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特許7108024非接触通信媒体及びその駆動方法、並びに記録媒体カートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】非接触通信媒体及びその駆動方法、並びに記録媒体カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20220720BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20220720BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20220720BHJP
   G11B 23/107 20060101ALI20220720BHJP
   G11B 23/30 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G06K19/07 260
G06K19/07 090
G06K19/07 150
G06K19/077 272
H02J50/12
G11B23/107
G11B23/30 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020513144
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011397
(87)【国際公開番号】W WO2019198438
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018074696
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】小野 和俊
(72)【発明者】
【氏名】寺島 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩章
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕章
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】執行 信彦
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-79451(JP,A)
【文献】特開平10-145987(JP,A)
【文献】特開2004-229076(JP,A)
【文献】特開2011-34631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/077
H02J 50/12
G11B 23/107
G11B 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の管理情報を記憶するメモリ部と、
アンテナコイルと容量値が可変な共振容量部とを有する共振回路と、前記共振回路の共振出力を整流する整流回路とを有し、前記メモリ部へ供給される電力を生成する電力生成部と、
前記整流回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子と、基準電圧を発生させる基準電圧発生源と、前記電流調整素子を制御する演算増幅器とを有する電力監視部と、
前記演算増幅器の出力に基づいて前記共振容量部を制御するように構成された容量制御部と
を具備し、
前記容量制御部は、前記演算増幅器の出力が入力される比較器と、保持容量と、前記比較器の出力端子と前記保持容量との間に設けられたスイッチとを有し、
前記比較器は、前記スイッチを閉じて前記比較器の出力を基準値として前記保持容量に保持させる第1の状態と、前記スイッチを開いて前記演算増幅器の出力を前記基準値と比較する第2の状態とを切り替え可能に構成される
非接触通信媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触通信媒体であって、
前記比較器の第1の入力端子には、前記演算増幅器の出力が入力され、
前記比較器の第2の入力端子には、前記保持容量の一方の電極が接続され、
前記比較器の出力端子には、前記スイッチを介して、前記保持容量の一方の電極および前記第2の入力端子が接続される
非接触通信媒体。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触通信媒体であって、
前記保持容量の他方の電極には、予め定められた電圧を供給する電源線が接続される
非接触通信媒体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の非接触通信媒体であって、
前記電流調整素子は、前記整流回路の入力側に前記共振回路に対して並列に接続される
非接触通信媒体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の非接触通信媒体であって、
前記電流調整素子は、前記整流回路の出力端子とグランド端子との間に接続される
非接触通信媒体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の非接触通信媒体であって、
前記容量制御部は、前記整流回路の出力電圧が最大となる容量値に前記共振容量部を設定するように構成される
非接触通信媒体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の非接触通信媒体であって、
前記比較器は、前記第2の状態において、前記容量値の調整前後における前記演算増幅器の出力を比較する
非接触通信媒体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の非接触通信媒体であって、
前記容量制御部は、前記容量値の調整前後における前記演算増幅器の出力の変化量がゼロのとき、前記共振回路の共振出力が所定以上減少する容量値に前記共振容量部を設定するように構成される
非接触通信媒体。
【請求項9】
情報記録媒体と、
前記情報記録媒体を収容するカートリッジケースと、
前記情報記録媒体に関連する所定の管理情報を記憶するメモリ部と、
アンテナコイルと容量値が可変な共振容量部とを有する共振回路と、前記共振回路の共振出力を整流する整流回路とを有し、前記メモリ部へ供給される電力を生成する電力生成部と、
前記整流回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子と、基準電圧を発生させる基準電圧発生源と、前記電流調整素子を制御する演算増幅器とを有する電力監視部と、
前記演算増幅器の出力に基づいて前記共振容量部を制御するように構成された容量制御部と
を有し、前記カートリッジケースに収容された非接触通信媒体と
を具備し、
前記容量制御部は、前記演算増幅器の出力が入力される比較器と、保持容量と、前記比較器の出力端子と前記保持容量との間に設けられたスイッチとを有し、
前記比較器は、前記スイッチを閉じて前記比較器の出力を基準値として前記保持容量に保持させる第1の状態と、前記スイッチを開いて前記演算増幅器の出力を前記基準値と比較する第2の状態とを切り替え可能に構成される
記録媒体カートリッジ。
【請求項10】
請求項に記載の記録媒体カートリッジであって、
前記情報記録媒体は、磁気テープである
記録媒体カートリッジ。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1つに記載の非接触通信媒体の駆動方法であって、
前記基準電圧発生源の出力電圧と前記整流回路の出力電圧との差分に基づいて、前記整流回路の出力電圧が前記基準電圧発生源の出力電圧と一致するように前記整流回路の出力電圧を調整し、
前記スイッチを所定の周期で開閉させて前記比較器が前記第1の状態のときの前記演算増幅器の出力と前記比較器が前記第2の状態のときの前記演算増幅器の出力とを比較することで、前記共振容量部の容量値を段階的に増加させ、または減少させる
非接触通信媒体の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば、磁気テープカートリッジに格納される非接触通信媒体及びその駆動方法、並びに当該非接触通信媒体を備えた記録媒体カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LTO(Linear Tape Open)規格の磁気テープカートリッジは、カートリッジメモリと呼ばれるRFID(Radio Frequency Identification)タグを搭載している(例えば特許文献1参照)。カートリッジメモリは、アンテナと通信・記録用のICチップを含み、磁気テープの生産管理情報や記録内容の概要などを読み書きすることが可能に構成されている。カートリッジメモリは、テープドライブ(リーダライタ)から送信される信号磁界を受信して電力を生成するため、無電源で動作する。
【0003】
近年、カートリッジメモリのメモリサイズは、磁気テープの記録データサイズの増加に比例して大型化してきている。カートリッジメモリのメモリサイズが大型化すると、カートリッジメモリの消費電力も増加する。一方、この種のカートリッジメモリは、一定の磁界強度で動作することが要求されているため、アンテナから取り出せる電力には制限がある。したがって、メモリサイズに依存することなく、アンテナから取り出せる電力でカートリッジメモリを駆動し、リーダライタとの安定した通信を確保する技術が要求される。
【0004】
例えば特許文献2には、アンテナ共振出力を整流する整流回路の出力電圧を監視し、当該出力電圧が所定の時間内に所定値に到達しないときは、共振容量を調整して所定値以上の出力電圧が得られるように構成されたRFIDタグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-211743号公報
【文献】特開2007-228621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の構成では、整流回路の出力電圧が所定値に到達しても、共振容量の値が期待値からのずれ量の増加に伴って取得できる電流値が大幅に減少するため、目的とする電力を安定に確保することができない場合がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、目的とする電力を安定に確保することができる非接触通信媒体及びその駆動方法、並びに当該非接触通信媒体を備えた記録媒体カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の一形態に係る非接触通信媒体は、メモリ部と、電力生成部と、電力監視部と、容量制御部とを具備する。
前記メモリ部は、所定の管理情報を記憶する。
前記電力生成部は、アンテナコイルと容量値が可変な共振容量部とを有する共振回路と、前記共振回路の共振出力を整流する整流回路とを有し、前記メモリ部へ供給される電力を生成する。
前記電力監視部は、前記整流回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子と、基準電圧を発生させる基準電圧発生源と、前記整流回路の出力電圧が前記基準電圧と等しくなるように前記電流調整素子を制御する演算増幅器とを有する。
前記容量制御部は、前記演算増幅器の出力に基づいて前記共振容量部を制御するように構成される。
【0009】
上記非接触通信媒体においては、電力生成部の電力を監視しながら共振容量を制御するように構成されているため、目的とする電力を安定に確保することができる。
【0010】
前記電流調整素子は、前記整流回路の入力側に前記共振回路に対して並列に接続されてもよい。
【0011】
前記電流調整素子は、前記整流回路の出力端子とグランド端子との間に接続されてもよい。
【0012】
前記容量制御部は、前記整流回路の出力電圧が最大となる容量値に前記共振容量部を設定するように構成されてもよい。
【0013】
前記容量制御部は、前記容量値の調整前後における前記演算増幅器の出力を比較する比較器を有してもよい。
【0014】
前記容量制御部は、前記比較器の出力を基準値として保持することが可能な保持容量と、前記比較器の出力端子と前記保持容量との間に設けられたスイッチとをさらに有し、前記比較器は、前記スイッチを閉じて前記保持容量を充電する第1の状態と、前記スイッチを開いて前記演算増幅器の出力を前記基準値と比較する第2の状態とを切り替え可能に構成されてもよい。
【0015】
前記容量制御部は、前記容量値の調整前後における前記演算増幅器の出力の変化量がゼロのとき、前記共振回路の共振出力が所定以上減少する容量値に前記共振容量部を設定するように構成されてもよい。
【0016】
本技術の一形態に係る記録媒体カートリッジは、情報記録媒体と、カートリッジケースと、非接触通信媒体とを具備する。
前記カートリッジケースは、前記情報記録媒体を収容する。
前記非接触通信媒体は、メモリ部と、電力生成部と、電力監視部と、容量制御部とを有し、前記カートリッジケースに収容される。
前記メモリ部は、前記情報記録媒体に関連する所定の管理情報を記憶する。
前記電力生成部は、アンテナコイルと容量値が可変な共振容量部とを有する共振回路と、前記共振回路の共振出力を整流する整流回路とを有し、前記メモリ部へ供給される電力を生成する。
前記電力監視部は、前記整流回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子と、基準電圧を発生させる基準電圧発生源と、前記整流回路の出力電圧が前記基準電圧と等しくなるように前記電流調整素子を制御する演算増幅器とを有する。
前記容量制御部は、前記演算増幅器の出力に基づいて前記共振容量部を制御するように構成される。
【0017】
前記情報記録媒体は、磁気テープであってもよい。
【0018】
本技術の一形態に係る非接触通信媒体の駆動方法は、アンテナコイルと共振容量とを含む共振回路の共振出力を整流する整流回路の出力電圧を取得することを含む。
前記整流回路の出力電圧が所定の基準電圧と等しくなるように、前記共振回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子の抵抗値が制御される。
前記増幅回路の出力電圧が最大となるように前記共振容量の容量値が制御される。
メモリ部に対する情報の読み出し又は書き込みが実行される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本技術によれば、目的とする電力を安定に確保することができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本技術の一実施形態に係る磁気テープカートリッジを示す分解斜視図である。
図2】テープドライブ装置の概略斜視図である。
図3】上記磁気テープカートリッジに搭載される非接触通信媒体を示す概略平面図である。
図4】上記非接触通信媒体における共振容量値と取得電流値の関係の一例を示す実験結果である。
図5】上記非接触通信媒体を概略的に示す機能ブロック図である。
図6】上記非接触通信媒体の一構成例を示す回路図である。
図7】上記非接触通信媒体における容量制御部の一構成例を示す回路図である。
図8】上記非接触通信媒体における容量値の設定手順を示す概念図である。
図9】上記非接触通信媒体の動作の一例を説明するフローチャートである。
図10】上記容量制御部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図11】上記非接触通信媒体の他の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本技術の一実施形態に係る磁気テープカートリッジを示す分解斜視図、図2はテープドライブ装置の概略斜視図である。本実施形態では、記録媒体カートリッジとして、図1に示すLTO規格の磁気テープカートリッジ(以下、テープカートリッジ100という)を例に挙げて説明する。以下、テープカートリッジ100及び図2に示すテープドライブ装置200の構成について概略的に説明する。
【0023】
[テープカートリッジ]
図1に示すように、テープカートリッジ100は、上シェル11aと下シェル11bとを複数本のネジ部材により結合することで構成されたカートリッジケース11を有する。カートリッジケース11の内部には、情報記録媒体としての磁気テープ12を巻装した単一のテープリール13が回転可能に収容されている。
【0024】
テープリール13の底部中央には、テープドライブ装置200のスピンドル201(図2参照)と係合するチャッキングギヤ(図示略)が環状に形成されており、当該チャッキングギヤは、下シェル11bの中央に形成された開口部14を介して外部へ露出している。このチャッキングギヤの内周側には、スピンドル201と磁気的に吸着される環状の金属プレート15が固定されている。
【0025】
上シェル11aの内面とテープリール13との間には、リールスプリング16、リールロック部材17及びスパイダ18が配置されている。これらにより、テープカートリッジ100の非使用時におけるテープリール13の回転を抑止するリールロック機構が構成される。
【0026】
カートリッジケース11の一側壁部には、磁気テープ12の一端を外部へ引き出すためのテープ引出し口19が設けられている。当該側壁部の内方には、テープ引出し口19を開閉するスライドドア20が配置されている。スライドドア20は、テープドライブ装置200のテープローディング機構(図示略)との係合によりトーションバネ21の付勢力に抗してテープ引出し口19を開放する方向にスライドするように構成される。
【0027】
磁気テープ12の一端部には、リーダーピン22が固着されている。リーダーピン22は、テープ引出し口19の内方側に設けられたピン保持部23に対して着脱可能に構成される。ピン保持部23は、カートリッジケース11の上壁内面(上シェル11aの内面)及び底壁内面(下シェル11bの内面)において、リーダーピン22の上端部及び下端部をそれぞれ弾性的に保持する弾性保持具24を備えている。
【0028】
そして、カートリッジケース21の他の側壁内方には、磁気テープ12に記録された情報の誤消去防止用のセイフティタブ25のほか、磁気テープ12に記録された情報に関する内容を非接触で読み書き可能なカートリッジメモリCMが配置されている。カートリッジメモリCMは、基板上にアンテナコイル、ICチップ等が搭載された非接触通信媒体で構成される。
【0029】
[テープドライブ装置]
図2に示すように、テープドライブ装置200は、テープカートリッジ100を装填可能に構成されている。テープドライブ装置200は、1つのテープカートリッジ100を装填可能に構成されるが、複数のテープカートリッジ100を同時に装填可能に構成されてもよい。
【0030】
テープドライブ装置200は、スピンドル201、巻取りリール202、スピンドル駆動装置203、リール駆動装置204、複数のガイドローラ205、ヘッドユニット206、リーダライタ(Reader/Writer)207、制御装置208等を含む。
【0031】
スピンドル201は、テープカートリッジ100の下シェル11bに形成された開口部14を介してテープリール13のチャッキングギヤに係合するヘッド部を有する。スピンドル201は、リールスプリング16の付勢力に抗してテープリール13を所定距離上昇させ、リールロック部材17によるリールロック機能を解除する。これによりテープリール13は、スピンドル201によりカートリッジケース11の内部において回転可能に支持される。
【0032】
スピンドル駆動装置203は、制御装置208からの指令に応じて、スピンドル201を回転させる。巻取りリール202は、図示しないテープローディング機構を介してテープカートリッジ100から引き出された磁気テープ12の先端(リーダーピン22)を固定可能に構成される。複数のガイドローラ205は、テープカートリッジ100と巻取りリール202との間に形成されるテープパスがヘッドユニット206に対して所定の相対位置関係となるように磁気テープ12の走行をガイドする。リール駆動装置204は、制御装置208からの指令に応じて、巻取りリール202を回転させる。磁気テープ12に対してデータ信号の記録/再生が行われるとき、スピンドル駆動装置203及びリール駆動装置204により、スピンドル201及び巻取りリール202が回転し、磁気テープ12が走行する。
【0033】
ヘッドユニット206は、制御装置208からの指令に応じて、磁気テープ12に対してデータ信号を記録し、あるいは、磁気テープ12に書き込まれたデータ信号を再生することが可能に構成される。
【0034】
リーダライタ207は、制御装置208からの指令に応じて、テープカートリッジ100に搭載されたカートリッジメモリCMから所定の管理情報を読み出し、あるいは、カートリッジメモリCMに対して所定の管理情報を記録することが可能に構成される。リーダライタ207とカートリッジメモリCMとの間の通信方式としては、例えば、ISO14443方式が採用される。
【0035】
制御装置208は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、記憶部、通信部等を含むコンピュータで構成され、テープドライブ装置200の各部を統括的に制御する。
【0036】
[カートリッジメモリ]
続いて、カートリッジメモリCMの詳細について説明する。
【0037】
(基本構成)
図3は、カートリッジメモリCMを示す概略平面図である。カートリッジメモリCMは、支持基板31と、アンテナコイル32と、ICチップ33とを含むRFIDタグで構成される。
【0038】
支持基板31は、ガラスエポキシ基板等の比較的リジッドな配線基板で構成される。アンテナコイル32は、支持基板31に形成された平面ループコイルであり、所定厚みの銅箔、アルミニウム箔等で構成される。ICチップ33は、支持基板31上に実装され、アンテナコイル32と電気的に接続される。ICチップ33は、アンテナコイル32を介して受信したリーダライタ207からの信号磁界を基に起動電圧を生成する電圧生成部、テープカートリッジ100に関する所定の管理情報を記憶するメモリ部、メモリ部から情報を読み出す制御部などを内蔵する。
【0039】
カートリッジメモリCMは、リーダライタ207から送信される信号磁界をアンテナコイル32で受けて電力を生成するため、無電源で動作する。リーダライタ207からの給電・通信周波数はNFC(Near Field Communication)と同じ13.56MHzである。ICチップ33に内蔵されるメモリには不揮発性メモリ(NVM:Non-Volatile Memory)が使用される。
【0040】
ここで、LTO規格のカートリッジメモリのメモリサイズは、磁気テープに記録されるデータサイズの増加に比例して大きくなってきている。一例を挙げると、LTO-1~LTO-3では4kBであったが、LTO-4及びLTO-5では8kB、LTO-6及びLTO-7では16kBとなっている。LTOの磁気記録データサイズ増がさらに進むと、カートリッジメモリのメモリサイズも増えていくことが予想される。
【0041】
ところが、カートリッジメモリのメモリサイズが大きくなると、ICの消費電力も増加する傾向にある。また、メモリへ供給する電源電圧の安定性を高くする必要があることによる電源ブロックのアイドル電流の増加、更には、処理の複雑化に伴うデジタル電力の増加など、メモリサイズ増に付随した電力増も想定される。規格では、一定の磁界強度で動作することが要件として規定されていることから、メモリサイズ増に伴う電力増に対応可能なICの工夫(消費電力の削減)やアンテナの工夫(リーダライタからの取り出し電力の増加)が今後さらに要求され得る。
【0042】
一方、この種のカートリッジメモリは、コストや信頼性の観点から、ICに内蔵した容量で共振周波数が調整されている。しかしながら、ICの容量素子は製造時のばらつきにより製品ごとに容量値のばらつきを持つ。このような個体ばらつきによって共振周波数がずれてしまうと、アンテナから取り出せる電力が小さくなる。
【0043】
図4は、共振容量値と取得電流値の関係の一例を示す実験結果である。横軸は、共振容量値の変化率であって、共振容量が期待値(取得電流値が最も高いときの容量値)を1.0としている。したがって、共振容量値が1.1の場合は、共振容量が期待値よりも10%大きくなった状態をいい、共振容量値が0.9の場合は、共振容量が期待値よりも10%小さくなった状態をいう。縦軸は、一定負荷に流れる電流値であり、電力に相当する。同図に示すように、共振容量値が期待値からずれると、取得できる電流(電力)が急激に減少する。例えば、共振容量値が約15%ばらつくと、取得電流は、期待値のときの3/4まで落ち込む。
【0044】
IC内部の共振容量を調整する方法はいくつか考えられるが、例えば、不揮発性メモリの一部領域を共振容量調整用のパラメータを格納する領域として使用する方法がある。この方法では、事前にIC内部の容量値を測定し、正解値である容量値(期待値)あるいは測定値と正解値との差分等に関する設定値がメモリに保存される。そして、起動時に当該設定値が読み出され、それを補正パラメータとして共振容量値が調整される。しかし、この方法は起動時に取得した電力でメモリから設定値を読み出す必要があるため、起動時の電力が不足するとメモリから設定値を読み出すことができないおそれがある。
【0045】
そこで、本実施形態のカートリッジメモリCMは、メモリから共振容量の補正パラメータを読み出す方式ではなく、以下のような構成で、アンテナから取得できる電力の最大化を図るようにしている。
【0046】
(本実施形態に係るカートリッジメモリの構成)
図5は、本実施形態のカートリッジメモリCMにおける電源回路の構成を概略的に示すブロック図、図6は、その一構成例を示す回路図である。
【0047】
同5及び図6に示すように、カートリッジメモリCMは、電力生成部40と、電力監視部50と、容量制御部60とを有する。
【0048】
(電力生成部)
電力生成部40は、アンテナ部41と、共振容量部42と、整流回路43とを有する。
【0049】
アンテナ部41は、図3に示すアンテナコイル32に相当する。アンテナ部41は、リーダライタ207から送信される信号磁界を受信する。共振容量部42は、アンテナ部41とともに共振回路45を構成する容量素子であり、典型的には、容量値を可変とするべく、複数の容量素子とこれら複数の容量素子の接続を切り替える複数のスイッチ素子とを含む。
【0050】
共振容量部42の容量値は、後述するように、容量制御部60によって制御される。共振容量部42は、図6に示すように、アンテナ部41に接続された基準容量C1と、アンテナ部41に接続可能な複数の調整用容量Cnとを有する。複数の調整用容量Cnは、基準容量C1に対して並列的に接続される。これにより、共振容量部42の容量値が、電力監視部50の出力に応じて、アンテナ部41に接続される調整用容量Cnの数を1つずつ(1ビットずつ)増やしたり減らしたりすることで、任意に設定される。
【0051】
整流回路43は、共振回路45の共振出力を整流する整流器を含む。整流回路43は、典型的には全波整流器で構成されるが、これに限られず半波整流器で構成されてもよい。
【0052】
電力生成部40の出力(整流回路43の出力電圧Vz)は、平滑化コンデンサ71を介して、定電圧回路51及び定電源回路72へ供給される。定電圧回路51は、電力監視部50の一部を構成し、定電源回路72は、メモリ部/ロジック部73を駆動するための駆動電圧を生成する。
【0053】
メモリ部/ロジック部73は、テープカートリッジ100あるいは磁気テープ12に関連する所定の管理情報を記憶するメモリ部と、リーダライタ207からの要求に応じて当該メモリ部から管理情報を読み出し又は当該メモリ部へ管理情報を書き込むための制御信号を生成する制御部等を含む。所定の管理情報としては、カートリッジメモリCMが搭載されるテープカートリッジ100に関する情報であって、例えば、テープカートリッジ100あるいはカートリッジメモリCMの識別情報(ID)、磁気テープ12に記録されたデータの管理情報などが挙げられる。上記メモリ部は、不揮発性メモリで構成され、そのメモリ容量は特に限定されず、例えば、4キロバイト、8キロバイト、16キロバイトあるいは32キロバイト以上である。
【0054】
上記制御部は、CPU、内部メモリ等を含むコンピュータで構成される。上記制御部は、内部メモリに格納された各種のプログラムを実行することで、カートリッジメモリCMの各部を統括的に制御する。内部メモリは不揮発性のメモリと、作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。上記制御部は、容量制御部60により共振容量部42の容量値が最適化された後、上記メモリ部に対する情報の読み出し又は書き込み制御を実行する。
【0055】
なお、カートリッジメモリCMは、上記以外にも、クロック信号発生回路、検波回路、変調回路、復調回路等を有するが、それらの図示は省略する。
【0056】
(電力監視部)
電力監視部50は、定電圧回路51と、演算増幅器52と、電流調整素子53とを有する。本実施形態において電力監視部50は、整流回路43の出力電圧Vzが所定値となるように、共振回路45に組み込まれた電流調整素子53を制御することが可能に構成される。
【0057】
定電圧回路51は、所定の基準電圧Vrefを生成する基準電圧発生源として構成される。定電圧回路51の出力電圧(Vref)は、演算増幅器52の一方の入力端子に入力される。基準電圧Vrefは、後述するようにカートリッジメモリCMの起動時に共振容量部42の容量値を最適化する際、整流回路43の出力電圧Vzが所定値となるように制御する上での基準値とされる。基準電圧Vrefの大きさは特に限定されず、電力監視部50及び容量制御部60の駆動に必要な電力を確保できる所定の電圧値に設定され、例えば、1.25vである。
【0058】
演算増幅器52は、整流回路43の出力電圧Vzが入力される第1の入力端子(反転入力端子)と、基準電圧Vrefが入力される第2の入力端子(非反転入力端子)とを有する。演算増幅器52は、整流回路43の出力電圧Vzと基準電圧Vrefとの差分を演算し、その差分に所定の増幅率を乗じた差分信号Xsを電流調整素子53及び容量制御部60へそれぞれ入力する。
【0059】
電流調整素子53は、共振回路45から整流回路43へ入力される電流値を調整することが可能に構成される。本実施形態において電流調整素子53は、整流回路43の入力側に共振回路45に対して並列に接続され、共振回路45から整流回路43へ入力される電流を分流することで、整流回路の出力電圧を調整する。電流調整素子53は、抵抗値が可変な素子、例えば、可変抵抗器、トランジスタ素子等で構成される。本実施形態において電流調整素子53は、基準電圧Vrefに対して、整流回路43の出力電圧Vzが大きいほど抵抗値が減少し、出力電圧Vzが小さいほど抵抗値が増加するように構成される。
【0060】
電力監視部50は、演算増幅器52により、整流回路43の出力電圧Vzが基準電圧Vrefと等しくなるように負帰還ループをかけている。このループにより、整流回路43の出力電圧Vzを一定に保つために共振回路45において余分に生成された電力は、電流調整素子53を介して捨てられることになる。電流調整素子53を介して捨てられる電流(電流調整素子53を流れる電流)は、共振回路45における取得電流に比例し、電流調整素子53を制御する差分信号Xsは、電力生成部40における電力に応じたアナログ電圧に相当する。したがって、電力監視部50は、この差分信号Xsを介して電力生成部40の電力を監視することが可能となる。
【0061】
(容量制御部)
容量制御部60は、差分信号Xsに基づいて、共振容量部42を制御するように構成される。本実施形態において容量制御部60は、整流回路43の出力電圧Vzが最大となる容量値に共振容量部42を設定するように構成される。
【0062】
容量制御部60は、相対比較回路61と、制御回路62とを有する。
【0063】
相対比較回路61は、共振容量部42の容量値の調整前後における演算増幅器52の出力を比較する。つまり、相対比較回路61は、前回容量値を調整したときの差分信号Xsの値(現在の出力値)と前々回容量値を調整したときの差分信号Xsの値(前回の出力値)とを比較し、その比較結果に応じて出力信号を制御回路62へ入力する。
【0064】
図7は、相対比較回路61の一構成例を示す回路図である。
【0065】
相対比較回路61は、比較器610と、保持容量611と、スイッチ612とを有する。比較器610は、演算増幅器52の出力(差分信号Xs)が入力される第1の入力端子と、保持容量611の充電電圧が入力される第2の入力端子とを有する。保持容量611は、比較器610の出力を保持することが可能な容量素子で構成される。スイッチ612は、比較器610の出力端子と保持容量611との間に設けられ、典型的には、トランジスタ等のスイッチング素子で構成される。
【0066】
相対比較回路61は、スイッチ612を閉じて保持容量611を充電する第1の状態と、スイッチ612を開いて演算増幅器の出力(差分信号Xs)を基準値(保持容量611の充電電圧)と比較する第2の状態とを切り替え可能に構成される。つまり、比較器610は、第1の状態のときはボルテージフォロワとして機能し、第2の状態のときはコンパレータとして機能する。スイッチ612は、所定の周期で開閉されることで、第1の状態と第2の状態とが交互に実行される。
【0067】
比較器610の出力は、アンドゲート613の一方の入力端子へ入力される。アンドゲート613の他方の入力端子には、スイッチ612の開閉周期と同一の周期のクロック信号が入力される。アンドゲート613は、第2の状態にある比較器610の出力のみを制御回路62へ出力する。
【0068】
制御回路62は、相対比較回路61の出力に基づいて、共振容量部42を制御する。本実施形態において制御回路62は、相対比較回路61の出力、すなわち、共振容量部42の容量値の調整前及び調整後の差分信号Xsの各値に基づき、容量値を段階的に増加させ、又は減少させる制御指令Scを生成し、これを共振容量部42へ出力する。制御回路62は、整流回路43の出力電圧Vzが最大になるまで共振容量部42に対する設定制御を継続する。
【0069】
図8は、制御回路62において実行される容量値の設定手順を示す概念図である。図中、(a)は容量値が低めにずれた状態からの最適化手順を、(b)は容量値が高めにずれた状態からの最適化手順を、そして(c)は、容量値が丁度の場合の最適化手順をそれぞれ示している。
【0070】
図8の各状態において描かれている曲線は、容量値(横軸)と電流値(縦軸)との関係を示すCVカーブ(図4参照)に相当する。図中「0」は、制御開始点であり、共振容量部42の容量の初期値に相当する。容量の初期値は特に限定されないが、典型的には、基準容量C1と任意の数の調整用容量Cnとの合成容量とされる。これにより、調整用容量Cnの数を増減することで、共振容量をプラス方向及びマイナス方向の双方向に変化させることができる。
【0071】
制御の開始時点では容量値が最適値よりも高めにずれた状態か低めにずれた状態かが不明であるため、まず、容量値を「+1」にしたときと容量値を「-1」にしたときとの各差分信号Xsの出力を比較し、容量値が+側、-側のどちらにずれているかを判定する。容量値のずれの極性が判明した後、制御回路62は、図8において矢印で示すように、差分信号Xsの値が増加から減少に転じるコード(容量値)を検出し、その1つ手前のコードを最適値として決定する。
【0072】
制御回路62は、共振容量部42の容量値の調整前後における演算増幅器52の出力(差分信号Xs)の変化量がゼロのとき、共振回路45の共振出力が所定以上減少する容量値に共振容量部42を設定するように構成されてもよい。
【0073】
例えば、強磁界が共振回路45に作用すると、差分信号Xsは、整流回路43の出力電圧Vzの電圧レベルに飽和し、共振容量部42の容量値を変化させても、差分信号Xsの大きさは変化しなくなる。その結果、相対比較回路62の出力も変化しなくなるので、この場合、制御回路62は、共振回路45を共振点から外れる値に共振容量部42の容量値を大きく変化させる。これにより、場合によっては、カートリッジメモリCMの動作システムが遮断されるほど電力が低下する可能性はあるが、破壊に至るほどの発熱を未然に防ぐことができる。
【0074】
「共振回路45の共振出力が所定以上減少する容量値」は特に限定されず、大電流から共振回路45の発熱による破損を防ぐことができる適宜の値に設定可能である。本実施形態では、当該容量値を初期容量よりも50%高い容量値(以下、過電力容量ともいう)に設定される。
【0075】
制御回路62は、CPU及び内部メモリを有するコンピュータで構成される。制御回路62は、内部メモリに格納された各種のプログラムを実行することで、上述の手順で共振容量部42を制御する。
【0076】
(カートリッジメモリの動作)
続いて、制御回路62の詳細について、カートリッジメモリCMの動作と併せて説明する。
【0077】
図9は、カートリッジメモリCMの動作及び制御回路62の処理手順を示すフローチャートである。図10は、容量制御部60の動作の一例を示すタイミングチャートである。図10において、ステップ103~107、ステップ109~116は、制御回路62において実行される処理である。
【0078】
テープカートリッジ100がテープドライブ装置200へ装填されると、カートリッジメモリCMには、アンテナ部41を介してリーダライタ207から送信される信号磁界が入力される(ステップ101)。信号磁界が入力されると、カートリッジメモリCMは、電力生成部40において電力を生成するとともに、電力監視部50において整流回路43の出力電圧Vzを一定電圧(基準電圧Vref)に静定する(ステップ102)。
【0079】
電力監視部50は、定電圧回路51の出力電圧(Vref)と整流回路43の出力電圧Vzとの差分を演算増幅器52で算出し、その差分信号Xsを基に、出力電圧Vzが基準電圧Vrefと一致するように電流調整素子53の抵抗値を可変に制御する。この電流調整素子53の抵抗値制御は、後述する容量制御部60における共振容量部42の容量値の最適化制御中、及び、容量値の最適化制御の終了後においても継続して実行される。
【0080】
続いて、容量制御部60における容量値の最適化制御について説明する。
【0081】
容量値の最適化制御においては、まず、容量値の初期値(制御開始点)が最適値から高めにずれた状態か低めにずれた状態かを判定する処理が実行される。具体的には、容量値を「+1」にしたときと容量値を「-1」にしたときとの各差分信号Xsの出力を比較し、容量値が+側、-側のどちらにずれているかを判定する(ステップ103)。差分信号Xsは、電力生成部40において生成される電力に相当する値であるため、容量値ごとの差分信号Xsの大きさを比較することで、電力の増加方向あるいは減少方向を判定することができる。
【0082】
本例においては、容量値を「+1」にしたときに差分信号Xsが増加すれば、容量値が低めにずれていると判定され(S104)、容量値を「-1」にしたときに差分信号Xsが増加すれば、容量値が高めにずれていると判定される(S110)。また、容量値を「+1」及び「-1」のいずれとしたときも差分信号Xsが減少したときは、容量値は初期値が最適と判定される(ステップ115)。
【0083】
容量値が高めにずれている場合、制御回路62は、容量値をプラス側に段階的に変化させる制御を実行する。以下、図10をも参照して容量制御部60の動作について説明する。
【0084】
図10は、容量制御部60の動作を説明するタイミングチャートであり、(a)はスイッチ612、(b)は容量値、(c)は差分信号Xs、(d)は比較器610の出力、(e)はクロック信号、(f)はストップフラグの各状態を表している。
【0085】
まず、時刻T1において相対比較回路61におけるスイッチ612がオン状態となり、比較器610が第1の状態(ボルテージフォロワ状態)に設定される。これにより、容量値が初期値「n」(CBANK_0)における差分信号Xsが基準値として保持容量611に充電される。
【0086】
次に、時刻T2においてスイッチ612がオフ状態に切り替えられ、比較器610が第2の状態(コンパレータ状態)に設定される。その後、制御回路62は、容量値「n」をプラス方向に1ステップ分変化させた容量値「n+1」(CBANK_+1)に設定する(ステップ107)。これにより比較器610において、容量値が「n」のときの差分信号Xs(n)と、容量値が「n+1」のときの差分信号Xs(n+1)とを比較する(ステップ105)。その結果、差分信号Xs(n+1)の方が高い場合は、容量値「n+1」をプラス方向にさらに1ステップ増加させた容量値「n+2」(CBANK_+2)に設定する(ステップ106,105)。
【0087】
本実施形態において容量制御部60は、容量値の可変幅を±15%とし、1%刻みで容量値を可変に構成されるが、これに限られず、仕様に応じて任意の可変幅及び刻みに設定可能である。
【0088】
以下、同様にして、再設定後の容量値「n+2」(CBANK_+2)と前回の容量値「n+1」(CBANK_+1)との間で差分信号Xsの大小を比較し、再設定後の容量値における差分信号の方が高い場合は容量値をさらに1ステップ分インクリメントする処理を繰り返し実行する。スイッチ612の開閉ごとに保持容量611には、その時点における差分信号Xsに相当する電圧が基準値として充電される。そして、再設定後の容量値における差分信号が前回の容量値における差分信号よりも下回った時点でインクリメント処理を停止し、容量値を前回(インクリメント前)の値に戻してこれを最適容量値とする。図10に示す例では、時刻T3でストップフラグが立ち上がり、その前の容量値(CBANK_+3)が最適容量値として決定される(ステップ107)。ストップフラグは相対比較回路61から出力されてもよいし、制御回路62の内部処理の一環として生成されてもよい。あるいは、ストップフラグは省略されてもよい。
【0089】
共振容量部42が最適容量値に設定されると、電力生成部40における電力の生成量は最大値となる。この状態で、カートリッジメモリCMは、リーダライタ207との通信を開始し(ステップ108)、リーダライタ207の要求に応じてメモリ部/ロジック部73に対する情報の読み出し又は書き込み処理が実行される。
【0090】
なお、何等かの理由により強磁界がカートリッジメモリCMに入力されると、容量値のインクリメント処理が可変幅15%を超える場合がある。この場合、共振容量部42の容量値は過電力容量(初期容量よりも50%高い容量値)に設定される(ステップ109)。この状態でリーダライタ207との通信を開始すると、メモリ部/ロジック部73の駆動時に電力が不足してカートリッジメモリCMの動作が停止するおそれはあるが、電力増に起因する電力生成部40、電力監視部50等の発熱による損傷が回避可能となる。
【0091】
一方、初期容量値が低めにずれている場合、制御回路62は、容量値をマイナス側に段階的に変化させる制御を実行する(ステップ110~114,107)。この制御では、上述の制御例とは逆に、容量値をマイナス側に順次インクリメントしていく点で相違する。それ以外の処理は上述と同様であるので、ここでは説明を省略する。初期容量値が最適と判定された場合は、初期容量値を最適容量値として決定される(ステップ115,116,107)。
【0092】
以上のように本実施形態によれば、共振回路45の共振容量を自動的に調整することができるため、比較的大きな電力を消費するメモリ部/ロジック部73を起動させることなく、電力生成部40の電力を最大化することができる。これにより、共振容量の最適パラメータをメモリ部から読み出して容量値を設定する方式よりも、メモリ部の起動に伴う電力の低下を最小限に抑えることができるため、リーダライタ207との安定した通信動作を実行することができる。
【0093】
また、磁気テープ12のデータトラック数の増加に伴うカートリッジメモリの将来的なメモリ容量の増大にも十分に対応することが可能となり、メモリサイズに依らずに、限られた信号磁界強度の中からカートリッジメモリCMの動作に必要な電力を安定に確保することができる。
【0094】
さらに本実施形態によれば、整流回路43の出力電圧Vzが基準電圧Vrefと一致するように電力生成部40の共振出力をフィードバック制御しているため、共振容量部42を電力が最大となる容量値に安定に制御することができる。このため、従来の電圧のみを基準とした容量制御方式と比較して、メモリ部の起動に伴う電流値の減少を最小限に抑えることができる。
【0095】
<その他の実施形態>
図11は、本技術の他の実施形態に係るカートリッジメモリCM1における電源回路の他の構成例を示す回路図である。以下、図6と異なる構成について主に説明し、図6と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0096】
本実施形態に係るカートリッジメモリCM1は、電力監視部50の構成が異なり、本実施液体では、電流調整素子53が整流回路43の出力端子とグランド端子GNDとの間に接続される。このような構成によっても、差分信号Xsに基づいて電流調整素子53の抵抗値を可変に制御することにより、整流回路43の出力電圧Vzの大きさを調整することができる。
【0097】
以上、本技術の実施形態について説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、種々変更を加え得ることは勿論である。
【0098】
例えば以上の実施形態では、LTO規格の磁気テープカートリッジに搭載されるカートリッジメモリを例に挙げて説明したが、これに限られず、LTO以外の他の規格の磁気テープカートリッジ用のカートリッジメモリにも適用可能である。
【0099】
また本技術は、磁気テープ以外の他の情報記録媒体、例えば、光ディスクや光磁気ディスク、半導体メモリ、可搬型ハードディスクドライブ用のカートリッジメモリにも適用可能である。
【0100】
さらに本技術は、情報記録カートリッジに搭載されるカートリッジメモリに限られず、電子機器、車両、ロボット、物流製品、蔵書などに付されるIDタグのほか、交通用定期券、高速道路や建物等の入退場管理カードにも、本技術は適用可能である。本技術によれば、上述のように共振容量を自動的に最適化することができるため、リーダライタとの通信距離に依らずに安定した通信動作を確保することができる。
【0101】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1) 所定の管理情報を記憶するメモリ部と、
アンテナコイルと容量値が可変な共振容量部とを有する共振回路と、前記共振回路の共振出力を整流する整流回路とを有し、前記メモリ部へ供給される電力を生成する電力生成部と、
前記整流回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子と、基準電圧を発生させる基準電圧発生源と、前記整流回路の出力電圧が前記基準電圧と等しくなるように前記電流調整素子を制御する演算増幅器とを有する電力監視部と、
前記演算増幅器の出力に基づいて前記共振容量部を制御するように構成された容量制御部と
を具備する非接触通信媒体。
(2)上記(1)に記載の非接触通信媒体であって、
前記電流調整素子は、前記整流回路の入力側に前記共振回路に対して並列に接続される
非接触通信媒体。
(3)上記(1)に記載の非接触通信媒体であって、
前記電流調整素子は、前記整流回路の出力端子とグランド端子との間に接続される
非接触通信媒体。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の非接触通信媒体であって、
前記容量制御部は、前記整流回路の出力電圧が最大となる容量値に前記共振容量部を設定するように構成される
非接触通信媒体。
(5)上記(4)に記載の非接触通信媒体であって、
前記容量制御部は、前記容量値の調整前後における前記演算増幅器の出力を比較する比較器を有する
非接触通信媒体。
(6)上記(5)に記載の非接触通信媒体であって、
前記容量制御部は、前記比較器の出力を基準値として保持することが可能な保持容量と、前記比較器の出力端子と前記保持容量との間に設けられたスイッチとをさらに有し、
前記比較器は、前記スイッチを閉じて前記保持容量を充電する第1の状態と、前記スイッチを開いて前記演算増幅器の出力を前記基準値と比較する第2の状態とを切り替え可能に構成される
非接触通信媒体。
(7)上記(4)~(6)のいずれか1つに記載の非接触通信媒体であって、
前記容量制御部は、前記容量値の調整前後における前記演算増幅器の出力の変化量がゼロのとき、前記共振回路の共振出力が所定以上減少する容量値に前記共振容量部を設定するように構成される
非接触通信媒体。
(8) 情報記録媒体と、
前記情報記録媒体を収容するカートリッジケースと、
前記情報記録媒体に関連する所定の管理情報を記憶するメモリ部と、
アンテナコイルと容量値が可変な共振容量部とを有する共振回路と、前記共振回路の共振出力を整流する整流回路とを有し、前記メモリ部へ供給される電力を生成する電力生成部と、
前記整流回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子と、基準電圧を発生させる基準電圧発生源と、前記整流回路の出力電圧が前記基準電圧と等しくなるように前記電流調整素子を制御する演算増幅器とを有する電力監視部と、
前記演算増幅器の出力に基づいて前記共振容量部を制御するように構成された容量制御部と
を有し、前記カートリッジケースに収容された非接触通信媒体と
を具備する記録媒体カートリッジ。
(9)上記(8)に記載の記録媒体カートリッジであって、
前記情報記録媒体は、磁気テープである
記録媒体カートリッジ。
(10) アンテナコイルと共振容量とを含む共振回路の共振出力を整流する整流回路の出力電圧を取得し、
前記整流回路の出力電圧が所定の基準電圧と等しくなるように、前記共振回路の入力側又は出力側に接続され前記整流回路の出力電圧を調整することが可能な電流調整素子の抵抗値を制御し、
前記増幅回路の出力電圧が最大となるように前記共振容量の容量値を制御し、
メモリ部に対する情報の読み出し又は書き込みを実行する
非接触通信媒体の駆動方法。
【符号の説明】
【0102】
11…カートリッジケース
12…磁気テープ
32…アンテナコイル
40…電力生成部
42…共振容量部
43…整流回路
45…共振回路
50…電力監視部
52…演算増幅器
53…電流調整素子
60…容量制御部
61…相対比較回路
62…制御回路
73…メモリ部/ロジック部
100…テープカートリッジ
610…比較器
611…保持容量
612…スイッチ
CM,CM1…カートリッジメモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11