IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブの特許一覧

<>
  • 特許-時計構成部品 図1
  • 特許-時計構成部品 図2
  • 特許-時計構成部品 図3
  • 特許-時計構成部品 図4
  • 特許-時計構成部品 図5
  • 特許-時計構成部品 図6
  • 特許-時計構成部品 図7
  • 特許-時計構成部品 図8
  • 特許-時計構成部品 図9
  • 特許-時計構成部品 図10-11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】時計構成部品
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/04 20060101AFI20220720BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G04B19/04 Z
G04B45/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019550812
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 IB2018051398
(87)【国際公開番号】W WO2018167599
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】17161386.2
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ル ギャル エリク
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-73063(JP,U)
【文献】特開平5-184418(JP,A)
【文献】米国特許第5896757(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
A44C 17/02 - 17/04
A44C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの貴石又は非貴石(7,7’)を受けるための少なくとも1つのハウジング(6)を備え、前記ハウジング(6)が、設定端部(61)と呼ばれる少なくとも1つの第1の端部(61)とレール(8)とを有する、時計用針(1)であって、
前記レール(8)が前記ハウジング(6)の周縁にわたっており、該レール(8)は、前記ハウジング(6)の第1の端部(61)にて前記レール(8)に1又は複数の前記貴石又は非貴石(7,7’)を挿入できるように構成され、前記1又は複数の貴石又は非貴石(7,7’)が、前記ハウジング(6)の長手方向軸線に沿って前記レール(8)内を滑動することができ、前記ハウジング(6)の長手方向軸線に垂直な方向で前記レール(8)に挿入されると前記貴石又は非貴石(7,7’)を保持するようにする、ことを特徴とする時計用針(1)。
【請求項2】
前記ハウジング(6)の第1の端部(61)に配置され、前記レール(8)に挿入された前記貴石又は非貴石(7,7’)が前記ハウジング(6)の第1の端部(61)を通って放出されるのが妨げられない第1の位置と、前記レール(8)に挿入された前記貴石又は非貴石(7,7’)が前記レール(8)及び前記ハウジング(6)から放出されるのが妨げられる第2の位置との間で変形可能に構成される設定要素(9)を更に備える、ことを特徴とする、請求項1に記載の時計用針(1)。
【請求項3】
前記ハウジング(6)は貫通している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の時計用針(1)。
【請求項4】
前記レール(8)は、前記ハウジング(6)の周縁全体にわたって連続している上側レール(81)と、前記ハウジング(6)の周縁全体にわたって隙間(84)と交互するタブ(83)から形成される下側レール(82)とを含み、前記上側レール(81)と前記下側レール(82)との間で前記レール(8)内に前記貴石又は非貴石(7,7’)を挿入できるようにするために、前記ハウジング(6)の第1の端部(61)にはタブ(38)が存在しない、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の時計用針(1)。
【請求項5】
前記ハウジング(6)が、バゲットの形態で少なくとも1つの貴石又は非貴石(7,7’)を受けることを意図している、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の時計用針(1)。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の時計用針を備えた時計。
【請求項7】
請求項2~6の何れか一項に記載の時計用針において、少なくとも1つの貴石又は非貴石(7,7’)を設定する方法であって、
(a)前記ハウジング(6)の第1の端部(61)を通じて前記レール(8)に前記貴石又は非貴石(7,7’)を1つずつ挿入するステップと、
(b)前記貴石又は非貴石(7,7’)をそれらの最終位置と同程度まで前記レール(8)にて滑動させるステップと、
(c)前記設定要素(9)を変形させて、前記貴石又は非貴石(7,7’)が前記レール(8)から放出されるのが妨げられる第2の位置に至るようにするステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの貴石又は非貴石を設定することができる時計構成部品に関する。本発明は特に、時計針に関する。
【背景技術】
【0002】
時計針は、一般に、細く壊れやすい要素である。時計針を装飾するため、又はより見やすくするために、発光塗料を用いて時計針の凹部を覆う又は充填すること、或いは、針に貴石又は非貴石を設定することは知られている。しかしながら、時計針と同程度脆い構成部品上に石を設定する従来的な方法は、石の形状(CH3457号に概略的に示されたようにファセット又は平坦)に関係なく、時計針を変形させる大きなリスクがある。
【0003】
欧州特許第0 574 360号明細書には、貴石又は非貴石を受ける少なくとも1つのハウジングと、針の長手方向軸線に沿ってハウジングの両側で延びる2つのストリップの形状を有し、且つ石をハウジング内部に保持する締結手段とを備えた時計針が記載されている。これらのストリップは、ハウジング内に石を設定するために展性を有する必要がある。従来の設定と同様に、石を十分に固定するためにこれらのストリップを変形させることにより、時計針の変形を引き起こす可能性がある。加えて、本明細書において、上記締結ストリップは、針の平面に非平行な別個の平面内にあり、これは、上記針の高さ及び容積を増大させ、針の全体外観を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】スイス国特許3457号明細書
【文献】欧州特許第0574360号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、貴石又は非貴石を設定することができ、これにより上記石の設定を容易且つ確実にでき、また設定中の構成部品の変形を制限しながら見た目を魅力的にすることができる、時計構成部品、特に時計針を製作することを目的とする。
【0006】
本発明は、請求項1にて特許請求された時計構成部品、上記時計構成部品を備えた時計、並びに上記時計構成部品に貴石又は非貴石を設定する方法に関する。
【0007】
添付図面は、本発明の1つの実施形態を例証している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】上方からの斜視図で見た本発明による長針を示す図である。
図2】下方からの斜視図で見た本発明による長針を示す図である。
図3】石を設定する前の図1の針の上方から見た図である。
図4】石を設定する前の図1の針の下方から見た図である。
図5図4の針の先端の詳細図である。
図6図3の針の軸A-Aに沿った断面図である。
図7】ハウジングに石が設定されたときの図1の針の上方から見た図である。
図8】ハウジングに石が設定されたときの図1の針の下方から見た図である。
図9図7の針の軸C-Cに沿った断面図である。
図10図8の針の軸C-Cに沿った断面図である。
図11図10の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面に例示された実施形態において、本発明による時計構成部品は、時計ムーブメントを装着するための針1、詳細には長針である。針1は、ヘッド2が先端4で終端するプレート3によって形成された主本体に接続される従来手法で形成される。バレル5は、ムーブメントの分用筒かな上に針1を固定するためヘッド2を貫通している。
【0010】
本発明によれば、針1は、プレート3において少なくとも1つの貴石又は非貴石7,7’を受けるための少なくとも1つのハウジング6を備える。好ましくは、ハウジング6は、貫通しており、すなわち、ベース部を有していない。例示の実施形態において、ハウジング6は、バゲット形状、詳細にはバゲットダイアモンド形状を有する4つの貴石7,7’を受けるような形状にされ、針1の先端4と同程度まで延びている。上記ハウジング6は、詳細には、設定端部61と呼ばれる第1の端部と、先端部62と呼ばれる第2の端部とを備える。
【0011】
ハウジング6は、周縁全体にわたってレール8を有する。一般に、レール8は、石7,7’を該レール8に挿入し且つハウジング6の長手方向軸線に沿って滑動できるようにし、少なくとも最終設定位置にあるときに、ハウジングの長手方向軸に垂直な2つの方向で石7,7’を保持するような形状にされる。
【0012】
図面に例示された実施形態において、レール8は、針1を上方から見たときに可視となり、ハウジング6の周縁全体にわたって連続的な上側レール81を備える(特に図1、3、7を参照)。下側レール82は、上側レール81を補完する。下側レール82は、非連続であり、すなわち、図4で例示されるように、隙間84によって離隔される複数のタブ83から形成される。タブ83は、ハウジング6の周縁にわたって分散配置され、最終設定位置にある(図8、10及び11を参照)ときに4つの石7,7’の各々を保持することを可能にし、また、設定の際にレール8に石7,7’を挿入することを可能にする。このため、図4、6及び8に例示されるように、ハウジング6の設定端部61にはタブ83は存在せず、設定の際にレール8に挿入を可能にするため石7,7’の傾動を可能にする。
【0013】
例示された実施形態において、ヘッドの先端4に一致するような尖鋭の形状を有するハウジング6の先端部62における隙間84’は、好ましくは、先端石7’の好適な位置付けを可能にするような特定の形状を有し、その特定のファセットが、針1の先端4の形状に従って切削されている。
【0014】
最後に、針1は更に、ハウジング6の設定端部61にてプレート3上に配置された設定スタブ9を備える。設定スタブ9は、変形可能であり、変形後、石が最終位置に設定されるとハウジング6内で石7,7’を封鎖することができる。図9は、最終設定位置にある石と変形前の設定スタブ9とを例示しており、設定スタブ9が最後の石の上に折り重ねられると、移動方向(ハウジング6の長手方向軸線に平行又は垂直)に関係なく、レール8内で上記石7が移動することはもはや不可能である。
【0015】
針1における石7,7’の設定について、以下で詳細に記載する。
【0016】
好ましくは、針1は、針1の形状で凹部を含む取付具に表を下にして配置されて、上記ハウジング6が本実施形態では貫通していることに起因して、針1及びハウジング6の「引き裂き」を回避するようにする。
【0017】
例示された実施形態において、4つの石7,7’は、バゲットダイアモンドであり、これらの1つは、針1の先端4の形状と一致するような尖鋭端部を有する。
【0018】
石7,7’は、端部石7’から始めて、ハウジング6の設定端部61を通じてレール8に1つずつ挿入される。上記設定端部61は、レール8の下側レール82上にタブ83を備えていないので、傾動することによって各石7,7’を上側レール81と下側レール82の間に挿入することが可能である。
【0019】
石7,7’の各々は、最終位置までレール8内を滑動する。全ての石7,7’がそれらの最終位置にあると、設定スタブ9が変形して最後の石の上に折り返されて、ハウジング6の長手方向軸線に垂直な方向で封鎖し、また、上記長手方向軸線に平行な方向で全ての石7,7’を封鎖する。従って、石7,7’は、レール8内をもはや滑動せず、ハウジング6の設定端部61を通ってレール8の外に傾くこともできない。
【0020】
ハウジング6内で石7,7’を確実に封鎖するのに必要な設定スタッドの変形は最小限に過ぎず、針1に対して作用する僅かな力だけが発生し、これにより針1が全体として変形するリスクが回避される。
【0021】
好ましくは、中央の石10は依然として、針1のバレル5において従来方式で設定される。その場合、装備することが意図された時計ムーブメントの分用筒かな上に針1を適切に挿入するのを確実にするためには、上記針1のバレル5は更に、好ましくは2つのスロット51を備える。これらのスロット51は、中央の石10の設定後でも、分用筒かなの調整のためバレル5を方形にすることができる。
【0022】
これにより、完璧な外観(図1及び7を参照、上方から可視である上側レール81が連続であり、これにより針が時計ムーブメント上で最終位置に装着されたときに、針の下面上に配置された設定スタブ9が隠れている)を維持しながらも、1又は2以上の貴石又は非貴石を容易且つ確実に設定することができる時計構成部品が製作される。加えて、上記構成部品の変形を生じる可能性がある設定中の構成部品に作用する力は、大幅に低減することができ、そのサイズを大きく縮小できる単一の要素(スタッド)だけが変形する必要がある。設定は、更に大幅に容易になる(特に時間が節減される)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-11】