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特許7107940携帯型コンピュータシステムのためのセンサユニットおよびセンサユニットの統合
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】携帯型コンピュータシステムのためのセンサユニットおよびセンサユニットの統合
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/20 20210101AFI20220720BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01K13/20 341Z
A61B5/01
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2019534851
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2017082994
(87)【国際公開番号】W WO2018114653
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】1695/16
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】519224708
【氏名又は名称】グリーンテグ、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】GREENTEG AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェル、ツァーナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ヘルブリング
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス、デューラー
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ、シュビター
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-114291(JP,A)
【文献】特表2004-532065(JP,A)
【文献】国際公開第02/078538(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
A61B 5/00,5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱流センサ(20、20’)と少なくとも1つの温度センサ(21、21’)とを含む、体外の表面上で決定され得る測定値によって深部体温を決定するためのセンサユニット(2)であって、
前記センサユニット(2)が、少なくとも1つのプリント回路基板(22)と、異なる材料の複数の層を含むサンドイッチ状構造の形の少なくとも1つのモノリシック熱流センサ(20、20’)と、少なくとも1つの温度センサ(21、21’)とを含み、
前記少なくとも1つのモノリシック熱流センサ(20、20’)と、前記少なくとも1つの温度センサ(21、21’)とが、前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)上に、互いに離間されてはんだ付けされており、
前記センサ(20、20’、21、21’)を、ワイヤまたはストリップ導体によってアナログ・デジタル変換器(25)およびマイクロコントローラ(26)に接続することができ、
前記電子部品(20、21、25、26)を、接続ワイヤ(3)またはストリップ導体によって携帯型コンピュータシステム(0)の電子機器回路に接続することができ、電子部品(20、21、25、26)が配置された前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)が、センサ・ユニット・スリーブ(28)によって少なくとも部分的に囲まれており
前記センサ・ユニット・スリーブ(28)が、機械的に柔軟で、その熱伝導率が0.3~10W/mKにあるセンサ・ユニット・ハウジングであることを特徴とするセンサユニット(2)。
【請求項2】
前記センサユニット(2)が2つのプリント回路基板(22)を含み、前記少なくとも1つの熱流センサ(20、20’)と前記少なくとも1つの温度センサ(21、21’)とが、空間的に分離された異なるプリント回路基板(22)上に配置されている、請求項1に記載のセンサユニット(2)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)が前記温度センサ(21、21’)と共に少なくとも部分的に前記センサ・ユニット・スリーブ(28)に囲まれていない状態のままである、請求項2に記載のセンサユニット(2)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのモノリシック熱流センサ(20)と前記少なくとも1つの温度センサ(21)とが、前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の同じ側に、重なり合って積層されて、はんだ付けされている、請求項1に記載のセンサユニット(2)。
【請求項5】
前記センサユニット(2)、および/または前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)が、前記センサ・ユニット・スリーブ(28)によって完全に包み込まれている、請求項1または4のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項6】
アナログ・デジタル変換器(25)が前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)上に直接取り付けられて配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項7】
さらにマイクロコントローラ(26)と読み出し/記憶ユニット(27)とが前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)上に取り付けられて配置されている、請求項6に記載のセンサユニット(2)。
【請求項8】
2つの熱流センサ(20、20’)が前記長手方向に互いに離間されて、前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の同じ側にはんだ付けされており、断熱材(23)が、前記長手方向に前記第1の熱流センサ(20)の高さで、熱流センサを含まない前記プリント回路基板(22)の側に配置されており、第1の熱流を、前記断熱材(23)および前記第1の熱流センサ(20)を通して測定することができ、第2の熱流を、前記第2の熱流センサ(20’)を通して測定することができる、請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項9】
2つの熱流センサ(20、20’)が前記長手方向に互いに離間されて、前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の同じ側にはんだ付けされており、熱キャパシタンス(24)が、前記長手方向に前記第1の熱流センサ(20)の高さで、熱流センサを含まない前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の側に配置されており、第1の熱流を、前記熱キャパシタンス(24)および前記第1の熱流センサ(20)を通して測定することができ、第2の熱流を、前記第2の熱流センサ(20’)を通して測定することができる、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項10】
熱流センサを含まない前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の側に、金属板(30)が、断熱材(23)、および/または熱キャパシタンス(24)、および/または熱伝導材料でできているブロック、および/または前記センサ・ユニット・スリーブ(28)の一部と広範囲に接するように配置されている、請求項1に記載のセンサユニット(2)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の片側に、熱流センサ(20)、第1の温度センサ(21’)および断熱材(23)が前記長手方向に互いに離間されて配置されており、熱流センサを含まない前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の反対側に、第2の温度センサ(21)が前記長手方向に沿って前記断熱材(23)の高さで配置されており、第1の温度を、前記第1の温度センサ(21’)の位置で測定することができ、第2の温度を、前記熱流が前記断熱材(23)を通った後の前記第2の温度センサ(21)の位置で測定することができる、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのモノリシック熱流センサ(20、20’)、前記少なくとも1つの温度センサ(21、21’)、前記アナログ・デジタル変換器(25)、前記マイクロコントローラ(26)、断熱材(23)、および/または熱キャパシタンス(24)が、集積回路(29)にパッケージ化され、前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の片側に取り付けられている、請求項1から11のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項13】
前記センサ・ユニット・ハウジング(28)熱伝導シリコーンから製造されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項14】
前記断熱材(23)の材料が、0.01W/(m*K)~0.1W/(m*K)の熱伝導率λを有し、ポリマーまたはポリプロピレンである、請求項8および10から12のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の断面領域が少なくとも部分的に円形であり、前記ストリップ導体が少なくとも部分的に輪状線に沿って前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の中央まで案内され、前記少なくとも1つの熱流センサ(20)と前記少なくとも1つの温度センサ(21)とのはんだ付け面が前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の中央に位置する、請求項1から14のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプリント回路基板(22)の中央が空洞(A)によって囲まれており、前記空洞(A)が腎臓形として実施されている、請求項15に記載のセンサユニット(2)。
【請求項17】
前記センサ・ユニット・スリーブ(28)、または前記プリント回路基板(22)上に配置された金属棒(M)が、皮膚接触面(10)と反対の前記プリント回路基板(22)の側から突出している、請求項1から16のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項18】
断熱材(23)および/または熱キャパシタンス(24)が、前記プリント回路基板(22)内に延びて配置されており、断熱層含有物(23)よって、かつ/または熱ビア(24)によって形成されている、請求項1から17のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載のセンサユニット(2)を有する、携帯型コンピュータシステム(0)。
【請求項20】
プリント回路基板(22)上に少なくとも1つの測定センサと電子部品とを含む、センサユニット(2)を、携帯型コンピュータシステム(0)のハウジング(1)に統合するための方法であって、
貫通孔(12)の形の空洞(12)を有するハウジング(1)を設けるステップと、
アナログ・デジタル変換器(25)とマイクロコントローラ(26)と読み出し/記憶ユニット(27)とに接続されている少なくとも1つの熱流センサ(20、20’)が突出するプリント回路基板(22)を含む、前記センサユニット(2)を設けるステップと、
前記プリント回路基板(22)を前記ハウジング(1)内の前記貫通孔(12)の上方に位置決めし、前記プリント回路基板(22)を前記ハウジング(1)の壁に取り付けるステップと、
一方の側が閉じられた前記貫通孔(12)を、センサ・ユニット・スリーブ(28)を形成する流動性材料で充填するステップと、その後に、
前記プリント回路基板(22)を接続ワイヤ(3)によって前記携帯型コンピュータシステム(0)の電子機器回路に接続するステップと、
によることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記貫通孔(12)を充填する前記ステップの後に、前記センサ・ユニット・スリーブ(28)が皮膚接触面(10)の方向に前記貫通孔(12)から少なくとも部分的に突出する、請求項20に記載のセンサユニット(2)を統合するための方法。
【請求項22】
プリント回路基板(22)上に少なくとも1つの測定センサと電子部品とを含むセンサユニット(2)の製造、および、前記センサユニット(2)の、携帯型コンピュータシステム(0)のハウジング(1)への、または皮膚(H)上に取り付けるための接着パッド(4)への統合であって、
空洞(12、13)を有するハウジング(1)、または空洞(12’)を有する接着パッド(4)を設けるステップと、
前記センサユニット(2)を設けるステップと、
前記センサユニット(2)を鋳型(5)に挿入するステップであって、接続ワイヤ(3)が前記鋳型(5)から突出する、前記挿入するステップと、
機械的に柔軟な硬化材料、好ましくは熱伝導シリコーンを、センサ・ユニット・スリーブ(28)を形成するように前記鋳型(5)に注入するステップと、
前記センサ・ユニット・スリーブ(28)を硬化させるステップと、
前記センサ・ユニット・スリーブ(28)によって囲まれた前記センサユニット(2)を、前記携帯型コンピュータシステム(0)の前記ハウジング(1)内の前記空洞(12、13)、または前記接着パッド(4)内の前記空洞(12’)に挿入するステップと、
その後に前記接続ワイヤ(3)を前記携帯型コンピュータシステム(0)の前記電子機器回路に接続するステップと、
によることを特徴とする製造および統合。
【請求項23】
前記鋳型(5)が、前記センサ・ユニット・スリーブ(28)の前記材料上に一回鋳型として残る、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記鋳型(5)が、前記センサ・ユニット・スリーブ(28)を硬化させる前記ステップの後に前記センサ・ユニット・スリーブ(28)から取り外される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記空洞(12、13、12’)が貫通孔(12)として設計されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記空洞(12、13、12’)が止まり穴(12)として設計されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記空洞(12、13、12’)の内壁が、前記センサ・ユニット・スリーブ(28)、または前記鋳型(5)に入った前記センサ・ユニット・スリーブ(28)が前記空洞(12、13)に差し込まれる前に、接着剤で被覆される、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの熱流センサと少なくとも1つの温度センサとを含む、体外の表面上で決定され得る測定値によって深部体温を決定するためのセンサユニットと、センサユニットを有する携帯型コンピュータシステムと、少なくとも1つの測定センサとプリント回路基板上の電子部品とを含むセンサユニットの製造と、携帯型コンピュータシステムのハウジングへの、または皮膚上に取り付けるための接着パッドへのセンサユニットの統合とを記述する。
【背景技術】
【0002】
測定機能を有する携帯型技術データ処理装置は、衣服の一部として、またはアクセサリーの形で、ハウジングありまたはなしで、様々な構成において公知の技術である。これらの携帯型コンピュータシステムまたはウェアラブルコンピュータは、「ウェアラブルコンピューティング」という研究分野の主題である。ウェアラブルコンピュータまたは携帯型コンピュータシステムは少なくとも1つのセンサユニットを有し、センサユニットでは実世界から少なくとも1つのセンサを介してデータが収集される。測定されたデータは次いで、携帯型コンピュータシステム自体で処理されるか、または別のコンピュータ、特にスマートフォンに転送される。ユーザは記録されたデータを閲覧し、それをさらに処理することができる。携帯型コンピュータシステムはハウジングを含み、ハウジング内にセンサユニットと電子機器回路とが統合されている。一般に、電子機器回路は、少なくとも1つのマイクロコントローラと1つの読み出し/記憶ユニットとを有し、これらはセンサユニットに接続されている。
【0003】
ウェアラブルコンピュータ、または携帯型コンピュータシステムの一例が、フィットネスもしくはヘルスアームバンド、スマートバンド、またはフィットネストラッカとも呼ばれる、活動量計である。電子機器回路で動作するソフトウェアを使用して、センサユニットの少なくとも1つのセンサからのデータが収集され、さらに処理され、必要に応じてメモリに格納され、かつ/またはスマートフォンに転送される。したがって、走行距離、エネルギー消費量、また場合によっては、心拍数、体温、血液中の酸素含有量、または睡眠の質などのフィットネスおよび健康に関連するデータを決定することができる。
【0004】
ここでは、携帯型コンピュータシステムによる体内温度、すなわち深部体温の決定が関心対象である。皮膚上で測定される、体内温度の非侵襲的、連続的決定は、病院における患者監視、運動選手における心発作の予防、または睡眠障害その他の疾病の診断のための概日リズムの決定および監視に重要である。
【0005】
最も簡単な事例では、携帯型コンピュータシステムのセンサユニットは、センサおよびその周囲の断熱と組み合わせた皮膚温度を決定する温度センサに基づくものである。断熱の目的は、皮膚温度を深部体温に可能な限り近く保つことである。多くの場合、この方法は不正確であり、変化する外部条件の下での使用には適さない。
【0006】
深部体温の測定を改善するために、携帯型コンピュータシステムのセンサユニットは、DE10038247に記録されているように、いわゆるダブル温度センサを含み得る。ここでは、2つの温度センサは、既知の熱抵抗を有する断熱材によって互いに分離されている。ほとんどの場合、この方法は、測定の人と場所とに左右される熱抵抗を決定するために較正測定を必要とする。
【0007】
ダブルセンサ法は複数の不都合点を有する。1つの厳しい問題は、2つの温度センサ間の熱寄生熱損失によって表され、これは大きな偏差をもたらす可能性がある。これらは、DE102005004933に記載されているように、断熱と複雑な補償アルゴリズムとによって解決されなければならない。もう1つの不都合点は、システムのサイズにある。良好な感度を達成するためには、適用時の温度差は十分に大きくなければならず、これは2つの温度センサ間の材料が特定の最小厚さを有しなければならないことを意味する。これにより、センサシステムはかなり分厚くかさばるものになり、先行技術のハウジングへの統合を容易にするのにあまり適さなくなる。
【0008】
深部体温を決定するための公知の技術のセンサユニットは、まだ携帯型コンピュータシステムのハウジングへの統合を容易にするのに適したものではない。寄生熱損失を回避するために、断熱材および追加の構造が必要とされ、結果として設計が複雑になり、センサユニットを携帯型コンピュータシステムのハウジングに統合することが困難になる。別の不都合点は、深部体温を決定するときの公知の技術のセンサユニットの測定の不正確さである。
【0009】
国際公開第02/078538号パンフレットは、ユーザの皮膚に取り付けられる熱流センサの助けを借りた深部体温の決定を提示している。熱流センサはセンサユニットの一部を形成しており、この場合もまた、複雑な方法でコンピュータシステムに取り付けられなければならない。国際公開第2005/092177号パンフレットには、深部体温の測定に適した別のセンサユニットが記載されており、これは、とりわけ、熱流センサを含み、同様に携帯型コンピュータシステムに接続することができる。これにより、深部体温を可能な限り正確に決定するという目標に近づいたが、センサユニットの製造および携帯型コンピュータシステムへのセンサユニットの統合は依然として複雑で面倒なままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】DE10038247
【文献】DE102005004933
【文献】国際公開第02/078538号パンフレット
【文献】国際公開第2005/092177号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、深部体温の最適化された決定を可能にする、携帯型コンピュータシステムへの設置、または接着パッドの表面もしくは内部への実装のための、容易に設置できるコンパクトなセンサユニットを作成するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
センサユニットの製造を簡素化し、携帯型コンピュータシステムのハウジングの表面もしくは内部への、または接着パッドの表面もしくは内部へのセンサユニットの取り付けを簡素化するための機会が生み出される。
【0013】
提示のようなセンサユニットを用いて、身体に関する温熱生理学的データ、特に体内温度、すなわち深部体温を測定することができ、それによって熱流および表面温度が決定される。他のパラメータは、皮膚の熱出力、カロリー消費量、カロリー摂取量、血圧、血糖、身体の特定の箇所における内部温度、補償された皮膚温度などとすることができる。
【0014】
特に、センサユニットの携帯型コンピュータシステムのハウジングへの結合、またはセンサユニットの接着パッドの表面もしくは内部への取り付け、またはテープによる取り付けを、少数の操作ステップで可能にする方法が記載される。
【0015】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、図と併せて、本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】統合されたセンサユニットを有する携帯型コンピュータシステムを示す概略断面図である。
図1b】統合されたセンサユニットを有する携帯型コンピュータシステムを示す概略断面図である。
図1c】統合されたセンサユニットを有する携帯型コンピュータシステムを示す概略断面図である。
図2a】様々なセンサユニットを示す概略断面図である。
図2b】様々なセンサユニットを示す概略断面図である。
図2c】様々なセンサユニットを示す概略断面図である。
図2d】様々なセンサユニットを示す概略断面図である。
図2e】様々なセンサユニットを示す概略断面図である。
図2f】集積回路(IC)内に封入された電子部品がチップハウジング内に集約されているセンサユニットを示す概略断面図である。
図3】センサ・ユニット・スリーブを取り付ける前のセンサユニットを示す平面図である。
図4a】センサ・ユニット・スリーブを取り付けた後の図3に示すセンサユニットを示す平面図である。
図4b】B-B断面線に沿った図4aに示すセンサユニットを示す概略断面図である。
図5】接着パッドの空洞内にセンサ・ユニット・スリーブを有するセンサユニットを示す概略断面図である。
図6a】ハウジングへのセンサユニットの固定を示す概略断面図である。
図6b】貫通孔を充填した後のセンサユニットを示す概略断面図である。
図6c】センサユニットに金属棒を取り付けた後の概略断面を示す図である。
図7a】センサユニットの製造方法の第1のステップを示す概略断面図である。
図7b】センサ・ユニット・スリーブ内に封入されたセンサユニットを示す概略断面図である。
図7c】携帯型コンピュータシステムのハウジング内の空洞に押し込まれ、ユーザの皮膚と接触させられた後の、図6bに示す封入されたセンサユニットを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
携帯型コンピュータシステム0は、ここでは、ハウジング1と中空の内部11を有するアームバンドの形で表されている。ハウジング1は、皮膚接触面10で、ユーザの皮膚H上に置かれている。熱流がユーザの身体から発生し、皮膚Hを横切り、携帯型コンピュータシステム0のハウジング1を横断して内部11に入り、図1aの詳細図に、ハウジング1を通る熱流が、QinからQoutとして記されている。人および動物が想定されるユーザである。
【0018】
センサユニット2は、以下でより詳細に記述されており、ハウジング1内に挿入され、取り外し可能または取り外し不能に取り付けられ、携帯型コンピュータシステム0の電子機器回路(図示せず)に電気的に接続される。センサユニット2は、センサ・ユニット・スリーブ28によって少なくとも部分的に囲まれており、ハウジング1内に押し込まれる、すなわち、接着剤で接合されるかまたは封入される。センサ・ユニット・スリーブ28は、熱伝導材料、特にシリコーンから製造されている。後述するように、熱流センサ自体の熱伝導率と同様の熱伝導率を有する材料を使用することによって、熱流を均一化し、よって寄生熱流を最小限に抑えることが可能である。さらに、良好な熱伝導率とは、測定される温度が皮膚温度により近いことを意味する。本発明の場合のセンサ・ユニット・スリーブ28の伝導率は0.3~10W/mKにあるべきであり、最適には0.8~3W/mKである。計測上の理由から、センサユニット2はユーザの皮膚の可能な限り近くに位置するべきであるが、原則として熱経路内のどこにでも配置することができる。
【0019】
図1aに示す実施形態では、ハウジング1を完全に横断する貫通孔12が設けられており、その中に完全に封入されたセンサユニット2が挿入される。センサ・ユニット・スリーブ28は、貫通孔12と皮膚接触面10からわずかに突出しており、使用時にはユーザの皮膚Hと接触する。皮膚Hから、よって身体から皮膚を介してセンサ・ユニット・スリーブ28およびセンサユニット2を通る熱流は、使用中にそれ自体を調整し、深部体温を決定するために使用することができる。
【0020】
図1bに示すように、部分的に取り囲むセンサ・ユニット・スリーブ28を有するセンサユニット2を導入するための、携帯型コンピュータシステムのハウジング1内に止まり穴13の形の空洞を配置することもできる。ここでもまた、センサ・ユニット・スリーブ28を含むセンサユニット2は、栓の形で止まり穴13に挿入され、よってハウジング1に取り外し可能に接続される。
【0021】
ハウジング1内のセンサ・ユニット・スリーブ28とセンサユニット2との実装の安定性を高めるために、センサ・ユニット・スリーブ28は、図1cに示すように、ハウジング1を横切って延在することができる。これにより、環境と身体との間の熱平衡がそれ自体を可能な限り迅速に調整するように熱経路が作り出される。したがって、センサ・ユニット・スリーブ28は、皮膚接触面10からハウジング1の皮膚接触面10から遠い側まで延在し、それによってハウジング1を横断する。
【0022】
図2a~図2dに、深部体温を決定するためのセンサユニット2の実施形態を示す。その目的は、可能な限りコンパクトで、機械的にロバストであり、最良の場合には柔軟に構成されているセンサユニット2を作成することである。
【0023】
センサユニット2の基礎は、少なくとも1つの熱流センサ20と少なくとも1つの温度センサ21とがはんだ付けされているプリント回路基板22である。プリント回路基板22は、剛性または可撓性のものとして実施することができ、導電体でできているストリップ導体に加えて、絶縁材料、好ましくは繊維強化プラスチックを含む。最適には、少なくとも1つのプリント回路基板22の材料は、均一な熱流が保証されるように、0.3~10W/mK、好ましくは0.8~3W/mKの熱伝導率を有する。
【0024】
各種センサ20、21は、プリント回路基板22上のはんだ面に配置されており、はんだで取り付けられている。少なくとも1つの熱流センサ20および少なくとも1つの温度センサ21は、長手方向に沿って互いに離間されて配置されている。熱流センサ20および温度センサ21は、プリント回路基板22の同じ側に取り付けられている。
【0025】
他の構成要素、特に断熱材料23および熱キャパシタンス24でできているブロックも、プリント回路基板22上に取り付けられている。断熱材23および熱キャパシタンス24は、アクリル、エポキシ、ポリウレタンなどの接着剤を用いてプリント回路基板22に接合されるか、または材料が許せばはんだ付けされる。
【0026】
構成要素間の熱伝達抵抗を可能な限り低く保つために、例えば、熱流センサ20と熱キャパシタンス24との間では、接着剤接合の場合には熱伝導接着剤が使用されるべきである。
【0027】
アナログ・デジタル変換器25、マイクロコントローラ26、読み出し/記憶ユニット27などの電子部品もまた、導電的にプリント回路基板22上に取り付けることができる。しかしながら、十分に高い測定信号を達成するためには、ワイヤまたは、フレキシブル複合プリント回路基板を形成するいわゆるフレックスリジッドプリント回路基板、プラスチック層と銅層との層状配置によって、アナログ・デジタル変換器25のみをプリント回路基板22上に取り付け、マイクロコントローラ26と読み出し/記憶ユニット27とをプリント回路基板22から離れて配置すれば十分である。
【0028】
接続ワイヤ3は、プリント回路基板22から出て行くように配置されており、これらは、測定された信号または処理された信号を携帯型コンピュータシステム0の電子機器回路に送る。任意選択で、接続ワイヤ3は、電子部品を接続するためのフレキシブルプリント回路基板またはストリップ導体によって形成することもできる。
【0029】
センサユニット2の安定性を高め、均一な熱流を達成するために、部品が装着されたプリント回路基板22は、センサ・ユニット・スリーブ28によって少なくとも部分的に囲まれている。図2aおよび図2dに示す変形例には、センサ・ユニット・スリーブ28内に完全に封入されたセンサユニット2が示されているが、この場合のその他の実施形態では、後で皮膚Hに面するそのセンサユニット2の側にセンサ・ユニット・スリーブ28が設けられているだけである。
【0030】
センサ・ユニット・スリーブ28は必ずしも1つの材料のみからなる必要はない。例えば、皮膚により適合するシリコーンを皮膚に隣接して配置することができ、次いで熱伝導シリコーンをプリント回路基板22まで塗布することができる。プリント回路基板22自体は、センサ・ユニット・スリーブ28の熱伝導率と同様の熱伝導率を有する。プリント回路基板22の上方には、別の0.5cmの熱伝導シリコーンがあり、次いで、ハウジングの最上部に至るまで金属棒またはシリコーン充填金属棒がある。試験によれば、少なくとも1つの熱流センサ20と少なくとも1つの温度センサ21とがプリント回路基板22の同じ側に位置しているか、それとも反対側に位置しているかは問題ではない。熱流センサ20を使用した熱流の測定および温度センサ21を使用した温度の測定は、実際の深部体温を決定するために使用される。
【0031】
図2aにおいて、センサユニット2は、プリント回路基板22の皮膚に面する側にはんだ付けされた2つの熱流センサ20、20’と1つの温度センサ21とを有する。ここでは、熱流センサを含まないプリント回路基板22の側に、熱流センサ20の長手方向の高さで、断熱材23が取り付けられている。図2bに示す変形例では、熱流センサを含まないプリント回路基板22の側に、熱流センサ20の長手方向の高さで、熱キャパシタンス24が取り付けられている。このようにして、第2の熱流センサ20’を通る熱流と同様に、第1の熱流センサ20と断熱材23、または熱キャパシタンス24とを通る熱流が測定される。2つの測定値は、温度センサ21による温度の測定と一緒に、深部体温の決定に入力される。断熱材23または熱キャパシタンス24ありとなしとの熱流センサ測定値の事前の較正に従って、深部体温の決定を最適化することができる。
【0032】
断熱材23は高い熱抵抗を有するので、断熱材23の材料の熱伝導率λは非常に低い。図2aに示すように、第1の熱流センサ20を通る熱流は、断熱材23によって、第2の熱流センサ20’を通る熱流とは異なる。断熱材23として発泡プラスチック材料が使用されるので、第1の熱流センサ20を通る熱流は第2の熱流センサ20’を通る熱流よりも少ない。決定的な要因は2つの熱流間の差であり、この差からアルゴリズムの助けを借りて深部体温をより適切に決定することができる。この設計により、各センサ20、20’、21、21’と皮膚Hとの間の熱結合の変化に対してセンサユニット2がよりロバストであることが保証される。熱流差は、決定において考慮に入れられる。そのために、断熱材23の特性は、既知であり、実験的に決定され較正されなければならない。断熱材材料23の熱伝導率λは、空気の熱伝導率(λair=0.024W/m/K)程度、すなわち0.01W/m/K~0.1W/m/Kであるべきである。
【0033】
センサ・ユニット・スリーブ28の材料は、ポリプロピレン、PES、PE、PET、ポリエチレン、アセタール、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、PPS、ポリカーボネート、テフロン、ポリエステル、PMMA、PSU、PEEK、TPE、TPU、パリレンまたはPTFEなどのポリマーを含むことができる。エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)およびポリプロピレンが好ましく選択されている。少なくとも1つのプリント回路基板22、すなわちプリント回路基板22の材料を、センサ・ユニット・スリーブ28の一部とすることもできる。プリント回路基板22の材料としては、例えば、エポキシ樹脂とガラス繊維織物との複合材料であるFR-4またはFR4を使用することができる。当業者には公知の技術であるように、材料の熱伝導率は、材料がセンサユニット自体の熱伝導率と同様の熱伝導率を有するように、特殊な製造形態(例えば粒子の添加)によって改善し、または適合させることができる。
【0034】
したがって、熱キャパシタンス24は非常に低い熱抵抗を有し、材料は非常に高い熱伝導率、すなわち非常に高いλの値を有する。熱キャパシタンス24は熱を最大限に吸収するべきである。ここでもまた、第1の熱流センサ20を通る熱流は、第2の熱流センサ20’を通る熱流とは異なる。熱伝導シリコーンは材料としてうまく使用されてきた。しかしながら、金属もまた使用することができる。熱キャパシタンス24の材料の熱伝導率λは、空気の熱キャパシタンス(λair=0.024W/m/K)よりも著しく大きく、すなわち0.1W/m/Kより大きくなければならない。
【0035】
断熱材23および熱キャパシタンス24は、適切な接着剤を用いてプリント回路基板22に取り付けられる。銅または真鍮が使用される場合、これをプリント回路基板22上にはんだ付けすることができる。
【0036】
図2cに示す変形例は、熱流センサ20と2つの温度センサ21、21’とを示しており、よって断熱材23がプリント回路基板22の熱流センサ側に取り付けられ、プリント回路基板22の長手方向に同じ高さで温度センサ21’とは反対側に位置する。温度センサ21は、プリント回路基板22に直接接続されているが、断熱材23からは離間されている。これにより、長手方向と横方向とに互いに距離を置いて配置された2つの温度センサ21、21’による2つの異なる温度測定が可能になる。
【0037】
センサユニット2の電子部品、少なくとも1つの熱流センサ20、少なくとも1つの温度センサ21、アナログ・デジタル変換器25、マイクロコントローラ26および読み出し/記憶ユニット27は、集積回路29(IC)内に封入されており、チップハウジング内に集約することができ、プリント回路基板22と共にセンサユニット2を形成することができる。実際には、封入は両面への接着剤の塗布によって、または鋳造法によって達成される。集積回路29、すなわちチップハウジングは、プリント回路基板22上にはんだ付けされる。集積回路29のコンパクト設計により、センサユニット2の製造をさらに一層簡素化することができる。
【0038】
図2dに、2つの熱流センサ20、20’が長手方向に互いに離間されて、少なくとも1つのプリント回路基板22の同じ側にはんだ付けされているセンサユニット2を示す。熱キャパシタンス24は、長手方向に第1の熱流センサ20の高さで、熱流センサを含まない少なくとも1つのプリント回路基板22の側に配置されている。加えて、断熱材23も、長手方向に第2の熱流センサ20’の高さで、熱流センサを含まない少なくとも1つのプリント回路基板22の側に配置されている。熱流センサを含まない側には、金属板30が、断熱材23および熱キャパシタンス24と接し、プリント回路基板22と平行に延びるように配置されている。金属板30はまた、プリント回路基板22上の熱伝導材料でできているブロック、またはセンサ・ユニット・スリーブ28と接し、かつ/またはこれを部分的に覆うように配置することもできる。
【0039】
好ましくはアルミニウムでてきており、剛性または可撓性であり得る金属板30によって、金属板30に沿って同じ外部温度で熱平衡が達成され、測定精度を高めることができる。
【0040】
特に耳内では、センサユニットの統合によってスペースを節約することを目的とすべきであるので、断熱材23および/または熱キャパシタンス24の構成を修正することができる。ここで、断熱材23またはキャパシタンス24は、プリント回路基板22上に配置される必要はないが、プリント回路基板22に組み込むこともできる。ここでは、例えば、断熱材23がプリント回路基板22の断面内を通っているように示されており、よってこの断熱材は断熱層、例えば空気溜りとすることができる。熱伝導率は、熱ビア、例えばCuビアを導入することによって増加し、これは、銅で充填された止まり穴または貫通孔の形の熱キャパシタンス24として構成される。加えて、熱キャパシタンス24はまた、ここでは図示されていない、隠された熱ビア、いわゆる「埋め込みビア」として設計することもできる。
【0041】
図2fに示すように、プリント回路基板22は、集積回路29と共に、両側でセンサ・ユニット・スリーブ28によってほぼ完全に囲まれている。接続ワイヤ3を携帯型コンピュータシステム0の電子機器回路に接続することは容易に可能である。
【0042】
特にプリント回路基板22上にはんだ付けすることができる配置可能な熱流センサ20、20’は、その内容が本明細書で参照される、本出願人の欧州特許第2938980号および国際公開第2016128247号パンフレットに記載されている。機械的に十分にロバストであり、プリント回路基板22の表面上にはんだ付けすることができる、熱侵入性が低い小型かつ/または薄型のモノリシック熱流センサを配置することができる。このために、金属と少なくとも1つの電気絶縁マトリックス層とを含む、異なる材料の複数の層からなるサンドイッチ状構造が選択される。そのようなモノリシック熱流センサ20、20’は、少なくとも一方の側の閉じられた本体と、異なる金属層の間にいくつかの感知接合部とを形成する。温度センサ21は長い間公知の技術であり、様々に構成された温度センサ21を使用することができる。プリント回路基板22上に、または別のプリント回路基板上にはんだ付けすることができる公知の技術のすべての温度センサ21を温度センサ21として使用することができる。とりわけ、赤外線センサを温度測定に使用することができる。赤外線センサはセンサ・ユニット・スリーブ28によって囲まれていてはならない。好ましい実施形態では、センサユニット2は複数のプリント回路基板22を含み、少なくとも1つの熱流センサ20、20’が1つのプリント回路基板22上に配置されており、温度測定のための赤外線センサが、第1のプリント回路基板22から空間的に分離されて配置された別のプリント回路基板上に配置されている。適切な配線によって、第1のプリント回路基板22上の少なくとも1つの熱流センサ20、20’からの測定値、および第2のプリント回路基板上の赤外線センサからの測定値を読み出し/記憶ユニット27において処理することができる。赤外線センサは、センサユニット2の一部であるが、センサ・ユニット・スリーブ28に囲まれていない状態のままでなければならない。これを達成する最も容易な方法は、赤外線センサを第2の回路基板に配置することである。
【0043】
図3に、部分的に円形のプリント回路基板22、より詳細には、後で皮膚表面に面するセンサの側に平面図内の空洞Aを有する部分的に円形の断面領域を有するセンサユニット2を示す。簡潔にするために、ここではセンサ・ユニット・スリーブ28が省略されているので、センサの側から突出しいる熱流センサ20および温度センサ21が見えている。プリント回路基板22上のストリップ導体は、破線矢印で示すように、プリント回路基板22の中央の温度センサ21および熱流センサ20までプリント回路基板22に沿って可能な限り長い円形経路に沿って延びる。これにより、接続ワイヤ3からの熱伝導によって引き起こされる熱損失や妨害入熱が実質的に防止される。
【0044】
特に、ブリッジと境を接する、各々熱流センサ20と温度センサ21とに長手方向に隣接する、2つの腎臓形空洞Aの配置によって、中央のプリント回路基板ディスクが形成され、温度センサ21と熱流センサ20との熱的に阻害されない実装が達成される。縁部領域内の空洞A’によって、接続ワイヤ3の接点とセンサ20、21との間の妨害熱流もまたさらに低減される。
【0045】
センサ・ユニット・スリーブ28を装着したセンサユニット2が図4aに示されている。センサ・ユニット・スリーブ28は、電気部品およびプリント回路基板22を部分的に覆っている。使用時には、断面線B-Bに沿って図4bに示すように、センサユニット2はそのセンサ・ユニット・スリーブ28と共に、ユーザの皮膚H上に置かれるかまたは押し付けられ、よって熱流および温度の測定を行うことができ、公知の技術のアルゴリズムを使用して現在の深部体温を決定することができる。ここでは、センサ・ユニット・スリーブ28もまた、皮膚と反対を向いたプリント回路基板22の側に延在しており、センサ・ユニット・スリーブ28は、接着パッド4によって囲まれている。
【0046】
センサ・ユニット・スリーブ28を取り付けたセンサユニット2を製造した後、プリント回路基板22を突出したセンサ・ユニット・スリーブ28と共に接着パッド4の空洞12’に取り付けることができ、これは医療技術からの公知の技術であり、例えば、皮膚への電極の取り付けに役立つ。接続ワイヤ3は、接着パッド4へのセンサユニット2の取り付けの前または後に、医療機器の電子機器回路に接続することができる。接着パッド4は、断熱材23と同じ材料から製造され、例えば3M社の公知の技術と同様に、皮膚に適合する接着層を有する。
【0047】
熱接着パッド4の材料の熱伝導率λは、空気の熱伝導率(λair=0.024W/m/K)程度、すなわち0.01W/m/K~0.1W/m/Kであるべきである。
【0048】
センサユニット2を携帯型コンピュータシステム0のハウジング1内に可能な限り容易に導入するために、以下の方法が使用される。
【0049】
好ましい製造および統合の方法
図6に、携帯型コンピュータシステム0のハウジング1にセンサユニット2を統合する方法を示す。センサユニット2は、プリント回路基板22の縁部が貫通孔12を塞ぐようにハウジング1内の貫通孔12を覆うために使用される。ここで、熱流センサ20や温度センサ21などの電子部品は、貫通孔12の高さで位置決めされるか、または貫通孔12内に突出する。プリント回路基板22は、接着剤によってハウジング1の壁に接合することができる。貫通孔12をプリント回路基板22で覆った結果として、次のステップで、貫通孔12を、センサ・ユニット・スリーブ28を形成するように、例えばシリコーン塊で充填することができる。ここで、図6bの充填は、センサ・ユニット・スリーブ28の一部が皮膚接触面10の方向に貫通孔12から突出するように実施される。プリント回路基板22の位置決めは矢印で示すように実行される。センサユニット2は、上述したように実施されるが、プリント回路基板22が適所に固定された後に初めてセンサ・ユニット・スリーブ28と嵌合される。貫通孔12は、ハウジング1の内部11の方向から充填される。
【0050】
プリント回路基板22から電子機器回路(図示せず)までの接続ワイヤ3は、鋳造または充填プロセスの前に、または空洞12が充填された後で初めて接続することができる。
【0051】
加速された熱伝導を得ると共に、環境と身体との間の平衡を維持するために、ハウジング1の内部11を横断し、ハウジング1の外部と接する金属棒Mが、内部11の方向を指して、熱流センサ20の高さで、身体と反対を向いたプリント回路基板22の側に取り付けられる。実施形態に応じて、この金属棒Mはその側壁を断熱することもできる。
【0052】
図7aから図7cに記載されている別の製造方法を使用することも可能である。センサユニット2の製造後、センサユニット2は鋳型5に配置され、接続ワイヤ3が鋳型5から突出する。鋳型5の壁は金属またはプラスチック材料のどちらかで作ることができる。
【0053】
次のステップで、鋳型5は、後でセンサ・ユニット・スリーブ28を形成する材料で充填される。センサユニット2は四方を材料で囲まれるので、プリント回路基板22およびすべての構成要素がセンサ・ユニット・スリーブ28で囲まれる。硬化後、囲まれたセンサユニット2を、携帯型コンピュータシステム0のハウジング1内の空洞12、13内に配置し、取り外し可能に保持されるようにその中に押し込むことができる。センサ・ユニット・スリーブ28の十分な熱伝導性を有する材料は、空洞12、13の壁と密着し、それが意図せずに滑り落ちるのを防止する。センサ・ユニット・スリーブ28に埋め込まれたセンサユニット2は栓を形成し、これが空洞12、13内に留まる。
【0054】
保持力を向上させるために、適切な接着剤を使用することができ、接着剤は、センサ・ユニット・スリーブ28に包み込まれたセンサユニット2が押し込まれる前に空洞12、13の壁全体に分配される。これに対応して、取り外し不能な接続もまた達成することができる。
【0055】
ここで使用される鋳型5は、任意選択で一回鋳型として使用することもでき、センサユニット2に接続されたままとすることもでき、またはセンサユニット2がハウジング1内の空洞12に実装される前に取り外すこともできる。
【0056】
実際には、センサユニット2が皮膚H上に配置されると、少なくとも1つの熱流センサ20、20’および少なくとも1つの温度センサ21、21’からの測定値が記録され、そこから様々なアルゴリズムを使用して深部体温を決定することができる。可能な限り最も正確な決定には較正測定が必要であり、使用される材料の種類および厚さが知られていなければならない。深部体温の決定において有用な結果をもたらす、複数の可能なアルゴリズムが公知の技術である。
【0057】
センサユニット2は好ましくは、センサ・ユニット・スリーブ28がハウジング1の壁から離れてハウジング1から突出するように部分的に配置されるように、センサ・ユニット・スリーブ28内に挿入される。センサユニット2、またはより詳細にはセンサ20、21の熱結合は次いで、しかるべく最適化される。
【0058】
センサ・ユニット・スリーブ28は、熱伝導材料で充填された、例えばPVC製のスリーブまたはシリンダとすることができる。このシリンダはまた、熱経路をよりよく画定するように、断熱材料(発泡体)で作ることもできる。
【0059】
一変形形態では、センサユニット2は、互いに分離された複数のプリント回路基板22を有することができ、その上に温度センサ21、21’および熱流センサ20、20’および/または他の電子部品を互いに分離して配置することができる。その場合、すべてのプリント回路基板22は、少なくとも1つのセンサ・ユニット・スリーブ28によって少なくとも部分的に囲まれているべきである。温度センサ21、21’として赤外線センサが使用される場合、それはセンサ・ユニット・スリーブ28によって囲まれてはならない。
【符号の説明】
【0060】
0 携帯型コンピュータシステム
1 ハウジング
10 皮膚接触面
11 内部
12 空洞/貫通孔
13 空洞/止まり穴
2 センサユニット
20、20’ 熱流センサ(少なくとも1つ)
21、21’ 温度センサ(少なくとも1つ)
22 プリント回路基板、PCB
23 断熱材
24 熱キャパシタンス
25 アナログ・デジタル変換器
26 マイクロコントローラ
27 読み出し/記憶ユニット
28 センサ・ユニット・スリーブ
29 パッケージ化された、統合スイッチング回路
30 金属板
A 空洞
3 接続ケーブル(電子機器回路へ)
4 接着パッド(皮膚に取り付けられる)
5 鋳型
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c