(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】車両のボディ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20220720BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20220720BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D25/20 F
B62D25/20 G
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019176105
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 純也
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-38482(JP,A)
【文献】特開平3-193568(JP,A)
【文献】実公昭46-24006(JP,Y1)
【文献】実開昭61-190776(JP,U)
【文献】実開平3-10973(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/03,25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディであって、
一枚の板材によって構成されたパネルを有するフロアパネルと、
前記フロアパネルの両側縁に沿って伸びている一対のロッカと、
前記フロアパネルから上側に突出しており、一対の前記ロッカ同士を接続している室内フロアクロスメンバと、
前記フロアパネルから下側に突出しており、一対の前記ロッカ同士を接続しており、前記室内フロアクロスメンバよりも後側に配置されている室外フロアクロスメンバと、
前記フロアパネルの下部に配置されているユニット部品、
を有し、
前記ユニット部品が、前記室内フロアクロスメンバよりも前側の位置から前記室内フロアクロスメンバよりも後側であって前記室外フロアクロスメンバよりも前側の位置まで延在しており、
一対の前記ロッカ、前記室内フロアクロスメンバ、及び、前記室外フロアクロスメンバに囲まれた範囲内の前記フロアパネルが、前記パネルによって構成されている、
ボディ。
【請求項2】
リアサイドメンバとリインフォースメントをさらに有し、
前記パネルが、前記室外フロアクロスメンバよりも後側まで伸びており、
前記リアサイドメンバが、前記パネルから下側に突出しており、前記室外フロアクロスメンバに接合されており、前記室外フロアクロスメンバから後側に向かって前記パネルの側縁に沿って伸びており、
前記リインフォースメントが、前記室内フロアクロスメンバに接合されており、前記室内フロアクロスメンバから前記リアサイドメンバの上部まで伸びており、前記リアサイドメンバの上部の位置で前記フロアパネルに接合されている、
請求項1のボディ。
【請求項3】
前記リインフォースメントが、前記パネルに上から接しており、
前記パネルを上側から平面視したときに、前記リインフォースメントが前記パネルに接している範囲において、前記パネルが、前記リインフォースメントの外周縁よりも外側まで伸びている、
請求項2のボディ。
【請求項4】
前記室外フロアクロスメンバよりも後側に配置されたホイールハウスパネルをさらに有し、
前記パネルが、前記ホイールハウスパネルに接合されている、
請求項2または3のボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、車両のボディに関する。なお、本明細書において、車両には、ガソリン自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等が含まれる。
【0002】
特許文献1には、車両のボディが開示されている。このボディは、キャビンの床を構成するフロアパネル(フロントフロアパネル及びリアフロアパネル)と、フロアパネルから下側に突出するリアクロスメンバを有している。フロアパネルの下部には、バッテリケースが配置されている。バッテリケースは、走行用モータに電力を供給するバッテリを収容している。バッテリケースは、リアクロスメンバよりも前側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のボディでは、フロントフロアパネルとリアフロアパネルの境界部(接合部)が、リアクロスメンバの前側に位置している。バッテリケースは、前記境界部よりも前側に配置されている。また、このボディは、バッテリケースの底面とリアフロアパネルの底面とを接続する床下板材を備えている。この床下板材によって、前記境界部から車内への水の浸入が抑制されると考えられる。しかしながら、止水構造として、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両のボディは、フロアパネルと、一対のロッカと、室内フロアクロスメンバと、室外フロアクロスメンバと、ユニット部品を有している。前記フロアパネルは、一枚の板材によって構成されたパネルを有する。一対の前記ロッカは、前記フロアパネルの両側縁に沿って伸びている。前記室内フロアクロスメンバは、前記フロアパネルから上側に突出しており、一対の前記ロッカ同士を接続している。前記室外フロアクロスメンバは、前記フロアパネルから下側に突出しており、一対の前記ロッカ同士を接続しており、前記室内フロアクロスメンバよりも後側に配置されている。前記ユニット部品は、前記フロアパネルの下部に配置されている。前記ユニット部品が、前記室内フロアクロスメンバよりも前側の位置から前記室内フロアクロスメンバよりも後側であって前記室外フロアクロスメンバよりも前側の位置まで延在している。一対の前記ロッカ、前記室内フロアクロスメンバ、及び、前記室外フロアクロスメンバに囲まれた範囲内の前記フロアパネルが、前記パネルによって構成されている。
【0006】
なお、一枚の板材によって構成されたパネルは、パネルが、二枚以上の板材が接合されることで構成された部材ではないことを意味する。また、ユニット部品は、車両に搭載される種々の部品を意味する。例えば、ユニット部品は、バッテリ、燃料タンク、水素タンク等のように、走行用のエネルギー源を蓄える部品であってもよい。
【0007】
この車両のボディでは、ユニット部品が、室内フロアクロスメンバよりも前側の位置から室内フロアクロスメンバよりも後側であって室外フロアクロスメンバよりも前側の位置まで延在している。すなわち、ユニット部品の後端が、室内フロアクロスメンバよりも後側であって室外フロアクロスメンバよりも前側に位置している。つまり、室内フロアクロスメンバよりも後側であって室外フロアクロスメンバよりも前側の範囲は、少なくとも部分的にユニット部品に覆われていない。しかしながら、このボディでは、一対のロッカ、室内フロアクロスメンバ、及び、室外フロアクロスメンバに囲まれた範囲内のフロアパネルが、パネル(すなわち、一枚の板材)によって構成されている。つまり、この範囲内に、板材の境界部が存在しない。したがって、この範囲内で、車内への水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0008】
なお、本明細書が開示する車両のボディは、特許文献1の構造(すなわち、床下板材)を否定するものではない。本明細書が開示するボディの構造において、床下板材を付加して止水効果をさらに向上させてもよい。また、本明細書が開示するボディの構造において、床下板材を設けずに、ボディの軽量化を図ってもよい。
【0009】
また、本明細書が開示するボディの構造において、一枚の板材により構成されたパネルに貫通孔が設けられていてもよい。種々の目的でパネルに貫通孔を設けることは可能であり、その場合には、各貫通孔に対して個別に止水構造を設けることができる。パネルに貫通孔が設けられている場合でも、パネルに境界部(板材同士の境界部)が存在しないことによる止水効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】リインフォースメント60、62を省略した
図2に対応する平面図。
【
図4】
図2のIV-IV線におけるアンダーボディの断面図。
【
図5】左リインフォースメント60周辺を斜め上から視た斜視図。
【
図6】
図2のVI-VI線におけるアンダーボディの断面図。
【
図8】
図2のVIII-VIII線におけるアンダーボディの断面図。
【
図9】
図2のIX-IX線におけるアンダーボディの断面図(バッテリケース70の図示を省略した図。)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の車両は、走行用モータを搭載している。車両は、走行用モータによって車輪を駆動して走行する。
図1は、実施形態の車両のボディ10を示している。ボディ10は、フロアパネル20を有している。以下に説明する実施形態は、フロアパネル20の後部と、その周辺構造に関する。なお、
図1を含む各図において、矢印FRは車両前方向を示し、矢印RHは車両右方向を示し、矢印UPは車両上方向を示す。
【0012】
図2、3は、ボディ10のアンダーボディを上から見た平面図を示している。なお、
図2は、フロアパネル20上に配置されたリインフォースメント60、62を含む平面図であり、
図3は、リインフォースメント60、62を取り外した状態の平面図である。
【0013】
図2、3に示すように、フロアパネル20は、フロントフロアパネル20a、リアフロアパネル20b、及び、ラゲッジフロアパネル20cを有している。車両の前側から後側に向かって、フロントフロアパネル20a、リアフロアパネル20b、及び、ラゲッジフロアパネル20cがこの順序で並んでいる。フロントフロアパネル20a、リアフロアパネル20b、及び、ラゲッジフロアパネル20cのそれぞれは、一枚の鋼板(板材)によって構成されている。リアフロアパネル20bは、その前縁21においてフロントフロアパネル20aに溶接されている。リアフロアパネル20bは、その後縁22においてラゲッジフロアパネル20cに溶接されている。すなわち、フロアパネル20のうち、前縁21と後縁22の間の部分が、リアフロアパネル20bにより構成されている。フロントフロアパネル20aとリアフロアパネル20bは、キャビンの床を構成している。ラゲッジフロアパネル20cは、ラゲッジスペースの床を構成している。
【0014】
図2、3に示すように、フロアパネル20の両側縁に、一対のロッカ(左ロッカ30と右ロッカ32)が設けられている。
図4は、左ロッカ30と右ロッカ32を含む位置(
図2のIV-IV線の位置)におけるアンダーボディの横断面を示している。
図4に示すように、左ロッカ30は、ロッカインナ30aとロッカアウタ30bを有している。ロッカインナ30aとロッカアウタ30bは、U字状の断面を有する長尺部材であり、前後方向に長く伸びている。ロッカインナ30aとロッカアウタ30bは、内部に空間を有するように組み合わされて互いに溶接されている。したがって、左ロッカ30は、中空の角筒形状を有しており、前後方向に長く伸びている。
図2、3に示すように、左ロッカ30は、フロアパネル20の左縁に沿って配設されている。左ロッカ30は、フロントフロアパネル20aとリアフロアパネル20bに溶接等によって接合されている。
図4に示すように、右ロッカ32は、左ロッカ30と同様に、互いに接合されたロッカインナ32aとロッカアウタ32bを有している。右ロッカ32は、中空の角筒形状を有しており、前後方向に長く伸びている。
図2、3に示すように、右ロッカ32は、フロアパネル20の右縁に沿って配設されている。右ロッカ32は、フロントフロアパネル20aとリアフロアパネル20bに溶接等によって接合されている。
【0015】
図2、3に示すように、フロアパネル20の両側縁に、一対のホイールハウスパネル(左ホイールハウスパネル34と右ホイールハウスパネル36)が設けられている。左ホイールハウスパネル34は、左ロッカ30の後側で、フロアパネル20の左縁に固定されている。左ホイールハウスパネル34は、凹状に湾曲した板材であり、凹部が外下側を向く向きでフロアパネル20に固定されている。左ホイールハウスパネル34の凹部内に、左リアタイヤ等が収容される。左ホイールハウスパネル34は、リアフロアパネル20b等に溶接等により接合されている。右ホイールハウスパネル36は、右ロッカ32の後側で、フロアパネル20の右縁に固定されている。右ホイールハウスパネル36は、凹状に湾曲した板材であり、凹部が外下側を向く向きでフロアパネル20に固定されている。右ホイールハウスパネル36の凹部内に、右リアタイヤ等が収容される。右ホイールハウスパネル36は、リアフロアパネル20b等に溶接等により接合されている。
【0016】
図2、3に示すように、リアフロアパネル20bの上面に、室内フロアクロスメンバ40とリアフロアクロスメンバ44が設けられている。
【0017】
図5は、室内フロアクロスメンバ40とリアフロアクロスメンバ44を含む範囲を左前方から見た斜視図である。また、
図6は、
図2のVI-VI線におけるアンダーボディの断面図である。
図5、6に示すように、室内フロアクロスメンバ40は、U字状の断面を有する梁形の部材である。室内フロアクロスメンバ40は、リアフロアパネル20bから上側に突出するように設けられている。室内フロアクロスメンバ40は、左右方向に長く伸びている。
図2、3に示すように、室内フロアクロスメンバ40は、左ロッカ30から右ロッカ32まで伸びている。室内フロアクロスメンバ40は、リアフロアパネル20b、左ロッカ30、及び、右ロッカ32に溶接等により接合されている。
【0018】
図5、6に示すように、リアフロアクロスメンバ44は、U字状の断面を有する梁形の部材である。リアフロアクロスメンバ44は、リアフロアパネル20bから上側に突出するように設けられている。リアフロアクロスメンバ44は、左右方向に長く伸びている。リアフロアクロスメンバ44は、室内フロアクロスメンバ40よりも後側に配置されている。
図2、3に示すように、リアフロアクロスメンバ44は、左ホイールハウスパネル34から右ホイールハウスパネル36まで伸びている。リアフロアクロスメンバ44は、リアフロアパネル20b、左ホイールハウスパネル34、及び、右ホイールハウスパネル36に溶接等により接合されている。
【0019】
図6、7に示すように、リアフロアパネル20bの下面に、室外フロアクロスメンバ42が設けられている。室外フロアクロスメンバ42は、U字状の断面を有する梁型の部材である。室外フロアクロスメンバ42は、リアフロアパネル20bから下側に突出するように設けられている。室外フロアクロスメンバ42は、左右方向に長く伸びている。室外フロアクロスメンバ42は、室内フロアクロスメンバ40よりも後側に配置されている。室外フロアクロスメンバ42は、リアフロアクロスメンバ44よりも前側に配置されている。室外フロアクロスメンバ42は、左ロッカ30から右ロッカ32まで伸びている。室外フロアクロスメンバ42は、リアフロアパネル20b、左ロッカ30、及び、右ロッカ32に溶接、ボルト締結等により接合されている。
【0020】
図3に示すように、アンダーボディを上側から平面視したときに、室内フロアクロスメンバ40、室外フロアクロスメンバ42、左ロッカ30、及び、右ロッカ32によって囲まれた範囲90内のフロアパネル20は、リアフロアパネル20b(すなわち、一枚の板材)によって構成されている。言い換えると、範囲90内に、パネル同士の接合部(例えば、フロントフロアパネル20aとリアフロアパネル20bの接合部(前縁21)や、リアフロアパネル20bとラゲッジフロアパネル20cの接合部(後縁22))が存在しない。また、範囲90内のリアフロアパネル20bには、複数の貫通孔92が設けられている。図示していないが、各貫通孔92には、各種のホース、配線、キャップ等の部材が設けられる。図示していないが、各貫通孔92には、止水処理が施される。
【0021】
リアフロアパネル20bは、室内フロアクロスメンバ40よりも前側まで伸びるとともに、室外フロアクロスメンバ42及びリアフロアクロスメンバ44よりも後側まで伸びている。
図6に示すように、リアフロアパネル20bは、室内フロアクロスメンバ40よりも前側では、水平に伸びている。リアフロアパネル20bは、室内フロアクロスメンバ40の後側かつリアフロアクロスメンバ44の前側の範囲(特に、室外フロアクロスメンバ42の後側の範囲)では、後側に向かうにしたがって上側に変位するように傾斜している。リアフロアパネル20bは、リアフロアクロスメンバ44の後側では、水平に伸びている。以下では、リアフロアパネル20bのうち、後側に向かうにしたがって上側に変位するように傾斜している部分を傾斜部20xといい、傾斜部20xよりも後ろ側で水平に伸びている部分を水平部20yという。
【0022】
図7に示すように、フロアパネル20の下部には、バッテリケース70が配置されている。バッテリケース70は、密閉型の容器であり、メインバッテリを収容している。メインバッテリは、走行用モータに電力を供給するバッテリである。バッテリケース70の左右両側に、一対のEAメンバ(左EAメンバ80と右EAメンバ82)が配置されている。
図4に示すように、バッテリケース70は、左EAメンバ80と右EAメンバ82を介して左ロッカ30と右ロッカ32に固定されている。
【0023】
図7に示すように、バッテリケース70の前縁70aは、キャビンの前端近傍に位置している。
図6、7に示すように、バッテリケース70の後縁70bは、室内フロアクロスメンバ40よりも後側、かつ、室外フロアクロスメンバ42よりも前側に位置している。すなわち、アンダーボディを下側から平面視したときに、バッテリケース70の後縁70bは範囲90内に位置している。言い換えると、バッテリケース70は、室内フロアクロスメンバ40よりも前側の位置から室内フロアクロスメンバ40よりも後側であって室外フロアクロスメンバ42よりも前側の位置まで延在している。
【0024】
図8は、
図2、6のVIII-VIII線におけるアンダーボディの断面を示している。
図8に示すように、リアフロアパネル20bの下面に、一対のリアサイドメンバ(左リアサイドメンバ50と右リアサイドメンバ52)が設けられている。
図8に示すように、左リアサイドメンバ50は、U字状の断面を有する長尺部材である。左リアサイドメンバ50は、リアフロアパネル20bから下側に突出するように設けられている。左リアサイドメンバ50は、前後方向に長く伸びている。
図6、7に示すように、左リアサイドメンバ50は、その前端近傍において室外フロアクロスメンバ42の下面の一部を覆っている。
図7に示すように、左リアサイドメンバ50は、溶接及びボルト112によって、室外フロアクロスメンバ42に接合されている。左リアサイドメンバ50は、その前端近傍において左ロッカ30の下面の一部を覆っている。左リアサイドメンバ50は、溶接及びボルト114によって、左ロッカ30に接合されている。
図3、6、7に示すように、左リアサイドメンバ50は、室外フロアクロスメンバ42から後側に向かってリアフロアパネル20bの左縁に沿って伸びている。
図6に示すように、左リアサイドメンバ50は、リアフロアパネル20bの傾斜部20xの下部では、傾斜部20xに沿って後側ほど上側に変位するように傾斜している。図示していないが、左リアサイドメンバ50は、車両最後部まで伸びており、車両最後部でリアバンパリインフォースメントに接続されている。
図8に示すように、右リアサイドメンバ52は、U字状の断面を有する長尺部材である。右リアサイドメンバ52は、リアフロアパネル20bから下側に突出するように設けられている。右リアサイドメンバ52は、前後方向に長く伸びている。
図7に示すように、右リアサイドメンバ52は、その前端近傍において、室外フロアクロスメンバ42の下面の一部を覆っている。右リアサイドメンバ52は、溶接及びボルト122によって、室外フロアクロスメンバ42に接合されている。右リアサイドメンバ52は、その前端近傍において右ロッカ32の下面の一部を覆っている。右リアサイドメンバ52は、溶接及びボルト124によって、右ロッカ32に接合されている。
図3、7に示すように、右リアサイドメンバ52は、室外フロアクロスメンバ42から後側に向かってリアフロアパネル20bの右縁に沿って伸びている。右リアサイドメンバ52は、リアフロアパネル20bの傾斜部20xの下部では、傾斜部20xに沿って後側ほど上側に変位するように傾斜している。図示していないが、右リアサイドメンバ52は、車両最後部まで伸びており、車両最後部でリアバンパリインフォースメントに接続されている。
【0025】
図2に示すように、リアフロアパネル20bの上部に、リインフォースメント(左リインフォースメント60と右リインフォースメント62)が配置されている。左リインフォースメント60は、室内フロアクロスメンバ40、リアフロアパネル20b、左ロッカ30、及び、左ホイールハウスパネル34に接合されている。右リインフォースメント62は、室内フロアクロスメンバ40、リアフロアパネル20b、右ロッカ32、及び、右ホイールハウスパネル36に接合されている。右リインフォースメント62は、左リインフォースメント60に対して左右対称の構造を有している。したがって、以下では、左リインフォースメント60の構造について詳細に説明し、右リインフォースメント62の構造についての詳細説明を省略する。
【0026】
図9は、左リインフォースメント60を有する部分(
図2のIX-IX線の位置)におけるアンダーボディの断面図を示している。
図9に示すように、左リインフォースメント60は、蓋状の部材である。左リインフォースメント60は、リアフロアパネル20bから上側に突出するように設けられている。
図5に示すように、左リインフォースメント60の前端は、室内フロアクロスメンバ40の上面の一部を覆っている。左リインフォースメント60の前端は、室内フロアクロスメンバ40に溶接等により接合されている。左リインフォースメント60は、室内フロアクロスメンバ40から後側に向かってリアフロアパネル20bの左縁に沿って伸びている。左リインフォースメント60は、リアフロアパネル20bと共に、左ロッカ30及び左ホイールハウスパネル34に溶接等により接合されている。
図6に示すように、左リインフォースメント60の天板は、リアフロアパネル20bの傾斜部20xに沿って、後側ほど上側に変位するように傾斜している。左リインフォースメント60の天板の傾斜角度は、傾斜部20xの傾斜角度よりも小さい。したがって、左リインフォースメント60の後端近傍においては、左リインフォースメント60の天板がリアフロアパネル20bに面接触している。
図2、3に示すように、リアフロアパネル20bを上側から平面視したときに、左リインフォースメント60は、左リアサイドメンバ50と重なる位置に配置されている。すなわち、左リインフォースメント60は、左リアサイドメンバ50の上部に配置されている。左リインフォースメント60は、左リアサイドメンバ50の上部の位置で、溶接等によってリアフロアパネル20bに接合されている。左リインフォースメント60の後端は、リアフロアクロスメンバ44よりも後側まで伸びている。左リインフォースメント60の後端は、リアフロアパネル20bの水平部20yの上部まで伸びている。リアフロアクロスメンバ44と左リインフォースメント60が重なる位置では、リアフロアクロスメンバ44が左リインフォースメント60を上から覆っている。
【0027】
図5において、参照番号20wはリアフロアパネル20bの外周縁を示しており、参照番号60wは左リインフォースメント60の外周縁を示している。
図5に示すように、リアフロアパネル20bと左リインフォースメント60が重なっている範囲においては、リアフロアパネル20bが、左リインフォースメント60の外周縁60wよりも外側まで伸びている。このため、
図9に示すように、リアフロアパネル20bと左リインフォースメント60の境界部66が、上側(キャビンの内側)を向いている。
【0028】
次に、上述したボディ10が有する機能について説明する。
【0029】
上述したように、実施形態のボディ10では、室内フロアクロスメンバ40よりも後側に室外フロアクロスメンバ42が配置されている。さらに、バッテリケース70が、室内フロアクロスメンバ40よりも前側の位置から室内フロアクロスメンバ40よりも後側であって室外フロアクロスメンバ42よりも前側の位置(すなわち、範囲94内)まで延在している。このように、室外フロアクロスメンバ42を室内フロアクロスメンバ40よりも後側にずらして配置し、これによって生じた範囲94内までバッテリケース70を延在させることで、バッテリケース70を大型化することができる。これによって、バッテリケース70に内蔵されるメインバッテリの容量をより大きくすることができる。
【0030】
また、実施形態のボディ10では、左リアサイドメンバ50の上部に左リインフォースメント60が設けられている。左リアサイドメンバ50の前端が室外フロアクロスメンバ42に接合されている。左リインフォースメント60が、室内フロアクロスメンバ40に接合されているとともに、左リアサイドメンバ50の上部でリアフロアパネル20bに接合されている。この構成によれば、左リインフォースメント60によって左リアサイドメンバ50が補強される。したがって、車両が後側から衝突されたときに、左リアサイドメンバ50の変形が抑制される。また、左リアサイドメンバ50の後端部は、リアフロアパネル20bの室外フロアクロスメンバ42よりも前側の部分よりも上側に存在する。このため、車両が後側から衝突されたときに、室外フロアクロスメンバ42の前側の部分でリアフロアパネル20bにモーメント荷重が加わる。左リインフォースメント60が室内フロアクロスメンバ40に接合されているとともに室外フロアクロスメンバ42よりも後側でリアフロアパネル20bに接合されていることで、室外フロアクロスメンバ42の前側の部分でリアフロアパネル20bに加わるモーメント荷重を軽減することができる。特に、左リインフォースメント60がリアフロアパネル20bよりも上側に位置する室内フロアクロスメンバ40の上面に接合されていることで、衝突点(左リアサイドメンバ50の後端部)と支持点(左リインフォースメント60の前端部)の高さの差が小さくなり、モーメント荷重をより効果的に軽減することができる。同様にして、右リアサイドメンバ52と右リインフォースメント62によっても、モーメント荷重を軽減することができる。
【0031】
また、
図6、7に示すように、実施形態のボディ10では、範囲90(すなわち、室内フロアクロスメンバ40、室外フロアクロスメンバ42、左ロッカ30、及び、右ロッカ32によって囲まれた範囲)の一部で、フロアパネル20がバッテリケース70に覆われていない。したがって、範囲90内のフロアパネル20の下面は、雨水に曝され易い。しかしながら、上述したように、範囲90内では、フロアパネル20が一枚の板材であるリアフロアパネル20bにより構成されている。言い換えると、範囲90内のフロアパネル20に、パネル同士の接合部が存在しない。したがって、範囲90内では、接合部を介した水の浸入が生じない。したがって、高い止水効果を得ることができる。
【0032】
また、実施形態のボディ10では、上述したように、リアフロアパネル20bが左右のホイールハウスパネル34、36まで延設されている。このように、一枚の板材によって構成されたリアフロアパネル20bを広い範囲に設けることで、より高い止水効果を得ることができる。
【0033】
また、
図5を用いて上述したように、リアフロアパネル20bと左リインフォースメント60が重なっている範囲においては、リアフロアパネル20bが、左リインフォースメント60の外周縁60wよりも外側まで伸びている。すなわち、
図9に示すように、リアフロアパネル20bと左リインフォースメント60の境界部66が、上側(キャビンの内側)を向いている。このように境界部66が内側を向くことで、リアフロアパネル20bの下側からの水の浸入が抑制される。右リインフォースメント62でも、同様の構造によって、止水効果が得られる。
【0034】
なお、上述した実施形態のボディ10では、フロアパネル20の下部にバッテリケース70が配置されていた。しかしながら、フロアパネル20の下部に、他のユニット部品が配置されていてもよい。例えば、ユニット部品として、燃料タンクや水素タンクがフロアパネル20の下部に配置されていてもよい。燃料タンクは、化石燃料をエネルギー源とする車両(例えば、ガソリン自動車、ディーゼル自動車、ハイブリッド自動車等)で使用される。水素タンクは、水素をエネルギー源とする燃料電池自動車で使用される。
【0035】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0036】
本明細書が開示する一例のボディは、リアサイドメンバとリインフォースメントをさらに有していてもよい。パネル(一枚の板材により構成されたパネル)が、室外フロアクロスメンバよりも後側まで伸びていてもよい。リアサイドメンバが、前記パネルから下側に突出しており、室外フロアクロスメンバに接合されており、室外フロアクロスメンバから後側に向かって前記パネルの側縁に沿って伸びていてもよい。リインフォースメントが、室内フロアクロスメンバに接合されており、室内フロアクロスメンバからリアサイドメンバの上部まで伸びており、リアサイドメンバの上部の位置でフロアパネルに接合されていてもよい。
【0037】
この構成によれば、室外フロアクロスメンバより後側の範囲でも、止水効果を得ることができる。
【0038】
本明細書が開示する一例のボディは、リインフォースメントが、前記パネルに上から接していてもよい。前記パネルを上側から平面視したときに、リインフォースメントが前記パネルに接している範囲において、前記パネルがリインフォースメントの外周縁よりも外側まで伸びていてもよい。
【0039】
この構成によれば、リインフォースメントと前記パネルの境界部が室内側に露出するので、この境界部を介して車内へ水が浸入することを抑制することができる。
【0040】
本明細書が開示する一例のボディは、室外フロアクロスメンバよりも後側に配置されたホイールハウスパネルをさらに有していてもよい。前記パネルが、ホイールハウスパネルに接合されていてもよい。
【0041】
この構成によれば、より広い範囲で止水効果を得ることができる。
【0042】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
10 :ボディ
20 :フロアパネル
20a :フロントフロアパネル
20b :リアフロアパネル
20c :ラゲッジフロアパネル
20x :傾斜部
20y :水平部
30 :左ロッカ
32 :右ロッカ
34 :左ホイールハウスパネル
36 :右ホイールハウスパネル
40 :室内フロアクロスメンバ
42 :室外フロアクロスメンバ
44 :リアフロアクロスメンバ
50 :左リアサイドメンバ
52 :右リアサイドメンバ
60 :左リインフォースメント
62 :右リインフォースメント
70 :バッテリケース
80 :左EAメンバ
82 :右EAメンバ