(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20220720BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/16
(21)【出願番号】P 2019109921
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇
(72)【発明者】
【氏名】山本 周司
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 重美
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩之
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-230456(JP,A)
【文献】特開2007-230443(JP,A)
【文献】特開2017-030492(JP,A)
【文献】独国実用新案第202004002874(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
B60R 21/00 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チルト機構部又はリフタ機構部によってシート上下方向に変位されるシートクッションと、
前記シートクッションの内部においてシート幅方向に間隔をあけて並ぶ骨格部材に架設された架設部材と、
前記シートクッションの内部に設けられ、ガスが供給されることで膨張展開するクッションエアバッグ本体と、
少なくとも一部が前記クッションエアバッグ本体の内部に配置され、前記クッションエアバッグ本体にガスを供給するインフレータを保持する保持部材と、
前記シートクッションがシート上下方向上側に変位された状態で、前記クッションエアバッグ本体の膨張展開時に前記保持部材に作用する荷重を前記架設部材に伝達する伝達部材と、
を有
し、
前記クッションエアバッグ本体のシート上下方向下側には、前記クッションエアバッグ本体を支持するパネル部材が設けられ、
前記架設部材は、前記クッションエアバッグ本体のシート上下方向下側で且つ前記パネル部材のシート前後方向後側に配置され、
前記保持部材は、前記架設部材のシート上下方向上側で、且つ前記クッションエアバッグ本体の内部のシート前後方向後端部に配置されている車両用シート。
【請求項2】
前記クッションエアバッグ本体を覆うクッションエアバッグカバーが設けられ、
前記パネル部材には、前記クッションエアバッグカバー又は前記クッションエアバッグ本体の一部が取付けられる被取付部が形成されている請求項
1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記クッションエアバッグ本体の内部で且つ前記保持部材のシート前後方向前側には、前記クッションエアバッグ本体の一部を前記被取付部に取り付ける取付部材が設けられている請求項
2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記被取付部は、前記クッションエアバッグカバー又は前記クッションエアバッグ本体の一部が引っ掛けられることで取付けられる引掛部である請求項
2に記載の車両用シート。
【請求項5】
チルト機構部又はリフタ機構部によってシート上下方向に変位されるシートクッションと、
前記シートクッションの内部においてシート幅方向に間隔をあけて並ぶ骨格部材に架設された架設部材と、
前記シートクッションの内部に設けられ、ガスが供給されることで膨張展開するクッションエアバッグ本体と、
少なくとも一部が前記クッションエアバッグ本体の内部に配置され、前記クッションエアバッグ本体にガスを供給するインフレータを保持する保持部材と、
前記シートクッションがシート上下方向上側に変位された状態で、前記クッションエアバッグ本体の膨張展開時に前記保持部材に作用する荷重を前記架設部材に伝達する伝達部材と、
を有
し、
前記伝達部材は、
前記保持部材から前記クッションエアバッグ本体の外側へ向けて突出された突出部材と、
前記突出部材に設けられ且つ前記架設部材に巻き掛けられた布部材と、
を有する車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートクッション底部を構成するクッションパネルと、クッションパネルを覆うシートパッドと、クッションパネルとシートパッドとの間でクッションパネルに固定されたクッションエアバッグとを有する車両用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チルト機構部又はリフタ機構部によりシートクッションが上方へ変位される車両用シートがある。この車両用シートでは、乗員が安楽姿勢の状態で且つ車両の前面衝突時に、乗員が通常の姿勢の場合に比べて、シートベルトから乗員の腰部に荷重が伝達され難くなり、上方へ変位したクッションエアバッグにシート前方側へ向かう荷重が入力され易くなる。また、特許文献1の構成で、前面衝突時にシート前方側へ慣性移動された乗員からクッションエアバッグに荷重が入力された場合に、この荷重に抵抗する手段が無いので、クッションエアバッグがシート前方側へ変形され易い。このため、乗員が、クッションエアバッグから反力を受け難くなり、シート前方側へ慣性移動され易くなり、この点で、改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、チルト機構部又はリフタ機構部によって変位するシートクッションを有する車両用シートを備えた車両の前面衝突時において、乗員がシート前方側へ慣性移動するのを抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用シートは、チルト機構部又はリフタ機構部によってシート上下方向に変位されるシートクッションと、前記シートクッションの内部においてシート幅方向に間隔をあけて並ぶ骨格部材に架設された架設部材と、前記シートクッションの内部に設けられ、ガスが供給されることで膨張展開するクッションエアバッグ本体と、少なくとも一部が前記クッションエアバッグ本体の内部に配置され、前記クッションエアバッグ本体にガスを供給するインフレータを保持する保持部材と、前記シートクッションがシート上下方向上側に変位された状態で、前記クッションエアバッグ本体の膨張展開時に前記保持部材に作用する荷重を前記架設部材に伝達する伝達部材と、を有し、前記クッションエアバッグ本体のシート上下方向下側には、前記クッションエアバッグ本体を支持するパネル部材が設けられ、前記架設部材は、前記クッションエアバッグ本体のシート上下方向下側で且つ前記パネル部材のシート前後方向後側に配置され、前記保持部材は、前記架設部材のシート上下方向上側で、且つ前記クッションエアバッグ本体の内部のシート前後方向後端部に配置されている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用シートでは、車両の前面衝突時にインフレータからガスが供給されることで、クッションエアバッグ本体が膨張展開する。このとき、車両用シートに着座している乗員は、シート前方側に慣性移動される。このため、膨張展開したクッションエアバッグ本体にシート前方側に向かう荷重が作用し、その荷重は、クッションエアバッグ本体から保持部材に伝達される。
【0008】
保持部材に伝達された荷重は、伝達部材を介して架設部材に伝達される。これにより、クッションエアバッグ本体がシート前方側へ変形されることが抑制され、且つ乗員がクッションエアバッグから受ける反力の低下が抑制されるので、車両の前面衝突時に、乗員がシート前方側へ慣性移動するのを抑制することができる。
【0010】
また、請求項1に記載の本発明に係る車両用シートでは、クッションエアバッグ本体がパネル部材によって支持されている。保持部材は、クッションエアバッグ本体の内部のシート前後方向後端部に配置されている。換言すると、保持部材は、クッションエアバッグ本体内部の乗員の腰部に近い箇所に配置されている。ここで、車両の前面衝突時に、保持部材が乗員の腰部に近い箇所に配置されていることで、膨張展開されたクッションエアバッグ本体のシート前方側への変形の初期段階から、クッションエアバッグ本体と保持部材とが接触され易くなる。
【0011】
つまり、乗員からクッションエアバッグ本体に作用する荷重が、車両の前面衝突後の初期段階から架設部材へ伝達されることで、クッションエアバッグ本体の変形が抑制され、且つクッションエアバッグ本体を支持するパネル部材の変形が抑制される。これにより、クッションエアバッグ本体のシート上下方向上端部の高さ位置が低下することが抑制されるので、シートクッションに対する乗員の沈み込みを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明において、前記クッションエアバッグ本体を覆うクッションエアバッグカバーが設けられ、前記パネル部材には、前記クッションエアバッグカバー又は前記クッションエアバッグ本体の一部が取付けられる被取付部が形成されている。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る車両用シートでは、乗員がシートクッションに着座した場合に、乗員からの荷重がクッションエアバッグ本体及びクッションエアバッグカバーに作用する。ここで、クッションエアバッグカバー又はクッションエアバッグ本体の一部が被取付部に取り付けられているので、クッションエアバッグカバー又はクッションエアバッグ本体が移動され難くなる。つまり、クッションエアバッグカバー又はクッションエアバッグ本体の位置が、元の位置に対してずれるのを抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の発明において、前記クッションエアバッグ本体の内部で且つ前記保持部材のシート前後方向前側には、前記クッションエアバッグ本体の一部を前記被取付部に取り付ける取付部材が設けられている。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る車両用シートでは、パネル部材と取付部材とでクッションエアバッグ本体が挟まれた状態となる。これにより、クッションエアバッグ本体の一部がシート上方側へ移動しようとした場合に、クッションエアバッグ本体の移動が取付部材によって制限されるので、クッションエアバッグ本体の一部がパネル部材に対して浮き上がるのを抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の発明において、前記被取付部は、前記クッションエアバッグカバー又は前記クッションエアバッグ本体の一部が引っ掛けられることで取付けられる引掛部である。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シートでは、クッションエアバッグカバー又はクッションエアバッグ本体の一部が、引掛部に引っ掛けられることでパネル部材に取り付けられる。つまり、クッションエアバッグカバー又はクッションエアバッグ本体の一部をパネル部材に取り付ける場合に、他の部材を必要としないので、クッションエアバッグカバー又はクッションエアバッグ本体の一部を、簡単な構成でパネル部材に取り付けることができる。
【0024】
請求項5に記載の本発明に係る車両用シートは、チルト機構部又はリフタ機構部によってシート上下方向に変位されるシートクッションと、前記シートクッションの内部においてシート幅方向に間隔をあけて並ぶ骨格部材に架設された架設部材と、前記シートクッションの内部に設けられ、ガスが供給されることで膨張展開するクッションエアバッグ本体と、少なくとも一部が前記クッションエアバッグ本体の内部に配置され、前記クッションエアバッグ本体にガスを供給するインフレータを保持する保持部材と、前記シートクッションがシート上下方向上側に変位された状態で、前記クッションエアバッグ本体の膨張展開時に前記保持部材に作用する荷重を前記架設部材に伝達する伝達部材と、を有し、前記伝達部材は、前記保持部材から前記クッションエアバッグ本体の外側へ向けて突出された突出部材と、前記突出部材に設けられ且つ前記架設部材に巻き掛けられた布部材と、を有する。
【0025】
請求項5に記載の本発明に係る車両用シートでは、車両の前面衝突時において、膨張展開されたクッションエアバッグ本体に乗員からの荷重が作用することで、クッションエアバッグ本体、インフレータ及び保持部材が、一体でシート前方側へ変位される。この保持部材の変位に伴って、突出部材がシート前方側へ変位され且つ布部材がシート前方側へ引っ張られることで、布部材と架設部材とが接触され、架設部材に荷重が伝達される。このように、突出部材に設けられた布部材を架設部材に巻き掛けることで、架設部材への荷重の伝達が可能となるので、金属製の伝達部材を架設部材に固定する構成に比べて、車両用シートを軽量化することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、チルト機構部又はリフタ機構部によって変位するシートクッションを有する車両用シートを備えた車両の前面衝突時に、乗員がシート前方側へ慣性移動するのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートの概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示された車両用シートのシートクッションがチルトアップされる前後の状態を示す側面図である。
【
図3】
図1に示された車両用シートのシートクッション内部の縦断面図(
図1の3-3線拡大断面図)である。
【
図4】
図3に示された車両用シートの前パネルが移動される状態を示す縦断面図である。
【
図5】
図1に示された車両用シートのエアバッグ本体が膨張展開された状態を示す縦断面図である。
【
図6】第1実施形態の第1変形例に係る車両用シートのシートクッション内部の構成を示す縦断面図である。
【
図7】
図6に示された車両用シートのエアバッグ本体が膨張展開された状態を示す縦断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る車両用シートのシートクッション内部の構成を示す縦断面図である。
【
図9】
図8に示された車両用シートのエアバッグ本体が膨張展開された状態を示す縦断面図である。
【
図10】第3実施形態に係る車両用シートのシートクッション内部の構成を示す縦断面図である。
【
図11】
図10に示された車両用シートのエアバッグ本体が膨張展開された状態を示す縦断面図である。
【
図12】第4実施形態に係る車両用シートのシートクッション内部の構成を示す縦断面図である。
【
図13】
図12に示された車両用シートのエアバッグ本体が膨張展開された状態を示す縦断面図である。
【
図14】第5実施形態に係る車両用シートのシートクッション内部の構成を示す縦断面図である。
【
図15】
図14に示された車両用シートのエアバッグ本体が膨張展開された状態を示す縦断面図である。
【
図16】第6実施形態に係る車両用シートのシートクッション内部の構成を示す縦断面図である。
【
図17】
図16に示された車両用シートのエアバッグ本体が膨張展開された状態を示す縦断面図である。
【
図18】第1実施形態の第2変形例に係る車両用シートのシートクッション内部の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1実施形態]
図1には、車両10に適用された第1実施形態に係る車両用シート20が示されている。なお、
図1では、後述するエアバッグ取付構造50(
図3参照)の一部の図示を省略している。車両10は、車両10の床部を構成するフロアパネル12を有する。フロアパネル12上には、左右一対のガイドレール14が設けられている。車両用シート20は、ガイドレール14に沿って、車両前後方向に移動可能とされている。
【0032】
なお、各図において、矢印FRはシート前後方向前側を示しており、矢印UPはシート上下方向上側を示しており、矢印OUTはシート幅方向外側を示している。シート前後方向、シート上下方向、シート幅方向は、互いに直交する方向である。また、シート前後方向は車両前後方向及び水平方向に相当し、シート上下方向は車両上下方向に相当し、シート幅方向は車幅方向に相当する。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、車両10の進行方向を向いた場合のシート幅方向の左右を示すものとする。また、シート幅方向については、単に幅方向と称する。平面視とは、対象物をシート上下方向の上側から見ることを意味する。側面視とは、対象物を幅方向から見ることを意味する。
【0033】
〔全体構成〕
図2に示される車両用シート20は、一例として、シートクッション22と、シートバック24と、ヘッドレスト26と、エアバッグ取付構造50(
図3参照)と、図示されないシートベルト装置とを有する。シートクッション22は、乗員Pの腰部PA及び大腿部PBを支持する。シートバック24は、乗員Pの背部PCを支持する。また、シートバック24は、シートクッション22に設けられた図示されないリクライニング機構によって、シート前後方向に対する任意の角度に調整(傾倒)可能とされている。ヘッドレスト26は、乗員Pの頭部PDを支持する。図示されないシートベルト装置は、乗員Pを拘束する。
【0034】
図1に示されるシートクッション22は、シートフレーム30と、クッションパッド42(
図3参照)と、シート表皮44(
図3参照)とを有する。シートフレーム30は、幅方向に延びるフロントフレーム32、ロアフレーム33及びリヤフレーム36と、シート前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム34とを含んで構成されている。また、シートフレーム30は、乗員P(
図2参照)からの荷重を受ける主部となる。具体的には、フロントフレーム32は、平面視で後方に開口するU字状に形成されている。ロアフレーム33は、フロントフレーム32の下側に配置されている。
【0035】
サイドフレーム34は、骨格部材の一例であり、幅方向を厚さ方向とする板状に形成されている。左右のサイドフレーム34の前端部は、ロアフレーム33によって、幅方向に連結されている。左右のサイドフレーム34の後端部は、リヤフレーム36によって、幅方向に連結されている。このように、サイドフレーム34は、シートクッション22の内部(内側)において幅方向に間隔をあけて並んでいる。
【0036】
図3に示されるクッションパッド42は、ウレタンパッドなどの発泡体からなる。また、クッションパッド42は、シートフレーム30(
図1参照)の上方側に設けられている。シート表皮44は、クッションパッド42の表面を覆っている。
【0037】
〔要部構成〕
図3に示されるように、エアバッグ取付構造50は、架設部材の一例としてのサブマリンバー52と、クッションエアバッグ54と、インフレータ57と、保持部材の一例としてのバッグリテーナ58と、伝達部材74とを有する。さらに、エアバッグ取付構造50は、パネル部材の一例としてのフロントパネル62と、チルト機構部70(
図1参照)とを有する。
【0038】
<サブマリンバー>
図1に示されるサブマリンバー52は、一例として、幅方向を軸方向とする円柱状に形成されており、左右一対のサイドフレーム34に架設されている。また、サブマリンバー52は、平面視で、フロントフレーム32とリヤフレーム36との間に配置されている。さらに、サブマリンバー52は、側面視で、後述するクッションエアバッグ54の下側で且つフロントパネル62の後側に配置されている。
【0039】
具体的には、サブマリンバー52の軸方向の両端部は、左右のサイドフレーム34に設けられた図示されないベアリングに挿入されている。つまり、サブマリンバー52は、左右のサイドフレーム34に幅方向を軸方向として回転(回動)可能に連結されている。さらに、サブマリンバー52には、フロントフレーム32の後部が固定されている。そして、フロントフレーム32は、サブマリンバー52の回転に伴って、チルトアップ又はチルトダウンされるようになっている。
【0040】
<クッションエアバッグ>
図3に示されるクッションエアバッグ54は、シートクッション22の内部に設けられている。また、クッションエアバッグ54は、クッションエアバッグカバーの一例としてのエアバッグカバー55と、クッションエアバッグ本体の一例としてのエアバッグ本体56とを有する。また、クッションエアバッグ54は、クッションパッド42よりも下方側で且つその前部が後述するフロントパネル62よりも上方側に配置されている。
【0041】
エアバッグカバー55は、布製の袋体として構成されている。また、エアバッグカバー55は、エアバッグ本体56を覆っている。エアバッグカバー55の一部には、エアバッグ本体56が展開された場合に内部から力が作用することで破断される破断部が形成されている。また、エアバッグカバー55の前端部には、貫通孔55Bが形成されている。さらに、エアバッグカバー55の下部には、貫通孔55Aが形成されている。
【0042】
エアバッグ本体56は、ナイロン系又はポリエステル系の布材(基布)が縫製されることにより袋体とされている。エアバッグ本体56の一部には、貫通孔56Aが形成されている。また、エアバッグ本体56は、折り畳まれた状態でエアバッグカバー55内に格納されている。エアバッグ本体56の内部には、後述するインフレータ57が配置されている。そして、クッションエアバッグ54は、インフレータ57からガスが供給されることでエアバッグ本体56が膨張展開する構造を有している。そして、膨張展開されたエアバッグ本体56は、エアバッグカバー55を破断させることで、エアバッグカバー55よりも外側へ展開されるようになっている。
【0043】
<インフレータ>
インフレータ57は、幅方向の一端部に図示されないガス噴出部が設けられたシリンダータイプとして構成されている。また、インフレータ57は、エアバッグ本体56(シートクッション22)の内部且つ後端部に設けられて(配置されて)いる。さらに、インフレータ57は、エアバッグ本体56にガスを供給する。インフレータ57が作動された場合には、インフレータ57からガスが供給されたエアバッグ本体56が、インフレータ57の前方側で膨張展開されるようになっている。なお、インフレータ57は、後述する制御部72(
図1参照)が、図示されない衝突検出部からの信号に基づいて前面衝突を検知した場合に作動される。
【0044】
<バッグリテーナ>
バッグリテーナ58は、一例として、鋼板を曲げ加工することで、側面視で前側へ開口するU字状に形成されている。また、バッグリテーナ58は、サブマリンバー52の上側で且つエアバッグ本体56の内部の後端部に配置(格納)され、インフレータ57を保持している。
【0045】
具体的には、バッグリテーナ58は、側面視で、前後方向に延びる底板部58Aと、底板部58Aの後端から上方側へ直立する縦板部58Bと、縦板部58Bの上端から前方側へ延びる上板部58Cとを有する。
【0046】
底板部58A、縦板部58B及び上板部58Cは、それぞれ幅方向における長さがほぼ同じとされている。そして、底板部58A、縦板部58B及び上板部58Cで囲まれた空間には、インフレータ57が格納されている。インフレータ57は、図示されない締結具を用いて底板部58Aに固定されることで、バッグリテーナ58に保持されている。幅方向において、底板部58A、縦板部58B及び上板部58Cのそれぞれの長さは、インフレータ57の長さよりも長い。また、シート前後方向において、上板部58Cの長さは、底板部58Aの長さよりも短く且つインフレータ57を上側から覆う長さとされている。底板部58Aにおける前後方向の中央よりも前側の一部には、底板部58Aを厚さ方向に貫通する貫通孔58Dが形成されている。
【0047】
エアバッグ本体56が折り畳まれた収納状態では、縦板部58B及び上板部58Cと、エアバッグ本体56の後端部とが、近接された状態で対向配置されている。また、エアバッグ本体56の下部は、底板部58Aの下側に配置され、底板部58Aに沿って前方側へ延びている。貫通孔55A及び貫通孔56Aは、貫通孔58Dと上下方向で一致している。
【0048】
<フロントパネル>
フロントパネル62は、その後部がクッションエアバッグ54(エアバッグ本体56)の下側に設けられている。また、フロントパネル62は、一例として、鋼板をプレス加工することで形成されている。さらに、フロントパネル62は、クッションエアバッグ54を支持している。具体的には、フロントパネル62は、前後方向に長尺とされ、且つ平面視で略矩形状に形成されている。フロントパネル62の前後方向の長さは、一例として、シートクッション22の前後方向の長さの半分程度とされている。
【0049】
また、フロントパネル62は、前後方向に並ぶ前部63、中央部64及び後部65を有する。前部63は、側面視で、略台形波状に形成されている。つまり、前部63は、複数箇所で折り曲げられることで、曲げや捩りに対する構造強度が高められている。具体的には、前部63は、前壁63A、上壁63B、傾斜壁63C、底壁63D、傾斜壁63E、上壁63F及び傾斜壁63Gを有する。
【0050】
前壁63Aは、上壁63Bの前端から前方下側へ向けて延びている。傾斜壁63Gは、上壁63Fの後端から後方下側へ向けて延びている。ここで、傾斜壁63C、底壁63D及び傾斜壁63Eによって、凹部66が形成されている。換言すると、前部63には、上方側に向けて開口された、上底が下底よりも長い台形状の凹部66が形成されている。底壁63Dには、幅方向に間隔をあけて複数の引掛部68が形成されている。
【0051】
引掛部68は、被取付部の一例であり、底壁63Dから上方側へ直立する直立部68Aと、直立部68Aの上端から前方側へ延びる延在部68Bとを有する。つまり、引掛部68は、凹部66に形成されている。エアバッグカバー55の貫通孔55Bの周縁部は、引掛部68に引っ掛けられることで、フロントパネル62に取付けられている。
【0052】
中央部64は、傾斜壁64Aを有する。傾斜壁64Aは、傾斜壁63Gの後端から後方下側へ向けて延びている。後部65は、傾斜壁65Aを有する。傾斜壁65Aは、傾斜壁64Aの後端から後方下側へ向けて延びている。図示は省略するが、前後方向に対して、傾斜壁63Gの傾斜角度θ1、傾斜壁64Aの傾斜角度θ2、傾斜壁65Aの傾斜角度θ3とすると、本実施形態では、一例として、傾斜角度θ1、θ2、θ3の大小関係が、θ1>θ3>θ2となっている。
【0053】
図1に示されるように、フロントパネル62の幅方向両端部は、フロントフレーム32に固定されている。つまり、フロントパネル62は、一例として、フロントフレーム32と一体化されている。そして、フロントパネル62は、サイドフレーム34に対して、サブマリンバー52の中心軸周りに回動可能とされている。換言すると、フロントパネル62は、シート前後方向に対する傾きを変更可能とされている。
【0054】
<チルト機構部>
図1に示されるように、チルト機構部70は、モータ71と、モータ71の回転動作を制御する制御部72とを含んで構成されている。モータ71の構成は、図示されないギア及びサブマリンバー52を介して、フロントフレーム32を回動させる構成とされている。つまり、チルト機構部70は、モータ71によりフロントパネル62を回動させることで、シートクッション22を上下方向に変位させるように構成されている。
【0055】
制御部72は、一例として、図示されないECU(Electronic Control Unit)等で構成されている。制御部72には、車両10の前方衝突を検出する衝突検出部及び前方衝突を予知するプリクラッシュセンサ(何れも図示省略)が電気的に接続されている。また、制御部72には、図示されない操作スイッチが電気的に接続されている。この操作スイッチは、車両用シート20に着座した乗員P(
図2参照)が操作可能な位置に配置されている。乗員Pがこの操作スイッチを操作することで、フロントフレーム32及びフロントパネル62の前部が、上下に変位されるようになっている。
【0056】
図4に示されるように、バッグリテーナ58からサブマリンバー52までが一体となっている。このため、チルト機構部70(
図1参照)の作動によってフロントパネル62が回動され、クッションエアバッグ54の前後方向に対する傾きが変わったとしても、サブマリンバー52が回動されると共にブラケット76が傾けられた状態となる。このように、フロントパネル62の角度変更に伴ってブラケット76の角度も変更されるので、クッションエアバッグ54の前部と後部が上下方向にずれて配置されることが抑制される。つまり、シートクッション22が傾けられた場合に、乗員P(
図2参照)に対するエアバッグ本体56の配置状態が変わることが抑制される。
【0057】
<伝達部材>
伝達部材74は、サブマリンバー52に設けられたブラケット76と、ブラケット76とバッグリテーナ58とを締結する締結部材の一例としてのボルト82及びナット84とを有する。
【0058】
(ブラケット)
ブラケット76は、一例として、鋼板からなる。また、ブラケット76は、側面視で、バッグリテーナ58の下側に配置されている。ブラケット76の幅方向の長さは、一例として、バッグリテーナ58の幅方向の長さとほぼ同じとされている。さらに、ブラケット76は、バッグリテーナ58と共に、エアバッグカバー55及びエアバッグ本体56のそれぞれの底部を上下方向に挟んでいる。なお、
図3では、各部材の配置を明確にするために、実際は接触している部材であっても、隙間をあけた状態で示されている。
【0059】
ブラケット76は、具体的には、巻掛部77と、巻掛部77から前方側へ延びる下板部78及び上板部79とが一体化された構造を有する。巻掛部77、下板部78及び上板部79は、それぞれ幅方向の長さがほぼ同一とされている。
【0060】
巻掛部77は、側面視で略C字状に形成されている。また、巻掛部77は、上下方向に対して斜め前方側へ開口するように、サブマリンバー52に巻き掛けられている。巻掛部77の一部は、サブマリンバー52の外周面の一部に溶接されている。側面視で、巻掛部77の前方側の端部を前端部77Aと称し、巻掛部77の後方側の端部を後端部77Bと称する。後端部77Bは、前端部77Aよりも上側に配置されている。
【0061】
下板部78は、前端部77Aから前方側へ、前後方向に沿って延在されている。平面視で、下板部78の外形は、幅方向に長く且つ前後方向に短い矩形状となっている。下板部78の前後方向の中央部には、下板部78を上下方向に貫通する貫通孔78Aが形成されている。
【0062】
上板部79は、後端部77Bから前方側へ、前後方向に沿って延在されている。平面視で、上板部79の外形は、幅方向に長く且つ前後方向に短い矩形状となっている。上板部79の前後方向の中央部には、上板部79を上下方向に貫通する貫通孔79Aが形成されている。貫通孔79A及び貫通孔78Aは、同程度の直径を有する円形に形成されており、シート上下方向で一致している。
【0063】
(ボルト及びナット)
ボルト82は、頭部82Aと軸部82Bとを有する。頭部82Aは、底板部58Aの上面に溶接されている。軸部82Bは、円柱状に形成されており、頭部82Aから上下方向を軸方向として下側へ延びている。軸部82Bの外周面には、雄ネジが形成されている。また、軸部82Bは、貫通孔58D、貫通孔56A及び貫通孔55Aに上側から下側へ向けて挿入され、エアバッグ本体56及びエアバッグカバー55よりも下側へ延びて(突出されて)いる。
【0064】
さらに、軸部82Bは、貫通孔79A及び貫通孔78Aに挿入され、下板部78よりも下側へ延びている。下板部78よりも下側から、軸部82Bに対してナット84が螺合されることで、ブラケット76とバッグリテーナ58とが締結されている。ここで、後述するように、バッグリテーナ58に作用された荷重は、ボルト82及びブラケット76を介して、サブマリンバー52に伝達される。つまり、伝達部材74は、シートクッション22が上側に変位された状態で、エアバッグ本体56の膨張展開時にバッグリテーナ58に作用する荷重をサブマリンバー52に伝達するようになっている。
【0065】
〔作用及び効果〕
次に、第1実施形態の車両用シート20の作用について説明する。
【0066】
図5に示されるように、車両10の自動運転時では、図示されないリクライニング機構が乗員Pによって操作されて、車両用シート20に着座する乗員Pの姿勢が、通常の姿勢から休息姿勢や安楽姿勢とされることがある。
【0067】
このような場合において、車両10が前面衝突した場合、車両用シート20では、インフレータ57からガスが供給されることで、エアバッグ本体56が膨張展開される。このとき、車両用シート20に着座している乗員Pは、元の着座位置よりも前方側に慣性移動される。このため、膨張展開されたエアバッグ本体56には、乗員Pから前方側に向かう荷重が作用する。エアバッグ本体56は、該荷重が作用することで変形され、その後部が内部のバッグリテーナ58と前後方向に接触する。つまり、エアバッグ本体56からバッグリテーナ58に荷重が伝達される。
【0068】
バッグリテーナ58に伝達された荷重は、伝達部材74を介してサブマリンバー52に伝達される(該荷重は、サブマリンバー52からサイドフレーム34(
図1参照)へ伝達される)。これにより、エアバッグ本体56に作用する荷重が低減され、エアバッグ本体56が前方側へ変形されることが抑制される。エアバッグ本体56の変形が抑制されることで、乗員Pがエアバッグ本体56から受ける反力の低下が抑制されるので、車両10の前面衝突時に、乗員Pが前方側へ慣性移動するのを抑制することができる。換言すると、図示されないシートベルト装置によって車両用シート20に拘束された乗員Pが、車両10の前面衝突時においてシートクッション22に沈み込むような姿勢となる、いわゆるサブマリン現象を抑制することができる。
【0069】
また、車両用シート20では、エアバッグ本体56がフロントパネル62によって支持されている。バッグリテーナ58は、エアバッグ本体56の内部の後端部に配置されている。換言すると、バッグリテーナ58は、エアバッグ本体56の内部において、乗員Pの腰部PAに近い箇所に配置されている。ここで、車両10の前面衝突時に、バッグリテーナ58が腰部PAに近い箇所に配置されていることで、膨張展開されたエアバッグ本体56の前方側への変形の初期段階から、エアバッグ本体56とバッグリテーナ58とが接触され易くなる。
【0070】
つまり、乗員Pからエアバッグ本体56に作用する荷重が、車両10の前面衝突後の初期段階からサブマリンバー52へ伝達されることで、エアバッグ本体56の変形が抑制される。さらに、エアバッグ本体56に伝達される荷重が低減されることで、エアバッグ本体56からフロントパネル62に伝達される荷重が低減されるので、フロントパネル62の変形が抑制される。これにより、エアバッグ本体56の上端部の高さ位置が低下することが抑制されるので、シートクッション22に対する乗員Pの沈み込みを抑制することができる。
【0071】
さらに、車両用シート20では、乗員Pがシートクッション22に着座した場合に、クッションエアバッグ54に対して乗員Pからの荷重が作用する。ここで、エアバッグカバー55の一部が引掛部68に引っ掛けられているので、エアバッグカバー55が移動され難くなる。つまり、エアバッグカバー55の位置が、元の位置に対してずれるのを抑制することができる。
【0072】
加えて、車両用シート20では、エアバッグカバー55の一部が、引掛部68に引っ掛けられることでフロントパネル62に取り付けられる。つまり、エアバッグカバー55の一部をフロントパネル62に取り付ける場合に、他の部材を必要としないので、エアバッグカバー55の一部を、簡単な構成でフロントパネル62に取り付けることができる。
【0073】
また、車両用シート20では、ブラケット76とバッグリテーナ58とがボルト82及びナット84により締結されている。これにより、バッグリテーナ58に作用する荷重が、バッグリテーナ58からボルト82、ナット84及びブラケット76を介してサブマリンバー52に伝達される。ここで、サブマリンバー52とバッグリテーナ58とを直接、締結しなくて済むので、サブマリンバー52の形状及び配置が限定されるのを抑制することができる。
【0074】
(第1変形例)
図6には、第1実施形態の車両用シート20の第1変形例として、車両用シート90が示されている。車両用シート90は、車両10(
図1参照)において、車両用シート20(
図1参照)に代えて設けられている。なお、第1実施形態の車両用シート20と基本的に同一の構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。また、
図6では、車両用シート90の主要部のみが図示されている。
【0075】
車両用シート90は、車両用シート20のエアバッグ取付構造50(
図3参照)が、エアバッグ取付構造100に代えられた点で第1実施形態と異なる。エアバッグ取付構造100は、エアバッグ取付構造50において、チルト機構部70がリフタ機構部102に代えられた点で第1実施形態と異なる。また、サブマリンバー52は回転せず、シートフレーム30は上下に移動しないようになっている。そして、フロントパネル62のみが上下に移動されるようになっている。
【0076】
リフタ機構部102は、図示されない左右一対のリンク部材及びリフタギアと、該リフタギアを介して該リンク部材を回動させるモータ104とを含んで構成されている。リンク部材の下端部は、フロアパネル12(
図1参照)に回動可能に連結されている。リンク部材の上端部は、フロントパネル62の下面に回動可能に連結されている。モータ104の回転動作は、制御部72(
図1参照)によって制御される。ここで、モータ104が回転されることで、左右一対のリンク部材が回動され、フロントパネル62(シートクッション22の一部)が上下方向に変位されるようになっている。なお、フロントパネル62の前後方向に対する角度は、モータ104の動作の有無によらず、ほぼ同じ角度となっている。
【0077】
図7に示されるように、車両用シート90では、リフタ機構部102が作動された場合に、フロントパネル62の全体が上方側へ移動される。これにより、クッションエアバッグ54の前部及び中央部が上方側へ移動される。車両10の前面衝突時には、エアバッグ本体56が膨張展開される。ここで、車両用シート90では、車両用シート20と同様の作用により、エアバッグ本体56が前方側へ変形されることが抑制されるので、車両10の前面衝突時において、乗員Pが前方側へ慣性移動するのを抑制することができる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る車両用シート110について説明する。
【0079】
図8に示される車両用シート110は、第1実施形態の車両10(
図1参照)において、車両用シート20(
図1参照)に代えて設けられている。なお、第1実施形態の車両用シート20と基本的に同一の構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。また、
図8では、車両用シート110の主要部のみが図示されている。
【0080】
車両用シート110は、車両用シート20のエアバッグ取付構造50(
図3参照)が、エアバッグ取付構造120に代えられた点で第1実施形態と異なる。エアバッグ取付構造120は、フロントリテーナ122と、ボルト126と、ナット128とを有する点で、エアバッグ取付構造50と異なる。
【0081】
フロントパネル62の傾斜壁64Aには、厚さ方向に貫通する被取付部の一例としての貫通孔123が形成されている。フロントリテーナ122、ボルト126及びナット128は、取付部材の一例である。なお、第2実施形態の底板部58Aの前後方向の長さは、一例として、第1実施形態の底板部58Aの前後方向の長さよりも短い。
図8では、フロントパネル62に引掛部68が形成されているが、車両用シート110では、引掛部68が無くてもよい。
【0082】
クッションエアバッグ54は、一例として、エアバッグカバー55(
図3参照)を有しておらず、エアバッグ本体56のみで構成されている。エアバッグ本体56におけるフロントパネル62上に配置される部位には、貫通孔56Bが形成されている。貫通孔56Bと貫通孔123とは、上下方向で一致している。また、エアバッグ本体56は、折り畳まれた状態でクッションパッド42(
図3参照)の下側に格納されている。さらに、エアバッグ本体56の内部には、インフレータ57、フロントリテーナ122及びバッグリテーナ58が配置されている。
【0083】
<フロントリテーナ>
フロントリテーナ122は、一例として、鋼板を曲げ加工することで形成されている。また、フロントリテーナ122は、フロントパネル62よりも上側で且つエアバッグ本体56の内部の前後方向中央よりも前側に配置(格納)されている。具体的には、フロントリテーナ122は、エアバッグ本体56の内部で且つバッグリテーナ58の前側に設けられている。また、フロントリテーナ122は、側面視で、前後方向に延びる底板部122Aと、底板部122Aの前端から斜め上方側へ延びるフランジ部122Bとを有する。
【0084】
幅方向において、底板部122A及びフランジ部122Bのそれぞれの長さは、底板部58Aの長さとほぼ同じである。底板部122Aの前後方向の中央部には、底板部122Aを厚さ方向に貫通する貫通孔122Cが形成されている。エアバッグ本体56の一部(底部)は、底板部122A及びフランジ部122Bに対する下側に配置されている。ここで、貫通孔122C、貫通孔56B及び貫通孔123は、上下方向で一致している。
【0085】
<ボルト及びナット>
ボルト126は、頭部126Aと軸部126Bとを有する。頭部126Aは、底板部122Aの上面に溶接されている。軸部126Bは、略円柱状に形成されており、頭部126Aから上下方向を軸方向として下側へ延びている。軸部126Bの外周面には、雄ネジが形成されている。また、軸部126Bは、貫通孔122C、貫通孔56B及び貫通孔123に上側から下側へ向けて挿入され、傾斜壁64Aよりも下側へ延びている。そして、傾斜壁64Aよりも下側から軸部126Bに対してナット128が螺合されることで、フロントリテーナ122とフロントパネル62とが締結されている。フロントリテーナ122、ボルト126及びナット128は、エアバッグ本体56の一部を貫通孔123の周縁部に取り付ける。
【0086】
〔作用及び効果〕
次に、第2実施形態の車両用シート110の作用について説明する。
【0087】
図9に示される車両用シート110では、フロントパネル62とフロントリテーナ122とでエアバッグ本体56が挟まれた状態となる。このため、エアバッグ本体56の一部が上方側へ移動される場合に、エアバッグ本体56の移動が、フロントリテーナ122、ボルト126及びナット128によって制限される。これにより、エアバッグ本体56の一部がフロントパネル62に対して浮き上がるのを抑制することができる。また、エアバッグ本体56の移動が制限されることで、膨張展開時のエアバッグ本体56の揺動を抑制することができる。さらに、エアバッグ本体56の揺動が抑制されることで、シート表皮44が破れるのを抑制することができる。なお、車両用シート110における他の作用については、車両用シート20(
図1参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る車両用シート130について説明する。
【0089】
図10に示される車両用シート130は、第1実施形態の車両10(
図1参照)において、車両用シート20(
図1参照)に代えて設けられている。なお、車両用シート20又は車両用シート90と基本的に同一の構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。また、
図10では、車両用シート130の主要部のみが図示されている。
【0090】
車両用シート130は、車両用シート20のエアバッグ取付構造50(
図3参照)が、エアバッグ取付構造140に代えられた点で第1実施形態と異なる。エアバッグ取付構造140は、伝達部材74、フロントパネル62及びチルト機構部70(
図3参照)が、伝達部材144、パネル部材の一例としてのフロントパネル156及びリフタ機構部102(
図6参照)に代えられた点で、第1実施形態と異なる。
【0091】
<伝達部材>
伝達部材144は、バッグリテーナ58からクッションエアバッグ54の外側へ向けて突出された突出部材145と、サブマリンバー52に固定された固定部材148とを有する。
【0092】
(突出部材)
突出部材145は、頭部146と軸部147とを有する。頭部146は、底板部58Aの上面に溶接されている。軸部147は、円柱状に形成されており、頭部146から上下方向を軸方向として下側へ延びている。軸部147は、突出部材145の一部の一例であり、外周面147Aを有する。また、軸部147は、貫通孔58D、貫通孔56A及び貫通孔55Aに上側から下側へ向けて挿入され、エアバッグ本体56及びエアバッグカバー55よりも下側へ突出されている。
【0093】
(固定部材)
固定部材148は、ブラケット76(
図3参照)よりも後側に配置され、且つ前端部が底板部58Aの前端よりも後側に配置されている。また、固定部材148は、ブラケット76(
図3参照)とほぼ同様の構成を有しているが、貫通孔78Aの周縁の一部(前部)にガイド部154が形成されている点で、ブラケット76と異なる。
【0094】
ガイド部154は、下板部78から下側へ延びている。また、ガイド部154は、底面視で、貫通孔78Aの孔壁面に沿った側面(曲面)を有する。貫通孔78A及び貫通孔79Aは、披挿入部の一例であり、外周面147Aとの間に隙間が形成される大きさの内径を有する。軸部147は、貫通孔78A及び貫通孔79Aに、上下方向に移動可能に挿通されている。
【0095】
<フロントパネル>
フロントパネル156は、フロントパネル62(
図3参照)に更に平坦部158が追加された部材として構成されている。また、フロントパネル156は、リフタ機構部102(
図6参照)によって、シート上下方向に昇降されるようになっている。
【0096】
平坦部158は、後部65と同じ厚さを有する板状に形成されており、上下方向を厚さ方向として、後部65から後側へ延びている。また、平坦部158は、上板部79と上下方向に対向配置されている。平坦部158には、厚さ方向に貫通する貫通孔158Aが形成されている。貫通孔158Aの大きさは、軸部147が上下方向に移動可能に挿通される大きさとされている。
【0097】
軸部147は、貫通孔58D、貫通孔56A、貫通孔55A、貫通孔158A、貫通孔79A及び貫通孔78Aに上側から下側へ向けて挿入され、下板部78よりも下側へ突出されている。そして、軸部147は、フロントパネル156、下板部78及び上板部79に対して、前後方向及び幅方向に相対移動が可能となっている。なお、軸部147の上下方向の長さは、フロントパネル156がリフタ機構部102によって昇降されても、軸部147が貫通孔58D、貫通孔56A、貫通孔55A、貫通孔158A、貫通孔79A及び貫通孔78Aから抜けないように設定されている。
【0098】
ここで、軸部147と、下板部78及び上板部79とが接触した状態において、エアバッグ本体56の膨張展開時にバッグリテーナ58に作用された荷重は、軸部147及び固定部材148を介して、サブマリンバー52に伝達される。つまり、伝達部材144は、バッグリテーナ58に作用する荷重をサブマリンバー52に伝達するようになっている。
【0099】
〔作用及び効果〕
次に、第3実施形態の車両用シート130の作用について説明する。
【0100】
図11に示される車両用シート130では、軸部147が貫通孔78A及び貫通孔79Aに相対移動可能に挿入されている。このため、シートクッション22(
図2参照)の一部がリフタ機構部102(
図6参照)によって上下方向に変位された場合に、荷重の伝達機能を維持しつつ、該変位に追従してエアバッグ本体56を変位可能とする。これにより、シートクッション22へのエアバッグ本体56の搭載位置の自由度を上げることができる。
【0101】
さらに、車両用シート130では、車両10の前面衝突時において、膨張展開されたエアバッグ本体56に乗員Pからの前方側への荷重が作用して、エアバッグ本体56とバッグリテーナ58とが接触することで、バッグリテーナ58が前方側へ変位される。バッグリテーナ58の変位に伴って、軸部147と、貫通孔78A及び貫通孔79Aの孔壁(ガイド部154を含む)とが接触されることで、バッグリテーナ58から固定部材148を介してサブマリンバー52への荷重の伝達が行われる。このように、貫通孔78A及び貫通孔79Aに軸部147を挿通させるだけで、サブマリンバー52への荷重の伝達が可能となるので、貫通孔78A及び貫通孔79Aに軸部147が圧入される構成に比べて、伝達部材144の組付性を上げることができる。なお、車両用シート130における他の作用については、車両用シート20(
図1参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る車両用シート160について説明する。
【0103】
図12に示される車両用シート160は、第3実施形態の車両10(
図11参照)において、車両用シート130(
図11参照)に代えて設けられている。なお、第3実施形態の車両用シート130と基本的に同一の構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。また、
図12では、車両用シート160の主要部のみが図示されている。
【0104】
車両用シート160は、車両用シート130のエアバッグ取付構造140(
図10参照)が、エアバッグ取付構造170に代えられた点で第3実施形態と異なる。エアバッグ取付構造170は、伝達部材172を有する点で、エアバッグ取付構造140と異なる。
【0105】
<伝達部材>
伝達部材172は、バッグリテーナ58からクッションエアバッグ54の外側へ向けて突出された突出部材173と、サブマリンバー52に巻き掛けられた布部材の一例としてのストラップ174とを有する。
【0106】
(突出部材)
突出部材173は、一例として、ボルト82と、ナット84とにより構成されている。ボルト82の軸部82Bには、後述するストラップ174が設けられている。また、突出部材173は、幅方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0107】
(ストラップ)
ストラップ174は、一例として、ナイロン繊維を含む布からなる。また、ストラップ174は、側面視で、前後方向に延在された延在部175と、サブマリンバー52に巻き掛けられた筒状部176とを有する。ストラップ174の幅方向の長さは、一例として、バッグリテーナ58の幅方向の長さとほぼ同じとされている。
【0108】
延在部175は、バッグリテーナ58の下側に配置され、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。また、延在部175は、エアバッグカバー55とフロントパネル156とでシート上下方向に挟まれている。延在部175には、厚さ方向に貫通する貫通孔175Aが、幅方向に間隔をあけて複数形成されている。貫通孔175Aには、軸部82Bが挿入されている。
【0109】
筒状部176は、幅方向を軸方向とする筒状に形成されている。筒状部176の内側には、サブマリンバー52が挿入されている。サブマリンバー52の外周面の一部には、筒状部176の周方向の一部が巻き掛けられている。なお、車両10の前面衝突前の状態において、サブマリンバー52と筒状部176とが接触していなくてもよい。車両10の前面衝突時において、筒状部176の一部が、サブマリンバー52の外周面に巻き掛けられた状態となればよい。
【0110】
軸部82Bは、貫通孔58D、貫通孔56A、貫通孔55A、貫通孔175A及び貫通孔158Aに上側から下側へ向けて挿入され、ナット84に締結されている。なお、ストラップ174が布製で、延在部175が筒状部176に対して上下に変位可能であるため、フロントパネル156がリフタ機構部102によって昇降されても、ストラップ174のサブマリンバー52への巻き掛け状態が保持されるようになっている。
【0111】
ここで、筒状部176とサブマリンバー52とが接触した状態において、バッグリテーナ58に作用された荷重は、軸部82B及びストラップ174を介して、サブマリンバー52に伝達される。つまり、伝達部材172は、バッグリテーナ58に作用する荷重をサブマリンバー52に伝達するようになっている。
【0112】
〔作用及び効果〕
次に、第4実施形態の車両用シート160の作用について説明する。
【0113】
図13に示される車両用シート160では、車両10の前面衝突時において、膨張展開されたエアバッグ本体56に乗員Pからの荷重が作用することで、エアバッグ本体56、インフレータ57及びバッグリテーナ58が、一体で前方側へ変位される。このバッグリテーナ58の変位に伴って、突出部材173が前方側へ変位され且つストラップ174が前方側へ引っ張られることで、ストラップ174とサブマリンバー52とが接触される。これにより、ストラップ174からサブマリンバー52に引張力が作用され、且つバッグリテーナ58からサブマリンバー52に荷重が伝達される。このように、突出部材173に設けられたストラップ174をサブマリンバー52に巻き掛けることで、サブマリンバー52への荷重の伝達が可能となるので、金属製の伝達部材をサブマリンバー52に固定する構成に比べて、車両用シート160を軽量化できる。なお、車両用シート160における他の作用については、車両用シート130(
図10参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係る車両用シート180について説明する。
【0115】
図14に示される車両用シート180は、第1実施形態の車両10(
図1参照)において、車両用シート20(
図1参照)に代えて設けられている。なお、第1実施形態の車両用シート20と基本的に同一の構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。また、
図14では、車両用シート180の主要部のみが図示されている。
【0116】
車両用シート180は、車両用シート20のエアバッグ取付構造50(
図3参照)が、エアバッグ取付構造190に代えられた点で第1実施形態と異なる。エアバッグ取付構造190は、保持部材の一例としてのバッグリテーナ192と、伝達部材204と、パネル部材の一例としてのフロントパネル198と、取付部材の一例としてのクリップ202とを有する点で、エアバッグ取付構造50と異なる。
【0117】
<バッグリテーナ>
バッグリテーナ192は、一例として、鋼材からなる。また、バッグリテーナ192は、サブマリンバー52の上側に配置され、その一部がエアバッグ本体56の内部に格納されている。具体的には、バッグリテーナ192は、側面視で、基部193と、前フランジ部194と、後フランジ部195と、被入力部196とが一体化された構造を有する。また、バッグリテーナ192は、幅方向に延在されている。
【0118】
基部193は、一例として、幅方向を軸方向として、下側へ向けて開口する半円筒状に形成された部位である。基部193の曲率半径は、基部193の内周面がサブマリンバー52の外周面と径方向に接触可能となる大きさに設定されている。基部193の大きさは、平面視で、サブマリンバー52を覆う大きさとされている。
【0119】
前フランジ部194は、基部193の前端から前側へ延在されている。また、前フランジ部194は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。前フランジ部194には、エアバッグ本体56の一部を貫通する図示されないピン部材を介して、インフレータ57が取り付けられている。つまり、前フランジ部194は、インフレータ57を保持している。
【0120】
後フランジ部195は、基部193の後端から後方下側へ板状に延在されている。後フランジ部195の一部には、厚さ方向に貫通する貫通孔195Aが形成されている。
【0121】
被入力部196は、側面視で、基部193の周方向の略中央部から径方向の外側且つ後方側へ斜め方向に延びる傾斜部196Aと、傾斜部196Aの先端から前方上側へ延びる上板部196Bとが一体化された構造を有する。傾斜部196Aの一部及び上板部196Bは、エアバッグ本体56に形成された貫通孔56Cを通してエアバッグ本体56の内部且つ後端側に配置(格納)されている。また、被入力部196は、インフレータ57よりも後側に配置されている。上下方向において、上板部196Bの位置は、インフレータ57の上端の位置よりも高い位置にある。
【0122】
<フロントパネル>
フロントパネル198は、フロントパネル62(
図3参照)において、凹部66が無くなり、上壁63Bから上壁63Fまでが1つの平板部199とされた点で、フロントパネル62と異なる。平板部199には、被取付部の一例としての貫通孔199Aが形成されている。
【0123】
貫通孔199Aは、平板部199を上下方向に貫通している。また、貫通孔199Aは、平板部199において、幅方向に間隔をあけて複数形成されている。複数の貫通孔199Aには、後述するクリップ202が挿入される。
【0124】
<伝達部材>
伝達部材204は、サブマリンバー52に設けられたブラケット206と、ブラケット206とバッグリテーナ192とを締結する締結部材の一例としてのボルト214及びウェルドナット215とを有する。
【0125】
(ブラケット)
ブラケット206は、一例として、鋼材からなる。また、ブラケット206は、側面視で、バッグリテーナ192に対する下側に配置されている。ブラケット206の幅方向の長さは、一例として、バッグリテーナ192の幅方向の長さとほぼ同じである。なお、
図14では、各部材の配置を明確に示すために、実際は接触している部材であっても、隙間をあけた状態で示されている。
【0126】
ブラケット206は、側面視で、基部208と、前フランジ部209と、後フランジ部211と、縦フランジ部212とが一体化された構造を有する。基部208、前フランジ部209及び後フランジ部211は、幅方向に延在されている。
【0127】
基部208は、一例として、幅方向を軸方向として、上側へ向けて開口する半円筒状に形成された部位である。基部208の曲率半径は、基部208の内周面がサブマリンバー52の外周面と径方向に接触可能となる大きさに設定されている。基部208の大きさは、基部208の底面視でサブマリンバー52を覆う大きさとされている。また、基部208の一部は、サブマリンバー52の外周面に溶接されている。
【0128】
前フランジ部209は、基部208の前端から前側へ延在されている。また、前フランジ部209は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。さらに、前フランジ部209は、前フランジ部194と共にエアバッグカバー55の底部をシート上下方向に挟んでいる。
【0129】
後フランジ部211は、基部208の後端から後方下側へ板状に延在されている。後フランジ部211の一部には、厚さ方向に貫通する貫通孔211Aが形成されている。また、後フランジ部211は、後フランジ部195と略上下方向に重ねられている。
【0130】
縦フランジ部212は、基部208、前フランジ部209及び後フランジ部211の幅方向の両端から下側に向けてそれぞれ延びている。つまり、ブラケット206は、正面視で、下側に向けて開口するU字状に形成されている。
【0131】
(ボルト及びウェルドナット)
ウェルドナット215は、後フランジ部211の貫通孔211Aの周縁部に下側から重ねられ、溶接されている。つまり、ウェルドナット215の孔と貫通孔211Aとは一致している。
【0132】
ボルト214は、頭部214Aと軸部214Bとを有する。軸部214Bは、略円柱状に形成されており、外周面に雄ネジが形成されている。また、軸部214Bは、貫通孔195A、貫通孔211Aに上側から下側へ向けて挿入され、ウェルドナット215に螺合されている。このようにして、バッグリテーナ192とブラケット206とが締結されている。ここで、エアバッグ本体56の膨張展開時にバッグリテーナ192に作用された荷重は、ボルト214及びブラケット206を介して、サブマリンバー52に伝達される。つまり、伝達部材204は、バッグリテーナ192に作用する荷重をサブマリンバー52に伝達するようになっている。
【0133】
なお、車両用シート180の組み付けでは、サブマリンバー52に溶接されたブラケット206の後フランジ部211に対して、後フランジ部195が上側から重ねられる。そして、ボルト214を上側からウェルドナット215に螺合させることで、後フランジ部211と後フランジ部195とが締結される。つまり、サブマリンバー52に対する上側からの作業で、バッグリテーナ192を取り付けることができる。
【0134】
<クリップ>
クリップ202は、一例として、樹脂製の部材として構成されている。また、クリップ202は、円形状の平板部202Aと、平板部202Aから下側へ延びる円柱状の軸部202Bと、軸部202Bの先端側に形成された拡幅部202Cとを有する。
【0135】
平板部202Aの外径は、貫通孔199Aの内径よりも大きい。軸部202Bの外径は、貫通孔199Aの内径よりも小さい。拡幅部202Cの最大外径は、貫通孔199Aの内径よりも大きい。ただし、拡幅部202Cは、樹脂製であるため、貫通孔199Aに押し込まれた場合には、弾性変形して貫通孔199Aを挿通可能となっている。
【0136】
ここで、貫通孔55Bと貫通孔199Aとが一致した状態で、上側から下側に向けて、拡幅部202C及び軸部202Bが貫通孔55B及び貫通孔199Aに挿通されることで、エアバッグカバー55の前部がフロントパネル198に取り付けられている。このように、クッションエアバッグ54の内部で且つバッグリテーナ192よりも前側には、クッションエアバッグ54の一部を貫通孔199Aの周縁部に取り付けるクリップ202が設けられている。
【0137】
なお、バッグリテーナ192からサブマリンバー52までが一体となっている。このため、チルト機構部70(
図1参照)の作動によりフロントパネル198が回動されクッションエアバッグ54の前後方向に対する傾きが変わっても、サブマリンバー52が回動されると共にブラケット206及びバッグリテーナ192が傾けられた状態となる。このように、フロントパネル198の角度変更に伴ってブラケット206及びバッグリテーナ192の角度も変更されるので、クッションエアバッグ54の前部と後部が上下方向にずれて配置されることが抑制される。つまり、シートクッション22が傾けられた場合に、乗員P(
図2参照)に対するエアバッグ本体56の配置状態が変わることが抑制される。
【0138】
〔作用及び効果〕
次に、第5実施形態の車両用シート180の作用について説明する。
【0139】
車両10の自動運転時では、図示されないリクライニング機構が乗員Pによって操作されて、車両用シート180に着座する乗員Pの姿勢が、通常の姿勢から休息姿勢や安楽姿勢とされることがある。
【0140】
このような場合において、
図15に示されるように、車両10が前面衝突した場合、車両用シート180では、インフレータ57からガスが供給されることで、エアバッグ本体56が膨張展開される。このとき、車両用シート180に着座している乗員P(
図2参照)は、元の着座位置よりも前方側に慣性移動される。このため、膨張展開したエアバッグ本体56には、乗員Pから前方側に向かう荷重が作用する。エアバッグ本体56は、該荷重が作用することで変形され、その後部が内部のバッグリテーナ192(被入力部196)と前後方向に接触する。つまり、エアバッグ本体56からバッグリテーナ192に荷重が伝達される。
【0141】
バッグリテーナ192に伝達された荷重は、伝達部材204を介してサブマリンバー52に伝達される。これにより、エアバッグ本体56に作用する荷重が低減され、エアバッグ本体56が前方側へ変形されることが抑制される。エアバッグ本体56の変形が抑制されることで、乗員Pがエアバッグ本体56から受ける反力の低下が抑制されるので、車両10の前面衝突時において、乗員Pが前方側へ慣性移動するのを抑制することができる。換言すると、既述のサブマリン現象を抑制することができる。
【0142】
また、車両用シート180では、フロントパネル198とクリップ202とでクッションエアバッグ54(エアバッグカバー55)が挟まれた状態となる。これにより、エアバッグカバー55の一部(前部)が上方側へ移動される場合に、エアバッグカバー55の移動をクリップ202が制限するので、エアバッグカバー55の一部がフロントパネル198に対して浮き上がるのを抑制することができる。なお、車両用シート180における他の作用については、車両用シート20(
図1参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0143】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態に係る車両用シート220について説明する。
【0144】
図16に示される車両用シート220は、第4実施形態の車両10(
図12参照)において、車両用シート160(
図12参照)に代えて設けられている。なお、第4実施形態の車両用シート160と基本的に同一の構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。また、
図16では、車両用シート220の主要部のみが図示されている。
【0145】
車両用シート220は、車両用シート160のエアバッグ取付構造170(
図3参照)が、エアバッグ取付構造230に代えられた点で第4実施形態と異なる。エアバッグ取付構造230は、伝達部材172に代えて伝達部材234を有する点でエアバッグ取付構造170と異なる。
【0146】
なお、第6実施形態における底板部58Aの前後方向の長さは、第4実施形態における底板部58Aの前後方向の長さと同程度とされている。また、底板部58Aには、貫通孔は形成されていない。バッグリテーナ58における貫通孔以外の構成については、第4実施形態と同様の構成である。
【0147】
<伝達部材>
伝達部材234は、一例として、鋼板からなり、バッグリテーナ58に溶接されている。具体的には、伝達部材234は、側面視で、前後方向に延在された横板部235と、横板部235の後端から下側へ延びる縦板部236とを有する。つまり、伝達部材234は、側面視でL字状の断面形状を有している。幅方向において、伝達部材234の長さは、サブマリンバー52の長さとほぼ同じ長さである。
【0148】
横板部235の前端は、一例として、縦板部58Bの下端部に後側から接触され且つ溶接されている。これにより、バッグリテーナ58と伝達部材234とが一体化されている。横板部235は、サブマリンバー52の上側に配置されている。縦板部236は、サブマリンバー52の後側に配置されている。また、縦板部236は、車両10の前面衝突時においてクッションエアバッグ54に前方側へ向かう荷重が作用された場合に、サブマリンバー52と前後方向に接触してサブマリンバー52に荷重を伝達するように、予め設定された間隔をあけて配置されている。
【0149】
〔作用及び効果〕
次に、第6実施形態の車両用シート220の作用について説明する。
【0150】
図17に示される車両10の前面衝突時(乗員Pが安楽姿勢の状態)において、車両用シート220では、エアバッグ本体56が膨張展開される。膨張展開したエアバッグ本体56には、乗員P(
図2参照)から前方側に向かう荷重が作用する。これにより、エアバッグ本体56、インフレータ57、バッグリテーナ58及び伝達部材234が、一体で前方側へ変位される。このときに、縦板部236がサブマリンバー52と接触する。
【0151】
エアバッグ本体56からバッグリテーナ58に伝達された荷重は、伝達部材234を介してサブマリンバー52に伝達される。これにより、エアバッグ本体56に作用する荷重が低減され、エアバッグ本体56がシート前方側へ変形されることが抑制される。エアバッグ本体56の変形が抑制されることで、乗員Pがエアバッグ本体56から受ける反力の低下が抑制されるので、車両10の前面衝突時において、乗員Pが前方側へ慣性移動するのを抑制することができる。換言すると、既述のサブマリン現象を抑制することができる。車両用シート220における他の作用については、車両用シート160と同様であるため、説明を省略する。
【0152】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されない。
【0153】
<第1実施形態の第2変形例>
図18には、第1実施形態の第2変形例として、車両用シート240が示されている。第1実施形態の構成と基本的に同一の構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。
図18では、車両用シート240の主要部のみが図示されている。
【0154】
車両用シート240は、車両用シート20(
図3参照)のエアバッグ取付構造50が、エアバッグ取付構造250に代えられた点で第1実施形態と異なる。エアバッグ取付構造250は、引掛部254及び繋ぎ部材252を更に有する点で、エアバッグ取付構造50と異なる。
【0155】
引掛部254は、縦板部58Bの幅方向の両端部から後方側へ向けて突出された部位である。また、引掛部254は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。
【0156】
繋ぎ部材252は、一例として、布製とされている。また、繋ぎ部材252は、側面視で、長手方向の両端部を厚さ方向に重ねることで一部が筒状に形成されている。繋ぎ部材252における重ねられた部位を厚肉部253と称する。厚肉部253には、厚さ方向に貫通する貫通孔253Aが形成されている。貫通孔253Aには、引掛部254が挿通されている。なお、厚肉部253は、引掛部254が貫通孔253Aに挿通された後で、図示されないキャップが引掛部254の後端部に嵌められることで、引掛部254から抜けないようになっている。
【0157】
また、繋ぎ部材252における筒状の部位は、側面視で、サブマリンバー52の外周面の一部に巻き掛けられている。このように、車両用シート240では、伝達部材74に加えて、サブマリンバー52とバッグリテーナ58とを繋ぐ繋ぎ部材252が設けられている。
【0158】
車両用シート240では、車両10の前面衝突時(エアバッグ本体56の膨張展開時)に、乗員P(
図2参照)の前方側への慣性移動に伴ってエアバッグ本体56に作用した荷重が、バッグリテーナ58から伝達部材74を介してサブマリンバー52に伝達される。この場合に、エアバッグ本体56に前方側へ向かう荷重(モーメント)が作用することで、エアバッグ本体56の後部が上方側へ浮き上がる可能性がある。ここで、繋ぎ部材252によってサブマリンバー52とバッグリテーナ58とが繋がれていることで、サブマリンバー52に対するバッグリテーナ58の相対的な変位が抑制され、且つエアバッグ本体56の後部の上側に向かう変位も抑制される。これにより、エアバッグ本体56の後部が上方側へ浮き上がるのを抑制することができる。
【0159】
<他の変形例>
車両用シート20、90において、フロントパネル62が設けられていなくてもよい。また、フロントパネル62に引掛部68が形成されていなくてもよい。さらに、クッションエアバッグ54の一部は、ネジ等の締結部材を用いて取り付けられてもよい。
【0160】
車両用シート110において、伝達部材74を伝達部材144、172、204及び234のいずれか1つに置き換えてもよい。また、車両用シート110において、エアバッグカバー55を設けてもよい。さらに、車両用シート110において、ストラップ174及び繋ぎ部材252を設けてもよい。
【0161】
車両用シート130において、貫通孔78A及び貫通孔79Aに代えて、有底の穴部を形成して、突出部材145を該穴部に挿入させてもよい。また、フロントパネル156の前後方向の長さを短くすることで貫通孔158Aを廃止して、突出部材145の下端部を貫通孔78A及び貫通孔79Aのみに挿通させてもよい。さらに、車両用シート130において、フロントリテーナ122、ボルト126、ナット128及び繋ぎ部材252を設けてもよい。
【0162】
車両用シート160において、バッグリテーナ58に引掛部254を突出形成させて、繋ぎ部材252を設けてもよい。また、突出部材173にストラップ174を設ける場合に、ストラップ174の一部がネジ等の締結部材を用いて突出部材173に固定されてもよい。
【0163】
車両用シート180において、クリップ202に代えて引掛部68を形成して、エアバッグカバー55の一部を引掛部68に引っ掛けてもよい。また、後フランジ部195、211に代えて、前フランジ部194、209を下側からボルト214を用いて締結する構成としてもよい。被入力部196は、側面視でインフレータ57を上側から覆うように配置されてもよい。
【0164】
車両用シート220において、伝達部材234は、バッグリテーナ58に溶接されるものに限らず、図示されないブラケットを介してバッグリテーナ58に取り付けられたものであってもよい。また、伝達部材234は、側面視でL字状のものに限らず、円弧状や多角形状、湾曲状に形成されたものであってもよい。さらに、伝達部材234は、平面視でサブマリンバー52を覆うものに限らず、底面視でサブマリンバー52を覆うものであってもよい。
【0165】
車両用シート240において、フロントリテーナ122を用いて、エアバッグカバー55の一部をフロントパネル62に取り付けてもよい。
【0166】
車両用シート20、90、110、130、160、180、220、240において、チルト機構部70をリフタ機構部102に置き換え、あるいは、リフタ機構部102をチルト機構部70に置き換えてもよい。リフタ機構部102を用いる場合には、図示されないリンク機構を用いて、サイドフレーム34及びサブマリンバー52を一体で上下に変位可能とすればよい。
【0167】
架設部材は、サブマリンバー52のように円柱状のものに限らず、幅方向を軸方向とする円筒状、角筒状、角柱状のものであってもよい。
【0168】
保持部材は、バッグリテーナ58のように全体がクッションエアバッグ54の内部に配置されたもの、バッグリテーナ192のように一部がクッションエアバッグ54の内部に配置されたもの、いずれであってもよい。つまり、保持部材は、少なくとも一部がクッションエアバッグの内部に配置されていればよい。
【0169】
クッションエアバッグカバーの一部に代えて、クッションエアバッグ前端の非膨張部を引掛部に引っ掛けてもよい。
【0170】
以上、本発明の各実施形態及び各変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0171】
10 車両
20 車両用シート
22 シートクッション
34 サイドフレーム(骨格部材の一例)
52 サブマリンバー(架設部材の一例)
55 エアバッグカバー(クッションエアバッグカバーの一例)
56 エアバッグ本体(クッションエアバッグ本体の一例)
57 インフレータ
58 バッグリテーナ(保持部材の一例)
62 フロントパネル(パネル部材の一例)
68 引掛部(被取付部の一例)
70 チルト機構部
74 伝達部材
76 ブラケット
78A 貫通孔(被挿入部の一例)
79A 貫通孔(被挿入部の一例)
82 ボルト(締結部材の一例)
84 ナット(締結部材の一例)
90 車両用シート
102 リフタ機構部
110 車両用シート
122 フロントリテーナ(取付部材の一例)
126 ボルト(取付部材の一例)
128 ナット(取付部材の一例)
123 貫通孔(被取付部の一例)
130 車両用シート
144 伝達部材
145 突出部材
147A 外周面
148 固定部材
156 フロントパネル(パネル部材の一例)
160 車両用シート
172 伝達部材
173 突出部材
174 ストラップ(布部材の一例)
180 車両用シート
192 バッグリテーナ(保持部材の一例)
198 フロントパネル(パネル部材の一例)
199A 貫通孔(被取付部の一例)
202 クリップ(取付部材の一例)
204 伝達部材
206 ブラケット
214 ボルト(締結部材の一例)
215 ウェルドナット(締結部材の一例)
220 車両用シート
234 伝達部材
240 車両用シート
252 繋ぎ部材