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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
E04H6/18 610
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019145896
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021025361
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208672
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 愼一
(72)【発明者】
【氏名】古郡 千照
(72)【発明者】
【氏名】板垣 一彦
(72)【発明者】
【氏名】上西 喜之
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/194191(WO,A1)
【文献】特開2014-080793(JP,A)
【文献】特開平09-013733(JP,A)
【文献】特開2019-056265(JP,A)
【文献】特開2017-179835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床側に形成された複数の各区画にそれぞれ床側駆動装置を配置し、各床側駆動装置の上部側にトレーを循環移動可能に搭載して配置した機械式駐車装置において、
前記トレーは、複数のトレー側検知体を有し、
記各床側駆動装置は、複数の床側位置検知器を有し、
前記トレー側検知体と前記床側位置検知器とが対向したときに前記床側位置検知器がオン状態とされる構成とされ、
記トレー側検知体の少なくとも一方の移動によってオン状態となる前記床側位置検知器により移動先区画への前記トレーの到着を検出するトレー現在位置確認部を備え、
前記床側駆動装置は、前記トレーの長手方向に分散して配置された二個のモータ駆動装置を有し、
前記二個の前記モータ駆動装置を個々に駆動可能な分離駆動可能モード駆動部と、前記二個の前記モータ駆動装置を同時駆動する同時駆動モード駆動部と、を有して循環駆動部が構成され、
前記移動先区画の前記各床側駆動装置の上部に位置して停止した状態の前記トレーが正常な停止位置からずれたことを検知する少なくとも四個の前記床側位置検知器を前記各床側駆動装置のほぼ四隅にそれぞれ設け、前記トレー側には前記各床側位置検知器に対応可能な少なくとも四個の前記トレー側検知体を設けるとともに、
前記トレーの移動先区画での前記床側位置検知器によってずれ発生パターンを区別する循環状態監視管理部と、前記循環状態監視管理部のずれ発生パターンに対応する補正パターンを前記循環駆動部を用いて実行する循環ずれ補正制御部を設けた、
ことを特徴とする機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車車両をトレーに搭載して格納する機械式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械式駐車装置として、特開2019-56265号公報(特許文献1)には、一つの横移送路に、複数個のパレットを連結状態としたパレット群を横移動可能に配置 し、前記横移送路の側部に前記パレット群を駆動する横送り駆動装置を設けた機械式駐車装置において、前記パレットの停止位置で、かつ、前記横移送路における横移動方向の両側方に、横移動方向に所定距離を隔てて配置されて前記パレットの位置を検出するそれぞれ二個の位置検出器を配置し、前記横移送路における横移動方向の両側方に、前記パレット群を独立して駆動可能で、かつ、前記パレットのずれ補正のために単独または同時に駆動可能なずれ補正駆動機能を有する前記横送り駆動装置を配置したことを特徴とする機械式駐車装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-56265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された機械式駐車装置では、複数個のパレットを連結状態としたパレット群を横移動可能に配置した構成には適用できるが、複数の床側駆動装置の上部を個別に独立してトレーが縦送りまたは横送りされる構成の機械式駐車装置には適用することができなかった。しかも、個別に独立してトレーの現在位置を把握することができなかったため、その位置で新たな処理を行うときのタイミングを得ることが難しかった。
【0005】
本発明の目的は、独立してトレーが縦送りまたは横送りされる構成の機械式駐車装置においても簡単な構成で、個別に独立してトレーの現在位置を把握することができる機械式駐車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る機械式駐車装置は、床側に形成された複数の各区画にそれぞれ床側駆動装置を配置し、各床側駆動装置の上部側にトレーを循環移動可能に搭載して配置した機械式駐車装置において、前記各区画の前記各床側駆動装置に、対角に位置する少なくとも二個の床側位置検知器を配置し、前記トレーに前記床側位置検知器と対向したときに前記床側位置検知器をオン状態とするトレー側検知体を配置し、前記トレー側検知体の少なくとも一方の移動によってオン状態となる前記床側位置検知器により移動先区画への前記トレーの到着を検出するトレー現在位置確認部を設けたことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、トレーの横送り時には横送り方向に隣接する各床側位置検知器のオン・オフ信号、トレーの縦送り時には縦送り方向に隣接する各床側位置検知器のオン・オフ信号の走行カウンタによって現在位置を把握することができる。
【0008】
第2態様に係る機械式駐車装置は、第1態様に係る機械式駐車装置において、前記床側駆動装置は、前記トレーの長手方向に分散して配置された二個のモータ駆動装置を備え、二個の前記モータ駆動装置を個々に駆動可能な分離駆動可能モード駆動部と、前記モータ駆動装置のモータを同時駆動する同時駆動モード駆動部を有して循環駆動部を構成し、前記移動先区画の前記各床側駆動装置の上部に位置して停止した状態の前記トレーが正常な停止位置からずれたことを検知するように少なくとも四個の前記床側位置検知器を前記各床側駆動装置のほぼ四隅にそれぞれ設け、前記トレー側には四個の前記各床側位置検知器に対応可能な少なくとも四個のトレー側検知体を設け、前記トレーの移動先区画での前記床側位置検知器によってずれ発生パターンを区別する循環状態監視管理部と、前記循環状態監視管理部のずれ発生パターンに対応する補正パターンを前記循環駆動部を用いて実行する循環ずれ補正制御部を設けたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、少なくとも四個の床側位置検知器を使用して、トレーの現在位置の判定とずれ検出を行うことができるようになり、しかも、循環ずれ補正制御部ではトレーの長手方向に分散配置したモータ駆動装置を効果的に活用して、独立してトレーを縦送りまたは横送りされる構成の機械式駐車装置においても簡単な構成でトレーのずれ補正を行うことができ、移動ルートを進んで行くに従ってトレーのずれが増大するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による機械式駐車装置によれば、トレーの横送り時には横送り方向に隣接する各床側位置検知器のオン・オフ信号、トレーの縦送り時には縦送り方向に隣接する各床側位置検知器のオン・オフ信号の走行カウンタによって現在位置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例による機械式駐車装置の正面図である。
図2図1に示した機械式駐車装置の床側駆動装置の一例を示す平面図である。
図3図1に示したトレーの駆動制御を行う制御装置を示すブロック構成図である。
図4図1に示したトレーを正転方向に縦送りするときの床側駆動装置との対応関係を示す平面図である。
図5図1に示したトレーを逆転方向に縦送りするときの床側駆動装置との対応関係を示す平面図である。
図6図1に示したトレーを正転方向に横送りするときの床側駆動装置との対応関係を示す平面図である。
図7図1に示したトレーを逆転方向に横送りするときの床側駆動装置との対応関係を示す平面図である。
図8】ずれ発生パターンとずれ補正パターンの対応関係を示す説明図である。
図9】他のずれ発生パターンとずれ補正パターンの対応関係を示す説明図である。
図10図3に示した信号受信部が取り込んだ各信号を用いて循環移動するトレーの現在位置を判定するトレー現在位置確認部のカウント処理を示す説明図である。
図11】トレーの横送り時における制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
図12図11に示したずれ補正処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例による機械式駐車装置の平面図である。
【0014】
水平循環型の機械式駐車装置は、図1に示すように上下方向に昇降動作するリフト装置1の前後左右方向に複数の区画が形成され、各区画間を単独または駐車車両を搭載した状態のトレー2が走行移動可能に配置されている。通常、全区画数より一つ少ないトレー2が配置されて一つの空スペース3が形成され、この空スペース3を利用したトレー2の前後左右方向の動きを繰り返すことによって、駐車位置からリフト装置1まで、またはリフト装置1から駐車位置まで移動する構成としている。
【0015】
このようなトレー2の動作を可能にするために、各区画の床側にはモータを使用した床側駆動装置4がそれぞれ配置構成され、床側駆動装置4に対向する各トレー2の裏面対向側には床側駆動装置4と協働してトレー2を所望の方向へと移動することになるトレー側従動装置がそれぞれ構成されている。
【0016】
図2は、床側駆動装置4の一例を示す平面図である。
【0017】
床側駆動装置4の構成は既に知られているので、ここでは簡単に説明する。床側駆動装置4は、区画毎にユニット構成され、一対の縦ガイドレール5A,5Bと横ガイドレール6A,6Bを組み合わせた枠体7を有し、この枠体7の中央部に一個のモータを使用した移動方向切替装置8を構成し、移動方向切替装置8を挟んだ両端部にそれぞれ一個のモータを使用したモータ駆動装置9A,9Bがそれぞれ構成されている。
【0018】
移動方向切替装置8を長手方向である縦送り方向に切り替えると、モータ駆動装置9A,9Bの回転力は縦送り方向に伝達されて、図示しないトレー側従動装置を介してトレー2を縦ガイドレール5A,5Bに沿った縦方向に移動することになる。これに対して、移動方向切替装置8を横送り方向に切り替えると、モータ駆動装置9A,9Bの回転力は横方向に伝達されて、図示しないトレー側従動装置を介してトレー2を横ガイドレール6A,6Bに沿った縦方向に移動することになる。
【0019】
また枠体7には、床側駆動装置4の上部で停止した状態のトレー2が正常な停止位置からずれたことを検知する複数個の床側位置検知器10A~10Dが所定の位置に設けられている。図示の実施例では、合計四個の床側位置検知器10A~10Dが枠体7の四隅にそれぞれ設けられているが、これに限らず個数や位置を決定することができる。
【0020】
またモータ駆動装置9A,9Bは、後述する制御装置によって、正転方向または逆転方向に同時駆動する同時駆動モードだけでなく、モータ駆動装置9Aとモータ駆動装置9Bをそれぞれ独立して正転方向または逆転方向に駆動する分離駆動モードを選択することができるように構成されている。
【0021】
このような構成の床側駆動装置4が図1に示すように区画毎にそれぞれ配置構成されると、縦ガイドレール5A,5Bは全体としても縦方向に連続した構成となり、横ガイドレール6A,6Bも全体としても横方向に連続した構成となる。
【0022】
従って、図1に示したトレー2を横方向移動と縦方向移動を選択しながら移動方向切替装置8を切り替えて、モータ駆動装置9A,9Bを駆動すると、現在位置とリフト装置1間でトレー2を移動することができる。
【0023】
床側駆動装置4の上部には、トレー2が対応して停止する。このトレー2の裏面側、つまり床側駆動装置4との対向側には、正常な停止位置で四個の床側位置検知器10A~10Dとそれぞれ対応して床側位置検知器10A~10Dをオン状態とするトレー側検知体11A~11Dがそれぞれ配置されている。これらのトレー側検知体11A~11Dも図示の構成に限らず、床側駆動装置4の床側位置検知器10A~10Dに合わせて個数や位置を変更することができる。
【0024】
図3は、トレーの駆動制御を行う制御装置を示すブロック構成図である。
【0025】
上述したように一つの区画には、一個のモータを使用した移動方向切替装置8と、移動方向切替装置8の両側に分散配置されたモータ駆動装置9A,9Bと、四個の床側位置検知器10A~10Dが配置されている。ここで移動方向切替装置8は本発明の趣旨と直接関係が無いので図示を省略し、簡略化した区画循環部12Aとして示している。他の複数の区画循環部12Nも同様である。
【0026】
制御装置は、現在位置から移動先位置までのトレー2の移動ルートなどを管理する循環動作制御部13と、循環動作制御部13が決定した移動ルートに従ってトレー3が移動するように各区画のモータ駆動装置9A,9Bのモータを制御する循環駆動部14と、移動中のトレー3が停止したその停止位置の区画内の各床側位置検知器10A~10Dからの信号を取り込む信号受信部15と、信号受信部15が取り込んだ各信号から循環状態を監視管理する循環状態監視管理部16と、循環状態監視管理部16で正常と判定されたときに次の停止位置まで一連の循環動作を継続させる循環動作制御部17と、循環状態監視管理部16で異常と判定されたときその結果に基づいて循環補正パターンを循環動作制御部13に与える循環ずれ補正制御部18を有している。
【0027】
上述した循環駆動部14は、区画循環部12Aにおけるモータ駆動装置9A,9Bのモータを個々に駆動することが可能となる分離駆動可能モード駆動部14A,14Bと、区画循環部12Aにおけるモータ駆動装置9A,9Bのモータを同時駆動する同時駆動モード駆動部14Cを有している。分離駆動可能モード駆動部14A,14Bは、後述する説明から分かるように同時駆動、同時減速も可能であるが、あるタイミングが検出されると、個別に減速したり、個別に駆動したりすることが可能となる。
【0028】
また上述した循環状態監視管理部16は、信号受信部15が取り込んだ各信号を用いて循環移動するトレーの現在位置を判定するトレー現在位置確認部21を有している。
【0029】
次に、上述した循環動作制御部17と循環状態監視管理部16について説明する。尚、本実施例では、トレーを現在の停止位置から所望の移動先位置まで駆動する場合、循環動作制御部17は、移動ルートなどを管理するが、停止位置から所望の移動先位置まで停止させることなく連続移動させるのではなく、トレーを一区画毎停止させて循環状態監視管理部16によって状態監視と管理を行うものとして説明する。
【0030】
図4は、トレー2を正転方向に縦送りするときの各区画の床側に設けた床側駆動装置4との対応関係を示す平面図である。
【0031】
この正転方向縦送りとは、トレー2を下側の区画19Bから上側の長手方向に隣接した区画19Aへと正転方向に一区画分だけ移動する場合のことである。区画19Bにおいては、トレー2が正常な対応位置で床側駆動装置4の上部側に停止している。
【0032】
この正転方向縦送りでは、図3に示した循環駆動制御部13によって循環駆動部14の同時駆動モード駆動部14Cが選定され、同時駆動モード駆動部14Cによってモータ駆動装置9A,9Bにおけるモータが同時に正転方向に駆動制御される。
【0033】
区画19A側へのトレー2の移動に伴って、図4から分かるようにトレー2の移動方向先端側のトレー側検知体11A,11Dが床側位置検知器10B,10Cと最初に対向して、床側位置検知器10B,10Cが共にオン状態となる。この状態の少なくともいずれか一方を検出した循環状態監視管理部16は、循環動作制御部17および循環移動制御部13を通して同時駆動モード駆動部14Cによるモータ駆動装置9A,9Bのモータを減速させる。次いで、上述した対向関係が解除されて、一旦、床側位置検知器10B,10Cがオフ状態となる。
【0034】
その後、トレー2から遠い方の床側位置検知器10A,10Dとトレー側検知体11A,11Dが対向し、床側位置検知器10A,10Dがオン状態となる。この状態を検出した循環状態監視管理部16は、循環動作制御部17および循環移動制御部13を通して同時駆動モード駆動部14Cによるモータ駆動装置9A,9Bのモータを停止させる。
【0035】
床側位置検知器10A,10Dと同時に、床側位置検知器10B,10Cもトレー側検知体11B,11Cと対向してオン状態となる。詳細は後述するが、正転方向縦送りに限らず、各種送りにおいて、この状態後になった後、四個の床側位置検知器10A~10Dの状態信号はその後のずれ補正処理のために使用される。
【0036】
図5は、トレー2を逆転方向に縦送りするときの各区画の床側に設けた床側駆動装置4との対応関係を示す平面図である。
【0037】
この逆転方向縦送りとは、トレー2を上側の区画19Aから下側の長手方向に隣接した区画19Bへと逆転方向に一区画分だけ移動する場合のことである。区画19Aでトレー2は正常な対応位置で停止している。
【0038】
この逆転方向縦送りでも、図3に示した循環駆動制御部13によって循環駆動部14の同時駆動モード駆動部14Cが選定されており、同時駆動モード駆動部14Cによってモータ駆動装置9A,9Bにおけるモータが同時に逆転方向に駆動制御される。トレー2の移動に伴って、図5から分かるようにトレー2の移動方向先端側のトレー側検知体11B,11Cが床側位置検知器10A,10Dと対向して共にオン状態となる。この状態を検出した循環状態監視管理部16は、循環動作制御部17および循環移動制御部13を通して同時駆動モード駆動部14Cによるモータ駆動装置9A,9Bのモータを減速させる。その後、上述した対向関係が解除されて床側位置検知器10A,10Dがオフ状態となる。
【0039】
その後、トレー2から遠い方の床側位置検知器10B,10Cがトレー側検知体11B,11Cと対向してオン状態となる。この状態を検出した循環状態監視管理部16は、循環動作制御部17および循環移動制御部13を通して同時駆動モード駆動部14Cによるモータ駆動装置9A,9Bのモータを停止させる。
【0040】
図6は、トレー2を正転方向に横送りするときの各区画の床側に設けた床側駆動装置4との対応関係を示す平面図である。
【0041】
この正転方向横送りとは、トレー2を右側の区画20Bから左側の幅方向に隣接した区画20Aへと正転方向に移動する場合のことである。
【0042】
正常な正転方向横送りでは、先ず、床側位置検知器10D,10Cがトレー側検知体11A,11Bとそれぞれ対向してオン状態となり、次いで、これらの対向関係が解除されて床側位置検知器10D,10Cがオフ状態となる。その後、床側位置検知器10A,10Bがトレー側検知体11A,11Bとそれぞれ対向してオン状態となると共に、床側位置検知器10D,10Cがトレー側検知体11D,11Cとそれぞれ対向してオン状態となる。
【0043】
この正転方向横送りでは、縦送りの場合とは異なり、モータ駆動装置9Aのモータとモータ駆動装置9Bのモータを図3に示した分離駆動可能モード駆動部14Aと分離駆動可能モード駆動部14Bによって駆動制御する。当初、モータ駆動装置9A,9Bのモータは分離駆動可能モード駆動部14A,14Bによって同時駆動された後、トレー2の移動方向先端側の床側位置検知器10Dがトレー側検知体11Aと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Aによってモータ駆動装置9Aのモータが、また分離駆動可能モード駆動部14Bによってモータ駆動装置9Bのモータが同時に減速される。
【0044】
しかし、詳細を後述するようにその後は、分離駆動可能モード駆動部14Aと分離駆動可能モード駆動部14Bによってモータ駆動装置9A,9Bのモータを別個に駆動および停止を行うことが可能となる。
【0045】
次いで、これらの対向関係が解除されてオフ状態となった後、床側位置検知器10Dが今度はトレー側検知体11Dと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Aによってモータ駆動装置9Aのモータが個別に停止される。また、床側位置検知器10Cがトレー側検知体11Cと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Bによってモータ駆動装置9Bのモータが個別に停止される。
詳細は後述するが、その後、これらの四個の床側位置検知器10A~10Dの状態信号は、その後に行われるずれ補正処理のために使用される。
【0046】
図7は、トレー2を逆転方向に横送りするときの各区画の床側に設けた床側駆動装置4との対応関係を示す平面図である。
【0047】
この逆転方向横送りとは、トレー2を左側の区画20Aから右側の幅方向に隣接した区画20Bへと逆転方向に移動する場合のことである。この逆転方向横送りでも、モータ駆動装置9Aのモータとモータ駆動装置9Bのモータを図3に示した分離駆動可能モード駆動部14Aと分離駆動可能モード駆動部14Bによってそれぞれ駆動制御する。当初、モータ駆動装置9A,9Bのモータは分離駆動可能モード駆動部14A,14Bによって同時駆動された後、トレー2の移動方向先端側の床側位置検知器10Bがトレー側検知体11Cと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Aによってモータ駆動装置9Aのモータが、また分離駆動可能モード駆動部14Bによってモータ駆動装置9Bのモータが同時に減速される。
【0048】
しかし、詳細を後述するようにその後は、分離駆動可能モード駆動部14Aと分離駆動可能モード駆動部14Bによってモータ駆動装置9A,9Bのモータを別個に駆動および停止することが可能となる。
【0049】
先ず、トレー2の移動方向先端側の床側位置検知器10Aがトレー側検知体11Dと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Aによってモータ駆動装置9Aのモータが、またトレー2の移動方向先端側の床側位置検知器10Bがトレー側検知体11Cと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Bによってモータ駆動装置9Bのモータが同時に減速される。
【0050】
これらが一旦解除されてオフ状態となった後、床側位置検知器10Aが今度はトレー側検知体11Aと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Aによってモータ駆動装置9Aのモータが個別に停止される。また、床側位置検知器10Bがトレー側検知体11Bと対向してオン状態となると、分離駆動可能モード駆動部14Bによってモータ駆動装置9Bのモータが個別に停止される。
【0051】
その後、これら四個の床側位置検知器10A~10Dの状態信号はその後に行われるずれ補正のために使用される。
【0052】
上述したようにトレー2を任意の方向に移動した後、現在の停止区画における停止状態の最終確認は、その区画における床側に設置された四個の床側位置検知器10A~10Dがそれぞれ同時にオン状態となっていることによって行われる。この確認完了信号が図3に示した循環状態監視管理部16から循環動作制御部17に与えられると、循環動作制御部17は現在位置が移動ルートの最終位置かどうかを判定し、最終位置でない場合は、循環駆動制御部13に移動ルートにおける次に区画位置へ移動信号を与え、次に区画位置で同様の処理動作を繰り返す。
【0053】
しかし、トレー2が停止した区画において、床側に設置された四個の床側位置検知器10A~10Dがそれぞれ同時にオン状態となっていなかった場合、循環状態監視管理部16は、トレー2のずれが発生しているとして現時点における床側位置検知器10A~10Dの状態信号を用いてトレー2のずれ発生パターンを判定し、ずれ発生パターン情報を循環ずれ補正制御部18に与える。循環ずれ補正制御部18は、ずれ発生パターン情報に対応した循環補正パターンを抽出し、その循環補正パターンに基づく補正処理を行うよう循環駆動処理部13に指令を与える。次に、上述したトレー2のずれ発生パターンと、それに基づく循環補正パターンについて説明する。
【0054】
図8および図9は、それぞれ異なるずれ発生パターンと補正パターンの関係を示す説明図である。
【0055】
ずれ発生パターンは、大別すると縦送り時に発生する可能性のある発生パターンA1,A2と、横送り時に発生する可能性がある発生パターンA3~A10がある。
【0056】
ずれ発生パターンA1は、床側位置検知器10A,10Dがオフ状態で、他の床側位置検知器10B,10Cはオン状態の場合である。これはトレー2の正転方向縦送り時に発生したとすると、同時駆動したモータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態になったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向縦送り時に発生したとすると、同時駆動したモータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、行き過ぎた状態になったことが原因である。従って、補正パターンRE1を選択し、トレー2をモータ駆動装置9A,9Bによって正転方向に縦送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0057】
ずれ発生パターンA2は、床側位置検知器10B,10Cがオフ状態で、他の床側位置検知器10A,10Dはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向縦送り時に発生したとすると、同時駆動したモータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、行き過ぎた状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向縦送り時に発生したとすると、同時駆動したモータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。従って、補正パターンRE2を選択し、トレー2をモータ駆動装置9A,9Bによって逆転方向に縦送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0058】
ずれ発生パターンA3は、床側位置検知器10C,10Dがオフ状態で、他の床側位置検知器10A,10Bはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となったことが原因である。従って、補正パターンRE3を選択し、トレー2をモータ駆動装置9A,9Bによってそれぞれ正転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0059】
ずれ発生パターンA4は、床側位置検知器10A,10Bがオフ状態で、他の床側位置検知器10C,10Dはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。従って、補正パターンRE4を抽出し、トレー2をモータ駆動装置9A,9Bによってそれぞれに逆転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0060】
ずれ発生パターンA5は、床側位置検知器10Dのみがオフ状態で、他の床側位置検知器10A~10Cはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Aが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Aが停止した後、トレー2が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となったことが原因である。従って、補正パターンRE5を抽出し、トレー2をモータ駆動装置9Aのみによって正転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0061】
ずれ発生パターンA6は、床側位置検知器10Aのみがオフ状態で、他の床側位置検知器10B~10Dはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Aが停止した後、トレー2が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Aが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。従って、補正パターンRE6を抽出し、トレー2をモータ駆動装置9Aのみによって逆転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0062】
ずれ発生パターンA7は、床側位置検知器10Cのみがオフ状態で、他の床側位置検知器10A,10B,10Dはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となったことが原因である。従って、補正パターンRE7を抽出し、トレー2をモータ駆動装置9Bのみによって正転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0063】
ずれ発生パターンA8は、床側位置検知器10Bのみがオフ状態で、他の床側位置検知器10A,10C,10Dはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9Bが停止した後、トレー2が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。従って、補正パターンRE8を抽出し、トレー2をモータ駆動装置9Bのみによって逆転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0064】
図9に示したずれ発生パターンA9は、床側位置検知器10B,10Dがオフ状態で、他の床側位置検知器10A,10Cはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、モータ駆動装置9A,9Bが停止した後、トレー2のモータ駆動装置9A側が見かけ上、早止まりした状態となり、かつ、トレー2のモータ駆動装置9B側が見かけ上、行き過ぎた状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、トレー2のモータ駆動装置9A側が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となり、かつ、トレー2のモータ駆動装置9B側が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。
【0065】
従って、補正パターンRE9Aを抽出して、トレー2をモータ駆動装置9Aによって正転方向に横送りし、またずれ補正パターンRE9Bを抽出して、モータ駆動装置9Bによって逆転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0066】
また、ずれ発生パターンA10は、床側位置検知器10A,10Cがオフ状態で、他の床側位置検知器10B,10Dはオン状態の場合である。これがトレー2の正転方向横送り時に発生したとすると、トレー2のモータ駆動装置9A側が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となり、かつ、トレー2のモータ駆動装置9B側が見かけ上、早止まりした状態となったことが原因である。一方、これがトレー2の逆転方向横送り時に発生したとすると、トレー2のモータ駆動装置9A側が見かけ上、早止まりした状態となり、かつ、トレー2のモータ駆動装置9B側が見かけ上、遅れて停止して行き過ぎた状態となったことが原因である。
【0067】
従って、先ず補正パターンRE10Aを抽出して、トレー2をモータ駆動装置9Aによって逆転方向に横送りし、また補正パターンRE10Bを抽出して、モータ駆動装置9Bによって正転方向に横送りし、床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態で停止させれば良い。
【0068】
上述のようにして、図3に示した循環ずれ補正制御部18における補正処理が完了し、循環状態監視管理部16が現在の床側位置検知器10A~10Dが全てオン状態になったことを確認すると、循環状態監視管理部16は循環動作制御部17に補正完了信号を与える。循環動作制御部17は現在位置が移動ルートの最終位置かどうかを判定し、最終位置でない場合は、循環駆動制御部13に移動ルートにおける次に区画位置へ移動信号を与え、次の区画位置で同様の処理動作を繰り返す。しかし、現在位置が移動ルートの最終位置であればトレー2の移動が完了となる。
【0069】
尚、上述の説明では、トレー2の縦送り時および横送り時においてそれぞれ行う各補正パターンRE1~RE10Bについて言及したが、縦送り時におけるずれ補正を省略し、横送り時についてのみ行うようにすることもできる。一般的に、トレー2上に搭載された駐車車両はフロント側の荷重とリヤ側の荷重が異なるために、トレー2の横送り時の停止後に振られてずれが発生する可能性が高くなるからである。
【0070】
図10は、図3に示した信号受信部15が取り込んだ各信号を用いて循環移動するトレーの現在位置を判定するトレー現在位置確認部21のカウント処理を示す説明図である。
【0071】
本実施例では、図7に示したようにトレー2が逆転方向に横送りされるときを例示している。またトレー2の現在位置を判定するトレー現在位置確認部21として、移動元区画20Aおよび移動先区画20Bで対角に配置された床側位置検知器10D,10Bと、床側位置検知器10D,10Bと対向したときに床側位置検知器10D,10Bをオン状態とするようにトレー2側に対向した配置したトレー側検出体11A,11B,11Dを用いた場合を例示している。
【0072】
図10に示すように移動元区画20Aに位置しているトレー2が逆転方向に横送りされる前の初期状態(a)では、トレー2の移動方向先端側に配置されたトレー側検知体11Dは、移動元区画20Aに配置された床側位置検知器10Dに対向しており、床側位置検知器10Dがオン状態22となっている。このときの走行カウンタの現在値23は、基準値「3」となっている。
【0073】
トレー2の逆転方向横送りが開始されると、第一段階(b)で、トレー側検知体11Dが移動元区画20Aに配置された床側位置検知器10Dから離れて、その床側位置検知器10Dがオフ状態24となる。このときの走行カウンタ23は、床側位置検知器10Dがオン状態からオフ状態24となったので現在値のカウント数が一つ減じられて「3」から「2」となる。
【0074】
トレー2の逆転方向横送りが進んで第二段階(c)になると、今度はトレー側検知体11Aが移動元区画20Aに配置された床側位置検知器10Dと対向して、その床側位置検知器10Dがオン状態25となる。このときの走行カウンタ23は、床側位置検知器10Dがオフ状態24からオン状態25となったのでさらにカウント数が一つ減じられて「2」から「1」となる。
【0075】
さらにトレー2の逆転方向横送りがさらに進んで第三段階(d)になると、トレー側検知体11Aが移動元区画20Aに配置された床側位置検知器10Dから離れて、その床側位置検知器10Dがオフ状態26となる。このときの走行カウンタ23は、床側位置検知器10Dがオン状態25からオフ状態26となったのでカウント数が一つ減じられて「1」から「0」となる。
【0076】
その後、トレー2の逆転方向横送りがさらに進んで第四段階(e)になると、トレー側検知体11Dが今度は移動先区画20Bに配置された床側位置検知器10Dと対向して、移動先区画20Bの床側位置検知器10Dがオン状態27となる。このときトレー2の現在位置は、移動元区画20Aから逆転横送り方向に隣接した移動先区画20Bへ移動が完了した状態となる。従って、走行カウンタ23は、移動先区画20Bの床側位置検知器10Dがオフ状態からオン状態27となった初期状態となって、基準値「3」にリセットされる。このとき、図3に示した循環状態監視管理部16は、移動元区画20Aにおける他の床側位置検知器10A~10Cのうちの一つの信号も取り込んで、床側位置検知器10Dと同時にオン状態になっているかを確認し、トレー2が定位置まで移動したことを確認すると、循環動作制御部17を通して、移動元区画20Aにおけるモータ駆動装置9A,9Bのモータを停止させる。
【0077】
トレー現在位置確認部21は上述したカウント処理によって、第四段階(e)で移動対象のトレー2が移動元区画20Aにはなく移動元区画20Bに移動していることを検出する。その後、移動先区画20Bにおいてカウント処理に使用していた床側位置検知器10Dの信号は、カウント処理から切り離されて通常の位置検出用として使用される。そこで、図3に示した循環状態監視管理部16は、通常の位置検出用となった床側位置検知器10Dと、移動先区画20Bにおける他の床側位置検知器10A~10Cにおける現在の信号を取り込み、現在のトレー2における各トレー側検知体11A~11Dと正しく対応しているか、ずれが発生しているかを判定する。
【0078】
この判定によって、トレー2が移動先区画20Bの定位置まで移動して床側位置検知器10Dなどがオン状態となり、移動元区画20Aにおけるモータ駆動装置9A,9Bのモータが停止された後、トレー2が振られていずれかの床側位置検知器10A~10Cがオフ状態になることがある。この場合、循環状態監視管理部16は移動先区画20Bにおいてずれ発生を判定し、循環ずれ補正制御部18によるずれ補正が開始される。一方、循環状態監視管理部16はずれが発生していないと判定した場合、一連の循環移動における次の処理が同様に行われる。
【0079】
図11は、上述したトレー2の横送り時における制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
【0080】
循環駆動制御部13によって循環駆動部14はステップS1で、トレー2の横送りを開始する。このとき、モータ駆動装置9Aおよびモータ駆動装置9Bの各モータは、分離駆動可能モード駆動部14Aおよび分離駆動可能モード駆動部14Bによって分離駆動可能であるが、ステップS2の高速運転モードでは同時駆動が行われる。
【0081】
循環動作制御部17で選択された移動ルートに従って、循環駆動制御部13はステップS3で、動作方向が正転方向横送りか逆転方向横送りかを選択する。今、逆転方向横送りが選択されたとすると、図7で説明したように先ず移動先区画20Bの床側位置検知器10Bとトレー側検知体11Cが対向して床側位置検知器10Bがオン状態となる。信号受信部15を通して循環状態監視管理部16はステップS15で、このオン状態を検出する。すると、循環動作制御部17はステップS16で、循環駆動制御部13を通してモータ駆動装置9A,9Bの各モータを減速運転モードに切り替えて減速運転する。
【0082】
その後、信号受信部15を通して循環状態監視管理部16はステップS17およびステップS18で、図7に示した移動先区画20Bにおける床側位置検知器10Aと例えば他の床側位置検知器10Bが今後はトレー側検知体11A,11Bと対向して床側位置検知器10A,10Bがオン状態となる。すると、上述したトレー現在位置確認部21は、循環移動するトレー2の現在位置を判定するカウント処理を行って、移動先区画20Bに移動したことを検出する。その後、ステップS19およびステップS20で、循環駆動制御部13を通してモータ駆動装置9A,9Bの各モータが停止される。
【0083】
循環動作制御部17を通して循環駆動制御部13はステップS10で、トレー2の横送り動作が停止されると、循環状態監視管理部16は四個の床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号を使用して、ずれ発生検出処理とそれに伴うずれ補正処理を実行する。
【0084】
先ず、循環状態監視管理部16はステップS11で、四個の床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号を使用してずれ発生の有無を判定する。各床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号が共にオン状態であれば、各床側位置検知器10A~10Dがトレー側検知体11A~11Dと定位置で対向していてトレー2のずれ発生がないと判定する。その後、循環動作制御部17はステップS14で、移動ルートに従った全停止位置での同様の処理が完了したかどうかを判定し、完了していれば一連の処理を終了する。一方、移動ルートに従った全停止位置での同様の処理が完了していなければ、次の停止位置に移動して一連の処理を繰り返す。
【0085】
しかし、ステップS19およびステップS20でモータ駆動装置9A,9Bの各モータが同時に停止されたものの、その後のトレー2の振れでずれが発生していると、ステップS11で、循環状態監視管理部16が各床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号が共にオン状態でないと判定して、ステップS12でずれ補正処理を行う。
【0086】
ずれ補正処理を実施した後、循環状態監視管理部16はステップS13で再度、四個の床側位置検知器10A~10Dのずれ補正処理後における現在の状態信号を使用してずれ発生の有無を判定する。通常、ずれ補正は完了しているので、上述したステップS14での移動ルート全体での一連の処理が完了しているかどうかを判定する。
【0087】
同様に、循環駆動制御部13はステップS3で、動作方向が正転方向横送りとして判定すると、それに対応したほぼ同様な処理が行われる。
【0088】
尚、図11では縦送り時について説明していないが、同様に行うこともできるし、縦送り時にはずれ発生がないとして、ずれ発生検出処理とそれに伴うずれ補正処理を省略することもできる。
【0089】
図12は、図10に示したずれ補正処理の詳細を示すフローチャートである。
【0090】
図11で示したステップS11の判定で、各床側位置検知器10A~10Dの全てがオン状態ではなかった場合、循環状態監視管理部16はステップS21で、各床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号と送り方向信号を取り込み、図8および図9で示したどのずれ発生パターンに合致するかを判定する。
【0091】
この判定の結果、ずれ発生パターンA9であった場合、該当する補正パターンRE9Aと補正パターンRE9Bを抽出する。そこで、図3に示した循環ずれ補正制御部18は循環駆動制御部13を通して、先ず補正パターンRE9Aとして図12に示すステップS22で、モータ駆動装置9Aのモータを低速回転させてトレー2を正転方向に横送りする。その後、循環ずれ補正制御部18はステップS23で、床側位置検知器10A,10Dが共にオン状態になったのを検出したとき、ステップS24でモータ駆動装置9Aのモータを停止させる。
【0092】
また、補正パターンRE9Bとして図12に示すステップS25で、モータ駆動装置9Bのモータを低速回転させてトレー2を逆転方向に横送りする。その後、循環ずれ補正制御部18はステップS26で、床側位置検知器10B,10Cが共にオン状態になったのを検出したとき、ステップS24でモータ駆動装置9Bのモータを停止させる。
【0093】
その後、循環状態監視管理部16はステップS28で、再度、各床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号を取り込み、全ての床側位置検知器10A~10Dがオン状態であればずれ補正を完了させる。一方、全ての床側位置検知器10A~10Dがオン状態となっていない場合は、再度、ステップS21に戻り発生パターンの判定と補正パターンに従った補正処理を行う。
【0094】
また、循環状態監視管理部16はステップS21で、ずれ発生パターンA5であると判定した場合、該当する補正パターンRE5を抽出する。そこで、図3に示した循環ずれ補正制御部18は循環駆動制御部13を通して、補正パターンRE5として図12に示すステップS29で、モータ駆動装置9Aのモータを低速回転させてトレー2を正転方向に横送りする。その後、循環ずれ補正制御部18はステップS30で、床側位置検知器10A,10Dが共にオン状態になったのを検出したとき、ステップS31でモータ駆動装置9Aのモータを停止させる。
【0095】
その後、循環状態監視管理部16はステップS28で、再度、各床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号を取り込み、全ての床側位置検知器10A~10Dがオン状態であればずれ補正処理を完了させる。
【0096】
また、循環状態監視管理部16はステップS21で、ずれ発生パターンA7であると判定した場合、該当する補正パターンRE7を抽出する。そこで、図3に示した循環ずれ補正制御部18は循環駆動制御部13を通して、補正パターンRE7として図12に示すステップS32で、モータ駆動装置9Bのモータを低速回転させてトレー2を正転方向に横送りする。その後、循環ずれ補正制御部18はステップS33で、床側位置検知器10B,10Cが共にオン状態になったのを検出したとき、ステップS34でモータ駆動装置9Bのモータを停止させる。
【0097】
その後、循環状態監視管理部16はステップS28で、再度、各床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号を取り込み、全ての床側位置検知器10A~10Dがオン状態であればずれ補正処理を完了させる。
【0098】
さらに、循環状態監視管理部16はステップS21で、ずれ発生パターンA10であると判定した場合、該当する補正パターンRE10A,RE10Bを抽出する。そこで、図3に示した循環ずれ補正制御部18は循環駆動制御部13を通して、補正パターンRE10Aとして図12に示すステップS35で、モータ駆動装置9Aのモータを低速回転させてトレー2を逆転方向に横送りする。その後、循環ずれ補正制御部18はステップS36で、床側位置検知器10A,10Dが共にオン状態になったのを検出したとき、ステップS37でモータ駆動装置9Aのモータを停止させる。
【0099】
次いで、補正パターンRE10Bとして図12に示すステップS38で、モータ駆動装置9Bのモータを低速回転させてトレー2を正転方向に横送りする。その後、循環ずれ補正制御部18はステップS39で、床側位置検知器10B,10Cが共にオン状態になったのを検出したとき、ステップS40でモータ駆動装置9Bのモータを停止させる。
【0100】
その後、循環状態監視管理部16はステップS28で、再度、各床側位置検知器10A~10Dの現在の状態信号を取り込み、全ての床側位置検知器10A~10Dがオン状態であればずれ補正処理を完了させる。
【0101】
さらに、図8および図9で説明した他のずれ発生パターンと補正パターンについても同様に補正処理を行うことができる。
【0102】
上述した実施例においては、ずれ発生を検出するために設けた床側位置検知器10A~10Dのうち床側位置検知器10B、10Dをカウンタ用として兼用し、トレー2の現在位置を判定するために使用したが、他の床側位置検知器10A~10Cを使用しても良いし、あるいは、トレーの現在位置を判定するために設けた専用床側位置検知器を使用しても良い。
【0103】
また本実施例では、各床側に構成した床側駆動装置4に四個の床側位置検知器10A~10Dを配置し、これに対応するトレー2側にも四個のトレー側検知体11A~11Dを配置した構成とし、その内の一部をトレー2の現在位置を判定するトレー現在位置確認部21で使用するものとして説明したが、ずれ検出やずれ補正を上述した方式以外の別の方法で行うこともできる。そのような構成においては、少なくとも対角に位置する二個の床側位置検知器、例えば床側位置検知器10B,10Dを配置し、これに対応するトレー2側にもトレー側検知体11B,11Dのみを配置して、上述したトレー現在位置確認部21を構成することもできる。
【0104】
このような対角に配置した床側位置検知器10B,10Dを用いた構成によれば、トレー側検知体11Dは、移動元区画20Aの床側位置検知器10Dと、移動先区画20Bの床側位置検知器10Dからのオン・オフ信号だけを得ることになり、図11に示したカウンタ数は対応するように変更する必要がある。しかし、カウント処理は異なるものの、最少構成数で横送り時と縦送り時に同じ床側位置検知器10B,10Dを用いたトレー現在位置確認部21とすることができる。対角に位置する二個の床側位置検知器として、床側位置検知器10A,10Cを使用しても同様である。いずれの場合も、床側位置検知器10A~10Dとしても、接触式または非接触式など様々な構成の検出器を用いることができる。
【0105】
さらに本実施例では、移動元区画から隣接する移動先区画までトレー2を移動させて停止させる場合のトレー現在位置確認部21について説明したが、これに限定するものではない。例えば、トレー2の移動元区画と、トレー2が停止する移動先区画との間に、トレー2が移動通過する区画が存在する場合において、トレー2が停止する移動先区画でのトレー現在位置確認部21に適用することもできる。
【0106】
以上説明したように本発明は、床側に形成された複数の各区画にそれぞれ床側駆動装置4を配置し、各床側駆動装置4の上部側にトレー2を循環移動可能に搭載して配置した機械式駐車装置において、各区画の各床側駆動装置4に、対角に位置する少なくとも二個の床側位置検知器10B,10Dを配置し、トレー2に床側位置検知器10B,10Dと対向したときに床側位置検知器10B,10Dをオン状態とするトレー側検知体11B,11Dを配置し、トレー側検知体11B,11Dの少なくとも一方の移動によってオン状態となる床側検知器10B,10Dにより移動先区画へのトレー2の到着を検出するトレー現在位置確認部21を設けたことを特徴とする。
【0107】
このような構成によれば、トレー2の横送り時にも縦送り時にも少なくとも二個の床側検知器10B,10Dのオン・オフ信号によって現在位置を把握することができる。
【0108】
本発明は上述の構成に加えて、床側駆動装置4は、トレー2の長手方向に分散して配置された二個のモータ駆動装置9A,9Bを備え、二個のモータ駆動装置9A,9Bを個々に駆動可能な分離駆動可能モード駆動部14A,14Bと、モータ駆動装置4のモータを同時駆動する同時駆動モード駆動部14Cを有して循環駆動部14を構成し、移動先区画の各床側駆動装置の上部に位置して停止した状態のトレー2が正常な停止位置からずれたことを検知するように少なくとも四個の床側位置検知器10A~10Dを各床側駆動装置4のほぼ四隅にそれぞれ設け、トレー2側には四個の各床側位置検知器10A~10Dに対応可能な少なくとも四個のトレー側検知体11A~11Dを設け、トレー2の移動先区画での床側位置検知器10A~10Dによってずれ発生パターンA1~A10を区別する循環状態監視管理部16と、循環状態監視管理部16のずれ発生パターンA1~A10に対応する補正パターンRE1~RE10を循環駆動部14を用いて実行する循環ずれ補正制御部18を設けたことを特徴とする。
【0109】
このような構成によれば、床側位置検知器10C,10Dを含む少なくとも四個の床側位置検知器10A~10Dを使用して、トレー2の現在位置の判定とずれ検出を行うことができるようになり、しかも、循環ずれ補正制御部18ではトレー2の長手方向に分散配置したモータ駆動装置9Aおよびモータ駆動装置9Bを効果的に活用して、独立してトレー2を縦送りまたは横送りされる構成の機械式駐車装置においても簡単な構成でトレーのずれ補正を行うことができ、移動ルートを進んで行くに従ってトレーのずれが増大するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0110】
2 トレー
4 床側駆動装置
9A,9B モータ駆動装置
10A~10D 床側位置検知器
11A~11D トレー側検知
14 循環駆動部
14A,14B 分離駆動可能モード駆動部
14C 同時駆動モード駆動部
16 循環状態監視管理部
18 循環ずれ補正制御部
21 トレー現在位置確認部
A1~A10 ずれ発生パターン
RE1~RE10B 補正パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12