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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用フルオロポリマー膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20220720BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20220720BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220720BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220720BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20220720BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20220720BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220720BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/426
H01M10/058
H01M4/13
H01G11/56
H01G11/38
H01M50/434
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018564961
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2017064447
(87)【国際公開番号】W WO2017216185
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】16305722.7
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルオー, エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ムールザーグ, ジャメル
(72)【発明者】
【氏名】ベナール, ギャエル
(72)【発明者】
【氏名】トマージ, ダニエル
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/169834(WO,A1)
【文献】特表2015-502636(JP,A)
【文献】国際公開第2015/169835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40- 50/479
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05- 10/39
H01G 11/00- 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの膜を正極(E)と負極(E)との間に備え、前記膜が、
- 少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)]と、
- 少なくとも1つの有機カーボネートとLiPFとを含む液体媒体[媒体(L)]と、
を含む、電気化学デバイスであって、
前記正極(E)および前記負極(E)のうちの少なくとも1つが、
- 電流コレクタと、
- 前記電流コレクタと接着しており、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]を含む液体媒体[媒体(L)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電化合物[化合物(C)]と、
- 任意選択的に、1つ以上の添加剤と、
を含む少なくとも1つのフルオロポリマー層と、を備え、
前記正極(E)および前記負極(E)のいずれかの前記ポリマー(F)が、
i.少なくとも1つのフッ素化モノマー、
ii.少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および
iii.任意選択的に、少なくとも1つの水素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む官能性ポリマー(F)であり、
前記少なくとも1つのフッ素化モノマーが、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーであり、
前記少なくとも1つの官能性水素化モノマーが、少なくとも1個の水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーであり、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含み、
前記少なくとも1つの水素化モノマーが、少なくとも1個の水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーであり、前記官能性水素化モノマーと異なる、電気化学デバイス。
【請求項2】
前記官能性ポリマー(F)の前記少なくとも1つの官能性水素化モノマーが、式(V):

[式中、互いに等しいかまたは異なるR、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基である]
のものである、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記正極(E)および前記負極(E)のいずれかの前記媒体(L)が、少なくとも1つの有機カーボネートと、LiPFと、任意選択的に1つ以上の添加剤と、を含む、請求項1または2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記の膜内の前記媒体(L)が、前記媒体(L)の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の量の少なくとも1つの有機カーボネートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記正極(E)および前記負極(E)のいずれかが、フレキシブル電極(E)であり、前記電流コレクタが、ポリマー基材と前記ポリマー基材に接着した導電層とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年6月14日出願の欧州特許出願第16305722.7号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、電気化学デバイス用膜、上記膜の製造プロセス、および電気化学デバイスの製造プロセスでの上記膜の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーおよび、特に、フッ化ビニリデンポリマーは、電気化学的用途などの多種多様の用途で使用されている。
【0004】
例えば、フルオロポリマーは、それらの耐化学薬品性および耐熱老化性のために、二次電池などの電気化学デバイスでの使用に好適な電極または膜のいずれかの製造での原材料として有利に使用されている。
【0005】
アルカリまたはアルカリ土類二次電池は典型的には、正極(カソード)と、イオン伝導膜と負極(アノード)とを組み立てることによって形成される。多くの場合セパレータと言われる、イオン伝導膜は、それが相対する電極間の有効な分離を確実にしながら高いイオン伝導性を提供しなければならないので電池において極めて重要な役割を果たしている。
【0006】
二次電池などの電気化学デバイスでの使用に好適な電解質としては、典型的に、液体電解質および固体電解質が挙げられる。電解質が二次電池での使用に好適であるためには、それらは、高いイオン伝導率、電極に対する高い化学的および電気化学的安定性、ならびに広範囲の温度にわたる高い熱安定性を示すのが望ましい。
【0007】
リチウムイオン二次電池での使用に好適な液体電解質は典型的に、適切な有機溶媒中に溶解したリチウム塩などの金属塩を含む。
【0008】
しかしながら、液体電解質がその引火点を超える温度に加熱される場合に重大な安全性問題が過熱により生じる場合がある。特に、カソード材料によって放出される酸素と燃料としての有機液体電解質との化学反応によって熱暴走が高温で生じる場合がある。
【0009】
リチウムイオン二次電池の安全性問題を解決するために、液体電解質と固体ポリマー電解質との両方の利点を有利に組み合わせて、このように高いイオン伝導率および高い熱安定性が与えられるゲルポリマー電解質が研究されている。
【0010】
また、特定の金属塩は二次電池の製造プロセス中に分解する場合があるか、またはこのような二次電池の電極のいずれかのコレクタを腐食させる場合がある。
【0011】
特に、LiTFSIは、容易に加水分解を受けるLiPFと比較して安定な電解質塩として広く使用されてきた。例えば、TERBORG,L.,et al.Investigation of thermal aging and hydrolysis mechanisms in commercial lithium ion battery electrolyte.Journal of Power Source.2013,vol.242,p.832-837を参照のこと。
【0012】
残念なことに、有機カーボネート中に溶解したLiTFSIを含有する電解質媒体は、リチウムイオン二次電池中のカソード用高電圧活性材料の存在下で、カソードのアルミニウムコレクタを腐食させる傾向がある。例えば、KRAEMER,L.,et al.Mechanism of Anodic Dissolution of the Aluminum Current Collector in 1 M LiTFSI EC:DEC 3:7 in Rechargeable Lithium Batteries.J.Electrochem.Soc.2013,vol.160,no.2,p.A356-360を参照のこと。
【0013】
また、有機カーボネートの代わりにイオン液体中に溶解したLiTFSIを含有する電解質媒体は、リチウムイオン二次電池用黒鉛系アノードを剥離する傾向がある。例えば、ROTHERMEL,S.,et al.Dual-graphite cells based on the reversible intercalation of bis(trifluoromethanesulfonyl)imide anions from an ionic liquid electrolyte.Energy .2014,vol.7,p.3412-3423を参照のこと。
【0014】
このように、有機カーボネート中またはイオン液体中のいずれかに溶解したLiTFSIを含有する電解質媒体の使用は、高電圧カソードが黒鉛系アノードにつなげられた安全な二次電池の製造を適切に確保するものではいということが見出された。
【0015】
したがって、安全性要件を適切に確保しながら優れた容量値を示す電気化学デバイス、特にリチウムイオン電池などの二次電池での使用に好適な膜に対するニーズが、当該技術分野において依然として存在する。
【発明の概要】
【0016】
今回、驚くべきことに、本発明の膜を使用することによって、電気化学デバイス、特に二次電池を容易に製造することができることが見出された。
【0017】
また、驚くべきことに、本発明の膜は安全性要件に適合し、当該技術分野において公知の膜の欠点をかかえていないということが見出された。
【0018】
特に、本発明の膜は、良好な電気化学的性能、および特定の実施形態によれば上記電気化学デバイスの良好な機械的柔軟性をも確保しながら、金属塩の分解を回避することによって、電気化学デバイス、特にリチウムイオン二次電池などの二次電池の製造を見事に可能にする。
【0019】
第1の例において、本発明は、電気化学デバイス用膜であって、
- 少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)]と、
- 少なくとも1つの有機カーボネートとLiPFとを含む液体媒体[媒体(L)]と、
を含む、好ましくはそれらからなる膜に関する。
【0020】
本発明の目的のためには、用語「膜」は、それと接触する化学種の透過を抑える不連続の、一般に薄い界面を意味することを意図する。この界面は、均質であっても、すなわち、構造が完全に一様であってもよく(稠密な膜)、またはそれは、例えば、有限の寸法の空洞、細孔もしくは穴を含有して化学的にもしくは物理的に不均一であってもよい(多孔質膜)。
【0021】
第2の例において、本発明は、電気化学デバイス用膜の製造プロセスに関する。
【0022】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、電気化学デバイス用膜の製造プロセスは典型的に、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 式(I):
4-mAY(I)
[式中、mは1~4の整数であり、AはSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは1つ以上の官能基を任意選択的に含む炭化水素基である]の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 少なくとも1つの有機カーボネートとLiPFとを含む液体媒体[媒体(L)]と、
を含む、好ましくはそれらからなる組成物を加水分解および/または縮合することを含む。
【0023】
本発明の電気化学デバイス用膜は、有利には、本発明の第1の好ましい実施形態によるプロセスにより得られる。
【0024】
上に定義されたような式(I)の化合物(M1)の加水分解性基Yの選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にするならば、特に限定されない。上に定義されたような式(I)の化合物(M1)の加水分解性基Yは、典型的に、好ましくは塩素原子であるハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0025】
上で定義されたような式(I)の化合物(M1)が少なくとも1つの官能基をX基上に含む場合、それは官能性化合物(M1)と称される。上で定義されたような式(I)の化合物(M1)のX基のいずれも官能基を含まない場合、上で定義されたような式(I)の化合物(M1)は非官能性化合物(M1)と称される。
【0026】
化合物(M1)は好ましくは、式(I-A):
4-mA(OR (I-A)
[式中、mは1~4、特定の実施形態によれば1~3の整数であり、AはSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRおよびRは、C~C18炭化水素基から独立して選択され、ここで、Rは任意選択的に少なくとも1つの官能基を含む]のものである。
【0027】
官能基の非限定的な例としては、とりわけ、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩またはハライドの形態)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩またはハライドの形態)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩またはハライドの形態)、チオール基、アミン基、第4級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基が挙げられる。
【0028】
上に定義されたような式(I)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それは、より好ましくは、式(I-B):
A’ 4-mA(ORB’ (I-B)
[式中、mは1~3の整数であり、AはSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRA’は少なくとも1つの官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRB’はC~C直鎖状または分岐アルキル基であり、好ましくはRB’はメチルまたはエチル基である]のものである。
【0029】
官能性化合物(M1)の例は、とりわけ、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミンプロピルメチルジメトキシシラン(aminoethylaminpropylmethyldimethoxysilane)、式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミンプロピルトリメトキシシラン(aminoethylaminpropyltrimethoxysilane)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、およびそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、およびそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(L)(OR)[式中、Lはアミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、xおよびyはx+y=4であるような整数である]のアルカノールアミンチタネートである。
【0030】
非官能性化合物(M1)の例は、とりわけ、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0031】
本発明の第2の好ましい実施形態によれば、電気化学デバイス用膜の製造プロセスは典型的に、
- 少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの官能性フルオロポリマー[官能性ポリマー(F)]と、
- 式(II):
X’4-m’A’Y’m’ (II)
[式中、m’は1~3の整数であり、A’はSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Y’は加水分解性基であり、X’は、少なくとも1つの-N=C=O官能基を含む炭化水素基である]
のうちの少なくとも1つの金属化合物[化合物(M2)]と、
- 任意選択的に、上に定義されたような式(I)の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 少なくとも1つの有機カーボネートとLiPFとを含む液体媒体[媒体(L)]と、
を含む、好ましくはそれらからなる組成物を加水分解および/または縮合することを含む。
【0032】
本発明の電気化学デバイス用膜は、有利には、本発明のこの第2の好ましい実施形態によるプロセスにより得られる。
【0033】
上に定義されたような式(II)の化合物(M2)の加水分解性基Y’の選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にするならば、特に限定されない。上に定義されたような式(II)の化合物(M2)の加水分解性基Y’は、典型的に、好ましくは塩素原子であるハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0034】
化合物(M2)は好ましくは、式(II-A):
4-m’A’(ORm’ (II-A)
[式中、m’は1~3の整数であり、A’はSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRは少なくとも1つの-N=C=O官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRはC~C直鎖状または分岐アルキル基であり、好ましくはRはメチルまたはエチル基である]
のものである。
【0035】
化合物(M2)は、より好ましくは式(II-B):
O=C=N-RC’-A’-(ORD’ (II-B)
[式中、A’はSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRC’は直鎖状または分岐C~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRD’はC~C直鎖状または分岐アルキル基であり、好ましくはRD’はメチルまたはエチル基である]
のものである。
【0036】
好適な化合物(M2)の非限定的な例としては、以下のもの:トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネートおよびトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0037】
本発明のこの第2の実施形態による膜における上に定義されたような式(I)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それは典型的に、-N=C=O官能基と異なる少なくとも1つの官能基を含む。
【0038】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)]は典型的に、フルオロポリマードメインと、無機ドメインと、を含む、好ましくはそれらからなり、ここで無機ドメインは、式-O-C(O)-NH-Z-AY3-m(M1-g)[式中、m、Y、A、Xは上で定義したような同じ意味を有し、Zは炭化水素基であり、任意選択的に少なくとも1つの官能基を含む]の末端基を含む少なくとも1つのペンダント側鎖、任意選択的に式-O-A’Y’m’-1X’4-m’(M2-g)[式中、m’、Y’、A’、X’は上で定義したような同じ意味を有する]の末端基を含む少なくとも1つのペンダント側鎖を加水分解および/または縮合することにより得られる。
【0039】
本発明の膜は、電気化学デバイス、とりわけ二次電池での使用に特に好適である。
【0040】
本発明の目的のために、用語「二次電池」は、再充電可能な電池を意味することを意図する。
【0041】
本発明の二次電池は、好ましくは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)およびイットリウム(Y)のいずれかをベースにした二次電池である。
【0042】
本発明の二次電池は、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0043】
第3の例においては、本発明は、電気化学デバイス、好ましくは二次電池の製造プロセスであって、本発明の少なくとも1つの膜を正極[正極(E)]と負極[負極(E)]との間に取り付けることを含むプロセスに関し、
ここで、正極(E)および負極(E)のうちの少なくとも1つが、
- 電流コレクタと、
- 上記電流コレクタと接着しており、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、好ましくはLiPFを含む液体媒体[媒体(L)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電化合物[化合物(C)]と、
- 任意選択的に、1つ以上の添加剤と、を含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1つのフルオロポリマー層と、
を備える。
【0044】
第4の例においては、本発明は、本発明の少なくとも1つの膜を正極(E)と負極(E)との間に備える、電気化学デバイス、好ましくは二次電池に関し、
ここで、正極(E)および負極(E)のうちの少なくとも1つが、
- 電流コレクタと、
- 上記電流コレクタと接着しており、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、好ましくはLiPFを含む液体媒体[媒体(L)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電化合物[化合物(C)]と、
- 任意選択的に、1つ以上の添加剤と、を含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1つのフルオロポリマー層と、
を備える。
【0045】
ポリマー(F)は典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0046】
ポリマー(F)は、好ましくは、部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0047】
本発明の目的のために、用語「部分フッ素化フルオロポリマー」は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味することを意図し、ここで、上記フッ素化モノマーおよび上記水素化モノマーのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの水素原子を含む。
【0048】
用語「フッ素化モノマー」によって、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書で意図される。
【0049】
用語「水素化モノマー」によって、少なくとも1個の水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書で意図される。
【0050】
用語「少なくとも1つのフッ素化モノマー」は、ポリマー(F)が1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。下記において、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたような1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0051】
用語「少なくとも1つの水素化モノマー」は、ポリマー(F)が1つまたは2つ以上の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。下記において、表現「水素化モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたような1つまたは2つ以上の水素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0052】
ポリマー(F)は、官能性フルオロポリマー[官能性ポリマー(F)]であってもよい。
【0053】
官能性ポリマー(F)は典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0054】
ポリマー(F)は、有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位の直鎖型配列を含む、直鎖状ポリマー[ポリマー(F)]である。
【0055】
したがって、ポリマー(F)は典型的に、グラフトポリマーと区別できる。
【0056】
官能性ポリマー(F)は、有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマー、および少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の直鎖型配列を含む、ランダムポリマー[ポリマー(F)]である。
【0057】
表現「ランダムに分布した繰り返し単位」は、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する2つの繰り返し単位間に含まれる少なくとも1つの官能性水素化モノマーの配列の平均数(%)と、少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位の総平均数(%)との間のパーセント比を意味することを意図する。
【0058】
少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位の各々が分離される場合、すなわち、官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位が少なくとも1つのフッ素化モノマーの2つの繰り返し単位間に含まれる場合、少なくとも1つの官能性水素化モノマーの配列の平均数は、少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位の平均総数に等しく、その結果、少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率は100%である。この値は、少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位の完全ランダム分布に対応する。したがって、少なくとも1つの官能性水素化モノマー由来の繰り返し単位の総数に対して少なくとも1つの官能性水素化モノマー由来の分離された繰り返し単位の数が大きいほど、少なくとも1つの官能性水素化モノマー由来のランダムに分布した繰り返し単位の分率の百分率値はより高くなるであろう。
【0059】
したがって、官能性ポリマー(F)は典型的に、ブロックポリマーと区別できる。
【0060】
本発明の第1の実施形態によれば、ポリマー(F)は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む、上記官能性水素化モノマーと異なる少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む官能性ポリマー(F)であってもよい。
【0061】
本発明のこの第1の実施形態による官能性ポリマー(F)は、本発明の第2の実施形態によるプロセスによって得られる膜での使用に特に好適である。
【0062】
本発明の第2の実施形態によれば、ポリマー(F)は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、上記官能性水素化モノマーと異なる少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む官能性ポリマー(F)であってもよい。
【0063】
本発明のこの第2の実施形態による官能性ポリマー(F)は、本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかでの使用に特に好適である。
【0064】
ポリマー(F)は典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマーの重合によって得られる。
【0065】
官能性ポリマー(F)は典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび少なくとも1つの官能性水素化モノマーの重合によって得られる。
【0066】
本発明の第1の実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む、上記官能性水素化モノマーと異なる少なくとも1つの水素化モノマーの重合により得られる。
【0067】
本発明の第2の実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、上記官能性水素化モノマーと異なる少なくとも1つの水素化モノマーの重合により得られる。
【0068】
フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0069】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それはパー(ハロ)フルオロモノマーと称される。
【0070】
フッ素化モノマーは、1個以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含んでもよい。
【0071】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、以下:
- テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンなどのC~Cパーフルオロオレフィン、
- フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレンなどのC~C水素化フルオロオレフィン、
- 式CH=CH-Rf0[式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキルである]のパーフルオロアルキルエチレン、
- クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C~Cフルオロオレフィン、
- 式CF=CFORf1[式中、Rf1は、C~Cフルオロ-またはパーフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cである]の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、
- CF=CFOX(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、C~C12アルキル基、C~C12オキシアルキル基、または1つ以上のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基などである]、
- 式CF=CFOCFORf2[式中、Rf2は、C~Cのフルオロ-もしくはパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、Cなど、または1つ以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば、-C-O-CFなどである]の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、
- 式CF=CFOY[式中、Yは、C~C12アルキル基もしくは(パー)フルオロアルキル基、C~C12オキシアルキル基、または1つ以上のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Yは、その酸、酸ハライドまたは塩の形態でカルボン酸またはスルホン酸基を含む]の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル、
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール
が挙げられる。
【0072】
フッ素化モノマーが、例えば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンまたはフッ化ビニルなどの水素含有フッ素化モノマーである場合、ポリマー(F)は、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、上記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーであるか、またはそれは、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、任意選択的に、上記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、上記官能性水素化モノマーと異なる少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーのいずれかである。
【0073】
フッ素化モノマーが、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフロオロプロピレンまたはパーフルオロアルキルビニルエーテルなどのパー(ハロ)フッ素化モノマーである場合、ポリマー(F)は、少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、上記官能性水素化モノマーと異なる少なくとも1つの水素化モノマー、および任意選択的に、上記パー(ハロ)フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0074】
ポリマー(F)は、非晶質であっても半結晶性であってもよい。
【0075】
用語「非晶質」は、本明細書では、ASTM D-3418-08に従って測定した場合、5J/g未満の、好ましくは3J/g未満の、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することが意図される。
【0076】
用語「半結晶性」は、本明細書では、ASTM D3418-08に従って測定した場合、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することが意図される。
【0077】
ポリマー(F)は、好ましくは半結晶性である。
【0078】
ポリマー(F)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の、少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0079】
ポリマー(F)は、好ましくは最大で20モル%、より好ましくは最大で15モル%、さらにより好ましくは最大で10モル%、最も好ましくは最大で3モル%の少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0080】
官能性ポリマー(F)中の少なくとも1つの官能性水素化モノマーに由来する繰り返し単位の平均モル百分率の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけ酸-塩基滴定方法またはNMR法に言及することができる。
【0081】
官能性ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0082】
本発明の第1の実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0083】
本発明のこの第1の実施形態の官能性ポリマー(F)は、より好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、ならびに、
- 任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマー、
に由来する繰り返し単位を含む。
【0084】
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む官能性水素化モノマーは、好ましくは、式(III)の(メタ)アクリルモノマー、および式(IV)のビニルエーテルモノマー:
[式中、互いに等しいかまたは異なる、R、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基であり、Rは少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である]
からなる群から選択される。
【0085】
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む官能性水素化モノマーは、より好ましくは、上で定義されたような式(III)のものである。
【0086】
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む官能性水素化モノマーは、さらにより好ましくは、式(III-A):
[式中、R’、R’およびR’は水素原子であり、R’は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である]
のものである。
【0087】
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む官能性水素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0088】
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む官能性水素化モノマーは、さらにより好ましくは、以下:
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
- および、これらの混合物からなる群から選択される。
【0089】
本発明の第2の実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、および任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0090】
本発明のこの第2の実施形態の官能性ポリマー(F)は、より好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性水素化モノマー、ならびに、
- 任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマー、
に由来する繰り返し単位を含む。
【0091】
少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む官能性水素化モノマーは、好ましくは、式(V):
[式中、互いに等しいかまたは異なるR、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基である]
の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される。
【0092】
少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む官能性水素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0093】
ポリマー(F)は典型的に、乳化重合または懸濁重合によって得られる。
【0094】
本発明の目的のために、用語「電気活性化合物[化合物(EA)]」は、電気化学デバイスの充電段階および放電段階中にアルカリまたはアルカリ土類金属イオンをその構造中に混入または挿入し、かつそれから実質的に放出することができる化合物を意味することが意図される。化合物(EA)は、好ましくは、リチウムイオンを混入または挿入および放出することができる。
【0095】
本発明の電極(E)の層(L1)の化合物(EA)の性質は、それによって提供される電極(E)が正極[正極(E)]であるかまたは負極[負極(E)]であるかどうかに依存する。
【0096】
リチウムイオン二次電池用の正極(E)を形成する場合、化合物(EA)は、式LiMQ[式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、CrおよびVなどの遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Qは、OまたはSなどのカルコゲンである]の複合金属カルコゲナイドを含んでもよい。これらの中でも、式LiMO[式中、Mは上で定義されたのと同じである]のリチウム系複合金属酸化物を使用するのが好ましい。その好ましい例としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1-x(0<x<1)およびスピネル構造LiMnを挙げてもよい。
【0097】
代替として、リチウムイオン二次電池用の正(E)を形成する場合にはさらに、化合物(EA)は、リチウム化または部分的にリチウム化した式M(JO1-f[式中、Mは、リチウムであり、M金属の20%未満に対応する別のアルカリ金属によって部分的に置換されてもよく、Mは、Fe、Mn、Niまたはそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、0を含めてM金属の35%未満に対応する、+1~+5の酸化レベルの1つ以上のさらに別の金属によって部分的に置換されてもよく、JOは、任意のオキシアニオンであり、ここで、Jは、P、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組合せのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシドまたはクロリドアニオンであり、fは、一般的に0.75~1に含まれるJOオキシアニオンのモル分率である]の遷移金属オキシアニオン系電気活性材料を含んでもよい。
【0098】
上で定義したようなM(JO1-f電気活性材料は、好ましくはホスフェート系であり、規則正しいまたは変性されたカンラン石構造を有してもよい。
【0099】
より好ましくは、化合物(EA)は、式Li3-xM’M’’2-y(JO[式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’およびM’’は、同一または異なる金属であり、それらの少なくとも1つが遷移金属であり、JOは、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換されてもよいPOであり、Jは、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組合せのいずれかである]を有する。さらにより好ましくは、化合物(EA)は、式Li(FeMn1-x)PO[式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは1である(すなわち、式LiFePOのリチウム鉄ホスフェートである)]のホスフェート系電気活性材料である。
【0100】
リチウムイオン二次電池用の負極(E)を形成する場合、化合物(EA)は、好ましくは、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維または球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素、
- リチウム金属、
- とりわけ、米国特許第6,203,944号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO.)2001年3月20日および/または国際公開第00/03444号パンフレット(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING CO.)2000年1月20日に記載されたものを含むリチウム合金組成物、
- 一般に式LiTi12によって表されるリチウムチタネート(これらの化合物は、一般に、可動イオン、すなわち、Liを引き取るときに低レベルの物理的膨脹を有する「ゼロ歪」挿入材料と考えられる)、
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウム、
- 式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金
を含んでもよい。
【0101】
本発明の目的のために、用語「液体媒体[媒体(L)]」語は、大気圧下において20℃で液体状態において1つ以上の物質を含む媒体を意味することが意図される。
【0102】
本発明の膜における媒体(L)は、本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)と同じであっても異なっていてもよい。
【0103】
媒体(L)は典型的に、1つ以上の溶媒(S)を含有しない。
【0104】
本発明の膜における媒体(L)は典型的に、媒体(L)の総重量に基づいて、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%の量の少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0105】
本発明の膜における媒体(L)は、1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0106】
本発明の膜における媒体(L)は典型的に、少なくとも1つの有機カーボネート、LiPF、および任意選択的に1つ以上の添加剤を含む、より好ましくはそれらからなる。
【0107】
本発明の膜における媒体(L)が1つ以上の添加剤をさらに含む場合、1つ以上の添加剤は典型的に、媒体(L)の総重量に基づいて、最大で70重量%、好ましくは最大で50重量%、より好ましくは最大で25重量%の量で上記媒体(L)中に存在する。
【0108】
本発明の膜における媒体(L)の量は典型的に、上記媒体(L)および少なくとも1つのポリマー(F-h)の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0109】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)は、好ましくは、少なくとも1つの有機カーボネートおよびLiPFを含む。
【0110】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)は典型的に、媒体(L)の総重量に基づいて、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%の量の少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0111】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)は、1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0112】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)は典型的に、少なくとも1つの有機カーボネート、LiPFおよび任意選択的に1つ以上の添加剤を含む、より好ましくはそれらからなる。
【0113】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)が1つ以上の添加剤をさらに含む場合、1つ以上の添加剤は典型的に、媒体(L)の総重量に基づいて、最大で70重量%、好ましくは最大で50重量%、より好ましくは最大で25重量%の量で上記媒体(L)中に存在する。
【0114】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)の量は典型的に、上記媒体(L)および少なくとも1つのポリマー(F)の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0115】
媒体(L)での使用に好適な有機カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネートおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0116】
媒体(L)中での使用に好適な添加剤の非限定的な例としては、とりわけ、イオン液体が挙げられる。
【0117】
本発明の目的のために、用語「イオン液体」は、大気圧下において100℃未満の温度で液体状態である、プラスに帯電したカチオンとマイナスに帯電したアニオンとの組合せにより形成される化合物を意味することが意図される。
【0118】
塩(M)は典型的に、
(a)MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)][式中、RはC、C、またはCFOCFCFである]、Me(AsF、Me[C(CFSO、Me[式中、Meは金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeはLi、Na、KまたはCsであり、さらにより好ましくはMeはLiであり、およびnは上記金属の原子価であり、典型的にはnが1または2である]、
[式中、R’は、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCF、およびCFOCFからなる群から選択される]、および、
(c)それらの組合せ
からなる群から選択される。
【0119】
本発明の膜の媒体(L)中のLiPFの濃度は、有利には、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0120】
本発明の膜の媒体(L)中のLiPFの濃度は、有利には、最大で3M、好ましくは最大で2M、より好ましくは最大で1Mである。
【0121】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)中の塩(M)の濃度は、有利には、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0122】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかの媒体(L)中の塩(M)の濃度は、有利には、最大で3M、好ましくは最大で2M、より好ましくは最大で1Mである。
【0123】
本発明の目的のために、用語「導電化合物[化合物(C)]」は、電子導電率を電極に与えることができる化合物を意味することが意図される。
【0124】
化合物(C)は典型的に、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛粉末、黒鉛繊維などの炭質材料、ならびにニッケルおよびアルミニウム粉末または繊維などの金属粉末または繊維からなる群から選択される。
【0125】
本発明の電気化学デバイスの正極(E)および負極(E)のいずれかは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジパート、アクリル酸ニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、アルキルホスポネート(alkyl phosponates)およびビニル含有シラン系化合物などの1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0126】
正極(E)および負極(E)のいずれかは、好ましくはフレキシブル電極(E)であり、ここで電流コレクタは、ポリマー基材と上記ポリマー基材に接着した導電層とを含む、好ましくはそれらからなる。
【0127】
フレキシブル電極(E)は、有利には、優れた機械的柔軟性とそれによって提供される電気化学デバイスの優れた電気化学的性能の両方を確保する。
【0128】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は典型的に、少なくとも1つの半結晶性ポリマーを含む、好ましくはそれからなる。
【0129】
本発明の目的のために、用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定した場合、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマーを意味することが意図される。
【0130】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、130℃より高い、好ましくは150℃より高い、より好ましくは200℃より高い融点を有する少なくとも1つの半結晶性ポリマーを、好ましくは含む、より好ましくはそれからなる。
【0131】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、ハロポリマー、例えばポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマーなど、ポリエステル、ポリオレフィン、例えばポリプロピレンなど、ポリアミド、例えば芳香族ポリアミドなど、およびポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの半結晶性ポリマーを、より好ましくは含む、さらにより好ましくはそれらからなる。
【0132】
好適なフルオロポリマーの非限定的な例としては、フッ化ビニリデン(VDF)などの少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)および/もしくはテトラフルオロエチレン(TFE)などの少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーが挙げられる。
【0133】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される、少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、
- エチレン、プロピレンおよびイソブチレンから選択される、少なくとも1つの水素化モノマー、ならびに、
- 任意選択的に、TFEおよび/またはCTFEならびに上記水素化モノマー(複数可)の総量に基づいて、典型的には0.1モル%~30モル%の量の1つ以上の追加のモノマー、
に由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーをより好ましくは含む、さらにより好ましくはそれらからなる。
【0134】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、
- 35モル%~65モル%、好ましくは45モル%~55モル%のエチレン(E)、
- 65モル%~35モル%、好ましくは55モル%~45モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびテトラフルオロエチレン(TFE)またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つ、ならびに、
- 任意選択的に、TFEおよび/またはCTFEならびにエチレンの総量に基づいて、0.1モル%~30モル%の、1つ以上の追加モノマー、
を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーをさらにより好ましくは含む、さらにより一層好ましくはそれらからなる。
【0135】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタの導電層は典型的に、炭素(C)、またはケイ素(Si)、もしくはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)およびステンレス鋼を含むがそれに限定されないそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、好ましくはそれらからなる。
【0136】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタの導電層は典型的に、ホイル、メッシュまたはネットの形態である。
【0137】
本発明のフレキシブル電極(E)の電流コレクタの導電層は典型的に、0.1μm~100μm、好ましくは2μm~50μm、より好ましくは5μm~20μmに含まれる厚さを有する。
【0138】
本発明のフレキシブル電極(E)のフルオロポリマー層は典型的に、10μm~500μm、好ましくは50μm~250μm、より好ましくは70μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0139】
本発明の電極(E)の電流コレクタの性質は、それによって提供される電極(E)が正極(E)であるかまたは負極(E)であるかどうかに依存する。
【0140】
本発明の電極(E)が正極(E)である場合、電流コレクタは典型的に、炭素(C)、またはアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、およびこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、好ましくはそれらからなる。
【0141】
本発明の電極(E)が正極(E)である場合、電流コレクタは、好ましくはアルミニウム(Al)からなる。
【0142】
本発明の電極(E)が負極(E)である場合、電流コレクタは典型的に、炭素(C)、またはケイ素(Si)、もしくはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、およびこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、好ましくはそれらからなる。
【0143】
本発明の電極(E)が負極(E)である場合、電流コレクタは、好ましくは銅(Cu)からなる。
【0144】
フレキシブル電極(E)は典型的に、
(i)ポリマー基材と上記ポリマー基材に接着した導電層とを含む、好ましくはそれらからなる電流コレクタを提供することと、
(ii)
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と、
- 上記媒体(L)と異なる少なくとも1つの有機溶媒[溶媒(S)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電化合物[化合物(C)]と、
- 任意選択的に、1つ以上の添加剤と、
を含む、好ましくはそれらからなる電極形成組成物を提供することと、
(iii)工程(ii)で提供される電極形成組成物を、工程(i)で提供される電流コレクタの導電層上に適用し、それによって電極[電極(E)]を提供することと、
(iv)工程(iii)で提供される電極(E)から、上記少なくとも1つの溶媒(S)を蒸発させることと、
を含むプロセスによって得られる。
【0145】
溶媒(S)の選択は、それがポリマー(F)を可溶化するために好適である限り特に限定されない。
【0146】
溶媒(S)は典型的に、
- メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール、
- アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン、
- イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレートおよびγ-ブチロラクトンなどの直鎖状または環状エステル、
- N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリドンなどの直鎖状または環状アミド、ならびに、
- ジメチルスルホキシド
からなる群から選択される。
【0147】
本発明のプロセスの工程(i)で提供される電流コレクタは、好ましくは、典型的に両面接着テープを用いた積層、好ましくは共積層、熱エンボス加工、コーティング、印刷、物理蒸着、化学蒸着および直接蒸着などの真空技法を用いたプレーティングなどの任意の好適な方法によって、典型的には、ポリマー基材上に導電層を適用することによって製造される。
【0148】
本発明のプロセスの工程(iii)下において、電極形成組成物は典型的に、キャスティング、印刷およびロールコーティングなどの任意の好適な手順によって電流コレクタの導電層上に適用される。
【0149】
任意選択的に、工程(iii)は典型的に、工程(iii)で提供される電極形成組成物を、工程(iv)で提供される電極(E)上に適用することによって一回以上繰り返されてもよい。
【0150】
本発明のプロセスの工程(iv)下において、乾燥は、大気圧下または真空下のいずれで行われてもよい。あるいは、乾燥は、手が加えられた雰囲気下で、例えば、典型的には特には水分が除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含量)不活性ガス下で行ってもよい。
【0151】
乾燥温度は、本発明の電極(E)からの1つ以上の溶媒(S)の蒸発による除去を達成するように選択されるであろう。
【0152】
本発明の電極(E)は、好ましくは1つ以上の溶媒(S)を含有しない。
【0153】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0154】
本発明は、以下の実施例を参照してこれからより詳細に説明されるが、実施例の目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0155】
原材料
ポリマー(F-A):25℃のDMF中で0.30l/gの極限粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。

ポリマー(F-B):25℃のDMF中で0.08l/gの極限粘度を有するVDF-AA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
LiPF:ヘキサフルオロリン酸リチウム塩。
NMC:Umicoreから市販されているLiNi0.33Mn0.33Co0.33
液体媒体(L-A):ビニレンカーボネート(VC)(2重量%)を含むエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)(1/1体積比)中のLiPFの溶液(1mol/L)。
黒鉛:75%のSMG HE2-20(Hitachi Chemical Co.,Ltd.)/25%のTIMREX(登録商標)SFG6。
DBTDL:ジブチルスズジラウレート。
TEOS:テトラエトキシシラン。
TSPI:3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート。
【0156】
ポリマー(F)の極限粘度の測定
極限粘度(η)[dl/g]は、Ubbelhode粘度計を用いて、ポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させて得られた溶液の25℃における滴下時間に基づいて、以下の等式を用いて測定した。
[式中、cはポリマー濃度[g/dl]であり、ηは相対粘度(すなわち、サンプル溶液の滴下時間と溶媒の滴下時間との間の比)であり、ηspは比粘度(すなわち、η-1)であり、Γは実験因子であり、ポリマー(F)は3に相当する]
【0157】
液体媒体(L-A)を使用する電極の製造のための一般的な手順
ポリマー(F-A)のアセトン溶液を60℃で調製し、次いでアルゴングローブボックス(O<2ppm、HO<2ppm)中で室温にした。
次の工程において、液体媒体(L-A)をそのように得られた溶液に添加した。
重量比[m媒体(L-A)/(m媒体(L-A)+mポリマー(F-A))]x100は75%であった。
アノード:黒鉛をそのように得られた溶液に重量比90/10(黒鉛/ポリマー(F-A))で添加した。
カソード:50重量%のC-NERGY(登録商標)SUPER C65カーボンブラックおよび50重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)のブレンドを含む組成物、ならびにNMCをそのように得られた溶液に重量比90/10((CF+NMC)/ポリマー(F-A))で添加した。CF/NMC重量比は7.8/92.2であった。
【0158】
キャスティング手順
乾燥室内(露点:-40℃)でテープキャスティング装置(ドクターブレード)を使用して溶液混合物を一定の厚さで金属コレクタ上に塗布した。厚さは、ナイフと金属コレクタとの間の距離によって制御された。そのように得られたアノードの湿潤層の厚さは約325μmであった。そのように得られたカソードの湿潤層の厚さは約650μmであった。混合物の粘度はアセトンを添加することによって調節された。次に、溶媒を上記混合物から蒸発させ、それによって電極を提供した。
【0159】
液体媒体(L-A)を使用する膜の製造のための一般的な手順
ポリマー(F-B)(1.5g)を60℃で8.5gのアセトン中に溶解させ、それによって15重量%の上記ポリマー(F-B)を含有する溶液を得た。溶液は、室温での均質化後に均一であり、透明であった。次いで、DBTDL(0.015g)を添加した。溶液を60℃で均質化した。そこにTSPI(0.060g)を添加した。DBTDLの量は、TSPIに対して10モル%であると計算された。TSPIそれ自体は、ポリマー(F-B)に対して1.1モル%であると計算された。TSPIのイソシアネート官能基をポリマー(F-B)のヒドロキシル基と反応させるために溶液を60℃で約90分間保持した。次の工程において、液体媒体(L-A)をそのように得られた溶液に添加した。重量比[m媒体(L-A)/(m媒体(L-A)+mポリマー(F-B))]は80%であった。60℃で均質化後、蟻酸を添加した。次いで、TEOSをそれに添加した。TEOSがSiOに完全に変換すると仮定して、TEOSの量を重量比(mSiO2/mポリマー(F-C))から計算した。この比は10%であった。蟻酸の量を以下の式から計算した:
蟻酸/nTEOS=7.8
全ての成分を、そのように得られた溶液混合物にアルゴン雰囲気下で供給した。乾燥室内(露点:-40℃)でテープキャスティング装置(ドクターブレード)を使用して溶液混合物を一定の厚さでPET基材上に塗布した。厚さは、ナイフとPETフィルムとの間の距離によって制御された。溶媒は溶液混合物から急速に蒸発され、膜が得られた。数時間後、膜がPET基材から分離された。そのように得られた膜は、32μmの一定厚さを有した。
【0160】
リチウムイオン電池の製造
上述した一般的な方法に従って作製した膜を、上述した一般的な方法に従って作製したカソード(2.4mAh/cm)とアノード(2.8mAh/cm)の間に配置することによって、コインセルを作製した。2.8Vと4.15Vの間で、コインセルをサイクルさせた。C/20~D/20で2サイクルの工程後、C/10~D/10、C/5~D/5、C/2~D/2、C/2~D、C/2~2Dで連続的な一連の5サイクルに従って、試験プロトコルを実施した。異なる放電率でそのようにして得られたコインセルの放電容量値を本明細書の下記表1に示す。
【0161】
【0162】
本発明の二次電池は、有利には、安全性要件に適合するということが見出された。また、本発明の二次電池では、LiPFの分解が生じず、高い放電率で優れた放電容量値を見事に維持することが、驚くべきことに見出された。