(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電動車両のボディ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20220720BHJP
B62D 21/03 20060101ALI20220720BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20220720BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D21/03
B62D25/20 F
B62D25/20 G
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019176106
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 純也
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-38403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215245(US,A1)
【文献】特開2018-187974(JP,A)
【文献】特開平3-193568(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018219023(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/03,25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両のボディであって、
フロアパネルと、
前記フロアパネルの両側縁に沿って伸びている一対のロッカと、
前記フロアパネルから上側に突出しており、一対の前記ロッカ同士を接続している室内フロアクロスメンバと、
前記フロアパネルから下側に突出しており、一対の前記ロッカ同士を接続しており、前記室内フロアクロスメンバよりも後側に配置されている室外フロアクロスメンバと、
前記フロアパネルの下部に配置されており、走行用モータに電力を供給するバッテリを収容しているバッテリケース、
を有し、
前記バッテリケースが、前記室内フロアクロスメンバよりも前側の位置から前記室内フロアクロスメンバよりも後側であって前記室外フロアクロスメンバよりも前側の位置まで延在している、
ボディ。
【請求項2】
前記フロアパネルから下側に突出しており、前記室外フロアクロスメンバに接合されており、前記室外フロアクロスメンバから後側に向かって前記フロアパネルの側縁に沿って伸びているリアサイドメンバと、
前記室内フロアクロスメンバに接合されており、前記室内フロアクロスメンバから前記リアサイドメンバの上部まで伸びており、前記リアサイドメンバの上部の位置で前記フロアパネルに接合されているリインフォースメント、
を有する請求項1のボディ。
【請求項3】
前記リインフォースメントが、前後方向に伸びているとともに左右方向に間隔を空けて配置された複数の高剛性部と、複数の前記高剛性部の間に配置された低剛性部を有する、請求項2のボディ。
【請求項4】
前記フロアパネルが、前記室外フロアクロスメンバよりも後側の領域において、後側ほど上側に変位するように伸びている第1傾斜部を有しており、
前記リアサイドメンバが、前記第1傾斜部に沿って後側ほど上側に変位するように伸びている第2傾斜部を有する、
請求項2または3のボディ。
【請求項5】
前記フロアパネルが、前記第1傾斜部よりも後側に配置されており、水平に伸びている水平部をさらに有しており、
前記リインフォースメントが、前記水平部の上部まで伸びている、
請求項4のボディ。
【請求項6】
前記室外フロアクロスメンバよりも後側に配置されており、前記フロアパネルの前記側縁に接合されているリアホイールハウスパネルと、
前記フロアパネルから上側に突出しており、左右方向に伸びており、前記リアホイールハウスパネルに接続されているリアフロアクロスメンバ、
をさらに有し、
前記リインフォースメントが、前記リアフロアクロスメンバよりも後側まで伸びている、
請求項2~5のいずれか一項のボディ。
【請求項7】
前記リインフォースメントが、前記リアホイールハウスパネルに接続されている、請求項6のボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電動車両のボディに関する。なお、本明細書において、電動車両とは、バッテリに蓄えられた電力によって走行する車両を意味する。電動車両には、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等が含まれる。
【0002】
特許文献1には、電動車両のボディが開示されている。このボディは、キャビンの床を構成するフロアパネル(フロントフロアパネル及びリアフロアパネル)を有している。フロアパネルの上面には、フロアパネルから上側に突出するとともに左右方向に伸びるクロスメンバ(以下、室内クロスメンバという)が配置されている。フロアパネルの下面には、フロアパネルから下側に突出するとともに左右方向に伸びるリアクロスメンバが配置されている。リアクロスメンバは、室内クロスメンバよりも後側に配置されている。フロアパネルの下部には、バッテリケースが配置されている。バッテリケースは、走行用モータに電力を供給するバッテリを収容している。バッテリケースは、室内クロスメンバよりも前側の位置から室内クロスメンバよりも後側であってリアクロスメンバよりも前側の位置まで延在している。このように、リアフロアクロスメンバを室内フロアクロスメンバよりも後側に配置し、これらの間のスペースにバッテリケースを延在させることで、バッテリケースを大型化することができる。これによって、バッテリを大容量化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のボディでは、リアクロスメンバの左右の両端が、リアサイドフレーム(リアサイドメンバと呼ばれる場合もある)に接続されている。この構造では、車両に対して側方から衝突があった場合におけるバッテリの保護に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電動車両のボディは、フロアパネルと、前記フロアパネルの両側縁に沿って伸びている一対のロッカと、前記フロアパネルから上側に突出しているとともに一対の前記ロッカ同士を接続している室内フロアクロスメンバと、前記フロアパネルから下側に突出しているとともに一対の前記ロッカ同士を接続しており、前記室内フロアクロスメンバよりも後側に配置されている室外フロアクロスメンバと、前記フロアパネルの下部に配置されているとともに走行用モータに電力を供給するバッテリを収容しているバッテリケース、を有する。前記バッテリケースが、前記室内フロアクロスメンバよりも前側の位置から前記室内フロアクロスメンバよりも後側であって前記室外フロアクロスメンバよりも前側の位置まで延在している。
【0006】
このボディでは、フロアパネルの下部に配置されたバッテリケースが、室内フロアクロスメンバよりも前側の位置から室内フロアクロスメンバよりも後側であって室外フロアクロスメンバよりも前側の位置まで延在している。このため、大容量のバッテリをバッテリケース内に設けることができる。また、このボディでは、室内フロアクロスメンバと室外フロアクロスメンバが、一対のロッカ同士を接続している。このため、一対のロッカと、室外フロアクロスメンバと、室内フロアクロスメンバによって構成された枠体が高い剛性を有する。したがって、車両に対して側方から衝突があったときに、上述した枠体が変形し難く、バッテリケースの変形が抑制される。このように、このボディによれば、車両に対して側方から衝突があった場合に、適切にバッテリを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】リインフォースメント60、62を省略した
図2に対応する平面図。
【
図4】
図2のIV-IV線におけるアンダーボディの断面図。
【
図5】左リインフォースメント60周辺を斜め上から視た斜視図。
【
図6】
図2のVI-VI線におけるアンダーボディの断面図。
【
図8】
図2のVIII-VIII線におけるアンダーボディの断面図。
【
図9】
図2のIX-IX線におけるアンダーボディの断面図(バッテリケース70の図示を省略した図。)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態の電動車両は、走行用モータを搭載している。電動車両は、走行用モータによって車輪を駆動して走行する。
図1は、実施形態の電動車両のボディ10を示している。ボディ10は、フロアパネル20を有している。以下に説明する実施形態は、フロアパネル20の後部と、その周辺構造に関する。なお、
図1を含む各図において、矢印FRは車両前方向を示し、矢印RHは車両右方向を示し、矢印UPは車両上方向を示す。
【0009】
図2、3は、ボディ10のアンダーボディを上から見た平面図を示している。なお、
図2は、フロアパネル20上に配置されたリインフォースメント60、62を含む平面図であり、
図3は、リインフォースメント60、62を取り外した状態の平面図である。
【0010】
図2、3に示すように、フロアパネル20は、フロントフロアパネル20a、リアフロアパネル20b、及び、ラゲッジフロアパネル20cを有している。車両の前側から後側に向かって、フロントフロアパネル20a、リアフロアパネル20b、及び、ラゲッジフロアパネル20cがこの順序で並んでいる。フロントフロアパネル20a、リアフロアパネル20b、及び、ラゲッジフロアパネル20cのそれぞれは、一枚の鋼板(板材)によって構成されている。リアフロアパネル20bは、その前縁21においてフロントフロアパネル20aに溶接されている。リアフロアパネル20bは、その後縁22においてラゲッジフロアパネル20cに溶接されている。すなわち、フロアパネル20のうち、前縁21と後縁22の間の部分が、リアフロアパネル20bにより構成されている。フロントフロアパネル20aとリアフロアパネル20bは、キャビンの床を構成している。ラゲッジフロアパネル20cは、ラゲッジの床を構成している。
【0011】
図2、3に示すように、フロアパネル20の両側縁に、一対のロッカ(左ロッカ30と右ロッカ32)が設けられている。
図4は、左ロッカ30と右ロッカ32を含む位置(
図2のIV-IV線の位置)におけるアンダーボディの横断面を示している。
図4に示すように、左ロッカ30は、ロッカインナ30aとロッカアウタ30bを有している。ロッカインナ30aとロッカアウタ30bは、U字状の断面を有する長尺部材であり、前後方向に長く伸びている。ロッカインナ30aとロッカアウタ30bは、内部に空間を有するように組み合わされて互いに溶接されている。したがって、左ロッカ30は、中空の角筒形状を有しており、前後方向に長く伸びている。
図2、3に示すように、左ロッカ30は、フロアパネル20の左縁に沿って配設されている。左ロッカ30は、フロントフロアパネル20aとリアフロアパネル20bに溶接等によって接合されている。
図4に示すように、右ロッカ32は、左ロッカ30と同様に、互いに接合されたロッカインナ32aとロッカアウタ32bを有している。右ロッカ32は、中空の角筒形状を有しており、前後方向に長く伸びている。
図2、3に示すように、右ロッカ32は、フロアパネル20の右縁に沿って配設されている。右ロッカ32は、フロントフロアパネル20aとリアフロアパネル20bに溶接等によって接合されている。
【0012】
図2、3に示すように、フロアパネル20の両側縁に、一対のホイールハウスパネル(左ホイールハウスパネル34と右ホイールハウスパネル36)が設けられている。左ホイールハウスパネル34は、左ロッカ30の後側で、フロアパネル20の左縁に固定されている。左ホイールハウスパネル34は、凹状に湾曲した板材であり、凹部が外下側を向く向きでフロアパネル20に固定されている。左ホイールハウスパネル34の凹部内に、左リアタイヤ等が収容される。左ホイールハウスパネル34は、リアフロアパネル20b等に溶接等により接合されている。右ホイールハウスパネル36は、右ロッカ32の後側で、フロアパネル20の右縁に固定されている。右ホイールハウスパネル36は、凹状に湾曲した板材であり、凹部が外下側を向く向きでフロアパネル20に固定されている。右ホイールハウスパネル36の凹部内に、右リアタイヤ等が収容される。右ホイールハウスパネル36は、リアフロアパネル20b等に溶接等により接合されている。
【0013】
図2、3に示すように、リアフロアパネル20bの上面に、室内フロアクロスメンバ40とリアフロアクロスメンバ44が設けられている。
【0014】
図5は、室内フロアクロスメンバ40とリアフロアクロスメンバ44を含む範囲を左前方から見た斜視図である。また、
図6は、
図2のVI-VI線におけるアンダーボディの断面図である。
図5、6に示すように、室内フロアクロスメンバ40は、U字状の断面を有する梁形の部材である。室内フロアクロスメンバ40は、リアフロアパネル20bから上側に突出するように設けられている。室内フロアクロスメンバ40は、左右方向に長く伸びている。
図2、3に示すように、室内フロアクロスメンバ40は、左ロッカ30から右ロッカ32まで伸びている。室内フロアクロスメンバ40は、リアフロアパネル20b、左ロッカ30、及び、右ロッカ32に溶接等により接合されている。
【0015】
図5、6に示すように、リアフロアクロスメンバ44は、U字状の断面を有する梁形の部材である。リアフロアクロスメンバ44は、リアフロアパネル20bから上側に突出するように設けられている。リアフロアクロスメンバ44は、左右方向に長く伸びている。リアフロアクロスメンバ44は、室内フロアクロスメンバ40よりも後側に配置されている。
図2、3に示すように、リアフロアクロスメンバ44は、左ホイールハウスパネル34から右ホイールハウスパネル36まで伸びている。リアフロアクロスメンバ44は、リアフロアパネル20b、左ホイールハウスパネル34、及び、右ホイールハウスパネル36に溶接等により接合されている。
【0016】
図6、7に示すように、リアフロアパネル20bの下面に、室外フロアクロスメンバ42が設けられている。室外フロアクロスメンバ42は、U字状の断面を有する梁型の部材である。室外フロアクロスメンバ42は、リアフロアパネル20bから下側に突出するように設けられている。室外フロアクロスメンバ42は、左右方向に長く伸びている。室外フロアクロスメンバ42は、室内フロアクロスメンバ40よりも後側に配置されている。室外フロアクロスメンバ42は、リアフロアクロスメンバ44よりも前側に配置されている。室外フロアクロスメンバ42は、左ロッカ30から右ロッカ32まで伸びている。室外フロアクロスメンバ42は、リアフロアパネル20b、左ロッカ30、及び、右ロッカ32に溶接等により接合されている。
【0017】
図3に示すように、アンダーボディを上側から平面視したときに、室内フロアクロスメンバ40、室外フロアクロスメンバ42、左ロッカ30、及び、右ロッカ32によって、略矩形の枠体が形成されている。
【0018】
リアフロアパネル20bは、室内フロアクロスメンバ40よりも前側まで伸びるとともに、室外フロアクロスメンバ42及びリアフロアクロスメンバ44よりも後側まで伸びている。
図6に示すように、リアフロアパネル20bは、室内フロアクロスメンバ40よりも前側では、水平に伸びている。リアフロアパネル20bは、室内フロアクロスメンバ40の後側かつリアフロアクロスメンバ44の前側の範囲(特に、室外フロアクロスメンバ42の後側の範囲)では、後側に向かうにしたがって上側に変位するように傾斜している。リアフロアパネル20bは、リアフロアクロスメンバ44の後側では、水平に伸びている。以下では、リアフロアパネル20bのうち、後側に向かうにしたがって上側に変位するように傾斜している部分を傾斜部20xといい、傾斜部20xよりも後ろ側で水平に伸びている部分を水平部20yという。
【0019】
図7に示すように、フロアパネル20の下部には、バッテリケース70が配置されている。バッテリケース70は、密閉型の容器であり、メインバッテリを収容している。メインバッテリは、走行用モータに電力を供給するバッテリである。バッテリケース70の左右両側に、一対のEAメンバ(左EAメンバ80と右EAメンバ82)が配置されている。
図4に示すように、バッテリケース70は、左EAメンバ80と右EAメンバ82を介して左ロッカ30と右ロッカ32に固定されている。
【0020】
図7に示すように、バッテリケース70の前縁70aは、キャビンの前端近傍に位置している。
図6、7に示すように、バッテリケース70の後縁70bは、室内フロアクロスメンバ40よりも後側であって室外フロアクロスメンバ42よりも前側の範囲94内に位置している。言い換えると、バッテリケース70は、室内フロアクロスメンバ40よりも前側の位置から室内フロアクロスメンバ40よりも後側であって室外フロアクロスメンバ42よりも前側の位置まで延在している。
【0021】
図8は、
図2、6のVIII-VIII線におけるアンダーボディの断面を示している。
図8に示すように、リアフロアパネル20bの下面に、一対のリアサイドメンバ(左リアサイドメンバ50と右リアサイドメンバ52)が設けられている。
図8に示すように、左リアサイドメンバ50は、U字状の断面を有する長尺部材である。左リアサイドメンバ50は、リアフロアパネル20bから下側に突出するように設けられている。左リアサイドメンバ50は、前後方向に長く伸びている。
図6、7に示すように、左リアサイドメンバ50は、その前端近傍において室外フロアクロスメンバ42の下面の一部を覆っている。
図7に示すように、左リアサイドメンバ50は、ボルト112及び溶接によって、室外フロアクロスメンバ42に接合されている。左リアサイドメンバ50は、その前端近傍において左ロッカ30の下面の一部を覆っている。左リアサイドメンバ50は、ボルト114及び溶接によって、左ロッカ30に接合されている。
図3、6、7に示すように、左リアサイドメンバ50は、室外フロアクロスメンバ42から後側に向かってリアフロアパネル20bの左縁に沿って伸びている。
図6に示すように、左リアサイドメンバ50は、リアフロアパネル20bの傾斜部20xの下部では、傾斜部20xに沿って後側ほど上側に変位するように傾斜している。以下では、左リアサイドメンバ50のうちの傾斜部20xに沿って傾斜している部分を、傾斜部50xという。図示していないが、左リアサイドメンバ50は、車両最後部まで伸びており、車両最後部でリアバンパリインフォースメントに接続されている。
図8に示すように、右リアサイドメンバ52は、U字状の断面を有する長尺部材である。右リアサイドメンバ52は、リアフロアパネル20bから下側に突出するように設けられている。右リアサイドメンバ52は、前後方向に長く伸びている。
図7に示すように、右リアサイドメンバ52は、その前端近傍において、室外フロアクロスメンバ42の下面の一部を覆っている。右リアサイドメンバ52は、ボルト122及び溶接によって、室外フロアクロスメンバ42に接合されている。右リアサイドメンバ52は、その前端近傍において右ロッカ32の下面の一部を覆っている。右リアサイドメンバ52は、ボルト124及び溶接によって、右ロッカ32に接合されている。
図3、7に示すように、右リアサイドメンバ52は、室外フロアクロスメンバ42から後側に向かってリアフロアパネル20bの右縁に沿って伸びている。右リアサイドメンバ52は、リアフロアパネル20bの傾斜部20xの下部では、傾斜部20xに沿って後側ほど上側に変位するように傾斜している。図示していないが、右リアサイドメンバ52は、車両最後部まで伸びており、車両最後部でリアバンパリインフォースメントに接続されている。
【0022】
図2に示すように、リアフロアパネル20bの上部に、リインフォースメント(左リインフォースメント60と右リインフォースメント62)が配置されている。左リインフォースメント60は、室内フロアクロスメンバ40、リアフロアパネル20b、左ロッカ30、及び、左ホイールハウスパネル34に接合されている。右リインフォースメント62は、室内フロアクロスメンバ40、リアフロアパネル20b、右ロッカ32、及び、右ホイールハウスパネル36に接合されている。右リインフォースメント62は、左リインフォースメント60に対して左右対称の構造を有している。したがって、以下では、左リインフォースメント60の構造について詳細に説明し、右リインフォースメント62の構造についての詳細説明を省略する。
【0023】
図9は、左リインフォースメント60を有する部分(
図2のIX-IX線の位置)におけるアンダーボディの断面図を示している。
図9に示すように、左リインフォースメント60は、蓋状の部材である。左リインフォースメント60は、リアフロアパネル20bから上側に突出するように設けられている。
図5に示すように、左リインフォースメント60の前端は、室内フロアクロスメンバ40の上面の一部を覆っている。左リインフォースメント60の前端は、室内フロアクロスメンバ40に溶接等により接合されている。左リインフォースメント60は、室内フロアクロスメンバ40から後側に向かってリアフロアパネル20bの左縁に沿って伸びている。左リインフォースメント60は、リアフロアパネル20bと共に、左ロッカ30及び左ホイールハウスパネル34に溶接等により接合されている。
図6に示すように、左リインフォースメント60の天板は、リアフロアパネル20bの傾斜部20xに沿って、後側ほど上側に変位するように傾斜している。左リインフォースメント60の天板の傾斜角度は、傾斜部20xの傾斜角度よりも小さい。したがって、左リインフォースメント60の後端近傍においては、左リインフォースメント60の天板がリアフロアパネル20bに面接触している。
図2、3に示すように、リアフロアパネル20bを上側から平面視したときに、左リインフォースメント60は、左リアサイドメンバ50と重なる位置に配置されている。すなわち、左リインフォースメント60は、左リアサイドメンバ50の上部に配置されている。左リインフォースメント60は、左リアサイドメンバ50の上部の位置で、溶接等によってリアフロアパネル20bに接合されている。
図6に示すように、左リインフォースメント60の後端は、リアフロアクロスメンバ44よりも後側まで伸びている。左リインフォースメント60の後端は、リアフロアパネル20bの水平部20yの上部まで伸びている。リアフロアクロスメンバ44と左リインフォースメント60が重なる位置では、リアフロアクロスメンバ44が左リインフォースメント60を上から覆っている。左リインフォースメント60は、リアフロアクロスメンバ44よりも後側の位置で、リアフロアパネル20bに溶接等により接合されている。
【0024】
図5に示すように、左リインフォースメント60は、2つの高剛性部60a、60bと低剛性部60cを有している。高剛性部60a、60bでは、左リインフォースメント60の天板が、上側に湾曲している。このため、高剛性部60a、60bの剛性は高い。高剛性部60a、60bは、車両の前後方向に長く伸びている。高剛性部60a、60bは、車両の左右方向に間隔を空けて配置されている。低剛性部60cでは、左リインフォースメント60の天板が略水平に伸びている。また、低剛性部60cには、2つの貫通孔60dが設けられている。このため、低剛性部60cの剛性は低い。低剛性部60cの剛性は、高剛性部60a、60bの剛性よりも低い。低剛性部60cは、高剛性部60a、60bの間に配置されている。
【0025】
次に、上述したボディ10が有する機能について説明する。
【0026】
上述したように、実施形態のボディ10では、室内フロアクロスメンバ40よりも後側に室外フロアクロスメンバ42が配置されている。さらに、バッテリケース70が、室内フロアクロスメンバ40よりも前側の位置から室内フロアクロスメンバ40よりも後側であって室外フロアクロスメンバ42よりも前側の位置(すなわち、
図7の範囲94内)まで延在している。このように、室外フロアクロスメンバ42を室内フロアクロスメンバ40よりも後側にずらして配置し、これによって生じた範囲94内までバッテリケース70を延在させることで、バッテリケース70を大型化することができる。これによって、バッテリケース70に内蔵されるメインバッテリの容量をより大きくすることができる。
【0027】
また、実施形態のボディ10では、室内フロアクロスメンバ40が左ロッカ30と右ロッカ32を互いに接続しており、室外フロアクロスメンバ42が左ロッカ30と右ロッカ32を互いに接続している。言い換えると、室内フロアクロスメンバ40が直接左ロッカ30と右ロッカ32に接合されており、室外フロアクロスメンバ42が直接左ロッカ30と右ロッカ32に接合されている。室外フロアクロスメンバ42は、室内フロアクロスメンバ40よりも後側に配置されている。したがって、
図3に示すように、アンダーボディを上側から平面視したときに、室内フロアクロスメンバ40、室外フロアクロスメンバ42、左ロッカ30、及び、右ロッカ32によって、略矩形の枠体が形成されている。このように構成された枠体は、高い剛性を有する。このため、車両に対して側方から衝突があったときに、左ロッカ30及び右ロッカ32の変形が抑制される。
図7に示すように、バッテリケース70は、左ロッカ30と右ロッカ32の間に配置されている。車両に対して側方から衝突があったときに、左ロッカ30及び右ロッカ32が変形し難いので、バッテリケース70に加わる荷重が軽減される。したがって、適切にバッテリが保護される。
【0028】
また、実施形態のボディ10では、左リアサイドメンバ50の上部に左リインフォースメント60が設けられている。左リアサイドメンバ50の前端が室外フロアクロスメンバ42に接合されている。左リインフォースメント60が、室内フロアクロスメンバ40に接合されているとともに、左リアサイドメンバ50の上部でリアフロアパネル20bに接合されている。この構成によれば、左リインフォースメント60によって左リアサイドメンバ50が補強される。したがって、車両が後側から衝突されたときに、左リアサイドメンバ50の変形が抑制される。また、左リアサイドメンバ50は、傾斜部50xにおいて、後側ほど上側に変位するように傾斜している。このため、左リアサイドメンバ50の後端部は、リアフロアパネル20bの室外フロアクロスメンバ42よりも前側の部分よりも上側に存在する。このため、車両が後側から衝突されたときに、室外フロアクロスメンバ42の前側の部分でリアフロアパネル20bにモーメント荷重が加わる。左リインフォースメント60が室内フロアクロスメンバ40に接合されているとともに室外フロアクロスメンバ42よりも後側でリアフロアパネル20bに接合されていることで、室外フロアクロスメンバ42の前側の部分でリアフロアパネル20bに加わるモーメント荷重を軽減することができる。特に、左リインフォースメント60がリアフロアパネル20bよりも上側に位置する室内フロアクロスメンバ40の上面に接合されていることで、衝突点(左リアサイドメンバ50の後端部)と支持点(左リインフォースメント60の前端部)の高さの差が小さくなり、モーメント荷重をより効果的に軽減することができる。同様にして、右リアサイドメンバ52と右リインフォースメント62によっても、モーメント荷重を軽減することができる。
【0029】
また、実施形態のボディ10では、左リインフォースメント60が、高剛性部60a、60bを有している。このため、左リインフォースメント60が高い剛性を有しており、左リインフォースメント60によって左リアサイドメンバ50を適切に補強することができる。また、高剛性部60aと高剛性部60bの間に低剛性部60cが設けられている。このため、車両に対して後側から衝突があったときに、左リインフォースメント60と室内フロアクロスメンバ40の接合部に過剰な荷重が加わることが抑制される。これによって、室内フロアクロスメンバ40が過剰に変形することが抑制される。右リインフォースメント62も同様の構成を備えているので、同様の効果が得られる。
【0030】
また、実施形態のボディ10では、左リインフォースメント60がリアフロアクロスメンバ44よりも後側まで伸びており、水平部20yの上部まで伸びている。このように、左リインフォースメント60が車両後部まで延設されていることで、左リインフォースメント60によって左リアサイドメンバ50がより効果的に補強される。さらに、左リインフォースメント60が左ホイールハウスパネル34に接合されていることによって、さらに高い補強効果が得られる。右リインフォースメント62も同様の構成を備えているので、右リインフォースメント62によって右リアサイドメンバ52をより効果的に補強することができる。
【0031】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0032】
本明細書が開示する一例のボディは、リアサイドメンバとリインフォースメントをさらに有していてもよい。リアサイドメンバは、フロアパネルから下側に突出しており、室外フロアクロスメンバに接合されており、室外フロアクロスメンバから後側に向かってフロアパネルの側縁に沿って伸びていてもよい。リインフォースメントは、室内フロアクロスメンバに接合されており、室内フロアクロスメンバからリアサイドメンバの上部まで伸びており、リアサイドメンバの上部の位置でフロアパネルに接合されていてもよい。
【0033】
この構成によれば、リインフォースメントによってリアサイドメンバを補強することができる。このため、車両に対して後側から衝突があったときに、衝突性能を向上させることができる。
【0034】
本明細書が開示する一例のボディにおいては、リインフォースメントが、前後方向に伸びているとともに左右方向に間隔を空けて配置された複数の高剛性部と、複数の高剛性部の間に配置された低剛性部を有していてもよい。
【0035】
この構成によれば、リインフォースメントの剛性を確保することができるとともに、車両に対して後側から衝突があったときに室内フロアクロスメンバに過度に高い荷重が加わることを防止することができる。
【0036】
本明細書が開示する一例のボディにおいては、フロアパネルが、室外フロアクロスメンバよりも後側の領域において、後側ほど上側に変位するように伸びている第1傾斜部を有していてもよい。リアサイドメンバが、第1傾斜部に沿って後側ほど上側に変位するように伸びている第2傾斜部を有していてもよい。
【0037】
この構成では、車両に対して後側から衝突があったときにリアサイドメンバを介してフロアパネルに加わるモーメント荷重が、リインフォースメントによって軽減される。
【0038】
本明細書が開示する一例のボディにおいては、フロアパネルが、第1傾斜部よりも後側に配置されており、水平に伸びている水平部をさらに有していてもよい。リインフォースメントが、水平部の上部まで伸びていてもよい。
【0039】
また、本明細書が開示する一例のボディは、リアホイールハウスパネルと、リアフロアクロスメンバをさらに有していてもよい。リアホイールハウスパネルは、室外フロアクロスメンバよりも後側に配置されており、フロアパネルの側縁に接合されていてもよい。リアフロアクロスメンバは、フロアパネルから上側に突出しており、左右方向に伸びており、リアホイールハウスパネルに接続されていてもよい。リインフォースメントが、リアフロアクロスメンバよりも後側まで伸びていてもよい。この場合、リインフォースメントが、リアホイールハウスパネルに接続されていてもよい。
【0040】
これらの構成のように、リインフォースメントを後方まで延在させることで、リインフォースメントによってリアサイドメンバをより効果的に補強することができる。
【0041】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
10 :ボディ
20 :フロアパネル
20a :フロントフロアパネル
20b :リアフロアパネル
20c :ラゲッジフロアパネル
20x :傾斜部
20y :水平部
30 :左ロッカ
32 :右ロッカ
34 :左ホイールハウスパネル
36 :右ホイールハウスパネル
40 :室内フロアクロスメンバ
42 :室外フロアクロスメンバ
44 :リアフロアクロスメンバ
50 :左リアサイドメンバ
50x :傾斜部
52 :右リアサイドメンバ
60 :左リインフォースメント
62 :右リインフォースメント
70 :バッテリケース
80 :左EAメンバ
82 :右EAメンバ