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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】試料採取器具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20220720BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01N1/04 G
G01N33/48 G
G01N1/04 H
G01N1/04 V
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018231012
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020094828
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518439103
【氏名又は名称】アニコム先進医療研究所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤任
(72)【発明者】
【氏名】菊地 久士
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
(72)【発明者】
【氏名】古橋 剛
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/024042(WO,A1)
【文献】特開2001-079098(JP,A)
【文献】特表2017-519975(JP,A)
【文献】特開2007-248170(JP,A)
【文献】実開昭64-048672(JP,U)
【文献】特開2003-043030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0083495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の軸部と、
前記軸部の先端部に設けられていて試料を収容する収容部と、
前記軸部の基端部に設けられている把持部とを備え、
前記収容部は、前記軸部の軸線方向にある前記先端部の端面に開口する開口部と、前記開口部から前記軸線方向に深さを有する凹部と、前記軸部の表面に前記軸線方向に延設され、前記軸部の表面と前記凹部とを連通させている溝状のスリットとを備え、
前記軸部の前記先端部の端面は、前記開口部を囲む形状を有し
前記凹部は、前記凹部の内周面の少なくとも一部に前記軸線方向に延びる複数の溝を備えている
試料採取器具。
【請求項2】
前記スリットは、前記収容部の前記軸線方向の長さ以下の長さで延設されているとともに、前記軸部の表面において前記軸線を周回する方向に前記スリットの有する幅が、液体状の試料を前記スリットの前記軸線方向の長さの位置まで吸い上げることのできる幅に設定されている
請求項1に記載の試料採取器具。
【請求項3】
前記軸部の前記収容部が挿通される挿通孔を有し、前記挿通孔に挿通された前記軸部の前記収容部を密閉状態で収納する収納部をさらに備え、
前記収納部は、有底の筒状容器と、前記筒状容器と前記軸部との間に介在して前記筒状容器と前記軸部との間の気密性を確保する管状部材とを備え、
前記管状部材は、前記軸部が前記軸線方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記筒状容器の底部に近い内部開口部と、前記筒状容器の前記底部から離れた外部開口部とを有し、
前記内部開口部は、前記貫通した前記軸部との間に気密性を確保することのできる形状及び大きさの開口を有している
請求項1または2に記載の試料採取器具。
【請求項4】
前記管状部材の前記外部開口部は、前記内部開口部よりも大きい
請求項に記載の試料採取器具。
【請求項5】
前記軸部は、前記把持部の先端部寄りに蓋部を有し、
前記管状部材は、前記外部開口部が前記蓋部で封止される
請求項に記載の試料採取器具。
【請求項6】
前記収容部のスリットは、前記管状部材を貫通した前記軸部において前記筒状容器の内部空間に配置される
請求項3~5のいずれか一項に記載の試料採取器具。
【請求項7】
前記筒状容器の開口部は、前記管状部材との間に気密性を確保することのできる形状及び大きさの開口を有するとともに、前記管状部材に前記軸部が挿通されて前記内部開口部が押し広げられることで、前記管状部材の前記内部開口部の外周が前記筒状容器の筒内面に押し付けられる
請求項3~6のいずれか一項に記載の試料採取器具。
【請求項8】
前記筒状容器は、前記底部と前記筒状容器の内部空間に配置された前記軸部の前記収容部との間に前記内部空間を移動可能な態様で複数のビーズを収容している
請求項3~7のいずれか一項に記載の試料採取器具。
【請求項9】
前記管状部材は、前記外部開口部寄りの外周にフランジ状の嵌合部を有し、
前記嵌合部は、前記筒状容器の開口部を密閉する
請求項3~8のいずれか一項に記載の試料採取器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料採取器具に関する。
【背景技術】
【0002】
検査に必要とされる分量の試料を採取することができる試料採取器具の一例として、試料採取用器具が知られている。
試料採取用器具は、検査等に必要な所定量の試料を簡単に採取できる器具であって、把持部と連結部と採便保持板とからなる採便棒と、管状スクイズ筒とを有する。採便棒は、少なくとも二つの採便保持板の面同士を間隔を有して向かい合わせに配設し、採取すべき試料をこの採便保持板間に配置させる。管状スクイズ筒は、二つの採便保持板を液密状態で密封可能に覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-43030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、試料の検査は、検査に利用する試料の分量が正確であるほど検査結果がより高い精度で得られる傾向にある。
この点、特許文献1に記載の試料採取器具は、所定量の試料を採便保持板の間に保持することができる。しかしながら、二つの採便保持板は、その対向面の間隔に粘度や硬度に多様性のある試料の採取の際、間隔が変動するおそれがあったり、開放している周囲から試料が脱落するおそれがあったり、間隔に試料を均一に押し込むことが容易ではないなど、試料を所定量だけ採取できるようにすることについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定量の試料の採取を容易にすることのできる試料採取器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決する試料採取器具は、棒状の軸部と、前記軸部の先端部に設けられていて試料を収容する収容部と、前記軸部の基端部に設けられている把持部とを備え、前記収容部は、前記軸部の軸線方向にある前記先端部の端面に開口する開口部と、前記開口部から前記軸線方向に深さを有する凹部と、前記軸部の表面に前記軸線方向に延設され、前記軸部の表面と前記凹部とを連通させている溝状のスリットとを備え、前記軸部の前記先端部の端面は、前記開口部を囲む形状を有している。
【0007】
このような構成によれば、粘度や硬度が高い試料を凹部内に押し込んで保持すること、及び、粘度や硬度が低い試料を凹部内に引き上げて保持することが可能である。この際、棒状を有した先端部の表面は、スリットによって1又は複数に区画されて、区画された各部は、軸線方向から見て、曲線状や折れ線状等の囲む形状を有する。そして、軸線方向から見て曲線状等を有した各部が、試料が入る凹部を囲む。結果として、二つの平板の間隙に試料が入る構成と比べて、試料が凹部に入ることによる凹部の変形が抑えられる。結果として、収納部に収納される試料の採取量が、収容部の容量で規定される。また、収容部に採取された試料の量がスリットを通じて確認できるようになる。また、開口部とは別のスリットが排気口となるので小さい開口部からの試料の採取が容易になる。これにより、所定量の試料の採取を容易にすることができる。
【0008】
好ましい構成として、前記スリットは、前記収容部の前記軸線方向の長さ以下の長さで延設されているとともに、前記軸部の表面において前記軸線を周回する方向に前記スリットの有する幅が、液体状の試料を前記スリットの前記軸線方向の長さの位置まで吸い上げることのできる幅に設定されている。
【0009】
このような構成によれば、固形状の試料を採取することができるとともに、液体状の試料を毛細管現象によって規定された量だけ採取することができる。
好ましい構成として、前記凹部は、前記凹部の内周面の少なくとも一部に前記軸線方向に延びる複数の溝を備えている。
【0010】
このような構成によれば、軸線方向に延びる溝によって凹部の内周面と、そこに収容部に採取された試料との間の接触抵抗が増加することから収容部からの試料の脱落が抑制され、採取された試料のより一層の定量化が図られるようになる。
【0011】
好ましい構成として、前記軸部の前記収容部が挿通される挿通孔を有し、前記挿通孔に挿通された前記軸部の前記収容部を密閉状態で収納する収納部をさらに備え、前記収納部は、有底の筒状容器と、前記筒状容器と前記軸部との間に介在して前記筒状容器と前記軸部との間の気密性を確保する管状部材とを備え、前記管状部材は、前記軸部が前記軸線方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記筒状容器の底部に近い内部開口部と、前記筒状容器の前記底部から離れた外部開口部とを有し、前記内部開口部は、前記貫通した前記軸部との間に気密性を確保することのできる形状及び大きさの開口を有している。
【0012】
このような構成によれば、収納部と軸部との間の気密性が、筒状容器と軸部との間に配置される管状部材で確保される。また、軸部が管状部材を外部開口部から内部開口部に向けて挿通されて内部開口部を通過するとき、軸部の側面に付着した試料が内部開口部で除去されるようになることから、軸部が筒状容器の内部に配置させる試料が所定量に調整されるようになる。
【0013】
好ましい構成として、前記管状部材の前記外部開口部は、前記内部開口部よりも大きい。
このような構成によれば、軸部の先端部を外部開口部に挿入しやすくなる。また、外部開口部と内部開口部との間において管状部材と軸部との間に形成される空間に内部開口部で除去された試料を貯留させることができることから、余剰試料の器具からの離脱や飛散を抑制でき、試料採取後の試料採取器具の取り扱いの利便性が向上される。
【0014】
好ましい構成として、前記軸部は、前記把持部の先端部寄りに蓋部を有し、前記管状部材は、前記外部開口部が前記蓋部で封止される。
このような構成によれば、軸部と管状部材との間に貯留された試料が外部へ流出するようなことが抑えられる。
【0015】
好ましい構成として、前記収容部のスリットは、前記管状部材を貫通した前記軸部において前記筒状容器の内部空間に配置される。
このような構成によれば、軸部の外周と、管状部材の内部開口部との間にスリットによる隙間が生じないため、軸部と管状部材との気密性が高く維持される。また、収容部に収容された試料が筒状容器の内部空間に配置されるとともに、流出するおそれが無く、筒状容器の内部空間に所定量の試料を配置することができる。
【0016】
好ましい構成として、前記筒状容器の開口部は、前記管状部材との間に気密性を確保することのできる形状及び大きさの開口を有するとともに、前記管状部材に前記軸部が挿通されて前記内部開口部が押し広げられることで、前記管状部材の前記内部開口部の外周が前記筒状容器の筒内面に押し付けられる。
【0017】
このような構成によれば、筒状容器の内部と管状部材との間に気密性が確保される。また、軸部が管状部材に挿通されることにともなって、軸部、管状部材及び筒状容器の各相互間における密閉性がより高められて、筒状容器の内部空間に軸部が供給した試料が好適に気密保持される。
【0018】
好ましい構成として、前記筒状容器は、前記底部と前記筒状容器の内部空間に配置された前記軸部の前記収容部との間に前記内部空間を移動可能な態様で複数のビーズを収容している。
【0019】
このような構成によれば、複数のビーズが移動可能な態様で内部空間に配置されていることから、複数のビーズを振動させて、筒状容器の内部に配置された試料を拡散させたり、試料を検査用に粉砕することができる。
【0020】
好ましい構成として、前記管状部材は、前記外部開口部寄りの外周にフランジ状の嵌合部を有し、前記嵌合部は、前記筒状容器の開口部を密閉する。
このような構成によれば、筒状容器の開口部と管状部材の嵌合部との密接によって、軸部の収容部が所定量の試料とともに筒状容器の内部空間に密閉保持されるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、所定量の試料の採取を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】試料採取器具の一実施形態を示す正面図。
図2】試料採取器具の断面図。
図3】試料採取器具を構成する各部品の正面図。
図4】試料採取器具を構成する筒状容器の図3の4-4切断線における断面図。
図5】試料採取器具を構成する軸部の図3の5-5切断線における断面図。
図6】試料採取器具の軸部の図3の6-6切断線における断面図。
図7】試料採取器具の軸部の図3の7-7切断線における断面図。
図8】試料採取器具の収容部の一例について、その定量性を測定した図。
図9】試料採取器具の収容部の一例について、その容積に対する定量性を測定した図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図9を参照して、試料採取器具の一実施形態について説明する。なお、この試料採取器具は、動物の便から所定量の試料を採便するために使用される。
図1図3に示すように、試料採取器具10は、有底の筒状容器100と、採便に使用される軸部300と、筒状容器100と軸部300との間に介在して筒状容器100と軸部300との間の気密性を確保する管状部材200とが組み合わされて構成されている。本実施形態では、筒状容器100、管状部材200、及び、軸部300は、組み合わされて、相互に当接する部分は軸線方向に直交する断面形状が円形である。筒状容器100、管状部材200、及び、軸部300は、樹脂材料より構成され、樹脂成形により所定の形状に形成されている。
【0024】
図2に示すように、筒状容器100は、筒状容器100の一方の端部102に底部110を有し、他方に開口部103を有している。筒状容器100は、筒体101の内周面105と底部110とで区画された収納部としての内部空間106を有している。
【0025】
管状部材200は、筒状容器100の開口部103から筒状容器100に差し込まれている。管状部材200は、外周から突出しているフランジ状の嵌合部202に筒状容器100の開口部103が差し込まれる。管状部材200は、管体201の外周面が筒状容器100の内周面105に対向する。管体201の外周面は、少なくとも一部が周状に筒状容器100の内周面105に当接して、筒状容器100の内周面105と管体201の外周面との間を密閉することができるようになっている。
【0026】
また、管状部材200は、軸部300が挿通される挿通孔としての貫通孔204を有している。貫通孔204は、軸線方向において筒状容器100の内部空間106に収容される内部開口部214と、筒状容器100の開口部103よりも外方に突出している外部開口部231とを備えている。貫通孔204には、軸部300が挿通配置される。
【0027】
軸部300は、軸本体303の軸線方向の一方の端部である先端部に試料を収容する収容部304を有し、他方の端部である基端部に操作用のつまみである把持部301を有している。軸部300の収容部304は、筒状容器100の内部空間106に収納される。収容部304は、管状部材200の貫通孔204を外部開口部231から内部開口部214に向けて貫通することで内部空間106に収納される。軸部300は、軸本体303の外周に突出するフランジ状の蓋部302を有しており、収容部304が貫通孔204に挿入されることで、蓋部302が管状部材200の外部開口部231に当接するように管状部材200に差し込まれる。
【0028】
続いて、筒状容器100、管状部材200及び軸部300のそれぞれを説明する。
図2に示すように、筒状容器100は、筒体101において開口部103に近い位置に、嵌合部120及びフランジ104を備えている。フランジ104は、筒体101の外周から外方に周状に突出している。嵌合部120は、開口部103からフランジ104までの間に設けられている。嵌合部120は、筒体101の外周を周回するねじ用の凸ガイド121が設けられている。
【0029】
筒状容器100は、底部110には、内部空間106の内周面105に設けた境界111から先細り形のテーパー面112と、テーパー面112の先端部に皿部113とが設けられている。底部110は、内部空間106の固形物がテーパー面112に沿って皿部113に集積されるようになっている。
【0030】
図3及び図4に示すように、管状部材200は、外径φ21を有する筒状である。管状部材200の外径φ21は、筒状容器100の開口部103に挿入可能な大きさであり、かつ、筒状容器100の内周面105に当接する大きさである。
【0031】
管状部材200は、軸線方向に外部開口部231から順に外筒部203、嵌合部202、管体201、及び内筒先端部211を配置させている。
外筒部203は、外周面230の嵌合部202に近い位置に外周面230を一周する凹みである凹ガイド233を備えている。外筒部203は、外部開口部231と反対側の境界232の先に嵌合部202が設けられている。
【0032】
嵌合部202は、最大外径φ22であり、筒状容器100の開口部103の端面を内周から外周に覆う張出部220と、筒状容器100の開口部103の外周を円周状に覆う周枠部221とを備えている。
【0033】
周枠部221は、筒状容器100の嵌合部120に略平行に対向する内面222を備えている。内面222には、軸線方向を中心に内面222の表面を周回するねじ用の凸ガイド223が設けられている。凸ガイド223は、対向する嵌合部120の凸ガイド121と螺合することができる形状である。軸線方向における内面222の長さL26は、軸線方向における筒状容器100の開口部103からフランジ104までの長さと同じか、短くなっている。よって、嵌合部202の周枠部221を筒状容器100の嵌合部120に螺合させたとき、嵌合部202の張出部220が開口部103の端部に密接することで筒状容器100と管状部材200との間の気密性、密閉性が確保される。
【0034】
嵌合部202の周枠部221は、外表面224に接触抵抗を増加させるための凹凸が設けられている。また、周枠部221は、外表面224の全周が軸線方向に対して所定の角度θ22で傾斜している。角度θ22は、外部開口部231に向かって軸線に近づく傾きを有している。よって、周枠部221は、外部開口部231側の外径φ23よりも、外表面224の内部開口部214側の最大外径φ22の方が大きい。
【0035】
ところで、複数の試料採取器具10は、資料の分析のために適用される機器の一つに遠心分離機がある。試料採取器具10は、遠心分離機の機器に取り付けられるとき、円周上において、筒状容器100の底部110が外周になり、軸部300の把持部301が内周になるように配置される。つまり、このような配置を高い密度で行う場合、複数の試料採取器具10は、把持部301を突き合わせるように配置される。高い密度で配置された試料採取器具10は、器具の中で大きな幅をとる嵌合部202が、隣接する試料採取器具10の嵌合部202に干渉するおそれがある。そこで、嵌合部202は、把持部301に向かう先細り形状とされることで、円周状に配置されるとき、隣接する試料採取器具10の嵌合部202と干渉するおそれが低下されて、試料採取器具10の高密度配置を可能とさせている。例えば、周枠部221の傾きの角度θ22が「6°」であるとすると、嵌合部202は、右側が「6°」、左側が「6°」であり、両側併せて「12°」の傾斜を有することになる。左右ともに例えば「1°」の間隔を確保する余裕を設けるとすれば、嵌合部202は、「14°」の傾斜を有するものになり、円周上に24~25本の試料採取器具10を配置することができる。
【0036】
管状部材200は、外部開口部231と内部開口部214とをそれぞれ同一の外径φ21としている。一方、管状部材200は、内部開口部214の内径φ25が外部開口部231の内径φ27よりも小さい。貫通孔204は、外部開口部231から内部開口部214に向けて順に、第1内周面205、第2内周面206、及び、第3内周面207を有している。
【0037】
第1内周面205は、外部開口部231の内径φ27と同じ大きさの内径を有する。
第3内周面207は、内部開口部214の内径φ25と同じ大きさの内径を有する。
第2内周面206は、第1内周面205と第3内周面207とを繋ぐ内周面であって、第1内周面205の内径φ27である端部212を縮径させて、第3内周面207の内径φ25である端部213に繋ぐテーパー面である。第2内周面206は、軸線方向に対して傾斜角θ21を有している。傾斜角θ21は、軸部300が管状部材200の貫通孔204を好適に挿通できる角度に規定されている。例えば、傾斜角θ21は、軸部300が貫通孔204に引っかかることなく内部開口部214に導かれるとともに、軸部300の外周に付着した余剰試料をそぎ落として貫通孔204内に保持させることのできる角度である。よって、軸線方向に対する端部212から内部開口部214まで長さL21は、内径φ27と内径φ25と傾斜角θ21、及び、第3内周面207の長さによって定まる。傾斜角θ21は、軸線方向に対して、例えば「65°」以下であり、好ましくは「45°」以下であり、より好ましくは、「30°」以下、かつ、「5°」以上である。
【0038】
内部開口部214の内径φ25は、軸部300の軸本体303の外周面が密着して、気密性を確保することができる大きさを有している。内部開口部214は、軸本体303の収容部304に収容されている試料を通過させる一方、収容部304からはみ出した余剰試料は通過させず、管状部材200の貫通孔204に貯留させる。管状部材200は、概略として、外部開口部231から端部212までの区間L23に形成される、軸部300の表面と貫通孔204の内表面との間の空間が、余剰試料を貯留させる空間として確保される。
【0039】
また、管状部材200は、挿通された軸部300の軸本体303からの圧力によって内部開口部214が僅かに拡径される。この拡径によって、内部開口部214と筒状容器100の内周面105との間の気密性や密着性が高められる。
【0040】
このようにして、軸部300の軸本体303と管状部材200の内部開口部214との間の気密性とが確保される。また、管状部材200の内部開口部214と筒状容器100の内周面105との間の気密性が確保される。よって、筒状容器100の内部空間106は、軸本体303の収容部304を収納した状態で筒状容器100の外部に対して気密性を有して区画される。
【0041】
さらに、筒状容器100の開口部103は、管状部材200の嵌合部202に封止されるとともに、管状部材200の外部開口部231は、軸部300の蓋部302に封止されることによって、より一層、筒状容器100の気密性が高められる。
【0042】
また、管状部材200の貫通孔204は、筒状容器100の外部に対する気密性、及び、筒状容器100の内部空間106に対する気密性がそれぞれ確保される。
よって、筒状容器100の内部空間106に配置された試料は、内部空間106からの漏えい等が抑制されて、隔離された状態とされる。また、管状部材200の貫通孔204に配置された余剰試料は、筒状容器100の外部への漏えいとともに、内部空間106への漏えいが抑制されて、隔離された状態とされる。
【0043】
図3及び図5に示すように、軸部300は、筒状容器100の外部に配置される基端部から筒状容器100の内部に配置される先端部に向かって順に、把持部301、蓋部302、軸本体303、及び、収容部304を備えている。
【0044】
軸本体303は、樹脂製の円柱であって大きさとして直径φ31を有している。
図3図5及び図6に示すように、把持部301は、軸線方向において軸本体303の基端側に扁平形状に成形されている。把持部301は、軸線方向に直交する一方向を幅方向として幅L40を有し、幅方向に直交する厚さ方向に厚さL44を有している。
【0045】
把持部301は、操作性や把持性の向上を図るため、幅方向において中央部312の厚みが、幅方向において左右端の各側辺部313よりも相対的に薄い。つまり、中央部312は、軸線方向に延びる幅L41の凹部であり、側辺部313は、中央部312に沿って軸線方向に延びる幅L42の凸部である。幅L40は、「幅L41+幅L42×2」に等しい。また、中央部312は、厚さL43であり、側辺部313は、厚さL44であり、「厚さL43<厚さL44」の関係を有している。把持部301は、中央部312が軸線方向に延設されることで、操作のために挟み込む把持片や人の指等に対して接触抵抗を増大させたり、操作中に軸線方向左右へ振れることを抑制させたりしている。
【0046】
図5及び図7に示すように、蓋部302は、軸線方向において把持部301と軸本体303との間に設けられており、軸本体303の外周から周状に突出している。蓋部302は、軸本体303から順に、軸本体303を拡径させた拡径部324と、周状に突出し、管状部材200の外部開口部231の端面を覆う張出部326と、管状部材200の外部開口部231の外周を覆う周枠部322とを備えている。
【0047】
拡径部324は、管状部材200の外部開口部231の内径φ27に嵌合する大きさを有している。拡径部324は、軸本体303の直径φ31を外部開口部231の内径φ27に内接する大きさに拡径された部分である。拡径部324は、周内側に肉抜きされた凹部325が設けられている。拡径部324は、軸本体303をそのまま太くすると厚肉となって成形精度が低下するため、把持部301と拡径部324とに不要とされる樹脂が凹部325により減らされて樹脂厚さが薄くされている。
【0048】
張出部326は、拡径部324から外方に突出され、管状部材200の外部開口部231の端面に当接することができる。
周枠部322は、円筒形状であり、管状部材200の外部開口部231を有する周側面に対向する内面327を備えている。周枠部322は、内面327の先端に凸ガイド328が設けられている。凸ガイド328は、対向する外筒部203の凹ガイド233と嵌合する形状であり、凹ガイド233に対して嵌合可能になっている。内面327の軸線方向の直径L39は、軸線方向における管状部材200の外部開口部231から嵌合部202までの長さと同じ、又は、短くなっている。よって、蓋部302を管状部材200に嵌合させたとき、凸ガイド328が凹ガイド233に嵌合しつつ、張出部326が外部開口部231の端部に当接して管状部材200と軸部300の軸本体303との間の空間の気密性、密閉性が確保される。
【0049】
周枠部322は、外径φ33が嵌合部202の最大外径φ22よりも小さい。周枠部322は、外周面に滑り止めの凹凸を有しているとともに、軸線方向において把持部301の方向に縮径するように傾斜θ32(図3参照)を有している。例えば、傾斜θ32は、3°前後である。
【0050】
図3に示すように、収容部304は、軸部300の先端部分にあって、試料を採取すること、及び、採取した試料を収容できる部分である。収容部304は、概略、軸本体303が延長された形状をしている。詳述すると、収容部304の直径は、先端に向かうにつれて傾斜θ33で縮径され、軸線に沿う中心には、空間を形成する凹部344が設けられ、収容部304の側面(軸部300の表面)には、凹部344に連通されるスリット343が軸線方向に延設されている。傾斜θ33は、例えば、「1°」であって、軸線方向における径変化は小さいが、軸部300を管状部材200に挿通させるとき、引っ掛かり等の操作性の劣化を抑制させることができる。また、スリット343は、収容部304に採取された試料の量を確認できるようにする。また、スリット343は、試料の採取の採、開口部341に対して別の排気口となるので開口部341からの試料の採取を容易にする。
【0051】
収容部304は、軸線方向における先端にある先端面340に開口部341を備える。先端面340は、軸本体303との直径φ31よりも小さい直径L35を有しており、開口部341は、直径L35よりも小さい直径L39を有している。収容部304は、開口部341から軸線方向に深さを有する穴である凹部344を備える。凹部344は、軸線方向に開口部341から軸本体303の先端側330までのスリット深さL34を有する。例えば、凹部344は、「直径L39の円形の面積×スリット深さL34」の容積を有する。
【0052】
また、収容部304は、外周から凹部344に連通する溝状のスリット343を軸線方向にスリット深さL34で備えている。換言すると、収容部304は、外周の一部を構成し、周方向がスリット343で区画された複数の外周部342を備える。
【0053】
外周部342は、軸線方向から見ると、外周円弧の一部を外側とし、凹部344の内周側面の一部を内側とする円弧状からなる曲線状を有している。区画された各外周部342は、軸線方向から見て、円弧状の囲む形状を有する。よって、軸線方向から見て曲線状を有した各外周部342が、試料が入る凹部344を囲む。また、円弧状が外周部342の強度を高めることから、収容部304の強度向上も図られる。
【0054】
外周部342は、外側と内側との間に厚さL37を有する。厚さL37は、試料の採取において剛性を維持できる厚さとされる。隣接する2つの外周部342は、軸線方向の全部がスリット343で区画されている。スリット343は、所定のスリット幅L36を有している。例えば、スリット343は、「スリット幅L36×厚さL37×スリット深さL34」の容積を有する。
【0055】
換言すると、収容部304は、軸線方向に直交する断面方向において、凹部344は複数の外周部342に囲われている。凹部344は、中央の空間の周囲が複数の外周部342によって、他方の外周部342に向かって延びる端辺部を含み、抱え込まれるように区画されることで、高い精度で断面積が規定される。複数の外周部342は、固形状の試料であれば、円弧に試料を切り取って凹部344に収容するため、試料の採取量が高い精度で所定量とされる。また、複数の外周部342は、円弧の内周に試料を配置させるため、凹部344に配置される試料が好適に保持される。なお、隣接する外周部342の端辺部の間がスリット343となっているので、スリット343の軸線方向の幅は外周部342の端辺部の周方向へ伸ばす長さによって任意に変更することが容易である。
【0056】
凹部344は、内周面に軸線方向に延設される複数の溝345を備えている。溝345は、凹部344の内周面に対して深さL38で断面形状が半円状の溝として形成されている。溝345は、凹部344の内周面の試料との摩擦抵抗を高めることで凹部344の試料保持力を高めることによって固形状の試料が好適に維持されるようにする。また、溝345は、凹部344の内周面の試料の吸い上げ力を高めることによって液状の試料が好適維持されるようにする。
【0057】
軸本体303は、凹部344の底面となる軸本体303の先端側330に先端凹部331が凹設されている。先端凹部331は、試料採取器具10が組み立てられたとき、軸線方向における少なくとも一部が、管状部材200の内部開口部214に対応する位置に設けられている。軸本体303の直径φ31と内部開口部214とを密着させるためには高い寸法精度を要するが、直径φ31が相対的に大きくなる方向に多少の誤差が生じたとしても、先端凹部331によって直径φ31を縮径変形させることができる。これにより、軸本体303と内部開口部214との気密性がより好適に維持されるようになる。
【0058】
また、先端凹部331は、軸線方向に深さL33を有し、断面方向に直径φ32を有している。先端凹部331は、軸本体303に薄肉である薄肉部332を形成することにより先端凹部331に対応する薄肉部332における直径φ31の精度を高める。軸本体303は、樹脂形成されているため、肉厚が厚くなるほど冷却時の収縮等で寸法精度が低下するおそれがある。よって、先端凹部331を形成して薄肉とする薄肉部332を設けることによって寸法精度の低下が抑制される。
【0059】
また、先端凹部331は、その容積に応じて、収容部304に採取される試料を微調整することができる。
図8及び図9を参照して、収容部304に試料を充填させることができる条件について説明する。図8は、凹部344に液体状の試料を充填することができるスリットの条件を示している。図9は、収容部304に収容できる試料の所定量と、所定量の液体状の試料が収容されるか否かを示している。なお、図8及び図9ではいずれも、収容部304の凹部344は、直径L39が「3mm」であるときの例である。
【0060】
図8は、スリット幅L36が「0.5」,「0.7」,「1」,「1.2」,「1.5」(単位:mm)のいずれかであるとき、スリット深さL34が「5」,「10」,「20」及び「30」(単位:mm)であるときに収容部304に液体状の試料が充填されるか否かを示す。
【0061】
まず、図8のリスト20に示すように、収容部304には、スリット幅L36が「0.5」のとき、スリット深さL34が「5」,「10」,「20」及び「30」で液体状の試料が充填される(OK判定)。また、収容部304には、スリット幅L36が「0.7」のとき、スリット深さL34が「5」,「10」及び「20」で液体状の試料が充填される(OK判定)一方、スリット深さが「30」で液体状の試料が充填されない(NG判定)。また、収容部304には、スリット幅L36が「1」又は「1.2」のとき、スリット深さL34が「5」及び「10」で液体状の試料が充填される(OK判定)一方、「20」及び「30」で液体状の試料が充填されない(NG判定)。また、収容部304には、スリット幅L36が「1.5」のとき、スリット深さL34が「5」で液体状の試料が充填される(OK判定)一方、「10」,「20」及び「30」で液体状の試料が充填されない(NG判定)。
【0062】
図8のグラフ21は、リスト20に基づいて作成した図であり、収容部304に液体状の試料が充填される(OK判定)ときのスリット幅の最大値と、スリット深さの最大値とをプロットして折れ線G20を得た。折れ線G20に対して、近似曲線G21が得られる。ところで、スリット343による毛細管現象によって収容部304に液体状の試料が充填されると考えられる。よって、スリット343の幅が小さいほど、スリット深さL34が大きくなるスリット343の高い位置まで、試料が収容部304に充填されるようになることが、図8のリスト20やグラフ21に示されている。例えば、近似曲線G21は、スリット幅L36とスリット深さL34とが反比例のような相関関係を有していることを示している。なお、リスト20に基づくと、スリット幅L36とスリット深さL34との関係が、式(1)で示される。
【0063】
スリット幅=(-38.69×スリット深さ^3)+(135.714×スリット深さ^2)+(-170.68×スリット深さ)+86.25…(1)
グラフ21の近似曲線G21は、左下の部分が収容部304に試料が充填される領域(OK領域)である。つまり、収容部304は、近似曲線G21の左下に属するようにスリット幅L36とスリット深さL34とが組み合わされることで、収容部304の所定量に対して高い容量精度で試料を採取することができる。一方、グラフ21の近似曲線G21は、右上の部分が収容部304に試料が充填されない領域(NG領域)である。このため、収容部304は、スリット幅L36とスリット深さL34とが組み合わせが、NG領域になると、収容部304の所定量に対して試料の採取量の精度が低下する。なお、近似曲線G21は、試料の種類や粘度等によって、曲線の傾きや、X値、Y値等が相違する。このため、近似曲線G21は、試料の種類等に応じて、実験的、理論的、又は、経験的に求めることで、収容部304の容量に対して液体状の試料が充填されるように収容部304にスリット幅L36とスリット深さL34とを設けることができるようになる。例えば、収容部304における試料の充填がOK領域でなされるように、スリット343のスリット幅L36は、液体状の試料をスリット343のスリット深さL34(軸線方向の長さ)の位置まで吸い上げることのできる幅に設定されている。
【0064】
図9は、スリット幅L36が「0.3」,「0.5」,「0.7」,「1」,「1.2」,「1.5」(単位:mm)のいずれかであるとき、スリット深さL34が「1」,「5」,「10」,「15」,「20」,「25」及び「30」(単位:mm)であるとき収容部304に充填することができる液体状の試料の量を示す。リスト30は、白抜きの範囲が収容部304に液体状の試料が充填される領域であり、編み掛けの範囲が収容部304に液体状の試料が充填されない領域を示す。リスト30によれば、収容部304に液体状の試料を採取することのできる量の精度の高い範囲が白抜きの範囲により規定される。つまり、収容部304に、採取量に適したスリット幅L36とスリット深さL34とを設けることができるようになる。
【0065】
リスト30によれば、収容部304は、スリット幅L36が「0.3」、及び、スリット深さL34が「30」のとき、採取量の最大値を「238.8」立方ミリメートルとすることができる。また、収容部304は、スリット幅L36が「0.5」、及び、スリット深さL34が「25」のとき、採取量の最大値を「204」立方ミリメートルとすることができる。また、収容部304は、スリット幅L36が「0.7」、及び、スリット深さL34が「20」のとき、採取量の最大値を「167.2」立方ミリメートルとすることができる。また、収容部304は、スリット幅L36が「1」、及び、スリット深さL34が「10」のとき、採取量の最大値を「86.6」立方ミリメートルとすることができる。また、収容部304は、スリット幅L36が「1.2」、及び、スリット深さL34が「10」のとき、採取量の最大値を「88.6」立方ミリメートルとすることができる。また、収容部304は、スリット幅L36が「1.5」、及び、スリット深さL34が「5」のとき、採取量の最大値を「45.8」立方ミリメートルとすることができる。
【0066】
なお、リスト20やリスト30は、試料が常温の水であることきに得られる結果の一例を示すものである。試料が水以外の液体状であったとしても、当該試料において相対的に水と同様の傾向が結果として得られる。
【0067】
本実施形態の効果について説明する。
(1)粘度や硬度が高い試料を凹部344内に押し込んで保持すること、及び、粘度や硬度が低い試料を凹部344内に引き上げて保持することが可能である。この際、棒状を有した先端部の表面(先端面340)は、スリット343によって複数に区画されて、区画された各外周部342は、軸線方向から見て、弧状や折れ線状等の囲む形状を有する。そして、軸線方向から見て曲線状を有した各外周部342が、試料が入る凹部344を囲む。結果として、二つの平板の間隙に試料が入る構成と比べて、試料が凹部344に入ることによる凹部344の変形が抑えられる。結果として、内部空間106に収納される試料の採取量が、収容部304の容量で規定される。また、収容部304に採取された試料の量がスリット343を通じて確認できるようになる。また、開口部341とは別のスリット343が排気口となるので小さい開口部341からの試料の採取が容易になる。これにより、所定量の試料の採取が容易になる。
【0068】
(2)スリット343の幅が、液体状の試料をスリット343の軸線方向の長さの位置まで吸い上げることのできる幅に設定されているので、固形状の試料の採取することができるとともに、液体状の試料についても毛細管現象で規定された量を採取することができる。
【0069】
(3)凹部344を軸線方向に延びる溝345によって凹部344の内周面を含む収容部304と、そこに採取された試料との間の接触抵抗が増加することから収容部304からの試料の脱落が抑制され、採取された試料のより一層の定量化が図られるようになる。
【0070】
(4)内部空間106と軸部300との間の気密性が、筒状容器100と軸部300との間に配置される管状部材200で確保される。また、軸部300が管状部材200を外部開口部231から内部開口部214に向けて挿通されて内部開口部214を通過するとき、軸部300の側面に付着した試料が内部開口部214で除去されるようになることから、軸部300が筒状容器100の内部に配置させる試料が所定量に調整されるようになる。
【0071】
(5)軸部300の先端部を外部開口部231に挿入しやすくなる。また、外部開口部231と内部開口部214との間において管状部材200と軸部300との間に形成される空間に内部開口部214で除去された余剰試料を貯留させることができることから、余剰試料の器具からの離脱や飛散を抑制でき、試料採取後の試料採取器具10の取り扱いの利便性が向上される。
【0072】
(6)蓋部302が管状部材200の外部開口部231を封止するので、軸部300と管状部材200との間に貯留された試料が外部へ流出することが抑えられる。
(7)軸部300の外周と、管状部材200の内部開口部214との間にスリット343による隙間が生じないため、軸部300と管状部材200との気密性が高く維持される。また、収容部304に収容された試料が筒状容器100の内部空間106に配置されるとともに、流出するおそれが無く、筒状容器100の内部空間106に所定量の試料を配置することができる。
【0073】
(8)筒状容器100の内部と管状部材200との間に気密性が確保される。また、軸部300が管状部材200に挿通されることにともなって、軸部300、管状部材200及び筒状容器100の各相互間における密閉性がより高められて、筒状容器100の内部空間106に軸部300が供給した試料が好適に気密保持される。
【0074】
(9)筒状容器100の開口部103と管状部材200の嵌合部202との密接によって、軸部300の収容部304が所定量の試料とともに筒状容器100の内部空間106に密閉保持されるようになる。
【0075】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、軸本体303に先端凹部331が設けられる場合について例示したがこれに限らず、軸本体303の先端側330の直径が維持されているのであれば、先端凹部が設けられなくてもよい。
【0076】
・上記実施形態では、凹部344の内周面に溝345が形成されている場合について例示したが、これに限らず、試料が保持されるのであれば、凹部の内周面に溝が形成されていなくてもよい。または、凹部の内周面に軸線方向に延びる凸部を設けて、摩擦抵抗や吸い上げ力を高めてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、凹部344の内周面には軸線方向に溝345が形成されている場合について例示したが、これに限らず、溝を軸線方向に交差する方向に設けて、摩擦抵抗や吸い上げ力が高められてもよい。
【0078】
・筒状容器100は、底部110と内部空間106に配置された軸部300の収容部304との間に内部空間106を移動可能な態様で複数のビーズを収容していてもよい。ビーズは、試料採取器具10に振動が加えられることで、収容部304に収容されている試料を分散させたり、試料を粉砕したりする。よって、収容部304の先端面340と筒状容器100の底部110との間には、必要な量のビーズを配置可能である距離L11(図2参照)が設けられている。
【0079】
これにより、複数のビーズが移動可能な態様で内部空間106に配置されていることから、複数のビーズを振動させて、筒状容器100の内部に配置された試料を拡散させたり、試料を検査用に粉砕することができる。
【0080】
・スリット343が、先端面340から軸本体303の先端側330までの長さを有している場合について例示した。しかしこれに限らず、スリットは、先端面から軸本体の先端側までの間の一部に設けられていてもよい。また、先端面から軸本体の先端側までを結ぶ一つの直線上の複数箇所に設けられていてもよい。例えば、先端面にはスリットを設けずに円形とした場合、固形物の試料の採取面積を先端面の円形の大きさで規定することができるようになる。これにより、軸部において収容部におけるスリットの配置の自由度の向上が図られる。また、採取量の定量化の向上、試料の脱落抑止、収容部の強度向上も図られるようになる。
【0081】
・上記実施形態ではスリット343が複数である場合について例示したが、これに限らず、スリットは1つでもよい。スリットが1つであっても、収納された試料の量が確認でき、試料採取時の排気口にもなるため、収容部に試料を採取することが容易になる。
【0082】
・上記実施形態では、筒状容器100、管状部材200、及び、軸部300は組み合わされて、相互に当接する部分は軸線方向に直交する断面形状が円形である場合について例示した。しかしこれに限らず、組み合わされて、相互に当接することができるのであれば、相互に当接する部分は、断面形状が、楕円形や、角を曲線とする矩形等の多角形であってもよい。
【0083】
・上記実施形態では、試料が動物の便である場合について例示したが、動物の便は水分量が相対的に少ない固形状であっても、多少柔らかいが固形状であっても、相対的に液体が多く液体に固形物が含まれる態様であってもよい。
【0084】
・上記実施形態では、試料が動物の便である場合について例示したが、これに限らず、試料は、人の便であってもよい。
・上記実施形態では、試料が便である場合について例示したが、これに限らず、試料は、水分と固形物との混じったもの、例えば、食品、植物、土壌等であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…試料採取器具、20…リスト、21…グラフ、30…リスト、100…筒状容器、101…筒体、102…端部、103…開口部、104…フランジ、105…内周面、106…内部空間、110…底部、111…境界、112…テーパー面、113…皿部、120…嵌合部、121…凸ガイド、200…管状部材、201…管体、202…嵌合部、203…外筒部、204…貫通孔、205…第1内周面、206…第2内周面、207…第3内周面、211…内筒先端部、212,213…端部、214…内部開口部、220…張出部、221…周枠部、222…内面、223…凸ガイド、224…外表面、230…外周面、231…外部開口部、232…境界、233…凹ガイド、300…軸部、301…把持部、302…蓋部、303…軸本体、304…収容部、312…中央部、313…側辺部、322…周枠部、324…拡径部、325…凹部、326…張出部、327…内面、328…凸ガイド、330…先端側、331…先端凹部、332…薄肉部、340…先端面、341…開口部、342…外周部、343…スリット、344…凹部、345…溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9