(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】メチシリン耐性微生物の検出方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220720BHJP
C12Q 1/14 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12Q1/14
(21)【出願番号】P 2019021241
(22)【出願日】2019-02-08
(62)【分割の表示】P 2016089021の分割
【原出願日】2003-09-23
【審査請求日】2019-03-07
(32)【優先日】2002-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501358161
【氏名又は名称】ランバック、アラン
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ランバック アラン
(72)【発明者】
【氏名】ル クステュミエール アラン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/053799(WO,A1)
【文献】特開平05-227992(JP,A)
【文献】Journal of Clinical Microbiology,2002年07月,Vol.40, No.7,pp.2480-2482
【文献】Journal of Clinical Microbiology,2002年08月,Vol.40, No.8,pp.2766-2771
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1986年,Vol.29, No.1,pp.85-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12Q 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出するための
寒天培地であって、該微生物の増殖のための栄養分に加えて、抗生物質であるセフォキシチン、および該黄色ブドウ球菌において活性な酵素による加水分解後に発色団(chromophore)を放出する色原性物質(chromogenic agent)を含み、前記色原性物質が5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルリン酸および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルグルコシドからなる群より選択され、前記抗生物質の濃度が5~15mg/lであり、前記培地は、少なくとも2カ月にわたる安定性を有する、培地。
【請求項2】
5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルリン酸および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルグルコシドを含むことを特徴とする、請求項1
に記載の培地。
【請求項3】
以下の2つの色原性物質のうち少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の培地:5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルガラクトシドおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルグルクロニド。
【請求項4】
塩化ナトリウムの濃度が3%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項5】
バンコマイシン、テイコプラニンおよびアボパルシンならびにそれらの混合物からなる群より選択される抗生物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項6】
抗生物質の濃度が5~6mg/lであることを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項7】
色原性物質の濃度が0.01~0.5g/lであることを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項8】
試料中のメチシリン耐性微生物を検出する方法であって、
請求項1~7のいずれか一項記載の培地に該試料を接種する段階、
該培地を該微生物の増殖が可能な条件下でインキュベートする段階、
有色コロニーの存在により、該培地上の、該メチシリン耐性微生物の存在を検出する段階、
より構成される段階を含み、前記微生物が黄色ブドウ球菌である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチシリン耐性微生物を検出するための新規なゲル状培地であって、セファ
ロスポリン系薬剤群、特に第二世代または第三世代のセファロスポリン系薬剤より選択さ
れる抗生物質、および前記微生物において活性のある酵素による加水分解後に放出される
発色団を有する色原性物質(chromogenic agent)を含む、培地に関する。
【背景技術】
【0002】
メチシリン(meticillin)(methicillinとも表記される)耐性黄色ブドウ球菌(Staph
ylococcus aureus)(MRSA)の系統的な検出は重要である。
【0003】
事実、MRSAはMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)よりも病原性が低いように思わ
れるが、それによる感染症を治療するのはより困難である上に費用もかかる。これは、メ
チシリン耐性がすべてのβ-ラクタム系抗生物質に対する耐性を付与し、この耐性が非常
に多くの場合、他の多くの主要な抗ブドウ球菌抗生物質に対する耐性を伴うという事実に
起因する(Lyon and Skurry, Microbiol. Rev. 51; 88-134(非特許文献1))。
【0004】
この検出のために、メチシリンを加えた寒天増殖培地が時に用いられてきた。この方法
は、ある種のMRSA株、特に細菌集団がメチシリンに対する絶対的な耐性を有する細菌を非
常に低い割合でしか含まない異種混交性の菌株(104個または108個の細菌のうち1つが耐
性を発現する)をほとんど検出できないため、今では行われないことが多い。この方法で
は偽陰性の結果が多く得られる。
【0005】
オキサシリンを加えた寒天増殖培地は一般的であるが、メチシリンの場合と同じように
、ある種の菌株を検出することは困難である。
【0006】
さらに、これらの抗生物質(メチシリン、オキサシリン)が選択的添加物質としてある
程度有効に機能するために、ある特定の増殖培地のみを用いることもできる。その結果と
して、使用者に推奨される培地には、例えば、ミュラー-ヒントン寒天培地(Muller Hint
on Agar)またはマンニトール塩寒天培地(Mannitol Salt Agar)の派生物がある。しか
し残念ながら、使用者にとって、これらの培地は黄色ブドウ球菌(S. aureus)種を比較
的識別しないため、感度および特異性はさらに低くなる。
【0007】
トブラマイシンまたはオフロキサシンを加えた寒天増殖培地が、比較的識別性の低いも
の(例えば、マンニトール塩寒天培地に由来)または極めて識別性の高いCHROMagar Stap
h aureusをベースとして提唱されているが、メチシリン耐性との相関はそれほど高くない
ため、偽陽性および偽陰性が余分に生じる。
【0008】
寒天拡散法(例えばミュラー-ヒントン寒天培地を用いる)も用いられており、これは
抗生物質を染み込ませたペーパーディスクを、被験菌を播いた寒天培地の上に置くことか
らなる。各ディスクの周囲の寒天内に抗生物質の濃度勾配が形成される。インキュベーシ
ョン後に各ディスクの周囲に阻止円(inhibition halo)が生じ、それにより、MIC(最小
阻止濃度、微生物増殖が検出されない最小濃度)の値を反映する直径を測定することが可
能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Lyon and Skurry, Microbiol. Rev. 51; 88-134
【発明の概要】
【0010】
本発明は、優れた感度および優れた特異性を備えた、メチシリン耐性微生物、特にブド
ウ球菌、とりわけ黄色ブドウ球菌を検出するための寒天培地に関する。
【0011】
すなわち、本発明の文脈においては、発色性培地の識別能を第二世代または第三世代セ
ファロスポリンのファミリーに属する抗生物質の性質と組み合わせて利用し、それによっ
てメチシリン耐性微生物を検出することが可能になる。
【0012】
したがって、本発明は、メチシリン耐性微生物を検出するための培地であって、前記微
生物の増殖のための栄養分に加えて、第二世代または第三世代のセファロスポリン系薬剤
の群より選択される少なくとも1つの抗生物質、および前記微生物において活性のある酵
素による加水分解後に発色団を放出する色原性物質を含む培地に関する。
【0013】
本発明による培地は、本発明による培地上での増殖および色原性物質の存在により、微
生物の性質を明確にすることが可能であるため、メチシリン耐性微生物の直接検出を可能
にする。したがって、本発明による培地上で増殖する微生物の性質を確認するための補足
的な段階は必要でない。
【0014】
本発明による培地は、培養皿の上に画線塗布した接種物を用いてメチシリン耐性菌を検
出することを可能にするが、先行技術の方法の大半は、約104~105個の細菌を寒天上に乗
せたものを用いる。本発明による培地は、患者からの試料から直接用いることもでき、ま
たは集積期(enriching phase)の後に用いることもできる。
【0015】
「第二世代または第三世代のセファロスポリン」という表現は、以下の式(I)から派
生した式を有するセファロスポリン系抗生物質を指すことを意図している:
式中、R2はH基、アセトキシメチル基、メチルチオテトラゾール基、ジメチルアミノエチ
ルチオテトラゾール基、トリアジン基、アセトアミノピリジン(ピリジニウム)基もしく
はカルバモイル基により置換されたピリジニウム基、シクロペントピリジニウム基または
チオメチルアセトキシチアゾール基であり、R1はアミノ-2-チアゾール複素環、α-ピペラ
ジンジオンまたはα-スルホフェニルであり、R4はH基またはα-メトキシ遊離基である。
【0016】
特に、以下の式を有する化合物を指すことを意図している:
式中、R3はH基またはα-メトキシイミノ基である。
【0017】
ある特定の場合には、R4基は水素である。
【0018】
セファマイシン系薬剤は、R4基がβ-ラクタマーゼによる加水分解からラクタム環を保
護するα-メトキシ遊離基である化合物であり、以下の式に該当する:
【0019】
オキサセフェム系薬剤は、セフェム環のイオウ原子が酸素原子によって置換された化合
物であり、上に示した式(I)の誘導体であると考えられる。
【0020】
一般に、これらの化合物に関して、R4基はα-メトキシである。
【0021】
このように想定しているセファロスポリン系薬剤の定義は、Binger(「β-ラクタム系
薬剤の作用機序(細菌構造から分子の構造へ)(Mecanisme d'Action des Beta-lactamin
es)(de la structure bacterienne a la structure de la molecule)[Mechanism of a
ction of beta-lactams (from bacterial structure to the structure of the molecule
]」, 1986, Roussel(Paris)publisher, chapter III, pages 47-62, and chapter IV,
pages 63-68)に、およびRichmondによる論文(「β-ラクタム系抗生物質(治療薬とし
ての使用の背景)(Beta-lactam antibiotics (the background to their use as therap
eutic aents)」, Hoechst Aktiengesellschaft, D-6230 Frankfurt(Main)80 publishe
r, 1981, chapter 3, pages 55-65)に記載されている。
【0022】
第2の能力において、第二世代セファロスポリン系薬剤は、グラム陰性菌に対して第一
世代セファロスポリン系薬剤よりも優れた効果を示す上にβ-ラクタマーゼによる分解に
対してより優れた抵抗性を示すこと、および第三世代セファロスポリン系薬剤はグラム陰
性菌に対してさらに広い作用スペクトルを有することが指摘される。
【0023】
第二世代および第三世代のセファロスポリン系薬剤のうち、以下の名前を挙げることが
できる:ロラカルベフ、セファクロール、セフロキシム、セフプロジル、セフォキシチン
(セフォキシタン(cefoxitan))、セファマンドール、セフォチアン(cefotian)、セ
フォテタン、セフメタゾール、セフォシニド(cefocinide)、セフォラニド、セフポドキ
シム、セフィキシム、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジ
ム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォペラゾン、セフェピム、セフピロム、セフス
ルフォニド(cefsulfonide)、セフタメート(cefetamete)、セフチブテン(ceftibuten
e)、モキサラクタム、ラタモキセフおよびフロモキセフ、特に塩(ナトリウム塩)の形
態にあるもの。当業者はこのような化合物のリストを入手することができ、これは特にイ
ンターネット上のサイトwww.biam2.orgまたはwww.fpnotebook.comで入手可能である。
【0024】
1つの好ましい態様において、前記抗生物質はセファマンドールである。
【0025】
もう1つの態様において、前記抗生物質は、セファマイシン系薬剤(セフォキシチン、
セフォテタン、セフメタゾール、セフブトペラゾン(cefbutperazone)、セフミノクス)
の群およびオキサセフェム系薬剤(モキサラクタム、ラタモキセフまたはフロモキセフ)
の群より選択される。
【0026】
1つの好ましい態様において、前記抗生物質はセフォキシチンである。
【0027】
1つの好ましい態様において、前記抗生物質はセフメタゾールである。
【0028】
1つの好ましい態様において、前記抗生物質はモキサラクタムである。
【0029】
1つの好ましい態様において、前記抗生物質はセフォテタンである。
【0030】
本発明による培地中の抗生物質の濃度は、好ましくは0.5~50mg/lであり、好ましくは
1.5~30mg/lであり、特に1.5~15mg/lである。少数のルーチン的な試験により、当業者
はこれを、想定している抗生物質に対する、想定している微生物のMIC(最小阻止濃度、
微生物増殖が検出されない最小濃度)の関数として調整することができる。本発明の培地
の組成の一部を構成しうる抗生物質のうちいくつかは、前記培地に対してある特定の性質
を付与しうることに注目すべきである。例えば、セフォキシチンまたはセフメタゾールは
、前記培地に対して、少なくとも2カ月にわたる明確な安定性を付与する。
【0031】
例えば、少なくとも2カ月にわたる安定性が、セフォキシチンを5mg/lの濃度で培地(
後者が48℃の温度にある時)に添加して調製された本発明による培地で観察されている。
本発明による培地の安定性は、前記培地を、セフメタゾールを2.5mg/lの濃度で培地(後
者が48℃の温度にある時)に添加して調製した場合には、少なくとも5カ月間に及んだ。
【0032】
「培地の安定性」という表現は、本発明による培地が、所定の期間にわたり、その期間
の全体を通じて同じ確実さで、メチシリン耐性微生物、特に黄色ブドウ球菌の選択的な検
出を可能にする能力を表すことを意図している。
【0033】
また、別のセファロスポリンであるフロモキセフに関しては、それを100℃を超える温
度下においても、その抗生物質活性を保つ能力を示すことにも注目すべきである(その耐
性は121℃でも本発明者らによって実証されている)。
【0034】
このような性質のため、本発明による培地は単独の粉末の形態として製造することが可
能であり、これにより、培地の調製のために無菌下で行わなければならない操作が大幅に
限定される。フロモキセフはこのため、調製しようとする培地に加熱前に混入することが
でき、それによってその調製が容易になる。この利点は、このような培地を調製する必要
のある任意の個人による作業を、その分野での経験にかかわらず、容易にすることが可能
であるため、決してわずかではない。
【0035】
1つの好ましい態様において、前記微生物はブドウ球菌であり、出願WO 00/53799号に
記載されたように、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルリン酸および5-ブロモ-4-クロロ-
3-インドキシルグルコシドからなる群より選択される色原性物質を用いることが好ましい
。
【0036】
黄色ブドウ球菌の培地は知られており、これは「Oxoid Unipath社(Oxoid Unipath Lim
ited)」マニュアル、Wade Road, Basingstoke, Hampshire, RG24 0PW, Englandに詳細に
記載されている。これは例えば、本質的には酵母エキス、ペプトンおよび寒天を基にした
培地である「Nutrient Agar Oxoid CM3」であってもよい。
【0037】
1つの好ましい態様において、前記培地は、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルリン酸
および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルグルコシドの両方を含む。
【0038】
本発明による培地は、好ましくは、0.01~0.50g/l、特に0.05~0.40g/lの5-ブロモ-6
-クロロ-3-インドキシルリン酸、好ましくは0.01~0.20g/lの5-ブロモ-4-クロロ-3-イン
ドキシルグルコシド、好ましくは0.01~0.20g/lの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルガ
ラクトシド、好ましくは0.01~0.20g/lの5-ブロモ-4-クロロ-3インドキシルグルクロニ
ドを含む。
【0039】
1つの特定の態様において、本発明による培地はまた、以下の2つの色原性物質のうち少
なくとも1つをも含む:5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルガラクトシドおよび5-ブロモ-
4-クロロ-3-インドキシルグルクロニド。
【0040】
1つの特定の態様において、前記培地はまた、デフェロキサミンも含む。デフェロキサ
ミンは実際、黄色ブドウ球菌を抑制せずに表皮ブドウ球菌を抑制することを可能にし、用
いる濃度は0.01~0.10g/lであることが好ましいと考えられる。
【0041】
1つの態様において、本発明による培地はまた、メチシリンおよびバンコマイシンの両
方に対して耐性のある微生物の検出を目的として、ンコマイシン、テイコプラニンおよび
アボパルシンならびにそれらの混合物からなる群より選択される糖ペプチド抗生物質も含
む。おおよそ5mg/1~50mg/lのこれらの抗生物質、より詳細には5mg/l~30mg/l、10mg
/l~30mg/lおよび約25mg/lを用いることができる。
【0042】
本発明の文脈において、本発明者らは、培地における浸透圧負荷が高い必要はないこと
を示した。すなわち、塩化ナトリウムを添加し、オキサシリンを抗生物質として用いるメ
チシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出するための培地とは異なり、本発明の培地は、ナトリ
ウム濃度が3%未満で約2~2.5%と等しくても機能を果たす。インキュベーション条件は
、培地中の塩化ナトリウムの量に応じて調整することができる(インキュベーション時間
、高温または低温など)。
【0043】
本発明はまた、メチシリン耐性微生物を検出するための、本発明による培地の使用にも
関する。
【0044】
本発明はまた、試料中のメチシリン耐性微生物を検出する方法であって、
―本発明による培地を前記試料または前記試料に由来する接種物に接種する段階、
―前記培地を前記微生物の増殖が可能な条件下でインキュベートする段階、
―有色コロニーの存在により、前記培地上の、前記メチシリン耐性微生物の存在を検出
する段階、
より構成される段階を含む方法にも関する。
【0045】
インキュベーション条件は当業者に知られており、25℃~42℃、好ましくは30℃~38℃
の温度でのインキュベーションが一般に用いられる。
【0046】
インキュベーション時間は従来通りである(約24時間)。
【0047】
想定している微生物によれば、好気性または嫌気性の条件下で機能するように、より短
い、またはより長いインキュベーション時間を用いることが可能である。
【0048】
本発明による培地は、特に、分析時間を短縮しながらメチシリン耐性ブドウ球菌を容易
に検出することを可能にする。本発明の文脈において選択した抗生物質と色原性物質の組
み合わせにより、実際に、偽陽性および偽陰性の数を減らし、それによって補足的な分析
を行う必要性を減らすことが可能である。
【0049】
実施例
実施例1
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出するための、本発明による培地の組成:
ペプトンおよび酵母エキス 40g/l
NaCl 25g/l
5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルリン酸 0.10g/l
5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルグルコシド 0.05g/l
5-ブロモ-4-クロロ-3インドキシルガラクトシド 0.05g/l
5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルグルクロニド0.05g/l
デフェロキサミン 0.050g/l
寒天 15g/l
【0050】
この培地に、オキサシリン(6mg/ml)またはセフォキシチン(5mg/1)を、オートク
レーブ処理後に、培地が固形化する前(温度が約45℃の時点)に添加する。
【0051】
この培地は、黄色ブドウ球菌の特異的検出(コロニーの紫色の呈色)を可能にする5-ブ
ロモ-6-クロロ-3-インドキシルリン酸および5-ブロモ-4-クロロ-3インドキシルグルコシ
ドを含み、その上、接種物中に存在する可能性のある他の微生物を染色するための5-ブロ
モ-4-クロロ-3-インドキシルガラクトシドおよび5ブロモ-4クロロ-3-インドキシルグルク
ロニドも含む。
【0052】
実施例2
CHROMagar Staph aureus培地(CHROMagar社, 4, Place du 18 Juin 1940, 75006 Paris F
ranceより販売)上でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株の増殖に関する試験
AR4295 MetiS:メチシリン感受性株
AR4297 MetiR:(均一な)メチシリン耐性株
MRhet:(異種混交的な)メチシリン耐性株
Z252:メチシリン耐性株、均一、耐性は低レベル
+=コロニー増殖;-=増殖せず;*=微小コロニー
【0053】
37℃で24時間インキュベートした後の分離菌の増殖を観察することを目的として、ペト
リ皿に対して、皿に画線塗布を行うことによって細菌培養物を接種する。
【0054】
細菌が培地上で増殖して紫色のコロニーを生じることにより、その微生物が黄色ブドウ
球菌であることが確かめられる。
【0055】
このように、本発明による培地は、細菌増殖とコロニー呈色との組み合わせによって、
異種混成的な株または耐性レベルの低い株を含め、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を直接
的に検出することを可能にする。