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特許7107841複金属シアン化物触媒及びその製造方法、並びに上記触媒を用いたポリカーボネートポリオールの製造方法
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  • 特許-複金属シアン化物触媒及びその製造方法、並びに上記触媒を用いたポリカーボネートポリオールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】複金属シアン化物触媒及びその製造方法、並びに上記触媒を用いたポリカーボネートポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
C08G64/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018532696
(86)(22)【出願日】2016-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 KR2016015028
(87)【国際公開番号】W WO2017111469
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2018-08-15
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】10-2015-0185899
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ペク、 ジュン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 イル
(72)【発明者】
【氏名】ユン、 ソン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ハ、 ジェ-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン、 ソン-ジン
【合議体】
【審判長】佐藤 健史
【審判官】加藤 友也
【審判官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-513818(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1466803(KR,B1)
【文献】特表2014-520938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G64/00-64/42
C08G63/00-63/91
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸(acetate)基を有する有機錯化剤と、ポリエーテル化合物と、金属ハロゲン化物と、金属シアン化物塩と、を含み、
前記有機錯化剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monomethyl ether acetate、MEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monoethyl ether acetate、EEA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monobutyl ether acetate、BEA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Diethylene glycol monoethyl ether acetate、DGEEA)、エチレングリコールジアセテート(Ethylene glycol diacetate、EGD)からなる群から選択された一つ以上であり、
前記金属ハロゲン化物及び有機錯化剤は、重量比が1:5~1:10である、
複金属シアン化物触媒。
【請求項2】
前記ポリエーテル化合物は、含量が、前記複金属シアン化物触媒100重量部を基準に、0.1~30重量部である、請求項1に記載の複金属シアン化物触媒。
【請求項3】
前記ポリエーテル化合物は、ポリエーテルポリオールである、請求項1に記載の複金属シアン化物触媒。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオールは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体、酸化ブチレンポリマー、及び超分岐(hyper branched)ポリグリシドールからなる群から選択された一つ以上である、請求項3に記載の複金属シアン化物触媒。
【請求項5】
酢酸基を有する有機錯化剤と、金属ハロゲン化物と、蒸留水と、を含む第1混合溶液を製造する段階と、
前記第1混合溶液に金属シアン化物塩及び蒸留水を供給して第2混合溶液を製造する段階と、
前記第2混合溶液に前記有機錯化剤及びポリエーテル化合物を供給して第3混合溶液を製造する段階と、
前記第3混合溶液を遠心分離して沈殿物を得る段階と、を含み、
前記有機錯化剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monomethyl ether acetate、MEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monoethyl ether acetate、EEA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monobutyl ether acetate、BEA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Diethylene glycol monoethyl ether acetate、DGEEA)、エチレングリコールジアセテート(Ethylene glycol diacetate、EGD)からなる群から選択された一つ以上であり、
前記金属ハロゲン化物及び有機錯化剤は、重量比が1:5~1:10である、
複金属シアン化物触媒の製造方法。
【請求項6】
前記沈殿物を洗浄及び乾燥する段階をさらに含む、請求項5に記載の複金属シアン化物触媒の製造方法。
【請求項7】
前記沈殿物に前記有機錯化剤及び蒸留水を供給して第4混合溶液を製造する段階と、
前記第4混合溶液に前記有機錯化剤及び前記ポリエーテル化合物を供給して第5混合溶液を製造する段階と、
前記第5混合溶液を遠心分離して沈殿物を得る段階と、
をさらに含む、請求項5に記載の複金属シアン化物触媒の製造方法。
【請求項8】
前記沈殿物を洗浄及び乾燥する段階をさらに含む、請求項7に記載の複金属シアン化物触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の複金属シアン化物触媒下で、二酸化炭素及びエポキシ化合物を共重合してポリカーボネートポリオールを製造する、ポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項10】
前記エポキシ化合物は、炭素数2~20のアルキレンオキシド、炭素数4~20のシクロアルケンオキシド、及び炭素数8~20のスチレンオキシドからなる群から選択された一つ以上である、請求項9に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複金属シアン化物触媒及びその製造方法、並びに上記触媒を用いたポリカーボネートポリオールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートポリオールは、産業的に大量に製造される原料であって、一般的にポリイソシアネートと共にポリウレタンの製造のための出発物質として用いられる。従来は、上記ポリカーボネートポリオールを製造するための触媒として水酸化カリウム(KOH)などの塩基性金属水酸化物を用いていたが、末端二重結合を有する単官能性ポリエーテル(モノオール)の含量が増加して、ポリウレタンを製造するにあたって非常に不利に作用するという問題がある。これに対し、上記ポリカーボネートポリオールを製造するための触媒として複金属シアン化物触媒を使用する場合、モノオールの含量を相対的に減少させるだけでなく、シクロヘキセンオキシド(cyclohexene oxide;CHO)またはプロピレンオキシド(propylene oxide;PO)の添加反応速度を増加させる。上記触媒を用いて製造されたポリカーボネートポリオールは、高級ポリウレタン(例えば、コーティング剤、エラストマー、シーラント、フォーム、及び接着剤)に加工される。
【0003】
しかし、従来の複金属シアン化物触媒は、有機錯化剤を過量に含むため、環境汚染を引き起こし、複雑な合成過程により製造時間が長くなって経済性が低いという問題がある。また、二酸化炭素は熱力学的に非常に安定した物質であって、それを固定させるためには高いエネルギーが必要であるため、高活性の触媒が求められている。
【0004】
韓国公開特許第10-2012-0042796号公報では、乳酸化合物を錯化剤として用いることを特徴とする固体の複金属シアン化物または複合金属シアン化物触媒の製造方法を提供しているが、上記触媒は、二酸化炭素に対する選択率が高くなく、最終生成物に対する機能基も調節が困難であるという問題がある。また、韓国公開特許第10-2014-0042167号公報では、ケトン基及びヒドロキシ基を同時に含有した有機錯化剤を含む複金属シアン化物触媒下で、二酸化炭素及びエポキシ化合物を共重合して製造するポリカーボネートの製造方法を提供しているが、上記触媒を用いて製造された最終生成物に対する機能基も調節が困難であり、且つ上記最終生成物を高級ポリウレタンの材料として用いることが困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0042796号公報
【文献】韓国公開特許第10-2014-0042167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、触媒活性に優れ、且つ触媒活性の誘導時間が短い複金属シアン化物触媒を提供する。
【0007】
また、本発明は、有機錯化剤の含量が少なくて環境にやさしく、且つ工程が簡単である複金属シアン化物触媒の製造方法を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、上記複金属シアン化物触媒を用いたポリカーボネートポリオールの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、酢酸(acetate)基または酒石酸(tartrate)基を有する有機錯化剤、ポリエーテル化合物、金属塩、及び金属シアン化物塩を含む複金属シアン化物触媒を提供する。
【0010】
上記金属塩及び有機錯化剤は、重量比が1:5~1:10であることができる。
【0011】
上記ポリエーテル化合物は、含量が、上記複金属シアン化物触媒100重量部を基準に、0.1~30重量部であることができる。
【0012】
上記有機錯化剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monomethyl ether acetate、MEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monoethyl ether acetate、EEA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monobutyl ether acetate、BEA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Diethylene glycol monoethyl ether acetate、DGEEA)、エチレングリコールジアセテート(Ethylene glycol diacetate、EGD)、L-(+)-酒石酸ジメチル((+)-Dimethyl-L-tartrate、MT)、L-(+)-酒石酸ジエチル((+)-Diethyl-L-tartrate、ET)、L-(+)-酒石酸ジイソプロピル((+)-Diisopropyl-L-tartrate、IPT)、及びL-(+)-酒石酸ジブチル((+)-Dibuthyl-L-tartrate、BT)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0013】
上記ポリエーテル化合物は、ポリエーテルポリオールであることができる。
【0014】
上記ポリエーテルポリオールは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体、酸化ブチレンポリマー、及び超分岐(hyper branched)ポリグリシドールからなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0015】
本発明の他の実施形態によると、酢酸基または酒石酸基を有する有機錯化剤、金属塩、及び蒸留水を含む第1混合溶液を製造する段階、上記第1混合溶液に金属シアン化物塩及び蒸留水を供給して第2混合溶液を製造する段階、上記第2混合溶液に上記有機錯化剤及びポリエーテル化合物を供給して第3混合溶液を製造する段階、及び上記第3混合溶液を遠心分離して沈殿物を得る段階を含む、複金属シアン化物触媒の製造方法を提供する。
【0016】
上記製造方法は、上記沈殿物を洗浄及び乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0017】
上記製造方法は、上記沈殿物に上記有機錯化剤及び蒸留水を供給して第4混合溶液を製造する段階、上記第4混合溶液に上記有機錯化剤及び上記ポリエーテル化合物を供給して第5混合溶液を製造する段階、及び上記第5混合溶液を遠心分離して沈殿物を得る段階をさらに含むことができる。
【0018】
上記製造方法は、上記沈殿物を洗浄及び乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態によると、上記複金属シアン化物触媒下で、二酸化炭素及びエポキシ化合物を共重合してポリカーボネートポリオールを製造するポリカーボネートポリオールの製造方法を提供する。
【0020】
上記エポキシ化合物は、炭素数2~20のアルキレンオキシド、炭素数4~20のシクロアルケンオキシド、及び炭素数~20のスチレンオキシドからなる群から選択された一つ以上であることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の複金属シアン化物触媒は、触媒活性に優れ、且つ触媒活性の誘導時間が短く、本発明の触媒を製造する方法は、有機錯化剤の含量が少なくて環境にやさしく、且つ工程が簡単であり、上記触媒を用いて製造されたポリカーボネートポリオールは、不飽和度が低く、且つカーボネート含量が高いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1~14及び比較例1で製造されたポリカーボネートポリオールのH-NMR分光分析の結果を示したグラフである。
図2】実施例1~14及び比較例1で製造されたポリカーボネートポリオールのH-NMR分光分析の結果を示したグラフである。
図3】実施例1~14及び比較例1で製造されたポリカーボネートポリオールのH-NMR分光分析の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、様々な実施形態を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明は、複金属シアン化物触媒及びその製造方法、並びに上記触媒を用いたポリカーボネートポリオールの製造方法に関するものである。
【0025】
本発明の複金属シアン化物触媒は、酢酸(acetate)基または酒石酸(tartrate)基を有する有機錯化剤、ポリエーテル化合物、金属塩、及び金属シアン化物塩を含むことができる。
【0026】
従来の複金属シアン化物触媒は、有機錯化剤を過量に含んでいる。上記有機錯化剤としては、例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、尿素、ニトリル、硫酸塩、またはそれらの混合物が用いられており、そのうちエーテルまたは水溶性脂肪族アルコールが好まれていた。特に、tert-ブチルアルコール(tert-butyl alcohol、t-BuOH)が用いられてきたが、上記tert-ブチルアルコールのような有機錯化剤を用いて触媒を製造する場合、合成過程が複雑であり、且つ製造時間が長くなり、過量の有機錯化剤を用いるため、環境汚染を引き起こした。
【0027】
かかる問題に対して、本発明の複金属シアン化物触媒は、酢酸基または酒石酸基を含むことにより、従来の触媒が有する利点を維持しながら、より高い触媒活性度を有する触媒及び触媒活性の誘導時間が短い複金属シアン化物触媒を提供することができる。
【0028】
上記有機錯化剤は、酢酸基または酒石酸基を含むことができるものであれば、その種類を特に限定しないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monomethyl ether acetate、MEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monoethyl ether acetate、EEA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(Ethylene glycol monobutyl ether acetate、BEA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Diethylene glycol monoethyl ether acetate、DGEEA)、エチレングリコールジアセテート(Ethylene glycol diacetate、EGD)、L-(+)-酒石酸ジメチル((+)-Dimethyl-L-tartrate、MT)、L-(+)-酒石酸ジエチル((+)-Diethyl-L-tartrate、ET)、L-(+)-酒石酸ジイソプロピル((+)-Diisopropyl-L-tartrate、IPT)、及びL-(+)-酒石酸ジブチル((+)-Dibuthyl-L-tartrate、BT)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0029】
一方、tert-ブチルアルコールを有機錯化剤として用いた従来の複金属シアン化物触媒は、金属塩の含量に対して約40倍以上の有機錯化剤を用いるため、環境汚染の問題を引き起こした。しかし、本発明の複金属シアン化物触媒は、金属ハロゲン化物に対する有機錯化剤の重量比が1:5~1:10に過ぎないため、上記ブチルアルコールを有機錯化剤として用いた従来の複金属シアン化物触媒より有機錯化剤の含量が少なくて環境にやさしい。
【0030】
本発明の一実施形態である複金属シアン化物触媒に含まれるポリエーテル化合物は、環状エーテル化合物を開環重合して製造された化合物、エポキシポリマー、またはオキセタンポリマーであることができ、末端は、水酸基、アミン基、エステル基、またはエーテル基であることができる。好ましくは、水酸基官能基(functionality)数が1~8であるポリエーテルポリオールであることができる。
【0031】
上記ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体、酸化ブチレンポリマー、及び超分岐(hyper branched)ポリグリシドールからなる群から選択された一つ以上であることができる。上記エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体は、例えば、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)三元共重合体、オキシドキャップされたポリ(オキシプロピレン)ポリオール、またはエチレンオキシド-プロピレンオキシドポリオールであることができ、酸化ブチレンポリマーは、ブチレングリコール、重量平均分子量が1,000~50,000の水酸基を有する分岐グリセロール、またはそれらの共重合体であることもできる。
【0032】
高い触媒活性度を実現するために、上記ポリエーテル化合物の含量は、上記複金属シアン化物触媒100重量部を基準に、0.1~30重量部であることが好ましい。上記ポリエーテル化合物の含量が0.1重量部未満であると、格子構造である複金属シアン化物触媒の活性点に効果的に結合できないため、相対的に触媒の活性が低くなる。一方、上記ポリエーテル化合物の含量が30重量部を超えると、格子構造である複金属シアン化物触媒の活性点に効果的に結合できず、触媒の活性が低くなるため、0.1~30重量部であることが好ましい。
【0033】
上記複金属シアン化物触媒に含まれている金属塩及び金属シアン化物塩は、水に溶解されて反応することができる。具体的に、複金属シアン化物触媒は、水に溶ける金属塩と、水に溶ける金属シアン化物塩の反応産物であることができる。
【0034】
上記水に溶ける金属塩は、M(X)の一般式を有することができる。上記Mは、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(II)、V(V)、V(IV)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)、及びCr(III)からなる群から選択されることができ、具体的に、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、またはNi(II)であることが好ましい。一方、上記Xは、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩(sulfate)、炭酸塩(carbonate)、シアン化物(cyanide)、シュウ酸塩(oxalate)、チオシアン酸塩(thiocyanate)、イソシアン酸塩(isocyanate)、イソチオシアン酸塩(isothiocyanate)、カルボン酸塩(carboxylate)、及び硝酸塩(nitrate)からなる群から選択される陰イオンであることができる。また、上記nは1~3の整数であり、Mの原子価を満たす。例えば、上記金属塩は、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛、アセトニル酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、硝酸亜鉛、臭化鉄(II)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)、ギ酸ニッケル(II)、または硝酸ニッケル(II)であることができる。
【0035】
また、上記水に溶ける金属シアン化物塩は(Y)M’(CN)(A)の構造式を有することができる。M’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(V)、及びV(IV)からなる群から選択されることができ、具体的に、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)、またはNi(II)であることが好ましい。一方、Yは、アルカリ金属イオンやアルカリ性金属イオンであることができ、Aは、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、シアン化物、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、イソシアン酸塩、イソチオシアン酸塩、カルボン酸塩、及び硝酸塩からなる群から選択された陰イオンであることができる。また、上記aとbは1より大きい整数であり、a、b、cの電荷の合計は、M’電荷とのバランスを合わせることが好ましい。例えば、上記金属シアン化物は、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(II)酸カルシウム、またはヘキサシアノ鉄(II)酸リチウムであることができる。
【0036】
本発明は、複金属シアン化物触媒の製造方法を提供することができる。
【0037】
本発明の一実施形態は、酢酸基または酒石酸基を有する有機錯化剤、金属塩、及び蒸留水を含む第1混合溶液を製造する段階、上記第1混合溶液に金属シアン化物塩及び蒸留水を供給して第2混合溶液を製造する段階、上記第2混合溶液に上記有機錯化剤及びポリエーテル化合物を供給して第3混合溶液を製造する段階、及び上記第3混合溶液を遠心分離して沈殿物を得る段階を含む、複金属シアン化物触媒の製造方法を提供することができる。
【0038】
具体的に、酢酸基または酒石酸基を有する有機錯化剤、金属塩、及び蒸留水をビーカーに供給した後に混合し、機械式攪拌機を介して十分に攪拌することにより第1混合溶液を製造することができる。また、別のビーカーに金属シアン化物塩及び蒸留水を混合した溶液を製造した後、上記第1混合溶液に供給することにより第2混合溶液を製造することができる。上記第2混合溶液に上記有機錯化剤及び蒸留水を混合し、さらに攪拌することにより第3混合溶液を得ることができる。このように得られた第3混合溶液を、高速遠心分離を用いて分離した後に沈殿物を得ることができる。
【0039】
上記沈殿物には、本発明による複金属シアン化物触媒が含まれており、上記沈殿物を洗浄し乾燥する工程を介して複金属シアン化物触媒を製造することができる。
【0040】
本発明の複金属シアン化物触媒の製造方法は、用いる有機錯化剤の含量が少なくて環境にやさしく、且つ工程が簡単であるため、効果的である。また、上記触媒の製造方法で製造された複金属シアン化物触媒は、触媒活性に優れ、且つ触媒活性の誘導時間が短いという効果がある。
【0041】
本発明の一実施形態によると、上記第3混合溶液を遠心分離して得た沈殿物を洗浄する前に追加の工程を行うことにより、触媒活性にさらに優れた複金属シアン化物触媒を得ることができる。
【0042】
具体的に、a)上記沈殿物に上記有機錯化剤及び蒸留水を供給して第4混合溶液を製造する段階、b)上記第4混合溶液に上記有機錯化剤及び上記ポリエーテル化合物を供給して第5混合溶液を製造する段階、及びc)上記第5混合溶液を遠心分離して沈殿物を得る段階をさらに含むことができる。また、d)上記第5混合溶液を遠心分離して得られた沈殿物を洗浄及び乾燥する工程を介して触媒活性が向上した複金属シアン化物触媒を得ることができる。
【0043】
また、上記第5混合溶液にa)からd)の工程をさらに行うことにより、総3回の遠心分離工程を行うことができる。3回以上の遠心分離工程を行う場合、触媒の合成時に不要な未反応物であるカリウムイオン、塩化物イオン、錯化剤、共錯化剤などの不純物を容易に分離することができる。これにより、さらに純粋な触媒を製造して触媒の活性を増大させることができる。
【0044】
本発明は、複金属シアン化物触媒を用いたポリカーボネートポリオールの製造方法を提供することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、上記複金属シアン化物触媒下で、二酸化炭素及びエポキシ化合物を共重合してポリカーボネートポリオールを製造することができる。
【0046】
上記ポリカーボネートポリオールを製造する方法は、具体的に、高圧反応器を使用し、上記高圧反応器の上部に設置されたトラップに本発明の複金属シアン化物触媒を導入し、二酸化炭素ガスを用いて上記高圧反応器の内部をパージさせて、反応器内に存在して爆発の原因となり得る活性ガスを除去することができる。その後、エポキシ化合物を上記反応器内に注入し、反応器の内部圧力、攪拌速度、及び温度を増加させ、二酸化炭素を持続的に供給して圧力を維持させることができる。これにより、反応器の上部に設置されたトラップに補足されていた触媒が反応器の底に落ちてエポキシ化合物と二酸化炭素の共重合反応を促進させることができる。上記重合反応後、真空ガラスフィルターを用いて触媒と重合生成物を分離させることができ、真空乾燥を介して未反応エポキシ化合物を除去してポリカーボネートを得ることができる。
【0047】
上記ポリカーボネートポリオールに用いられる上記エポキシ化合物は、特に限定されないが、炭素数2~20のアルキレンオキシド、炭素数4~20のシクロアルケンオキシド、及び炭素数~20のスチレンオキシドからなる群から選択された一つ以上であることができる。
【実施例
【0048】
以下、具体的な実施例を介して本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0049】
実施例1
(1)複金属シアン化物触媒(DMC-MEA)の製造
第1のビーカーに塩化亜鉛12g、蒸留水46mL、2-メトキシエチルアセテート(2-methoxyethyl acetate)13mLを混合し(溶液1)、第2のビーカーでヘキサシアノコバルト酸カリウム(potassium hexacyanocobaltate)1.3gを蒸留水16mLに溶かした(溶液2)。第3のビーカーでポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)0.97gを2-メトキシエチルアセテート12mlに溶かした(溶液3)。球状フラスコ内に溶液1を投入した後、機械式攪拌機を用いて50℃で攪拌しながら溶液2を1時間投入した。以後、溶液3を添加して3分間反応させた。反応後の溶液を、高速遠心分離を用いて分離して、固体状の沈殿物を得た。上記沈殿物に蒸留水20mL、2-メトキシエチルアセテート12mLを添加した後、機械式攪拌機を用いて混合しながら50℃で1時間反応させた。反応後、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)0.485gを2-メトキシエチルアセテート6mLに溶かした混合溶液を入れて3分間攪拌させ、再び高速遠心分離を用いて固体の沈殿物を分離した。上記沈殿物に蒸留水20mL及び2-メトキシエチルアセテート6mLを添加した後、機械式攪拌機を用いて混合しながら50℃で1時間反応させた。反応後、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)2gを2-メトキシエチルアセテート8mLに溶かした混合溶液を入れて3分間攪拌させ、再び高速遠心分離を用いて固体の沈殿物を分離した。上記沈殿物を蒸留水100mLで2回洗浄し、2-メトキシエチルアセテート50mLで1回洗浄した後、80、30in.Hg真空下で一定の重量になるまで乾燥させて複金属シアン化物触媒(DMC-MEA)を得た。
【0050】
(2)ポリカーボネートポリオールの製造
上記DMC-MEA触媒10mgを触媒噴射用チューブに入れて160mLの高圧反応器内に設置し、開始剤PPG 400D 10mLを反応器に投入した後に反応器を結束した。以後、窒素ガスで2時間パージし、上記反応器を105℃に加熱して開始剤及び反応器内の水分をできるだけ除去した。上記反応器に微量の二酸化炭素ガス、シクロヘキセンオキシド20mL、及び溶媒トルエン10mLを投入した後にベント(vent)ライン及び投入口を閉鎖した。反応器を115℃に加熱した後、二酸化炭素ガスを注入して反応器内の二酸化炭素の圧力を43.5barに増加させ、温度と圧力が安定したら、撹拌を開始して重合反応を3時間行った。3時間後、二酸化炭素ガスの注入と加熱を停止して反応器内の残留二酸化炭素ガスを除去し、反応器の結束を解除して反応物を得た。反応物をトルエンで希釈した後にフィルターペーパーで濾過して触媒を除去した後、110℃で8時間真空乾燥してポリカーボネートポリオールを得た。
【0051】
実施例2
2-メトキシエチルアセテートを2-エトキシエチルアセテート(ethoxyethyl acetate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-EEA)を製造した。
【0052】
また、DMC-MEA触媒を上記DMC-EEA触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0053】
実施例3
2-メトキシエチルアセテートを2-ブトキシエチルアセテート(2-butoxyethyl acetate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-BEA)を製造した。
【0054】
また、DMC-MEAの触媒を上記DMC-BEA触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0055】
実施例4
2-メトキシエチルアセテートをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Diethylene glycol monoethyl ether acetate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-DGEEA)を製造した。
【0056】
また、DMC-MEA触媒を上記DMC-DGEEA触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0057】
実施例5
2-メトキシエチルアセテートをエチレングリコールジアセテート(Ethylene glycol diacetate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-EGD)を製造した。
【0058】
また、DMC-MEA触媒を上記DMC-EGD触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0059】
実施例6
2-メトキシエチルアセテートをL-(+)-酒石酸ジメチル((+)-Dimethyl-L-tartrate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-MT)を製造した。
【0060】
また、DMC-MEA触媒を上記DMC-MT触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0061】
実施例7
2-メトキシエチルアセテートをL-(+)-酒石酸ジエチル((+)-Diethyl-L-tartrate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-ET)を製造した。
【0062】
また、DMC-MEA触媒を上記DMC-ET触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0063】
実施例8
2-メトキシエチルアセテートをL-(+)-酒石酸ジイソプロピル((+)-Diisopropyl-L-tartrate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-IPT)を製造した。
【0064】
また、DMC-MEA触媒を上記DMC-IPT触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0065】
実施例9
2-メトキシエチルアセテートをL-(+)-酒石酸ジブチル((+)-Dibuthyl-L-tartrate)に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で複金属シアン化物触媒(DMC-BT)を製造した。
【0066】
また、DMC-MEA触媒を上記DMC-BT触媒に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0067】
実施例10
シクロヘキセンオキシド(cyclohexene oxide、CHO)をプロピレンオキシド(propylene oxide、PO)に変更したことを除いては、実施例1(DMC-MEA触媒を使用)と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0068】
実施例11
シクロヘキセンオキシド(cyclohexene oxide、CHO)をプロピレンオキシド(propylene oxide、PO)に変更したことを除いては、実施例2(DMC-MEA触媒を使用)と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0069】
実施例12
シクロヘキセンオキシド(cyclohexene oxide、CHO)をプロピレンオキシド(propylene oxide、PO)に変更したことを除いては、実施例3(DMC-BEA触媒を使用)と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0070】
実施例13
シクロヘキセンオキシド(cyclohexene oxide、CHO)をプロピレンオキシド(propylene oxide、PO)に変更したことを除いては、実施例4(DMC-DGEEA触媒を使用)と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0071】
実施例14
シクロヘキセンオキシド(cyclohexene oxide、CHO)をプロピレンオキシド(propylene oxide、PO)に変更したことを除いては、実施例5(DMC-EGD触媒を使用)と同様の方法でポリカーボネートポリオールを製造した。
【0072】
比較例1
(1)複金属シアン化物触媒(DMC-5)の製造
第1のビーカーに塩化亜鉛30g、蒸留水69mL、tert-ブチルアルコール115.5mLを混合し(溶液1)、第2のビーカーでヘキサシアノコバルト酸カリウム(potassium hexacyanocobaltate)3.15gを蒸留水42mLに溶かした(溶液2)。第3のビーカーでポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)3.5gをtert-ブチルアルコール20mLに溶かした(溶液3)。球状フラスコ内に溶液1を投入した後、機械式攪拌機を用いて攪拌しながら溶液2を1時間投入した。以後、溶液3を添加して3分間反応させた。反応後の溶液を、高速遠心分離を用いて分離して、沈殿物を得た。上記沈殿物に蒸留水46mL、tert-ブチルアルコール104mLを添加した後、機械式攪拌機を用いて混合しながら50℃で1時間反応させた。反応後、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)0.85gを入れて3分間攪拌させ、再び高速遠心分離を用いて固体の沈殿物を分離した。上記沈殿物にtert-ブチルアルコール77.75mLを添加した後、機械式攪拌機を用いて混合しながら50℃で1時間反応させた。反応後、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)0.45gを投入した後に3分間攪拌させ、再び高速遠心分離を用いて固体の沈殿物を分離した。上記沈殿物を蒸留水100mLで2回洗浄し、tert-ブチルアルコール50mLで1回洗浄した後、80、30in.Hg真空下で一定の重量になるまで乾燥させて複金属シアン化物触媒(DMC-5)を得た。
【0073】
(2)ポリカーボネートポリオールの製造
上記DMC-5触媒10mgを触媒噴射用チューブに入れて160mLの高圧反応器内に設置し、開始剤PPG 400D 10mLを反応器に投入した後に反応器を結束した。以後、窒素ガスで2時間パージし、反応器を105℃に加熱して開始剤及び反応器内の水分をできるだけ除去した。以後、上記反応器に微量の二酸化炭素ガス、シクロヘキセンオキシド20mL及び溶媒トルエン10mLを投入した後にベント(vent)ライン及び投入口を閉鎖した。反応器を115℃に加熱した後、二酸化炭素ガスを注入して反応器内の二酸化炭素の圧力を43.5barに増加させ、温度と圧力が安定したら、撹拌を開始して重合反応を3時間行った。3時間後、二酸化炭素ガスの注入と加熱を停止して反応器内の残留二酸化炭素ガスを除去し、反応器の結束を解除して反応物を得た。反応物をトルエンで希釈した後にフィルターペーパーで濾過して触媒を除去した後、110℃で8時間真空乾燥してポリカーボネートポリオールを得た。
【0074】
上記実施例1~14及び比較例1に対して、分子量、カーボネート選択率、カーボネート含量、収率、不飽和度、反応速度に対する試験を行い、その結果を下記表1~3に記載した。また、実施例1~5、実施例10~14及び比較例1に対して、水酸基価及び官能基数を測定して表1及び表3に記載し、実施例6~9及び比較例1に対して分散度(PDI)を測定して表2に記載した。
【0075】
表1及び表3に記載された実施例1~5及び実施例10~14は、分子量が相対的に小さいため、H-NMR分光分析(400MHz Spectrometer、Varian社)を用いて分析し、実施例6~9は、分子量が相対的に大きいため、ゲル浸透クロマトグラフィー(THF-GPC)を用いて分析し、その結果を表1~3に記載した。一方、H-NMR分光分析で比較例1を分析した結果を比較例1-1と記載し、ゲル透過クロマトグラフィーで比較例1を分析した結果を比較例1-2と記載した。
【0076】
実施例1~5、実施例10~14及び比較例1で製造されたポリカーボネートポリオールを、ポリカーボネートのH-NMR分光分析(400MHz Spectrometer、Varian社製)を用いて分子量、カーボネート選択率及び含量を測定し、この結果を表1及び表3に示した。具体的に、H-NMR分光分析において、カーボネートピークは4.5ppm付近に現れ、エーテルピークは3.5ppm付近に現れ、開始剤の分岐ピーク(branch peak)は0.8ppm付近に現れた。これを用いて分子量、カーボネート選択率及びカーボネート含量を、それぞれ下記式1~3で計算した。
【0077】
分子量=(開始剤の分子量)+(カーボネートのピーク面積×10.5×142)+(エーテルのピーク面積×10.5×98) (1)
カーボネート選択率=[(カーボネートのピーク面積)/(カーボネートのピーク面積)+(エーテルのピーク面積)]×100 (2)
カーボネート含量={(計算された分子量-開始剤の分子量)/(計算された分子量)}×カーボネート選択率×(44/142) (3)
(10.5は、分子内に有する水素の個数割合を示し、142、98、44、142は、分子繰り返し単位の分子量を意味する)
【0078】
一方、上記水酸基価はASTM E1899-97方法で測定され、OHv単位はmgBu4OH/gであり、上記官能基数は、最終生成物であるポリカーボネートポリオールの一つの分子当たり含まれている水酸基価に該当する。上記不飽和度は、分子末端において二重結合で終わる割合であって、上記不飽和度が低いほど次の反応の副反応による問題を防止する。これはASTM-4671法で測定し、上記反応速度は、触媒の含量(g)及び反応時間(h)当たり生成される最終生成物の含量(g)で計算して下記表1~3に記載した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
図1
図2
図3