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特許7107853電気化学デバイス用のフルオロポリマー膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用のフルオロポリマー膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20220720BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20220720BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20220720BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220720BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220720BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220720BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20220720BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220720BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20220720BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20220720BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20220720BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220720BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220720BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/426
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M10/058
C08J9/28 CFH
C08J5/18
C08K5/00
C08L27/12
C08F214/18
H01M50/434
H01M50/403 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018564848
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017064446
(87)【国際公開番号】W WO2017216184
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】16305721.9
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ルオー, エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】モーザー, ジャメル
(72)【発明者】
【氏名】ベナール, ギャエル
(72)【発明者】
【氏名】トマージ, ダニエル
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520781(JP,A)
【文献】国際公開第2015/169834(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/169835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40- 50/479
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05- 10/39
H01G 11/00- 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイス用の膜の製造方法であって、
前記膜が、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と
からなり、
前記媒体(L)が、少なくとも1つの有機カーボネートからなり、
前記膜が、1つもしくは複数の金属塩と、任意選択的に、1つもしくは複数の添加物とを含まず、
前記方法が、
- 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの官能性フルオロポリマー[官能性ポリマー(F)]と、
- 式(II):
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は、1~3の整数であり、A’は、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Y’は加水分解性基であり、X’は、少なくとも1個の-N=C=O官能基を含む炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M2)]と、
- 任意選択的に、式(I):
4-m AY (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは、1つもしくは複数の官能基を任意選択的に含む、炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 少なくとも1つの有機カーボネートからなる液体媒体[媒体(L)]と
を含む組成物を加水分解する工程および/または縮合させる工程を含み、
前記官能性ポリマー(F)が、
i.フッ化ビニリデン(VDF)、
ii.少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および、
iii.任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである、
方法。
【請求項2】
前記膜の前記ポリマー(F)が、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)]である、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記膜中の前記媒体(L)の量が、前記媒体(L)と前記少なくとも1つのポリマー(F)との総重量を基準として、少なくとも40重量%である、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
前記官能性含水素モノマーが、式(III-A):

(式中、R’、R’およびR’は水素原子であり、R’は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
のものである、請求項のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年6月14日出願の欧州特許出願第16305721.9号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、電気化学デバイス用の膜に、前記膜の製造方法に、および電気化学デバイスの製造方法での前記膜の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーおよび、特に、フッ化ビニリデンポリマーは、電気化学的用途などの多種多様の用途で使用されている。
【0004】
例えば、フルオロポリマーは、それらの耐化学薬品性および耐熱老化性のために、二次電池などの電気化学デバイスでの使用に好適なポリマー膜の製造での原材料として有利に使用されている。
【0005】
アルカリまたはアルカリ土類二次電池は典型的には、正極(カソード)と、イオン伝導膜と負極(アノード)とを組み立てることによって形成される。多くの場合セパレータと言われる、イオン伝導膜は、それが相対する電極間の有効な分離を確実にしながら、高いイオン伝導性を提供しなければならないので、電池において極めて重要な役割を果たしている。
【0006】
イオン伝導膜は典型的には、金属塩、とりわけリチウム塩を含有するゲル化ポリマー電解質である。
【0007】
有機化合物および無機化合物のハイブリッド化は、とりわけ、機械的特性が向上したポリマー化合物を創成するための重要な、かつ、発展的な方法である。そのような有機-無機ポリマーハイブリッドを精巧に作り上げるために、金属アルコキシドを使用するゾルゲル法は、最も有用な、かつ、重要な手法である。予め形成された有機ポリマーの存在下での、金属アルコキシドの、特にアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)またはテトラエトキシシラン(TEOS))の加水分解および縮合の反応条件を適切に制御することによって、元の化合物と比べて特性が改善されたハイブリッドを得ることが可能である。
【0008】
このシナリオ内で、国際公開第2011/121078号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)2011年10月6日は、共有結合がフルオロポリマー鎖を無機ドメインに連結しているある種のフルオロポリマーベースのハイブリッド有機/無機複合体であって、前記複合体が、ヒドロキシル基を有するある種の官能性フルオロポリマーと、Si、TiまたはZrのある種の加水分解性化合物との反応、ならびにその後の前記化合物の加水分解および重縮合を含む方法によって得られる複合体を開示している。この特許公文書はまた、そのようにして得られるハイブリッド有機/無機複合体が、電気化学的用途向けの膜、より具体的にはリチウムイオン電池用のセパレータとしての膜の製造のためにとりわけ使用できることを述べている。
【0009】
しかしながら、特に、リチウムイオン電池などの二次電池において、傑出した容量値を示す、電気化学デバイスでの使用に好適な膜が、当技術分野においてこのように依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
意外にも、電気化学デバイス、とりわけ二次電池が、液体電解質の使用を回避しながら本発明の膜を使用することによって容易に製造できることが今見いだされた。
【0011】
また意外にも、本発明の電気化学デバイスが有利にも良好な電気化学的性能および、ある種の実施形態によれば、また良好な機械的柔軟性を示すことが見いだされた。
【0012】
第1の場合に、本発明は、電気化学デバイス用の膜であって、前記膜が、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と
からなる膜に関する。
【0013】
本発明の電気化学デバイス用の膜は好ましくは、
- 少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と
からなる。
【0014】
本発明の目的のためには、用語「膜」は、それと接触する化学種の透過を抑える不連続の、一般に薄い、界面を意味することを意図する。この界面は、均質であっても、すなわち、構造が完全に一様であってもよく(稠密な膜)、またはそれは、例えば、有限の寸法の空隙、細孔もしくは穴を含有する、化学的にもしくは物理的に不均一であってもよい(多孔質膜)。
【0015】
本発明の膜は有利には、1つもしくは複数の金属塩と、任意選択的に、1つもしくは複数の添加物とを含まない。
【0016】
本発明の膜は有利には、
(a)Meが、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeが、Li、Na、K、またはCsであり、さらにより好ましくはMeがLiであり、nが、前記金属の原子価であり、典型的にはnが、1または2である、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(“Me(BOB)”)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、CまたはCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Meと、
(式中、R’は、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFおよびCFOCFからなる群から選択される)と、
(c)それらの組み合わせと
からなる群から選択される1つもしくは複数の金属塩を含むが、それらに限定されない1つもしくは複数の金属塩を含まない。
【0017】
本発明の膜はまた有利には、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリル酸ニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、アルキルホスホネート、およびビニル含有シランベースの化合物からなる群から選択される1つもしくは複数の添加物を含むが、それらに限定されない1つもしくは複数の添加物を含まない。
【0018】
第2の場合に、本発明は、膜の製造方法に関する。
【0019】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、膜の製造方法は典型的には、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 式(I):
4-mAY (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは、1つもしくは複数の官能基を任意選択的に含む、炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と
を含む、好ましくはそれらからなる組成物を加水分解する工程および/または縮合させる工程を含む。
【0020】
本発明の膜は有利には、本発明のこの第1の好ましい実施形態による方法によって得られる。
【0021】
上で定義されたような式(I)の化合物(M1)の加水分解性基Yの選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にするという条件で、特に限定されない。上で定義されたような式(I)の化合物(M1)の加水分解性基Yは典型的には、好ましくは塩素原子である、ハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0022】
上で定義されたような式(I)の化合物(M1)が少なくとも1つの官能基を基X上に含む場合、それは官能性化合物(M1)と称され;上で定義されたような式(I)の化合物(M1)の基Xのどれもが官能基を含まない場合、上で定義されたような式(I)の化合物(M1)は非官能性化合物(M1)と称されるであろう。
【0023】
化合物(M1)は好ましくは、式(I-A):
4-mA(OR (I-A)
(式中、mは、1~4、ある種の実施形態によれば、1~3の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RおよびRは独立して、C1~18炭化水素基から選択され、ここで、Rは少なくとも1つの官能基を任意選択的に含む)
のものである。
【0024】
官能基の非限定的な例としては、とりわけ、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩またはハライドの形態での)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩またはハライドの形態での)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩またはハライドの形態での)、チオール基、アミン基、第四級アンモニウム基、エチレン系不飽和基(ビニル基のような)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基が挙げられる。
【0025】
上で定義されたような式(I)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それは、より好ましくは、式(I-B):
A’ 4-mA(ORB’ (IV-B)
(式中、mは、1~3の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RA’は、少なくとも1つの官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RB’は、C~C線状もしくは分岐アルキル基であり、好ましくはRB’は、メチルまたはエチル基である)
のものである。
【0026】
官能性化合物(M1)の例はとりわけ、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、およびそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、
式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、およびそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(L)(OR)(式中、Lは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、xおよびyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0027】
非官能性化合物(M1)の例はとりわけ、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0028】
本発明の第2の好ましい実施形態によれば、膜の製造方法は典型的には、
- 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの官能性フルオロポリマー[官能性ポリマー(F)]と、
- 式(II):
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、mは、1~3の整数であり、A’は、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Y’は加水分解性基であり、X’は、少なくとも1個の-N=C=O官能基を含む炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M2)]と、
- 任意選択的に、上で定義されたような式(I)の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と
を含む、好ましくはそれらからなる組成物を加水分解する工程および/または縮合させる工程を含む。
【0029】
本発明の膜は有利には、本発明のこの第2の好ましい実施形態による方法によって得られる。
【0030】
上で定義されたような式(II)の化合物(M2)の加水分解性基Y’の選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にするという条件で、特に限定されない。上で定義されたような式(II)の化合物(M2)の加水分解性基Y’は典型的には、好ましくは塩素原子である、ハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0031】
化合物(M2)は好ましくは、式(II-A):
4-m’A’(ORm’ (II-A)
(式中、m’は、1~3の整数であり、A’は、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Rは、少なくとも1個の-N=C=O官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Rは、C~C線状もしくは分岐アルキル基であり、好ましくはRは、メチルまたはエチル基である)
のものである。
【0032】
化合物(M2)はより好ましくは、式(II-B):
O=C=N-RC’-A’-(ORD’ (II-B)
(式中、A’は、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RC’は、線状もしくは分岐C~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RD’は、C~C線状もしくは分岐アルキル基であり、好ましくはRD’は、メチルまたはエチル基である)
のものである。
【0033】
好適な化合物(M2)の非限定的な例としては、下記:トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネートおよびトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0034】
本発明のこの第2実施形態による膜中の、上で定義されたような式(I)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それは典型的には、-N=C=O官能基と異なる少なくとも1つの官能基を含む。
【0035】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)]は、フルオロポリマードメインと無機ドメインとを典型的には含み、好ましくはそれらからなり、ここで、無機ドメインは、式-O-C(O)-NH-Z-AY3-m(M1-g)[式中、m、Y、A、Xは、上で定義されたものと同じ意味を有し、Zは、少なくとも1つの官能基、任意選択的に、式-O-A’Y’m’-1X’4-m’(M2-g)(式中、m’、Y’、A’、X’は、上で定義されたものと同じ意味を有する)の末端基を含む少なくとも1つのペンダント側鎖を任意選択的に含む、炭化水素である]の末端基を含む少なくとも1つのペンダント側鎖を加水分解する工程および/または縮合させる工程によって得られる。
【0036】
本発明の膜は、電気化学デバイスでの、特に二次電池での使用に特に好適である。
【0037】
本発明の目的のためには、用語「二次電池」は、再充電可能な電池を意味することを意図する。
【0038】
本発明の二次電池は好ましくは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)およびイットリウム(Y)のいずれかをベースとする二次電池である。
【0039】
本発明の二次電池はさらにより好ましくは、リチウムイオン二次電池である。
【0040】
第3の場合に、本発明は、電気化学デバイス、好ましくは二次電池の製造方法であって、前記方法が、正極[正極(E)]と負極[負極(E)]との間に本発明の少なくとも1つの膜を組み立てる工程を含み、
ここで、正極(E)および負極(E)の少なくとも1つが、
- 電流コレクタと、
- 前記電流コレクタに付着して、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物
を含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1つのフルオロポリマー層と、
を含む方法に関する。
【0041】
本出願人は、これが本発明の範囲を限定することなしに、1つもしくは複数の塩(M)と、任意選択的に、1つもしくは複数の添加物とが有利には、正極(E)および負極(E)のいずれかから本発明の膜の方へ移行し、それによって、それにより提供される電気化学デバイスの良好な電気化学的性能を確保すると考える。
【0042】
第4の場合に、本発明は、正極(E)と負極(E)との間に本発明の少なくとも1つの膜を含む、電気化学デバイス、好ましくは二次電池であって、
正極(E)および負極(E)の少なくとも1つが、
- 電流コレクタと、
- 前記電流コレクタに付着して、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物
を含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1つのフルオロポリマー層と
を含む二次電池に関する。
【0043】
本発明の膜の媒体(L)は、本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)と等しくても、異なってもよい。
【0044】
ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0045】
ポリマー(F)は好ましくは、部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0046】
本発明の目的のためには、用語「部分フッ素化フルオロポリマー」は、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味することを意図し、ここで、前記フッ素化モノマーおよび前記含水素モノマーのうちの少なくとも1つは、少なくとも1個の水素原子を含む。
【0047】
用語「フッ素化モノマー」とは、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン系不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0048】
用語「含水素モノマー」とは、少なくとも1個の水素原子を含み、そしてフッ素原子を含まないエチレン系不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0049】
用語「少なくとも1つのフッ素化モノマー」は、ポリマー(F)が1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0050】
用語「少なくとも1つの含水素モノマー」は、ポリマー(F)が1つまたは2つ以上の含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「含水素モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1つまたは2つ以上の含水素モノマーの両方を意味すると理解される。
【0051】
ポリマー(F)は、官能性フルオロポリマー[官能性ポリマー(F)]であってもよい。
【0052】
官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
ポリマー(F)は有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の線状配列を含む線状ポリマー[ポリマー(F)]である。
【0053】
ポリマー(F)はしたがって典型的には、グラフトポリマーと区別できる。
【0054】
官能性ポリマー(F)は有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の線状配列を含むランダムポリマー[ポリマー(F)]である。
【0055】
表現「ランダムに分布した繰り返し単位」は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーの配列(前記配列は、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する2つの繰り返し単位間に含まれる配列)の平均数(%)と、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の総平均数(%)との間のパーセント比を意味することを意図する。
【0056】
少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位のそれぞれが分離されているとき、すなわち、官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位が少なくとも1つのフッ素化モノマーの2つの繰り返し単位間に含まれるとき、少なくとも1つの官能性含水素モノマーの配列の平均数は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の平均総数に等しく、その結果、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率は100%である:この値は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の完全ランダム分布に対応する。したがって、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の総数に対して少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する分離された繰り返し単位の数が大きければ大きいほど、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率の百分率値はより高くなるであろう。
【0057】
官能性ポリマー(F)はしたがって、ブロックポリマーと典型的に区別できる。
【0058】
本発明の第1実施形態によれば、ポリマー(F)は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む官能性ポリマー(F)であってもよい。
【0059】
本発明のこの第1実施形態による官能性ポリマー(F)は、本発明の第2実施形態による方法によって得られる膜での使用に特に好適である。
【0060】
本発明の第2実施形態によれば、ポリマー(F)は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む官能性ポリマー(F)であってもよい。
【0061】
本発明のこの第2実施形態による官能性ポリマー(F)は、本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかでの使用に特に好適である。
【0062】
ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーの重合によって得られる。
【0063】
官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1つの官能性含水素モノマーとの重合によって得られる。
【0064】
本発明の第1実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーと、任意選択的に、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーとの重合によって得られる。
【0065】
本発明の第2実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーと、任意選択的に、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーとの重合によって得られる。
【0066】
フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0067】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それは、パー(ハロ)フッ素化モノマーと称される。
【0068】
フッ素化モノマーは、1個もしくは複数個の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含んでもよい。
【0069】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、下記:
- テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロペンなどのC~Cパーフルオロオレフィン;
- フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレンなどのC~C含水素フルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキルである)のパーフルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-またはパーフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- CF=CFOX(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、C~C12アルキル基、C~C12オキシアルキル基または、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基など、1つもしくは複数のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基である];
- 式CF=CFOCFORf2[式中、Rf2は、C~Cフルオロ-もしくはパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、C、または-C-O-CFなどの1つもしくは複数のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基である]の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOY[式中、Yは、C~C12アルキル基もしくは(パー)フルオロアルキル基、C~C12オキシアルキル基、または1つもしくは複数のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、そしてYは、その酸、酸ハライドまたは塩の形態での、カルボン酸またはスルホン酸基を含む]の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール
が挙げられる。
【0070】
フッ素化モノマーが、例えば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンまたはフッ化ビニルなどの水素含有フッ素化モノマーである場合、ポリマー(F)は、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、前記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーであるか、またはそれは、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、任意選択的に、前記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0071】
フッ素化モノマーが、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフロオロプロピレンまたはパーフルオロアルキルビニルエーテルなどのパー(ハロ)フッ素化モノマーである場合、ポリマー(F)は、少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーおよび、任意選択的に、前記パー(ハロ)フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0072】
ポリマー(F)は、非晶質であっても、半結晶性であってもよい。
【0073】
用語「非晶質」は、ASTM D-3418-08に従って測定されるように、5J/g未満の、好ましくは3J/g未満の、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0074】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定されるように、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0075】
ポリマー(F)は好ましくは、半結晶性である。
【0076】
ポリマー(F)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0077】
ポリマー(F)は、好ましくは最大でも20モル%、より好ましくは最大でも15モル%、さらにより好ましくは最大でも10モル%、最も好ましくは最大でも3モル%の少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0078】
官能性ポリマー(F)中の少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の平均モル百分率の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけ酸-塩基滴定方法またはNMR方法に言及することができる。
【0079】
官能性ポリマー(F)は好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0080】
本発明の第1実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0081】
本発明のこの第1実施形態の官能性ポリマー(F)はより好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、ならびに
- 任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0082】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーは好ましくは、式(III)の(メタ)アクリルモノマーおよび式(IV)のビニルエーテルモノマー:
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基であり、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
からなる群から選択される。
【0083】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーはより好ましくは、上で定義されたような式(III)のものである。
【0084】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーはさらにより好ましくは、式(III-A):
(式中、R’、R’およびR’は水素原子であり、R’は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
のものである。
【0085】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0086】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーはさらにより好ましくは、下記:
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレー(HPA)
- およびそれらの混合物
から選択される。
【0087】
本発明の第2実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0088】
本発明のこの第2実施形態の官能性ポリマー(F)はより好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、ならびに
- 任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0089】
少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む官能性含水素モノマーは好ましくは、式(V):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基である)
の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される。
【0090】
少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む官能性含水素モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0091】
ポリマー(F)は典型的には、乳化重合または懸濁重合によって得られる。
【0092】
本発明の目的のためには、用語「電気活性化合物[化合物(EA)]」は、電気化学デバイスの充電段階および放電段階中にアルカリまたはアルカリ土類金属イオンをその構造中に組み入れるまたは挿入する、かつ、それから実質的に放出することができる化合物を意味することを意図する。化合物(EA)は好ましくは、リチウムイオンを組み入れるまたは挿入するおよび放出することができる。
【0093】
本発明の電極(E)の層(L1)の化合物(EA)の性質は、それによって提供される電極(E)が正極[正極(E)]であるか、または負極[負極(E)]であるかどうかに左右される。
【0094】
リチウムイオン二次電池用の正極(E)を形成する場合には、化合物(EA)は、式LiMQ(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、CrおよびVなどの遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Qは、OまたはSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含んでもよい。これらの中で、式LiMO(式中、Mは上で定義されたものと同じものである)のリチウムベースの複合金属酸化物を使用することが好ましい。それの好ましい例としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1-x(0<x<1)およびスピネル構造LiMnが挙げられ得る。
【0095】
代案として、リチウムイオン二次電池用の正極(E)を形成する場合にはさらに、化合物(EA)は、式M(JO1-f(式中、Mは、M金属の20%未満を表す別のアルカリ金属で部分的に置換されていてもよい、リチウムであり、Mは、+1~+5の酸化レベルでの、そして0を含めて、M金属の35%未満を表す1つもしくは複数の追加の金属で部分的に置換されてもよい、Fe、Mn、Niまたはそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルでの遷移金属であり、JOは、任意のオキシアニオンであり、ここでJは、P、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組合せのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシドまたはクロリドアニオンであり、fは、一般的に0.75~1に含まれる、JOオキシアニオンのモル分率である)のリチウム化または部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオンベースの電気活性材料を含んでもよい。
【0096】
上で定義されたようなM(JO1-f電気活性材料は、好ましくはホスフェートをベースであり、規則正しいまたは変性されたカンラン石構造を有してもよい。
【0097】
より好ましくは、化合物(EA)は、式Li3-xM’M’’2-y(JO(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’およびM’’は、同じまたは異なる金属であり、それらの少なくとも1つは遷移金属であり、JOは好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換されてもよいPOであり、ここで、Jは、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組み合わせのいずれかである)を有する。さらにより好ましくは、化合物(EA)は、式Li(FeMn1-x)PO(式中、0≦x≦1であり、ここで、xは、好ましくは1である(すなわち、式LiFePOのリチウム鉄ホスフェートである)のホスフェートベースの電気活性材料である。
【0098】
リチウムイオン二次電池用の負極(E)を形成する場合には、化合物(EA)は好ましくは、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維または球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素と;
- リチウム金属と;
- とりわけ米国特許第6,203,944号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO.)2001年3月20日におよび/または国際公開第00/03444号パンフレット(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING CO.)2000年1月20日に記載されているものなどの、リチウム合金組成物と;
- 一般に式LiTi12で表される、リチウムチタネート(これらの化合物は、可動イオン、すなわち、Liを受け入れるときに低レベルの物理的膨脹を有する、「ゼロ歪」挿入材料と一般に考えられる)と;
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られる、リチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウムと;
- 式Li4.4Geの結晶相を含む、リチウム-ゲルマニウム合金と
を含んでもよい。
本発明の目的のためには、用語「液体媒体[媒体(L)]」は、大気圧下に20℃で液体状態にある1つもしくは複数の物質を含む媒体を意味することを意図する。
【0099】
媒体(L)は典型的には、1つもしくは複数の溶媒(S)を含まない。
【0100】
本発明の膜中の媒体(L)の量は、前記媒体(L)と少なくとも1つのポリマー(F)との総重量を基準として、典型的には少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0101】
本発明の膜中の媒体(L)の量は、前記媒体(L)と少なくとも1つのポリマー(F-h)との総重量を基準として、典型的には少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0102】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれか中の媒体(L)の量は、前記媒体(L)と少なくとも1つのポリマー(F)との総重量を基準として、典型的には少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0103】
媒体(L)は、少なくとも1つの有機カーボネートと、任意選択的に、少なくとも1つのイオン液体とを有利には含む、好ましくはそれらからなる。
【0104】
好適な有機カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0105】
本発明の目的のためには、用語「イオン液体」は、大気圧下に100℃よりも下の温度で液体状態にある、正電荷を持つカチオンと、負電荷を持つアニオンとの組み合わせにより形成される化合物を意味することを意図する。
【0106】
イオン液体は典型的には、
- 1つもしくは複数のC~C30アルキル基を任意選択的に含有するイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムイオンからなる群から選択される正電荷を持つカチオンと、
- ハライド、過フッ素化アニオンおよびボレートからなる群から選択される負電荷を持つアニオンと
を含有する。
【0107】
~C30アルキル基の非限定的な例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-ヘプチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシル基が挙げられる。
【0108】
イオン液体の正電荷を持つカチオンは好ましくは、
- 式(VI):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R11およびR22は独立して、C~Cアルキル基を表し、互いに等しいかもしくは異なる、R33、R44、R55およびR66は独立して、水素原子またはC~C30アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基を表す)
のピロリジニウムカチオンと、
- 式(VII):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R11およびR22は独立して、C~Cアルキル基を表し、互いに等しいかもしくは異なる、R33、R44、R55、R66およびR77は独立して、水素原子またはC~C30アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基を表す)
のピペリジニウムカチオンと
からなる群から選択される。
【0109】
イオン液体の正電荷を持つカチオンはより好ましくは、
- 式(VI-A):
のピロリジニウムカチオンと
- 式(VII-A):
のピペリジニウムカチオンと
からなる群から選択される。
【0110】
イオン液体の負電荷を持つアニオンは好ましくは、
- 式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと、
- 式PF のヘキサフルオロホスフェートと、
- 式BF のテトラフルオロボレートと、
- 式:
のオキサロボレートと
からなる群から選択される。
【0111】
イオン液体はさらにより好ましくは、上で定義されたような式(VI-A)のピロリジニウムカチオンと、式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、式PF のヘキサフルオロホスフェートおよび式BF のテトラフルオロボレートからなる群から選択される過フッ素化アニオンとを含有する。
【0112】
塩(M)は典型的には、
(a)Meが金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeがLi、Na、KまたはCsであり、さらにより好ましくはMeがLiであり、nが前記金属の原子価であり、典型的にはnが1または2である、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、CまたはCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Meと、
(式中、R’は、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFおよびCFOCFからなる群から選択される)と、
(c)それらの組み合わせと
からなる群から選択される。
【0113】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)中の塩(M)の濃度は有利には、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0114】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)中の塩(M)の濃度は有利には、最大でも3M、好ましくは最大でも2M、より好ましくは最大でも1Mである。
【0115】
本発明の目的のためには、用語「導電性化合物[化合物(C)]」は、電子伝導性を電極に付与することができる化合物を意味することを意図する。
【0116】
化合物(C)は典型的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛粉末、黒鉛繊維などの炭素質材料、ならびにニッケルおよびアルミニウム粉末または繊維などの金属粉末または繊維からなる群から選択される。
【0117】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかは、媒体(L)の重量を基準として、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~7重量%の量で、1つもしくは複数の添加物をさらに含んでもよい。
【0118】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリル酸ニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、アルキルホスホネート、およびビニル含有シランベースの化合物などの1つもしくは複数の添加物をさらに含んでもよい。
【0119】
正極(E)および負極(E)のいずれかは、好ましくはフレキシブル電極(E)であり、ここで、電流コレクタは、ポリマー基材と、前記ポリマー基材に付着して、導電性層とを含む、好ましくはそれらからなる。
【0120】
フレキシブル電極(E)は有利には、それによって提供される電気化学デバイスの傑出した機械的柔軟性および傑出した電気化学的性能を両方とも確実にする。
【0121】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、少なくとも1つの半結晶性ポリマーを典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0122】
本発明の目的のためには、用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定されるように、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマーを意味することを意図する。
【0123】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、130℃よりも高い、好ましくは150℃よりも高い、より好ましくは200℃よりも高い融点を有する少なくとも1つの半結晶性ポリマーを好ましくは含む、より好ましくはそれからなる。
【0124】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、ポリ塩化ビニリデンなどのハロポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、芳香族ポリアミドなどのポリアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの半結晶性ポリマーをより好ましくは含む、さらにより好ましくはそれからなる。
【0125】
好適なフルオロポリマーの非限定的な例としては、フッ化ビニリデン(VDF)などの少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)および/もしくはテトラフルオロエチレン(TFE)などの少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーが挙げられる。
【0126】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、
- エチレン、プロピレンおよびイソブチレンから選択される少なくとも1つの含水素モノマー、ならびに
- 任意選択的に、TFEおよび/またはCTFEと前記含水素モノマーとの総量を基準として、典型的には0.1モル%~30モル%の量で、1つもしくは複数の追加のモノマー
に由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーをより好ましくは含む、さらにより好ましくはそれからなる。
【0127】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、
- 35モル%~65モル%、好ましくは45モル%~55モル%のエチレン(E)と、
- 65モル%~35モル%、好ましくは55モル%~45モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびテトラフルオロエチレン(TFE)またはそれらの混合物の少なくとも1つと、
- 任意選択的に、TFEおよび/またはCTFEとエチレンとの総量を基準として、0.1モル%~30モル%の1つもしくは複数の追加のモノマーと
を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーを、さらにより好ましくは含む、さらにより好ましくはそれからなる。
【0128】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタの導電性層は、炭素(C)もしくはケイ素(Si)、またはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)および、ステンレス鋼を含むが、それに限定されないそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0129】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタの導電性層は典型的には、箔、メッシュまたはネットの形態にある。
【0130】
本発明のフレキシブル電極(E)のフルオロポリマー層は典型的には、10μm~500μm、好ましくは50μm~250μm、より好ましくは70μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0131】
本発明の電極(E)の電流コレクタの性質は、それによって提供される電極(E)が正極(E)であるか、または負極(E)であるどうかに左右される。
【0132】
本発明の電極(E)が正極(E)である場合、電流コレクタは、炭素(C)、またはアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)およびそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0133】
本発明の電極(E)が正極(E)である場合、電流コレクタは好ましくは、アルミニウム(Al)からなる。
【0134】
本発明の電極(E)が負極(E)である場合、電流コレクタは、炭素(C)もしくはケイ素(Si)、またはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)およびそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0135】
本発明の電極(E)が負極(E)である場合、電流コレクタは好ましくは、銅(Cu)からなる。
【0136】
フレキシブル電極(E)は典型的には、
(i)ポリマー基材および、前記ポリマー基材に付着して、導電性層を含む、好ましくはそれらからなる、電流コレクタを提供する工程と、
(ii)
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 前記媒体(L)と異なる少なくとも1つの有機溶媒[溶媒(S)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物
を含む、好ましくはそれらからなる電極形成組成物を提供する工程と、
(iii)工程(ii)において提供された電極形成組成物を、工程(i)において提供された電流コレクタの導電性層上へ適用し、それによって電極[電極(E)]を提供する工程と、
(iv)前記少なくとも1つの溶媒(S)を、工程(iii)において提供された電極(E)から蒸発させる工程と
を含む方法によって得られる。
【0137】
溶媒(S)の選択は、それがポリマー(F)を可溶化するために好適であるという条件で、特に限定されない。
【0138】
溶媒(S)は典型的には、
- メチルアルコール、エチルアルコールおよびジアセトンアルコールなどのアルコール、
- アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびイソホロンなどのケトン、
- イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレートおよびγ-ブチロラクトンなどの線状もしくは環状エステル、
- N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリドンなどの線状もしくは環状アミド、ならびに
- ジメチルスルホキシド
からなる群から選択される。
【0139】
本発明の方法の工程(i)において提供される電流コレクタは、好ましくは、両面接着テープを典型的に使用する、積層、好ましくは共積層、熱エンボス加工、コーティング、印刷、物理蒸着、化学蒸着および直接蒸発などの真空技術を用いるめっきなどの任意の好適な手順により、導電性層をポリマー基材上へ適用することによって典型的には製造される。
【0140】
本発明の方法の工程(iii)下で、電極形成組成物は、典型的には、キャスティング、印刷およびロールコーティングなどの任意の好適な手順により電流コレクタの導電性層上へ適用される。
【0141】
任意選択的に、工程(iii)は、工程(iii)において提供された電極形成組成物を、工程(iv)において提供される電極(E)上へ適用することにより、典型的には1回もしくは複数回繰り返されてもよい。
【0142】
本発明の方法の工程(iv)下で、乾燥は、大気圧下または真空下のいずれで行われてもよい。あるいは、乾燥は、改善雰囲気下で、例えば、典型的にはとりわけ水分が除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含有量)、不活性ガス下で行われ得る。
【0143】
乾燥温度は、本発明の電極(E)からの1つもしくは複数の溶媒(S)の蒸発による除去を達成するように選択されるであろう。
【0144】
本発明の電極(E)は好ましくは、1つもしくは複数の溶媒(S)を含まない。
【0145】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0146】
本発明は、以下の実施例に関連してより詳細にこれから説明されるが、実施例の目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0147】
原材料
ポリマー(F-A):25℃でのDMF中で0.30L/gの固有粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー(F-B):25℃でのDMF中で0.08L/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
黒鉛:75%のSMG HE2-20(日立化成株式会社)/25%のTIMREX(登録商標)SFG6。
LiPF: リチウムヘキサフルオロホスフェート塩。
LiTFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩。
LiTDI: リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール。
LFP: LiFePO
NMC: Umicoreから商業的に入手可能な、LiNi0.33Mn0.33Co0.33
TEOS:テトラエトキシシラン。
TSPI:3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート。
DBTDL:ジブチルスズジラウレート。
【0148】
ポリマー(F)の固有粘度の測定
固有粘度(η)[dl/g]は、Ubbelhode粘度計を用い、ポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させることによって得られた溶液の、25℃での、滴下時間に基づいて、以下の方程式:
(式中、cは、ポリマー濃度[g/dl]であり、ηは、相対粘度、すなわち、試料溶液の滴下時間と、溶媒の滴下時間との間の比であり、ηspは、比粘度、すなわち、η-1であり、Γは、ポリマー(F)については3に相当する、実験因子である)
を用いて測定した。
【0149】
Liイオン電池構成要素の製造からの一般的な手順
【0150】
液体媒体(L-A)の調製
液体媒体は、1:1の容積比のエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物に5重量%のビニレンカーボネート(VC)を分散させることによって調製した。
【0151】
液体媒体(L-B)の調製
液体媒体は、1:1の容積比のエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物に5重量%のビニレンカーボネート(VC)を分散させることによって調製した。
【0152】
電解質媒体(E-A)の調製
電解質媒体は、1:1の容積比のエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物および5重量%のビニレンカーボネート(VC)を含有する液体媒体にLiPF(2.4モル/l)を溶解させることによって調製した。
【0153】
電解質媒体(E-B)の調製
電解質媒体は、1:1の容積比のエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物および2重量%のビニレンカーボネート(VC)を含有する液体媒体にLiTFSI(2.4モル/l)を溶解させることによって調製した。
【0154】
電解質媒体(E-C)の調製
電解質媒体は、1:1の容積比のエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物および2重量%のビニレンカーボネート(VC)を含有する液体媒体にLiTDI(1.2モル/l)を溶解させることによって調製した。
【0155】
膜の製造
ポリマー(F-B)を、30分間60℃でのアセトンに溶解させた。DBTDL(次工程において添加されるTSPIに対して10モル%)をそれに添加し、そのようにして得られた溶液を30分間60℃で均質化した。TSPI(ポリマー(F-B)に対して1.1モル%)をそれに添加し、そのようにして得られた溶液を2時間60℃で均質化した。液体媒体(L-A)または液体媒体(L-B)のいずれか(ポリマー(F-B)に対して66重量%)をそれに添加し、そのようにして得られた溶液を30分間60℃で均質化した。ギ酸(n=4.9×次工程において添加されるnTEOS)を次にそれに添加し、そのようにして得られた溶液を30分間60℃で均質化した。TEOS(ポリマー(F-B)に対して10%SiO)を最後にそれに添加し、そのようにして得られた溶液を30分間60℃で均質化した。膜は、PET箔上へ250μmの湿潤厚でテープキャスティングすることによって乾燥室(露点-40℃)においてアルゴン雰囲気下で調製し、コートした。
【0156】
黒煙ベースの負極の製造
ポリマー(F-A)、黒鉛、液体媒体、少なくとも1つの金属塩ありまたはなし、およびアセトンを含有する溶液を、アルゴン雰囲気下のグローブボックス(O<2ppm、HO<2ppm)において調製した。そのようにして得られたスラリーを、30分間密閉バイアル中で磁気棒によってさらに攪拌した。スラリーを、標的電極ローディングに達するために特定の湿潤厚さで、10μmの厚さを有するCu箔上へ乾燥室(露点:-40℃)においてテープキャストした。
【0157】
正極の製造
活性材料粉末を、50重量%のC-NERGY(登録商標)SUPER C65カーボンブラックと50重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)とからなる導電性化合物のブレンドと混合した。ポリマー(F-A)、液体媒体、少なくとも1つの金属塩ありまたはなし、およびアセトンを含有する溶液を次に、アルゴン雰囲気下のグローブボックス(O<2ppm、HO<2ppm)においてこの混合物に添加した。そのようにして得られたスラリーを、30分間密閉バイアル中で磁気棒によってさらに攪拌した。スラリーを、標的電極ローディングに達するために特有の湿潤厚さで、20μmの厚さを有するAl箔上へ乾燥室(露点:-40℃)においてテープキャストした。
【0158】
コイン電池試験
電極を、それぞれ、正極および負極について14mmおよび16mmの直径の特有のパンチによりディスクの形態にカットした。膜を、16.5mmの直径でカットした。システムの評価は、コイン電池構成で行った。コイン電池は、10ppm未満のHOのアルゴン雰囲気下のグローブボックスにおいて膜を電極間に積み重ねることによって製造した。
【実施例
【0159】
実施例1:リチウムイオン電池の製造
コイン電池を、液体媒体(L-A)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された負極(4.9mAh/cm)と、2.4MのLiPFを含有する電解質媒体(E-A)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された正極(3.3mAh/cm)との間に、液体媒体(L-A)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された膜を組み立てることによって製造した。そのようにして得られたコイン電池を、2.8Vと4.15Vとの間でサイクルさせた。C/20-D/20での2サイクルのステップ後に、試験プロトコルを、C/10-D/10、C/5-D/5、C/2-D/2、C/2―D、C/2-2Dでの連続シリーズの5サイクルに従って実施した。異なる放電率下でのコイン電池の放電容量値を、本明細書で下の表1に示す。
【0160】
【0161】
実施例2:Liイオン電池の製造
コイン電池を、2.4MのLiPFを含有する電解質媒体(E-A)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された負極(1.8mAh/cm)と、液体媒体(L-A)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された正極(1.6mAh/cm)との間に、液体媒体(L-A)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された膜を組み立てることによって製造した。そのようにして得られたコイン電池を、2.6Vと3.7Vとの間でサイクルさせた。C/20-D/20での2サイクルのステップ後に、試験プロトコルを、C/10-D/10、C/5-D/5、C/2-D/2、C/2-D、C/2-2Dでの連続シリーズの5サイクルに従って実施した。異なる放電率下でのコイン電池の放電容量値を、本明細書で下の表2に示す。
【0162】
【0163】
実施例3:Liイオン電池の製造
コイン電池を、液体媒体(L-B)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された負極と、2.4MのLiTFSIを含有する電解質媒体(E-B)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された正極(1.6mAh/cm)との間に、液体媒体(L-B)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された膜を組み立てることによって製造した。そのようにして得られたコイン電池を、2.6Vと3.7Vとの間でサイクルさせた。C/20-D/20での2サイクルのステップ後に、試験プロトコルを、C/10-D/10、C/5-D/5、C/2-D/2、C/2-D、C/2-2Dの連続シリーズの5サイクルに従って実施した。異なる放電率下でのコイン電池の放電容量値を、本明細書で下の表3に示す。
【0164】
【0165】
実施例4:Liイオン電池の製造
コイン電池を、1.2MのLiTDIを含有する電解質媒体(E-C)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された負極(1.6mAh/cm)と、1.2MのLiTDIを含有する電解質媒体(E-C)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された正極(1.6mAh/cm)との間に、液体媒体(L-B)を使用して本明細書で上に詳述されたような一般的な手順に従って調製された膜を組み立てることによって製造した。そのようにして得られたコイン電池を、2.8Vと4.15Vとの間でサイクルさせた。C/20-D/20での2サイクルのステップ後に、試験プロトコルを、C/10-D/10、C/5-D/5、C/2-D/2、C/2-D、C/2-2Dでの連続シリーズの5サイクルに従って実施した。異なる放電率下でのコイン電池の放電容量値を、本明細書で下の表4に示す。
【0166】
【0167】
上記を考慮して、本発明の電気化学デバイスは、前記膜中のあらゆる金属塩と、任意選択的に、1つもしくは複数の添加物との不在にもかかわらず、本発明の膜の方への電極の少なくとも1つに含有される少なくとも1つの金属の移行のために、傑出した電気化学的性能を有利にも示すことが見いだされた。