(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ランニング用パンツ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/05 20060101AFI20220720BHJP
A41D 1/089 20180101ALI20220720BHJP
【FI】
A41D13/05 125
A41D13/05 143
A41D1/089
(21)【出願番号】P 2020111942
(22)【出願日】2020-06-29
(62)【分割の表示】P 2015240475の分割
【原出願日】2015-12-09
【審査請求日】2020-07-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)美津濃株式会社商品展示会(東京) 開催日:平成27年6月10日~同年6月12日 (2)美津濃株式会社商品展示会(大阪) 開催日:平成27年6月16日~同年6月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴志
(72)【発明者】
【氏名】江部 素弘
(72)【発明者】
【氏名】横野 比斗志
(72)【発明者】
【氏名】大津 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 佳奈子
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】塩治 雅也
【審判官】井上 茂夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/050769(WO,A1)
【文献】特開2013-36160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1-06- 1/16
A41D13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生地と第2の生地を含むランニング用パンツであって、
前記第1の生地は、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲を円筒状に覆って締め付け、ランニング時には安定姿勢を保つための伸縮性スポーツ用タイツ生地であり、上端にはベルト部があり、
前記第2の生地は、前記第1の生地より下方に配置され、ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができる生地であり、伸縮性
の無
い織物であり、
前記ランニング用パンツは短パン又は7分丈であり、
前記第1の生地の伸縮性スポーツ用タイツ生地
の前記パンツの前側部分にはポケット部があることを特徴とするランニング用パンツ。
【請求項2】
前記第1の生地は編み物である請求項1に記載のランニング用パンツ。
【請求項3】
前記第1の生地及び第2の生地の単位面積当たりの質量(目付)は、それぞれ40~200g/m
2である請求項1又は2に記載のランニング用パンツ。
【請求項4】
前記第1の生地は、下限は恥骨を含む位置より上にあり、臍部より下の位置まである請求項1~3のいずれか1項に記載のランニング用パンツ。
【請求項5】
前記第1の生地は、荷重14.7Nで伸長率はタテ130~170%、ヨコ80~120%である請求項1~4のいずれか1項に記載のランニング用パンツ。
【請求項6】
前記第1の生地の外側の少なくとも一部には伸縮性カバー生地が配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載のランニング用パンツ。
【請求項7】
前記伸縮性カバー生地は、体長方向に比べて体周方向の同一伸度における応力が高い請求項6に記載のランニング用パンツ。
【請求項8】
前記第1の生地のポケット部は複数個ある請求項1~7のいずれか1項に記載のランニング用パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランニング用パンツに関する。さらに好適にはマラソン、ランニング、ジョギング、散歩等のランニング用パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
ランニング等のスポーツ用パンツは織物性のパンツ、あるいは大臀部、太腿部、膝回り、ふくらはぎ部等の必要な筋肉に着圧パワーをかけたり、筋肉の振動を抑えたり、あるいは腰部を締めて姿勢制御する等の様々なコンプレッションタイプのタイツが知られている。従来例として、本出願人は特許文献1において、ウエストバッグのずれを防止するため、腰後部に滑り止め部材を配置することを提案した。また、スポーツ用タイツとしてはポリウレタン糸等の弾性糸を含む伸縮性編物生地を使用し、必要な個所には弾性の高い伸縮性編物生地を配置し、その他の箇所には弾性の低い伸縮性編物生地を配置していた(例えば特許文献2~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-127463号公報
【文献】特開2005-226217号公報
【文献】特開2013-067926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献で提案されているパンツは、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲の締め付け力が低く、また従来のタイツは大腿部も締め付けてしまい、前記胴体周囲のみ締め付けることは困難であった。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲のみ締め付けることが可能なランニング用パンツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のランニング用パンツは、第1の生地と第2の生地を含むランニング用パンツであって、前記第1の生地は、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲を円筒状に覆って締め付け、ランニング時には安定姿勢を保つための伸縮性スポーツ用タイツ生地であり、上端にはベルト部があり、前記第2の生地は、前記第1の生地より下方に配置され、ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができる生地であり、伸縮性の無い織物であり、前記ランニング用パンツは短パン又は7分丈であり、前記第1の生地の伸縮性スポーツ用タイツ生地の前記パンツの前側部分にはポケット部があることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、第1の生地と第2の生地を含むランニング用パンツであって、前記第1の生地は、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲を円筒状に覆って締め付け、ランニング時には安定姿勢を保つための伸縮性生地であり、上端にはベルト部があり、前記第2の生地は、前記第1の生地より下方に配置され、ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができる生地であり、伸縮性は無いか又は前記第1の生地の伸縮性より低い伸縮性の織物であり、前記ランニング用パンツは短パン又は7分丈であることにより、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲のみ締め付け、他の部分は締め付け力がフリーであるランニング用パンツとすることができる。その結果、ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができ、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲は固定され、安定姿勢を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の一実施例の
ランニング用パンツの正面図である。
【
図3】
図3は同、カバー生地にペットボトルを挿入した説明図である。
【
図4】
図4は同、カバー生地が無い
ランニング用パンツの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のランニング用パンツ(以下「スポーツ用パンツ」ともいう。)は、第1の生地と第2の生地で少なくとも構成される。第1の生地は伸縮性生地、例えば編み物である。タテ編み地でもヨコ編み地でもよい。第1の生地は下腹部及び腰の後部を含む周囲を覆い、下限は恥骨を含む位置より上で臍部より下の位置にある。これにより、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲を締め付ける。また、第1の生地の上端にはベルト部があり、身体の胴体に固定される。
【0009】
第2の生地は、第1の生地より下方に配置され、伸縮性は無いか又は前記第1の生地の伸縮性より低い伸縮性の織物である。ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができる。マラソンの一流選手は、臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保ち、自由な動きを好む人が多い。本発明のパンツはこのような要望に沿うものである。
【0010】
好ましい実施態様によれば、上部が伸縮性編地で下部が非伸縮性の織物のパンツである。すなわち、上部は従来のタイツ生地であり、下部は従来の織物生地で構成される。
【0011】
第1の生地は、パンツの前側部分の中央幅が後側部分の中央幅より広いことが好ましい。より好ましくは第1生地の後側部分の中央幅に比べて前側部分の中央幅が1.1~3倍の範囲であり、さらに好ましくは第1生地の後側部分の中央幅に比べて前側部分の中央幅が1.5~2.5倍の範囲である。これにより、ランニング時の安定姿勢をより好ましく保てる。
【0012】
第1の生地及び第2の生地の単位面積当たりの質量(目付)は、それぞれ40~200g/m2であるのが好ましく、さらに好ましくは110~130g/m2である。目付が前記の範囲であれば軽量であり、スポーツ用パンツとして好適である。
【0013】
第1の生地は、通常のスポーツ用タイツに使われる編み物が好ましい。例えば、荷重14.7Nで伸長率はタテ130~170%、ヨコ80~120%であるのが好ましい。前記の範囲であれば、胴体を締め付け、姿勢を安定化させるのに好適である。
【0014】
スポーツ用パンツの腰後部にはペットボトルを挿入するためのカバー生地が配置されており、前記カバー生地は伸縮性生地であり、ベルト部と第2の生地の上端部で固定されているのが好ましい。この構成により、飲料を入れたペットボトルはほぼ水平の状態で第1の生地とカバー生地との間に挿入できる。第1の生地もカバー生地も伸縮性生地であるから、ペットボトルを挿入すると伸び、固定するのが容易である。また、ペットボトルを固定するカバー生地の位置は腰後部であり、かつ身体に密着していることから、ランニング中は身体とともに動き、ランニング動作を妨げることもない。
【0015】
カバー生地は、体長方向に比べて体周方向の応力(同一伸度における)が高いことが好ましい。前記の範囲であれば、ペットボトルを固定するのに都合が良い。一例として、荷重14.7Nで伸長率はタテ90~130%、ヨコ30~70%であるのが好ましい。
【0016】
第1の生地は編み物生地が好ましく、例えば、丸編、ヨコ編、タテ編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編等を含み、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織等がある。第2の生地は織物が好ましく、例えば平織、綾織、朱子織等がある。第1の生地と第2の生地に用いる繊維は、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)フィラメント糸、同紡績糸、ナイロンフィラメント糸、同紡績糸、ポリウレタンフィラメント糸あるいはこれらの組み合わせが好ましい。第1の生地と第2の生地は、縫製によってパンツとする。カバー生地も縫製によって固定する。
【0017】
本発明のスポーツ用パンツは短パン、7分丈、足首までの長さのパンツのいずれであっても良い。短パンはトレーニング時やレースで着用し、7分丈や足首までの長さのパンツは寒い時期に着用する。
【0018】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施例のスポーツ用パンツの正面図である。このスポーツ用パンツ1は、第1の生地2と第2の生地3を含み、第1の生地2は伸縮性生地であり、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲を覆い、下限は恥骨を含む位置より上で臍部より下の位置にあり、上端にはベルト部4がある。前記第2の生地3は、前記第1の生地2より下方に配置され、伸縮性は無いか又は前記第1の生地2の伸縮性より低い伸縮性の織物である。このスポーツ用パンツ1にはポケット部8,9がある。
【0019】
図2は同、背面図である。スポーツ用パンツ1の腰後部にはペットボトルを挿入するためのカバー生地6が配置されており、カバー生地6は伸縮性生地であり、ベルト部4と第2の生地3の上端部で縫製により固定されている。
【0020】
図3は同、カバー生地にペットボトル7を挿入した説明図である。飲料を入れたペットボトル7はほぼ水平の状態で第1の生地2とカバー生地6との間に挿入できる。ファスナー等の固定具も特になく、双方向から出し入れできるので便利である。
【0021】
図4は同、カバー生地が無いスポーツ用パンツ10の背面図である。
図2と比較するとカバー生地が無い点が相違し、その他は同様である。このスポーツ用パンツ10は、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲のみ締め付け、他の部分は締め付け力がフリーである。これにより、ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができ、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲は固定され、安定姿勢を保つことができる。
【実施例】
【0022】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0023】
(実施例1)
(1)第1の生地
ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET)のマルチフィラメント糸84質量%、ポリウレタンフィラメント糸16質量%を使用し、トリコット組織の編み物を作成した。目付は190g/m2であった。この編物は荷重14.7Nで伸長率はタテ151%、ヨコ105%であった。
(2)第2の生地
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸を経糸と緯糸に使用した平織物を作成した。目付は150 g/m2であった。この織物生地は伸縮性が無かった。
(3)ペットボトルを挿入するためのカバー生地
繊維素材:ナイロンのマルチフィラメント糸(総繊度:78tex,構成本数24本,生糸)83質量%、ポリウレタンフィラメント糸(繊度:310tex)17質量%を使用し、26ゲージの緯編機でゴム編み組織の編み物を作成した。目付は180g/m2であった。
カバー生地の伸度と応力は表1~2のとおりである。
【0024】
【0025】
【0026】
第1の生地、第2の生地及びカバー生地を使用して
図1~3に示すランニング用パンツ(短パン)を縫製により作成した。JASPOのLサイズで、身丈は40cm,静置した場合の腰幅30cm,第1生地の前側中央の幅が10cm,同後側中央の幅が4.5cmであった。また、このパンツの1着当たりの質量は110gであった。このパンツは、ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができ、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲は固定され、安定姿勢を保つことができた。また、飲料を入れたペットボトルはほぼ水平の状態で第1の生地とカバー生地との間に挿入できた。ファスナー等の固定具も特になかったが、双方向から出し入れできるので便利であった。
【0027】
(実施例2)
図4に示すように、ペットボトルを挿入するためのカバー生地が無い以外は実施例1と同様にランニング用パンツを縫製により作成した。このパンツは、ランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができ、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲は固定され、安定姿勢を保つことができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のスポーツ用タイツは、ランニング、マラソン、ジョギング、トレイルラン、散歩、登山等のパンツとして好適であるほか、様々なスポーツにも好適である。とくにマラソンを含むランニング用パンツとして好適である。
【符号の説明】
【0029】
1,10 スポーツ用パンツ
2 第1の生地
3 第2の生地
4 ベルト部
5 紐
6 カバー生地
7 ペットボトル
8,9 ポケット部