(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】座席装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20220720BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20220720BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20220720BHJP
A61H 15/00 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
B60N2/64
A47C7/62 Z
A47C7/40
A61H15/00 350E
A61H15/00 350F
(21)【出願番号】P 2019015246
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗近 純一
(72)【発明者】
【氏名】梅原 典恵
(72)【発明者】
【氏名】関 誠雄
(72)【発明者】
【氏名】水野 量介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】神原 朋子
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-087604(JP,A)
【文献】特開2020-114706(JP,A)
【文献】特開2017-128144(JP,A)
【文献】特開2003-265571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 7/00 - 7/74
A61H 7/00 - 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座するシートクッションと、着座者の上体を支えるシートバックと、を有する座席装置であって、
前記シートバックは、シートバックフレームと、前記シートバックフレームの前面に配置されるシートバックパッドと、前記シートバックパッドの表面を覆うシートバックカバーと、を備え、
前記シートバックのうち前記着座者の腰部に対応する位置に設けられ、膨張することで前記シートバックの表面を着座者に近づく方向に押し出す複数のストレッチ用空気袋を備え、
前記複数のストレッチ用空気袋は、前記シートバックパッドを挟んで、前記シートバックの厚み方向に重なって配置されて
おり、
さらに、前記腰部に対応する位置に設けられ、前記ストレッチ用空気袋よりも小さい1以上のリフレッシュ用空気袋を備え、
前記複数のストレッチ用空気袋の少なくとも一つは、前記1以上のリフレッシュ用空気袋よりも前面側に配されている、
こと
を特徴とする座席装置。
【請求項2】
前記複数のストレッチ用空気袋は、前記着座者の肩部に対応する位置にさらに設けられている、ことを特徴とする請求項1の座席装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、着座者が着座するシートクッションと、着座者の上体を支えるシートバックと、を有する座席装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着座者が着座するシートクッションと、着座者の上体を支えるシートバックと、を有した座席装置が広く知られている。かかる座席装置の中には、着座者の体格に追従したり、着座者に適度な刺激を与えたりするために、シートバックの表面形状が変形可能なものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両に搭載される座席装置であって、シートバックのうち着座者の腰部を支持する箇所に、膨縮可能な空気袋を配置した座席装置が開示されている。この特許文献1では、シートバックの表面を局所的に前方に突出させるために、空気袋にガスを流入させている。そして、ガスの流入に伴い空気袋が膨張することで、シートバックの表面が局所的に前方に押し出される。かかる特許文献1に記載の技術によれば、シートバックの表面形状をある程度、自由に変形させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、複数の空気袋を、その厚み方向に重なることなく、分散して配置している。この場合、シートバックの前方押し出しストロークは、各空気袋を膨張させた際の空気袋の厚みに依存する。そのため、当然ながら、大きなストロークを確保するためには、大きな空気袋を用いる必要がある。しかし、空気袋のサイズを大きくした場合、完全膨張させるまでに要する空気注入時間、ひいては、シートバックの変形に要する時間が長くなるという問題があった。また、大きな空気袋を用いた場合、当該空気袋の設置のために大きなスペースが必要となる。
【0006】
そこで、本明細書では、十分な変形ストロークを確保しつつも、設置スペースや空気注入時間を低減できる座席装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する座席装置は、着座者が着座するシートクッションと、着座者の上体を支えるシートバックと、を有する座席装置であって、前記シートバックは、シートバックフレームと、前記シートバックフレームの前面に配置されるシートバックパッドと、前記シートバックパッドの表面を覆うシートバックカバーと、を備え、前記シートバックのうち前記着座者の腰部に対応する位置に設けられ、膨張することで前記シートバックの表面を着座者に近づく方向に押し出す複数のストレッチ用空気袋を備え、前記複数のストレッチ用空気袋は、前記シートバックパッドを挟んで、前記シートバックの厚み方向に重なって配置されており、さらに、前記腰部に対応する位置に設けられ、前記ストレッチ用空気袋よりも小さい1以上のリフレッシュ用空気袋を備え、前記複数のストレッチ用空気袋の少なくとも一つは、前記1以上のリフレッシュ用空気袋よりも前面側に配されている、ことを特徴とする。
【0008】
複数のストレッチ用空気袋を厚み方向に重なって配置することで、一つ一つのストレッチ用空気袋が小さくても十分な変形ストロークを確保できる。そして、各ストレッチ用空気袋のサイズが小さいことで、空気注入時間や設置スペースを低減できる。結果として、十分な変形ストロークを確保しつつも、設置スペースや空気注入時間を低減できる。
【0009】
また、前記複数のストレッチ用空気袋は、前記着座者の肩部に対応する位置にさらに設けられていてもよい。
【0010】
かかる構成とすることで、腰部だけでなく、肩部の筋肉も伸ばすことができ、着座者の快適性をより向上できる。
【0011】
また、前記腰部に対応する位置には、さらに、前記ストレッチ用空気袋よりも小さいリフレッシュ用空気袋が1以上設けられており、前記複数のストレッチ用空気袋の少なくとも一つは、前記リフレッシュ用空気袋よりも、前面側に配されていてもよい。
【0012】
前記リフレッシュ用空気袋は、前記シートバックパッドと前記カバーパッドとの間に配されており、前記シートバックパッドの表面には、前記リフレッシュ用空気袋を収容する凹部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示する座席装置によれば、十分な変形ストロークを確保しつつも、設置スペースや空気注入時間を低減できる。また、厚み方向に重なるストレッチ用空気袋の間に、シートバックパッドが介在するため、ストレッチ用空気袋同士の擦れが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】座席装置に設けられるシートの斜視図である。
【
図3】ストレッチ用空気袋を膨張させた状態でのシートの断面図である。
【
図5】空気袋の膨縮制御に関するブロック図である。
【
図6】押圧位置ごとの頭部移動量を示すグラフである。
【
図7】押圧位置ごとの肩部移動量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して座席装置10の構成について説明する。
図1は、座席装置10に設けられるシート12の斜視図である。また、
図2は、シート12の断面図であり、
図3は、後述するストレッチ用空気袋30f,30bを膨張させた際の断面図である。さらに、
図4は、
図3のA-A断面図である。
【0016】
この座席装置10は、車室の前部に搭載される運転席や助手席として用いられる1人用の座席装置である。座席装置10のシート12には、着座者が着座するシートクッション14と、着座者の上体を支えるシートバック16と、着座者の頭部を支えるヘッドレスト17と、が設けられている。シートクッション14は、略水平に設置されたクッションフレーム(図示せず)に、クッションパッド22を載置し、さらに、このクッションパッド22の表面をクッションカバー18で覆うことで構成される。また、クッションパッド22とクッションカバー18との間には、ウレタン発泡スラブ等からなるカバーパッド20が配されている。クッションカバー18は、薄いシート状素材、例えば、布や合皮、天然皮革などからなる。クッションカバー18の表面には、いくつかの溝が形成されており、これは、クッションカバー18をクッションパッド22側から吊る(引っ張る)ことで形成される。クッションパッド22は、適度な弾性を有した材料、例えば、軟質ポリウレタン発泡体等からなる。
【0017】
クッションフレームの下には、前後方向に延びるスライドレール(図示せず)が固着されており、クッションフレームは、このスライドレールに対してスライド可能に取り付けられている。そして、クッションフレームがスライドすることでシート12全体が前後方向にスライドできる。
【0018】
シートバック16は、シートクッション14の後端から立ち上がるバックフレーム(図示せず)と、バックフレームの前面に配置されるシートバックパッド28と、シートバックパッド28の表面を覆うシートバックカバー24と、を有している。また、シートバックパッド28とシートバックカバー24との間には、ウレタン発泡体などからなり、薄いシート状のカバーパッド26も設けられている。シートバックパッド28は、後述する空気袋の膨縮に伴い変形できる程度の弾性を有した材料、例えば、軟質ポリウレタン発泡体等からなる。シートバックカバー24は、クッションカバー18と同様に薄いシート状素材、例えば、布や合皮、天然皮革などからなる。また、シートバックカバー24の表面にも、いくつかの溝が形成されており、これは、シートバックカバー24をシートバックパッド28側から吊る(引っ張る)ことで形成される。
【0019】
バックフレームの下端は、幅方向に延びる揺動軸29に連結されている。バックフレームを含むシートバック16は、この揺動軸29を中心として前後方向に揺動(リクライニング)できるようになっている。シートバック16の上端には、着座者の頭部を支えるヘッドレスト17が接続されている。このヘッドレスト17の構成は、従来のものを採用できるため、ここでの詳説は省略する。
【0020】
シートバック16のうち、着座者の腰部に対応する箇所、具体的には、シートバック16の中間高さよりもやや下側位置には、複数の空気袋が設けられている。空気袋は、比較的小さめのリフレッシュ用空気袋32と、ストレッチ用空気袋30f,30bと、を含む。これら空気袋32,30f,30bは、いずれもその内部に空気を充填させることで膨張し、これによりシートバック16の表面を局所的に着座者に近づく方向に突出させる。
【0021】
リフレッシュ用空気袋32は、着座者をリフレッシュさせるために膨張するもので、本例では、六つのリフレッシュ用空気袋32を三行二列の配列で配置している。各リフレッシュ用空気袋32は、
図4に示すように、シートバックパッド28とカバーパッド26との間に配されている。このリフレッシュ用空気袋32が、所定の周期で膨縮を繰り返し、シートバック16の表面が所定の周期で局所的に進退すると、着座者の深呼吸が誘発され、着座者がリフレッシュされる。
【0022】
ストレッチ用空気袋30f,30bは、着座者に背筋を伸ばすストレッチをさせる。本例では、ストレッチ用空気袋として、前側ストレッチ用空気袋30fと、後側ストレッチ用空気袋30bと、を設けている。なお、以下では、前側と後側を区別しない場合には、添え字アルファベットを省略して「ストレッチ用空気袋30」と呼ぶ。前側ストレッチ用空気袋30fは、
図4から明らかな通り、シートバックカバー24と、カバーパッド26との間に配されており、幅方向に長尺な略長方形となっている。後側ストレッチ用空気袋30bは、シートバックパッド28の背後であって、前側ストレッチ用空気袋30fと厚み方向に重なる位置に配されている。別の見方をすると、ストレッチ用空気袋30は、シートバックパッド28の厚み方向両側に一つずつ設けられている。なお、後側ストレッチ用空気袋30bは、前側ストレッチ用空気袋30fと同様に、幅方向に長尺な略長方形となっている。このストレッチ用空気袋30が膨張して、シートバック16が局所的に前方に押し出されることで、着座者の背中が伸ばされ、着座者にストレッチ効果を与える。なお、
図1、
図4から明らかな通り、ストレッチ用空気袋30は、リフレッシュ用空気袋32に比べて、幅広であり、その容量が大きい。
【0023】
図5は、空気袋の膨縮制御に関するブロック図である。
図5に示す通り、また、上述した通り、座席装置10には、複数の空気袋30f,30b,32が設けられている。この空気袋30f,30b,32は、チューブ38を介してポンプ34に連通されている。ポンプ34は、コントローラ42の指示に従い、空気袋30f,30b,32に空気を供給、または、空気袋30f,30b,32から空気を回収する。ポンプ34と空気袋30f,30b,32との間には、電磁弁等の弁36が設けられており、弁36を適宜、開閉することで、ポンプ34と連通する空気袋30f,30b,32を切り替えることができる。
【0024】
各空気袋30f,30b,32には、当該空気袋30f,30b,32の内圧を検知する圧力センサ40が設けられている。この圧力センサ40による検出圧力は、コントローラ42に送られる。コントローラ42は、この検出圧力に基づいて空気袋30f,30b,32の膨張量を判断する。
【0025】
コントローラ42は、例えば、CPUとメモリとを有したマイコンなどで構成される制御装置である。このコントローラ42は、リフレッシュまたはストレッチが必要と判断した場合には、対応する空気袋30f,30b,32の弁36を開放するとともに、ポンプ34を駆動して、空気袋30f,30b,32を膨縮させる。具体的に説明すると、コントローラ42は、リフレッシュが必要な場合には、リフレッシュ用空気袋32に対応する弁36を開放する。また、コントローラ42は、リフレッシュ用空気袋32が所定の周期で膨縮するように、圧力センサ40で検知された圧力に応じて、ポンプ34による空気の供給及び回収を所定の周期で繰り返させる。
【0026】
また、コントローラ42は、ストレッチが必要な場合には、ストレッチ用空気袋30に対応する弁36を開放するとともに、圧力センサ40で検知された圧力が所定の目標値に到達するまで、ポンプ34でストレッチ用空気袋30に空気を送る。検出圧力が目標値に到達すれば、コントローラ42は、対応する弁36を閉鎖して、ストレッチ用空気袋30を密閉する。二つのストレッチ用空気袋30f,30bがともに目標圧力に到達した完全膨張状態になれば、コントローラ42は、ポンプ34の駆動を停止する。そして、その状態で、一定時間(例えば数秒)が経過すれば、コントローラ42は、ストレッチ用空気袋30に対応する弁36を再び開放するとともに、ポンプ34を駆動してストレッチ用空気袋30から空気を回収する。そして、ストレッチ用空気袋30が、完全に縮小して平坦になれば、ストレッチ動作は、終了となる。
【0027】
こうしたリフレッシュおよびストレッチ動作の要否は、着座者からの指示に基づいて判断してもよいし、上位制御装置またはコントローラ42側で自動的に判断してもよい。例えば、上位制御装置またはコントローラ42は、連続乗車時間などに基づいて、リフレッシュまたはストレッチの要否を判断してもよい。また、車両に着座者の状態を検知するセンサ、例えば、脈拍センサや体温計、着座者の表情を検知する光学センサ(カメラ等)等を搭載しておき、上位制御装置またはコントローラ42は、これらのセンサの検知結果に基づいて、リフレッシュまたはストレッチの要否を判断してもよい。
【0028】
ところで、これまでの説明から明らかな通り、本例では、着座者をストレッチさせるために、着座者の腰部付近を、シートバック16で押圧している。このように腰部付近を押圧するのは、着座者の頭部や肩部の変動を抑えるためである。これについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、押圧位置ごとの頭部移動量を示すグラフであり、
図7は、押圧位置ごとの肩部移動量を示すグラフである。
【0029】
着座者をストレッチさせて血流を向上させるためには、最長筋と呼ばれる筋肉を伸ばすことが有効である。最長筋は、首の根元付近から大腿骨付近まで延びる大きな筋肉である。従って、この最長筋を伸ばすためには、着座者の腰部付近に限らず、胸部付近を押圧するのでもよい。しかし、着座者を座ったままストレッチさせる時には、着座者の頭部や肩部の動きをできる限り小さく抑えることが望まれる。特に、着座者が運転手である場合は、頭部や肩部の動きは、視認性やハンドル操作に大きな影響を与えるため、極力、小さく抑える必要がある。
【0030】
ここで、
図6に示すように、ストレッチのために胸部を押圧した場合、頭部が大きく移動する。同様に、
図7に示すように、胸部を押圧した場合、肩部が大きく移動する。一方、腰部及び骨盤付近を押圧した場合には、頭部及び肩部の移動を小さく抑えることができる。ただし、骨盤付近は、最長筋の下端近くに位置しているため、骨盤付近を押圧しても十分なストレッチ効果を得ることが難しい。そこで、本例では、頭部及び肩部の移動を抑えつつ、十分なストレッチ効果を得るために、腰部付近を押圧する構成としている。
【0031】
ところで、上述した最長筋は、通常、人の背中表面から数センチ程度、奥側に位置している。かかる最長筋を押圧するためには、シートバック16の表面を、リフレッシュ動作時よりも大きく変形させなければならない。換言すれば、ストレッチ動作を行うためには、シートバック16表面の変形ストロークが大きくなければならない。本例では、大きな変形ストロークを確保するために、二つのストレッチ用空気袋30f,30bを厚み方向に重なるように配置している。かかる構成とすることで、ストレッチ用空気袋30f,30bのサイズを小さく、かつ、膨張に要する時間を短くしつつも、大きな変形ストロークを確保できる。これについて、
図8、
図9を参照して説明する。
【0032】
図8は、ある空気袋50a,50bを膨張させたときの概略断面図であり、
図9は、空気袋50a,50bのおおよそのサイズを示す図である。
図8、
図9の左側に示すように、短辺が2aで、長辺が2bの空気袋50aを膨張させたときの厚み、すなわち変形ストロークが、Hであったとする。この場合、同じ厚みHを得るためには、理論的には、
図8、
図9の右側に示すように、1/2のサイズの空気袋50bを二つ、厚み方向に重ねればよいことになる。つまり、空気袋を二段重ねとした場合、同じ変形ストロークHを得るために必要な空気袋のサイズを半分にでき、空気袋の設置スペースを小さく抑えることができる。
【0033】
また、空気袋の最大容量は、一般的に、以下の式1で表される。この式1において、Aは、空気袋の短辺寸法を、Bは、空気袋の長辺寸法を示している。この式1から明らかな通り、空気袋の寸法がn倍になれば、その最大容量はn3倍となる。別の言い方をすれば、空気袋のサイズが1/2になれば、膨張させるために必要な空気量、ひいては、空気注入時間は、1/8に低減される。結果として、空気袋を二段重ねにした場合、膨張させるために必要な空気注入時間を、一段重ねの場合に比べて大幅に短縮できる。
V=0.33×A×B2-0.11×A3 式1
【0034】
以上の説明から明らかな通り、本例のように、二つのストレッチ用空気袋30f,30bを厚み方向に重ねて配置することで、大きな変形ストロークを確保しつつも、空気袋30f,30bの設置スペースを抑え、また、空気の充填時間を低減できる。
【0035】
なお、上述した通り、本例では、二つのストレッチ用空気袋30f,30bを、シートバックパッド28の厚み方向両側に設けている。かかる構成とすることで、二つのストレッチ用空気袋30f,30bの擦り合いが防止され、ストレッチ用空気袋30f,30bの劣化を抑制できる。また、本例では、前側ストレッチ用空気袋30fを、リフレッシュ用空気袋32よりも、前面側(着座者に近い位置)に配している。これは、ストレッチ動作後にリフレッシュ用空気袋32が変位することを防止するためである。すなわち、膨張量の大きい前側ストレッチ用空気袋30fの前側にリフレッシュ用空気袋32を配置した場合、前側ストレッチ用空気袋30fの膨張に伴い、その前面に配置されたリフレッシュ用空気袋32の位置がずれるおそれがある。リフレッシュ用空気袋32の位置がずれると、リフレッシュ動作時に適切な位置を押圧できず、十分なリフレッシュ効果が得られない。そこで、本例では、前側ストレッチ用空気袋30fを、リフレッシュ用空気袋32の前方に配置している。また、本例では、後側ストレッチ用空気袋30bの膨張に伴うリフレッシュ用空気袋32の位置ズレを防止するために、
図4に示すように、シートバックパッド28の表面に、リフレッシュ用空気袋32を収容する凹部33を形成している。
【0036】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、少なくとも、シートバック16の表面を局所的に押し出す複数のストレッチ用空気袋30を、シートバックパッド28を挟んで、厚み方向に重ねて配置するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、これまでの説明では、ストレッチ用空気袋30を二段重ねとしているが、ストレッチ用空気袋30は、三段以上に重ねられてもよい。また、ストレッチ用空気袋30やリフレッシュ用空気袋32の位置や個数、形状は、適宜、変更されてもよい。また、ストレッチ用空気袋30は、腰部に加えて、他の箇所、例えば、肩部などに設けられてもよい。したがって、例えば、着座者の肩甲骨付近の筋肉を伸ばすために、
図1において符号54で示す箇所に、ストレッチ用空気袋30を設けてもよい。この場合も、ストレッチ用空気袋30は、シートバックパッド28を挟んで、厚み方向に重ねて配置される。かかる構成とすることで、肩部付近の筋肉も伸ばすことができ、着座者の快適性をより向上できる。また、これまでは車両に搭載される座席装置を例に挙げて説明したが、本明細書で開示した技術は、他の座席装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 座席装置、12 シート、14 シートクッション、16 シートバック、17 ヘッドレスト、18 クッションカバー、20,26 カバーパッド、22 クッションパッド、24 シートバックカバー、28 シートバックパッド、29 揺動軸、30 ストレッチ用空気袋、32 リフレッシュ用空気袋、34 ポンプ、36 弁、38 チューブ、40 圧力センサ、42 コントローラ、50a,50b 空気袋。