方向において原水の流れを逆方向に切り換え可能なろ過システムに用いられるものである。
【0020】
第一シール部材17a及び第二シール部材17bが集水管11の軸線方向において、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。図2に示す通り、第一シール部材17a及び第二シール部材17bのそれぞれは、例えば、液体が通過可能な穴17hを有する。なお、第一シール部材17a及び第二シール部材17bの一方のみが、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
【0021】
分離膜12は、例えば、逆浸透膜である。ただし、分離膜12は、ナノ濾過膜であってもよく、限外濾過膜であってもよく、精密濾過膜であってもよい。
【0022】
図1に示す通り、分離膜エレメント10の一端部に原水が流入すると、原水は、分離膜12によってろ過されて濃縮される。これにより、濃縮された原水と透過水とが生成される。濃縮された原水は、分離膜エレメント10の他端部から分離膜エレメント10の外部へと排出される。透過水は、透過水の流路及び集水管11を通じて、分離膜エレメント10の外部へと排出される。分離膜エレメント10は、原水に含まれたイオン、塩類などの溶質が取り除かれた透過水を生成する。
【0023】
図1に示す通り、分離膜エレメント10は、例えば、供給側流路材13と、透過側流路材14とをさらに備えている。供給側流路材13及び透過側流路材14は、分離膜12とともに集水管11に巻きつけられている。例えば、分離膜12、供給側流路材13、及び透過側流路材14によって積層体15が構成され、積層体15が集水管11に巻きつけられている。積層体15は、例えば、複数の分離膜12、複数の供給側流路材13、及び複数の透過側流路材14によって構成されている。
【0024】
例えば、複数の分離膜12は、互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように3辺において封止され、集水管11に巻きつけられている。袋状の構造の外部に位置するように、分離膜12と分離膜12との間に供給側流路材13が配置されている。供給側流路材13は、分離膜12と分離膜12との間に原水の流路としての空間を確保している。袋状の構造の内部に位置するように、分離膜12と分離膜12との間に透過側流路材14が配置されている。透過側流路材14は、分離膜12と分離膜12との間に透過水の流路としての空間を確保している。透過水の流路が集水管11に連通するように、袋状の構造の開口端が集水管11に接続されている。
【0025】
集水管11は、各分離膜12を透過した透過水を集めて分離膜エレメント10の外部に導く役割を担っている。集水管11には、その軸線方向に沿って複数の貫通孔11hが所定間隔で設けられている。透過水は、これらの貫通孔11hを通じて集水管11の中に流入する。
【0026】
集水管11の構成材料は特に限定されない。集水管11は、例えば、金属、セラミック又は樹脂で作られている。金属としては、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、黄銅(真鍮)、青銅、ジュラルミン、その他の合金などが挙げられる。セラミックとしては、アルミナセラミック、ジルコニアセラミック、窒化ケイ素セラミック、窒化アルミニウムセラミック、炭化ケイ素セラミックなどが挙げられる。樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。集水管11を構成する樹脂は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、又はシリコーン樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂)、ポリフェニレンオキシド樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂(例えば、変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリルニトリル-スチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、これらの樹脂の混合物、これらの樹脂を含むポリマーアロイなどが挙げられる。
【0027】
集水管11の構成材料は樹脂を含んでいてもよい。この場合、集水管11に優れた耐食性を付与しやすい。集水管11の構成材料の主成分が樹脂であってもよい。「主成分」とは、体積比で最も多く含まれた成分を意味する。
【0028】
集水管11の構成材料は、樹脂と強化材料とを含む樹脂組成物であってもよい。強化材料としては、繊維材料、結晶材料などが挙げられる。繊維材料としては、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。結晶材料としては、ウィスカー、液晶ポリマーなどが挙げられる。ガラス繊維としては、ガラスウール、チョップド・ガラスファイバー、ミルド・ガラスファイバーが挙げられる。炭素繊維としては、ミルド炭素繊維が挙げられる。ウィスカーとしては、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、珪酸カルシウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカーなどが挙げられる。
【0029】
図2に示す通り、分離膜エレメント10は、例えば、積層体15を取り囲むシェル18をさらに備えている。第一端部材16aは、例えば、集水管11の軸線方向におけるシェル18の一端に取り付けられ、第二端部材16bは、例えば、集水管11の軸線方向におけるシェル18の他端に取り付けられている。例えば、集水管11の材料として挙げた材料をシェル18にも使用可能である。
【0030】
第一端部材16a及び第二端部材16bは、積層体15がテレスコピック状に伸長することを防止する。第一端部材16a及び第二端部材16bは、典型的には、同一の形状を有する。このため、第一端部材16aの形状に関する説明は、第二端部材16bの形状にも当てはまる。図3に示す通り、第一端部材16aは、内側筒部16i、外側筒部16e、及び複数のリブ16rを有する。第一端部材16aは、テレスコープ防止部材又はシールキャリアとも呼ばれる。内側筒部16iが外側筒部16eによって周方向に囲まれている。外側筒部16eの中心は、内側筒部16iの中心に一致している。複数のリブ16rは、内側筒部16iの周りに等角度間隔で設けられており、内側筒部16iから外側筒部16eに向かって延びている。リブ16rは、弓状に湾曲していてもよく、半径方向に真っ直ぐ延びていてもよい。内側筒部16iには、集水管11を通すための貫通孔16hが設けられている。隣り合うリブ16rとリブ16rとの間に広がる部分には、原水を通過させるための複数の貫通孔16fが設けられている。リブ16rとリブ16rとの間に広がる部分の全部が貫通孔であってもよい。
【0031】
第一端部材16a及び第二端部材16bの少なくとも1つは、例えば、環状の端面16jを有し、かつ、環状の端面16jの内周から外周まで延びている端面溝部16kを有する。環状の端面16jは、集水管11の軸線方向において分離膜12に近い端部に対し反対側の端部に形成された端面である。第一端部材16a及び第二端部材16bの両方が端面溝部16kを有していてもよいし、第一端部材16a及び第二端部材16bの一方のみが端面溝部16kを有していてもよい。これにより、積層体15を通過した原水の一部が端面溝部16kを通過して、分離膜エレメント10の外部に導かれうる。例えば、第一端部材16a及び第二端部材16bの少なくとも1つは、環状の端面16jにおいて、周方向に等角度間隔で複数の端面溝部16kを有している。複数の分離膜エレメント10を接続した場合に、第一端部材16a及び第二端部材16bは、それぞれ、第二端部材16b及び第一端部材16aと面接触しうる。この場合、端面溝部16kによって、分離膜エレメント10の内部の原水の流路が分離膜エレメント10の外部に連通する。場合によっては、第一端部材16a及び第二端部材16bは、端面溝部16kを有していなくてもよい。
【0032】
第一端部材16a及び第二端部材16bの材料は特に限定されない。例えば、集水管11の材料として挙げた材料を第一端部材16a及び第二端部材16bにも使用可能である。
【0033】
図2に示す通り、例えば、集水管11の軸線方向において、集水管11の端面11pの位置が第一端部材16aの端面16p及び第二端部材16bの端面16pの位置に揃っている。このような構造によれば、複数の分離膜エレメント10を集水管11の軸線方向に並べて分離膜モジュールを構成する場合に、隣り合う分離膜エレメント10の第一端部材16aと第二端部材16bとが互いに接する。その結果、分離膜12の面積を十分に稼ぐことができる。例えば、第一端部材16a及び第二端部材16bにおいて、内側筒部16iの端面及び外側筒部16eの端面は同一平面上に存在する。さらに、内側筒部16iの端面、外側筒部16eの端面、及び、リブ16rの端面は、同一平面上に存在していてもよい。集水管11の端面11pは、貫通孔16hの内部に位置していてもよい。
【0034】
第一シール部材17a及び第二シール部材17bのそれぞれは、例えば、円状、楕円状、四角形状、V字状、U字状、及びX字状の断面を有するシール部材並びにスプリットリング状のシール部材からなる群より選ばれる少なくとも1つである。例えば、第一端部材16a及び第二端部材16bの外周面には、それぞれ、環状溝が形成されている。第一シール部材17aは、例えば、第一端部材16aの外周面の環状溝に嵌められている。第二シール部材17bは、例えば、第二端部材16bの外周面の環状溝に嵌められている。第一シール部材17aの外径は、第一端部材16aの外径よりも大きい。このため、第一シール部材17aは、半径方向外側に第一端部材16aから突出している突出部を有する。第一シール部材17aは、例えば、この突出部に、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。一方、第二シール部材17bの外径は、第二端部材16bの外径よりも大きい。このため、第二シール部材17bは、半径方向外側に第二端部材16bから突出している突出部を有する。第二シール部材17bは、例えば、この突出部に、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。
【0035】
第一シール部材17a及び第二シール部材17bのそれぞれは、複数の穴17hを有していてもよいし、液体が通過可能な複数のスリットを有していてもよいし、液体が通過可能な複数の隙間を有していてもよい。複数の穴17h、複数のスリット、及び複数の隙間は、例えば、第一シール部材17a又は第二シール部材17bの周方向に等角度間隔で形成されている。
【0036】
液体が通過可能な穴17h、液体が通過可能なスリット、又は液体が通過可能な隙間の寸法及び形状は、液体が通過可能である限り特に限定されない。穴17hの穴径は、例えば、0.5~5mmである。穴17hは、長穴であってもよい。液体が通過可能なスリットの幅は、例えば0.5~5mmである。液体が通過可能な隙間の幅は、例えば0.5~5mmである。
【0037】
分離膜エレメント10を用いて分離膜モジュール100を構成できる。図4に示す通り、分離膜モジュール100は、圧力容器1と、複数の分離膜エレメント10とを備えている。複数の分離膜エレメント10は、圧力容器1の内部に配置されており、直列に接続されている。分離膜モジュール100は、第一供給口31と、第二供給口32とをさらに備えている。第一供給口31は、分離膜エレメント10の集水管11の軸線方向において圧力容器1の一方の端部に位置し、原水を圧力容器1の内部に導くためのものである。第二供給口32は、分離膜エレメント10の集水管11の軸線方向において圧力容器1の他方の端部に位置し、原水を圧力容器1の内部に導くためのものである。
【0038】
図5Aに示す通り、分離膜モジュール100において、第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つの液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間は、例えば、分離膜エレメント10の集水管11の軸線に垂直な方向において、圧力容器1の内周面と分離膜エレメント10の第一シール部材17a及び第二シール部材17bを除く部分の外周部との間に位置している。これにより、穴、スリット、及び隙間を原水の一部がより確実に通過できる。図5Aにおいて、第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つには、例えば、液体が通過可能な穴17hが形成されている。図5B及び図5Cに示す通り、第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つには、それぞれ、液体が通過可能なスリット17h(溝)及び隙間17hが形成されていてもよい。図5Bに示すシール部材は、円状、楕円状、四角形状、又はX字状の断面を有するシール部材である。図5Bに示すシール部材は、1つのスリット17hを有していてもよいし、複数のスリットを有していてもよい。図5Cに示すシール部材は、スプリットリング状のシール部材である。なお、第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つとして、図5Dに示すようなシール部材17cを用いることもできる。シール部材17cは、スプリットリング状のシール部材である。図5Dに示す通り、シール部材17cは、周方向に互いに重なる一対の薄片部17fを有する。一対の薄片部17fは、スプリットリングの両端部を形成している。各薄片部17fの厚みは、シール部材17cにおける薄片部17f以外の部分の厚みの約半分である。一方の薄片部17fの先端と、他方の薄片部17fの後端部とによって、隙間17hが形成されている。
【0039】
分離膜モジュール100において、例えば、分離膜エレメント10の集水管11の軸線方向において、複数の分離膜エレメント10のうち第一供給口31に最も近い分離膜エレメント10の第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つは、集水管11の軸線方向において液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。加えて、分離膜エレメント10の集水管11の軸線方向において、複数の分離膜エレメント10のうち第二供給口32に最も近い分離膜エレメント10の第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つは、集水管11の軸線方向において液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。換言すると、分離膜モジュール100において集水管11の軸線方向に配置された複数の分離膜エレメント10の両端に位置する1対の分離膜エレメント10の第一シール部材17a及び第二シール部材17bの少なくとも1つは、集水管11の軸線方向において液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。この場合、分離膜モジュール100において複数の分離膜エレメント10の膜負荷を均一化するために、原水の流れ方向を逆向きに変更する運転を行うときに、分離膜モジュール10における性能の低下を抑制しつつエネルギーロスを低減するとともに、各分離膜エレメント10を適切に保護できる。
【0040】
圧力容器1の両端には、円盤状の端板8a及び8bが取り付けられている。端板8aには、透過水を取り出すための第一排出管63aが中心に設けられている。端板8bには、透過水を取り出すための第二排出管63bが中心に設けられている。
【0041】
分離膜モジュール100において、隣り合う分離膜エレメント10は、コネクタ61によって互いに接続されている。コネクタ61は、集水管11の内部に位置するインターコネクタでありうる。集水管11の軸線方向において、隣り合う分離膜エレメント10の第一端部材16aと第二端部材16bとが接している。詳細には、第一端部材16aの端面と第二端部材16bの端面とが接している。このような構造によれば、圧力容器1の内部の無駄な空間を減らし、積層体15の長さを最大限に確保でき、分離膜12の面積を十分に確保できる。
【0042】
分離膜モジュール100において、複数の分離膜エレメント10のうち第一供給口31に最も近い分離膜エレメント10は、アダプタ62によって第一排出管63aに接続されている。複数の分離膜エレメント10のうち第二供給口32に最も近い分離膜エレメント10は、アダプタ62によって第二排出管63bに接続されている。
【0043】
分離膜モジュール100は、例えば、一対のスラストリング70をさらに備えている。一対のスラストリング70の一方は、複数の分離膜エレメント10のうち第一供給口31に最も近い分離膜エレメント10と、端板8aとの間に配置されている。一対のスラストリング70の他方は、複数の分離膜エレメント10のうち第二供給口32に最も近い分離膜エレメント10と、端板8bとの間に配置されている。スラストリング70は、例えば、円錐台状かつ環状の部品である。スラストリング70の中央には、スラストリング70をアダプタ62に嵌めるための貫通孔が形成されている。この貫通孔の孔径は、アダプタ62の外周部分よりもわずかに大きい。加えて、スラストリング70の錐面には、原水を通過させるための貫通孔が形成されている。スラストリング70の最大内径及び最大外径は、例えば、第一端部材16a及び第二端部材16bの外側筒部16eの内径と外径との間の値を有する。スラストリング70の半径方向における内側の端部は、第一排出管63a又は第二排出管63bと周方向において重なっている。例えば、複数の分離膜エレメント10に端板8bに向かってスラスト荷重が働くと、第二排出管63b及びスラストリング70がこのスラスト荷重を受ける。例えば、原水が第一供給口31を通過して圧力容器1の内部に供給されると、このようなスラスト荷重が発生する。一方、複数の分離膜エレメント10に端板8aに向かってスラスト荷重が働くと、第一排出管63a及びスラストリング70がこのスラスト荷重を受ける。例えば、原水が第二供給口32を通過して圧力容器1の内部に供給されると、このようなスラスト荷重が発生する。
【0044】
分離膜モジュール100を用いて、例えば、ろ過システム200を構成できる。図6に示す通り、ろ過システム200は、分離膜モジュール100と、少なくとも1つのバルブとを備える。このバルブは、原水が第一供給口31を通過して圧力容器1の内部に供給される第一モードと、原水が第二供給口32を通過して圧力容器1の内部に供給される第二モードとを切り換えるためのものである。ろ過システム200は、このようなバルブとして、例えば、三方弁51、52、及び53を備えている。
【0045】
ろ過システム200は、例えば、流路50a、50b、50c、50d、50e、50f、流路50g、及び流路50hをさらに備えている。また、ろ過システム200は、ポンプ120をさらに備えている。ポンプ120は、分離膜モジュール100に向かって原水を圧送する。ポンプ120は、流路50aに配置されている。流路50aは、三方弁51に接続されている。流路50bは、三方弁51及び三方弁52に接続されている。流路50cは、三方弁52及び第一供給口31に接続されている。流路50dは、第二供給口32及び三方弁53に接続されている。流路50eは、三方弁53に接続され、ろ過システム200の外部に向かって延びている。流路50fは、三方弁51及び三方弁53に接続されている。流路50gは、三方弁52及び流路50eに接続されている。流路50hは、第一排出管63a及び第二排出管63bに接続されている。
【0046】
ろ過システム200の運転の一例について説明する。第一モードにおいて、ポンプ120によって圧送された原水は、三方弁51、流路50b、三方弁52、流路50c、及び第一供給口31をこの順番で通過して、分離膜モジュール100の内部に供給される。一方、濃縮された原水は、第二供給口32、流路50d、三方弁53、及び流路50eをこの順番で通過して、ろ過システム200の外部に導かれる。このとき、分離膜モジュール100の内部において、原水は、第一供給口31から第二供給口32に流れる。図6における実線の矢印は第一モードにおける原水の流れ方向を示す。
【0047】
第二モードにおいて、ポンプ120から圧送された原水は、三方弁51、流路50f、三方弁53、流路50d、及び第二供給口32をこの順番で通過して、分離膜モジュール100の内部に供給される。一方、濃縮された原水は、第一供給口31、流路50c、三方弁52、流路50g、及び流路50eをこの順番で通過して、ろ過システム200の外部に導かれる。このとき、分離膜モジュール100の内部において、原水は、第二供給口32から第一供給口31に流れる。図6における破線の矢印は第二モードにおける原水の流れ方向を示す。
【0048】
ろ過システム200は、例えば、制御器150をさらに備えている。制御器150は、第一モードと第二モードとを切り換えるための少なくとも1つのバルブの作動を制御する。このとき、制御器150は、第一モードの継続時間T1に対する第二モードの継続時間T2の比(T1/T2)が0.5~1.5となるように、少なくとも1つのバルブの作動を制御する。T1/T2は、0.8~1.2であってもよい。例えば、制御器150は、三方弁51、52、及び53の作動を制御する。これにより、分離膜モジュール100における各分離膜エレメント10の膜負荷のばらつきを抑制しやすい。第一モードの継続時間T1は、原水のTDS濃度等によって変動しうる。第一モードの継続時間T1は、例えば、1~72時間である。
【0049】
第一モードと第二モードとを切り換えるとき、必要に応じて、第一モードと第二モードとの間の期間において中間的な運転モードでろ過システム200が運転されうる。例えば、中間的な運転モードにおいて、ろ過システム200の圧力が通常の運転圧力から低下するようにろ過システム200が運転される。中間的な運転モードには、フラッシングのための運転モードも含まれうる。
【0050】
ろ過システム200が第一モードで運転されるとき、複数の分離膜エレメント10のうち第一供給口31に最も近い分離膜エレメント10の付近では、図7Aに示すように原水が流れる。原水の圧力により、第一シール部材17aが圧力容器1の内周面1aに密着し、大部分の原水の流れが遮られる。一方、第一シール部材17aの穴17hを通過した原水が分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。分離膜エレメント10の内部に導かれた原水は、積層体15を通って濃縮される。濃縮された原水の一部は、端面溝部16kを通って、分離膜エレメント10と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。このとき、濃縮された原水は、第二シール部材17bの穴17hを通過して分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。また、濃縮された原水は、隣の分離膜エレメント10の第一シール部材17aの穴17hを通過して分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。これにより、分離膜エレメント10の内部の圧力と、分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間における圧力との差が大きくなることが抑制され、分離膜エレメント10が適切に保護される。なお、穴17hを通過する原水の流量は、第一供給口31における原水の流量に比べて圧倒的に少ない。
【0051】
ろ過システム200が第二モードで運転されるとき、複数の分離膜エレメント10のうち第二供給口32に最も近い分離膜エレメント10の付近では、図7Bに示すように原水が流れる。原水の圧力により、第二シール部材17bが圧力容器1の内周面1aに密着し、大部分の原水の流れが遮られる。一方、第二シール部材17bの穴17hを通過した原水が分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。分離膜エレメント10の内部に導かれた原水は、積層体15を通って濃縮される。濃縮された原水の一部は、端面溝部16kを通って、分離膜エレメント10と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。このとき、濃縮された原水は、第一シール部材17aの穴17hを通過して分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。また、濃縮された原水は、隣の分離膜エレメント10の第二シール部材17bの穴17hを通過して分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間に導かれる。これにより、分離膜エレメント10の内部の圧力と、分離膜エレメント10の外周面と圧力容器1の内周面1aとの間の隙間における圧力との差が大きくなることが抑制され、分離膜エレメント10が適切に保護される。なお、穴17hを通過する原水の流量は、第二供給口32における原水の流量に比べて圧倒的に少ない。
【0052】
このように、分離膜エレメント10によれば、ろ過システム200が第一モード及び第二モードのいずれで運転される場合でも、分離膜エレメント10を適切に保護できる。
【0053】
複数の分離膜エレメント10のうち第一供給口31に最も近い分離膜エレメント10において、第一シール部材17aがU字状の断面を有するシール部材である場合、第一シール部材17aは液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間を有していなくてもよい。この場合、第一モードにおいて、ほぼ全ての原水が分離膜エレメント10の内部に導かれ、分離膜エレメント10の内部を通過する原水の流速が保たれ、膜面近傍での濃度分極の悪化を抑えることができ、透過水量及び透過水の水質が維持される。その結果、分離膜モジュール100における性能が高く保たれやすい。一方、複数の分離膜エレメント10のうち第二供給口32に最も近い分離膜エレメント10において、第二シール部材17bがU字状の断面を有するシール部材である場合、第二シール部材17bは液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間を有していなくてもよい。この場合、第二モードにおいて、ほぼ全ての原水が分離膜エレメント10の内部に導かれ、分離膜エレメント10の内部を通過する原水の流速が保たれ、膜面近傍での濃度分極の悪化を抑えることができ、透過水量及び透過水の水質が維持される。その結果、分離膜モジュール100における性能が高く保たれやすい。
【0054】
例えば、分離膜モジュール100において、各分離膜エレメント10の第一シール部材17a及び第二シール部材17bがU字状の断面を有するシール部材である場合、各分離膜エレメント10の第一シール部材17a及び第二シール部材17bのいずれか一方のみは、液体が通過可能な穴、スリット、及び隙間を有していなくてもよい。各分離膜エレメント10において、第一シール部材17aは、第二シール部材17bよりも第一供給口31に近い位置に配置され、第二シール部材17bは、第一シール部材17aよりも第二供給口32に近い位置に配置される。この場合、第一モードにおける分離膜モジュール100の性能の低下の度合いと、第二モードにおける分離膜モジュール100の性能の低下の度合いは異なりうる。
【0055】
分離膜エレメント10、分離膜モジュール100、及びろ過システム200は、高いTDS濃度(例えば、質量濃度で30000ppm以上の濃度)を有する原水を処理するのに適している。分離膜エレメント10を用いた分離膜モジュール100の運転圧力は、例えば、5~15MPaである。「運転圧力」とは、分離膜モジュール100の入口近傍において、原水に加えられた圧力を意味する。分離膜モジュール100の入口近傍は、例えば、原水の流れ方向において最も上流側に位置している分離膜エレメント10と第一供給口31又は第二供給口32との間の空間である。
【符号の説明】
【0056】
1 圧力容器
10 分離膜エレメント
11 集水管
12 分離膜
16a 第一端部材
16b 第二端部材
17a 第一シール部材
17b 第二シール部材
17h 穴
16k 端面溝部
31 第一供給口
32 第二供給口
51~53 バルブ
150 制御器
200 ろ過システム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B