(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】抗α4β7抗体のための製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220720BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220720BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZMD
A61P1/04
C07K16/28 ZNA
(21)【出願番号】P 2020136927
(22)【出願日】2020-08-14
(62)【分割の表示】P 2019003265の分割
【原出願日】2012-05-02
【審査請求日】2020-09-11
(32)【優先日】2011-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2011-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500287639
【氏名又は名称】ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ディルジオ,ウィロー
(72)【発明者】
【氏名】グエン,フォン エム.
(72)【発明者】
【氏名】バルガ,クサナド エム.
(72)【発明者】
【氏名】パラニアパン,バイチアナタン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,アービン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス,エリカ,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ロサリオ,マリア
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-531129(JP,A)
【文献】FEAGAN BRIAN G,TREATMENT OF ACTIVE CROHN'S DISEASE WITH MLN0002, A HUMANIZED ANTIBODY TO THE α4β7 INTEGRIN,CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY,米国,AMERICAN GASTROENTEROLOGICAL ASSOCIATION,2008年12月01日,V6 N12,P1370-1377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における
中程度から重度の活動性クローン病を治療するための医薬組成物であって、該組成物は、配列番号8で示される相補性決定領域1(CDR1)、配列番号9で示されるCDR2及び配列番号10で示されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号11で示されるCDR1、配列番号12で示されるCDR2及び配列番号13で示されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗α4β7抗体を含み、該抗体は、
維持相において、2週間ごとに、ヒト患者に108mgの用量で皮下投与されるものである、医薬組成物。
【請求項2】
ヒト患者における
中程度から重度の活動性クローン病を治療するための医薬組成物であって、該組成物は、配列番号8で示される相補性決定領域1(CDR1)、配列番号9で示されるCDR2及び配列番号10で示されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号11で示されるCDR1、配列番号12で示されるCDR2及び配列番号13で示されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗α4β7抗体を含み、300mg用量の該抗体が、臨床的な応答が達成されるまで、ヒト患者に静脈内投与され、その後、
維持相において、108mgの該抗体の皮下用量が、臨床的な応答が維持されるようにヒト患者に投与される、医薬組成物。
【請求項3】
臨床的な応答が、該抗体の第1の300mg用量の静脈内投与と該第1の用量の2週間後の該抗体の第2の300mg用量の投与により達成される、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
臨床的な応答が、該第2の用量の4週間後の該抗体の第3の300mg用量の投与により達成される、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
該抗体の108mgの皮下用量が、該第1の用量の少なくとも14週間後に開始される、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
該抗体の108mgの皮下用量が、2週間ごとに投与される、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ヒト患者における
中程度から重度の活動性クローン病を治療するための医薬組成物であって、該組成物は、配列番号8で示されるCDR1、配列番号9で示されるCDR2及び配列番号10で示されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号11で示されるCDR1、配列番号12で示されるCDR2及び配列番号13で示されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗α4β7抗体を含み、該抗体は、300mgの該抗体の第1の静脈内用量、該第1の用量の2週間後に静脈内投与される300mgの該抗体の第2の用量、並びに
維持相において、該第1の用量の6週間後及びその後2週間ごとに皮下投与される該抗体の108mgの用量を含む投与計画に従って投与されるものである、医薬組成物。
【請求項8】
該抗体が、配列番号2のアミノ酸20~140を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸20~131を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
該抗体が、IgG1アイソタイプである、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
該抗体が、配列番号2のアミノ酸20~470を含む重鎖及び配列番号4のアミノ酸20~238を含む軽鎖を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
該抗体がベドリズマブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該医薬組成物が、自己投与のために調製されたものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
該医薬組成物が、バイアル、カートリッジ、シリンジ又は自動注入器中に存在するものである、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ヒト患者が、クローン病についての少なくとも1つのコルチコステロイドでの治療を以前に受けていたものである、請求項1~
13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
患者が、免疫調節因子、コルチコステロイド又は腫瘍壊死因子-α拮抗剤の少なくとも1つによる治療に対して適切な応答を欠いていた、それに対する応答を喪失していた、又はそれに対して非認容性であったものである、請求項1~
14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
該投与計画が、コルチコステロイドの使用の軽減、排除又は軽減及び排除を生じるものである、請求項1~
14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗α4β7抗体のための製剤に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2011年10月6日に出願された米国仮特許出願61/5444,054
及び2011年5月2日に出願された米国仮特許出願61/481,522に対して優先
権を主張する。前述の出願の内容全体は参照によって本明細書に組み入れられる。
【0003】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出されている、その全体が参照
によって本明細書に組み入れられる配列表を含有する。2012年4月30日に創られた
前記ASCIIコピーは、92596603.txtと名付けられ、16,986バイト
のサイズである。
【背景技術】
【0004】
バイオテクノロジーの進歩によって組換えDNAを用いて医薬応用のための種々のタン
パク質を製造することが可能になっている。タンパク質は、従来の無機及び有機の薬剤よ
りも大きく、複雑なので(すなわち、複雑な三次元構造に加えて複数の官能基を持つ)、
そのようなタンパク質の製剤化は特別な問題を提起する。タンパク質の生物活性を維持す
るには、製剤はタンパク質のアミノ酸の少なくともコア配列の構造的な整合性を保存しな
ければならない一方で同時に、タンパク質の複数の官能基が分解するのを保護しなければ
ならない。タンパク質は安定性の欠如に悩まされ得るし、モノクローナル抗体及びポリク
ローナルの抗体は特に相対的に不安定であり得る(たとえば、非特許文献1を参照)。多
数の製剤化の選択肢が利用可能であり、1つのアプローチ又はシステムがタンパク質すべ
てに好適であるわけではない。考慮されるべき幾つかの因子が報告されている(たとえば
、 Wang et al.を参照)。
【0005】
多数の特徴がタンパク質の安定性に影響し得る。実際、精製した抗体の場合でさえ、抗
体構造は不均質であり得、それがさらにそのような系の製剤化を複雑にする。さらに、抗
体製剤に含まれる賦形剤は好ましくは、潜在的な免疫応答をできるだけ抑える。
【0006】
抗体の場合、構造的な整合性の保存は一層さらに重要である。タンパク質の分解経路に
は、化学的不安定性(すなわち、結合形成又は新しい化学実体を生じる切断によるタンパ
ク質の修飾が関与する過程)又は物理的不安定性(すなわち、タンパク質の高次構造にお
ける変化)が関与し得る。化学的不安定性は、たとえば、脱アミド化、異性化、加水分解
、酸化、断片化、グリカンβ排除又はジスルフィド変換において現れる。物理的不安定性
は、たとえば、変性、凝集、沈殿又は吸収の結果生じる。4つの最も一般的なタンパク質
分解経路は、タンパク質の断片化、凝集、脱アミド化及び酸化である。治療用タンパク質
の化学的な又は物理的な不安定性の結果には、有効な投与量の低下、たとえば、刺激又は
免疫反応性による治療の安全性の低下、及び短い保存期間による頻繁な製造が挙げられる
。
【0007】
幾つかの出版物は炎症性大腸疾患を治療する種々の方法を一般に開示しており、炎症性
大腸疾患を治療するように設計された剤の投与のための投薬スキームを提供している。た
とえば、特許文献1は、粘膜性血管アドレシン及びMAdCAMを発現する細胞に白血球
が結合した結果としての消化管への白血球の動員に関連する疾患の治療を開示している。
特許文献2は、粘膜組織の白血球浸潤に関連する疾患を治療する方法及びα4β7インテ
グリンに対する結合特異性を有するヒトの又はヒト化された免疫グロブリン又は抗原結合
断片の有効量のヒトへの投与を開示している。特許文献2はさらに、種々の用量(たとえ
ば、体重kg当たり0.15、約0.5、約1.0、約1.5又は約2.0mgの免疫グ
ロブリン又は断片)及び種々の投与間隔(7、14、21、28及び30日間)を記載し
ている。しかしながら、前述の特許及び出版物は抗α4β7抗体の特定の製剤又は本明細
書で記載され、請求される特定の用量及び投与計画を開示していない。重要なことに、前
述の特許は、本明細書で記載され、請求される治療方法(臨床試験データによって支持さ
れる)を提供する製剤、用量及び投与計画を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO96/24673
【文献】US2005/0095238
【非特許文献】
【0009】
【文献】Wang, et al., J. Pharm Sci. 96:1-26 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の抗体製剤は、MAdCAMを発現している細胞に結合する白血球を阻害するの
に有用であり得るので、患者における炎症性大腸疾患の治療に役立つ。従って、これらの
化合物の好適な投与量及び投与計画を発見し、安定して好都合な形態にて長い間にわたっ
て抗体製剤の安定した治療上有効な血中レベルを生じる製剤、好ましくは皮下製剤を開発
する緊急のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その不安定性の故に脱アミド化、酸化、異性化及び/又は凝集に敏感になる
抗α4β7製剤を製剤化するのに有用な賦形剤としての抗酸化剤又はキレート剤、及び少
なくとも1つのアミノ酸の特定に関する。製剤は、安定性を改善し、凝集体形成を低減し
、その中での抗体の分解を遅らせる。
【0012】
従って、第1の態様では、本発明は、抗α4β7抗体、抗酸化剤又はキレート剤、及び
少なくとも1つの遊離のアミノ酸の混合物を含む安定な液体医薬製剤に関する。
【0013】
一部の実施形態では、安定な液体医薬製剤は、室温で12ヵ月後、約1.0%未満の凝
集体形成を有する。安定な液体医薬製剤は、室温で12ヵ月後、約0.2%未満の凝集体
形成を有することができる。
【0014】
一部の実施形態では、抗酸化剤又はキレート剤はクエン酸塩である。一部の実施形態で
は、キレート剤はEDTAである。
【0015】
一部の実施形態では、製剤の遊離のアミノ酸はヒスチジン、アラニン、アルギニン、グ
リシン、グルタミン酸又はそれらの組み合わせである。製剤は、約50mM~約175m
Mの間の遊離のアミノ酸を含むことができる。製剤は、約100mM~約175mMの間
の遊離のアミノ酸を含むことができる。遊離のアミノ酸と抗体のモル比の比率は少なくと
も250:1であることができる。
【0016】
製剤はまた界面活性剤を含有することもできる。界面活性剤は、ポリソルベート20、
ポリソルベート80、ポリキサマー又はそれらの組み合わせであることができる。
【0017】
一部の実施形態では、抗酸化剤と界面活性剤のモル比は約3:1~約156:1である
。
【0018】
製剤は約6.3~約7.0の間のpHを有することができる。製剤のpHは約6.5~
約6.8の間であることができる。製剤は約6.1~約7.0の間又は約6.2~6.8
の間のpHを有することができる。
【0019】
一部の実施形態では、安定な液体医薬製剤は、少なくとも約60mg/mL~約160
mg/mLの抗α4β7抗体を含有する。製剤は少なくとも約160mg/mLの抗α4
β7抗体を含有することができる。製剤は、約150~約180mg/mLの抗体、又は
約165mg/mLの抗体を含有することができる。
【0020】
別の態様では、本発明は、少なくとも約60mg/mL~約160mg/mLの抗α4
β7抗体、緩衝化剤及び少なくとも約10mMのクエン酸塩を含む安定な液体医薬製剤に
関する。緩衝化剤はヒスチジン緩衝液であることができる。
【0021】
別の態様では、本発明は、少なくとも約60mg/mL~約180mg/mLの抗α4
β7抗体、緩衝剤及び少なくとも約5mMのクエン酸塩を含む安定な液体医薬製剤に関す
る。緩衝化剤はヒスチジン緩衝液であることができる。
【0022】
別の態様では、本発明は、少なくとも約160mg/mLの抗α4β7抗体及び少なく
とも約10mMのクエン酸塩を含む安定な液体医薬製剤に関する。製剤はさらにポリソル
ベート80を含有することができる。
【0023】
別の態様では、本発明は、約160mg/mLの抗α4β7抗体及び少なくとも約5m
Mのクエン酸塩を含む安定な液体医薬製剤に関する。製剤はさらにポリソルベート80を
含有することができる。
【0024】
別の態様では、本発明は、抗α4β7抗体とクエン酸塩とヒスチジンとアルギニンとポ
リソルベート80の混合物を含む安定な液体医薬製剤に関する。製剤は、たとえば、バイ
アル、カートリッジ、シリンジ又は自動注入器のような容器に存在することができる。
【0025】
本発明の安定な液体医薬製剤における抗α4β7抗体は、ベドリズマブであることがで
きる。本発明の製剤は、皮下投与、静脈内投与又は筋肉内投与のためであり得る。
【0026】
一部の態様では、製剤は抗α4β7抗体の免疫原性をできるだけ抑えることができる。
【0027】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者に本明細書で記載される安定な液体医
薬製剤を投与することを含む炎症性大腸疾患を投与する方法に関する。投与することは、
皮下投与することであり得る。投与することは、自己投与することであり得る。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、容器と、本明細書で記載される安定な液体医薬製剤と
、使用のための指示書を含む製造物品に関する。
【0029】
態様の1つでは、本発明は、炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者を治療する方法に関する
ものであり、該方法は、炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者にヒトα4β7インテグリンに
対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を
含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、以下の投与計画:(a)初回投与
、たとえば、誘導相治療計画における、2日ごとの皮下注射として165mgのヒト化免
疫グロブリン又はその抗原結合断片の6回投与;(b)その後、6週目にて、たとえば、
維持相治療計画における、必要に応じて2週間ごと又は4週間ごとに皮下注射として16
5mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の7回目及びその後の用量:
に従って患者に投与され;該投与計画が炎症性大腸疾患における臨床な応答及び臨床的な
寛解を誘導し;且つさらに、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片がα4β7複合体に
対して結合特異性を有し;抗原結合領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3
つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補
性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,
CDR2 配列番号:10,CDR3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:1
2,CDR2配列番号:13,CDR3 配列番号:14。
【0030】
態様の1つでは、本発明は、炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者を治療する方法に関する
ものであり、該方法は、炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者にヒトα4β7インテグリンに
対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を
含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒ
ト起源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、
静脈内投与の誘導相と皮下投与の維持相を含む以下の投与計画:(a)静脈内点滴として
のヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片300mgの初回の静脈内投与、(b)そ
の後、初回投与の約2週間後の静脈内点滴としてのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結
合断片300mgの第2の静脈内後続投与、(c)その後、6週目で開始する、必要に応
じて1週ごと、2週ごと、3週ごと又は4週ごとの皮下注射としてのヒト化免疫グロブリ
ン又はその抗原結合断片165mgの第3の及びその後の投与:に従って患者に投与し、
該投与計画が患者の炎症性大腸疾患における臨床な応答及び臨床的な寛解を誘導し;且つ
さらに、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異
性を有し;抗原結合領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの相補性決定
領域(CDR1、CDR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(C
DR1、CDR2及びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,CDR2 配列
番号:10,CDR3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:12,CDR2配
列番号:13,CDR3 配列番号:14。
【0031】
別の態様では、本発明は、炎症性大腸疾患の治療療法についての投与計画に関するもの
であり、該投与計画は、炎症性大腸疾患で苦しむ患者にヒトα4β7インテグリンに対す
る結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み
、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒト起
源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、約9
~約13μg/mLの免疫グロブリン又はその抗原結合断片の平均定常状態トラフ血清濃
度を維持する皮下の又は筋肉内の投与計画に従って患者に投与され、該投与計画が患者の
炎症性大腸疾患における臨床な応答及び臨床的な寛解を誘導し;且つさらに、ヒト化免疫
グロブリン又はその抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異性を有し;抗原結合
領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、C
DR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及
びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,CDR2 配列番号:10,CDR
3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:12,CDR2配列番号:13,CD
R3 配列番号:14。
【0032】
別の態様では、本発明は、炎症性大腸疾患の治療療法についての投与計画に関するもの
であり、該投与計画は、炎症性大腸疾患で苦しむ患者にヒトα4β7インテグリンに対す
る結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み
、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒト起
源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、約3
5~約40μg/mLのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の平均定常状態トラ
フ血清濃度を維持する皮下の又は筋肉内の投与計画に従って患者に投与され、該投与計画
が患者の炎症性大腸疾患における臨床な応答及び臨床的な寛解を誘導し;且つさらに、ヒ
ト化免疫グロブリン又は抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異性を有し;抗原
結合領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1
、CDR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR
2及びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,CDR2 配列番号:10,C
DR3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:12,CDR2配列番号:13,
CDR3 配列番号:14。
【0033】
別の態様では、本発明は、炎症性大腸疾患で苦しむ患者を治療する方法に関するもので
あり、該方法は、炎症性大腸疾患で苦しむ患者にヒトα4β7インテグリンに対する結合
特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み、ヒト
化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒト起源の抗
体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、以下の投与
計画:(a)約6週間の初回投与までに約20~30μg/mLのヒト化免疫グロブリン
又はその抗原結合断片の平均トラフ血清濃度を達成するのに十分なヒト化免疫グロブリン
又はその抗原結合断片の複数の誘導相の用量;(b)その後、必要に応じて約9~約13
μg/mL又は約35~40μg/mLの免疫グロブリン又はその抗原結合断片の平均定
常状態トラフ血清濃度を維持するためのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の複
数の維持相の用量:に従って患者に投与され、該投与計画が患者の炎症性大腸疾患におけ
る臨床な応答及び臨床的な寛解を誘導し;且つさらに、ヒト化免疫グロブリン又はその抗
原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異性を有し;抗原結合領域が、以下で示すア
ミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)
及び重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む:
軽鎖CDR1 配列番号:9,CDR2 配列番号:10,CDR3 配列番号:11;
重鎖:CDR1 配列番号:12,CDR2配列番号:13,CDR3 配列番号:14
。
【0034】
一部の態様では、製剤、治療方法、用量及び/又は投与計画は、患者が抗α4β7抗体
に対して反応性の抗体を発生させる最小限の可能性を保証する。
【0035】
患者は、免疫調節剤、腫瘍壊死因子(TNF-α)拮抗剤又はそれらの組み合わせの少
なくとも1つによる治療との適切な応答を欠いていた、それに対する応答を欠如していた
、又はそれに対して認容性ではなかった可能性がある。
【0036】
炎症性大腸疾患は、クローン病又は潰瘍性大腸炎であり得る。炎症性大腸疾患は、中程
度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎であり得る。
【0037】
投与計画は、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎に苦しむ患者にて結果的に粘膜治
癒を生じる。
【0038】
患者は、炎症性大腸疾患のために少なくとも1つのコルチコステロイドで以前治療を受
けていた可能性がある。患者は同時に炎症性大腸疾患のための少なくとも1つのコルチコ
ステロイドによる治療を受けてもよい。投与計画は、患者によるコルチコステロイドの使
用の低減、排除又は低減及び排除を結果的に生じる。
【0039】
一部の態様では、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、約1.0mg/mL
~約1.4mg/mLの間の濃度での最終投与形態で投与される。ヒト化免疫グロブリン
又はその抗原結合断片は、約1.2mg/mLの最終投与形態で投与することができる。
【0040】
一部の態様では、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片は、約70~約250mgの
間、約90~約200mgの間、約150~約180mgの間、又は少なくとも160m
gの抗α4β7抗体の量を有する最終投与形態で投与される。
【0041】
一部の態様では、投与計画は、前記治療を受けている患者の脳脊髄液におけるCD4と
CD8の比を変えることはない。
【0042】
患者は65歳以上のヒトであり、投与計画の調整を必要としない。
【0043】
一部の態様では、抗α4β7抗体製剤による治療方法、用量又は投与計画は抗α4β7
抗体の免疫原性をできるだけ抑えることができる。
【0044】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕ヒト患者における炎症性大腸疾患を治療するための医薬組成物であって、該組成物
は、配列番号8で示される相補性決定領域1(CDR1)、配列番号9で示されるCDR
2及び配列番号10で示されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号11で示さ
れるCDR1、配列番号12で示されるCDR2及び配列番号13で示されるCDR3を
含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗α4β7抗体を含み、該抗体は、2週間ごとに、ヒト患
者に108mgの用量で皮下投与されるものである、医薬組成物、
〔2〕ヒト患者における炎症性大腸疾患を治療するための医薬組成物であって、該組成物
は、配列番号8で示される相補性決定領域1(CDR1)、配列番号9で示されるCDR
2及び配列番号10で示されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号11で示さ
れるCDR1、配列番号12で示されるCDR2及び配列番号13で示されるCDR3を
含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗α4β7抗体を含み、300mg用量の該抗体が、臨床
的な応答が達成されるまで、ヒト患者に静脈内投与され、その後、108mgの該抗体の
皮下用量が、臨床的な応答が維持されるようにヒト患者に投与される、医薬組成物、
〔3〕臨床的な応答が、該抗体の第1の300mg用量の静脈内投与と該第1の用量の2
週間後の該抗体の第2の300mg用量の投与により達成される、〔2〕記載の医薬組成
物、
〔4〕臨床的な応答が、該第2の用量の4週間後の該抗体の第3の300mg用量の投与
により達成される、〔3〕記載の医薬組成物、
〔5〕該抗体の108mgの皮下用量が、該第1の用量の少なくとも14週間後に開始さ
れる、〔4〕記載の医薬組成物、
〔6〕該抗体の108mgの皮下用量が、2週間ごとに投与される、〔2〕~〔5〕いず
れか記載の医薬組成物、
〔7〕ヒト患者における炎症性大腸疾患を治療するための医薬組成物であって、該組成物
は、配列番号8で示されるCDR1、配列番号9で示されるCDR2及び配列番号10で
示されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号11で示されるCDR1、配列番
号12で示されるCDR2及び配列番号13で示されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含
むヒト化抗α4β7抗体を含み、該抗体は、300mgの該抗体の第1の静脈内用量、該
第1の用量の2週間後に静脈内投与される300mgの該抗体の第2の用量、並びに該第
1の用量の6週間後及びその後2週間ごとに皮下投与される該抗体の108mgの用量を
含む投与計画に従って投与されるものである、医薬組成物、
〔8〕該抗体が、配列番号2のアミノ酸20~140を含む重鎖可変領域及び配列番号4
のアミノ酸20~131を含む軽鎖可変領域を含む、〔1〕~〔7〕いずれか記載の医薬
組成物、
〔9〕該抗体が、IgG1アイソタイプである、〔1〕~〔8〕いずれか記載の医薬組成
物、
〔10〕該抗体が、配列番号2のアミノ酸20~470を含む重鎖及び配列番号4のアミ
ノ酸20~238を含む軽鎖を含む、〔1〕~〔7〕いずれか記載の医薬組成物、
〔11〕該抗体がベドリズマブである、〔1〕~〔7〕いずれか記載の医薬組成物、
〔12〕該医薬組成物が、自己投与のために調製されたものである、〔1〕~〔11〕い
ずれか記載の医薬組成物、
〔13〕該医薬組成物が、バイアル、カートリッジ、シリンジ又は自動注入器中に存在す
るものである、〔1〕~〔12〕いずれか記載の医薬組成物、
〔14〕炎症性大腸疾患が、クローン病又は潰瘍性大腸炎である、〔1〕~〔13〕いず
れか記載の医薬組成物、
〔15〕潰瘍性大腸炎は、中程度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である、〔14〕記載の
医薬組成物、
〔16〕該投与計画が、潰瘍性大腸炎を有するヒト患者において粘膜治癒を生じるもので
ある、〔14〕又は〔15〕記載の医薬組成物、
〔17〕ヒト患者が、炎症性大腸疾患についての少なくとも1つのコルチコステロイドで
の治療を以前に受けていたものである、〔1〕~〔16〕いずれか記載の医薬組成物、
〔18〕患者が、免疫調節因子、コルチコステロイド又は腫瘍壊死因子-α拮抗剤の少な
くとも1つによる治療に対して適切な応答を欠いていた、それに対する応答を喪失してい
た、又はそれに対して非認容性であったものである、〔1〕~〔16〕いずれか記載の医
薬組成物、
〔19〕該投与計画が、コルチコステロイドの使用の軽減、排除又は軽減及び排除を生じ
るものである、〔1〕~〔16〕いずれか記載の医薬組成物
に関する。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、抗α4β7抗体のための製剤が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】ヒト化抗α4β7免疫グロブリンの重鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号1)及び重鎖の推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。ヌクレオチド配列は、クローニング部位(小文字)、コザック配列(大文字、配列番号1のヌクレオチド18~23)、及び重鎖の5’末端におけるリーダー配列(小文字、配列番号1のヌクレオチド24~86)を含有する。ヌクレオチド配列のオープンリーディングフレームは、配列番号1のヌクレオチド24~1433である。
【
図2】本明細書でベドリズマブと呼ばれるヒト化免疫グロブリンの軽鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号3)及び軽鎖の推定アミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。ヌクレオチド配列は、クローニング部位(小文字)、コザック配列(大文字、配列番号3のヌクレオチド18~23)、及び重鎖の5’末端におけるリーダー配列(小文字、配列番号3のヌクレオチド24~80)を含有する。ヌクレオチド配列のオープンリーディングフレームは、配列番号3のヌクレオチド24~737である。
【
図3】(A)本明細書でベドリズマブと呼ばれるヒト化免疫グロブリンの成熟ヒト化軽鎖(配列番号4のアミノ酸20~238)と(B)本明細書でLDP-02と呼ばれるヒト化免疫グロブリンの成熟ヒト化軽鎖(配列番号5)(LDP-02に関してはWO 98/06248 and Feagan et al., N. Eng. J. Med. 352:2499-2507 (2005)を参照)のアミノ酸配列の配列比較を示す図である。Feaganらは、LDP-02の臨床試験を記載しているが、論文中では彼らはLDP-02をMLN02と呼ぶ。配列比較は、ベドリズマブとLDP-02の軽鎖のアミノ酸配列が成熟軽鎖の114位と115位で異なることを示す。
【
図4】(A)ヒトの一般的なκ軽鎖定常領域(配列番号6)と(B)マウスの一般的なκ軽鎖定常領域(配列番号7)のアミノ酸配列の配列比較を示す図である。アミノ酸残基Thr及びVal(成熟ベドリズマブ軽鎖の114位及び115位に存在する)(配列番号4のアミノ酸133と134)は、ヒトκ軽鎖の定常領域に存在するが、アミノ酸残基Ala及びAsp(成熟LDP-02軽鎖の114位及び115位に存在する)(配列番号5)は、マウスκ軽鎖の定常領域に存在する。
【
図5】ベクターpLKTOK38D(pTOK38MLN02-TVとも呼ばれる)のマップを示す図であり、それは、MLN02のヒト化重鎖及びヒト化軽鎖をコードし、CHO細胞におけるベドリズマブの産生に好適である(pLKTOK38を開示している米国特許出願公開番号2004/0033561A1を参照。pLKTOK38Dは、マップで示した制限部位が軽鎖可変領域をコードする配列に隣接するpLKTOK38の変異体である)。
【
図6】タンパク質濃度、pH及び界面活性剤:タンパク質のモル比への変化の結果としての形成(1日当たりの%)のSEC凝集体の傾きを示す。pH6.0~6.5の範囲では、凝集体の形成は、0.7~1.5のモル比の範囲でのポリソルベート80:タンパク質を伴う製剤に類似する。
【
図7】1.5を超えるポリソルベート80:タンパク質のモル比では、凝集体形成率はpHの上昇につれて増大することを示すグラフである。
【
図8】凝集体の形成に対する賦形剤の効果を示すグラフである。25mMのクエン酸塩、5mMのクエン酸塩、5mMのEDTA、25mMのシステイン、又は5mMのシステインを製剤に加えた。3つの賦形剤はすべて凝集体の形成を低減した。
【
図9】製剤における25mMのクエン酸塩の存在による凝集体形成の低減、及び高いタンパク質濃度と高い凝集体形成率の間の相関を示すグラフである。
【
図10】40℃におけるCEX種の分解の結果を示すグラフである。データはCEX分解に対するpHの影響を示す。
【
図11】製剤のpHに対する温度の影響を示すグラフである。ヒスチジンを含有する製剤のpHは温度とともに低下するが、クエン酸製剤のpHは温度に影響されない。
【
図12】12ヵ月の期間にわたるCEX主要アイソフォームの比率を示すグラフである。pH6.0~6.2を有する製剤はpH6.3~6.4を有する製剤よりも約1~2%少ない主要アイソフォームを示した。
【
図13】粘度が主としてタンパク質の濃度及びpHによって影響を受けることを明らかにする一揃いのグラフである。スクロース、ヒスチジン及びアルギニンの添加は製剤の粘度に対して軽微な影響を有することを示す。
【
図14A】(A)ヒトの成熟GM607’CL抗体κ軽鎖可変領域と(B)ヒト21/28’CL重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。
【
図15】事前に充填されたシリンジにおけるタンパク質製品の構成成分を示す図である。
【
図16】調べた種々のシリンジの注入力に対する(A)タンパク質濃度及び(B)粘度の影響を示す図である。
【
図17】(A)タンパク質濃度と針サイズの関数としての当初の滑り力を示す図である。(B)各シリンジメーカーと針サイズについての当初の滑り力を示す図である。
【
図18】ベドリズマブの吸収特性を示す図である。グラフは筋肉内投与と皮下投与の濃度が一般に重複することを示す。投与のこれらの経路の吸収特性に明らかな肉眼での差異はない。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、抗α4β7抗体を含む医薬製剤に関する。医薬製剤は、抗酸化剤又はキレー
ト剤(たとえば、クエン酸塩)、抗α4β7抗体及び遊離のアミノ酸を含む混合物であっ
てもよい。医薬製剤は、固体形態又は液体形態であり得る。
【0048】
定義
用語「医薬製剤」は、有効であるべき抗体の生物活性を可能にするような形態で抗α4
β7抗体を含有し、製剤が投与される対象に対して受け入れがたいほど毒性である追加の
成分を含有しない調製物を指す。
【0049】
「安定な」製剤は、保存の際、その中の抗体がその物理的な安定性及び/又はその化学
的な安定性及び/又はその生物活性を実質的に保持するものである。態様の1つでは、製
剤は、保存の際、その生物活性と同様にその物理的な安定性及び化学的な安定性を実質的
に保持する。保存期間は一般に製剤の意図される有効期限に基づいて選択される。タンパ
ク質の安定性を測定する種々の分析法が当該技術で利用可能であり、たとえば、Pept
ide and Protein Drug Delivery,247-301,Vi
ncent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New Yor
k,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Del
ivery Rev.10:29-90(1993)にて概説されている。選択した温度
にて選択した期間、安定性を測定することができる。たとえば、液体製剤は40℃にて少
なくとも約3日間、5日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間、安
定である。別の態様では、凍結乾燥した製剤は40℃で少なくとも約2~4週間、少なく
とも約3ヵ月間、少なくとも約6ヵ月間、少なくとも約9ヵ月間、少なくとも約12ヵ月
間、又は少なくとも約18ヵ月間、安定である。液体の及び/又は凍結乾燥した製剤は約
5℃及び/又は25℃にて少なくとも約1ヵ月間、少なくとも約3ヵ月間、少なくとも約
6ヵ月間、少なくとも約9ヵ月間、少なくとも約12ヵ月間、少なくとも約18ヵ月間、
少なくとも約24ヵ月間、少なくとも約30ヵ月間、又は少なくとも約36ヵ月間、安定
であり、及び/又は-20℃及び/又は―70℃にて少なくとも約1ヵ月間、少なくとも
約3ヵ月間、少なくとも約6ヵ月間、少なくとも約9ヵ月間、少なくとも約12ヵ月間、
少なくとも約18ヵ月間、少なくとも約24ヵ月間、少なくとも約30ヵ月間、少なくと
も約36ヵ月間、少なくとも約42ヵ月間、又は少なくとも約48ヵ月間、安定である。
さらに、一部の実施形態では、液体製剤は、凍結(たとえば、-80℃への)及び融解の
後、たとえば、1、2又は3回の凍結及び融解の後、安定であり得る。
【0050】
液体製剤の安定性は、二量体、多量体及び/又は凝集体の形成の評価(たとえば、サイ
ズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いて、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛
行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)、分析用超遠心、光散乱(光子)相関
分光分析法、動的光散乱(DLS)法、静的光散乱法、多角レーザー光散乱法(MALL
S)、フローベース顕微鏡画像化法、電子インピーダンス(コルター)計数法、光不明瞭
化法又は他の液体粒子計数方式、濁度を測定することによる及び/又は視覚検査による)
;カチオン交換クロマトグラフィ(CEX)、等電点電気泳動(IEF)、たとえば、キ
ャピラリ―法(cIEF)又はキャピラリ―ゾーン電気泳動を用いて電荷の非均質性を評
価すること;アミノ末端又はカルボキシ末端の配列解析;質量分光解析;断片化した、無
傷の及び多量体(たとえば、二量体、三量体等)の抗体を比較するためのSDS-PAG
E又はSEC解析;ペプチドマップ(たとえば、トリプシン又はLYS-C)解析;抗体
の生物活性又は抗原結合機能を評価すること;等を含む種々の異なった方法にて定性的に
及び/又は定量的に評価することができる。固体状態の製剤の安定性もまた、たとえば、
X線粉末回析(XRPD)による結晶構造の同定;フーリエ変換赤外線分光分析法(FT
IR)を用いて固体状態における抗体の構造を評価すること;及び示差走査熱量分析(D
SC)法を用いて凍結乾燥固体における熱転移(融解、ガラス転移等)を測定することの
ような直接試験;並びにたとえば、加水分解を介した化学的不安定性の可能性を外挿する
ためにKarl Fisher試験によって水分含量を測定することのような間接試験を
含む種々の異なった方法にて定性的に及び/又は定量的に評価することもできる。不安定
性には、凝集(たとえば、非共有の可溶性凝集、共有の可溶性凝集(たとえば、ジスルフ
ィド結合の再構成/ごちゃ混ぜ)、不溶性凝集)、脱アミド化(たとえば、Asnの脱ア
ミド化)、酸化(たとえば、Metの酸化)、異性化(たとえば、Aspの異性化)、切
抜き/加水分解/断片化(たとえば、ヒンジ領域、断片化)、スクシンイミドの形成、N
-末端の伸長、C-末端のプロセッシング、グリコシル化の差異等の任意の1以上が関与
する。
【0051】
「脱アミド化された」モノクローナル抗体は、1以上のアスパラギン又はそのグルタミ
ン残基がアスパラギン酸又はイソアスパラギン酸に誘導体化されているものである。
【0052】
「脱アミド化に感受性」である抗体は、脱アミド化しやすいことが分っている1以上の
残基を含むものである。
【0053】
「酸化に感受性」である抗体は、酸化しやすいことが分っている1以上の残基を含むも
のである。
【0054】
「凝集に感受性」である抗体は、特に凍結、加熱、乾燥、再構成及び/又は撹拌の際、
他の抗体分子と凝集することが分っているものである。
【0055】
「断片化に感受性」である抗体は、たとえば、そのヒンジ領域にて2以上の断片に切断
されることが分っているものである。
【0056】
「脱アミド化、酸化、凝集又は断片化を低減する」ことによって、異なるpH又は異な
る緩衝液にて製剤化されたモノクローナル抗体に比べて脱アミド化、凝集又は断片化を妨
げる又はその量を減らす(たとえば、80%、60%、50%、40%、30%、20%
又は10%に)ことを意味するように意図される。
【0057】
「凝集体」、「SEC凝集体」又は「可溶性凝集体」は、共有結合、イオン結合又は疎
水性の相互作用を介して一緒に会合してさらに大きなタンパク質体を形成する1を超えて
10以下の抗体タンパク質及び/又は断片である。
【0058】
「不溶性凝集体」又は「粒子」は、共有結合、イオン結合又は疎水性の相互作用を介し
て一緒に会合してさらに大きなタンパク質体を形成する10を超える抗体タンパク質及び
/又は断片である。
【0059】
本明細書で使用されるとき、モノクローナル抗体の「生物活性」は、抗原に結合し、試
験管内又は生体内で測定することができる測定可能な生物反応を生じる抗体の能力を指す
。そのような活性は拮抗性又は作動性であってもよい。
【0060】
細胞表面の分子、「α4β7インテグリン」又は「α4β7」は、α4鎖(CD49D
、ITGA4)及びβ7(ITGB7)のヘテロダイマーである。各鎖は代替のインテグ
リン鎖とヘテロダイマーを形成し、たとえば、α4β1又はαEβ7を形成することがで
きる。ヒトのα4とβ7の遺伝子(GenBank (National Center for Biotechnology Infor
mation, Bethesda, MD)、それぞれRefSeq受入番号NM_000885及びNM_
000889は、B及びTリンパ球、特に記憶CD4+リンパ球によって発現される。多
数のインテグリンα4β7は通常、休止状態又は活動状態に存在し得る。α4β7のリガ
ンドには、血管細胞接着因子(VCAM)、フィブロネクチン及び粘膜アドレシン(MA
dCAM、たとえば、MAdCAM-1)が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用されるとき、「α4β7複合体に結合特異性」を有するヒト免疫グロブ
リン又はその抗原結合断片はα4β7に結合するが、α4β1又はαEβ7には結合しな
い。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「等張の」製剤は、ヒト血液と実質的に同一の浸透圧を有
する。等張の製剤は一般に約250~350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、たと
えば、蒸気圧型又は氷凍結型の浸透圧計を用いて測定することができる。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「緩衝化剤」は、その酸/塩基抱合成分の作用によるpH
の変化に耐性である緩衝液を指す。緩衝化剤は本発明の液体又は固体の製剤に存在し得る
。一部の実施形態では、本発明の緩衝化剤は、製剤のpHを約5.0~約7.5に、約5
.5~約7.5のpHに、約6.0~約7.0のpHに、又は約6.3~約6.5のpH
に調整する。態様の1つでは、単独で又は組み合わせで5.0~7.5の範囲にてpHを
制御するであろう緩衝化剤の例には、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、
クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、カコジレート、2-[N-モルフォリノ]エタン
スルホン酸(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス[ヒドロキシメチル
]メタン(ビス-トリス)、N-[2-アセトアミド]-2-イミノジ酢酸(ADA)、
グリシルグリシン、及び他の有機酸緩衝液が挙げられる。別の態様では、本明細書での緩
衝化剤はヒスチジン又はクエン酸塩である。
【0064】
「ヒスチジン緩衝液」はヒスチジンイオンを含む緩衝液である。ヒスチジン緩衝液の例
には塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンの溶液が挙げ
られる。ヒスチジン緩衝液又はヒスチジン/HCl緩衝液は、pH約5.5~約7.0の
間、pH約6.1~約6.9の間、又はpH約6.5のpHを有する。
【0065】
「クエン酸緩衝液」はクエン酸イオンを含む緩衝液である。クエン酸緩衝液の例にはク
エン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウムの溶
液が挙げられる。クエン酸緩衝液は、約3.0~6.2、pH約5.5~6.5、pH約
6.1~約6.5、pH約6.1、pH約6.2又はpH約6.5のpHを有する。
【0066】
「糖類」は本明細書では、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、
非還元糖などを含む一般式(CH2O)nを有する化合物及びその誘導体である。本明細
書での糖類の例には、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトー
ス、マルトース、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、シリト
ール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マン
ノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール
、マルチトール、ラクチトール、イソ-マルツロース等が挙げられる。糖類は凍結保護剤
であることができる。態様の1つでは、糖類は本明細書では非還元性の二糖類、たとえば
、スクロースである。
【0067】
本明細書では、「界面活性剤」は液体の表面張力を低下させる剤を指す。態様の1つで
は、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。本明細書での界面活性剤の例には、ポリ
ソルベート(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、たとえば、ポリソルベート
20及びポリソルベート80);TRITON(t-オクチルフェノキシポリエトキシエ
タノール、非イオン性界面活性剤、ミシガン州、ミッドランドのダウケミカル社のユニオ
ンカーバイド子会社);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;
ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-又はステアリ
ル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-又はステアリル-サクロ
シン;リノレイル-、ミリスチル-、又はセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、
コカアミドプロピル-、リノレアミドプロピル-、ミリストアミドプロピル-、パルミド
プロピル-、又はイソステアルアミドプロピル-ベタイン(たとえば、ラウロアミドプロ
ピル);ミリストアミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアルアミドプロ
ピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-又は二ナトリウムメチルオレイル-
酒石酸;モノパルミチン酸ソルビタン;及びMONAQUATシリーズ(ニュージャージ
ー州、パターソンのモナ・インダストリーズ社);ポリエチルグリコール(PEG)、ポ
リプロピレングリコール(PPG)及びポロキシエチレンとポロキシプロピレングリコー
ルのコポリマー(たとえば、プルロニクス/ポロキサマー、PF68等)などが挙げられ
る。別の態様では、本明細書での界面活性剤はポリソルベート80である。
【0068】
用語「キレート剤」は、1を超える結合を介して原子に結合する剤を指す。態様の1つ
では、本明細書でのキレート剤の例にはクエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、エチレン
グリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプロール、ジエチレントリアミン五酢酸及びN
,N-ビス(カルボキシメチル)グリシンが挙げられる。別の態様では、キレート剤はク
エン酸塩又はEDTAである。
【0069】
用語「抗酸化剤」は、他の分子の酸化を阻害する剤を指す。抗酸化剤の例には、クエン
酸塩、リポ酸、尿酸、グルタチオン、トコフェロール、カロテン、リコペン、システイン
、ホスホネート化合物、たとえば、エチドロン酸、デスフェロキサミン及びリンゴ酸塩が
挙げられる。
【0070】
本明細書での用語「抗体」は、最も広義で使用され、ヒトの抗体、ヒト化抗体及び非ヒ
ト種に由来する抗体及び単一機能抗体や2機能抗体のような組換え抗原結合形態を含めて
、完全長のモノクローナル抗体、免疫グロブリン、ポリクローナル抗体、たとえば、それ
ぞれ異なる抗原又はエピトープに対する少なくとも2つの完全長の抗体から形成される多
重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)、及びdAbs、scFv、Fab、F(a
b)’2、Fab’を含む個々の抗原結合断片を具体的に網羅する。
【0071】
本明細書で記載される他の賦形剤に対する抗α4β7抗体のモル量及びモル比は、抗体
についての約150,000ダルトンという近似分子量の仮定の上で算出される。実際の
抗体の分子量は、アミノ酸組成及び転写後修飾によって、たとえば、抗体を発現させる細
胞株によって150,000ダルトンとは異なり得る。実際の抗体の分子量は、150,
000ダルトンの±5%であり得る。
【0072】
用語「ヒト抗体」には、ヒトの免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウ
ス(たとえば、XENOMOUSE遺伝的に操作されたマウス(カリフォルニア州、フレ
モントのAbgenix)、HUMAB-MOUSE(登録商標)、KIRIN TC
MOUSE(商標)導入染色体マウス、KMMOUSE(登録商標)(ニュージャージー
州、プリンストンのMEDAREX))に由来する抗体のようなヒトの生殖細胞の免疫グ
ロブリン配列、ヒトファージディスプレイライブラリ、ヒト骨髄腫細胞又はヒトB細胞に
由来する配列を持つ抗体が含まれる。
【0073】
用語「モノクローナル抗体」は本明細書で使用されるとき、実質的に均質な抗体の集団
から得られる抗体を指し、すなわち、たとえば、一般的に軽微な集団で存在する変異体の
ようなモノクローナル抗体の産生の間に生じ得る考えられる変異体を除いて、集団を構成
する個々の抗体が同一であり、及び/又は同一のエピトープを結合する。通常、異なる決
定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的
に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられる。修飾語「モノクローナ
ル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を指し示すのであって
、特定の方法による抗体の調製を必要とするとは解釈されるべきではない。たとえば、本
発明に従って使用されるモノクローナル抗体はKohlerら、Nature,256:
495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよ
いし、又は組換えDNA法(たとえば、米国特許第4,816,567号を参照)によっ
て作製されてもよい。「モノクローナル抗体」は、たとえば、Clacksonら、Na
ture,352:624-628(1991)及びMarksら、J.Mol.Bio
l.,222:581-597(1991)に記載された技法を用いてファージ抗体ライ
ブラリから単離されてもよい。
【0074】
本明細書のモノクローナル抗体は具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に
由来する又は特定の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体における相当する配列
と同一である又は相同である一方で、鎖の残りが別の種に由来する又は別の抗体のクラス
若しくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一である又は相同である「キ
メラ」抗体、同様にそのような抗体の断片を、それらが所望の生物活性を呈する限り、含
む(米国特許第4,816,567号; and Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
USA, 81:6851-6855 (1984))。本明細書での当該キメラ抗体は、非ヒト霊長類(たとえば
、旧世界のサル、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒトの定常領域の配
列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0075】
本発明の製剤で調製されるヒト化免疫グロブリンの「抗原結合断片」は、抗α4β7抗
体の重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも可変領域を含む。たとえば、ベドリズマブの抗原結
合断片は配列番号4のヒト化軽鎖配列のアミノ酸残基20~131を含む。そのような抗
原結合断片の例には、当該技術で既知のヒト化免疫グロブリンのFab断片、Fab’断
片、scFv及びF(ab’)2断片が挙げられる。本発明のヒト化免疫グロブリンの抗
原結合断片は、酵素切断又は組換え法によって作出することができる。たとえば、パパイ
ン切断又はペプシン切断を用いてそれぞれFab断片又はF(ab’)2断片を生成する
ことができる。天然の停止部位の上流に1以上の停止コドンを導入した抗体遺伝子を用い
て種々の切り詰めた形態で抗体を作出することもできる。たとえば、F(ab’)2断片
の重鎖をコードする組換え構築物を設計して重鎖のCH1ドメインとヒンジ領域をコード
するDNA配列を含めることができる。態様の1つでは、抗原結合断片はα4β7インテ
グリンがそのリガンドの1以上(たとえば、粘膜アドレシンMAdCAM(たとえば、M
AdCAM-1)、フィブロネクチン)に結合するのを阻害する。
【0076】
抗体のパパイン消化は、それぞれ単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる
2つの同一の抗原結合断片、及びその名が結晶化し易いその能力を反映する残りの「Fc
」断片を生じる。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を
架橋することが可能であるF(ab’)2断片が得られる。
【0077】
「Fv」は、非共有結合の会合にて重鎖可変ドメイン1つと軽鎖可変ドメイン1つの二
量体から成る抗体断片である。
【0078】
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有
する。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域に由来する1以上のシステインを含む重鎖CH
1ドメインのカルボキシ末端での少数のの残基の付加によってFabとは異なる。Fab
’-SHは定常領域のシステイン残基が少なくとも1つの遊離のチオール基を持つFab
’についての本明細書での記号表示である。F(ab’)2抗体断片は元々、その間にヒ
ンジシステインを有する一対のFab’断片として作出された。抗体断片の他の化学的カ
ップリングも知られている。
【0079】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これ
らのドメインが単一ポリペプチド鎖に存在する。態様の1つでは、Fvポリペプチドはさ
らに、scFvが抗原結合の所望の表面を形成するのを可能にするVH及びVLドメイン
の間でのポリペプチドリンカーを含む。scFvの概説については、Pluckthun
in The Pharmacology of Monoclonal Antib
odies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,S
pringer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)
を参照のこと。
【0080】
用語「2機能性抗体」は、2つの抗原結合部位を持つ小型の抗体断片を指し、その断片
は同一ポリペプチド鎖(VH-VL)にて可変軽鎖ドメイン(VL)に接続された可変重
鎖ドメイン(VH)を含む。同一鎖における2つのドメイン間で対合できるには短すぎる
リンカーを用いて、ドメインを強制的に他の鎖の相補性のドメインと対合させ、2つの抗
原結合部位を創る。2機能性抗体は、たとえば、EP404,097;WO93/111
61;及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,9
0:6444-6448(1993)にてさらに完全に記載されている。
【0081】
「完全長の抗体」は、軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメインCH1、CH2
及びCH3と共に抗原結合可変領域を含むものである。定常ドメインは天然の配列の定常
ドメイン(たとえば、ヒトの天然の配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列の変異体
であってもよい。態様の1つでは、完全長の抗体は1以上のエフェクター機能を有する。
【0082】
「アミノ酸配列の変異体」抗体は本明細書では、主要種抗体とは異なるアミノ酸配列を
持つ抗体である。普通、アミノ酸配列の変異体は、主要種抗体との少なくとも約70%、
少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95
%の相同性を持つであろう。アミノ酸配列の変異体は、主要種抗体のアミノ酸の範囲内で
又はそれに隣接して特定の位置にて置換、欠失及び/又は付加を持つが、抗原結合活性を
保持する。抗体の定常領域の配列における変異は可変領域における変異よりも抗原結合部
位に対する影響が少ない。可変領域では、アミノ酸配列の変異体は、主要種抗体と少なく
とも約90%相同性、少なくとも約95%相同性、少なくとも約97%相同性、少なくと
も約98%相同性、又は少なくとも約99%相同性であろう。
【0083】
「相同性」は、配列を並べ、必要に応じてギャップを導入し、最大比率の相同性を達成
した後、同一であるアミノ酸配列変異体における残基の比率として定義される。配列比較
の方法及びコンピュータプログラムは当該技術で周知である。
【0084】
「治療用モノクローナル抗体」は、ヒト対象の治療法に使用される抗体である。本明細
書で開示される治療用モノクローナル抗体には抗α4β7抗体が含まれる。
【0085】
「グリコシル化変異体」抗体は本明細書では、主要種抗体に連結される1以上の糖質部
分とは異なる、それに連結される1以上の糖質部分を持つ抗体である。グリコシル化変異
体の例には本明細書では、そのFc領域に連結されるG0オリゴ糖の代わりにG1又はG
2オリゴ糖を持つ抗体、その1又は2の軽鎖に連結される1又は2の糖質部分を持つ抗体
、抗体の1又は2の重鎖に連結される糖質がない抗体、等、及びグリコシル化変化体の組
み合わせが挙げられる。
【0086】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然の配列のFc領域又はアミノ酸
配列変異体のFc領域)に起因するそれらの生物活性を指す。抗体のエフェクター機能の
例には、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性の細胞介在性
の細胞傷害性(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(たとえば、B細胞受容体、BC
R)の下方調節などが挙げられる。
【0087】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、完全長の抗体は異なる「クラス」に割り
振られる。完全長の抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、いGE、IgG及び
IgMがあり、これらの幾つかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、たとえば、IgG
1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けられ得る。抗体の異なる
クラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。免疫
グロブリンの様々なクラスのサブユニット構造及び三次元構成は周知である。
【0088】
脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」はその定常ドメインのアミノ酸配列に基づいたカ
ッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明瞭に異なる型の1つに割り振られる。
【0089】
「抗体依存性の細胞介在性の細胞傷害性」及び「ADCC」は、Fc受容体(FcR)
を発現する非特異的な細胞傷害性の細胞(たとえば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好
中球及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の溶解
を引き起こす細胞が介在する反応を指す。ADCCに介在する主要な細胞であるNK細胞
はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRII
Iを発現する。造血系細胞上でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet,An
nu.Rev.Immunol9:457-92(1991)の464ページの表3にて
要約されている。当該分子のADCC活性を評価するには、米国特許第5,500,36
2号又は同第5,821,337号に記載されたような試験管内のADCCアッセイを行
ってもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には末梢血単核細胞(PBM
C)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代わりに又はさらに、当該分子の
ADCC活性は、たとえば、Clynesら、PNAS(USA)95:652-656
(1998)にて開示されたような動物モデルにて生体内で評価されてもよい。
【0090】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は抗体のFc領域に結合する受容体を記載するのに
使用される。態様の1つでは、FcRは天然配列のヒトFcRである。別の態様では、F
cRはIgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、対立遺伝子変異体及びこれら
受容体の選択的にスプライスされた形態を含むFcγRI、FcγRII及びFcγRI
IIのサブクラスを含む。FcγRII受容体には、主としてその細胞質ドメインが異な
る類似のアミノ酸配列を有するFcγRIIA(「活性型受容体」)及びFcγRIIB
(「阻害型受容体」)が挙げられる。活性型受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイ
ンに免疫受容体チロシンを基にした活性化モチーフ(ITIM)を含有する。阻害型受容
体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンを基にした阻害モチーフ
(ITIM)を含有する(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15
:203-234(1997)における概説を参照)。FcRは、Ravetch及びK
inet,Annu.Rev.Immunol9:457-92(1991);Cape
lら、Immunomethods 4:25-34(1994);並びにde Haa
sら、J.Lab.Clin. Med.126:33-41(1995)にて概説され
ている。将来同定されるものを含む他のFcRは本明細書では用語「FcR」によって包
含される。用語はまた、母体IgGの胎児への移行に関与する新生児受容体、FcRnも
含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:24
9 (1994))。
【0091】
用語「超可変領域」は本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸
残基を指す。超可変領域は一般に「相補性決定領域」又は「CDR」(たとえば、軽鎖可
変領域における残基24-34(L1)、50-56(L2)及び89-97(L3)及
び重鎖可変領域における残基31-35(H1)、50-65(H2)及び95-102
(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.
Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))に
由来するアミノ酸残基及び/又は「超可変ループ」(たとえば、軽鎖可変領域における残
基26-32(L1)、50-52(L2)及び91-96(L3)及び重鎖可変領域に
おける残基26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3);Chothi
a and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))に由来する残基を含む。「フレームワ
ーク領域」又は「FR」の残基は、本明細書で定義されるような超可変領域の残基以外の
それら可変ドメインの残基である。超可変領域又はそのCDR1つの抗体鎖又は別の鎖又
は別のタンパク質に移して得られる(複合)抗体又は結合タンパク質に抗原結合特異性を
付与する。
【0092】
非ヒト(たとえば、齧歯類)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最
少限の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの部分については、ヒト化抗体はヒト
免疫グロブリン(レシピエント)であり、レシピエントの超可変領域に由来する残基が、
所望の特異性、親和性及び能力を有する、たとえば、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト
霊長類のような非ヒト種の超可変領域に由来する残基(ドナー抗体)で置き換えられる。
一部の例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(FR)の残基が相当する非ヒトの
残基で置き換えられる。さらに、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体に見られ
ない残基を含み得る。これらの修飾を行って抗体の性能をさらに改良する。一般に、ヒト
化抗体は、少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ル
ープのすべて又は実質的にすべては非ヒト免疫グロブリンのそれに相当し、FRのすべて
又は実質的にすべてはヒト免疫グロブリンのそれである。ヒト化抗体は任意で、免疫グロ
ブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常ヒト免疫グロブリンのそれを含むであろ
う。さらなる詳細については、Jonesら、Nature、321:522-525(
1986);Riechmannら、Nature、332:323-329(1988
);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596
(1992)を参照のこと。
【0093】
「親和性成熟」抗体は、それらの変化を持たない親抗体に比べて抗原への抗体の親和性
を改善する、その1以上の超可変領域における1以上の変化をもつものである。態様の1
つでは、親和性成熟抗体は、標的抗原についてナノモル又はさらにピコモルの親和性を有
するであろう。親和性成熟抗体は、当該技術で既知の手順によって作出される。Mark
sら、Bio/Technology、10:779-783(1992)はVHとVL
の入れ替えによる親和性成熟を記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基の無
作為変異誘発はBarbasら、Proc.Nat.Acad.Sci,USA、91:
3809-3813(1994);Schierら、Gene、169:147-155
(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994-2004(1
995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):3310-9(19
95);及びHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889-896(19
92)によって記載されている。
【0094】
「単離された」抗体は、その天然環境の成分から特定され、分離されている及び/又は
回収されているものである。特定の実施形態では、抗体は、(1)ローリー法で測定され
るときタンパク質の95重量%を超えて、或いは99重量%を超えて、(2)スピンキャ
ップシークエネータの使用によって少なくとも15残基のN末端又内部のアミノ酸配列を
得るのに十分な程度に、又は(3)クマシーブルー染色又は銀染色を用いて還元条件下若
しくは非還元条件下でのSDS-PAGEによる均質性まで精製されるであろう。単離さ
れた抗体には、抗体の天然環境の成分の少なくとも1つが存在しないので、組換え細胞内
のその場での抗体が含まれる。しかしながら、普通、単離された抗体は少なくとも1回の
精製工程で調製されるであろう。
【0095】
「治療」は治療療法及び予防的な又は防御的な対策の双方を指す。治療を必要とするも
のには、すでに疾患のあるものと同様に疾患又はその再発が防がれるべきものが含まれる
。従って、本明細書で治療される患者は、疾患を有すると診断されていてもよく、又は疾
患に罹りやすい若しくは感受性であってもよい。用語「患者」及び「対象」は本明細書で
は相互交換可能に使用される。
【0096】
製剤化される抗体は実質的に純粋であり、望ましくは実質的に均質である(混入するタ
ンパク質等を含まない)。「実質的に純粋な」抗体は、タンパク質の総重量に基づいて少
なくとも約90重量%、或いは少なくとも約95又は97重量%の抗体を含む組成物を意
味する。「実質的に均質な」抗体は、タンパク質の総重量に基づいて少なくとも約99重
量%のタンパク質が特異抗体、たとえば、抗α4β7抗体であるタンパク質を含む組成物
を意味する。
【0097】
「臨床的な寛解」は、潰瘍性大腸炎の対象に関して本明細書で使用されるとき、完全な
Mayoスコア2点以下であり及び1点を超える個々のサブスコアがないことを指す。ク
ローン病の「臨床的な寛解」は150点以下のCDAIスコアを指す。
【0098】
「臨床的な応答」は、潰瘍性大腸炎の対象に関して本明細書で使用されるとき、1点以
上の直腸出血サブスコアの低下又は1点以下の絶対直腸出血スコアを伴った、完全May
oスコアの3点以上又はベースラインからの30%の低下(外来では完全Mayoスコア
を実施しなかったのであれば、部分Mayoスコアの2点以上又はベースラインからの2
5%以上)を指す。「臨床的な応答」は、クローン病の対象に関して本明細書で使用され
るとき、ベースライン(0週)からのCDAIスコアでの70点以上の低下を指す。
【0099】
「粘膜治癒」は、潰瘍性大腸炎の対象に関して本明細書で使用されるとき、1点以下の
内視鏡サブスコアを指す。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「治療の失敗」は潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療につ
いて疾患の悪化、救急療法の必要性、又は外科的介入を指す。救急療法は、新しい又は未
解決の潰瘍性大腸炎又はクローン病の症状を治療するのに必要とされる新しい投薬又はベ
ースライン投薬の用量に増加である(慢性下痢を制御するための下痢止め剤以外)。
【0101】
製剤
本明細書で記載されるように、抗α4β7抗体は抗酸化剤又はキレート剤と共に製剤化
されるとさらに安定であることが発見された。加えて、本明細書で記載されるように、抗
α4β7抗体は凝集体形成を減らすように製剤化され得る(たとえば、製剤化におけるポ
リソルベート80の量を減らし得る)。たとえば、クエン酸塩又はEDTAと抗α4β7
抗体を含む製剤は保存中の抗体の凝集体形成の比率を減らす。製剤を酸素なしで保存して
凝集体形成を減らし得る。一実施形態では、製剤は、25℃にて12ヵ月後、約2.5%
未満の抗体の凝集体形成を有する。一実施形態では、製剤は、25℃にて12ヵ月後、約
2.0%未満の抗体の凝集体形成を有する。一実施形態では、製剤は、25℃にて12ヵ
月後、約1.6%未満の抗体の凝集体形成を有する。一実施形態では、製剤は、25℃に
て12ヵ月後、約1.3%未満の抗体の凝集体形成を有する。一実施形態では、製剤は、
25℃にて12ヵ月後、約1.0%未満の抗体の凝集体形成を有する。別の実施形態では
、製剤は、5℃にて12ヵ月後、約0.5%未満の抗体の凝集体形成を有する。別の実施
形態では、製剤は、5℃にて12ヵ月後、約0.3%未満の抗体の凝集体形成を有する。
【0102】
本発明は、第1の態様にて安定な抗α4β7抗体製剤を提供する。製剤は、抗α4β7
抗体と抗酸化剤又はキレート剤を含む。製剤はまた1以上の遊離のアミノ酸であり得る緩
衝化剤も含む。製剤はまた任意でさらに界面活性剤を含む。製剤中の抗体は完全長の抗体
又は、たとえば、Fab、Fv、scFv、Fab’若しくはF(ab’)2断片のよう
なその抗原結合断片であり得る。
【0103】
製剤から酸素を取り除くことによって凝集体形成を低減することができる。或いは、製
剤は抗酸化剤又はキレート剤を含有することができる。態様の1つでは、製剤に含めるこ
とができる例となる抗酸化剤及びキレート剤には、リポ酸、尿酸、グルタチオン、トコフ
ェロール、カロテン、リコペン、システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エ
チレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプロール、ジエチレントリアミン五酢酸
及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン、ホスホネート化合物、たとえば、エチ
ドロン酸、デスフェロキサミン、リンゴ酸塩及びクエン酸塩が挙げられる。一部の抗酸化
剤及びキレート剤は製剤の保存中、凝集体形成の比率を下げることができる。別の態様で
は、キレート剤及び/又は抗酸化剤はクエン酸塩又はEDTAである。液体製剤のための
例となるキレート剤の濃度は、0mM~約60mM、約5mM~約50mM、約5mM~
約15mM、約10mM~約25mM、及び約20~約30mMを超えない範囲である。
別の態様では、キレート剤の濃度は約0mM~約30mMである。一実施形態では、キレ
ート剤及び/又は抗酸化剤はクエン酸塩であり、クエン酸塩の濃度は0mM~約15mM
、約0mM~約10mM又は約0mM~約5mMである。
【0104】
製剤は、所望の遊離のアミノ酸を1つ含有することができ、それはL-形態、D-形態
又はこれらの形態の所望の混合物であることができる。態様の1つでは、製剤に含まれ得
る遊離のアミノ酸には、たとえば、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グル
タミン酸、セリン、リジン、トリプトファン、バリン、システイン、及びそれらの組み合
わせが挙げられる。一部のアミノ酸は、製造、乾燥、凍結乾燥及び/又は保存の間での分
解に対して、たとえば、水素結合、塩架橋、抗酸化特性又は疎水性相互作用を介して、又
はタンパク質表面からの排除によってタンパク質を安定化することができる。アミノ酸は
、等張性調節因子として作用することができ、又は製剤の粘度を下げるように作用するこ
とができる。別の態様では、ヒスチジンやアルギニンのような遊離のアミノ酸は凍結保護
剤として作用することができ、製剤の成分として凍結乾燥された場合、結晶化しない。グ
ルタミン酸やヒスチジンのような遊離のアミノ酸は、単独で又は組み合わせで、5~7.
5の範囲のpHにて水溶液において緩衝化剤として作用することができる。その上さらに
別の態様では、製剤はヒスチジン、アルギニン又はヒスチジンとアルギニンの組み合わせ
を含有する。その上さらに別の態様では、液体製剤のための遊離のアミノ酸の濃度は、約
9mM~約0.5M、たとえば、約10mM~約90mM、約10mM~約75mM、約
10mM~約40mM、約25mM~約50mM、約15mM~約300mM、約20m
M~約200mM、約25mM~約150mM、約50mM~約75mM、約50mM~
約120mM、約50~約150mM、又は約50mM又は約125mMの範囲内である
。
【0105】
製剤は任意でさらに、たとえば、可溶性及び不溶性の凝集体形成を制御するために少な
くとも1つの界面活性剤を含有することができる。態様の1つでは、界面活性剤は非イオ
ン性界面活性剤である。別の態様では、界面活性剤はイオン性の界面活性剤である。製剤
に含めることができる例となる界面活性剤には、たとえば、ポリソルベート20、ポリソ
ルベート80、ポロキサマー(プルロニック(登録商標)及びそれらの組み合わせが挙げ
られる。存在する場合、界面活性剤は一般に、シリコーン、充填バイアル、事前に充填さ
れたシリンジ及び/又はカートリッジの存在下で、たとえば、ビン詰め、凍結、乾燥、凍
結乾燥及び/又は再構成の間、抗体の不溶性の凝集体の形成を低減する量で含められる。
界面活性剤の濃度は一般に、約0.0001%~約1.0%、約0.01%~約0.5%
、たとえば、約0.05%、0.1%、0.15%、0.20%、0.3%、0.4%、
又は0.5%(w/v)である。高い濃度の界面活性剤、たとえば、ポリソルベート80
はさらに多くのSEC凝集体形成をもたらし得る。ポリソルベート80の濃度を下げるこ
とは保存の際のSEC凝集体形成を減らすことができる。態様の1つでは、界面活性剤と
抗体のモル比は約0.7:1~約2.0:1である。別の態様では、界面活性剤と抗体の
モル比は1.5:1である。
【0106】
抗α4β7抗体製剤の実施形態は高濃度の抗α4β7抗体を含有する。たとえば、一実
施形態では、液体製剤は、少なくとも約60mg/ml、少なくとも約70mg/ml、
少なくとも約80mg/ml、少なくとも約90mg/ml、少なくとも約100mg/
ml、少なくとも約110mg/ml、少なくとも約120mg/ml、少なくとも約1
30mg/ml、少なくとも約140mg/ml、少なくとも約150mg/ml、少な
くとも約160mg/ml、少なくとも約170mg/ml、少なくとも約180mg/
ml、少なくとも約190mg/ml、少なくとも約200mg/ml、少なくとも約2
50mg/ml、少なくとも約300mg/ml、約60mg/ml~約190mg/m
l、約60mg/ml~約170mg/mlの抗α4β7抗体、約150mg/ml~約
180mg/ml、又は約160mg/ml又は約165mg/mlの抗α4β7抗体を
含むことができる。或いは、別の態様では、液体製剤は少なくとも約154mg/ml、
少なくとも約176mg/mlを含むことができる。
【0107】
製剤は液体又は固体であることができる。液体製剤は、水又は、水・アルコール混合物
のような水性/有機性混合物のような好適な水性溶媒にて調製される水溶液又は水性懸濁
液である。液体製剤は、たとえば、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5
、6.6、6.7、6.8、又は6.9のような約5.5~約7.5の間、約6.0~7
.3の間、約6.0~約7.0の間、約6.0~6.5の間、約6.0~6.3の間、約
6.3~7.1の間、又は約6.4~7.0の間、又は6.3~6.8の間のpHを有す
る。液体製剤は室温、冷蔵(たとえば、2~8℃)又は冷凍(たとえば、-20℃又は-
70℃)で保存することができる。
【0108】
固体製剤は好適な方法で調製することができ、たとえば、凍結保護剤の添加によってケ
ーキ又は粉末の形態であることができる。態様の1つでは、本明細書で記載される液体製
剤を乾燥させることによって、たとえば、凍結乾燥又はスプレー乾燥によって固体製剤を
調製する。製剤が固体製剤である場合、製剤は、わずか約5%、わずか約4.5%、わず
か約4%、わずか約3.5%、わずか約3%、わずか約2.5%、わずか約2%、わずか
約1.5%、わずか約1%の水分を含むことができ、又は実質的に無水である。固体製剤
は溶解することができ、すなわち、好適な媒体で再構成し、投与に好適な液体になること
ができる。固体製剤を再構成するのに好適な溶媒には、水、等張の生理食塩水、緩衝液、
たとえば、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー(乳酸加又はデキストロース)溶液、必須
無機質媒体、アルコール/水溶液、デキストロース溶液等が挙げられる。溶媒の量は、乾
燥の前の量よりも高い、同じ又は低い治療用タンパク質の濃度を生じ得る。別の態様では
、再構成された抗α4β7抗体の濃度は乾燥前の液体製剤と同じ濃度である。
【0109】
製剤は無菌であり得るが、これは、製剤の調製の前又は後でヒト対象への投与に好適な
無菌医薬製剤を生成するための当業者に既知の手順に従って達成することができる。製剤
は、たとえば、乾燥前及び/又は再構成後、小さな孔を介した濾過によって、無菌処理を
介して又は紫外線照射への暴露によって、液体として無菌化することができる。フィルタ
ーの孔サイズは微生物を濾過するには0.1μm~0.2μmであり、ウイルス粒子を濾
過するには10~20nmであることができる。代わりに又はさらに、乾燥製剤は、たと
えば、γ線照射に暴露することによって無菌化することができる。態様の1つでは、抗α
4β7抗体液体製剤は乾燥前の濾過によって無菌化される。
【0110】
態様の1つでは、製剤は保存に際して安定である。製剤の安定性を確認するために種々
の安定性アッセイが技量のある医師に利用可能である。たとえば、液体製剤は、約25℃
での保存で少なくとも約4週間、少なくとも約2ヵ月間、少なくとも約3ヵ月間、又は少
なくとも約6ヵ月間、又は少なくとも約9ヵ月間、又は少なくとも約12ヵ月間;約2~
8oCでは少なくとも約3ヵ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくと
も約3年間以上安定であり得る。代わりに又はさらに、製剤における抗体は約15℃での
保存にて少なくとも約4週間、少なくとも約3ヵ月間、少なくとも約6ヵ月間、少なくと
も約9ヵ月間、少なくとも約1年間以上安定であり得る。代わりに又はさらに、製剤にお
ける抗体は約-20℃又は-70℃での保存にて少なくとも約4週間;少なくとも約3ヵ
月間、少なくとも約6ヵ月間、少なくとも約9ヵ月間、少なくとも約1年間、少なくとも
約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間以上安定であり得る。
【0111】
安定性は、製剤化の前後、同様に言及した温度で保存した後に、製剤における抗体の物
理的安定性、化学的安定性及び/又は生物学的安定性を評価することによって調べること
ができる。液体製剤又は再構成した乾燥粉末の物理的な及び/又は化学的な安定性は、可
溶性及び不溶性の凝集体形成の評価(たとえば、サイズ排除クロマトグラフィ、分析用超
遠心、MALDI-TOFMS、光散乱法(動的(DLS)又はMALLS)、フローベ
ースの顕微鏡画像化、又は他の液体粒子計数方式を用いて、濁度を測定することによる、
密度勾配遠心による及び/又は視覚検査による);カチオン交換クロマトグラフィ(Vlas
ak and Ionescu, Curr. Pharm. Biotechnol. 9:468-481 (2008) and Harris et al. J. C
hromatogr. B Biomed. Sci. Appl. 752:233-245 (2001)も参照)、等電点電気泳動又はキ
ャピラリ―ゾーン電気泳動を用いて電荷不均質性を評価することによる;アミノ末端又は
カルボキシ末端の配列解析;質量分光測定解析;断片化した、無傷の及び多量体(たとえ
ば、二量体、三量体等)の抗体を比較するためのSDS-PAGE解析;ペプチドマップ
(たとえば、トリプシン又はLYS等)を含む種々の異なる方法(たとえば、Analytical
Techniques for Biopharmaceutical Development, Rodriguez-Diaz et al. eds. Inform
a Healthcare (2005)を参照)にて定性的に及び/又は定量的に評価することができる。
不安定性は、凝集、脱アミド化(たとえば、Asnの脱アミド化)、酸化(たとえば、M
etの酸化)、異性化(たとえば、Aspの異性化)、変性、クリッピング/加水分解/
断片化(たとえば、ヒンジ領域の断片化)、スクシンイミドの形成、非対合システイン、
N-末端の伸長、C-末端のプロセッシング、グリコシル化の差異等を生じ得る。生物活
性又は抗原結合機能、たとえば、抗α4β7抗体のMAdCAM(たとえば、MAdCA
M-1)への結合又はα4β7インテグリンを発現している細胞のMAdCAM(たとえ
ば、MAdCAM-1)、たとえば、不動化MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1
)への結合の阻害は、技量のある医師に利用可能な種々の技法を用いて評価することがで
きる(たとえば、 Soler et al., J. Pharmacol. Exper. Ther. 330:864-875 (2009)を参
照)。乾燥製剤の水分の測定は、製剤がどのように化学的な又は物理的な分解を受けるか
を示し、水分が高いほうが分解はさらに進む。
【0112】
安定な製剤は、抗α4β7抗体の低い免疫原性に寄与することができる。免疫原性の抗
α4β7抗体は、ヒト対象又は患者においてヒト/抗ヒト抗体(HAHA)反応を招き得
る。抗α4β7抗体に対してHAHA反応を発症する患者は、治療の際、有害事象(たと
えば、部位注入反応)を有することができ、又は抗α4β7抗体を迅速に排除することが
でき、治療により計画されたのよりも低い用量を生じる。抗α4β7抗体治療の早期試験
の報告(Feagen et al. (2005) N. Engl. J. Med. 352:2499-2507)は、治療した患者の
44%にて8週までにヒト抗ヒト抗体が発生することを示した。この試験における抗体は
液体として保存され、ポリソルベートを含有しなかった。
【0113】
一部の実施形態では、製剤は、あまり安定ではない製剤のHAHAの結果に比べて、H
AHA陰性の患者の比率を患者の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60
%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%まで増やすことができ
る。
【0114】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、≧50%の主要な荷電アイソフォーム、
≧55%の主要な荷電アイソフォーム、又は65~70%の主要な荷電アイソフォームを
有する。他の態様では、安定な抗α4β7抗体製剤は、≦45%の酸性荷電アイソフォー
ム、≦40%の酸性荷電アイソフォーム、≦30%の酸性荷電アイソフォーム又は22~
28%の酸性荷電アイソフォームを有する。さらに他の態様では、安定な抗α4β7抗体
製剤は、≦25%の塩基性アイソフォーム、≦20%の塩基性アイソフォーム、≦15%
の塩基性アイソフォーム、約5%の塩基性アイソフォーム又は約10%の塩基性アイソフ
ォームを有する。態様の1つでは、安定な抗α4β7抗体製剤は、たとえば、CEXによ
って測定されると、≧55%の主要アイソフォーム、≦30%の酸性アイソフォーム及び
/又は≦20%の塩基性アイソフォームを有する。別の態様では、たとえば、cIEFに
よって測定されると、≧50%の主要アイソフォーム、≦45%の酸性アイソフォーム及
び/又は≦10%の塩基性アイソフォームを有する。
【0115】
一部の態様では、抗α4β7抗体乾燥固体製剤は、≦10%の水分、≦5%の水分又は
<2.5%の水分を有する。再構成に必要とされる時間は、≦60分、≦50分又は≦4
0分又は≦30分又は≦20分である。
【0116】
液体製剤又は再構成製剤における単量体含量及び/又は凝集体含量(たとえば、二量体
、三量体、四量体、五量体、オリゴマー及びさらに高次の凝集体として)は、SEC、分
析用超遠心、光散乱法(DLS又はMALLS)、MALDI-TOFMS又はナノスケ
ールの測定、たとえば、ナノ粒子追跡解析NTA(英国、ウィルトシャーのNanoSi
ght社)によって測定することができる。凝集体の解像、性状分析及び定量は、たとえ
ば、さらに長いカラムによって又は当初の分析用SECカラムに沿って第2以上のSEC
カラムを連続連結することによってSECカラム分離の長さを増すこと、光散乱によって
単量体のSEC定量を補完することを含む多数の方法にて、又はNTAを用いることによ
って達成することができる。
【0117】
一実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、≧90%の単量体抗体、≧95%の単量体抗
体、又は97~99%の単量体抗体を有する。別の実施形態では、抗α4β7抗体製剤に
おける物質の大半は、≦20nm、≦15nm、≦10nm、又は約5~約7nmの平均
半径を有する。態様の1つでは、抗α4β7抗体製剤はタンパク質解析によって≧80%
量の重鎖と軽鎖を有する。態様の1つでは、≧90%の重鎖と軽鎖がある。別の態様では
、抗α4β7抗体製剤は≦10%の凝集体、≦5%の凝集体、≦2.5%の凝集体、≦1
.5%の凝集体、≦1%の凝集体又は≦0.5%の凝集体を有する。別の態様では、抗α
4β7抗体製剤は≧96%の単量体及び/又は≦2.5%の凝集体を有する。さらに別の
態様では、抗α4β7抗体製剤は≧99%の単量体及び/又は≦1%の凝集体を有する。
【0118】
たとえば、液体製剤又は再構成した製剤における凝集体又は溶解されない賦形剤の1又
は2ミクロンを超える粒度は、光不明瞭化法(たとえば、Hach Ultra Ana
lytics(オレゴン州、グランパス)による液体粒子計数方式(HIAC)、顕微鏡
、コールターカウンタ、又はBrightwell(カナダ、オタワ)によるマイクロ流
体工学画像化(MFI)のようなデジタル(フローベース)顕微鏡画像化に基づく方式、
又は流体画像化法(メイン州、ヤーマス)によるFLOWCAM(登録商標)画像粒子ア
ナライザによって測定することができる。態様の1つでは、抗α4β7抗体調製物におけ
る粒度は、約30μm、約25μm、約10μm、約5μm、約2μm、又は1μm以下
である。粒子の量は、抗体製剤においてできるだけ減らすべきである。態様の1つでは、
抗α4β7抗体製剤における粒子の量は、1回量包装(米国薬局方、Chp.788、光
不明瞭化計数法;顕微鏡定量法による量の半分)において<6000粒子≧10μm直径
及び/又は<600粒子≧25μm直径である。別の態様では、抗α4β7抗体製剤の一
用量における粒子の量は約1000粒子≧10μm及び0~100粒子≧25μm(MF
I法)である。さらに別の態様では、抗α4β7抗体製剤の一用量における、たとえば、
MFI測定によるミリリットル当たりの粒子の量は2~10μmの粒子でmL当たり約5
00~約2000、≧10μmの粒子でmL当たり約50~約350、及び≧25μmの
粒子でmL当たり約0~約50である。さらに別の態様では、抗α4β7抗体製剤の一用
量における粒子の量は2~10μmの粒子でmL当たり約500~約100,000、約
1000~約5000又は約1500~約3000である。
【0119】
皮下投与又は筋肉内投与のために抗α4β7抗体製剤の粘度を制御することができる。
粘度はタンパク質の濃度及びpHに影響され得る。たとえば、タンパク質の濃度が高まる
につれて粘度は上昇し得る。pHの上昇は、抗α4β7抗体製剤の粘度を下げることがで
きる。一部のタンパク質製剤では、塩化ナトリウムを加えて製剤の粘度を低下させる。抗
α4β7抗体製剤の粘度に影響することができる追加の成分はヒスチジン及びアルギニン
のようなアミノ酸である。
【0120】
たとえば、皮下投与又は筋肉内投与のために抗α4β7抗体製剤は、等張(たとえば、
250~350mOsm)又は高張(たとえば、350mOsmを超える、450mOs
mを超える、550mOsmを超える、650mOsmを超える)であることができる。
態様の1つでは、抗α4β7抗体製剤は高張ではなく、たとえば、250mOsm未満で
ある。別の態様では、抗α4β7抗体製剤は約350~約400mOsm、約400~約
450mOsm又は約350~約450mOsmである。
【0121】
変性を招く不安定性は、示差走査熱量測定(DSC)によって評価することができる。
抗体は、DSCにおいて2つの溶融温度(Tm)、たとえば、Tm1及びTm2を有する
。特定の賦形剤は元々の抗α4β7抗体の安定性に影響を及ぼし得る。DSCによって製
剤を比較するとより高い溶融温度の知見は、より高いTmを持つより安定な抗α4β7抗
体製剤を示し得る。たとえば、pH5.7では、抗α4β7抗体製剤のTmは低いので、
pH6.5よりも安定性は低い。態様の1つでは、抗α4β7抗体製剤のTm1は>60
℃である。別の態様では、抗α4β7抗体製剤のTm1は約65℃~約70℃又は約69
℃である。態様の1つでは、抗α4β7抗体製剤のTm2は>80℃である。別の態様で
は、抗α4β7抗体製剤のTm2は約82℃~約88℃又は86℃である。
【0122】
一実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、参照標準の抗α4β7抗体の約60%~約1
40%の結合親和性又はEC50値を有する。態様の1つでは、本明細書で記載される製
剤における抗α4β7抗体は、参照標準の約80%~約120%の値で、たとえば、細胞
(WO98/06248又は米国特許第7,147,851号)上のα4β7に結合する
。別の実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、α4β7インテグリンを発現している細胞
のMAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)、たとえば、MAdCAM-Igキメラ
(参照標準試料でもある米国特許出願番号20070122404を参照)への結合を少
なくとも50%又は少なくとも60%阻害する能力を有する。
【0123】
上記で言及したように、製剤の凍結は本明細書では具体的に企図される。従って、凍結
融解に際する安定性について製剤を調べることができる。その結果、液体製剤における抗
体は製剤の凍結融解に際して安定であり得るし、たとえば、抗体は1、2、3、4、5回
以上の凍結融解の後、安定であることができる。
【0124】
一部の実施形態では、医薬製剤は、少なくとも約60mg/mL~約170mg/mL
の抗α4β7抗体、緩衝化剤(たとえば、ヒスチジン)及び少なくとも約5mMのクエン
酸塩を含む液体製剤である。他の実施形態では、製剤は、少なくとも約60mg/mL~
約170mg/mLの抗α4β7抗体、緩衝化剤(たとえば、クエン酸塩)、アミノ酸(
たとえば、アルギニン)及び界面活性剤(たとえば、ポリソルベート80)を含む液体製
剤である。
【0125】
別の実施形態では、製剤は、少なくとも約140mg/mL又は約150mg/mL~
約170mg/mL、たとえば、約160mg/mLの抗α4β7抗体、緩衝化剤(たと
えば、ヒスチジン)、少なくとも5mMのクエン酸塩及び遊離のアミノ酸(たとえば、ア
ルギニン)を含む。
【0126】
さらに別の実施形態では、製剤は、少なくとも約160mg/mLの抗α4β7抗体、
緩衝化剤(たとえば、ヒスチジン)、少なくとも5mMのクエン酸塩、0.2%のポリソ
ルベート80及び遊離のアミノ酸(たとえば、アルギニン)を含む。実施形態では、製剤
における緩衝液の濃度は約15~約75mM、約25~約65mM又は約50mMである
。製剤における遊離のアミノ酸の濃度は、約50~約250mM、約75~約200mM
、約100~約150mM又は約125mMであり;製剤におけるポリソルベート80の
濃度は約0.05%~0.4%、約0.1%~0.4%、約0.1%~0.3%、約0.
1%~0.25%、約0.1%~0.2%又は約0.2%である。
【0127】
一部の実施形態では、製剤は抗α4β7抗体、クエン酸塩、ヒスチジン、アルギニン、
ポリソルベート80、及び凍結防止剤又は非還元糖のような糖を含む固体製剤(たとえば
、凍結乾燥製剤)である。糖は液体製剤に含められて0%~20%又は約6%~約10%
の濃度に達する。
【0128】
一実施形態では、製剤は凍結乾燥され、容器1つ、たとえば、バイアル、シリンジ、カ
ートリッジ、及び/又は自動注入器にて単回用量として保存される。容器は、それを必要
とする患者にそれを投与するまで2~8℃又は25℃で保存することができる。バイアル
はたとえば、5、10又は20ccのバイアル(たとえば、160mg/mL用量のため
の)であり得る。バイアルは、少なくとも約20mg、少なくとも約50mg、少なくと
も約70mg、少なくとも約80mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120m
g、少なくとも約155mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少な
くとも約240mg、少なくとも約300mg、少なくとも約360mg、少なくとも約
400mg、少なくとも約540mg、又は少なくとも約900mgの抗α4β7抗体を
含有し得る。態様の1つでは、容器は約165mgの抗α4β7抗体を含有する。
【0129】
別の実施形態では、製剤は液体であり、1又は2のバイアル、カートリッジ、シリンジ
又は自動注入器にて単回用量として保存される。バイアル、カートリッジ、シリンジ又は
自動注入器は、その内容物、たとえば、抗α4β7抗体がそれを必要とする対象に投与さ
れるまで約2~8℃で保存することができる。バイアルはたとえば、5、10又は20c
cのバイアル(たとえば、160mg/mL用量のための)であり得る。バイアルは、少
なくとも約20mg、少なくとも約50mg、少なくとも約70mg、少なくとも約80
mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120mg、少なくとも約155mg、少
なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少なくとも約240mg、少なくとも
約300mg、少なくとも約360mg、少なくとも約400mg、少なくとも約540
mg、又は少なくとも約900mgの抗α4β7抗体を含有し得る。態様の1つでは、バ
イアルは約165mgの抗α4β7抗体を含有する。シリンジ又はカートリッジは1mL
若しくは2mL容器(たとえば、160mg/mL用量のための)又はたとえば、さらに
高い用量(少なくとも320mg又は400mg以上)のための2mLを超える容器であ
り得る。シリンジ又はカートリッジは、少なくとも約20mg、少なくとも約50mg、
少なくとも約70mg、少なくとも約80mg、少なくとも約100mg、少なくとも約
120mg、少なくとも約155mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200m
g、少なくとも約240mg、少なくとも約300mg、少なくとも約360mg、少な
くとも約400mg、又は少なくとも約500mgの抗α4β7抗体を含有し得る。
【0130】
Remington:The Science and Practice of P
harmacy,第21版,Hendrickson,R.Ed.(2005)に記載さ
れたような1以上他の薬学上許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤は、それらが製剤の
所望の特徴に有害に影響しないという条件で製剤に含められ得る。許容可能なキャリア、
賦形剤又は安定剤は、採用される投与量及び濃度にてレシピエントに非毒性であり、それ
らには、追加の緩衝化剤;共溶媒;クエン酸塩及びシステインを含む抗酸化剤;EDTA
のようなキレート剤;金属錯体(たとえば、Zn/タンパク質錯体);ポリエステルのよ
うな生分解性ポリマー;保存剤;注入の容易さのための容器壁潤滑剤、たとえば、シリコ
ーン、鉱物油、グリセリン又はTRIBOGLIDE(登録商標)(Tribo Fil
m Research社)パーフルオロポリエーテル誘導体及び/又はナトリウムのよう
な塩形成の対イオンが挙げられる。
【0131】
α4β7抗体
製剤での使用に好適な抗α4β7抗体には、たとえば、完全なヒト抗体、マウス抗体、
ウサギ抗体等のような所望の供給源からの抗体、及びたとえば、キメラ抗体、ヒト化抗体
等のような所望の操作された抗体が含まれる。たとえば、Fab、Fv、scFv、Fa
b’及びF(ab’)2断片のような、これらの種類の抗体のいずれかの抗原結合断片も
製剤での使用に好適である。
【0132】
抗α4β7抗体は、α4鎖上のエピトープ(たとえば、ヒト化MAb21.6(Bendig
et al., U.S. Pat. No. 5,840,299))、β7鎖上のエピトープ(FIB504又はヒト化
誘導体(たとえば、Fongらの米国特許第7,528,236号))、又はα4鎖とβ
7鎖の会合によって形成される組み合わせエピトープに結合することができる。態様の1
つでは、抗体はα4β7複合体上の組み合わせエピトープを結合するが、鎖が互いに会合
しない限り、α4鎖又はβ7鎖上のエピトープを結合しない。α4インテグリンのβ7イ
ンテグリンとの会合は、エピトープを一緒に含む両鎖上に存在する残基を近接させること
によって、又は一方の鎖、たとえば、α4インテグリン鎖又はβ7インテグリン鎖の上で
、適当なインテグリンの相手の非存在下又はインテグリン活性化の非存在下では抗体結合
にアクセスできない抗体結合部位を立体的に暴露することによって、組み合わせエピトー
プを創り出すことができる。別の態様では、抗α4β7抗体は、α4インテグリン鎖及び
β7インテグリン鎖の双方を結合するのでα4β7インテグリン複合体に対して特異的で
ある。そのような抗体は、α4β7を結合することができるが、たとえば、α4β1を結
合することはできず、及び/又はαEβ7を結合することはできない。別の態様では、抗
α4β7抗体は、Act-1抗体(Lazarovits, A. I. et al., J. Immunol., 133(4): 1
857-1862 (1984), Schweighoffer et al., J. Immunol., 151(2): 717-729, 1993; Bedna
rczyk et al., J. Biol. Chem., 269(11): 8348-8354, 1994)と同じ又は実質的に同じエ
ピトープに結合する。マウスのAct-1モノクローナル抗体を産生するマウスのACT
-1ハイブリドーマ細胞株は、2001年8月22日のブタペスト条約の規定のもとで、
米国02139マサチューセッツ州、ケンブリッジ、Landsdowne通り40のM
illennium Pharmaceuticals社の利益となるように、米国20
110-2209バージニア州、マナッサスのブルバード大学10801のアメリカンタ
イプカルチャーコレクションに受入番号PTA-3663で寄託された。別の態様では、
抗α4β7抗体は、米国特許出願公開番号2010/0254975で提供されたCDR
を用いたヒト抗体又はα4β7結合タンパク質である。
【0133】
態様の1つでは、抗α4β7抗体は、そのリガンド(たとえば、粘膜アドレシン、たと
えば、MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)、フィブロネクチン及び/又は血管
アドレシン(VCAM))の1以上へのα4β7の結合を阻害する。霊長類のMAdCA
M(たとえば、MAdCAM-1)はPCT公開WO96/24673に記載されており
、その教示全体が参照によって本明細書に組み入れられる。別の態様では、抗α4β7抗
体は、VCAMの結合を阻害することなく、MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1
)及び/又はフィブロネクチンへのα4β7の結合を阻害する。
【0134】
態様の1つでは、製剤で使用するための抗α4β7抗体は、マウスAct-1抗体のヒ
ト化型である。ヒト化抗体を調製する好適な方法は当該技術で周知である。一般に、ヒト
化抗α4β7抗体は、マウスAct-1抗体の3つの重鎖相補性決定領域(CDRs、C
DR1、配列番号:8、CDR2、配列番号:9及びCDR3、配列番号:10)を含有
する重鎖と好適なヒト重鎖フレームワーク領域を含有し;且つマウスAct-1抗体の3
つのCDRs(CDR1、配列番号:11、CDR2、配列番号:12及びCDR3、配
列番号:13)を含有する軽鎖と好適なヒト軽鎖フレームワーク領域を含有するであろう
。ヒト化Act-1抗体は、アミノ酸置換を伴って又は伴わずにコンセンサスフレームワ
ーク領域を含む好適なヒトフレームワーク領域を含有することができる。たとえば、フレ
ームワークアミノ酸の1以上をマウスAct-1抗体における相当する位置でのアミノ酸
のような別のアミノ酸で置き換えることができる。ヒトの定常領域又はその一部は、存在
するならば、対立遺伝子変異体を含めてヒト抗体のκ又はλ軽鎖及び/又はγ(たとえば
、γ1、γ2、γ3、γ4)、μ、α(たとえば、α1、α2)、δ又はε重鎖に由来す
ることができる。特定の定常領域(たとえば、IgG1)、その変異体又は一部はエフェ
クター機能を誂えるように選択することができる。たとえば、変異のある定常領域(変異
体)を融合タンパク質に組み入れてFc受容体への結合及び/又は補体を固定する能力を
できるだけ抑えることができる(例えば, Winter et al., GB 2,209,757 B; Morrison et
al., WO 89/07142; Morgan et al., WO 94/29351, Dec. 22, 1994参照)。Act-1抗
体のヒト化型は、PCT公開番号WO98/06248及びWO07/61679に記載
されたが、そのそれぞれの教示全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0135】
別の態様では、製剤で使用するための抗α4β7ヒト化抗体は、配列番号2のアミノ酸
20~140を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸20~131又は配列番号5
のアミノ酸21~132を含む軽鎖可変領域を含む。所望であれば、好適なヒト定常領域
が存在することができる。たとえば、ヒト化抗α4β7抗体は配列番号2のアミノ酸20
~470を含む重鎖及び配列番号5のアミノ酸21~239を含む軽鎖を含むことができ
る。別の例では、ヒト化抗α4β7抗体は配列番号2のアミノ酸20~470を含む重鎖
及び配列番号4のアミノ酸20~238を含む軽鎖を含むことができる。
図4はヒト抗体
とマウス抗体の一般的な軽鎖を比較する配列比較を示す。配列比較によって、2つのマウ
ス残基がヒト残基に入れ替わったベドリズマブ(たとえば、化学アブストラクトサービス
(CAS、米国化学会)登録番号943609-66-3)のヒト化軽鎖はLDP-02
の軽鎖(
図3)よりもヒト型であることを説明する。加えて、LDP-02は、幾分疎水
性で自由度の高いアラニン114と、やや親水性でヒドロキシル含有のスレオニン114
及び疎水性で内向きの可能性があるバリン115残基を持つベドリズマブにて置き換えら
れる親水性部位(アスパラギン酸115)とを有する。
【0136】
抗体配列に対するさらなる置換は、たとえば、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域に対
する変異であることができ、たとえば、配列番号14の残基2におけるイソロイシンのバ
リンへの変異;配列番号14の残基4におけるメチオニンのバリンへの変異;配列番号1
5の残基24におけるアラニンのグリシンへの変異;配列番号15の残基38におけるア
ラニンのリジンへの変異;配列番号15の残基40におけるアラニンのアルギニンへの変
異;配列番号15の残基48におけるメチオニンのイソロイシンへの変異;配列番号15
の残基69におけるイソロイシンのロイシンへの変異;配列番号15の残基71における
アルギニンのバリンへの変異;配列番号15の残基73におけるスレオニンのイソロイシ
ンへの変異;又はそれらの組み合わせ;重鎖CDRsのマウスAct-1抗体のCDRs
(CDR1、配列番号:8、CDR2、配列番号:9及びCDR3、配列番号:10)に
よる置換、及び軽鎖CDRsのマウスAct-1抗体の軽鎖CDRs(CDR1、配列番
号:11、CDR2、配列番号:12及びCDR3、配列番号:13)による置換である
ことができる。
【0137】
一部の実施形態では、製剤で使用するための抗α4β7ヒト化抗体は、配列番号2のア
ミノ酸2~140に対して約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を
有する重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸20~131又は配列番号5のアミノ酸2
1~132に対して約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する
軽鎖可変領域を含む。アミノ酸の配列同一性は、初期設定パラメータを用いる、たとえば
、Lasergene方式(ウィスコンシン州、マジソンのDNASTAR社)のような
好適な配列比較アルゴリズムを用いて決定することができる。実施形態では、製剤で使用
するための抗α4β7抗体は、ベドリズマブ(CAS、米国化学会、登録番号94360
9-66-3)である。
【0138】
他のα4β7抗体も本明細書で記載される製剤及び投与計画に使用され得る。たとえば
、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるUS2010/0254975(A
mgen社)に記載されたα4β7抗体は個体における炎症性大腸疾患を治療する製剤及
び方法での使用に好適である。
【0139】
抗α4β7抗体は、生細胞、たとえば、培養中の細胞にて各鎖をコードする核酸配列を
発現させることによって作出することができる。種々の宿主/発現ベクター系を利用して
本発明の抗体分子を発現させ得る。そのような宿主/発現ベクター系は、当該コーディン
グ配列が作られ、その後精製される媒体を表すが、適当なヌクレオチドコーディング配列
で形質転換された又は形質移入された場合その場で抗α4β7抗体を発現し得る細胞を表
すものではない。これらには、たとえば、抗体コーディング配列を含有する組換えバクテ
リオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換され
た細菌(たとえば、大腸菌、枯草菌);抗体コーディング配列を含有する組換え酵母発現
ベクターで形質転換された酵母(たとえば、Saccharomyces,Pichia
)のような微生物;抗体コーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(たと
えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;抗体コーディング配列を含有する組
換えウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバ
コモザイクウイルス、TMV)を感染させた又は抗体コーディング配列を含有する組換え
プラスミド発現ベクター(たとえば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は
哺乳類細胞のゲノムに由来する(たとえば、メタロチオネインプロモータ)又は哺乳類ウ
イルスに由来する(たとえば、アデノウイルス後期プロモータ;ワクシニアウイルス7.
5Kプロモータ)プロモータを含有する組換え発現構築物を抱く哺乳類細胞系(たとえば
、COS、CHO、BHK、293、3T3、NS0)が挙げられるが、これらに限定さ
れない。たとえば、ヒトのサイトメガロウイルスに由来する主要中早期遺伝子プロモータ
エレメントのようなベクターを併せたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のよう
な哺乳類細胞は、抗体の有効な発現系である(Foecking et al., Gene 45:101 (1986); C
ockett et al., Bio/Technology 8:2 (1990))。
【0140】
細菌の系では、発現される抗体分子の用途によって多数の発現ベクターが有利に選択さ
れ得る。たとえば、抗体分子の医薬組成物を生成するために大量のそのようなタンパク質
が製造されるべきであるなら、精製しやすい融合タンパク質生成物を高レベルで発現する
ことを指向するベクターが望ましくてもよい。そのようなベクターには、融合タンパク質
が産生されるように抗体コーディング配列をlacZコーディング領域と共にフレーム内
でベクターに個々に連結し得る大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO
J. 2:1791 (1983));pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101-
3109 (1985); Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem.24:5503-5509 (1989))等が挙げら
れるが、これらに限定されない。pGEXベクターを使用してグルタチオン-S-トラン
スフェラーゼ(GST)による融合タンパク質として外来ポリペプチドも発現させ得る。
一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオン/アガロー
スビーズへの吸着及び結合、その後の遊離のグルタチオンの存在下での溶出によって容易
に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングした標的遺伝子がGST部
分から解放できるようにトロンビン又は因子Xaプロテアーゼ切断部位を含むように設計
される。
【0141】
昆虫系では、外来遺伝子を発現するベクターとしてAutographa calif
ornica核多角体病ウイルス(AcNPV)が使用される。ウイルスはSpodop
tera frugiperda細胞の中で増殖する。抗体コーディング配列を個々にウ
イルスの非必須領域(たとえば、ポリヘドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPVプ
ロモータ(たとえば、ポリヘドリンプロモータ)の制御下に置く。
【0142】
哺乳類宿主細胞では、多数のウイルスに基づく発現系が利用され得る。アデノウイルス
が発現ベクターとして使用される場合では、当該抗体コーディング配列をアデノウイルス
の転写/翻訳制御複合体、たとえば、後期プロモータ及び三分節リーダー配列に連結し得
る。次いで、試験管内又は生体内の組換えによってこのキメラ遺伝子をアデノウイルスの
ゲノムに挿入し得る。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえば、領域E1又はE3)にお
ける挿入は、感染宿主にて生存可能で、抗体分子を発現することが可能である組換えウイ
ルスを生じる(たとえば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359 (19
84)を参照)。挿入された抗体コーディング配列の効率的な翻訳には特定の開始シグナル
も必要とされ得る。これらのシグナルにはATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。さ
らに、開始コドンは所望のコーディング配列のリーディングフレームと同調して挿入物全
体の翻訳を確保しなければならない。これらの外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドン
は種々の起源であってもよく、天然及び合成の双方であり得る。発現の効率は適当な転写
エンハンサエレメント、転写終結因子等を含むことによって高められ得る(Bittner et a
l., Methods in Enzymol. 153:51-544 (1987)を参照)。
【0143】
加えて、挿入された配列の発現を調節し、遺伝子産物を所望の特定の方式で修飾し、プ
ロセッシングする宿主細胞株を選択し得る。タンパク質産物のそのような修飾(たとえば
、グリコシル化)及びプロセッシング(たとえば、切断)はタンパク質の機能にとって重
要であり得る。様々な宿主細胞がタンパク質及び遺伝子産物の翻訳後のプロセッシング及
び修飾について特徴及び特定のメカニズムを有する。適当な細胞株又は宿主系を選択して
発現される外来タンパク質の正しい修飾及びプロセッシングを確保する。この目的で、一
次転写物の適切なプロセッシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化について細胞
機構を持つ真核宿主細胞が使用され得る。そのような哺乳類宿主細胞には、チャイニーズ
ハムスター卵巣(CHO)、NS0、HeLa、VERY、幼若ハムスター腎臓(BHK
)、サル腎臓(COS)、MDCK、293、3T3、WI38、ヒト肝細胞癌細胞(た
とえば、HepG2)、たとえば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及び
T47Dのような乳癌細胞株、並びにたとえば、CRL7030及びHs578Bstの
ような正常乳腺細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
様々な細胞種のグリコシル化機構は別の細胞種とは異なるグリコシル化組成を持つ抗体
を作出することができ、又は細菌と同様にグリコシル化のない抗体を作出することができ
る。態様の1つでは、抗α4β7抗体の産生用の細胞種は、NS0細胞又はCHO細胞の
ような哺乳類細胞である。態様の1つでは、哺乳類細胞は、細胞のメカニズムに関与する
酵素の欠失を含むことができ、当該外因性遺伝子は、たとえば、形質転換又は形質移入に
よって細胞に導入されるための構築物又はベクターにて置き換え酵素に操作可能に連結さ
れ得る。外因性遺伝子を伴った構築物又はベクターは、構築物又はベクターを招き入れる
細胞に対して構築物又はベクターによってコードされるポリペプチドの産生を促す選択優
位性を付与する。一実施形態では、CHO細胞は、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子の欠失又
は不活化を含むDG44細胞(Chasin and Urlaub (1980) PNAS USA 77:4216)である。
別の実施形態では、CHO細胞は、グルタミンシンターゼ酵素の欠失又は不活化を含むC
HOK1細胞である(たとえば、米国特許第5,122,464号又は同第5,827,
739号を参照)。
【0145】
固体製剤
本発明の固体製剤は一般に液体製剤を乾燥することによって調製される。任意の好適な
乾燥方法、たとえば、凍結乾燥又はスプレー乾燥を使用することができる。態様の1つで
は、凍結乾燥に先立って凍結保護剤が製剤に添加される。凍結乾燥には普通、製剤を保存
する、出荷する及び流通させるのに使用されるであろう容器(たとえば、バイアル、シリ
ンジ(たとえば、単一又は二重のチャンバーシリンジ)又はカートリッジ(たとえば、単
一又は二重のチャンバーカートリッジ)にて液体製剤を乾燥させることが関与する(たと
えば、Gatlin and Nail in Protein Purification Process Engineering, ed. Roger G.
Harrison, Marcel Dekker Inc., 317-367 (1994)を参照)。製剤がいったん凍結されると
、大気圧が下げられ、温度は、たとえば、昇華を介して凍結溶媒を除けるように調整され
る。凍結乾燥過程のこの工程は、一次乾燥と呼ばれることもある。所望であれば、次いで
温度を上げて乾燥製剤に依然として結合する溶媒を蒸発によって除くことができる。凍結
乾燥過程のこの工程は、二次乾燥と呼ばれることもある。製剤が所望の乾燥程度に達する
と、乾燥過程を終了し、容器を密封する。最終的な固体製剤を「凍結乾燥製剤」又は「ケ
ーキ」と呼ぶこともある。凍結乾燥過程は好適な機器を用いて実施することができる。好
適な凍結乾燥機器は多数の商業的供給源から入手可能である(たとえば、ニューヨーク州
、ストーンリッジのSP Scientific)。
【0146】
種々の好適な装置を用いて液体製剤を乾燥して固体(たとえば、凍結乾燥した)製剤を
製造することができる。一般に、凍結乾燥製剤は、その上に乾燥される液体製剤のバイア
ルが置かれる棚を含有する密閉チャンバーを用いて当業者によって調製される。棚の温度
は冷却速度や加熱速度と同様に、チャンバー内部の圧のように制御することができる。本
明細書で議論される種々の工程パラメータがこの種の装置を用いて実施される工程を指す
ことが理解されるであろう。当業者は本明細書で記載されるパラメータを所望であれば、
他の種の乾燥装置に容易に適合させることができる。
【0147】
一次乾燥及び二次乾燥のために好適な温度及び真空の量は当業者によって容易に決定さ
れ得る。一般に、製剤は約-30℃以下、たとえば、-40℃又は-50℃の温度で凍結
される。冷却の速度は、マトリクスにおける氷結晶の量及びサイズに影響を及ぼし得る。
一次乾燥は一般に凍結温度よりも約10℃、約20℃、約30℃、約40℃、又は約50
℃温かい温度で実施される。態様の1つでは、一次乾燥の条件は、製剤のガラス転移温度
又は崩壊温度を下回って抗α4β7抗体を維持するように設定することができる。崩壊温
度を上回ると、非晶性の凍結マトリクスが流れ(崩壊し)、タンパク質分子が硬い固体マ
トリクスに囲まれないかもしれない、タンパク質分子が崩壊マトリクスにて安定でないか
もしれない結果となる。また、崩壊が起きるとすると、製剤は完全に乾燥しにくい可能性
がある。製剤における結果的に多い水分量は、高い比率のタンパク質分解を招き得るし、
品質が許容不能なレベルに低下する前に凍結乾燥製品を保存できる時間量が低下し得る。
態様の1つでは、棚の温度及びチャンバーの圧は、一次乾燥の間、崩壊温度を下回る温度
で製品を維持するように選択される。凍結製剤のガラス転移温度は、当該技術で既知の方
法によって、たとえば、示差走査熱量法(DSC)によって測定することができる。崩壊
温度は、当該技術で既知の方法によって、たとえば、凍結乾燥顕微鏡、光学コヒーレンス
断層撮影によって測定することができる。乾燥工程は少なくとも50%、少なくとも60
%、少なくとも70%以上の溶媒を取り除くことができる。態様の1つでは、一次乾燥工
程は、抗α4β7抗体組成物から80%を超える溶媒を取り除く。
【0148】
バイアルのサイズは凍結乾燥の間、棚及び真空にさらされる表面積に基づいて選択する
ことができる。乾燥時間はケーキの高さに直接比例するので、理に適ったケーキの高さで
あると決定されるものに基づいて選択され得る。体積に比べて大きな直径を持つバイアル
は凍結乾燥サイクルの間、効率的な熱移転のために棚に接触する高い量を提供する。液体
の体積が多い希釈抗体溶液は乾燥にさらに多くの時間を必要とするであろう。大きなバイ
アルほど保存し、輸送するのに高価であり、上部空間と製剤の高い比を有し、高い比率の
製剤を長期保存の間、水分の分解効果にさらし得るので、バイアルのサイズと製剤の体積
のバランスを取る必要がある。165mg用量については、抗α4β7抗体製剤のバイア
ルサイズは3mL、5mL又は10mLであることができる。態様の1つでは、バイアル
サイズは160mL溶液について5mLである。
【0149】
凍結乾燥用のカートリッジ又はシリンジのサイズを選択する原理はバイアルに類似する
。ケーキ高さの深さは高さが増すので乾燥時間も増すであろう。シリンジ又はカートリッ
ジの直径及びサイズは最終的な製剤の体積と釣り合わせなければならない。大きな直径は
凍結乾燥ケーキ中の水分の取り込みの比率を高めるので、保存中の水分の分解効果を高め
る。165mg用量については、抗α4β7抗体製剤の体積は1mL又は2mLであるこ
とができる。態様の1つでは、160mL溶液についてシリンジ又はカートリッジのサイ
ズは1mLを超える。
【0150】
凍結乾燥の後、シリンジ又はカートリッジは真空下で密封される、たとえば、栓で塞が
れる。或いは、密封に先立って、容器の中に気体、たとえば、乾燥空気又は窒素を入れる
ことができる。酸化が懸念される場合、凍結乾燥チャンバーに気体を入れることができ、
凍結乾燥製品の酸化を遅らす又は妨げる気体を含むことができる。態様の1つでは、気体
は含酸素ではない気体、たとえば、窒素又は不活性気体、たとえば、ヘリウム、ネオン、
アルゴン、クリプトン又はキセノンである。別の態様では、気体は窒素又はアルゴンであ
る。
【0151】
抗体製剤による治療
態様の1つでは、本発明は、たとえば、ヒトにおける疾患又は障害を治療するのに有効
な量で本明細書に記載される抗α4β7抗体製剤を対象に投与することを含む、対象にて
疾患又は障害を治療する方法を提供する。ヒト対象は、成人(たとえば、18歳以上)、
若者又は小児であり得る。ヒト対象は65歳以上のヒトであり得る。代替の治療用投与計
画とは対照的に、65歳以上のヒト対象は本明細書で記載される投与計画の修正を必要と
せず、本明細書に記載される従来の抗α4β7抗体製剤が投与され得る。
【0152】
対象は、免疫調節因子TNF-α拮抗剤又はその組み合わせとの適切な応答を欠いてい
た、それに対する応答を欠如していた、又はそれによる治療に対して認容性ではなかった
可能性がある。患者は、炎症性大腸疾患に対して少なくとも1つのコルチコステロイド(
たとえば、プレドニゾロン)による治療を以前受けていた可能性がある。コルチコステロ
イドに対する不適正な応答は、毎日経口で2週間又は静脈内で1週間のプレドニゾロン3
0mgと同等の用量を含む少なくとも1回の4週間誘導計画の経験にもかかわらず、持続
して活動性の疾患の兆候及び症状を指す。コルチコステロイドに対する応答の欠如は、毎
日経口のプレドニゾロン10mgと同等の用量を下回るコルチコステロイドを徐々に減ら
す試みに2回失敗したことを指す。コルチコステロイドの非認容性には、クッシング症候
群、骨減少症/骨粗鬆症、高血糖症、不眠症及び/又は感染の既往が挙げられる。
【0153】
免疫調節剤は、たとえば、経口のアザチオプリン、6-メルカプトプリン又はメソトレ
キセートであり得る。免疫調節剤に対する不適正な応答は、少なくとも1回の経口のアザ
チオプリン(≧1.5mg/kg)、6-メルカプトプリン(≧0.75g/kg)又は
メソトレキセート(≧12.5g/kg)8週間の計画の経験にもかかわらず、持続して
活動性の疾患の兆候及び症状を指す。免疫調節剤の非認容性には、嘔吐/吐き気、腹痛、
膵炎、LFTの異常、リンパ球減少症、TPMT遺伝子変異及び/又は感染が挙げられる
が、これらに限定されない。
【0154】
TNF-α拮抗剤は、たとえば、TNF-αの生物活性を阻害する、好ましくはTNF
-αを結合する剤、たとえば、モノクローナル抗体、たとえば、REMICADE(イン
フリキシマブ)、HUMIRA(アダリムマブ)、CIMZIA(セルトリズマブペコー
ル)、SIMPONI(ゴリムマブ)であり、又はENBREL(エタネルセプト)のよ
うな循環受容体融合タンパク質である。TNF-α拮抗剤に対する不適正な応答は、イン
フリキシマブ5mg/kgIVの少なくとも2週間離して2用量;80mgアダリムマブ
の1回皮下投与、その後少なくとも2週間離して40mgの単回投与;又は400mgの
セルトリズマブペコールの皮下投与、少なくとも2週間離して2用量の少なくとも1回の
4週間誘導計画の経験にもかかわらず、持続して活動性の疾患の兆候及び症状を指す。T
NF-α拮抗剤に対する応答の欠如は、前の臨床的利益に続く維持投与の間での症状の再
発を指す。TNF-α拮抗剤の非認容性には、点滴関連の反応、脱髄、鬱血性心不全及び
/又は感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
寛解の維持の喪失は、潰瘍性大腸炎患者について本明細書で使用されるとき、Mayo
スコアで少なくとも3点及び改変Baronスコアで少なくとも2点の上昇を指す。
【0156】
別の態様では、本発明は、(1)試験管内及び/又は生体内でα4β7インテグリンを
結合することができ、(2)α4β7インテグリンの活性又は機能、たとえば、(a)結
合機能(たとえば、α4β7インテグリンのMAdCAM(たとえば、MAdCAM-1
)、フィブロネクチン及び/又はVCAM-1に結合する能力)及び/又は(b)組織に
おける白血球の動員及び/又は蓄積を含む白血球の浸潤(たとえば、腸管粘膜組織へのリ
ンパ球の移動を阻害する能力)を調節することができる抗α4β7抗体製剤を提供する。
一実施形態では、製剤中の抗体は、α4β7インテグリンを結合することができ、そのリ
ガンド(たとえば、MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)、VCAM-1、フィ
ブロネクチン)の1以上へのα4β7インテグリンの結合を阻害することができ、それに
よって組織への白血球の浸潤(組織における白血球の動員及び/又は蓄積を含む)を阻害
する。別の実施形態では、製剤中の抗体は、α4β7インテグリンを結合することができ
、そのリガンド(たとえば、MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)、VCAM-
1、フィブロネクチン)の1以上へのα4β7インテグリンの結合を選択的に阻害するこ
とができ、それによって組織への白血球の浸潤(組織における白血球の動員及び/又は蓄
積を含む)を阻害する。そのような抗α4β7抗体製剤は、試験管内及び/又は生体内で
消化管関連の組織、リンパ系臓器又は白血球(特にT細胞又はB細胞のようなリンパ球)
を含む粘膜組織にて血管内皮細胞へのα4β7インテグリンを持つ細胞の細胞接着を阻害
することができる。さらに別の実施形態では、本発明の抗α4β7抗体製剤は、α4β7
のMAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)及び/又はフィブロネクチンとの相互作
用を阻害することができる。その上さらに別の実施形態では、本発明の抗α4β7抗体製
剤は、たとえば、α4β7のVCAMとの相互作用を阻害することなく選択的にα4β7
のMAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)及び/又はフィブロネクチンとの相互作
用を阻害することができる。
【0157】
本発明の抗α4β7抗体製剤を用いて、α4β7インテグリンの結合機能及び/又は白
血球(たとえば、リンパ球、単球)の浸潤機能を調節する(たとえば、阻害する(低減す
る又は妨げる)ことができる。たとえば、白血球(たとえば、リンパ球、単球)の組織、
特に分子MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)を発現している組織への浸潤(組
織における白血球の動員及び/又は蓄積を含む)に関連する疾患の治療における方法に従
って、リガンド(すなわち、1以上のリガンド)へのα4β7インテグリンの結合を阻害
するヒト化免疫グロブリンを投与することができる。
【0158】
そのような疾患を治療するために、有効量の本発明の抗α4β7抗体製剤が個体(たと
えば、ヒト又は他の霊長類のような哺乳類)に投与される。たとえば、消化管(消化管関
連の内皮細胞を含む)、他の粘膜組織又は分子MAdCAM(たとえば、MAdCAM-
1)を発現している組織(たとえば、小腸及び大腸の固有層の小静脈のような消化管関連
の組織、及び乳腺(たとえば、授乳している乳腺)に関連する疾患を含む炎症性疾患を本
方法に従って治療することができる。同様に、MAdCAM(たとえば、MAdCAM-
1)を発現している細胞への白血球の結合の結果としての組織への白血球の浸潤に関連す
る疾患を有する個体を本発明に従って治療することができる。
【0159】
一実施形態では、従って治療することができる疾患には、たとえば、潰瘍性大腸炎、ク
ローン病、回腸炎、セリアック病、非熱帯性スプルー、血清陰性の関節症に関連する腸疾
患、顕微鏡的又はコラーゲン性の大腸炎、好中球性胃腸炎、又は直腸結腸切除後に生じる
回腸嚢炎、及び回腸肛門吻合のような炎症性大腸疾患(IBD)が挙げられる。一部の実
施形態では、炎症性大腸疾患はクローン病又は潰瘍性大腸炎である。潰瘍性大腸炎は、中
程度から重度の活動性潰瘍性大腸炎であり得る。治療は、中程度から重度の活動性潰瘍性
大腸炎で苦しんでいる患者にて粘膜治癒を生じ得る。治療はまた患者によるコルチコステ
ロイドの使用の低減、排除又は低減と排除も生じ得る。
【0160】
膵炎及びインスリン依存性の糖尿病は本発明の製剤を用いて治療することができる他の
疾患である。MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)は、BALB/c及びSJL
マウスと同様にNOD(非肥満糖尿病)に由来する膵外分泌腺における一部の血管によっ
て発現されることが報告されている。MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)の発
現は報告によれば、NODマウスの膵臓の炎症を起こした島における内皮細胞上に誘導さ
れ、MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)は、膵島炎の早期段階でNODの島内
皮によって発現される優勢なアドレシンであった(Hanninen, A., et al., J. Clin. Inv
est., 92: 2509-2515 (1993))。抗MAdCAM抗体又は抗α4β7抗体によるNODマ
ウスの処理は、糖尿病の発症を妨げた(Yang et al., Diabetes, 46:1542-1547 (1997))
。さらに、島内でのα4β7を発現するリンパ球の蓄積が認められ、MAdCAM-1が
炎症を起こした島の血管への(Hanninen, A., et al., J. Clin. Invest., 92: 2509-251
5 (1993))又はマントル細胞リンパ腫における消化管への(Geissmann et al., Am. J. P
athol., 153:1701-1705 (1998))α4β7を介したリンパ腫細胞の結合に関与するとみな
された。
【0161】
本発明の製剤を用いて治療することができる粘膜組織に関連する炎症性疾患の例には、
胆嚢炎、胆管炎(Adams and Eksteen Nature Reviews 6:244-251 (2006) Grant et al.,
Hepatology 33:1065-1072 (2001))、たとえば、原発性硬化性胆管炎、たとえば、腸のベ
ーチェット病、又は胆管周囲炎(胆管及び肝臓の周囲の組織)、及び移植片対宿主病(た
とえば、消化管にて(たとえば、骨髄移植後)(Petrovic et al. Blood 103:1542-1547
(2004))が挙げられる。クローン病で見られるように、炎症は粘膜表面を越えて広がるこ
とが多いので、たとえば、サルコイドーシス、慢性胃炎、たとえば、自己免疫性胃炎(Ka
takai et al., Int. Immunol., 14:167-175 (2002))及び他の特発性の状態のような慢性
の炎症性疾患は治療を受け入れることができる。
【0162】
本発明は、粘膜組織への白血球の浸潤を阻害する方法に関する。本発明はまた癌(たと
えば、リンパ腫のようなα4β7陽性腫瘍)を治療する方法にも関する。本発明の製剤を
用いて治療することができる粘膜組織に関連する炎症性疾患の他の例には、乳腺炎(乳腺
)及び過敏性腸症候群が挙げられる。
【0163】
その病因がα4β7とのMAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)の相互作用を利
用する疾患又は病原体は、本明細書で記載される製剤における抗α4β7抗体によって治
療することができる。そのような疾患の例にはたとえば、ヒト免疫不全ウイルス(たとえ
ば、WO2008140602を参照)が原因で起きる免疫不全障害が挙げられる。
【0164】
本発明の製剤は、α4β7がそのリガンドに結合するのを阻害するのに有効な量で投与
される。治療法については、有効な量は、所望の治療(予防を含む)効果を達成するのに
十分であろう(たとえば、α4β7インテグリンが介在する結合及び/又はシグナル伝達
を低減し又は妨げ、それによって白血球の接着及び浸潤及び/又は関連する細胞性の応答
を阻害するのに十分な量)。有効な量、たとえば、α4β7インテグリンの飽和、たとえ
ば、中和を維持するのに十分な力価の抗α4β7抗体は、炎症性大腸疾患において臨床的
な応答又は寛解を誘導することができる。有効な量の抗α4β7抗体は、潰瘍性大腸炎又
はクローン病にて粘膜治癒をもたらすことができる。本発明の製剤は単位用量又は複数回
用量で投与することができる。投与量は当該技術で既知の方法によって決定することがで
き、たとえば、個体の年齢、感受性、認容性及び全体的な健康状態に左右され得る。投与
様式の例には、たとえば、鼻内又は吸入又は経皮の投与のような局所経路、たとえば、補
給チューブや座薬を介した経腸経路、及びたとえば、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹
腔内又は硝子体内の投与のような非経口経路が挙げられる。抗体の好適な投与量は、治療
当たり約0.1mg/体重kg~約10.0mg/体重kg、たとえば、約2mg/kg
~約7mg/kg、約3mg/kg~約6mg/kg、又は約3.5~約5mg/kgで
あり得る。特定の実施形態では、投与される用量は、約0.3mg/kg、約0.5mg
/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg
/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、又は約1
0mg/kgである。総用量は、約22mg、約50mg、約72mg、約125mg、
約165mg、又は約432mgであり得る。総用量は、少なくとも77mg、少なくと
も125mg又は少なくとも356mgであり得る。一実施形態では、総用量は、165
mgである。別の実施形態では、総用量は、108mgである。別の実施形態では、総用
量は、216mgである。
【0165】
投与後の経時的な抗α4β7抗体の利用効率の試験からの薬物動態(PK)データを用
いたモデル化及びシミュレーション(カリフォルニア大学、BERKELEY MADO
NNA(商標)ソフトウエア)は、皮下又は筋肉内投与のための可能な投与計画を評価す
ることができる。誘導及び維持計画についてPKデータを評価することができる。別のモ
デル化の方法は、集団薬物動態/薬力学解析(アイルランド、ダブリンのICON pl
c,NONMEM(登録商標)非線形混合効果のモデル化ツール)である。暴露レベル及
びトラフレベル双方を解析することができる。
【0166】
通常、標的、たとえば、α4β7インテグリンの飽和が達成された後、血中の抗体濃度
は投与される用量に対して線形関係を有する。皮下又は筋肉内の経路で投与された抗α4
β7抗体は、静脈内経路で投与された抗α4β7抗体の生体利用効率の約60%~約90
%を有する。この関係の例では、IV投与が100%の生体利用効率を有すると仮定し、
皮下投与が69.5%の生体利用効率を有することが見い出されるとすると、そのとき、
300mgの静脈内投与は皮下投与による432mg用量に一致し得る。従って、150
mgの静脈内投与は、69.5%の相対生体利用効率にて216mgの皮下投与に一致し
得る。同様に、皮下投与が75%の生体利用効率を有することが見い出され、筋肉内投与
が80%の生体利用効率を有することが見い出されるのであれば、そのとき、300mg
の静脈内投与に一致するには、皮下投与は400mg及び筋肉内投与は375mgであり
得る。実施例における表40~43は、これらの関係を説明し、抗α4β7抗体の有用な
用量及び投与計画を提供する。
【0167】
一部の態様では、投与計画は2つの相、誘導相及び維持相を有する。誘導相では、たと
えば、抗体又はその抗原結合断片に対する免疫寛容を誘導すること又は臨床な応答を誘導
すること及び炎症性大腸疾患の症状を改善することのような特定の目的に好適な有効量の
抗体又はその抗原結合断片を迅速に提供するような方法で、抗体又はその抗原結合断片が
投与される。患者は、初めて抗α4β7抗体によって治療される場合、抗α4β7抗体療
法以来、たとえば、3ヵ月を超えて、4ヵ月を超えて、6ヵ月を超えて、9ヵ月を超えて
、1年を超えて、18ヵ月を超えて又は2年を超えて長い間治療を受けていない場合、又
は抗α4β7抗体の維持相の間に、炎症性大腸疾患の症状の再発、たとえば、疾患の寛解
からの再発があれば、誘導相の治療を受けることができる。一部の実施形態では、誘導相
の計画は、維持計画の間で維持される平均定常状態のトラフ血清濃度よりも高い平均トラ
フ血清濃度、たとえば、次の用量の直前の濃度を生じる。
【0168】
維持相では、抗体又はその抗原結合断片は、誘導療法で達成された安定した抗体又はそ
の抗原結合断片のレベルによる応答を継続するような方法で投与される。維持計画は症状
の再発又は炎症性大腸疾患の再発を防ぐことができる。維持計画は、たとえば、単純な投
与計画又は治療のための外来訪問が頻繁ではないなどのような患者に利便性を提供するこ
とができる。一部の実施形態では、維持計画には、低用量、少ない投与、自己投与及び前
述の組み合わせから成る群から選択される戦略による、たとえば、本明細書で記載される
製剤中の抗α4β7抗体又はその抗原結合断片の投与が含まれる。
【0169】
一実施形態では、たとえば、治療法の誘導相の間、投与計画は、ヒト患者における炎症
性大腸疾患の寛解を誘導するために本明細書で記載される製剤における有効量の抗α4β
7抗体又は抗原結合断片を提供する。一部の実施形態では、有効量の抗α4β7抗体は、
誘導相の終了までに約5ig/ml~約60ig/ml、約15ig/ml~約45ig/m
l、約20ig/ml~約30ig/ml、又は約25ig/ml~約35ig/mlの抗α
4β7抗体の平均トラフ血清濃度を達成するのに十分である。誘導相の持続時間は、約4
週間、約5週間、約6週間、約7週間、又は約8週間の治療であり得る。一部の実施形態
では、誘導計画は、たとえば、本明細書で記載される製剤における抗α4β7抗体又はそ
の抗原結合断片の高用量、頻繁な投与、及び高用量と頻繁な投与の組み合わせから成る群
から選択される戦略を利用することができる。誘導投与は、1回又は1回を超える複数投
与、たとえば、少なくとも2回投与であり得る。誘導相の間、用量は1日1回、2日に1
回、週に2回、週に1回、10日に1回、2週間に1回又は3週間に1回投与することが
できる。一部の実施形態では、誘導用量は、治療の最初の2週間以内に抗α4β7抗体に
よって投与される。一実施形態では、誘導投与は、治療の開始(0日目)で1回及び治療
の開始後約2週間で1回であり得る。別の実施形態では、誘導相の持続時間は6週間であ
る。別の実施形態では、誘導相の持続時間は6週間であり、最初の2週間に複数の誘導用
量が投与される。
【0170】
一部の実施形態では、たとえば、重度の炎症性大腸疾患の患者(たとえば、抗TNF-
α療法が上手く行かなかった患者)の治療を開始する場合、誘導相は、軽度又は中程度の
患者よりも長い持続時間を有する必要がある。一部の実施形態では、重度の患者の誘導相
は、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、
又は少なくとも14週間の持続時間を有することができる。一実施形態では、重度疾患の
患者のための誘導投与計画は、0週目での投与(治療の開始)、2週目の投与及び6週目
の投与を含むことができる。別の実施形態では、重度疾患の患者のための誘導投与計画は
、0週目での投与(治療の開始)、2週目の投与、6週目の投与及び10週目の投与を含
むことができる。
【0171】
一実施形態では、たとえば、治療法の維持相の間、投与計画は、平均定常状態トラフ血
清濃度、たとえば、約5~約25μg/mL、約7~約20μg/mL、約5~約10μ
g/mL、約10~約20μg/mL、約15~約25μg/mL又は約9~約13μg
/mLの抗α4β7抗体の次の投与直前のプラトー濃度を維持する。別の実施形態では、
投与計画は、たとえば、治療法の維持相の間、約20~約30μg/mL、約20~約5
5μg/mL、約30~約45μg/mL、約45~約55μg/mL又は約35~約4
0μg/mLの抗α4β7抗体の平均定常状態トラフ血清濃度を維持する。別の実施形態
では、投与計画は、たとえば、治療法の維持相の間、約15~約40μg/mL、約10
~約50μg/mL、約18~約26μg/mL、又は約22~約33μg/mLの抗α
4β7抗体の長期の平均血清濃度、たとえば、暴露(たとえば、曲線下面積-濃度-時間
)を維持する。さらに別の実施形態では、投与計画は、たとえば、治療法の維持相の間、
約35~約90μg/mL、約45~約75μg/mL、約52~約60μg/mL又は
約50~約65μg/mLの抗α4β7抗体の長期の平均血清濃度、たとえば、暴露(た
とえば、曲線下面積-濃度-時間)を維持する。
【0172】
最終投与形態は、抗体製剤の約0.5mlにて、約1mlにて、約1.5mlにて、約
2mlにて、約2.5mlにて、約3mlにて全体用量を含むことができる。
【0173】
静脈内投与用の最終投与形態は、約1.0mg/ml~約1.4mg/ml、約1.0
mg/ml~約1.3mg/ml、約1.0mg/ml~約1.2mg/ml、約1.0
~約1.1mg/ml、約1.1mg/ml~約1.4mg/ml、約1.1mg/ml
~約1.3mg/ml、約1.1mg/ml~約1.2mg/ml、約1.2mg/ml
~約1.4mg/ml、約1.2mg/ml~約1.3mg/ml、又は約1.3mg/
ml~約1.4mg/mlの間の濃度であり得る。最終投与形態は、約0.6mg/ml
、0.8mg/ml、1.0mg/ml、1.1mg/ml、約1.2mg/ml、約1
.3mg/ml、約1.4mg/ml、約1.5mg/ml、約1.6mg/ml、約1
.8mg/ml又は約2.0mg/mlであり得る。
【0174】
用量は、1週当たり1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、6週ご
とに1回、8週ごとに1回、又は10週ごとに1回投与することができる。さらに高い又
は頻繁な用量、たとえば、2日に1回、1週当たり1回、2週ごとに1回、3週ごとに1
回、4週ごとに1回は、活動性疾患の寛解を誘導するために又は新しい患者を治療するた
めに、たとえば、抗α4β7抗体に対して寛容を誘導するために有用であり得る。2週ご
とに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、5週ごとに1回、6週ごとに1回、8週ご
とに1回、又は10週ごとに1回の用量は、予防療法のために、たとえば、慢性疾患の患
者で寛解を維持するために有用であり得る。態様の1つでは、治療計画は、0日目、約2
週間、約6週間での、又はその後1~2週間ごとの治療である。別の態様では、誘導治療
計画は合計6回の治療について2日に1回の治療である。
【0175】
投与計画は患者の炎症性大腸疾患において臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導するた
めに最適化することができる。一部の実施形態では、投与計画は治療を受けている患者の
脳脊髄液にてCD4とCD8の比を変えない。
【0176】
一部の態様では、長く続く臨床的な寛解、たとえば、治療の開始後6ヵ月又は1年以内
で担当医との少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回の外来を介して持続する
臨床的な寛解は最適化された投与計画によって達成され得る。
【0177】
一部の態様では、長く続く臨床的な応答、たとえば、治療の開始後少なくとも6ヵ月、
少なくとも9ヵ月、少なくとも1年持続する臨床的な応答は最適化された投与計画によっ
て達成され得る。
【0178】
製剤は単回注射又は複数回注射によって皮下に投与され得る。たとえば、単回注射の体
積は約0.5ml~約3mlに及び得る。実施形態では、単回注射の体積は約0.6ml
~約1.1ml又は約1ml~約3mlであり得る。態様の1つでは、単回注射の体積は
約1mlである。皮下で製剤を投与するのに使用される針のゲージは、約25、約26、
約27、約28、約29又は約30Gであり得る。
【0179】
製剤は単回注射又は複数回注射によって筋肉内に投与され得る。たとえば、単回注射の
体積は約0.5ml~約5mlに及び得る。実施形態では、単回注射の体積は約2ml~
約5ml、約0.6ml~約1.1ml又は約1ml~約3mlであり得る。態様の1つ
では、単回注射の体積は約1ml、約2ml、約3ml、約4ml又は約5mlである。
筋肉内で製剤を投与するのに使用される針は、約5/8”、約7/8”、約1”、約1.
25”、約1.5”、約2”又は約3”であり得る。筋肉内投与についての針のゲージは
20~22Gの間であり得る。
【0180】
態様の1つでは、本発明は、炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者を治療する方法に関する
ものであり、方法は、ヒトα4β7インテグリンに対して結合特異性を有するヒト化免疫
グロブリン又はその抗原結合断片を炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者に投与する工程を含
み;ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、以下の投与計画:(a)1日ごとの
皮下注射として165mgの初回用量のヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を6
回投与;(b)その後の必要に応じて2週間ごと又は4週間ごとの皮下注射として165
mgの7回目及びその後の用量のヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片に従って、
患者に投与され;投与は、患者の炎症性大腸疾患における臨床的な応答及び臨床的な寛解
を誘導し;さらに、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片がα4β7複合体に対し
て結合特異性を有し;抗原結合領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの
相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補性決
定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,CD
R2 配列番号:10,CDR3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:12,
CDR2配列番号:13,CDR3 配列番号:14。
【0181】
態様の1つでは、本発明は、炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者を治療する方法に関する
ものであり、該方法は、炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者にヒトα4β7インテグリンに
対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を
含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒ
ト起源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、
以下の投与計画:(a)静脈内点滴としてのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片
300mgの初回の静脈内投与、(b)その後の、静脈内点滴としてのヒト化免疫グロブ
リン又はその抗原結合断片300mgの第2の静脈内後続投与、(c)その後の、6週目
で開始する、必要に応じて1週ごと、2週ごと、又は3週ごとの皮下注射としてのヒト化
免疫グロブリン又はその抗原結合断片165mgの第3の後続投与に従って患者に投与し
、該投与計画が患者の炎症性大腸疾患における臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導し;
且つさらに、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合
特異性を有し;抗原結合領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの相補性
決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補性決定領域
(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,CDR2
配列番号:10,CDR3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:12,CDR
2配列番号:13,CDR3 配列番号:14。
【0182】
別の態様では、本発明は、炎症性大腸疾患の治療療法についての投与計画に関するもの
であり、該投与計画は、炎症性大腸疾患で苦しむ患者にヒトα4β7インテグリンに対す
る結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み
、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒト起
源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、約9
~約13μg/mLの免疫グロブリン又はその抗原結合断片の平均定常状態トラフ血清濃
度を維持する皮下の又は筋肉内の投与計画に従って患者に投与され、該投与計画が患者の
炎症性大腸疾患における臨床な応答及び臨床的な寛解を誘導し;且つさらに、ヒト化免疫
グロブリン又はその抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異性を有し;抗原結合
領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、C
DR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及
びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,CDR2 配列番号:10,CDR
3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:12,CDR2配列番号:13,CD
R3 配列番号:14。
【0183】
別の態様では、本発明は、炎症性大腸疾患の治療療法についての投与計画に関するもの
であり、該投与計画は、炎症性大腸疾患で苦しむ患者にヒトα4β7インテグリンに対す
る結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み
、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒト起
源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、約3
5~約40μg/mLのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の定常状態血清トラ
フ濃度を維持する皮下の又は筋肉内の投与計画に従って患者に投与され、該投与計画が患
者の炎症性大腸疾患における臨床な応答及び臨床的な寛解を誘導し;且つさらに、ヒト化
免疫グロブリン又は抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異性を有し;抗原結合
領域が、以下で示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、C
DR2及びCDR3)及び重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及
びCDR3)を含む:軽鎖CDR1 配列番号:9,CDR2 配列番号:10,CDR
3 配列番号:11;重鎖:CDR1 配列番号:12,CDR2配列番号:13,CD
R3 配列番号:14。
【0184】
一部の実施形態では、治療の方法、用量又は投与計画は、患者が抗α4β7抗体に対す
るHAHA反応を発生する可能性を低減する。たとえば、抗α4β7抗体に反応性である
抗体によって測定されるようなHAHAの発生は、抗α4β7抗体のクリアランスを高め
ることができ、たとえば、抗α4β7抗体の血清濃度を下げることができ、たとえば、α
4β7インテグリンに結合した抗α4β7抗体の数を減らすので、治療効果を下げてしま
う。一部の実施形態では、HAHAを防ぐために、その後に維持計画が続く誘導計画によ
って患者を治療することができる。一部の実施形態では、誘導計画と維持計画の間には休
止期間はない。一部の実施形態では、誘導計画は複数用量の抗α4β7抗体を患者に投与
することを含む。HAHAを防ぐために、抗α4β7抗体による治療法を開始する場合、
高い初回用量、たとえば、少なくとも1.5mg/kg、少なくとも2mg/kg、少な
くとも2.5mg/kg、少なくとも3mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくと
も8mg/kg、少なくとも10mg/kg又は約2~約6mg/kg、又は頻繁な初回
投与、たとえば、ほぼ1週間当たり1回、ほぼ2週ごとに1回又はほぼ3週ごとに1回の
標準用量で患者を治療することができる。一部の実施形態では、治療方法は、患者の少な
くとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも7
0%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%をHAHA陰性として
維持する。他の実施形態では、治療方法は、少なくとも6週間、少なくとも10週間、少
なくとも15週間、少なくとも6ヵ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、又は治
療法の持続期間について患者をHAHA陰性として維持する。一部の実施形態では、患者
又はHAHAを発生している患者の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも5
0%又は少なくとも60%は抗α4β7抗体の低力価、たとえば、≦125を維持する。
実施形態では、治療方法は、患者の少なくとも70%を抗α4β7抗体による治療法を開
始した後少なくとも12週間、HAHA陰性として維持する。
【0185】
製剤は、単独で又は別の剤と併用して個体(たとえば、ヒト)に投与され得る。本発明
の製剤は、追加の剤の投与の前、それと共に、又はその後投与することができる。一実施
形態では、α4β7インテグリンのそのリガンドへの結合を阻害する1を超える製剤が投
与される。そのような実施形態では、剤、たとえば、抗MAdCAM又は抗VCAM-1
モノクローナル抗体のようなモノクローナル抗体を投与することができる。別の実施形態
では、追加の剤はα4β7経路とは異なる経路における白血球の内皮リガンドへの結合を
阻害する。そのような剤は、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体9(CCR9)を発現
するリンパ球の胸腺が発現するケモカイン(TECK又はCCL25)又はLFA-1の
細胞内接着分子(ICAM)への結合を阻害する剤への結合を阻害することができる。た
とえば、抗TECK抗体又は抗CCR9抗体又はPCT公開WO03/099773又は
WO04/046092で開示された阻害剤のような小分子CCR9阻害剤、又は抗IC
AM-1抗体、又はICAMの発現を妨げるオリゴヌクレオチドが、本発明の製剤に加え
て投与される。さらに別の実施形態では、追加の有効成分(たとえば、たとえば、スルフ
ァサラジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、5-アミノサリチル酸含有抗炎症
剤のような抗炎症性化合物、別の非ステロイド性抗炎症性化合物、ステロイド性抗炎症性
化合物、又はIBDの制御のために一般に投与される抗生剤(たとえば、シプロフロキサ
シン、メトロニダゾール)、又は他の生物剤(たとえば、TNFα拮抗剤)を本発明の製
剤と併用して投与することができる。
【0186】
実施形態では、一緒に投与される薬剤の用量は、抗α4β7抗体を含む製剤による治療
期間の間、経時的に減らすことができる。たとえば、抗α4β7抗体製剤による治療の開
始時、又はその前にステロイド(たとえば、プレドニゾン、プレドニゾロン)で治療され
ていた患者は、抗α4β7抗体製剤による治療の早ければ6週間で開始するステロイドの
用量を減らす投薬計画を受けることになる。ステロイドの用量は、当初の薬量漸減の4~
8週以内で約25%、抗α4β7抗体製剤による治療の間の薬量漸減の約8~12週で5
0%及び約12~16週で75%減らされるであろう。態様の1つでは、抗α4β7抗体
製剤による治療の約16~24週までにステロイド投与は排除することができる。別の例
では、抗α4β7抗体製剤による治療の開始時、又はその前に6-メルカプトプリンのよ
うな抗炎症性化合物で治療されていた患者は、上記で言及したようにステロイド投与につ
いての薬量漸減計画に類似する抗炎症性化合物の用量を低下させる投薬計画を受けること
になる。
【0187】
一実施形態では、方法は有効量の本発明の製剤を患者に皮下投与すること又は筋肉内投
与することを含む。別の実施形態では、製剤を自己投与用に調製することができる。
【0188】
製剤が固体、たとえば、乾燥状態であるならば、投与の過程は製剤を液体状態に変換す
る工程を含むことができる。態様の1つでは、注射、たとえば、静脈内、筋肉内又は皮下
の注射で使用するために、たとえば、上述のような液体によって乾燥製剤を再構成するこ
とができる。別の態様では、固体の又は乾燥した製剤を、たとえば、貼付剤、クリーム、
エアゾール又は座薬にて局所に投与することができる。
【0189】
本発明は、分子MAdCAM(たとえば、MAdCAM-1)を発現している組織の白
血球浸潤に関連する疾患を治療する方法にも関する。方法は、それを必要とする患者に有
効量の本発明の抗α4β7抗体製剤を投与することを含む。実施形態では、疾患は移植片
対宿主病である。一部の実施形態では、疾患は、分子MAdCAM(たとえば、MAdC
AM-1)を発現している消化管関連の内皮へのα4β7インテグリンを発現している白
血球の結合の結果としての組織の白血球浸潤に関連する疾患である。他の実施形態では、
疾患は胃炎(たとえば、好中球性胃炎又は自己免疫性胃炎)、膵炎、又はインスリン依存
性糖尿病である。さらに他の実施形態では、疾患は、胆嚢炎、胆管炎又は胆管周囲炎であ
る。
【0190】
本発明はまた、患者において炎症性大腸疾患を治療する方法にも関する。一実施形態で
は、方法は有効量の本発明の抗α4β7抗体製剤を患者に皮下投与することを含む。一部
の実施形態では、炎症性大腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。他の実施形態で
は、炎症性大腸疾患はセリアック病、血清陰性の関節症に関連する腸疾患、顕微鏡的又は
コラーゲン性の大腸炎、胃腸炎(たとえば、好中球性胃腸炎)、又は回腸嚢炎である。
【0191】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体による治療はCD4:CD8リンパ球の比を変え
ない。CD4:CD8の比は血液、リンパ節吸引液及び脳脊髄液(CSF)にて測定する
ことができる。健常な個体におけるCSFのCD4+:CD8+のリンパ球の比は通常約
1以上である(Svenningsson et al., J. Neuroimmunol. 1995;63:39-46; Svenningsson
et al., Ann Neurol. 1993; 34:155-161)。免疫調節剤はCD4:CD8の比を1未満に
変化させることができる。
【0192】
製造物品
別の態様では、本発明は、本発明の医薬製剤を含有し、使用のための指示書を提供する
製造物品である。製造物品は容器を含む。好適な容器には、たとえば、ビン、バイアル(
たとえば、二重チャンバーバイアル、針付き又は針なしの液体製剤のバイアル、針付き又
は針なしの再構成液のバイアル付き又はなしの固体製剤のバイアル)、シリンジ(たとえ
ば、二重チャンバーシリンジ、事前負荷したシリンジ、自動注入器)、カートリッジ及び
試験管が挙げられる。容器は、たとえば、ガラス、金属又はプラスチックのような種々の
物質から形成され得る。容器は、製剤とその上の又はそれに関連するラベルを保持し、容
器は使用のための指示を示し得る。別の実施形態では、製剤は自己投与のために調製され
、及び/又は自己投与のための指示書を含有することができる。態様の1つでは、製剤を
保持する容器は単回使用バイアルであり得る。別の態様では、製剤を保持する容器は複数
回使用バイアルであってもよく、それは再構成された製剤の1を超える部分を用いて製剤
の反復投与(たとえば、2~6回の投与)を可能にする。製造物品はさらに、他の緩衝液
、希釈液、充填剤、針、シリンジ、前の項で言及した使用のための指示書を伴った添付文
書を含む、商業的な見地及びユーザーの見地から望ましい他の物質を含み得る。
【0193】
一実施形態では、製造物品は針付きのシリンジである。針のゲージは25G、26G、
27G、29G、30Gであり得る。薄壁針、たとえば、19G又は23G以上は粘度の
高い製剤の注入を円滑にすることができる。態様の1つでは、針のゲージは27G以上で
ある。針の長さは皮下投与に好適であればよく、長さ1/2インチ、約5/8インチ又は
1インチであることができる。一部の実施形態では、シリンジは事前に充填されたシリン
ジである。
【0194】
事前に充填されたシリンジ製品の開発
一部の態様では、事前に充填されたシリンジ(PFS)(たとえば、皮下送達又は筋肉
内送達のための製剤の投与で使用するための)におけるタンパク質製品(たとえば、抗α
4β7抗体)にとって望ましい幾つかの製品特質がある。競合する効果を軽減するために
特質の一部のバランスを取ることは役に立つ。たとえば、少ない注入体積が所望である場
合、製剤の高いタンパク質濃度が好まれ得る。しかしながら、タンパク質濃度が高い場合
、不純物形成(たとえば、シリンジから製剤ににじみ出る凝集した不純物)の比率が高く
、シリンジを操作するのに必要な手動力が高くなり得る。注射部位で心地よい患者に使用
するサイズの小さな針はシリンジを操作するのに大きな力を必要とし得る。たとえば、タ
ンパク質濃度、pH及び針の内径のような製剤と針双方のパラメータによって製品の安定
性及び性能はどのように影響を受けるのかを理解することはタンパク質製品(たとえば、
事前に充填されたシリンジにおける抗α4β7抗体)を開発するのに役立つ。
【0195】
態様の1つでは、事前に充填されたシリンジで使用するためのタンパク質製品(たとえ
ば、抗α4β7抗体)を開発する方法は、シリンジのパラメータ及び製剤のパラメータを
一緒に、たとえば、協調した方式で又は同時に変えることを含む。各態様が別々に又は連
続して変わるのであれば、これは、事前に充填されたシリンジにおけるタンパク質製品か
ら期待され得る製品の安定性及び製品の性能の範囲のよりよい理解をもたらすことができ
る。
【0196】
事前に充填されたシリンジ製品(たとえば、抗α4β7抗体)の開発は、ある時点で事
前に充填されたシリンジの幾つかの成分と接触する液体製剤があるという理解に関連する
(
図15)。たとえば、製剤は注射筒と接触し得るが、それは、ガラス(たとえば、I型
のホウケイ酸ガラス)又はプラスチック(たとえば、環状オレフィンポリマー(COP)
、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリプロピレン又はポリテトラフルオロエチレ
ン)から構築され得る。製剤は、シリンジ、プランジャー及び/又は先端キャップと接触
し得るが、それらは、エラストマー(たとえば、同じ又は異なる物質(たとえば、ポリエ
チレン、ポリスチレン又はポリプロピレンのようなプラスチック又はゴム(天然、合成、
ブチル)若しくはシリコーンのような伸縮素材)の)であり得る。製剤はプランジャーの
動きを容易にするために注射筒に加えられる潤滑剤と接触し得る。潤滑剤は、たとえば、
シリコーン油、鉱物油又はグリセリンであり得る。提供された針付きシリンジの実施形態
では、金属合金針(たとえば、ステンレススチール針及び針をその場で止める接着剤)が
あり得る。事前に充填されたシリンジにおけるタンパク質製品について熟慮すべき事柄は
、液体のタンパク質溶液が製品の有効期間全体を通してこれらのシリンジ構成成分の1以
上に直接接触するということである。製剤及びシリンジ構成成分の双方がタンパク質の安
定性に影響を有することができる。
【0197】
事前に充填されたシリンジ製品の安定性に影響を及ぼすことができる製剤のパラメータ
には、タンパク質の濃度、pH、緩衝液の種類、イオン強度、安定剤の種類及び安定剤の
濃度が挙げられる。タンパク質製剤のための安定剤の例には、たとえば、イオン性の塩、
多糖類、アミノ酸、抗酸化剤、キレート剤、及び前の項で記載したような界面活性剤が挙
げられる。
【0198】
事前に充填されたシリンジ製品の安定性に影響を及ぼすことができるシリンジ構成成分
には、たとえば、潤滑剤、プランジャー及び先端キャップの組成、及び不純物が挙げられ
る。潤滑剤(たとえば、注射筒におけるシリコーン油)の量は製品の安定性に影響を及ぼ
し得る。これらの構成成分の酸素透過性に影響を及ぼし、タンパク質製品(たとえば、抗
α4β7抗体製剤)のこれら構成成分から浸出物を導入することができるプランジャー及
び先端キャップの組成も製品の安定性に影響を及ぼし得る。製品の安定性に影響を及ぼし
得る別のシリンジのパラメータには、(たとえば、筒(たとえば、ガラスの筒)及び/又
は針(たとえば、ステンレススチールの針)から)製品製剤ににじみ出すことができる不
純物(たとえば、重金属(たとえば、タングステン))の種類及び/又は量が挙げられる
(Ludwig et al. J.Pharm. Sci.99:1721-1733 (2010); Nashed-Samuel et al., American
Pharmaceutical Review Jan/Feb:74-80 (2011); Badkar et al. AAPS PharmSciTech 12:
564-572も参照)。
【0199】
事前に充填されたシリンジは手動で注入に用いることができ、又は自動注入装置と共に
使用することができる。事前に充填されたシリンジの機能性試験には、抜け出し力、プラ
ンジャーを動かし始めるのに必要な力、及び滑り力、シリンジの内容物を一定の速度で注
入するのに必要な力を測定することが挙げられる。事前に充填されたシリンジの機械的な
性能は、たとえば、製剤の粘度及びシリンジにおける潤滑剤(たとえば、シリコーン油)
の量のような製剤及びシリンジの幾つかのパラメータに左右され得る。
【0200】
事前に充填されたシリンジにおけるタンパク質製品の幾つかの特質及びこれらの製品特
質に影響を及ぼすことができる製剤及びシリンジの因子を表1に示す。多数の製品特質は
、製剤及びシリンジの幾つかのパラメータの複雑な関数であり得る。たとえば、粘度は、
たとえば、タンパク質濃度、安定剤濃度及びpHのような製剤の幾つかの因子に左右され
得るが、シリンジの滑り力は製剤の粘度の関数である。
【0201】
【0202】
態様の1つでは、たとえば、ポリソルベート20又はポリソルベート80のような界面
活性剤を、事前に充填されたシリンジにおけるタンパク質製剤に加えることができる(た
とえば、液体/空気及び/又は液体/潤滑剤(たとえば、シリコーン油)の界面でタンパ
ク質分子が吸着する及び変性するのを防ぐために)。タンパク質の表面での吸着及び変性
は、目に見えにくい及び目で見えるタンパク質様粒子の核生成のメカニズムの1つであり
得る。従って、事前に充填されたシリンジへの界面活性剤の添加は、事前に充填されたシ
リンジの製品における目に見えにくい及び目で見える粒子の形成を低減することができる
。一実施形態では、少量の界面活性剤は潤滑剤を乳化することができる(たとえば、シリ
コーン油は溶液にて油滴を作り、それによって目に見えにくい及び目で見える潤滑剤(た
とえば、シリコーン油の油滴)の形成を低減する)(上記Ludwig et al.,)。別の実施形
態では、タンパク質製剤に対する多量の界面活性剤の有害効果の可能性があるので製剤に
おける界面活性剤の量をできるだけ減らす。ポリソルベートに存在する過酸化物不純物は
、タンパク質の高い酸化をもたらすことができる(Wang and Wang J. Pharm. Sci.91:225
2-2264 (2002))。多量の界面活性剤はシリンジの壁からのシリコーン油の有意な量を乳
化することができ、有効期間にわたって機能的な滑り力の上昇をもたらすことができる。
製品開発の研究は、製品の安定性及びシリンジの性能の双方に対する様々な界面活性剤レ
ベルの効果を調べるように設計されるべきである。
【0203】
タンパク質/PFS系における製剤のパラメータとシリンジのパラメータの間での複雑
な相互作用は、設計による質(QbD)又は実験アプローチの設計(DOE)を用いたこ
れらの系の試験に適している。製剤のパラメータとシリンジのパラメータを同時に変化さ
せてこれらの複雑な系のよりよい理解を得る試験を設計することができる。これは、事前
に充填されたシリンジ製品の開発に対する包括的なアプローチを生じる。表2は、事前に
充填されたシリンジ製品のための実験の設計及び採用される分析試験の例を検討する入力
パラメータ及びレベルの例を示す。QbD試験に使用される実験設計の種類に応じて、実
験の数は、スクリーニング設計の9から完全要因の設計(考えられる組み合わせすべて)
の81まで変化し得る。実験の数が多ければ多いほど、解決できる製品パラメータ間の相
互作用の数が多い。この分析のために設計されたソフトウエア、たとえば、JMP(登録
商標)統計発見ソフトウエア(ノースカロライナ州、カリー)はQbD試験に役立ち得る
。この分析は、製剤のパラメータとシリンジのパラメータがどのように相互作用して製品
特質に影響を及ぼすかの定量的な理解を生じる。
【0204】
【0205】
表2に示した例の実験から得ることができる予測モデルの例を以下に提供するが、式中
Cnは数値定数である。
【0206】
経時的な可溶性凝集体の形成=C0+C1[タンパク質濃度]+C2[タンパク質濃度
]2+C3[pH]+C4[界面活性剤濃度]+C5[潤滑剤の量]
【0207】
シリンジの多数のパラメータが製品の安定性及び性能に影響を及ぼすことができるので
、実施形態には、シリンジのパラメータにおける許容可能な認容性が製品の安定性及び性
能にどのように影響を及ぼすのかという性状分析が含まれる。注射筒における潤滑剤(た
とえば、シリコーン油)の量は、シリンジごとによって50~100%変化し得る。量に
おけるこの変異は、表1に示すように製品の幾つかの特徴に影響を及ぼし得る。注射筒の
内径は、注入力に影響を及ぼすシリンジごとに変化し得る。提供された針付きシリンジに
ついては、針の内径は、ロットごとに又はメーカーごとに異なり、それは注入力に影響を
及ぼすであろう。シリンジのパラメータが性能にどのように影響を及ぼすかを調べるQb
Dアプローチを用いて、シリンジのパラメータにおける許容可能な認容性が製品性能にど
のように影響を及ぼすかを推定するのに使用することができる予測モデルを得ることがで
きる。QbDアプローチを用いて得られる予測モデルを用いて所望の製品特質を満たす製
剤及びシリンジのパラメータを選択し、製品の安定性及び性能を予測することができる。
【0208】
事前に充填されたシリンジは、タンパク質製剤へのシリコーンエマルジョン又はタング
ステンの添加を含有し得る。事前に充填されたシリンジに存在し得るシリコーンの例とな
る量は約0.3mg~約0.8mgの範囲である。態様の1つでは、事前に充填されたシ
リンジに存在し得るシリコーンの量は、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約
0.6mg、約0.7mg、又は約0.8mgである。別の態様では、製剤の粘度は、2
00mm/分の速度で5N~80Nの注入力を生じる2~60cPの範囲であろう。その
上さらに別の態様では、製剤の粘度は200mm/分の速度で10N~40Nの注入力を
生じる4~27cPの範囲であろう。
【0209】
以下の実施例を参照することによって本発明はさらに完全に理解されるであろう。しか
しながら、それらは本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。文献及び特
許の引用はすべて参照によって本明細書に組み入れられる。
【0210】
製剤を作製するためのプロトコール
接線流濾過システムにて抗α4β7抗体の溶液を透析濾過し、クエン酸塩、ヒスチジン
、アルギニン緩衝液にて特定の濃度に到達させ、次いで、プールし、クエン酸塩、ヒスチ
ジン、アルギニン緩衝液におけるポリソルベート80の溶液と混合する。2L又は5Lの
ビンにて溶液を-70℃で保存する。次いで溶液を融解し、0.2μmのフィルターで2
回濾過する。およそ1.0mLを無菌シリンジに充填し、無菌プランジャー(ストッパー
)で閉鎖する。製剤を保存し、最終薬剤製品を2~8℃のシリンジにて出荷する。
【実施例】
【0211】
実施例1:製剤の製造
因子
賦形剤の濃度
抗体製剤における凝集体の形成を調べた。タンパク質濃度、pH及び界面活性剤:タン
パク質のモル比を調べる実験データからSEC凝集体モデルを開発した。6.0~6.5
のpH範囲では、凝集体の形成は、ポリソルベート80とタンパク質のモル比0.7~1
.5に類似していた(
図6)。一般に、1.5より高いPS80とタンパク質の比では、
凝集体形成の速度はpHの上昇と共に高くなる(
図7)。
【0212】
空気の存在下でのSEC凝集体の形成を調べる実験を行った。11の組成を変えた様々
な製剤をボロケイ酸バイアルに入れ、空気の上部空間と共にエラストマーのストッパーで
栓をした。同一セットの製剤を作って空気の上部空間をアルゴンで置き換えた。これらの
試料を40℃にて2週間、安定して置いた。空気の上部空間がある試料はすべて、アルゴ
ンの上部空間がある同じ製剤と比較して実験の終了時に大量の凝集体を生じた。
【0213】
【0214】
これらの実験に基づいて、SEC凝集体は、酸化によって又はジスルフィド結合によっ
て形成すると仮定された。抗酸化剤及び/又はキレート剤の添加を調べた。pH6.6に
てポリソルベート80とタンパク質のモル比1.5と共に40mMのヒスチジン、90m
Mのアルギニン及び160mg/mLのタンパク質を含有する製剤を作製した。製剤に2
5mMのクエン酸塩、5mMのクエン酸塩、5mMのEDTA、25mMのシステイン又
は5mMのシステインを加えた。3種の添加した賦形剤はすべて凝集体の形成を抑えた(
図8)。抗酸化剤及び/又はキレート剤の添加は性能の順に、クエン酸塩>EDTA>シ
ステインとしてランク付けされた。5mM又は25mMのクエン酸塩は対照の製剤と比べ
てSEC凝集体の形成を抑えた。
【0215】
pH、タンパク質濃度、クエン酸塩濃度、ヒスチジン濃度及びポリソルベート80とタ
ンパク質のモル比の影響を判定する実験を行った。pHは6.0~6.3で変化させ、タ
ンパク質濃度は60~160mg/mLで変化させ、クエン酸塩濃度は0~25mMで変
化させ、ヒスチジン濃度は25~50mMで変化させ、ポリソルベート80とタンパク質
のモル比は0.7~1.5で変化させた。製剤は、1mL長さ27G1/2”のシリンジ
(0.55±0.2mgのシリコーン)に充填した。製剤はすべて約125mMのアルギ
ニンを含有した。
【0216】
CEX及びSECを用いて、40℃にて2週間、安定性を調べた。結果(
図9及び表4
)は、タンパク質濃度を高めることが凝集体形成の比率を高めた一方で、製剤における2
5mMのクエン酸塩の存在下で凝集体形成の低下を示している。5℃での単量体の量が2
4ヵ月まで本質的に変化しない一方で、単量体の量は25℃及び40℃では凝集体形成に
対して対向する傾向を示す(表5)。
【0217】
別のセットの製剤は、40℃、25℃、5℃での40~63mMのクエン酸塩は存在す
るが、ヒスチジンは存在しない場合のSEC凝集体の形成比率を調べた。これらの製剤に
おける凝集体形成の比率は40℃にてヒスチジンを伴った製剤よりもやや高かった。しか
しながら、5℃では、クエン酸塩を伴うが、ヒスチジンを伴わない製剤における凝集体の
形成比率は、クエン酸塩とヒスチジンを含有する製剤に匹敵した(表6)。また5℃では
、単量体の量は、24ヵ月まで本質的に変化しなかった(表7)。
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
pH
幾つかのpH実験を行って5℃でのCEX分解に対するpHを影響を確定した。ベドリ
ズマブ抗体製剤は、160mg/mLの抗α4β7抗体、125mMのアルギニン、50
mMのヒスチジン及び25mMのクエン酸塩で構成された。40℃、25℃及び5℃での
安定性について幾つかの異なるpHレベル、6.3、6.5、6.7及び6.9を調べた
。
40℃でのCEXモデル(
図10)は、pHがCEX分解に最も影響を及ぼすことを示
している。ヒスチジンを含有する製剤のpHは温度の上昇とともに低下するが、クエン酸
塩製剤のpHは温度に影響されないことが示された(
図11)。ヒスチジン/クエン酸塩
製剤は、40℃にて1週間後、pH6.8にて、25℃にて6ヵ月後pH6.3~6.5
にて及び5℃にて6ヵ月後pH6.3~6.5にて良好な安定性を有することが確定され
た。追加の試験に基づいて、製剤の安定性は、6.2~6.9のpH範囲にて25℃と5
℃では類似していた(表8及び9)
【0223】
【0224】
【0225】
実施例2
安定性
12ヵ月の経過にわたって安定性について4つの異なる抗α4β7抗体製剤を調べた。
6.0~6.2のpHを有する製剤は、6.3~6.4のpHを有する製剤よりもおよそ
1~2%少ない主要種を示した(
図12)。6.3~6.4のpHを有する製剤は、5℃
にて塩基性種又は主要種において1%未満の変化を示した。
【0226】
12ヵ月の経過にわたってSECによる安定性について10の異なる抗α4β7抗体製
剤を調べた(表10)。60mg/mLのタンパク質濃度で25mMのクエン酸塩を含有
する製剤が1年後0.1~0.2%の凝集体の変化を有した一方で、160mg/mLの
タンパク質と25mMのクエン酸塩を含有する製剤は、1年にわたって0.2~0.3%
の凝集体の増加を有した。クエン酸塩を伴わない60、110又は160mg/mLを含
有する製剤については、0.4~0.6%の凝集体の増加があった。
【0227】
【0228】
実施例3
粘度
医薬製剤を投与するのに必要とされる注入力は製剤の粘度に関係する。様々なpHを持
ち、様々な濃度のタンパク質、アルギニン、ヒスチジン、クエン酸塩、スクロース及びポ
リソルベート80を伴った製剤を作製した。これらの製剤の粘度を調べた。Ln(粘度)
の統計モデルを開発した。モデルは、粘度が主としてタンパク質の濃度及びpHに影響さ
れることを示した(
図13)。スクロース、ヒスチジン及びアルギニンも粘度に対して軽
微な影響を有することができる。一部のタンパク質製剤では、塩化ナトリウムを加えて製
剤の粘度を低下させる。しかしながら、粘度に対する塩化ナトリウムの効果はタンパク質
及び製剤に依存性であることが分っている。
【0229】
140mg/mlのベドリズマブ、125mMのアルギニン、25mMのヒスチジン、
25mMのクエン酸塩及びポリソルベート80とタンパク質のモル比1.5でのポリソル
ベート80を含有し、6.4のpHである製剤に塩化ナトリウムを加えた。NaClは製
剤の粘度に影響を有さなかった。
【0230】
調べた種々のシリンジの注入力に対する粘度の影響を
図16A及び16Bに示す。
【0231】
実施例4
方法
カチオン交換クロマトグラフィ(CEX)
高速液体クロマトグラフィ方式にて弱カチオン交換カラムでリン酸塩/塩化ナトリウム
の勾配を用いて抗α4β7抗体製剤における荷電種を分離し、抗体種の電荷組成を測定す
る。主要アイソフォームの前に酸性アイソフォームが溶出し、主要アイソフォームの後に
塩基性アイソフォームが溶出する。
【0232】
CEXアッセイを用いて生成したベドリズマブ製剤の安定性データは、主要アイソフォ
ームの%が55.0%を上回ることを示した。
【0233】
キャピラリ等電点電気泳動(cIEF)
iCE280全カラム検出cIEFシステム(オンタリオ州、トロントのConver
gent Biosciences)を用いてcIEFを行う。両性電解質はメーカーに
よって推奨されるように選択することができ、市販の両性電解質の組み合わせであり得る
。有用な組み合わせは、3~10及び5~8のPHARMALYTE(商標)(ニュージ
ャージー州、ピスカタウエイのGE Healthcare)である。
【0234】
cIEFアッセイを用いて生成したベドリズマブ製剤の安定性データは、主要アイソフ
ォームの%は約53%であり、酸性種は約42%であり、塩基性種は約5%であることを
示した。
【0235】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)
分析用SECカラム(ペンシルベニア州、キングオブプラシャのTosoh Bios
cience,LLC)を用いてSECを行う。移動相はリン酸緩衝化生理食塩水溶液で
あり、吸収は280nmでモニターする。
【0236】
SECアッセイを用いて生成したベドリズマブ製剤の安定性データは、単量体の%は9
9.0%であり、凝集体の%は<0.5%であり、低分子量物質の%は<1.0%である
ことを示した。
【0237】
SDS-PAGEアッセイ
還元条件では4~20%及び非還元条件では4~12%にてInvitorgen(カ
リフォルニア州、カールスバッド)のトリス/グリシンゲルを用いてSDS-PAGEを
行う。再構成した抗体製剤を液体製剤緩衝液で希釈し、次いで、10%の2-メルカプト
エタノールと共に(還元試料緩衝液)又は2-メルカプトエタノールを含まずに(非還元
試料緩衝液)トリス/グリシンSDS試料緩衝液(2X、Invitrogen)で1:
2に希釈する。試料を手短に加熱し、分子量マーカー(Invitrogen)と対比さ
せて負荷する。メーカーの指示書に従ってコロイド状のクマシーブルー(Invitro
gen)によってゲルを染色する。濃度測定法によってタンパク質バンドを解析し、還元
ゲルでは重鎖及び軽鎖の%を特定し、非還元ゲルではIgGの%を特定する。
【0238】
結合有効性
PBS、0.01%アジ化ナトリウム中1%BSAに浮遊させたHuT78細胞(ヒト
T細胞リンパ腫細胞、バージニア州、マナッサスのアメリカンタイプカルチャーコレクシ
ョン)を連続希釈した一次試験抗体と接触させる。氷上でインキュベートした後、細胞を
洗浄し、蛍光標識した二次抗体で処理する。さらに洗浄した後、細胞を固定し、フローサ
イトメトリー(ニュージャージー州、フランクリンレイクスのBecton Dicki
nson)による解析のためにFACS試薬に浮遊させる。また、米国特許第7,147
,851号も参照のこと。
【0239】
Karl Fischerによる水分
電量Karl Fischer水分決定法のために製剤をメタノールで滴定する。
【0240】
実施例5
抗α4β7抗体製剤を事前に充填したシリンジ製品からのシリコーンの影響
L-ヒスチジン、L-アルギニン塩酸塩、クエン酸塩及びポリソルベート80を含有す
る緩衝液にて60~160mgの抗α4β7抗体タンパク質を含有する皮下製剤を用いて
タンパク質製剤の安定性及び容器/蓋の特質に対するシリコーンの影響を調べる。試験は
0.5mL分量で行う。
【0241】
タンパク質濃度、ポリソルベート80とタンパク質のモル比、及び注射筒に噴霧される
シリコーンの量を含むパラメータを調べる。入力パラメータのそれぞれの範囲を表11に
示す。
【0242】
【0243】
実験の設計を用いて調べる製剤のセットを決定する。製剤の理に適った数は6~8の製
剤の範囲である。調べる製剤の例を表12に示す。
【0244】
【0245】
製剤のセットに一部の対照を加え、少数の選択時点で調べてもよい。
【0246】
幾つかの異なる温度(たとえば、5℃、25℃/60%RH、40℃/75%RH)で
これらの製剤を安定に置き、種々の時点(たとえば、0週、1週、2週、4週、8週、1
2週、6ヵ月及び12ヵ月)で試験のために取り出す。対照は0週、12週、6ヵ月及び
12ヵ月で調べる。
【0247】
各安定性の時間で取り出して行う試験には、SEC、CEX、インストロン、MFI、
及びシリコーンの定量が含まれる。シリンジ1つをインストロンで調べ、放出された物質
をSEC、CEX、注入力測定、及びマイクロフロー画像化(MFI)及びシリコーンの
定量に使用する。
【0248】
実施例6
抗α4β7抗体製剤を充填した事前に充填されたシリンジの構成成分の分析
この試験は、種々のシリンジのメーカー、プランジャー(ストッパー)、エラストマー
物質、及び製剤におけるPS80の量がシステムの機械的特性及び製剤の安定性にどのよ
うに影響するかを調べた。
【0249】
3種の異なるシリンジメーカー、2種の異なるプランジャー(ストッパー)の材料種、
及び2種の異なるPS80とタンパク質のモル比を調べて実験の設計を創った。製剤の残
りは、170mg/mLのタンパク質、125mMのアルギニン、50mMのヒスチジン
、25mMのクエン酸塩及び6.5のpHで一定に保持した。これらの事前に充填された
シリンジの針サイズは27G1/2’又は29G1/2”の薄壁だった。実施した実験を
表15にて詳述する。
【0250】
実験の動きのある部分の実験設計入力を表13で以下に示すが、一定の部分は表14に
示す。表13に示す入力を利用して実験設計を創った。
【0251】
実験のリストは表10に示す。
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
濃縮した製剤、抗α4β7抗体製剤にポリソルベート80を入れ、170mg/mLに
希釈する。出発製剤の組成を表16で以下に示す。
【0256】
【0257】
物質を所望の製剤組成に希釈するために、25mMのクエン酸塩、50mMのヒスチジ
ン、125mMのアルギニン、pH6.48におけるPS80のストック溶液を作る。
【0258】
【0259】
製剤の希釈スキームを表18で詳述する。
【0260】
【0261】
希釈スキームに基づいて配合を行い、出発製剤は秤量すべきであるが、他のストック溶
液は容量分析的にピペットで取ることができる。製剤を濾過する。0.5mLの製剤をで
きるだけ多くの1mLの長いシリンジに分配する。2~4mmの泡1つと共に締め機によ
ってシリンジを締める。各時点について、シリンジの1つは針を下にして保存し、シリン
ジの1つは横向きに保存する。余分なシリンジは針を下にして保存する。
【0262】
5、25及び40℃にて2週目及び1ヵ月でシリンジを調べる。分析試験(外見、イン
ストロン、pH、浸透圧、密度、粘度、SEC、CEX及びブライトウエル)を最初に行
い、次いで再び2週間目に25℃及び40℃で、4週間目に25℃で行う。
【0263】
実施例7
抗α4β7抗体製剤を事前に充填された27Gの薄壁針シリンジで使用される皮下容器閉
止の分析
この試験は、27Gの薄壁針を持つ種々のシリンジモデル及び種々のプランジャー(ス
トッパー)のメーカーやモデルがシステムの機械的な特性及び製剤の安定性に経時的にど
のように影響するのかを調べる。
【0264】
この試験は、シリンジのメーカー及び27GTW針を持つシリンジ用のプランジャー(
ストッパー)のモデルによって事前に充填されたシリンジにおける抗α4β7抗体皮下液
体製剤の安定性及びシリンジの機械的特性がどのように影響を受けるのかを調べる。試験
から生成されるデータは液体皮下抗α4β7抗体製剤についての容器/閉止の構成成分を
決定し得る。
【0265】
実験設計の入力を表19で以下に示すが、定数は表20に示す。表19に示す入力を利
用して実験の設計を創った。
【0266】
実施される実験のリストを表21に示す。
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
濃縮した抗α4β7抗体製剤にポリソルベート80を入れ、160mg/mLに希釈す
る。出発製剤の組成を表22で以下に示す。
【0271】
【0272】
所望の製剤組成に物質を希釈するために、25mMのクエン酸塩、50mMのヒスチジ
ン及び125mMのアルギニン、pH6.3におけるPS80のストック溶液を作製する
。
【0273】
【0274】
製剤のための希釈スキームは表24で詳説する。
【0275】
【0276】
希釈スキームに基づいて配合を行い、出発製剤は秤量すべきであるが、他のストック溶
液は容量分析的にピペットで取ることができる。製剤を濾過する。0.5mLの製剤をで
きるだけ多くの1mLの長いシリンジに分配する。2~4mmの泡1つと共に締め機によ
ってシリンジを締める。各時点について、シリンジの1つは針を下にして保存する(水平
位置)。
【0277】
5℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月(
任意)、12ヵ月、18ヵ月、及び24ヵ月にてシリンジを調べる。
【0278】
1、3、6、9、12、18、24ヵ月(5℃)、1、3、6、9、12、18ヵ月(
25℃)1、3、6、9、12ヵ月(40℃)及び1、3ヵ月(40℃)にて液体製剤を
分析的に調べる(濃度、浸透圧、pH、インストロン、MFI、SEC、及び/又はCE
X)。
【0279】
実施例8
プラスチック製の事前に充填されたシリンジにおける皮下抗α4β7抗体製剤の分析
抗α4β7抗体皮下製剤のための容器/閉止方式としてのプラスチック製シリンジの使
用を研究するためにこの試験を開始する。プラスチック製の事前に充填された候補シリン
ジにおける代表的な抗α4β7抗体皮下製剤の安定性を検討する。この試験で生成される
データは、液体皮下抗α4β7抗体製剤へのプラスチック製シリンジの使用に適用性を判
断するのに役立つ。
【0280】
安定性試験試料は以下に示すように調製される。安定性試験は、40℃/75%RH、
25℃/60%RH及び5℃の保存条件下で実施される。
【0281】
表26に示す液体皮下抗α4β7抗体製剤と共に、表25における2種類のプラスチッ
ク製シリンジ及び1種のガラス製シリンジ(対照)を調べる。表27は、実験で調べられ
る各セットの試料の詳細を示す。
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
前に調製した液体皮下抗α4β7抗体製剤をこの検討に使用する。製剤を濾過する。「
充填前」試料として品質試験のために濾過した溶液を試料採取すること(外見、MFI、
DLS)。0.5mLの製剤を1mLのプラスチック製シリンジに分配する。真空締め機
でシリンジを締める。針を下にしてシリンジを保存する。
【0286】
最初のチェックを行ってpH、浸透圧、密度、粘度及びタンパク質濃度を測定する。分
析試験(外見、SEC(凝集体、単量体、LMW)、CEX(酸性、主要、塩基性)、滑
り力、MFI、DLS及び/又は重量)40℃にて1週間後、40℃にて2週間後、5、
25及び40℃にて1ヵ月後、5及び25℃にて3ヵ月後、5及び25℃にて6ヵ月後、
5及び25℃にて9ヵ月後、5及び25℃にて12ヵ月後に実施する。
【0287】
試料は、5℃及び25℃にて1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、及び12ヵ月に採取す
る。試料は40℃にて1週間、2週間及び1ヵ月で採取する。
実施例9
【0288】
0、1、3、6及び12ヵ月を含んでいてもよい種々の時点で5℃及び25℃にて外見
、注入力、SEC、CEX及びマイクロフロー画像化について試料を分析した。SEC及
びCEXによって測定されるような製剤の安定性は実施例1及び2で議論されたものに類
似した。注入力試験については、滑り力を測定した(表28)。統計モデルは、滑り力に
影響を及ぼす唯一の有意な因子はシリンジのメーカーであることを割り出し、Aは、Cよ
り高かったBより高い滑り力を有した(
図17)。5℃での12ヵ月及び25℃での6ヵ
月にわたるシリンジの滑り力の変化は、10N未満であり、ほとんど5N未満であった。
【0289】
【0290】
実施例10
抗α4β7抗体製剤を充填した27Gの薄壁針シリンジで使用される事前に充填されたシ
リンジの構成成分の分析
この試験は、27G薄壁針の種々のシリンジのメーカー及びプランジャー(ストッパー
)のメーカー及びエラストマー物質が、事前に充填されたシリンジのシステムの機械的特
性及び製剤の安定性に経時的にどのように影響するかを調べた。
【0291】
27G1/2”の薄壁針及び6.5のpHで160mg/mLのタンパク質、125m
Mのアルギニン、50mMのヒスチジン、25mMのクエン酸塩、0.2%のPS80を
含有する製剤と共に、3種の異なるシリンジのメーカー及び4種の異なるプランジャー(
ストッパー)モデルを調べた。創り、調べた試料はすべて表29に示す。
【0292】
【0293】
0、1、3、6及び12ヵ月を含んでいてもよい種々の時点で5℃、25℃及び40℃
にて外見、注入力、SEC、CEX及びマイクロフロー画像化について試料を分析した。
SEC及びCEXによって測定されるような製剤の安定性は実施例1及び2で議論された
ものに類似した。注入力試験については、抜け出し及び滑り力を測定した。当初の時点で
の結果を表30に示す。
【0294】
【0295】
統計モデルは、シリンジのメーカーA及びCは類似し、メーカーBよりも低い滑り力を
有したが、プランジャー(ストッパー)Eは他のプランジャー(ストッパー)よりもやや
高い滑り力を有することを示した。
【0296】
一般に、当初の抜け出し力は調べた試料間で類似していた。
【0297】
5℃、25℃及び40℃にて12ヵ月にわたって、滑り力は有意に変化しなかった。し
かしながら、プランジャー(ストッパー)Fを持つシリンジの抜け出し力は25℃及び4
0℃で12ヵ月まで上昇した。
【0298】
実施例11
事前に充填されたシリンジにおける抗α4β7抗体製剤の分析
この試験は、様々なレベルのタンパク質濃度、ポリソルベート80の濃度、クエン酸塩
濃度及びpHが事前に充填されたシリンジにおける抗α4β7抗体製剤にどのように影響
を及ぼすかを究明する。
【0299】
タンパク質濃度(60~160mg/mL、pH(6.0~6.3)、ポリソルベート
80:タンパク質のモル比(0.723~1.5)及びクエン酸塩(0~25mM)の2
レベルの一部実施によるJMPにて実験設計の一部を創る。これらの製剤はヒスチジン濃
度(50mM)とアルギニン濃度(125mM)は一定値を有する(製剤1~8)。25
mMのヒスチジンを伴ったこれら製剤の変異形を加える(製剤9~10)。
【0300】
追加のセットの製剤を開発してヒスチジンが存在せず、クエン酸塩だけが緩衝液として
作用する製剤を調べる(製剤11~16)。調べる製剤すべてについて入力のレベルを表
31に示す。製剤すべてに使用する定数を表32に示す。
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
各製剤は、抗α4β7抗体を含有し、種々の賦形剤ストック溶液で希釈した出発ストッ
ク製剤から生成する。理に適った希釈体積を達成するために、使用した抗α4β7抗体ス
トック溶液を表34に示す。2つの異なるTFF操作を実施して製剤TFF1及び2を得
る。TFF1の一部を透析に使用して「透析」と標識した製剤を得る。
【0305】
【0306】
物質を所望の製剤組成に希釈するために、表35で特定される濃度で各賦形剤の水溶液
を作る。
【0307】
【0308】
製剤のための希釈スキームは表36及び37で詳述する。
【0309】
【0310】
【0311】
希釈スキームに基づいて配合を行い、出発製剤は秤量するが、他のストック溶液は容量
分析的にピペットで取る。製剤を濾過する。0.5mLの製剤をできるだけ多くの1mL
の長いシリンジに分配する。シリンジを締め機によって締める。シリンジは針を下にして
保存する。
【0312】
液体製剤は、当初、40℃で1週間にて、40℃で2週間にて、25℃と40℃で1ヵ
月にて、5℃と25℃で2ヵ月にて、5℃と25℃で3ヵ月にて、5℃と25℃で6ヵ月
にて、5℃と25℃で9ヵ月にて、5℃と25℃で12ヵ月にて、分析上(外見、pH、
浸透圧、密度、DLS、SEC、CEX及び/又はブライトウエル)調べる。
【0313】
表38に係る特定の製剤に取り出しも実施する。
【0314】
【0315】
実施例12
ガラス製のシリンジ又は2つの異なるCOPプラスチック製シリンジのいずれかにおけ
る安定性について、160mg/mlのタンパク質、50mMのヒスチジン、25mMの
クエン酸塩、125mMのアルギニンをpH6.5にて含有する製剤を調べた。12ヵ月
後、5℃又は25℃にて凝集体と単量体の量は、プラスチック製とガラス製のシリンジで
匹敵していた。
【0316】
【0317】
実施例13:
皮下注射及び筋肉内注射によって投与されたベドリズマブの生体利用効率
健常な男性対象に皮下注射及び筋肉内注射によって投与されたベドリズマブの生体利用
効率のフェーズI試験が完了した。合計42人の健常男性が試験に登録した。対象を各1
4対象の3群(皮下、筋肉内及び静脈内の投与)に分けた。その日、対象に180mgのベド
リズマブを投与した。pH6.3で50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0
.06%のポリソルベート80、10%スクロースにおける60mg/mLの抗体の凍結
乾燥製剤から投与物を再構成した。筋肉内及び皮下の対象については、投与物を各1.5
mLの2回注射に分けた。血液を採取して血漿のベドリズマブ濃度を確定し、各セットの
対象におけるベドリズマブの生体利用効率を測定した。
【0318】
重篤な有害事象又は重大な感染、臨床的に重大な異常、陽性の主観的な/客観的なRA
MPチェックリスト、又は臨床的に重大なECG所見は報告されなかった。
【0319】
PK/PDのモデル化及びシミュレーションを完了して、トラフレベルでこの所望の血
清濃度を維持するために静脈内用量と類似する暴露を生じる用量及び血管外用量の投薬計
画を決定した。
【0320】
吸収特性(
図18)は、筋肉内用量と皮下用量の濃度が一般に重複することを示した。
これらの投与経路の吸収特性には明らかな肉眼的差異はない。SC注射に続くベドリズマ
ブの絶対的な生体利用効率は、およそ75%であり、IM注射に続くものはおよそ80%
だった。
【0321】
実施例14
モデル化皮下投与の計画
PK/PDのモデル化及びシミュレーションを完了して、トラフレベルで特定の血清濃
度を維持するために静脈内用量と類似する暴露を生じる用量及び血管外用量の投薬計画を
決定した。
【0322】
最終的な組み合わせデータセット(IV、SC及びIMのデータ)は、クリアランス(
CL)及び分布の中央値(V2)、分布の末梢値(V3)、血管外経路に依存する吸収速
度定数(KA)並びに血管外用量(F)の相対的な生体利用効率(静脈内投与と比べて)
という点でパラメータ化される2区画線形モデルを示した。IIV用語は、相対成長効果
を介してCL及びV3に影響を及ぼす唯一の共変量としての体重と共にCL、V2及びV
3に含められた。
【0323】
モデルの受容性及び予測性は、ブートストラップパラメータ推定、視覚予測チェック及
びプロットの当てはまりの良さを介して明らかにした。モデルの解析は、ベドリズマブの
PKの予測因子として体重を特定し、PKの変動性は対象と対象の中の成分の間に起因し
た。
【0324】
モデルがシミュレーションに適するといったん分かると、投与経路(IV、IM又はS
C)の効果を評価し、定常状態のトラフ濃度に対する投与回数(毎週、2週に1回、4週
に1回、8週に1回)の効果を評価するためにシミュレーションを行った。これらの値と
IM及びSCの投与に続くベドリズマブの相対的な生体利用効率(F=69.5%)に基
づいて、用量を選択し、IV用量として類似のトラフ濃度を達成した。
【0325】
シミュレーションは、静脈内の誘導計画と維持計画を調和させるように用量及び投薬計
画をモデル化した。標的は、暴露(血清薬剤濃度-時間の曲線下面積(AUC))及びト
ラフ薬剤濃度の双方だった。表40~43は、シミュレーションの結果を提供する。
【0326】
【0327】
【0328】
【0329】
【0330】
実施例15
フェーズ2a複数回用量試験
フェーズ2a複数回用量試験は、皮下投与経路によるベドリズマブの複数回投与の後の
ベドリズマブの安全性、認容性、定常状態のPKを評価し、静脈内投薬計画に比べた皮下
投薬計画の相対的な生体利用効率を評価することができる。皮下投与後のHAHAの発生
及びHAHAの中和及びベドリズマブの複数回投与のPDに対する効果を評価することが
できる。
【0331】
1~12の部分Mayoスコアを有する潰瘍性大腸炎の患者及び150を超えるCDA
Iを有するクローン病の患者を試験に含めることができる。コホートは、0週目と2週目
にIVで投与されるベドリズマブ(300mg)の誘導投薬計画を受け、続いて以下のい
ずれかの維持投薬計画:
6~22週にて4週ごとにIVで投与されるベドリズマブ(300mg)、
6~22週にて8週ごとにIVで投与されるベドリズマブ(300mg)、
6~22週にて毎週SCで投与されるベドリズマブ(108mg)、
6~22週にて2週ごとにSCで投与されるベドリズマブ(108mg)、
6~22週にて3週ごとにSCで投与されるベドリズマブ(165mg)を受け取ること
ができる。
【0332】
試料は、1日目の投与前、次いで再び1日目(12時間)、2、3、5、8、15、2
9、43、127、127(12時間)、128、129、131、134、141、及
び155で採取してPK及びPDを評価することができる。
【0333】
実施例16
IBD治療でのベドリズマブによる長期の臨床経験
フェーズ2の非盲検安全性延長試験を完了してベドリズマブの長期の薬物動態(PK)
、薬力学(PD)、安全性及び有効性を評価した。患者は18歳~75歳であり、潰瘍性
大腸炎患者における以前のPK/PD安全性試験に以前加わったことがあるか、又は36
ヵ月のスクリーニング内で内視鏡で、及び/又は組織病理学的に及び/又は放射線検査で
確認された少なくとも2ヵ月間のIBDの症状を有していた。
【0334】
患者はすべて、2mg/kg又は6mg/kgのベドリズマブ(5mg/mLの抗体、
20mMのクエン酸塩/クエン酸、125mMの塩化ナトリウム、0.05%のポリソル
ベート80、pH6.0(長期には-70℃で3ヵ月までは-20℃で保存)を1、15
及び43日目、その後、合計78週まで8週ごとに受け取った。患者は、治療を受けたこ
とがない潰瘍性大腸炎若しくはクローン病の患者、又は以前の臨床試験に加わったことが
ある潰瘍性大腸炎患者であった。
【0335】
有効性/生活の質(QoL)、部分Mayoスコア(PMS)、クローン病活動性指数
(CDAI)及び炎症性大腸疾患アンケート(IBDQ)を用いて試験の結果を評価した
。
【0336】
PKの結果
平均の点滴前のベドリズマブ濃度は用量比例性であり、固定したままであり、試験全体
を通して検出可能だった。
【0337】
PDの結果
すべての用量レベルで試験全体を通して受容体(%ACT-1+[CD4+CD45R
O高]及び%MADCAM+[CD4+CD45RO高]はほぼ完全に阻害された。
【0338】
部分Mayoスコア
ベースラインの平均PMSは、潰瘍性大腸炎を繰り返す患者(2.3)よりも治療した
ことがない潰瘍性大腸炎患者の方が(5.4)高かった。43日目までに、PMSは、繰
り返し患者及び治療したことがない潰瘍性大腸炎患者の双方で顕著な低下を示した。15
5日目までに、2群の平均スコアは類似した。平均PMSは267日目までの間、低下し
続け、その後、平らになった。
【0339】
クローン病活動性指標
CD患者のCDAIはベースラインの294.6から43日目で237.7まで低下し
、155日目までの間低下し続けた(156.1)。
【0340】
IBDQ
潰瘍性大腸炎を繰り返す患者はベースラインで最高平均値のIBDQスコアを有した。
43日目までに平均IBDQスコアは3つの疾患群すべてで増加した。平均IBDQスコ
アは3つの疾患群すべてで経時的に増加し続け、クローン病患者では155日目に、治療
したことがない潰瘍性大腸炎患者及び潰瘍性大腸炎を繰り返す患者では491日目に最高
に達した。
【0341】
C-反応性タンパク質
潰瘍性大腸炎を繰り返す患者及びクローン病患者は155日目までの間低下する平均C
RPレベルを示し、その後平らになった。治療したことがない潰瘍性大腸炎患者は、潰瘍
性大腸炎を繰り返す患者よりもベースラインで低い平均CRPレベルを有した(2.28
対7.09)。治療したことがない潰瘍性大腸炎患者の平均CRPレベルは、評価された
時点すべてで相対的に一定のままだった。
【0342】
他の安全性の結果
試験の間、全身性の日和見感染(PMLを含む)は報告されなかった。患者1人が単一
時点でJCウイルス血症陽性であったが、他の時点ではすべてJCV陰性だった。72人
の患者のうち3人(4%)が陽性のHAHA成績(これらのうち2人は一時的に陽性)を
有した。試験は、肝臓毒性、リンパ球増加症、又はリンパ球減少症、又は他の薬剤関連の
臨床検査値の変化の証拠を示さなかった。
【0343】
結論
78週まで8週ごとに1回、2.0又は6.0mg/kgで投与されたベドリズマブは
、標的受容体の飽和を達成し、疾患の活動性の長く続く平均的な低下と改善されたIBD
Qを伴い、一般に安全で上手く認容され、許容可能な免疫原性を示した。
【0344】
実施例17
中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎患者における応答と寛解の誘導と維持
中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎患者における応答と寛解の誘導と維持を評価す
るために2つの無作為二重盲検多施設試験を含む単回試験を設計した。人口統計的な及び
ベースラインの疾患の特徴は治療群すべてにわたって同等だった。
【0345】
静脈内投与を用いた誘導試験を、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0
.06%のポリソルベート80、10%スクロース、pH6.3における60mg/ml
の抗体の凍結乾燥製剤から再構成した300mg用量にて、ベドリズマブの2回投与後6
週間での終点でベドリズマブに対するプラセボと比較した。
【0346】
誘導試験と同じ製剤及び経路を用いた維持試験をベドリズマブに対するプラセボと比較
したが、ベドリズマブは4週ごとに投与し、ベドリズマブに対するプラセボは8週ごとに
投与した。この試験の終点は52週であり、誘導応答者の集団を解析した。
【0347】
血液試料を採取して試験中のベドリズマブの濃度を測定した。誘導相の終了時でのベド
リズマブの平均血清濃度は20~30μg/mLだった。300mg用量投与の30分間
IV点滴の後の定常状態でのベドリズマブの平均トラフ血清濃度はq8wks投薬計画(
8週計画)では9~13μg/mLの間であり、q4wks投薬計画(4週計画)では3
5~40μg/mLの間であった。点滴終了時のベドリズマブの中央値血漿濃度は、q8
wks投薬計画では98~101μg/mLの間であり、q4wks投薬計画では129
及び137μg/mL前後であった。
【0348】
誘導試験及び維持試験の応答の要約を表44~47に提供する。ベドリズマブで治療し
た患者の有意に大きな集団がプラセボに比べて6週間で臨床的な応答、寛解及び粘膜治癒
を達成した(表44)。誘導相の包括解析集団の39%は過去の抗TNF-α療法で失敗
を有した。臨床的な応答及び寛解の比率は、過去の抗TNF療法での失敗がある患者及び
抗TNFに暴露されていない患者の双方でベドリズマブの方がプラセボより高かった。6
週間までの間での予備的な解析では、有害事象(AE)、重篤なAE及び試験の中止を招
く有害事象の比率はベドリズマブ群よりプラセボ群で高かった。プラセボ患者よりも有意
に高いベドリズマブ患者の集団が、52週での臨床的な寛解、粘膜治癒、及びコルチコス
テロイドなしの寛解、及び長く続く応答と寛解を達成した(表45)。維持試験の集団の
32%は過去の抗TNF-α療法で失敗を有した。臨床的な寛解及び長く続く応答の比率
は、TNFで失敗した患者及びTNF経験のない患者の双方でプラセボよりもベドリズマ
ブの方が高かった。0~52週での安全性の集団(N=895)では、有害事象(AE)
、重篤なAE及び重篤な感染は、ベドリズマブ群とプラセボ群の間で類似していた。日和
見感染又は腸内感染の比率の上昇はベドリズマブ群では認められなかった。
【0349】
【0350】
【0351】
【0352】
【0353】
実施例18
中程度から重度の活動性のクローン病患者における応答と寛解の誘導と維持
中程度から重度の活動性のクローン病患者における応答と寛解の誘導と維持を評価する
ために2つの無作為二重盲検多施設試験を含む単回試験を設計した。人口統計的な及びベ
ースラインの疾患の特徴は治療群すべてにわたって同等だった。
【0354】
静脈内投与を用いた誘導試験を、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0
.06%のポリソルベート80、10%スクロース、pH6.3における60mg/ml
の抗体の凍結乾燥製剤から再構成した300mg用量にて、ベドリズマブの2回投与後6
週間での終点でベドリズマブに対するプラセボと比較した。
【0355】
誘導試験と同じ製剤及び経路を用いた維持試験をベドリズマブに対するプラセボと比較
したが、ベドリズマブは4週ごとに投与し、ベドリズマブに対するプラセボは8週ごとに
投与した。この試験の終点は52週であり、誘導応答者の集団を解析した。
【0356】
驚くべきことに、この試験は、Q4週及びQ8週の群ではよく似た結果が得られること
を示した。誘導試験及び維持試験の応答の要約を表48~51に提供する。プラセボに比
べてベドリズマブで治療した患者の有意に大きな集団が臨床的な寛解及び高い応答を達成
した(表48)。臨床的な寛解及び高い応答の比率は、過去にTNFで失敗したもの及び
過去にTNF暴露のないもの双方でプラセボよりもベドリズマブ患者において高かった。
有害事象(AE)、重篤なAE及び重篤な感染の比率はベドリズマブ群及びプラセボ群の
双方で類似していた。日和見感染又は腸内感染の比率の上昇はベドリズマブ群では認めら
れなかった。
【0357】
【0358】
【0359】
【0360】
【0361】
実施例19
中程度から重度の活動性クローン病患者における応答と寛解の誘導
無作為二重盲検プラセボ対照多施設試験を完了して、6週目(0及び2週目での2回の
投与の後)及び10週目(3回投与後)にてTNFα拮抗剤で失敗した患者において30
0mg用量(凍結乾燥した50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0.06%
のポリソルベート80、10%スクロース、pH6.3における60mg/mlの抗体の
製剤から再構成した)でのベドリズマブの誘導効果を評価した。試験は416人の患者か
ら成り、そのうち75%はTNFα拮抗剤で失敗した患者であり、25%はTNFαの投
薬経験がなかった。人口統計学及び付随するIBDの投薬は治療群全体にわたって均衡を
取った。ベースラインの疾患の特徴もベースラインの疾患の活動性を除いて治療群全体に
わたって均衡を取った。
【0362】
試験で指定された一次終点は、TNF-α拮抗剤で失敗した集団では6週目の寛解(%
)であった。評価される(順次試験手順)鍵となる二次終点は、集団全体での6週目の寛
解(%)、TNF-α拮抗剤で失敗した集団及び集団全体での10週目の寛解(%)(H
ochberg法を用いて)、TNF-α拮抗剤で失敗した集団及び集団全体での6週と
10週での持続した寛解(%)(Hochberg法を用いて)、及びTNF-α拮抗剤
で失敗した集団での6週目の向上した応答(%)であった。
【0363】
【0364】
【0365】
【0366】
【0367】
試験は、TNF-α拮抗剤で失敗した患者が寛解の誘導に3回の投与を必要とすること
を示した。TNF-α拮抗剤で失敗した患者における寛解率は6週目と10週目の間で増
加したが、ベドリズマブ群(プラセボではない)についてのみだった。TNF-α拮抗剤
の投与経験がない患者についての寛解率は6週目と10週目の間では実質的に増加しなか
った。疾患の重症度の程度が高いTNF-α拮抗剤で失敗した患者のうち、43%はTN
Fα拮抗剤に決して応答しなかったし、45%は応答を喪失した。
【0368】
実施例20:安定性
5℃にて6~24ヵ月の経過にわたって、種々の異なった抗α4β7抗体製剤を安定性
について調べた(表6及び7)。6.0~6.2のpHを有する製剤は6ヵ月後及び24
ヵ月後、およそ4%未満の主要種の分解を示した。
【0369】
24ヵ月までSECによって種々の異なった抗α4β7抗体製剤を安定性について調べ
た(表4及び5)。60mg/mLのタンパク質濃度で25mMのクエン酸塩を含有する
製剤は、2年後0.1~0.2%の凝集体の変化を有したが、160mg/mLのタンパ
ク質濃度及び25mMのクエン酸塩を含有する製剤は、2年後およそ0.3%の凝集体の
増加を有した。クエン酸塩を含まずに60、110又は160mg/mLのタンパク質を
含有する製剤については0.6~1.1%の凝集体の増加があった。クエン酸を含有する
が、ヒスチジンを含有しない12ヵ月及び24ヵ月に調べた製剤については、およそ0.
3~0.4%の凝集体の増大があった。
【0370】
実施例21:
CD4:CD8の比に対するベドリズマブの効果の判定
10%スクロースの凍結乾燥製剤から再構成し、0.9%生理食塩水の点滴系に希釈し
た450mgベドリズマブの単回投与で18~45歳の健常対象を処理した。450mg
ベドリズマブの単回投与の前(ベースライン)及び5週間後腰椎穿刺によって脳脊髄液(
CSF)を採取した。各対象は彼ら自身が対照として役立った。
【0371】
5週間の時点は、ナタリズマブで治療したMS患者がたった1回の投与の後、CSFの
CD4+:CD8+のリンパ球の比に対する効果及び脳病変の数の低下を実証したことを
示す以前の試験(Stuve et al. Arch Neurol. 2006; 63: 1383-1387; Stuve et al. Ann
Neurol. 2006;59:743-747. Miller et al. N Engl J Med. 2003;348(1):15-23)に基づい
て、及びまた5週目で450mg用量のベドリズマブは標的を飽和するのに十分であり、
4週ごとに300mgのフェーズ3用量試験に関連する推定の定常状態トラフレベルを超
える血清レベルを提供するので、5週の時点を選択した。
【0372】
免疫表現型決定のためにおよそ15mLのCSFが各対象から得られた。以下の基準:
試料当たり≦10のRBC/μL(末梢血の混入をできるだけ抑えるために);否定的な
CSF培養結果;各フローサイトメトリー試料における適正なTリンパ球数;及びベドリ
ズマブに対する血清抗体が検出されないことを満たせば、CSF試料を解析に含めた。
【0373】
5週目の中央値(34.80μg/mL)及び個々の対象の血清ベドリズマブ濃度(2
4.9~47.9μg/mLの範囲)は、フェーズ3の投与計画のための投影される定常
状態のトラフ濃度(約24μg/mL)より高かった。高い程度(>90%)のα4β7
受容体の飽和はMAdCAM-1-Fcによって測定されるように5週で認められ、終点
評価の時点での標的のベドリズマブの飽和を示していた。
【0374】
ベドリズマブはどのCSF試料においても検出されなかった(検出限界=0.125μ
g/mL)。
【0375】
CD4+及びCD8+のリンパ球の数及び比に対する効果
ベドリズマブはCD4+:CD8+の比を有意に低下させなかった(表56)。対象は
誰も<1の投与後CD4+:CD8+の比を有さなかった(p<0.0001、片方t検
定)。ベドリズマブはCSF中のCD4+又はCD8+のTリンパ球の数を有意に低下さ
せなかった。加えて、CSFのCD4+又はCD8+のTリンパ球の%に有意な変化はな
かった(表57)。末梢血WBC、CD4+及びCD8+の記憶Tリンパ球における有意
な変化も認められなかった(表58)。
【0376】
【0377】
【0378】
【0379】
要約
ベドリズマブは、450mgの単回投与の後、健常な志願者にてCSFのCD4+及び
CD8+の細胞数又はCD4+:CD8+の比に影響を及ぼさなかった。対象は誰も投与
後のCSFのCD4+:CD8+の比の1未満への低下を有さなかった。ベドリズマブは
CSFでは検出されなかった。加えて、末梢血では全WBC又は記憶Tリンパ球のCD4
+及びCD8+のサブセットにて認められる変化はなかった。血中の標的(α4β7)の
飽和は終点評価の時点にて対象すべてで生じた。CSFのCD4+:CD8+のリンパ球
のレベル及び比は文献にて報告された以前のものに類似していた。
【0380】
これらの結果は、サルの生理的なCNS免疫監視及び病理的なCNSの炎症の双方に対
する効果をベドリズマブが欠くことに一致する。
【0381】
本発明はその好まれる実施形態を参照して特に示され、記載されてきたが、添付のクレ
ームに包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において種々の変更
がその中で為され得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0382】
【0383】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]安定な液体医薬製剤であって、抗α4β7抗体、抗酸化剤又はキレート剤、及び少
なくとも1つの遊離のアミノ酸の混合物を含み、前記製剤が液体形状である安定な液体医
薬製剤。
[2]抗α4β7抗体と抗酸化剤又はキレート剤のモル比が約1:4~約1:100であ
る[1]に記載の安定な液体医薬製剤。
[3]5℃にて12ヵ月後、前記安定な液体製剤が約1.0%未満の凝集体形成を有する
[1]に記載の安定な液体医薬製剤。
[4]前記製剤が約0.2%未満の凝集体形成を有する[3]に記載の安定な液体医薬製
剤。
[5]前記抗酸化剤又はキレート剤がクエン酸塩である[1]に記載の安定な液体医薬製
剤。
[6]前記キレート剤がEDTAである[1]に記載の安定な液体医薬製剤。
[7]前記遊離のアミノ酸が、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミ
ン酸及びそれらの組み合わせから成る群から選択される[1]に記載の安定な液体医薬製
剤。
[8]前記製剤がさらに界面活性剤を含む[1]に記載の安定な液体医薬製剤。
[9]抗酸化剤又はキレート剤と界面活性剤のモル比が約3:1~約156:1である[
8]に記載の安定な液体医薬製剤。
[10]前記界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー及
びそれらの組み合わせから成る群から選択される[8]に記載の安定な液体医薬製剤。
[11]前記製剤が約6.1~約7.0の間のpHを有する[1]に記載の安定な液体医
薬製剤。
[12]前記製剤が約6.5~約6.8の間のpHを有する[1]に記載の安定な液体医
薬製剤。
[13]前記製剤が、少なくとも約60mg/ml~約160mg/mlの抗α4β7抗
体を含む[1]に記載の安定な液体医薬製剤。
[14]前記製剤が、少なくとも約160mg/mlの抗α4β7抗体を含む[1]に記
載の安定な液体医薬製剤。
[15]安定な液体医薬製剤であって、少なくとも約60mg/ml~約160mg/m
lの抗α4β7抗体、緩衝化剤及び少なくとも約5mMのクエン酸塩を含み、前記製剤は
液体製剤である安定な液体医薬製剤。
[16]前記緩衝化剤がヒスチジン緩衝液である[15]に記載の安定な液体医薬製剤。
[17]少なくとも約160mg/mlの抗α4β7抗体及び少なくとも約5mMのクエ
ン酸塩を含む安定な液体医薬製剤。
[18]前記製剤がポリソルベート80をさらに含む[17]に記載の安定な液体医薬製
剤。
[19]安定な液体医薬製剤であって、抗α4β7抗体、クエン酸塩、ヒスチジン、アル
ギニン及びポリソルベート80の混合物を含み、製剤が液体形態である安定な液体医薬製
剤。
[20]前記製剤が、バイアル、カートリッジ、シリンジ及び自動注入器から成る群から
選択される容器に存在する[19]に記載の安定な液体医薬製剤。
[21]表2の製剤のいずれか1つから選択される安定な液体製剤。
[22]前記抗体がベドリズマブである[1]~[21]のいずれか1項に記載の安定な
液体医薬製剤。
[23]前記製剤が、皮下投与用又は筋肉内投与用である[1]~[21]のいずれか1
項に記載の安定な液体医薬製剤。
[24]炎症性大腸疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に[1]に記載
の医薬製剤を投与することを含む方法。
[25]前記投与が皮下投与である[24]に記載の方法。
[26]前記投与が自己投与である[24]に記載の方法。
[27]製造物品であって、容器、[1]~[21]のいずれか1項に記載の安定な液体
医薬製剤及びその使用のための指示書を含む製造物品。
[28]物品が事前に充填されたシリンジである[27]に記載の製造物品。
[29]炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者を治療する方法であって、前記方法が、
症性大腸疾患で苦しむヒト患者にヒトα4β7インテグリンに結合特異性を有するヒト化
免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み、
以下の投与計画:
(a)6回投与について2日に1回の皮下注射としての165mgのヒト化免疫グロブリ
ン又はその抗原結合断片の初回投与;
(b)続いて、必要に応じて2週ごと又は4週ごとの皮下投与としての165mgのヒト
化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の7回目及びその後の投与に従ってヒト化免疫グ
ロブリン又はその抗原結合断片が患者に投与され;
投与計画が、患者の炎症性大腸疾患の臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導し;
さらに、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒ
ト起源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、α4
β7複合体に対する結合特異性を有し、抗原結合領域が、CDRs:
軽鎖:CDR1配列番号9、CDR2配列番号10、CDR3配列番号11
重鎖:CDR1配列番号12、CDR2配列番号13、CDR3配列番号14を含む方法
。
[30]患者が、免疫調節因子、腫瘍壊死因子-α拮抗剤又はそれらの組み合わせの少な
くとも1つによる治療に対して適切な応答を欠いた、それとの応答を喪失した、又はそれ
に非認容性であった[29]に記載の方法。
[31]炎症性大腸疾患が、クローン病又は潰瘍性大腸炎である[29]に記載の方法。
[32]炎症性大腸疾患が、潰瘍性大腸炎である[31]に記載の方法。
[33]炎症性大腸疾患が、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎である[31]に記
載の方法。
[34]投与計画が、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎で苦しむ患者にて粘膜治癒
を生じる[33]に記載の方法。
[35]投与計画が、患者によるコルチコステロイドの使用の軽減、排除又は軽減及び排
除を生じる[29]に記載の方法。
[36]患者が以前、炎症性大腸疾患のための少なくとも1つのコルチコステロイドによ
る治療を受けていた[29]に記載の方法。
[37]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.0mg/mL~約1.4
mg/mLの間の濃度での最終投与形態で投与される[29]に記載の方法。
[38]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.2mg/mLでの最終投
与形態で投与される[37]に記載の方法。
[39]投与計画が、前記治療を受けている患者の脳脊髄液にてCD4とCD8の比を変
えない[29]に記載の方法。
[40]炎症性大腸疾患の治療療法のための投与計画であって、
方法が、炎症性大腸疾患で苦しむ患者に、ヒトα4β7インテグリンに対して結合特異
性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み、その際、
ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片は非ヒト起源の抗原結合領域及びヒト起源の抗体
の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、以下の投与計
画に従って患者に投与され、
炎症性大腸疾患で苦しむ患者に、ヒトα4β7インテグリンに対して結合特異性を有す
るヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を投与する工程を含み、その際、ヒト化免
疫グロブリン又はその抗原結合断片は、以下の投与計画:
(a)6回投与について2日に1回の皮下注射としての165mgのヒト化免疫グロブリ
ン又はその抗原結合断片の初回投与;
(b)続いて、必要に応じて2週ごと又は4週ごとの皮下投与としての165mgのヒト
化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の7回目及びその後の投与;
に従って患者に投与され、
投与計画が、患者の炎症性大腸疾患の臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導し;
さらに、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒ
ト起源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、α4
β7複合体に対する結合特異性を有し、抗原結合領域が、CDRs:
軽鎖:CDR1配列番号9、CDR2配列番号10、CDR3配列番号11
重鎖:CDR1配列番号12、CDR2配列番号13、CDR3配列番号14を含む投与
計画。
[41]患者が、免疫調節因子、腫瘍壊死因子-α拮抗剤又はそれらの組み合わせの少な
くとも1つによる治療に対して適切な応答を欠いた、それとの応答を喪失した、又はそれ
に非認容性であった[40]に記載の投与計画。
[42]炎症性大腸疾患が、クローン病又は潰瘍性大腸炎である[40]に記載の投与計
画。
[43]炎症性大腸疾患が、潰瘍性大腸炎である[41]に記載の投与計画。
[44]炎症性大腸疾患が、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎である[43]に記
載の投与計画。
[45]投与計画が、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎で苦しむ患者にて粘膜治癒
を生じる[44]に記載の投与計画。
[46]投与計画が、患者によるコルチコステロイドの使用の軽減、排除又は軽減及び排
除を生じる[40]に記載の投与計画。
[47]患者が以前、炎症性大腸疾患のための少なくとも1つのコルチコステロイドによ
る治療を受けていた[40]に記載の投与計画。
[48]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.0mg/mL~約1.4
mg/mLの間の濃度での最終投与形態で投与される[40]に記載の投与計画。
[49]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.2mg/mLでの最終投
与形態で投与される[48]に記載の投与計画。
[50]投与計画が、前記治療を受けている患者の脳脊髄液にてCD4とCD8の比を変
えない[40]に記載の投与計画。
[51]患者が65歳以上のヒトであり、さらに、患者が投与計画の調整を必要としない
[40]に記載の方法。
[52]患者が65歳以上のヒトであり、さらに、患者が投与計画の調整を必要としない
[40]に記載の投与計画。
[53]炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者を治療する方法であって、方法が、ヒトα4β
7インテグリンに対して結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片
を、炎症性大腸疾患で苦しむ患者に投与する工程を含み、
ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片は、以下の投与計画:
(a)初回投与の約6週間までに約20~約30μg/mLのヒト化免疫グロブリン又は
その抗原結合断片の平均トラフ血清濃度を達成するのに十分なヒト化免疫グロブリン又は
その抗原結合断片の複数の誘導相の用量;
(b)その後の、約9~約13μg/mL又は約35~40μg/mLのヒト化免疫グロ
ブリン又はその抗原結合断片の平均定常状態トラフ血清濃度を維持するのに必要とされる
ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の複数の維持相の用量
に従って患者に投与され、
投与計画が、患者の炎症性大腸疾患の臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導し;
さらに、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及びヒ
ト起源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、α4
β7複合体に対する結合特異性を有し、抗原結合領域が、CDRs:
軽鎖:CDR1配列番号9、CDR2配列番号10、CDR3配列番号11
重鎖:CDR1配列番号12、CDR2配列番号13、CDR3配列番号14を含む方法
。
[54]用量が皮下又は筋肉内に投与される[53]に記載の方法。
[55]誘導相の用量が静脈内に投与され、維持相の用量が皮下又は筋肉内に投与される
[53]に記載の方法。
[56]誘導相の用量が、2日ごとに1回、ほぼ1週ごとに1回及びほぼ2週ごとに1回
から成る群から選択される間隔で投与される[54]に記載の方法。
[57]維持相の用量が、ほぼ1週ごとに1回、ほぼ2週ごとに1回、ほぼ3週ごとに1
回、ほぼ4週ごとに1回、ほぼ6週ごとに1回、ほぼ8週ごとに1回、及びほぼ10週ご
とに1回から成る群から選択される間隔で投与される[54]に記載の方法。
[58]誘導相の用量がほぼ0及び2週目で投与され、維持相の用量が、ほぼ6週目で開
始し、ほぼ1週ごとに1回、ほぼ2週ごとに1回、ほぼ3週ごとに1回、ほぼ4週ごとに
1回、ほぼ6週ごとに1回、ほぼ8週ごとに1回、及びほぼ10週ごとに1回から成る群
から選択される間隔で投与される[55]に記載の方法。
[59]用量が自己投与される[54]に記載の方法。
[60]維持相の用量が自己投与される[55]に記載の方法。
[61]用量がそれぞれ約165mgのヒト化免疫グロブリンを含む[54]に記載の方
法。
[62]維持相の用量がそれぞれ約165mgのヒト化免疫グロブリンを含む[55]に
記載の方法。
[63]患者が、免疫調節因子、腫瘍壊死因子-α拮抗剤又はそれらの組み合わせの少な
くとも1つによる治療に対して適切な応答を欠いた、それとの応答を喪失した、又はそれ
に非認容性であった[53]に記載の方法。
【配列表】