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特許7107979連携サーバプログラム、事業者サーバプログラム、及びデータ連携システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】連携サーバプログラム、事業者サーバプログラム、及びデータ連携システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/62 20130101AFI20220720BHJP
【FI】
G06F21/62 354
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020010110
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021117679
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】593022629
【氏名又は名称】株式会社ジェーシービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】間下 公照
(72)【発明者】
【氏名】南井 享
【審査官】平井 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-318391(JP,A)
【文献】国際公開第2008/102754(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/00-88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客に関する顧客データを管理する複数の事業者サーバと通信可能な連携サーバに、
前記複数の事業者サーバから、それぞれが管理する顧客データを匿名化した匿名化顧客データと、前記複数の事業者サーバ間でそれぞれが管理する顧客データ同士を結合させるためのキーとする前記顧客データのキーデータ項目のデータに基づいて算出されたハッシュ値を示すハッシュデータと、を取得する連携取得部と、
前記複数の事業者サーバからそれぞれ取得した前記ハッシュ値をキーにして、複数の前記事業者サーバからそれぞれ取得した匿名化顧客データ同士を結合して、結合匿名化顧客データを生成する結合部と、
前記結合匿名化顧客データを、前記事業者サーバ及びその他の外部の装置の少なくともいずれか一つに提供する連携提供部と
前記結合匿名化顧客データが有するデータ項目の組み合わせのうち、顧客個人を特定可能なデータ項目の組み合わせを抽出する組み合わせ抽出部と、
前記抽出されたデータ項目の組み合わせを匿名加工して前記結合匿名化顧客データを更新する追加匿名加工部と、を実現させる、
連携サーバプログラム。
【請求項2】
所定の期間、前記結合匿名化顧客データを蓄積顧客データ記憶部に蓄積する蓄積部と、
前記蓄積顧客データ記憶部に蓄積された結合匿名化顧客データに基づいて、顧客の特性を類型化する類型化部と、をさらに備え、
前記連携提供部は、前記類型化の結果を示す類型情報を、前記事業者サーバ及びその他の外部装置の少なくともいずれか一つに提供する、
請求項に記載の連携サーバプログラム。
【請求項3】
前記連携取得部は、前記事業者サーバに対して当該事業者サーバが管理する前記顧客データの第三者への提供可否を含む同意情報の参照を指示し、当該参照の結果前記事業者サーバから前記連携サーバに前記顧客データが提供可能な場合、前記事業者サーバから前記顧客データを取得し、
前記結合部は、結合対象の顧客データ同士の前記キーデータ項目のデータをキーにして、複数の事業者サーバからそれぞれ取得した前記顧客データ同士を結合して、結合顧客データを生成する、
請求項に記載の連携サーバプログラム。
【請求項4】
前記類型情報に基づいて、前記結合顧客データにより特定される顧客を前記類型化の結果である類型ごとに分類する分類部と、
前記分類の結果に基づいて、前記顧客の特性を予測する予測部と、をさらに実現させる、
前記連携提供部は、前記予測の結果を示す予測情報を、前記事業者サーバ及びその他の外部装置の少なくともいずれか一つに提供する、
請求項に記載の連携サーバプログラム。
【請求項5】
前記事業者サーバに対して、それぞれが管理する顧客データのデータ項目の参照を指示する参照部と、
前記参照の結果に基づいて、結合対象の顧客データ同士がそれぞれ有するデータ項目を比較して前記キーデータ項目をそれぞれ決定し、当該決定したキーデータ項目を示すキー情報を前記事業者サーバに提供するキー決定部と、をさらに実現させる、
請求項1からのいずれか一項に記載の連携サーバプログラム。
【請求項6】
顧客に関する顧客データを管理する複数の事業者サーバと、前記複数の事業者サーバと通信可能な連携サーバと、を有するデータ連携システムであって、
前記事業者サーバは、
前記顧客データが有するデータ項目のうち、異なる前記事業者サーバとの間で顧客データ同士を結合させるためのキーとなるキーデータ項目を示すキー情報を記憶するキー記憶部を参照して、前記顧客データの前記キーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出するハッシュ算出部と、
前記顧客データを匿名化した匿名化顧客データを記憶する顧客データ記憶部と、を備え、
前記連携サーバは、
複数の前記事業者サーバから、それぞれの前記匿名化顧客データ及び前記ハッシュ値を取得する連携取得部と、
複数の前記事業者サーバからそれぞれ取得した前記ハッシュ値をキーにして、複数の前記事業者サーバからそれぞれ取得した匿名化顧客データ同士を結合して、結合匿名化顧客データを生成する結合部と、
前記結合匿名化顧客データを、前記事業者サーバ及びその他の外部の装置の少なくともいずれか一つに提供する連携提供部と、
前記結合匿名化顧客データが有するデータ項目の組み合わせのうち、顧客個人を特定可能なデータ項目の組み合わせを抽出する組み合わせ抽出部と、
前記抽出されたデータ項目の組み合わせを匿名加工して前記結合匿名化顧客データを更新する追加匿名加工部と、を備える、
データ連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連携サーバプログラム、事業者サーバプログラム、及びデータ連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるビックデータを利活用するサービスが多く存在する。このようなサービスの提供にあたっては、多種多様なデータを大量に収集し、収集した大量のデータを掛け合わせてビックデータを実現する。しかしながら、異なる事業者から個人情報等の顧客に関するデータを収集する際には、顧客本人から同意を得る、又は顧客個人を特定できないような状態(例えば、匿名化等)にする必要がある。下記特許文献1には、一般利用者用のヘルスケアシステムと企業用のヘルスケアシステムから、一般利用者や従業員のヘルスケアデータを匿名化した匿名化ヘルスケアデータを取得して集計し、集計したデータを企業用のヘルスケアシステムに送信する健康情報総合管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-105913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された上記システムでは、一般利用者を識別する一般利用者識別データと従業員を識別する従業員識別データとが予め対応付けられていることにより、同一人物における一般利用者としての匿名化ヘルスケアデータと従業員としての匿名化ヘルスケアデータとを掛け合わせることができる。このため、上記システムでは、予めこのように対応付けされていなければ、同一人物において匿名化されたデータ同士を対応付けることができないという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、異なる事業者間において同一人物におけるデータの対応付けが予めなくとも、同一人物において匿名化されたデータ同士を対応付けることができる連携サーバプログラム、事業者サーバプログラム、及びデータ連携システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る連携サーバプログラムは、顧客に関する顧客データを管理する複数の事業者サーバと通信可能な連携サーバに、複数の事業者サーバから、それぞれが管理する顧客データを匿名化した匿名化顧客データと、複数の事業者サーバ間でそれぞれが管理する顧客データ同士を結合させるためのキーとする顧客データのキーデータ項目のデータに基づいて算出されたハッシュ値を示すハッシュデータと、を取得する連携取得部と、複数の事業者サーバからそれぞれ取得したハッシュ値をキーにして、複数の事業者サーバからそれぞれ取得した匿名化顧客データ同士を結合して、結合匿名化顧客データを生成する結合部と、結合匿名化顧客データを、事業者サーバ及びその他の外部の装置の少なくともいずれか一つに提供する連携提供部と、を実現させる。
【0007】
本発明の一態様に係る事業者サーバプログラムは、複数の顧客に関する顧客データ同士を結合させる連携サーバと通信可能な顧客データを管理する複数の事業者サーバに、顧客データが有するデータ項目のうち、異なる事業者サーバとの間で顧客データ同士を結合させるためのキーとなるキーデータ項目を示すキー情報を記憶するキー記憶部を参照して、顧客データのキーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出するハッシュ算出部と、顧客データを匿名化した匿名化顧客データを記憶する顧客データ記憶部と、ハッシュ値を示すハッシュデータと匿名化顧客データとを、異なる事業者サーバとの間で匿名化顧客データ同士を結合させるために連携サーバに提供する事業者提供部と、連携サーバから、当該連携サーバで匿名化顧客データ同士を結合して生成された結合匿名化顧客データを取得する事業者取得部と、を実現させる。
【0008】
本発明の一態様に係るデータ連携システムは、顧客に関する顧客データを管理する複数の事業者サーバと、複数の事業者サーバと通信可能な連携サーバと、を有するデータ連携システムであって、事業者サーバは、顧客データが有するデータ項目のうち、異なる事業者サーバとの間で顧客データ同士を結合させるためのキーとなるキーデータ項目を示すキー情報を記憶するキー記憶部を参照して、顧客データのキーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出するハッシュ算出部と、顧客データを匿名化した匿名化顧客データを記憶する顧客データ記憶部と、を備え、連携サーバは、複数の事業者サーバから、それぞれの匿名化顧客データ及びハッシュ値を取得する連携取得部と、複数の事業者サーバからそれぞれ取得したハッシュ値をキーにして、複数の事業者サーバからそれぞれ取得した匿名化顧客データ同士を結合して、結合匿名化顧客データを生成する結合部と、結合匿名化顧客データを、事業者サーバ及びその他の外部の装置の少なくともいずれか一つに提供する連携提供部と、を備える。
【0009】
上記の態様によれば、連携サーバは、複数の事業者サーバからそれぞれ匿名化された顧客データと異なる事業者サーバとの間で顧客データ同士を結合するために算出されたハッシュ値を取得することができる。そして、上記の態様によれば、連携サーバは、この取得したハッシュ値を結合キーにして匿名化された顧客データ同士を対応付けて結合することができる。さらに、上記の態様によれば、事業者サーバは、この結合された顧客データを取得することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なる事業者間において同一人物におけるデータの対応付けが予めなくとも、同一人物において匿名化されたデータ同士を対応付けることができる連携サーバプログラム、事業者サーバプログラム、及びデータ連携システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るデータ連携システムのシステム構成例を説明するための図である。
図2】第1実施形態に係るデータ連携システムの概要の一例を説明するための図である。
図3】第1実施形態に係る事業者サーバの機能構成の一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る連携サーバの機能構成の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係るデータ連携システムの動作例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る事業者サーバ及び連携サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】第2実施形態に係るデータ連携システムの概要の一例を説明するための図である。
図8】第2実施形態に係る連携サーバの機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0013】
本発明において、「部」や「手段」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【0014】
また、本実施形態のプログラムは、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリ等の各種の記憶媒体を通じて、又は通信ネットワーク等を介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【0015】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、複数の事業者それぞれが使用するサーバ(以下、「事業者サーバ」という)から匿名化された顧客データを収集し、それらを結合して複数の事業者の顧客データを連携させたいわゆるビックデータを提供する例を用いて説明するがこれに限る趣旨ではない。
【0016】
「顧客データ」とは、顧客に関する種々のデータが該当する。顧客データは、例えば、顧客を識別するための顧客識別情報、顧客の氏名、電話番号、住所、メールアドレス、個人番号(マイナンバー)、性別又は生年月日等の顧客のいわゆる個人情報を含んでもよい。また、顧客データは、例えば、顧客の免許証番号、カード番号、顧客が保有する口座の口座情報(例えば、口座種別、口座番号、名義等)、顧客が使用する端末装置のデバイス情報(例えば、MACアドレス、IPアドレス、製造番号等)を含んでもよい。また、顧客データは、例えば、ユーザの生体的特徴に関する生体情報(例えば、ユーザの顔画像データ、指紋情報、眼球の虹彩情報又は声紋情報等)を含んでもよい。また、顧客データは、例えば、位置情報(例えば、GPSデータ等)、Web履歴情報(例えば、閲覧履歴、検索履歴、Cookie情報等)、又はECサイトでの商品の購入履歴情報等を含んでもよい。
【0017】
<1.システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係るデータ連携システム1のシステム構成例を説明する。
【0018】
データ連携システム1は、相互に顧客データを連携させたい複数の事業者に対して、それぞれの事業者が管理する顧客データを結合させたいわゆるビックデータをこれらの事業者に提供するためのシステムである。図1に示すように、データ連携システム1は、第1事業者が使用する第1事業者サーバ100aと、第2事業者が使用する第2事業者サーバ100bと、連携サーバ200とを含む。なお、第1事業者サーバ100aと、第2事業者サーバ100bとは、特に区別の必要が無い場合は、総称して「事業者サーバ100」という。
【0019】
連携サーバ200は、第1事業者サーバ100aと第2事業者サーバ100bとの間でそれぞれの顧客データの連携を行うため、ネットワークNを介して、第1事業者サーバ100aと第2事業者サーバ100bとに通信可能に接続されている。また、連携サーバ200は、例えば、ネットワークNを介して、その他の外部の装置と通信可能に接続されてもよい。
【0020】
ネットワークNは、無線ネットワークや有線ネットワークにより構成される。ネットワークの一例としては、携帯電話網や、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN(Local Area Network)、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、WiMax(登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、有線LAN、電話線、電灯線ネットワーク、IEEE1394等に準拠したネットワークがある。
【0021】
事業者サーバ100は、事業者の顧客に関する顧客データを管理するためのサーバ装置である。事業者サーバ100は、事業者サーバプログラム等の所定のプログラムを実行することにより、顧客データ及び顧客データに関する情報等を管理するサーバ機能を実現する。なお、この所定のプログラムは、例えば、事業者サーバ100にインストールされたデータ連携システム1専用のアプリケーションプログラムであってもよい。事業者サーバ100は、例えば、顧客データを所定の形式に合わせるよう正規化する等のいわゆるデータクレンジングを行ったり、顧客データからハッシュ値を算出したり、顧客データを匿名加工したりする。事業者サーバ100は、図1において、説明を簡単にするために事業者ごとに1台のみ図示しているが、複数台設けてもよい。
【0022】
連携サーバ200は、第1事業者と第2事業者に対して、それぞれの顧客データを連携させるサービス(以下、「データ連携サービス」という)を提供するためのサーバ装置である。換言すれば、連携サーバ200は、第1事業者と第2事業者との間で顧客データを連携するための基盤(以下、「連携基盤」ともいう)でもある。連携サーバ200は、連携サーバプログラム等の所定のプログラムを実行することにより、複数の事業者サーバ100から匿名化顧客データを取得して、取得したこれらのデータを結合して事業者サーバ100に提供するサーバ機能を実現する。なお、この所定のプログラムは、例えば、連携サーバ200にインストールされたデータ連携システム1専用のアプリケーションプログラムであってもよい。なお、連携サーバ200は、データ連携システム1専用のハードウェアやOS等(例えば、オンプレミス型のサーバ構成)を設けてもよいし、クラウドサーバによるSaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を適宜用いてもよい。ここで「匿名化顧客データ」とは、匿名化された顧客データをいう。匿名化顧客データの詳細は、後述する。
【0023】
<2.概要>
図2を参照して、データ連携システム1の概要の一例を説明する。なお、本例では、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bからそれぞれが管理する顧客データを匿名化した匿名化顧客データを取得して結合し、結合した匿名化顧客データをこれらの事業者サーバ100に提供する例を用いて説明するが、これに限る趣旨ではない。例えば、顧客データの取得元の事業者サーバ100は三つ以上あってもよいし、また、結合した匿名化顧客データの提供先は取得元の事業者サーバ100のいずれか一つであってもよいし、その他の外部の装置であってもよい。
【0024】
(1)図2に示すように、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bのデータクレンジング部111は、データクレンジングとして、全角と半角の違いや、空白文字や区切り記号の有無等の表記の揺れを解消するよう、それぞれ顧客データに対する書式合わせを行う。これらの事業者サーバ100のデータクレンジング部111は、この書式合わせを行った顧客データを正規化顧客データとして記憶部120に記憶する。ここで「正規化顧客データ」とは、異なる事業者間でそれぞれの顧客データ同士を結合させるためにデータクレンジングが行われた顧客データである。
【0025】
(2)第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bのハッシュ算出部112は、それぞれキー情報を記憶する後述の連携サーバ200のキー記憶部231を参照して、正規化顧客データのキーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出する。ここで「キー情報」とは、顧客データが有するデータ項目のうち、異なる事業者サーバ100間で顧客データ同士を結合させるためのキー(いわゆる結合キー)となるキーデータ項目を示す情報である。キーデータ項目は、例えば、顧客データが有する、顧客の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、電話番号、個人番号、免許証番号、カード番号、口座情報、デバイス情報等のいずれか一つのデータ項目であってもよいし、二つ以上のデータ項目の順列又は組み合わせでもよい。
【0026】
(3)第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bの匿名加工部114は、それぞれ自身が管理する顧客データに対して匿名加工を行って匿名化する。事業者サーバ100の匿名加工部114は、それぞれこの匿名化した顧客データを匿名化顧客データとして記憶部120に記憶する。
【0027】
(4)連携サーバ200の連携取得部211は、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bそれぞれから、事業者サーバ100の事業者提供部115から提供される匿名化顧客データとハッシュ値を示すハッシュデータを取得する。
【0028】
(5)連携サーバ200の結合部212は、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bそれぞれから取得したハッシュ値をキーにして、それぞれから取得した匿名化顧客データ同士を結合する。(6)連携サーバ200の結合部212は、所定の期間、結合した匿名化顧客データを結合匿名化データとして蓄積顧客データ記憶部232に蓄積する。
【0029】
(7)連携サーバ200の類型化部219は、蓄積顧客データ記憶部232に蓄積された結合匿名化データに基づいて、顧客の特性を類型化する。(8)連携サーバ200の連携提供部213は、結合匿名化顧客データと上記類型化の結果を示す類型情報を第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bそれぞれに提供する。事業者サーバ100の事業者取得部116は、この提供された結合匿名化顧客データと類型情報とを取得する。
【0030】
上記構成によれば、データ連携システム1においては、顧客データの共通のデータ項目から算出したハッシュ値を結合キーとすることで、異なる事業者間において同一人物におけるデータの対応付けが予めなくとも、同一人物における匿名化されたデータ同士を対応付けることができる。また、事業者サーバ100は、それぞれの顧客データを結合させるために連携サーバ200に顧客データを提供する際に、顧客データから算出されたハッシュ値及び匿名化した匿名化顧客データを提供するため、特に個人情報の第三者提供に対する顧客からの同意がなくとも連携サーバ200に顧客データを提供することができる。
【0031】
<3.事業者サーバの機能構成>
図3を参照して、本実施形態に係る事業者サーバ100の機能構成を説明する。図3に示すように、事業者サーバ100は、制御部110と、記憶部120と、通信部130と、を備える。
【0032】
制御部110は、ハッシュ算出部112と、事業者提供部115と、事業者取得部116と、を備える。また、制御部110は、例えば、データクレンジング部111、抽出部113、又は匿名加工部114を備えてもよい。
【0033】
データクレンジング部111は、顧客データのキーデータ項目のデータに対して、データクレンジングを行う。データクレンジング部111におけるデータクレンジングは、後述のハッシュ算出部112においてキーデータ項目のデータからハッシュ値を算出する際に、実質的に同じデータであるにも関わらずデータの揺らぎ等により異なるハッシュ値が算出されてしまうことを抑止する。データクレンジング部111は、例えば、データクレンジングとして、顧客データ間のデータの揺らぎや不整合を抽出し、抽出した揺らぎや不整合を解消するよう顧客データを加工(例えば、データの修正又は正規化等)してもよい。データクレンジング部111は、例えば、所定の書式に基づき、これらのデータの揺らぎや不整合を抽出し、解消してもよい。
【0034】
ハッシュ算出部112は、キー情報を記憶する連携サーバ200のキー記憶部231を参照して、顧客データのキーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出する。ハッシュ算出部112は、このように算出したハッシュ値を示すハッシュデータを記憶部120に記憶してもよい。
【0035】
ハッシュ算出部112は、例えば、データクレンジングが行われたキーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出してもよい。このような構成によれば、ハッシュ算出部112は、顧客データを結合するためのキーとして、より精度よくハッシュ値を算出することができる。
【0036】
抽出部113は、顧客データが有するデータ項目のうち、顧客個人を特定可能なデータ項目を抽出する。抽出部113は、例えば、所定の抽出条件に合致するデータ項目を抽出してもよい。所定の抽出条件は、例えば、顧客個人を特定可能な顧客の氏名、個人番号、パスポート番号等のリストアップされたデータ項目を抽出させる条件でもよい。
【0037】
匿名加工部114は、抽出部113により抽出されたデータ項目のデータを匿名加工して匿名化顧客データを生成する。なお、匿名加工部114が匿名加工する対象は、顧客データであっても正規化顧客データであってもよい。匿名加工部114は、顧客データ記憶部121に生成された匿名化顧客データを記憶する。匿名加工部114は、例えば、項目削除若しくはセル削除、データの全部又は一部を抽象化、上位概念化若しくは数値による短縮化によって置き換える一般化、トップ(ボトム)コーディング、データ交換、又はノイズ(誤差)の付加等を対象のデータに施すことによって加工してもよい。
【0038】
上記構成によれば、匿名加工部114は、顧客個人を特定可能なデータ項目のみ匿名加工することができる。このため、上記構成によれば、匿名加工部114は、顧客データの匿名化に必要十分なデータ項目に限定して効率よく匿名加工することができる。
【0039】
事業者提供部115は、ハッシュ算出部112で算出されたハッシュ値を示すハッシュデータと匿名加工部114で匿名化された匿名化顧客データとを、異なる事業者サーバとの間で匿名化顧客データ同士を結合させるために連携サーバ200に提供する。事業者提供部115がハッシュデータと匿名化顧客データとを含む各種データ・各種情報を提供する態様は、どのような態様でもよく、後述の連携提供部213と同様である。
【0040】
事業者取得部116は、連携サーバ200から、連携サーバ200で匿名化顧客データ同士を結合して生成された結合匿名化顧客データを取得する。事業者取得部116が結合匿名化顧客データを含む各種情報を取得する態様は、どのような態様でもよく、後述の連携取得部211と同様である。
【0041】
記憶部120は、顧客データ及び顧客データの管理に関する情報を記憶する。また、記憶部120は、例えば、キー情報、ハッシュデータ、正規化顧客データ、匿名化顧客データ等を記憶してもよい。記憶部120は、データベースマネジメントシステム(DBMS)を利用して各情報を記憶してもよいし、ファイルシステムを利用して各情報を記憶してもよい。DBMSを利用する場合は、上記情報ごとにテーブルを設けて、当該テーブル間を関連付けて各情報を管理してもよい。
【0042】
記憶部120は、例えば、顧客データ記憶部121を備えてもよい。顧客データ記憶部121は、顧客データと、匿名化顧客データとを記憶する。また、顧客データ記憶部121は、例えば、正規化された顧客データを示す正規化顧客データを記憶してもよい。
【0043】
通信部130は、ネットワークNを介して、事業者サーバ100又はその他の外部システムの装置等と各種情報を送受信する。通信部130は、例えば、ネットワークNを介して、連携サーバ200に匿名化顧客データやハッシュデータを送信したり、連携サーバ200から結合匿名化顧客データや類型情報を受信したりする。
【0044】
<4.連携サーバの機能構成>
図4を参照して、本実施形態に係る連携サーバ200の機能構成を説明する。図4に示すように、連携サーバ200は、連携制御部210と、連携記憶部230と、連携通信部240と、を備える。
【0045】
連携制御部210は、連携取得部211と、結合部212と、連携提供部213とを備える。また、連携制御部210は、例えば、参照部214、キー決定部215、組み合わせ抽出部216、追加匿名加工部217、蓄積部218、又は類型化部219を備えてもよい。
【0046】
連携取得部211は、複数の事業者サーバ100から、それぞれが管理する顧客データを匿名化した匿名化顧客データと、それぞれが管理する顧客データ同士を結合させるためのキーとする顧客データのキーデータ項目のデータに基づいて算出されたハッシュ値を示すハッシュデータと、を取得する。連携取得部211が上記の匿名化顧客データ及びハッシュデータ等(以下、「匿名化顧客データ等」ともいう)を取得する態様は、どのような態様でもよく、例えば、事業者サーバ100から匿名化顧客データ等のデータファイルを受信してもよい。また、連携取得部211が匿名化顧客データ等を取得する態様は、他の例として、事業者サーバ100にリモートアクセスして匿名化顧客データ等のデータファイルを取得してもよいし、事業者サーバ100が実装するAPIに匿名化顧客データ等の参照を指示してその結果として匿名化顧客データ等を取得してもよい。
【0047】
結合部212は、複数の事業者サーバ100からそれぞれ取得したハッシュデータのハッシュ値をキーにして、複数の事業者サーバからそれぞれ取得した匿名化顧客データ同士を結合する。結合部212は、結合した匿名化顧客データから結合匿名化顧客データを生成する。
【0048】
連携提供部213は、結合匿名化顧客データを、事業者サーバ100及びその他の外部の装置の少なくともいずれか一つに提供する。連携提供部213が結合匿名化顧客データを含む各種データ・各種情報を事業者サーバ100等に提供する態様は、どのような態様でもよく、例えば、各種データ・各種情報のデータファイルを事業者サーバ100等に送信してもよいし、各種データ・各種情報を事業者サーバ100等に参照させるためのAPIを実装してもよい。また、連携提供部213が各種データ・各種情報を提供する態様は、他の例として、連携提供部213が、各種データ・各種情報を示すWebサイトを生成して、連携通信部240を介して事業者サーバ100等に配信してもよい。事業者等は、事業者サーバ100等に配信されたこのWebサイトにより各種データ・各種情報を照会することができる。
【0049】
連携提供部213が各種データ・各種情報を提供する態様は、他の例として、事業者サーバ100等から連携サーバ200にリモートアクセスさせて、事業者サーバ100等に連携サーバ200が格納する各種データ・各種情報を取得させてもよい。この事業者サーバ100等から連携サーバ200へのリモートアクセスにあたっては、例えば、ネットワークN上に構築されたVPN(Virtual Private Network)を利用するものであってもよい。このVPNを利用する場合、事業者サーバ100等と連携サーバ200との通信は、VPN装置を介して通信させてもよい。また、事業者サーバ100等から連携サーバ200へのリモートアクセスにあたっては、例えば、TELNET等の通信プロトコル、もしくはSSH(Secure Shell)またはVNC(Virtual Network Computing)等のリモートアクセスツールをそれぞれ用いて実現してもよい。
【0050】
上記構成によれば、連携提供部213は、複数の事業者それぞれの匿名化顧客データを結合した結合匿名化データを、特に個人情報の第三者提供に対する顧客からの同意がなくともこれらの事業者に提供することができる。上記構成によれば、事業者は、他の事業者の匿名化顧客データを自身の顧客データと結合させた形で得ることができる。
【0051】
連携提供部213は、例えば、後述の類型化部219における類型化の結果を示す類型情報を、事業者サーバ100及びその他の外部装置の少なくともいずれか一つに提供してもよい。このような構成によれば、連携提供部213は、マーケティング活動に資する顧客の類型化の結果を各事業者に提供することができる。また、このような構成によれば、連携提供部213は、事業者自身が管理する顧客データから事業者自身の顧客の特性を事業者自身が予測するための分類モデル等として類型化の結果を提供することができる。
【0052】
参照部214は、事業者サーバ100に対して、それぞれが管理する顧客データのデータ項目の参照を指示する。参照部214は、事業者サーバ100から当該参照の結果として、それぞれが管理する顧客データのデータ項目を取得する。
【0053】
キー決定部215は、参照部214における上記参照の結果に基づいて、結合対象の顧客データ同士がそれぞれ有するデータ項目を比較してキーデータ項目をそれぞれ決定する。キー決定部215は、例えば、結合対象の顧客データのそれぞれのデータ項目を所定の順にソートして、それぞれのデータ項目を順に、データ項目名又はデータ項目名に加えてデータ型及び/若しくはデータのサイズを照合する。キー決定部215は、当該照合の結果、略一致(完全一致又は部分一致を含む)した項目をキーデータ項目に決定してもよい。キー決定部215は、当該決定したキーデータ項目を示すキー情報をキー記憶部231に記憶させる。
【0054】
上記構成によれば、データ連携システム1は、事業者側で顧客データのデータ構成に変更が生じても、変更したデータ構成に応じてキーデータ項目を決定することができる。
【0055】
組み合わせ抽出部216は、結合匿名化顧客データが有するデータ項目の組み合わせのうち、顧客個人を特定可能なデータ項目の組み合わせを抽出する。組み合わせ抽出部216は、例えば、予め設定した所定の組み合わせ条件に合致するデータ項目の組み合わせを抽出してもよい。
【0056】
「所定の組み合わせ条件」とは、顧客個人を特定可能なデータ項目の組み合わせか否かを判定するための条件である。所定の組み合わせ条件は、例えば、結合匿名化データにおいて、顧客の生年月日、性別、及び住所(住所の全部又は一部)の組み合わせを抽出するものであってもよい。具体的には、第1事業者の匿名化顧客データには、生年月日、性別及び住所のうち、生年月日のみ加工されていない状態で含まれ、一方第2事業者の匿名化顧客データにおいて生年月日、性別、及び住所のうち、性別及び住所が加工されていない状態で含まれている場合、第1事業者と第2事業者の匿名化顧客データを結合すると生年月日、性別、及び住所が加工されていない状態で組み合わされてしまう。生年月日、性別、及び住所はそれ単独では個人を特定できないものの組み合わせることで個人の特定につながる可能性があるとして、組み合わせ抽出部216が当該組み合わせを抽出する。
【0057】
追加匿名加工部217は、抽出されたデータ項目の組み合わせを匿名加工して結合匿名化顧客データを更新する。追加匿名加工部217は、例えば、上記の匿名加工部114と同様に、対象のデータに項目削除や一般化等を施すことによって加工してもよい。
【0058】
上記構成によれば、追加匿名加工部217は、異なる事業者間の匿名化顧客データを結合させた結果そのデータ項目の組み合わせにより顧客個人を特定可能になった場合でも、追加で匿名加工することで顧客個人の特定を抑止することができる。
【0059】
蓄積部218は、所定の期間、結合匿名化顧客データを蓄積顧客データ記憶部232に蓄積する。ここで「所定の期間」とは、結合匿名化顧客データを蓄積させる期間であり、例えば、半年、1年、10年等の期間を適宜用いればよい。
【0060】
類型化部219は、蓄積顧客データ記憶部232に蓄積された結合匿名化顧客データに基づいて、顧客の行動特性を類型化する。類型化部219は、当該類型化の結果を、類型情報として連携記憶部230に記憶する。
【0061】
類型化部219の類型化はどのような態様でもよい。類型化部219は、例えば、教師なし学習としてクラスタリング(例えば、k-means法など)、主成分分析、自己組織化マップ(Self Organization Map:SOM)等の手法を用いる分類モデルを構築して類型化してもよい。また、類型化部219は、他の例として、教師あり学習としてサポートベクターマシーン、ベイジアンフィルタ、決定木の構築のためのID3、ランダムフォレスト等の手法により学習させた分類モデルを構築して類型化してもよい。類型情報は、これら分類モデルであってもよい。換言すれば、類型情報は、例えば、顧客データに示された性別、年代、職業、趣向、健康状態、所得、性質、家族構成、所在(例えば、顧客データの位置情報により算出してもよい)、Webサイトへのアクセス履歴、商品の購入履歴等の属性のうち少なくとも一つを説明変数とし、目的変数として顧客の行動特性を含めた特性の傾向を求めてもよい。
【0062】
類型化部219は、具体的には、顧客データに示された、千葉県在住、45歳、独身、外資系ITベンダーに勤務する人物であり、輸入バイクや時計の価格比較サイトを巡回したWeb閲覧履歴があるという属性をもつ人物は、「中所得以上」「浪費家」「郊外在住」という特性の傾向を持つとして類型化してもよい。
【0063】
連携記憶部230は、匿名化顧客データ等の取得や結合匿名化顧客データの外部への提供に関する各種情報を記憶する。連携記憶部230は、例えば、匿名化顧客データ、ハッシュデータ、又は類型情報(後述の分類モデルを含む)等を記憶してもよい。連携記憶部230は、データベースマネジメントシステム(DBMS)を利用して各情報を記憶してもよいし、ファイルシステムを利用して各情報を記憶してもよい。DBMSを利用する場合は、上記情報ごとにテーブルを設けて、当該テーブル間を関連付けて各情報を管理してもよい。連携記憶部230は、例えば、キー記憶部231又は蓄積顧客データ記憶部232を備えてもよい。キー記憶部231は、キー情報を記憶する。蓄積顧客データ記憶部232は、所定の期間蓄積された結合匿名化顧客データを記憶する。
【0064】
連携通信部240は、ネットワークNを介して、事業者サーバ100、又はその他の外部の装置等に各種情報を送受信する。連携通信部240は、例えば、ネットワークNを介して、事業者サーバ100から匿名化顧客データやハッシュデータ等を受信したり、事業者サーバ100やその他の外部の装置に結合匿名化顧客データや類型情報等を送信したりする。
【0065】
<5.動作例>
図5を参照して、データ連携システム1の動作例を説明する。図5は、データ連携システム1において、連携サーバ200が事業者サーバ100のそれぞれの顧客データのデータ項目からキーデータ項目を決定し、連携サーバ200が決定したキーデータ項目のハッシュ値により匿名化顧客データを結合して事業者サーバ100に提供するまでの処理の流れを示すフロー図である。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0066】
図5に示すように、連携サーバ200の参照部214は、第1事業者サーバ100aと第2事業者サーバ100bに対して、それぞれが管理する顧客データのデータ項目の参照を指示する(S10)。第1事業者サーバ100aは、連携サーバ200から顧客データのデータ項目の参照の指示を受けると、顧客データ記憶部121に記憶する第1事業者の顧客に関する顧客データのデータ項目を参照する(S11)。第2事業者サーバ100bは、連携サーバ200から顧客データのデータ項目の参照の指示を受けると、顧客データ記憶部121に記憶する第2事業者の顧客に関する顧客データのデータ項目を参照する(S12)。第1事業者サーバ100aは、上記参照の結果を連携サーバ200に送信する(S13)。第2事業者サーバ100bは、上記参照の結果を連携サーバ200に送信する(S14)。
【0067】
連携サーバ200のキー決定部215は、連携通信部240を介して第1事業者サーバ100aと第2事業者サーバ100bから上記参照の結果をそれぞれ受信すると、結合対象の第1事業者サーバ100aと第2事業者サーバ100bの顧客データ同士がそれぞれ有するデータ項目を比較してキーデータ項目をそれぞれ決定する。キー決定部215は、当該それぞれ決定したキーデータ項目を示すキー情報をキー記憶部231に記憶させる(S15)。
【0068】
連携サーバ200は、第1事業者サーバ100aと第2事業者サーバ100bにそれぞれ決定されたキーデータ項目を示すキー情報を送信する(S16)。
【0069】
第1事業者サーバ100aのデータクレンジング部111は、上記キー情報を受信すると、顧客データのキーデータ項目のデータに対して、データクレンジングを行う(S17)。ハッシュ算出部112は、データクレンジングが行われたキーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出する(S18)。抽出部113は、顧客データが有するデータ項目のうち、顧客個人を特定可能なデータ項目を抽出する(S19)。匿名加工部114は、抽出されたデータ項目のデータを匿名加工して匿名化顧客データを生成し、顧客データ記憶部121に当該生成された匿名化顧客データを記憶する(S20)。第1事業者サーバ100aは、生成された匿名化顧客データ及び算出されたハッシュ値を示すハッシュデータを連携サーバ200に送信する(S21)。
【0070】
第2事業者サーバ100bのデータクレンジング部111は、上記キー情報を受信すると、顧客データのキーデータ項目のデータに対して、データクレンジングを行う(S22)。ハッシュ算出部112は、データクレンジングが行われたキーデータ項目のデータに基づいて、ハッシュ値を算出する(S23)。抽出部113は、顧客データが有するデータ項目のうち、顧客個人を特定可能なデータ項目を抽出する(S24)。匿名加工部114は、抽出されたデータ項目のデータを匿名加工して匿名化顧客データを生成し、顧客データ記憶部121に当該生成された匿名化顧客データを記憶する(S25)。第2事業者サーバ100bは、生成された匿名化顧客データ及び算出されたハッシュ値を示すハッシュデータを連携サーバ200に送信する(S26)。
【0071】
連携サーバ200の連携取得部211は、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bから、それぞれの匿名化顧客データ及びハッシュデータを取得する(S27)。
【0072】
連携サーバ200の結合部212は、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bからそれぞれ取得したハッシュ値をキーにして、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bからそれぞれ取得した匿名化顧客データ同士を結合して、結合匿名化顧客データを生成する(S28)。
【0073】
連携サーバ200の組み合わせ抽出部216は、結合匿名化顧客データが有するデータ項目の組み合わせのうち、顧客個人を特定可能なデータ項目の組み合わせを抽出する(S29)。追加匿名加工部217は、抽出されたデータ項目の組み合わせを匿名加工して結合匿名化顧客データを更新する(S30)。
【0074】
連携サーバ200の連携提供部213は、結合匿名化顧客データを、第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bに提供する(S31)。
【0075】
<6.ハードウェア構成>
図6を参照して、上述してきた事業者サーバ100及び連携サーバ200をコンピュータ800により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0076】
図6に示すように、コンピュータ800は、プロセッサ801と、メモリ803と、記憶装置805と、入力I/F部807と、データI/F部809と、通信I/F部811、及び表示装置813を含む。
【0077】
プロセッサ801は、メモリ803に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ800における様々な処理を制御する。例えば、事業者サーバ100の制御部110及び連携サーバ200の連携制御部210が備える各機能部等は、メモリ803に一時記憶されたプログラムを、プロセッサ801が実行することにより実現可能である。
【0078】
メモリ803は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体である。メモリ803は、プロセッサ801によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0079】
記憶装置805は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。記憶装置805は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。この他、記憶装置805は、匿名化顧客データやハッシュデータ等の各種情報・各種データを登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じてメモリ803にロードされることにより、プロセッサ801から参照される。
【0080】
入力I/F部807は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F部807の具体例としては、キーボードやマウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイス等が挙げられる。入力I/F部807は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続されても良い。
【0081】
データI/F部809は、コンピュータ800の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F部809の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置等がある。データI/F部809は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F部809は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800へと接続される。
【0082】
通信I/F部811は、コンピュータ800の外部の装置と有線又は無線により、インターネットNを介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F部811は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F部811は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続される。
【0083】
表示装置813は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置813の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイ等が挙げられる。表示装置813は、コンピュータ800の外部に設けられても良い。その場合、表示装置813は、例えばディスプレイケーブル等を介してコンピュータ800に接続される。また、入力I/F部807としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置813は、入力I/F部807と一体化して構成することが可能である。
【0084】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、顧客本人の同意を得た上で、複数の事業者間で顧客データを結合し、結合された顧客データに対して第1実施形態で類型化した顧客の特性を当てはめて、顧客の特性を予測する形態である。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0085】
<1.概要>
図7を参照して、本実施形態に係るデータ連携システムの概要の一例を説明する。なお、本例では、本実施形態に係る第1事業者サーバ100a及び第2事業者サーバ100bからそれぞれ顧客データを取得して結合し、結合した顧客データにおける顧客の特性を予測しその結果をこれらの事業者サーバ100に提供する例を用いて説明するが、これに限る趣旨ではない。例えば、顧客データの取得元の事業者サーバ100は三つ以上あってもよいし、また、顧客の特性を予測した結果の提供先は取得元の事業者サーバ100の少なくともいずれか一つであってもよいし、その他の外部の装置であってもよい。なお、本実施形態に係る第1事業者サーバ100Aaと第2事業者サーバ100Abとは、特に区別の必要が無い場合は、総称して「事業者サーバ100A」という。
【0086】
(1)図7に示すように、事業者サーバ100Aは、データクレンジングとしてそれぞれ顧客データに対する書式合わせを行う。事業者サーバ100Aは、この書式合わせを行った顧客データを正規化顧客データとして記憶部120に記憶する。
【0087】
(2)本実施形態に係る連携サーバ200Aの連携取得部211Aは、事業者サーバ100Aに対して同意情報の参照を指示する。連携取得部211Aは、当該参照の結果事業者サーバ100Aから連携サーバ200Aに正規化顧客データが提供可能な場合、事業者サーバ100Aから正規化顧客データを取得する。
【0088】
「同意情報」とは、外部への顧客データの提供及び提供先での顧客データの利用等に対する顧客の同意を表す情報である。同意情報は、例えば、対象の同意事項を含んでもよい。対象の同意事項とは、例えば、外部への顧客データの提供可否、外部での利用可否、又は、顧客データの外部への提供及び利用を「可」とする場合におけるその利用目的(例えば、第三者への提供/開示等)等を含んでもよい。
【0089】
(3)連携サーバ200Aの結合部212Aは、キー情報に基づいて、結合対象の正規化顧客データ同士のキーデータ項目のデータをキーにして、第1事業者サーバ100Aaと第2事業者サーバAbからそれぞれ取得した正規化顧客データ同士を結合して、結合顧客データを生成する。
【0090】
(4)連携サーバ200Aの分類部220は、類型情報に基づいて、結合顧客データにより特定される顧客を類型化の結果である類型ごとに分類する。(5)連携サーバ200Aの予測部221は、上記(4)の分類の結果に基づいて、特定される顧客の特性を予測する。(6)連携提供部213Aは、上記(5)の予測の結果を示す予測情報を、事業者サーバ100A及びその他の外部装置の少なくともいずれか一つに提供する。
【0091】
上記構成によれば、連携サーバ200Aは、各事業者におけるOne to Oneマーケティング活動等に資する顧客の特性の予測を各事業者に提供することができる。
【0092】
<2.連携サーバの機能構成>
図8を参照して、本実施形態に係る連携サーバ200Aの機能構成の一例について説明する。連携サーバ200Aは、第1実施形態に係る連携サーバ200の連携記憶部230と連携通信部240とを共通して備える。連携サーバ200Aの連携制御部210においては、第1実施形態に係る連携制御部210の連携取得部211と、結合部212と、連携提供部213とにさらに機能を加えた連携取得部211Aと、結合部212Aと、連携提供部213Aとを備え、これらの機能部に加えて、分類部220と、予測部221とを備える。
【0093】
連携取得部211Aは、例えば、事業者サーバ100Aに対して同意情報の参照を指示する。連携取得部211Aは、当該参照の結果を事業者サーバ100Aから取得する。そして連携取得部211Aは、上記参照の結果事業者サーバ100Aから連携サーバ200Aに顧客データが提供可能な場合、事業者サーバ100から顧客データを取得してもよい。
【0094】
結合部212Aは、例えば、キー情報に基づいて、結合対象の顧客データ同士のキーデータ項目のデータをキーにして、複数の事業者サーバ100Aからそれぞれ取得した顧客データ同士を結合してもよい。結合部212Aは、結合した顧客データから結合顧客データを生成する。結合部212Aは、他の例として、結合用に設定された顧客の識別情報により複数の事業者サーバ100Aからそれぞれ取得した顧客データ同士を結合してもよい。結合部212Aは、例えば、同一の顧客に対して、第1事業者で発行・管理されている当該顧客の識別情報と、第2事業者で発行・管理されている当該顧客の識別情報とを連結させる当該顧客の識別情報を発行してもよい。結合部212Aは、この発行した顧客の識別情報を、上記結合用の上記顧客の識別情報として設定してもよい。
【0095】
連携提供部213Aは、例えば、後述の予測部221による予測の結果を示す予測情報を事業者サーバ100A及びその他の外部装置の少なくともいずれか一つに提供してもよい。
【0096】
上記構成によれば、連携提供部213Aは、各事業者におけるOne to Oneマーケティング活動等に資する顧客の特性の予測を各事業者に提供することができる。
【0097】
分類部220は、類型情報に基づいて、結合顧客データにより特定される顧客を類型化の結果である類型ごとに分類する。分類部220は、例えば、第1実施形態における類型化部219により構築された分類モデルを類型情報として、結合顧客データにより特定される顧客を類型ごとに分類してもよい。分類部220は、他の例として、類型化部219により構築された分類モデルではない予め連携記憶部230に記憶された分類モデルを類型情報として、結合顧客データにより特定される顧客を類型ごとに分類してもよい。
【0098】
予測部221は、分類部220の上記分類の結果に基づいて、結合顧客データにより特定される顧客の特性を予測する。予測部221は、例えば、上記の類型化部219により構築された、又はその他の連携記憶部230に記憶された分類モデルを用いて顧客の特性を予測してもよい。予測部221は、当該予測の結果を予測情報として連携記憶部230に記憶してもよい。
【0099】
なお、上記実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0100】
また、上記実施の形態で記載された事業者サーバ100及び連携サーバ200が備える構成要素は、記憶装置805に格納されたプログラムがプロセッサ801によって実行されることで、定められた処理が他のハードウェアと協働して実現されるものとする。また、言い換えれば、これらの構成要素は、ソフトウェア又はファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、「機能」、「手段」、「部」、「処理回路」、「ユニット」、又は「モジュール」等とも記載され、またそれぞれに読み替えることができる。
【0101】
[変形例]
なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、以下のような場合も本発明に含まれる。
【0102】
(1)上記実施形態に係る事業者サーバ100、100Aが備える各構成の少なくとも一部は、連携サーバ200、200Aが備えていてもよい。例えば、事業者サーバ100の抽出部113の機能を連携サーバ200に実装させてもよい。
【0103】
(2)上記(1)とは逆に、上記実施形態に係る連携サーバ200、200Aが備える各構成の少なくとも一部は、事業者サーバ100、100Aが備えていてもよい。例えば、事業者サーバ100、100Aがインストールするデータ連携システム1の専用アプリケーションプログラムに、連携サーバ200、200Aの連携制御部210が備える各機能部の機能を実装させる。事業者サーバ100、100Aがこのアプリケーションプログラムをインストールすることで、連携サーバ200、200Aを設けずに事業者サーバ100、100A間で顧客データ、匿名化顧客データ又は結合匿名化顧客データ等の連携、顧客の特性の類型化や予測等を行ってもよい。言い換えれば、複数の事業者サーバ100、100Aのうち少なくとも一つのサーバを、連携サーバ200、200Aとしてもよい。この際、事業者サーバ100、100Aのうち特定のサーバに集中させて連携サーバ200、200Aの上記機能を備えさせてもよいし、複数の事業者サーバ100、100Aそれぞれに分散させて備えさせてもよい。なお、データ連携システム1の専用アプリケーションプログラムに実装させる連携サーバ200、200Aの連携制御部210が備える各機能部の機能は、全部であってもよいし、一部であってもよい。
【0104】
上記のように連携基盤である連携サーバ200、200Aを設けない場合、複数の事業者サーバ100のいずれかで類型情報や予想情報、又は結合匿名化顧客データを生成し、生成した結合匿名化顧客データを複数の事業者サーバ100の間で分散管理させてもよい。また、この分散管理にあたっては、例えば、分散型台帳技術、いわゆるブロックチェーン技術を用いて実現してもよい。また、連携サーバ200、200Aを設けずに、複数の事業者サーバ100、100A間で顧客データ、匿名化顧客データ、結合匿名化顧客データ、類型情報又は予想情報等を連携する場合、P2P方式を用いて事業者サーバ100、100A間を接続し通信させてもよい。
【0105】
(3)上記実施形態では、キー情報を記憶するキー記憶部は、連携サーバ200が備える例を説明したが、連携サーバ200以外の装置、例えば事業者サーバ100が備えてもよい。また、事業者サーバ100が備えるキー記憶部をキー決定部が参照する際は、例えば、事業者サーバ100が当該参照のために実装するAPIを利用してもよいし、事業者サーバ100にリモートアクセスしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…データ連携システム、100、100A…事業者サーバ、100a、100Aa…第1事業者サーバ、100b、100Ab…第2事業者サーバ、110…制御部、111…データクレンジング部、112…ハッシュ算出部、113…抽出部、114…匿名加工部、115…事業者提供部、116…事業者取得部、120…記憶部、121…顧客データ記憶部、130…通信部、200、200A…連携サーバ、210…連携制御部、211、211A…連携取得部、212、212A…結合部、213、213A…連携提供部、214…参照部、215…キー決定部、216…抽出部、217…追加匿名加工部、218…蓄積部、219…類型化部、220…分類部、221…予測部、230…連携記憶部、231…キー記憶部、232…蓄積顧客データ記憶部、240…連携通信部、800…コンピュータ、801…プロセッサ、803…メモリ、805…記憶装置、807…入力I/F部、809…データI/F部、811…通信I/F部、813…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8