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  • 特許-釣竿及び釣竿用のグリップ部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】釣竿及び釣竿用のグリップ部材
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/08 20060101AFI20220720BHJP
   A01K 87/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A01K87/08 A
A01K87/00 620Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018232385
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020092641
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】辰己 卓司
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130084(JP,A)
【文献】特開2011-092177(JP,A)
【文献】特開2010-104358(JP,A)
【文献】特開2001-299155(JP,A)
【文献】特開2007-300841(JP,A)
【文献】特開2014-097198(JP,A)
【文献】特開2006-100421(JP,A)
【文献】特開2002-112430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 - 87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールシートよりも竿尻側にグリップ部を備え、該グリップ部は、電動リールの電源コードが入り込む凹溝を有し、該凹溝の底面は、フラット面、又は、周方向に沿って外側凸の湾曲面である、釣竿。
【請求項2】
グリップ部は、電源コードを凹溝に保持するためのコード保持具を備えている請求項1記載の釣竿。
【請求項3】
竿本体におけるリールシートよりも竿尻側の位置に装着されるグリップ部材であって、
外周面に、電動リールの電源コードが入り込む凹溝を有し、該凹溝の底面は、フラット面、又は、周方向に沿って外側凸の湾曲面である、釣竿用のグリップ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿と釣竿用のグリップ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿のリールシートに装着された電動リールと外部電源との間には、電源コードが接続される。電源コードを介して外部電源から電動リールに給電される。この電源コードが釣りの邪魔になることがある。この問題に対して、下記特許文献1では、竿本体の内部に中間コードを配備した構成が提案されている。該釣竿では、電動リールにリール接続コードが接続され、竿本体の側孔を介してリール接続コードの端部が中間コードに接続される。そして、竿本体の竿尻部において中間コードに電源コードが接続される。このように竿本体の内部に中間コードを備えることにより、電動リールから電源コードを離すことができる。しかしながら、竿本体の内部に中間コードを備えるため、中間コードが腐食しやすいという問題がある。
【0003】
一方、電源コードを竿本体の外周面に沿わせて例えば帯状のバンド等によって電源コードを竿本体の外周面に保持することが考えられる。その場合、電源コードの安定性を高めるために、竿本体のグリップ部の外周面に溝を形成しておき、その溝に電源コードを嵌め込むことが考えられる。しかしながら、溝に汚れや塩等が溜まりやすく、その汚れ等を溝から除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-300841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電動リールの電源コードが邪魔になりにくく、しかも、メンテナンスが容易な釣竿と釣竿用のグリップ部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る釣竿は、リールシートよりも竿尻側にグリップ部を備え、該グリップ部は、電動リールの電源コードが入り込む凹溝を有し、該凹溝の底面は、フラット面、又は、周方向に沿って外側凸の湾曲面である。
【0007】
該釣竿にあっては、グリップに凹溝が形成されているため、その凹溝に電源コードを入れることができる。そして、凹溝の底面がフラット面又は周方向に沿って外側凸の湾曲面となっているため、凹溝の底面が周方向に凹状の湾曲面である場合に比して、凹溝の底面に汚れが溜まりにくく、また、凹溝の底面に汚れが付着した場合であってもその汚れを簡単に洗い流すことができる。
【0008】
特に、グリップ部は、電源コードを凹溝に保持するためのコード保持具を備えていることが好ましい。コード保持具によって電源コードを安定して保持できる。釣り人は、釣竿とは別にゴムベルト等を携帯しなくてもよく、釣竿のコード保持具によって電源コードグリップ部に繋ぎ止めておくことができる。
【0009】
また、本発明に係る釣竿用のグリップ部材は、竿本体におけるリールシートよりも竿尻側の位置に装着されるグリップ部材であって、外周面に、電動リールの電源コードが入り込む凹溝を有し、該凹溝の底面は、フラット面、又は、周方向に沿って外側凸の湾曲面である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、底面がフラット面又は周方向に沿って外側凸の湾曲面である凹溝を釣竿のグリップ部又はグリップ部材に設けることにより、電動リールの電源コードが邪魔になりにくく、メンテナンスも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における釣竿の要部を示す斜視図。
図2】(a)及び(b)は同釣竿の断面図。
図3】本発明の他の実施形態における釣竿の断面図。
図4】電動リールの電源コードの要部を示す正面図。
図5】(a)は図4のA-A断面図、(b)は図4のB-B断面図。
図6】同電動リールの電源コードを図1の釣竿に装着した状態を示す要部断面図。
図7】(a)は電動リールの電源コードの要部を示す正面図、(b)は(a)のC-C断面図。
図8】電動リールの電源コードの要部を示す正面図。
図9】(a)は電動リールの電源コードの要部を示す正面図、(b)は(a)のD-D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿とそれに使用されている釣竿用のグリップ部材について図1及び図2を参酌しつつ説明する。尚、竿先側を前側と、竿尻側を後側として以下説明する。図1に示すように、本実施形態の釣竿は、各種のリールを装着するためのリールシート2を備えている。リールシート2は、釣竿の後端部(竿尻部)から所定長さ前側に離間した位置に備えられている。このリールシート2には図1のように電動リール3を装着することができる。電動リール3は、釣竿の上側に位置する。電動リール3は、電源コード5によって外部電源4に接続される。釣竿は、リールシート2の後側にグリップ部6を備えている。グリップ部6は、釣竿の後端部まで伸びている。グリップ部6は、釣り人が釣竿を持つ際に把持する部分である。
【0013】
釣竿は、ブランク1(竿本体)を備えている。ブランク1は例えば筒状、即ち中空状であるが、中実状であってもよい。ブランク1は例えばカーボン繊維等を強化繊維とするプリプレグにより形成される。本実施形態においては図2(a)のようにブランク1は中空状である。尚、釣竿はワンピース構造であってもよいし、複数の竿体が継ぎ合わせられた構造であってもよい。複数の竿体が継ぎ合わせられる場合には、元竿がリールシート2を備える。リールシート2はブランク1に取り付け固定されている。
【0014】
グリップ部6は、ブランク1とは別体構成のグリップ部材7により構成されている。グリップ部材7は、ブランク1に被せられるようにしてブランク1に装着されている。グリップ部材7は、両端開口の筒状であったり、前端開口で後端閉口の筒状であったりし、そのグリップ部材7の内側にブランク1が挿入されて、ブランク1の外周面にグリップ部材7が接着により構成される。グリップ部材7は各種のグリップ素材から構成されている。グリップ素材としては例えば発泡EVAやコルク等である。
【0015】
グリップ部6の外周面には凹溝10が形成されている。凹溝10は径方向外側に向けて開口している。凹溝10の本数や配置等は任意である。本実施形態では、凹溝10は一本形成されており、凹溝10は釣竿の中心線方向に沿って直線状に延びている。図1のように、電動リール3が位置する向きを上向きとしたとき、グリップ部6の上部に凹溝10が位置することが好ましいが、例えば、グリップ部6の左右の側部に凹溝10が位置していてもよい。また、凹溝10は釣竿の中心線方向に沿っているものに限らず、例えば釣竿の中心線方向に対して傾斜していてもよく、また、湾曲しながら延びているものであってもよい。凹溝10は、リールシート2の近傍位置からグリップ部6の後端部近傍位置まで延びている。凹溝10がグリップ部6の後端部まで達していてその後端部において後側に開口していてもよい。
【0016】
凹溝10の断面形状を図2に示している。凹溝10は浅溝である。凹溝10の深さTは、凹溝10の幅Wよりも小さい。凹溝10の深さTは、凹溝10の幅Wに対して1/2以下であり、好ましくは、1/3~1/8である。凹溝10はその全長に亘って略一定の深さT、幅Wであってよい。凹溝10の底面10aは本実施形態では周方向に沿って外側凸に湾曲した湾曲面となっている。底面10aの曲率は任意であるが、グリップ部6の外周面と相似した形状であってよく、グリップ部6の外周面と同軸の断面円弧状とすることができる。凹溝10の側面10bは底面10aに対して90度以上の角度で立ち上がっていることが好ましい。
【0017】
釣竿は、電源コード5を凹溝10に保持するためのコード保持具20を備えていることが好ましい。コード保持具20は、グリップ部6に備えられている。コード保持具20は、無端環状のものであってもよいが、本実施形態では、図1及び図2(a)のように、所定長さを有する帯状である。コード保持具20は、一端部20aがグリップ部6に固定され、他端部20bがグリップ部6に着脱可能に取り付けられる構成となっている。コード保持具20は、周方向に延びている。コード保持具20の長さは任意であるが、例えば、グリップ部6の略半周分の長さとすることができる。コード保持具20は、一個のみ備えられていてもよいが、複数個備えられていることが好ましい。図1では、二個のコード保持具20を備えている形態を図示している。このように複数個のコード保持具20を備える場合には、互いに前後に間隔をあけて配置されることが好ましい。
【0018】
コード保持具20の一端部20aをグリップ部6に固定する方法は任意であって接着により固定してもよいし、コード保持具20の一端部20aをグリップ部6の係止孔8に嵌合により挿入固定してもよい。コード保持具20の一端部20aはグリップ部6に取り外し不能に固定されていてもよいが、取り外し可能に固定されていてもよく、コード保持具20は交換可能であってもよい。コード保持具20の他端部20bをグリップ部6の外周面に着脱可能とする構成も任意であるが、例えば、面ファスナー21,22を用いることができる。その他、面ファスナー21,22に代えて、ドットボタン等を使用してもよい。
【0019】
コード保持具20の他端部20bをグリップ部6に取り付けることにより、コード保持具20で電源コード5を外側から内側に向けて押さえ付けることができ、電源コード5を凹溝10内に保持できる。即ち、電源コード5をグリップ部6に沿って引き延ばすことができ、グリップ部6に当接した状態とすることができる。一方、コード保持具20の他端部20bをグリップ部6から取り外すことにより、電源コード5をグリップ部6の凹溝10から開放することができ、電源コード5をフリー状態とすることができる。即ち、電源コード5をグリップ部6から離間させることができる。コード保持具20は、その長手方向に伸縮性を有していることも好ましく、例えばゴム製とすることができる。
【0020】
以上のように構成された釣竿にあっては、グリップ部6に凹溝10が形成されているので、その凹溝10に電源コード5を入れることができる。そのため、電源コード5がグリップ部6に沿って延びていて邪魔になりにくい。しかも、コード保持具20によって電源コード5を凹溝10にしっかりと保持することができる。そして、コード保持具20の他端部20bがグリップ部6に対して着脱可能に構成されているので、簡単に電源コード5を保持することができると共に、簡単に電源コード5をフリー状態とすることもできる。しかも、片手でコード保持具20の他端部20bの着脱操作を行うことができる。電動リール3が図1のように右ハンドル仕様の場合には、コード保持具20の右側の端部を着脱可能に構成することが好ましく、右手でコード保持具20の右端部を着脱操作できる。電動リール3が逆に左ハンドル仕様の場合には、コード保持具20の左側の端部を着脱可能に構成することが好ましく、左手でコード保持具20の左端部を着脱操作できる。即ち、釣竿を一方の手で把持しつつ、電動リール3のハンドルを持つ他方の手でコード保持具20の端部を容易に着脱できることが好ましい。また、グリップ部6にコード保持具20を備えているので、別途のゴムベルト等を携帯する必要がなく、また、コード保持具20の紛失も防止できる。電動リール3を使用しない場合であっても、コード保持具20の他端部20bをグリップ部6に取り付けておけばコード保持具20は邪魔にならない。
【0021】
また、凹溝10が浅溝であって、その底面10aが外側凸の湾曲面であるので、凹溝10の底面10aに汚れが溜まりにくく、また汚れが付着したとしても容易に洗い流すことができる。従って、メンテナンス性に優れている。
【0022】
尚、本実施形態では、凹溝10の底面10aが周方向に沿って外側凸に湾曲した湾曲面であったが、図3のように凹溝10の底面10aが周方向に沿って湾曲していないフラットなフラット面であってもよい。このように凹溝10の底面10aがフラット面であっても底面10aに汚れが付着しにくく、また汚れの除去も容易である。
【0023】
また、電源コード5は断面円形であるが、図4図6のように、その一部に偏平部31を備えていることも好ましい。即ち、電源コード5は、断面円形状の主部30と、断面非円形状の偏平部31とを備えている。偏平部31の長さは任意であるが、凹溝10の長さ以上であることが好ましい。偏平部31の幅P3は、主部30の直径P1よりも大きい。偏平部31の厚みP2は、主部30の直径P1よりも小さい。但し、偏平部31の幅P3が主部30の直径P1と略同じであってもよいし、偏平部31の厚みP2が主部30の直径P1と略同じであってもよい。偏平部31の幅P3は、図6のように凹溝10の幅W以下であることが好ましい。偏平部31の厚みP2は凹溝10の深さT以下であってもよいし、図6のように凹溝10の深さTを超えるものであってもよい。
【0024】
このように電源コード5が少なくとも一部に偏平部31を備えていると、その偏平部31を凹溝10に入れることによって、より一層電源コード5と凹溝10との密着性が高まり、電源コード5が安定する。また、グリップ部6の外周面から電源コード5が突出する量を抑制することができるため、グリップ部6を把持する際に電源コード5がより一層邪魔にならない。また、電源コード5が局部的に偏平部31を備えていると、電源コード5自体が絡みにくくなり、仮に絡んだとしても容易にほぐすことができる。但し、電源コード5の全長が偏平部31であってもよい。即ち、電源コード5が断面円形の主部30を備えずに偏平部31のみの構成であってもよい。
【0025】
また、図7のように、電源コード5は断面円形であって、その断面円形の電源コード5に所定長さのアタッチメント40を取り付けることによって部分的に偏平部31を設けるようにしてもよい。アタッチメント40の構成は任意であるが、例えば、図7(b)のように、上面40aに左右一対の保持片41が突設されている構成とすることができる。左右一対の保持片41の間に電源コード5を挟み込むことができ、これにより電源コード5にアタッチメント40を後付けで取り付けることができる。アタッチメント40の長さは凹溝10の長さ程度とすることができる。尚、グリップ部6の凹溝10の底面10aが図2(b)のように外側凸の湾曲面である場合には、それに対応してアタッチメント40の下面40bを上面40a側に向けて凹んだ湾曲面とすることが好ましい。また、グリップ部6の凹溝10の底面10aが図3のようにフラット面である場合には、それに対応してアタッチメント40の下面40bもフラット面とすることが好ましい。このようにアタッチメント40の下面40bの形状は凹溝10の底面10aに対応した形状とすることが好ましい。また、電源コード5に部分的にアタッチメント40を取り付けることによっても、電源コード5が絡みにくくなる。
【0026】
また、図8のように電源コード5の外側に部分的にパイプ50を装着してもよい。このように電源コード5に所定長さのパイプ50を装着することで、電源コード5に部分的に張りを持たせることができ、電源コード5の絡みを防止できる。尚、パイプ50を凹溝10に設置することが好ましい。
【0027】
更に、図9のように電源コード5の内部に部分的にパイプ51を備えるようにしてもよい。電源コード5がキャブタイヤケーブルから構成されている場合には、芯線52の外側を所定長さのパイプ51で部分的に覆い、その外側に被覆部53(シース)を形成することにより、電源コード5に局所的に張りの強い部分を形成することができる。内部のパイプ51は所定長さのものを一定間隔毎に配置することが好ましく、それを適宜の長さに切断して電源コード5に使用することができる。このように内部にパイプ51を設けても、電源コード5が絡みにくくなる。尚、内部にパイプ51を設けた部分を凹溝10に入れることが好ましい。
【0028】
尚、上記実施形態では、ブランク1とは別体のグリップ部材7からグリップ部6を構成していたが、ブランク1自体からグリップ部6が形成されている場合には、そのブランク1のグリップ部6に凹溝10が形成されていてもよい。グリップ部6にコード保持具20を備えていないものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 ブランク
2 リールシート
3 電動リール
4 外部電源
5 電源コード
6 グリップ部
7 グリップ部材
8 係止孔
10 凹溝
10a 底面
10b 側面
20 コード保持具
20a 一端部
20b 他端部
21 面ファスナー
22 面ファスナー
30 主部
31 偏平部
40 アタッチメント
40a 上面
40b 下面
41 保持片
50 パイプ
51 パイプ
52 芯線
53 被覆部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9