(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2018235959
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】玉置 一生
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335104(JP,A)
【文献】特開2016-165952(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005003032(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 7/00 - 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールと、このロアレールに対して長手方向に摺動可能に嵌合するアッパレールと、前記ロアレールに対する前記アッパレールの位置調整に際してそのロック,アンロックを司るロック機構と、を備えた車両用シートスライド装置において、
前記ロアレールは、底壁部と、この底壁部の幅方向両側からそれぞれ上方に延びる側壁部と、この側壁部の上端を内方に折り曲げた上壁部と、この上壁部の内端を下方に折り曲げた下向きフランジ部と、を有し、
前記アッパレールは、天壁部と、この天壁部の幅方向両側からそれぞれ下方に延びる側壁部と、この側壁部の下端を外方且つ上方に折り曲げた上向きフランジ部と、を有し、
前記ロック機構は、レール長手方向に沿った軸線回りに揺動変位可能であって、前記ロアレール
の下向きフランジ部と前記アッパレール
の一方の側壁
部が重なり合う部分でそれらの両者に係合してロックするロック部材と、このロック部材を少なくともロック方向に付勢するロックばねと、を有し、
前記アッパレールの一方の側壁部の下端に内隅部として形成されている軸受部を備え、
この軸受部に、前記ロック部材の揺動中心として機能する軸部が揺動変位可能に載置されていて、
前記ロックばねは、前記アッパレールの一部に着座する着座部と、前記ロック部材の上部に係合して当該ロック部材をロック方向に付勢する中間係止部と、前記ロック部材の下部に係合して前記軸部を前記軸受部に押しつける方向に付勢する下側係止部と、を含む単一のばね部材として形成されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項2】
前記軸受部は、前記アッパレールの他方の側壁部と前記天壁部とのなす上側内隅部に対し対角の関係をもって形成されていると共に、
前記ロックばねの下側係止部は、前記軸受部と前記上側内隅部とを結ぶ対角線に沿って、前記軸部を前記軸受部に押し付ける方向に付勢していることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項3】
前記ロックばねは、前記軸受部に対する前記軸部のレール長手方向での位置を規制する側面係止部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項4】
前記ロックばねは、
前記アッパレールの他方の側壁部と天壁部とのなす上側内隅部に着座する着座部から延伸し、天壁部に沿うように形成された中間屈曲部と、
前記着座部からレール長手方向に延在すると共に、略U字状に折り返されていて、前記中間係止部を含む長手方向の中央部が弓形状に屈曲している長尺棒状部と、
前記中間屈曲部から下方に延伸してそれぞれ略S字状または略逆S字状に屈曲形成されていて、下端が前記下側係止部となっている複合湾曲部と、
を含む単一のばね部材として形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項5】
前記複合湾曲部は、前記中間屈曲部と協働して、前記軸受部と前記上側内隅部とを結ぶ対角線の方向に沿ったばね力を発生するようになっていて、
このばね力に基づいて、前記軸部を前記軸受部に押し付ける方向に付勢していることを特徴とする請求項4に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項6】
前記複合湾曲部は、前記中間屈曲部に連続していると共に、前記下側係止部を除いた部分が、前記アッパレールの一方の側壁部に沿って配置されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項7】
前記各複合湾曲部に連続して、レール幅方向で折り返される折り返し湾曲部が形成されていて、
この折り返し湾曲部の一部が前記側面係止部となっていると共に、前記折り返し湾曲部の端部が前記アッパレールの一部に係止されていて、
前記側面係止部は、前記ロック部材をレール長手方向両側から挟み込むことで、当該ロック部材のレール長手方向での位置を規制していることを特徴とする請求項6に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項8】
前記折り返し湾曲部の端部が端末係止部となっていて、この端末係止部が前記アッパレールの一方の側壁部に形成された穴に係止されていることを特徴とする請求項7に記載の車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるシートの位置調整のためにそのシートをスライド移動可能に支持する車両用シートスライド装置に関し、特にそのロック機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートスライド装置では、周知のように、車両床面に固定されるロアレールと、このロアレールに対して長手方向に摺動可能に嵌合していて且つシートが搭載されるアッパレールと、ロアレールに対するアッパレールの位置調整に際してそのロック,アンロックを司るロック機構と、を主要素として構成されている。
【0003】
そして、上記ロック機構の構造として、例えば特許文献1~3に記載されたものが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載されたシートスライド装置では、アッパレール内に配置されるロック部材(ロックレバー)を、レール長手方向に沿った軸線回りに回転(揺動)可能に支持するにあたり、アッパレールの側壁下部のカール部に前後一対のボールを用いて軸受支持させると共に、板ばねタイプのばね部材でロック方向に付勢する構造となっている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたシートスライド装置では、アッパレールの側壁部に開口を形成しておき、この開口を通してアッパレールの内外にまたがって配置されるロック部材を上記開口の縁部に揺動可能に支持させると共に、その開口に対するロック部材の押し付け支持力と、ロック部材のロック方向への付勢力とを単一のばね部材にて得るようにした構造となっている。
【0006】
さらに、特許文献3に記載されたシートスライド装置では、アッパレール内に揺動可能に軸受支持されたロック部材のロック方向への付勢手段として、ロック,アンロック時の付勢力の差を小さくするべく、一本の線材を所定の三次元形状に折り曲げたいわゆる線細工ばね(wire forms)タイプのロックばねを採用した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-154356号公報
【文献】独国特許発明第10 2005 003 032(B4)号明細書
【文献】特開2006-335104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された構造では、全体的なコンパクト化が図られているものの、複数のボールを用いた軸受構造であるため、転がりやすい小さなボールの取り扱いが面倒であるばかりでなく、ロックばねを含む部品点数が多くなり、ロック機構の組み付けに時間がかかるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載された構造では、特許文献1のような軸受支持のための別部品を必要としないものの、ロック部材の揺動角(回転角)を大きく確保できないだけでなく、揺動角を大きくしようとすると作動安定性に欠ける欠点がある。
【0010】
さらに、特許文献3に記載された構造では、ロックばねの占有スペースを小さくできる反面、ロック機構の部品点数の削減には寄与することができず、なおも改善の余地が残されている。
【0011】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、シートレールの一層のコンパクト化や軽量化に資するために、ロック部材の支持構造の簡素化を図り、特に部品点数の削減とロック部材の作動安定性の向上を図った車両用シートスライド装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ロアレールと、このロアレールに対して長手方向に摺動可能に嵌合するアッパレールと、前記ロアレールに対する前記アッパレールの位置調整に際してそのロック,アンロックを司るロック機構と、を備えた車両用シートスライド装置である。
【0013】
前記ロアレールは、底壁部と、この底壁部の幅方向両側からそれぞれ上方に延びる側壁部と、この側壁部の上端を内方に折り曲げた上壁部と、この上壁部の内端を下方に折り曲げた下向きフランジ部と、を有している。
【0014】
前記アッパレールは、天壁部と、この天壁部の幅方向両側からそれぞれ下方に延びる側壁部と、この側壁部の下端を外方且つ上方に折り曲げた上向きフランジ部と、を有している。
【0015】
前記ロック機構は、レール長手方向に沿った軸線回りに揺動変位可能であって、前記ロアレールの下向きフランジ部と前記アッパレールの一方の側壁部が重なり合う部分でそれらの両者に係合してロックするロック部材と、このロック部材を少なくともロック方向に付勢するロックばねと、を有している。
【0016】
さらに、前記アッパレールの一方の側壁部の下端に内隅部として形成されている軸受部を備え、この軸受部に、前記ロック部材の揺動中心として機能する軸部が揺動変位可能に載置されている。
【0017】
その上で、前記ロックばねは、前記アッパレールの一部に着座する着座部と、前記ロック部材の上部に係合して当該ロック部材をロック方向に付勢する中間係止部と、前記ロック部材の下部に係合して前記軸部を前記軸受部に押しつける方向に付勢する下側係止部と、を含む単一のばね部材として形成されていることを特徴とする。
【0018】
部品配置の最適化の上で望ましい態様としては、前記軸受部は、前記アッパレールの他方の側壁部と前記天壁部とのなす上側内隅部に対し対角の関係をもって形成されていると共に、前記ロックばねの下側係止部は、前記軸受部と前記上側内隅部とを結ぶ対角線に沿って、前記軸部を前記軸受部に押し付ける方向に付勢している。
【0019】
レール長手方向におけるロック部材のがたつきや移動を規制する上で望ましい態様としては、前記ロックばねは、前記軸受部に対する前記軸部のレール長手方向での位置を規制する側面係止部を備えている。
【0020】
さらなる部品点数の削減の上で望ましい態様としては、前記ロックばねは、前記アッパレールの他方の側壁部と天壁部とのなす上側内隅部に着座する着座部から延伸し、天壁部に沿うように形成された中間屈曲部と、前記着座部からレール長手方向に延在すると共に、略U字状に折り返されていて、前記中間係止部を含む長手方向の中央部が弓形状に屈曲している長尺棒状部と、前記中間屈曲部から下方に延伸してそれぞれ略S字状または略逆S字状に屈曲形成されていて、下端が前記下側係止部となっている複合湾曲部と、を含む単一のばね部材として形成されている。
【0021】
ロックばねのより具体的な態様としては、前記複合湾曲部は、前記中間屈曲部と協働して、前記軸受部と前記上側内隅部とを結ぶ対角線の方向に沿ったばね力を発生するようになっていて、このばね力に基づいて、前記軸部を前記軸受部に押し付ける方向に付勢している。
【0022】
ロック部材を操作する操作部材の作動空間を確保する上で望ましい態様としては、前記複合湾曲部は、前記中間屈曲部に連続していると共に、前記下側係止部を除いた部分が、前記アッパレールの一方の側壁部に沿って配置されている。
【0023】
レール長手方向におけるロック部材のがたつきや移動を規制する上でさらに望ましい態様としては、前記各複合湾曲部に連続して、レール幅方向で折り返される折り返し湾曲部が形成されていて、この折り返し湾曲部の一部が前記側面係止部となっていると共に、前記折り返し湾曲部の端部が前記アッパレールの一部に係止されていて、前記側面係止部は、前記ロック部材をレール長手方向両側から挟み込むことで、当該ロック部材のレール長手方向での位置を規制している。
【0024】
より具体的は態様としては、前記折り返し湾曲部の端部が端末係止部となっていて、この端末係止部が前記アッパレールの一方の側壁部に形成された穴に係止されている。
【0025】
したがって、本発明では、アッパレールにおける一方の側壁部の下端の内隅部として形成されている軸受部にロック部材の軸部が載置されていて、ロック部材は、単一のロックばねによりロック方向に付勢されていると共に、軸部を軸受部に押し付ける方向に付勢されている。そして、ロック部材は、上記軸受部を揺動支点としてレール長手方向に沿った軸線回りに揺動変位可能となっていて、そのロック部材の揺動変位によって、ロアレールに対するアッパレールのロックと,その解除状態であるアンロックとが可能となっている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アッパレールにおける一方の側壁部の下端の軸受部に、ロックばねにより押し付けられた状態でロック部材の軸部が軸受支持されていて、同時に、ロック部材そのものがロックばねによってロック方向にも付勢されているので、ロック部材の軸受構造の簡素化と併せて、部品点数の削減が図れる。また、ロック部材の揺動動作の安定化と共にロック部材の揺動角の拡大化が図れるようになり、信頼性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係るシートスライド装置の第1の実施の形態を示し、二つで一組として用いられるシートレールのうち一方のシートレールの分解斜視図。
【
図2】
図1に示したシートレールの長手方向に沿った断面図。
【
図6】
図4に示したアッパレールの内部を同図の左方向から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1~8は本発明に係るシートスライド装置を実施するためのより具体的な第1の形態を示し、特に
図1は、シートスライド装置の主要素として、一つのシートについて車両前後方向に延在する左右で一組のシートレールのうち一方(右側)のシートレール分解図を示している。左右で一組のシートレールは勝手違いで左右共に同じ構造のものであり、互いに平行となるように車幅方向で並んで配置される。
【0029】
また、
図2は
図1に示したシートレール1のレール長手方向に沿った断面図であり、
図3は
図2の要部拡大図である。さらに、
図4は
図2,3に示したシートレール1のレール長手方向に直交する断面での拡大断面図である。なお、
図2,3は
図4のb-b線断面に対応していて、
図4は
図3のa-a線断面に対応している。
【0030】
図1,2に示すように、シートレール1は、大きく分けて、ロアレール2と、そのロアレール2に対して長手方向で摺動可能に、すなわち長手方向にスライド移動可能に嵌合保持されたアッパレール3と、ロアレール2に対するアッパレール3のロック,アンロックを司るロック機構4と、から構成される。アッパレール3の上には図示を省略したシートがボルト・ナット等にて固定されると共に、ロアレール2は図示を省略した車体のフロア部にボルト・ナット等にて固定される。そして、アッパレール3内には、後述するロック部材9を主要素とするロック機構4が収容配置される。
【0031】
図1および
図4に示すように、ロアレール2は、金属板を折り曲げることで上面が開放された断面略変形コ字状のものとして形成されている。このロアレール2は、底壁部2aと、この底壁部2aのレール幅方向両側からそれぞれ上方に延びる側壁部2b,2cと、この側壁部2b,2cの上端を内方に向けて折り曲げた上壁部2d,2eと、この上壁部2d,2eの内端を下方に向けて折り曲げた下向きフランジ部2f,2gと、を有している。本実施の形態では、
図2から明らかなように、左右の側壁部2b,2c同士の高さや形状のほか、左右の上壁部2d,2e同士および下向きフランジ部2f,2g同士の形状が互いに相違している。
【0032】
他方、ロアレール2の内部にスライド可能に嵌合保持されるアッパレール3は、金属板を折り曲げることで下面が開放された断面略変形コ字状のものとして形成されている。アッパレール3は、天壁部3aと、この天壁部3aのレール幅方向両側からそれぞれ下方に延びる左右の側壁部3b,3cと、これらの側壁部3b,3cの下端を外方且つ上方に向けて折り曲げた上向きフランジ部3d,3eと、を有している。そして、一方の側壁部3b側では、その側壁部3bと上向きフランジ部3dとの間に後述する転動体の転動面を確保するために、上向きフランジ部3dの根元部側に中脚部3fが形成されている。本実施の形態では、
図2から明らかなように、左右の上向きフランジ部3d,3e同士の高さや形状が互いに相違している。
【0033】
ロアレール2にアッパレール3をスライド可能に組み付ける際には、
図4に示すように、アッパレール3のレール幅方向の両側において、一方の側壁部3bと上向きフランジ部3dとの間にロアレール2側の一方の下向きフランジ部2fが挟み込まれるように、同様にアッパレール3の他方の側壁部3cと上向きフランジ部3eとの間にロアレール2側の他方の下向きフランジ部2gが挟み込まれるように、それぞれ嵌合される。したがって、
図4に示すように、ロアレール2とアッパレール3との組み合わせからなるシートレール1の断面形状(レール長手方向に直交する断面での形状)は、左右非対称形状となっている。ただし、シートレール1の断面形状は、要求される機能等に応じて左右対称形状に形成されることもある。
【0034】
また、ロアレール2とアッパレール3との間には、レール幅方向の左右およびレール長手方向の前後二箇所でそれぞれ独立しているリテーナ5(
図2参照)に保持された転動体としての複数のスチールボール6が介装される。これらのスチールボール6の保持のために、アッパレール3の一方の上向きフランジ部3d側では、根元部側の中脚部3fと、上向きフランジ部3dの先端部に、それぞれボール転動溝7a,7bが形成されている。そして、各ボール転動溝7a,7bとロアレール2の上下の内隅部との間にスチールボール6がそれぞれに介装されている。
【0035】
他方、アッパレール3の他方の上向きフランジ部3e側では、その上下面にそれぞれボール転動溝8a,8bが形成されている。そして、各ボール転動溝8a,8bとロアレール2の上下の内隅部との間にスチールボール6がそれぞれに介装されている。なお、
図4ではリテーナ5の図示を省略している。
【0036】
より詳細には、
図2に示したシートレール1の前端部および後端部にそれぞれ左右一対の略矩形状をなすリテーナ5が設けられていて、一つのリテーナ5につき例えば4個のスチールボール6が保持されている。そして、アッパレール3のスライド移動に追従してそれらのスチールボール6が転動することで、アッパレール3のスムーズな移動が可能になる。なお、スチールボール6を保持している各リテーナ5は、アッパレール3の動きに追従してスライド移動可能ではあるもの、ロアレール2とアッパレール3とがレール長手方向で重なり合っている範囲から逸脱することがないように位置規制されている。
【0037】
図1,2および
図3,4に示すように、アッパレール3の長手方向の中間部には、ロアレール2に対するアッパレール(シート)3の前後方向での位置調整に際して、そのロック,アンロックを司るロック機構4が設けられている。
【0038】
このロック機構4は、機能部品として、アッパレール3の内部に配置されるロック部材9と、このロック部材9と共にアッパレール3の内部に配置されて、ロック部材9を後述するように少なくともロック方向に付勢する付勢手段としてのロックばね10と、アッパレール3の内部においてロック部材9の前方側に配置される操作部材としての角棒状の解除レバー11と、この解除レバー11のための復帰ばね(リターンスプリング)12と、を備えている。解除レバー11には、レール前方側に向かって当該解除レバー11を延長するような形態で図示外の操作ハンドルが接続される。
【0039】
図1および
図3に示すように、解除レバー11の先端には操作爪部11aが屈曲形成されていて、この操作爪部11aは、
図3,4に示すように、後述するロック部材9の上方に臨んでいる。また、
図3に示すように、解除レバー11の下面には係止溝11bが形成されていて、この係止溝11bに変形コ字状に折り曲げ形成された復帰ばね12が係止されている。復帰ばね12の両側の係止端部12aは、アッパレール3の双方の側壁部3b,3cに形成された係止孔13に挿入・係止されている。
【0040】
アッパレール3の天壁部3aからは略逆T字状形状の支持脚部14が下向きに切り起こすように形成されていて、この支持脚部14の下端面に、係止溝11bよりもわずかに前方位置にて解除レバー11の上面が当接している。解除レバー11は支持脚部14を支点として揺動変位可能であり、復帰ばね12はその中間部分が支持脚部14の上端面に係合することで解除レバー11の上記支点よりも後方側を持ち上げる方向に付勢している。したがって、解除レバー11は、操作力を付与しない場合には、解除レバー11の操作爪部11aがアッパレール3の天壁部3aに当接した
図3に示す状態を自己保持している。
【0041】
他方、上記ロック機構4に対応して、
図1,4に示すように、ロアレール2のうち一方の下向きフランジ部2fには、その長手方向に沿って角穴状の多数のロック穴15が所定のピッチで並んで形成されている。
【0042】
図5は、
図1に示したアッパレール3のQ部を拡大した図である。また、
図6は、
図4に示したアッパレール3の内部を同図の左方向から見た斜視図である。
【0043】
図1のほか
図5,6に示すように、アッパレール3の一方の側壁部3bのうちレール長手方向の中間部には、ロック部材9のロック爪の数に一致するように、角穴状の例えば4個のロック穴16が形成されている。さらに、アッパレール3の一方の上向きフランジ部3dのうちレール長手方向の中間部には、ロック穴16の位置と一致するように、いわゆる櫛歯状の例えば4個のロック溝17が形成されている。これらのロック穴16およびロック溝17のピッチは、
図1に示したロアレール2側のロック穴15のピッチと同じとなっている。
【0044】
したがって、ロアレール2に対して長手方向にスライド可能なアッパレール3は、長手方向の任意の位置にて、ロアレール2側のロック穴15に対して、アッパレール3側のロック穴16およびロック溝17を一致させることが可能となっている。
【0045】
図7は
図6のc-c線に沿った断面図を示している。
図4のほか
図6,7に示すように、
図5,6に示した4個のロック溝17の下方であって、且つアッパレール3における一方の側壁部3bの下端には、所定距離隔てた前後一対の上向きの係止縦壁部18と、レール内方に向かって突出しつつレール長手方向で所定距離隔てた前後一対の係止底壁部19と、がそれぞれ突出形成されている。
【0046】
一対の係止縦壁部18は、
図4に示すように、スチールボール6のためのボール転動溝7aが形成された中脚部3fの一部を上向きに切り起こすようにして形成されている。他方、一対の係止底壁部19は、係止縦壁部18よりも幅広であって、一方の側壁部3bの下端部を水平になるまで切り起こすようにして形成されている。そして、各一対の係止縦壁部18と係止底壁部19とは、
図4に示すように正面視においてほぼ直角な内隅形状をなしている。
【0047】
さらに、
図7に示すように、前側の係止縦壁部18と係止底壁部19同士、および後側の係止縦壁部18と係止底壁部19同士が、レール長手方向で位置的に一部が互いにオーバーラップしている。これにより、前側の係止縦壁部18と係止底壁部19同士、および後側の係止縦壁部18と係止底壁部19同士が互いにオーバーラップしている領域Wの上記アングル状空間が、
図4に示すような所定曲率の円弧状の下側内隅部20となっている。そして、
図4に示すように、アッパレール3の下側内隅部20は、アッパレール3の天壁部3aと他方の側壁部3cとのなす上側内隅部21に対して対角の関係となっていて、下側内隅部20と上側内隅部21とは対角線方向で互いに対向している。
【0048】
なお、
図5,6から明らかなように、アッパレール3における一方の側壁部3bには、一対の係止底壁部19を内方に切り起こしたことに伴って一対の開口部19aが形成されていると共に、各開口部19aに近接して、長円形の係止穴22が形成されている。
【0049】
先に説明したロック機構4の構成要素であるロック部材9は、
図1に示すように、板状の部品を母材としてこれに三次元的な曲げ加工を施したものである。
図3,4および
図6に示すように、ロック部材9には、レール長手方向の中間部を平坦な基部23として、この基部23の前後二箇所を斜め下方に向けて折り曲げることで一対の斜状の脚部24が形成されている。そして、前方側の脚部24のうち基部23に近い根元部は、
図3に示した解除レバー11の操作爪部11aによる押圧操作部25となっている。
【0050】
図1および
図3,4に示すように、ロック部材9の基部23には、レール幅方向に向けて、いわゆる櫛歯状の4個のロック爪26が並んで突出形成されている。これらの4個のロック爪26のピッチは、
図4,5に示したロアレール2およびアッパレール3側の各ロック穴15,16のピッチと一致している。
【0051】
また、ロック部材9の基部23には、
図4,6に拡大して示すように、ロック爪26とは反対方向に向けて、単一の横向き係止片27と、その横向き係止片27の前後位置で斜め下方に折り曲げられた一対の下向き係止片28と、が突出形成されている。これらの単一の横向き係止片27と一対の下向き係止片28とのなす内隅部は、
図4,6に示すように、ロック部材9に対する後述のロックばね10のばね係止部として機能することになる。
【0052】
さらに、
図1のほか
図4,7に拡大して示すように、ロック部材9における一対の脚部24の先端部は、その部分のみを幅広に形成するべく互いに対向する方向に張り出す突出部29が形成されている。そして、
図4に示すように、一対の脚部24の突出部29を含む先端部が所定の曲率で上向き且つ半円筒状またはU字状に折り曲げられていわゆる不完全なカール形状となっていて、このカール形状部がロック部材9の軸部30として機能するようになっている。
【0053】
これら一対の軸部30は、レール長手方向と平行な同一軸線上に位置していると共に、
図6,7に示した開口部19aを通して一方の側壁部3bの外側に臨んでいる。そして、
図3,4および
図6,7に示すように、係止縦壁部18と係止底壁部19とがレール長手方向でオーバーラップする領域W(
図7参照)において、両者のなす下側内隅部20に軸部30が揺動変位可能に個別に軸受支持されている。そのため、一対の軸部30は後述するようにロック部材9の揺動中心として機能すると共に、係止縦壁部18と係止底壁部19とで形成される略直角の下側内隅部20は、一対の軸部30のための軸受部として機能する。なお、軸部30を軸受支持するための下側内隅部20を形成することなる係止縦壁部18に代えて、
図4に示した上向きフランジ部3dの根元部分をそのまま利用することもできる。
【0054】
ロック機構4の構成要素であるロックばね10は、
図1に示すように、ばね鋼製の一本の線材を所定のばね特性が発揮されるように前後で対称な三次元形状に折り曲げ形成したもので、単一のいわゆる線細工ばね(wire forms)として形成されている。
【0055】
図8は
図1に示したロックばね10の単独での拡大図を示している。
図8に示すように、ロックばね10は、概略的には、レール長手方向に大きく張り出していて上下方向で略U字状をなして折り返すように大きく湾曲している一対の張り出し湾曲部10aと、これら一対の張り出し湾曲部10a同士の上側内端部においてそれぞれに平面視で略直角に屈曲している中間屈曲部10bと、この中間屈曲部10bに連続しつつ下方に延びていて、略S字状または逆S字状をなして折り返すように湾曲している一対の複合湾曲部10cと、複合湾曲部10cに近接してレール幅方向で折り返すようにU字状に湾曲している一対の折り返し湾曲部10dと、を有している。中間屈曲部10bは、張り出し湾曲部10aと複合湾曲部10cとを接続するべく両者の間でレール幅方向に延在していて、張り出し湾曲部10aおよび複合湾曲部10cの端部と共に平面視で略コ字状をなしている。そして、前後の張り出し湾曲部10a同士を接続するかたちで、それらの張り出し湾曲部10aの下側部分であって且つ長手方向の中央部が略弓形状に滑らかに湾曲した長尺棒状部10eが前後方向に延びている。なお、一対の複合湾曲部10cの湾曲形状は、略S字状または逆S字状に代えて、略クランク状の湾曲形状であっても良い。
【0056】
その上で、
図4,8に示すように、一対の張り出し湾曲部10aの上側内端部のうち中間屈曲部10bに近い部分が、折り曲げ部110からわずかに屈曲していて平面視で略くの字状をなしていて、その折り曲げ部110に相当する部分がアッパレール3の天壁部3aと他方の側壁部3cとのなす上側内隅部21に着底する着座部P1として機能する。また、長尺棒状部10eのうち、レール幅方向での内方にオフセットしているレール長手方向の中間部分が、ロック部材9の横向き係止片27と下向き係止片28とのなす内隅部に係止される中間係止部P2として機能する。
【0057】
同様に、ロックばね10のうち、略S字状または逆S字状に湾曲している一対の複合湾曲部10cの下側部分が、
図4の中間係止部P2の下方且つアッパレール3の一方の側壁部3bに向かってオフセットしていて、この下端部分がロック部材9における一対の軸部30の内周面に係止される前後一対の下側係止部P3として機能する。また、U字状に湾曲している一対の折り返し湾曲部10dのうち、それぞれの内端が、
図6,7に示すように、ロック部材9における一対の脚部24の前方側または後方側に係止される一対の側面係止部P4として機能する。さらに、一対の折り返し湾曲部10dの末端部が、
図4および
図6,7に示した一方の側壁部3bの係止穴22に挿入されて係止される端末係止部P5として機能する。
【0058】
このようなロックばね10の採用により、
図3,4および
図6に示すように、張り出し湾曲部10aの折り曲げ部110を着座部P1としてアッパレール3の天壁部3aの内下面に着座させると共に、長尺棒状部10eの中間係止部P2をロック部材9の横向き係止片27と下向き係止片28とのなす内隅部に、下側係止部P3を各軸部30の内周面にそれぞれ係止させ、さらに側面係止部P4を各脚部24に、端末係止部P5を係止穴22にそれぞれ係止させてある。
【0059】
この状態では、
図4に示すように、中間屈曲部10bと複合湾曲部10cのばね特性により、着座部P1と下側係止部P3とが互いに離間する方向に付勢されることで、着座部P1は上側内隅部21に係止された状態に保持され、中間係止部P2は、折り返し湾曲部10dのばね特性によりアッパレール3のレール幅方向で
図4中右方向に付勢されつつ、アッパレール3の高さ方向で上方向に付勢される。すなわち、中間係止部P2では、アッパレール3のレール幅方向と高さ方向とを複合化した方向に同時にばね特性が発揮されることになる。
【0060】
そのため、ロックばね10は、
図4に示した状態をもってアッパレール3に自己保持されていて、同図に示すように、ロック部材9は軸部30と下側内隅部20との接触部を揺動支点として、同図の時計回り方向、すなわちロック方向に付勢されている。したがって、
図4,6に示したように、ロアレール2側のロック穴15と、アッパレール3側のロック穴16およびロック溝17が互いに重なり合って合致している状態では、ロック部材9の複数のロック爪26がそれらのロック穴15,16を貫通した上で、ロック溝17にも係合して、ロック状態を維持している。
【0061】
同時に、
図4に示すように、ロック部材9のロック状態では、ロック部材9の一対の脚部24がアッパレール3の下側内隅部20と上側内隅部21とを結ぶ対角線の方向を指向するように延在していると共に、ロックばね10のうち下側係止部P3に近接している斜片部10fが、ロック部材9の一対の脚部24の延在方向と平行に延在している。そのため、ロック部材9の軸部30が係止縦壁部18と係止底壁部19とのなす下側内隅部20に押し付けられていて、
図4の状態からロック部材9を反時計回り方向に揺動変位させてアンロック操作したとしても、ロック部材9の軸部30が下側内隅部20に押し付けられている状態は継続して維持される。
【0062】
さらに、
図3,7に示すように、ロック部材9の前後一対の軸部30の端縁には、ロックばね10のうち略U字状の側面係止部P4が当接していて、ロック部材9をレール長手方向(前後方向)から互いに拮抗する力で付勢している。そのため、アッパレール3に対するロック部材9の前後方向での位置が規制されていると共に、ロック穴15,16やロック溝17に対するロック爪26のがたつきや移動、さらには振動による打音の発生が防止されるようになっている。
【0063】
このように、
図8に示したロックばね10が複雑な三次元形状に形成されていることにより、ロックばね10は、自己弾性力により着座部P1が上側内隅部21に保持されると共に、ロック部材9の複数のロック爪26のロック方向への付勢力と、揺動支点として機能する一対の軸部30を軸受支持部である下側内隅部20に押し付ける付勢力と、アッパレール3に対する前後方向での位置規制のための付勢力と、を単一のロックばね10にて得ていることになる。その結果として、ロックばね10は、実質的に、互いに異なる方向に作用する三方向の付勢力を同時に得ることができる複合ばねとして機能する。
【0064】
なお、ロックばね10は、
図8に示すように、一本の線材を幾重にも折り曲げて形成したものであるが、
図8のほか
図4,6等からも明らかなように、どの部分においても線材同士が干渉しないように考慮された形状となっている。
【0065】
したがって、このように構成されたシートスライド装置では、先に説明したように、
図3,4および
図6はいずれもそのロック状態を示していることから、
図3の解除レバー11に操作力を付与しないかぎりは、そのロック状態が安定して維持されている。
【0066】
その一方、
図3の支持脚部14を支点として、解除レバー11に同図の時計回り方向の操作力を付与すると、解除レバー11が同方向に揺動変位する。この解除レバー11の揺動変位に伴い、解除レバー11の先端の操作爪部11aがロック部材9のうち前方側の脚部24の根元部の押圧操作部25に当接して、ロック部材9を押し下げる。
【0067】
解除レバー11による押し下げ力を受けたロック部材9は、
図4に示した下側内隅部20に支えられている双方の軸部30を揺動支点として、同図の反時計回り方向に揺動変位する。このロック部材9の揺動変位に伴って、複数のロック爪26がロアレール2およびアッパレール3側のロック穴15,16とロック溝17から抜け出て、アンロック(ロック解除)状態となる。なお、
図4に示すように、ロック部材9をロック解除方向に回動した際のストロークを規制するストッパ39がアッパレール3の他方の側壁部3cを略水平に切り曲げるように形成されている。
【0068】
これにより、初めてロアレール2に対するアッパレール3のスライド移動が許容されて、ひいてはそのアッパレール3に搭載されている図示外のシートの前後方向での位置調整が可能となる。
【0069】
このアンロック状態では、ロックばね10のうち、
図4,8に示した中間係止部P2を含む長尺棒状部10eがロック部材9の動きに追従して下方に大きく撓み変形するものの、その他の部分は大きく変位することはなく、
図4に示した自己保持状態を維持している。そのため、アンロック状態においても、ロック部材9には、ロック状態と同様に、ロック方向への付勢力が作用していると共に、双方の軸部30をアッパレール3側の下側内隅部20に向かって押し付ける付勢力、およびロック部材9のレール長手方向での位置を規制する付勢力が作用している。
【0070】
その一方、それまで
図3の解除レバー11に付与していた操作力を解除すると、解除レバー11は復帰ばね12の復帰力(付勢力)で元の状態に復帰する一方、ロック部材9もロック方向への付勢力で、
図4に示したような元のロック状態に復帰することになる。
【0071】
なお、ロックばね10としての必要な機能が発揮されるならば、ロックばね10の種類および形状は、必ずしも
図8に示したものに限定されない。
【0072】
このように本実施の形態でのシートスライド装置によれば、ロック機構4において、ロック部材9の揺動支点として機能する一対の軸部30がロック部材9そのものと一体に形成されていると共に、それらの軸部30をアッパレール3側の係止縦壁部18と係止底壁部19とで形成された軸受部としての下側内隅部20に押し付けるようにして軸受支持しているので、部品点数の削減と併せて、軸受部の構造を簡素化することができると共に、ロック部材9の揺動角が大きくなっても作動安定性に優れている。
【0073】
また、ロックばね10は、ロック部材9をロック方向に付勢する機能と、ロック部材9の一対の軸部30を下側内隅部20に押し付ける方向に付勢する機能、およびロック部材9をレール長手方向の両側から互いに拮抗する力で付勢してロック部材9の位置を規制する機能と、を有しながら、単一のばね部材として形成されているので、これによってもまた部品点数の削減が図れて、シートレール1の軽量化とコンパクト化を図る上で有利となる。
【0074】
さらに、本実施の形態によれば、上記効果に加えて、下記に列挙するような利点がある。
【0075】
(1)一対の軸部30を支持している下側内隅部20は、
図4に示すように、アッパレール3の上側内隅部21に対し対角の関係をもって形成されていると共に、ロックばね10は、下側内隅部20と上側内隅部21とを結ぶ対角線に沿って、軸部30を下側内隅部20に押し付けるように付勢している。そのため、アッパレール3内での部品配置の最適化が図れ、シートレール1の軽量化とコンパクト化を図る上で一段と有利となる。
【0076】
(2)下側内隅部20を形成している係止縦壁部18と係止底壁部19は、
図7に示すように、アッパレール3のレール長手方向で位置的に一部が重なるように互いにオフセットして形成されている。そのため、それらの係止縦壁部18と係止底壁部19が切り起こし形成されているアッパレール3の剛性を確保する上で有利となる。
【0077】
(3)一対の軸部30は、
図7に示すように、ロック部材9のうちレール長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。他方、下側内隅部20を形成している係止縦壁部18および係止底壁部19は、各軸部30の位置に対応してレール長手方向の二箇所にそれぞれ設けられていて、一対の係止底壁部19同士の間に一対の係止縦壁部18が配置されている。そのため、アッパレール3のうち、
図4に示したスチールボール6のためのボール転動溝7aを形成している中脚部3fの一部を切り起こして一対の係止縦壁部18を形成したとしても、それによってスチールボール6の転動が制約される範囲が小さく、レール長手方向でのスチールボール6の転動範囲を可及的に長く確保できる利点がある。
【0078】
(4)ロック部材9は、
図3,4に示すように、そのアンロック操作に際してロック部材9を下方に揺動変位動作させるための押圧操作部25を有していて、その押圧操作部25を押圧する操作部材としての解除レバー11もロック部材9と共にアッパレール3内に配置されている。すなわち、ロック機構4の構成要素であるところの押圧操作部25を含むロック部材9と、ロックばね10、および解除レバー11のそれぞれが、ロアレール2とアッパレール3の双方を含みつつレール長手方向に直交するシートレール1のレール断面形状部内に収容配置されていて、ロック機構4の一部がレール幅方向に突出していない。そのため、シートレール1の軽量化とコンパクト化を図る上でさらに有利となる。
【0079】
(5)ロックばね10は、一対の端末係止部P5がそれぞれ一方の側壁部3bの係止穴22に係合すると共に、ロック部材9をレール長手方向の両側から互いに拮抗する力で付勢して、そのロック部材9の位置を規制しているので、ロック部材9のがたつきや移動、さらには振動による打音の発生を効果的に防止できる。
【0080】
(6)ロックばね10のうち、中間屈曲部10bがアッパレール3の天壁部3aに沿って配置されていると共に、複合湾曲部10cがアッパレール3の一方の側壁部3bに沿って配置されている。そのため、アッパレール3の狭隘な内部空間において、操作部材である解除レバー11の作動空間を効果的に確保することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…シートレール
2…ロアレール
2a…底壁部
2b,2c…側壁部
2d,2e…上壁部
2f,2g…下向きフランジ部
3…アッパレール
3a…天壁部
3b,3c…側壁部
3d,3e…上向きフランジ部
3f…中脚部
4…ロック機構
9…ロック部材
10…ロックばね
10b…中間屈曲部
10c…複合湾曲部
10d…折り返し湾曲部
10e…長尺棒状部
11…解除レバー(操作部材)
20…下側内隅部(軸受部)
21…上側内隅部
22…係止穴
26…ロック爪
30…軸部
110…折り曲げ部
P1…着座部
P2…中間係止部
P3…下側係止部
P4…側面係止部
P5…端末係止部