(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】睡眠障害の治療及び予防
(51)【国際特許分類】
A61K 31/498 20060101AFI20220720BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61K31/498 ZMD
A61P25/20
(21)【出願番号】P 2020540342
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 IB2019050522
(87)【国際公開番号】W WO2019145850
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-30
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508150854
【氏名又は名称】パーデュー、ファーマ、リミテッド、パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ステファン シー.
(72)【発明者】
【氏名】カイル,ドナルド ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトサイド,ガース
(72)【発明者】
【氏名】カピル,ラム ピー.
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/010458(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0187544(US,A1)
【文献】国際公開第2018/020418(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 25/00-25/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IC)の化合物を含み、アルコール摂取を中止する前に、アルコール中止に関連する不眠症、アルコール使用障害での不眠症、またはアルコール中止に関連する睡眠障害を治療または予防するための医薬組成物であって、
前記式(IC)の化合物が、0.5mg~6.0mgの1日用量で投与され、
前記1日用量の式(IC)の化合物が、0.05g/kg~5.0g/kgのエタノールを摂取したヒトに投与され、エタノールを摂取した前記ヒトへの式(IC)の化合物の投与の結果として得られるT
max、AUC及びT
1/2が、エタノールの非存在下で同じ1日用量での前記ヒトへの式(IC)の化合物の投与の結果として得られるT
max、AUC及びT
1/2と統計的に差がない、前記医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
式(IC)の化合物を含み、アルコール摂取を中止する前に、アルコール中止に関連する不眠症、アルコール使用障害での不眠症、またはアルコール中止に関連する睡眠障害を治療または予防するための医薬組成物であって、
前記式(IC)の化合物が、0.5mg~6.0mgの1日用量で投与され、
前記1日用量の式(IC)の化合物が、0.05g/kg~5.0g/kgのエタノールを摂取したヒトに投与され、式(IC)の化合物と共にエタノールを摂取した結果として得られるT
max、AUC及びT
1/2が、同じ量のエタノールを単独で摂取した結果として得られるT
max、AUC及びT
1/2と統計的に差がない、前記医薬組成物。
【化2】
【請求項3】
前記式(IC)の化合物が、0.5mg~2.0mgの1日用量で投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記式(IC)の化合物が、0.5mg、1.0mg、または2.0mgの1日用量で投与される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
アルコールを摂取することを中止していない、アルコール使用障害と診断されたヒトに、前記式(IC)の化合物が投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
肝機能障害を有すると診断されたヒトに前記式(IC)の化合物が、肝機能障害を有すると診断されていないヒトに投与される前記式(IC)の化合物の1日用量と同じ1日用量で投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.分野
本開示は、睡眠障害の治療または予防を、そのような治療を必要とする動物、例えばヒトに式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を投与することによって行う方法に関する。特定の実施形態では、そのような化合物は、従前の利用可能な化合物に比べてより少ないかまたは軽減された副作用を生じながら動物の睡眠障害を効果的に治療または予防する。
【背景技術】
【0002】
2.背景
睡眠障害は世界中及び米国内に広く認められる。ある分類体系の下では睡眠障害の6つの大部類が識別されている:(i)不眠症、(ii)過眠症、(iii)睡眠時随伴症、(iv)概日リズム睡眠覚醒障害、(v)睡眠関連呼吸障害、及び(vi)睡眠時運動障害。別の分類体系の下では、睡眠障害の10個の主要な大部類が識別されている:(1)不眠症障害、(2)傾眠過剰障害、(3)ナルコレプシー、(4)呼吸関連睡眠障害、(5)概日リズム睡眠覚醒障害、(6)非急速眼球運動(「NREM」)睡眠覚醒障害、(7)悪夢障害、(8)急速眼球運動睡眠行動障害、(9)むずむず脚症候群、及び(10)物質/医薬品誘発性睡眠障害。どちらの体系下においても、各々の大部類の中で複数の小部類が識別される。
【0003】
不眠症は、原因が明らかでなく入眠及び/または睡眠持続が困難な障害として定義されている。不眠症は、原発性または併発性の障害として何百万人もの人々が患う最もよくある睡眠障害である。不眠症は、障害としても(例えば、Espie,“Insomnia:Conceptual Issues in the Development,Persistence and Treatment of Sleep Disorder in Adults,”Ann.Reviews Psychology 53:215-243(2002)を参照されたい)、症候としても(例えば、Hirshkowitz,“Neuropsychiatric Aspects of Sleep and Sleep Disorders,”Chapter 10(pp.315-340) in Essentials of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences,Yudofsy et al.,eds.,4th Ed.,American Psychiatric Publishing,Arlington,VA(2004)を参照されたい)定義されており、この区別は研究及び臨床の両方の見地からその概念化に影響し得る。とは言え、不眠症を障害とみなすか症候とみなすかにかかわらずそれはなおも個人及び社会に多大な影響を及ぼす。不眠症は、それを患う者に大きな苦痛及び/または機能障害をもたらしており、適切な治療の必要性を明らかに示している。
【0004】
不眠症の有病率の概算は、その定義に用いる基準によって決まり、より重要なことには、調査される人口によって決まる。諸国から導き出される複数の人口ベースの調査から明らかになった大まかな総意は、不眠症の症候:入眠困難、睡眠維持困難、早朝覚醒、及び一部の例での体力回復が認められないまたは質が悪い睡眠のうちの1つ以上を成人のおよそ30%が報告するということである。知覚される日中の障害または苦痛を不眠症の結果として診断基準に含める場合、2005年にNIHは米国内の不眠症の有病率がおよそ10%であると判断した。不眠症が少なくとも1ヶ月にわたって続いており、それが別の睡眠障害、精神障害、物質使用障害または病状によるものでない場合、有病率はおよそ6%である。
【0005】
アルコール依存症は世界中でよくみられる物質使用障害である。アルコール使用障害は、精神障害の診断・統計マニュアル(DSM-5,5th Ed.,Amer.Psychiatric Publishing,Arlington,VA(2013))の基準によって定義されており、米国内で生涯における発生はあらゆる重症度分類を含めて約29%である(Grant et al.,“Epidemiology of DSM-5 Alcohol Use Disorder,”JAMA Psychiatry 72(8):757-766(2015))。加えて、DSM第4版(DSM-IV,4th Ed.,Amer.Psychiatric Publishing,Arlington,VA(1994))の下では別個の症状として分類されるアルコール依存症は、米国内で生涯における発生が約12.5%である(Hasin et al.,“Prevalence,correlates,disability,and comorbidity of DSM-IV alcohol abuse and dependence in the United States,”Arch.Gen.Psychiatry 64:830-842(2007))。
【0006】
睡眠障害は、非アルコール依存者よりもアルコール依存者においてより一般的であることが知られている(Brower,“Alcohol’s Effects on Sleep in Alcoholics,”Alcohol Res.Health 25(2):110-125(2001))。例えば、Browerは、一般集団において事前の6ヶ月に不眠症を患っているのが非アルコール依存者の10%とは対照的にアルコール依存者の18%であること、ならびにアルコール依存症治療のために入院する患者では不眠症率がよりいっそう高く、試料の特徴、睡眠測定機器の種類、最後の飲酒から経過した時間量、及び他の障害の存在によって36~72%の範囲であることを開示している。他の参考文献には、睡眠研究においてアルコール依存症の参加者の91%が、広く受け入れられているピッツバーグ睡眠質問票(「PSQI」)で測定される睡眠障害に罹患していることが開示されている(Conroy et al.,“Perception of Sleep in Recovering Alcohol Dependent Patients with Insomnia:Relationship to Future Drinking,”Alcohol Clin.Exp.Res.30(12):1992-1999(2006))。
【0007】
睡眠ポリグラフ検査(「PSG」)は、睡眠を試験するため及び睡眠障害を診断するために用いられる多パラメータ検査である。睡眠ポリグラフ検査の評価は、総合的測定、及び睡眠中に起こる生物生理学的変化の記録を含む。これは典型的には、就床時間中に脳波(脳波図または「EEG」)、心拍数及び心拍リズム(心電図または「ECG」)、眼球運動(眼電図または「EOG」)、筋活動及び四肢運動(筋電図または「EMG」)、血中酸素レベル、呼吸パターン及び空気流量、体位、ならびにいびき及び他の睡眠中に立てる音を、(睡眠ポリグラムの形態で)継続的に記録することを含む。眼球を除いてEMGは、典型的には、顎の筋緊張、足の運動、胸壁の動き及び上部腹壁の動きを評価する。
【0008】
既存の薬物は、様々な機序によって睡眠を穏やかにすることが知られている。例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、ロラゼパム、テマゼパム、トリアゾラム)、バルビツレート(例えば、フェノバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール)、及びいわゆる「z薬」(例えば、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン)は全て、GABA受容体に対する作用を介してGABAの作用を強化することによって睡眠を増進する。ベンゾジアゼピンは塩素イオンチャネルが開く頻度を増加させることによってGABAを強化する。バルビツレートは、塩素イオンチャネルが開いている持続時間を増大させることによってGABAを強化する。z薬はGABAaγ1サブユニットでの作動薬である。他の既存の薬物は、異なる機序によって睡眠を増進し、例えば、ラメルテオン(ROZEREM)は、視交叉上核(「SCN」)でのMT1及びMT2と呼称される2つの高親和性Gタンパク質結合受容体に対する作動薬であり、他方、他の薬物(例えばスボレキサント)はオレキシン受容体拮抗薬である。これらの既存の薬物の多くは規制物質法の下に規制物質として分類され、それゆえ、乱用及び嗜癖の危険性を保有している。例えば、ロラゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、フェノバルビタール、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン及びスボレキサントは全て、連邦規則集第21巻第1308.14節に準じてスケジュールIV規制物質として分類され、他方、ペントバルビタール及びセコバルビタールの各々はスケジュールII規制物質として、つまり重度の心理的または身体的依存症を招きかねない乱用の可能性が高い物質として分類される。
【0009】
これらの既存の薬物のいくつかには警告も該当する。例えば、ゾルピデム酒石酸塩(AMBIEM)についての2017年3月の処方情報には、アルコールへの嗜癖または乱用の既往歴を有する者はゾルピデムの誤用、乱用及び嗜癖の危険性が高いこと;重度の肝機能障害を有する患者にはAMBIEN使用を避けること;及び、不眠症を被っている者にはアルコール乱用もしくは嗜癖の既往歴及び/または肝疾患もしくは腎疾患を有するか否かを主治医に助言するよう指導することが記されている。加えて、スボレキサント(BELSOMRA)についての2014年8月の処方情報には、アルコールまたは他の薬物の乱用または嗜癖の既往歴を有する個人はBELSOMRAの乱用及び嗜癖の危険性が高い可能性があること;BELSOMRAを処置された患者に最もよくある副作用は傾眠であること;ならびに、患者による鮮明かつ不穏な知覚を含めて睡眠麻痺及び入眠時/出眠時幻覚がBELSOMRAの使用によって起こり得ることが記されている。
【0010】
さらに他の既存の薬物または薬物様物質、例えば、モダフィニル、三環系抗鬱薬(例えば、デシプラミン、プロトリプチリン、トリミプラミン)、選択的セロトニン再取込阻害薬(例えば、シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン)、ノルエピネフリン再取込阻害薬(例えば、アトモキセチン、マプロチリン、レボキセチン)及び刺激薬(例えば、アンフェタミン、カフェイン)は、睡眠を減退させることが知られている。
【0011】
長い間知られてきた中枢神経系の3つの主要な部類のオピオイド受容体-ミュー、カッパ及びデルタとは別個のものとしてのORL-1受容体の同定は、これらのオピオイド受容体の部類に対する実験の結果として得られた。ORL-1受容体は、古典的なミューオピオイド受容体と重複する薬理をORL-1受容体が呈さなかったため、アミノ酸配列相同性のみに基づくオピオイド受容体として同定及び分類された。当初は、ミュー、カッパ及びデルタ受容体に対する高い親和性を有する非選択的リガンドがORL-1受容体に対して低い親和性を有することが実証された。この特徴が、未だ内因性リガンドが発見されていなかったという事実と相まって、「孤児受容体」という用語を導いた。例えば、Henderson et al.,“The orphan opioid receptor and its endogenous ligand-nociceptin/orphanin FQ,”Trends Pharmacol.Sci.18(8):293-300(1997)を参照されたい。後の研究によって、オピオイドペプチドファミリーのメンバーと構造が類似する17アミノ酸のペプチドである、ORL-1受容体の内因性リガンド(すなわち、ノシセプチン;オルファニンFQまたはOFQとしても知られる)の単離及び構築に至った。ORL-1受容体の概論については、Calo’et al.,“Pharmacology of nociceptin and its receptor:a novel therapeutic target,”Br.J.Pharmacol.129:1261-1283(2000)を参照されたい。
【0012】
米国特許第8,476,271号、第8,846,929号、第9,145,408号、第9,278,967号及び第9,527,840号ならびに米国特許出願公開第US2016/0009717A1号の各々には、ORL-1受容体に対する親和性を有する化合物が開示されている。
【0013】
米国特許第9,040,533号及び米国特許出願公開第US2015/0238485A1号及び第US2016/0272640A1号の各々には、ORL-1受容体に対する親和性を有する化合物が開示されている。
【0014】
米国特許第7,566,728号及び第8,003,669号は、概日リズム睡眠障害の治療に有用なORL-1受容体作動薬化合物を開示することを趣旨としている。
【0015】
Teshima et al.(“Nonphotic entrainment of the circadian body temperature rhythm by the selective ORL1 receptor agonist W-212393 in rats,”Brit.J.Pharmacol.146:33-40(2005))には、ORL-1受容体作動薬W-212393がラットにおける概日同調に影響を及ぼし得ることが記載されている。
【0016】
Zaveri(“Nociceptin Opioid Receptor(NOP)as a Therapeutic Target:Progress in Translation from Preclinical Research to Clinical Utility,”J.Med.Chem.59(15):7011-7028(2016))は、治療の標的としてのNOPシステムの検証に向けた近年の進歩について総説している。
【0017】
国際出願第PCT/IB2017/054506号には、睡眠障害の治療及び/または予防に有用な、ORL-1受容体に対する親和性を有する化合物が開示されている。
【0018】
本開示は、睡眠障害、例えば不眠症障害を治療または予防するのに有用な特定のORL-1受容体調節剤を提供する。
【0019】
本願の第2節でのいかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本願の先行技術であることを容認するものと解釈されるべきでない。
【発明の概要】
【0020】
3.概要
一態様において、本開示は、動物の睡眠障害を治療する方法であって、そのような治療を必要とする動物に治療的有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の1つ以上の化合物:
【化1】
またはその溶媒和物を投与することを含む、当該方法を提供する。特定の実施形態では、そのような式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、従前の利用可能な化合物に比べてより少ないかまたは軽減された副作用を生じながら動物の睡眠障害を効果的に治療する。特定の実施形態では、そのような式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、ヒトORL-1受容体に対する親和性を呈する。式(IA)、(IB)及び(IC)の各化合物をそれぞれ化合物(1A)、化合物(1B)及び化合物(1C)と呼ぶ場合がある。
【0021】
本開示の別の実施形態では、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む組成物が開示される。組成物は、動物の睡眠障害を治療または予防するのに有用である。
【0022】
本開示の別の実施形態では、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、不眠症(例えば、「成人」不眠症、小児不眠症及び中途覚醒型不眠症);アルコール誘発性睡眠障害(例えば、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、日中眠気型アルコール誘発性睡眠障害、睡眠時随伴症型アルコール誘発性睡眠障害、及び混合型アルコール誘発性睡眠障害);アルコール使用障害での不眠症;アルコール中止に関連する睡眠障害(例えば、アルコール中止に関連する不眠症);過眠症(例えば睡眠不足症候群);概日リズム睡眠覚醒障害(例えば、睡眠覚醒相後退、睡眠覚醒相前進、不規則型睡眠覚醒リズム、非24時間型睡眠覚醒リズム、交代勤務症候群及び時差ぼけ);またはその任意の組合せを含むがこれらに限定されない睡眠障害を治療または予防するために使用され得る。上記に含まれるものなどの睡眠障害を治療または予防するために用いる場合、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物の有効量は、嗜癖性アルコール使用障害を治療または予防するための1つ以上の付随的療法を受けている患者に投与され得る。
【0023】
本開示の別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物の有効量は、不眠症障害(例えば、「成人」不眠症、小児不眠症及び中途覚醒型不眠症)を含むがそれに限定されない睡眠障害を治療または予防するために使用され得る。
【0024】
本開示の別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物の有効量は、アルコールに関連する不眠症障害、例えば、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、及び混合型アルコール誘発性睡眠障害;アルコール使用障害での不眠症;アルコール中止に関連する不眠症;またはその任意の組合せを含むがこれらに限定されない睡眠障害を治療または予防するために使用され得る。
【0025】
本開示は、以下の詳細な説明及び例示的な実施例を参照することによってより詳しく理解され得が、これらは本開示の非限定的な実施形態を例示することを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1夜、第2夜、及び第1夜と第2夜との平均について、最大の解析対象集団に対する実施例3でのヒトの睡眠効率(「SE」)の結果をまとめた棒グラフを示し、併せて標準誤差バーを示す。
【
図2】第1夜、第2夜、及び第1夜と第2夜との平均について、最大の解析対象集団に対する実施例4でのヒトの総睡眠時間(「TST」)の結果をまとめた棒グラフを示し、併せて標準誤差バーを示す。
【
図3】第1夜、第2夜、及び第1夜と第2夜との平均について、最大の解析対象集団に対する実施例5でのヒトの中途覚醒(「WASO」)の結果をまとめた棒グラフを示し、併せて標準誤差バーを示す。
【
図4】第1夜、第2夜、及び第1夜と第2夜との平均について、最大の解析対象集団に対する実施例6でのヒトの持続睡眠潜時(「LPS」)の結果をまとめた棒グラフを示し、併せて標準誤差バーを示す。
【
図5】第1夜、第2夜、及び第1夜と第2夜との平均について、最大の解析対象集団に対する実施例7での、睡眠段階N2に費やされた総時間量の結果をまとめた棒グラフを示し、併せて標準誤差バーを示す。
【
図6】第1夜と第2夜との平均について、最大の解析対象集団に対する実施例8での数字符号置換検査(「DSST」)スコア結果のプロットを示し、併せて標準偏差バーを示す。
【
図7】第1夜と第2夜との平均について、最大の解析対象集団に対する実施例9でのカロリンスカ眠気尺度(「KSS」)評価結果のプロットを示し、併せて標準偏差バーを示す。
【
図8】実施例10に従って、スボレキサントまたはゾルピデムのいくつかの用量と比べたときの化合物(1C)のいくつかの異なる用量での、ヒトのプラセボ差し引き後の睡眠効率(「SE」)のフォレストプロットを示し、併せて95%信頼区間を示す。
【
図9】実施例10に従って、スボレキサントまたはゾルピデムのいくつかの用量と比べたときの化合物(1C)のいくつかの異なる用量での、ヒトのプラセボ差し引き後の中途覚醒(「WASO」)のフォレストプロットを示し、併せて95%信頼区間を示す。
【
図10】実施例10に従って、スボレキサントまたはゾルピデムのいくつかの用量と比べたときの化合物(1C)のいくつかの異なる用量での、ヒトのプラセボ差し引き後の持続睡眠潜時(「LPS」)のフォレストプロットを示し、併せて95%信頼区間を示す。
【
図11】実施例10に従って、スボレキサントのいくつかの用量と比べたときの化合物(1C)のいくつかの異なる用量での、プラセボ差し引き後の数字符号置換検査(「DSST」)スコアの結果のフォレストプロットを示し、併せて95%信頼区間を示す。
【
図12】実施例11でのヒト乱用可能性試験の試験デザインを示す。
【
図13】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する薬物嗜好応答、ピーク作用(E
max)のプロットを示す。
【
図14】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する薬物嗜好応答、全体的薬物嗜好性のプロットを示す。
【
図15】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する薬物嗜好応答、薬物再使用作用のプロットを示す。
【
図16】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する薬物嗜好応答、高揚性薬物作用のプロットを示す。
【
図17】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する薬物嗜好応答、良質な薬物作用のプロットを示す。
【
図18】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する薬物嗜好応答、任意の薬物作用のプロットを示す。
【
図19】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する精神運動能力、分割的注意検査(「DAT」)のプロットを示す。
【
図20】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する精神運動能力、選択反応時間(「CRT」)のプロットを示す。
【
図21】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する自覚鎮静作用、覚醒/眠気のプロットを示す。
【
図22】実施例11での1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボに対する自覚鎮静作用、興奮/くつろぎのプロットを示す。
【
図23】実施例12において2mg及び6mgの用量で単独で、または0.7g/kgのエタノールと組み合わせて投与される化合物(1C)の薬物動態(「PK」)プロファイルのプロットを示す。
【
図24】実施例12において2mg及び6mgの用量で0.7g/kgのエタノールと組み合わせて投与される化合物(1C)の薬物動態(「PK」)プロファイルのプロットを示す。
【
図25】実施例11において1mg、6mg及び10mgの用量の化合物(1C)、0.5mg及び1.0mgの用量のトリアゾラム、ならびにプラセボを受けた試験完遂者の、酸素飽和度の線グラフのまとめを示す。
【
図26】実施例12において2mg及び6mgの用量で単独で、または0.7g/kgのエタノールと組み合わせて投与される化合物(1C)、単独での0.7g/kgのエタノール、及びプラセボを受けた試験完遂者の、酸素飽和度の線グラフのまとめを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
5.詳細な説明
本発明は、以下の例示的で非限定的な実施形態を含む:
(1)不眠症障害を治療または予防する方法であって、それを必要とするヒトに治療的有効量の式(I)の化合物
【化2】
またはその溶媒和物を約0.5mg~約6.0mgの1日用量で投与することを含む、前記方法。
【0028】
(2)前記化合物が式(IA)の化合物
【化3】
またはその溶媒和物である、上記(1)に記載の方法。
【0029】
(3)前記化合物が式(IB)の化合物
【化4】
またはその溶媒和物である、上記(1)に記載の方法。
【0030】
(4)前記化合物が式(IC)の化合物
【化5】
またはその溶媒和物である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
(5)前記不眠症障害が、成人不眠症、小児不眠症、中途覚醒型不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する不眠症、またはその任意の組合せである、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
(6)前記不眠症障害が成人不眠症である、上記(5)に記載の方法。
【0033】
(7)前記不眠症障害が小児不眠症である、上記(5)に記載の方法。
【0034】
(8)前記不眠症障害が中途覚醒型不眠症である、上記(5)に記載の方法。
【0035】
(9)前記不眠症障害が不眠症型アルコール誘発性睡眠障害である、上記(5)に記載の方法。
【0036】
(10)前記不眠症障害がアルコール使用障害での不眠症である、上記(5)に記載の方法。
【0037】
(11)前記不眠症障害がアルコール中止に関連する不眠症である、上記(5)に記載の方法。
【0038】
(12)前記不眠症障害が治療される、上記(1)~(11)のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
(13)前記不眠症障害が予防される、上記(1)~(11)のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
(14)1日用量の前記化合物またはその溶媒和物を2日連続で投与されたヒトの平均睡眠効率が、プラセボを投与されたヒトの平均睡眠効率の少なくとも約1.04倍である、上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
(15)1日用量の前記化合物またはその溶媒和物を2日連続で投与されたヒトの平均総睡眠時間が、プラセボを投与されたヒトの平均総睡眠時間よりも少なくとも約15分長い、上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
(16)1日用量の前記化合物またはその溶媒和物を2日連続で投与されたヒトの平均中途覚醒(WASO)が、プラセボを投与されたヒトの平均WASOよりも少なくとも約20分短い、上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
(17)1日用量の前記化合物またはその溶媒和物を2日連続で投与されたヒトの睡眠段階N2に費やされる平均時間量が、プラセボを投与されたヒトの睡眠段階N2に費やされる平均時間量よりも少なくとも約30分長い、上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
(18)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約0.5mg~約3.0mgである、上記(1)~(17)のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
(19)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約3.0mgである、上記(18)に記載の方法。
【0046】
(20)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約0.5mg~約2.0mgである、上記(1)~(18)のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
(21)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約2.0mgである、上記(20)に記載の方法。
【0048】
(22)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約1.5mgである、上記(20)に記載の方法。
【0049】
(23)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約0.5mg~約1.0mgである、上記(1)~(18)のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
(24)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約1.0mgである、上記(23)に記載の方法。
【0051】
(25)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約0.75mgである、上記(23)に記載の方法。
【0052】
(26)前記化合物またはその溶媒和物の1日用量が約0.5mgである、上記(23)に記載の方法。
【0053】
(27)前記化合物またはその溶媒和物の投与が、経口、非経口、静脈内、筋肉内、眼内、経皮及び経粘膜から選択される少なくとも1つの経路によるものである、上記(1)~(26)のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
(28)前記化合物またはその溶媒和物が経口投与される、上記(1)~(26)のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
(29)前記化合物またはその溶媒和物が、頬側、歯肉もしくは舌下投与される、または丸ごと飲み込む経口剤形の形態で投与される、上記(28)に記載の方法。
【0056】
(30)前記化合物またはその溶媒和物の投与が、丸ごと飲み込む経口剤形によるものである、上記(28)に記載の方法。
【0057】
(31)前記1日用量が、意図する就床時刻の約60分前から意図する就床時刻のあたりまでに投与される、上記(1)~(30)のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
(32)前記1日用量が単回1日用量である、上記(1)~(31)のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
(33)不眠症障害の治療または予防のための医薬品の調製における上記(1)~(4)のいずれか1つに定義される化合物またはその溶媒和物の使用であって、単一の医薬品が約0.16mg~約8.0mgの用量の前記化合物またはその溶媒和物を含有する、前記使用。
【0060】
(34)前記不眠症障害が、成人不眠症、小児不眠症、中途覚醒型不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する不眠症、またはその任意の組合せである、上記(33)に記載の使用。
【0061】
(35)前記不眠症障害が成人不眠症である、上記(33)に記載の使用。
【0062】
(36)前記不眠症障害が小児不眠症である、上記(33)に記載の使用。
【0063】
(37)前記不眠症障害が中途覚醒型不眠症である、上記(33)に記載の使用。
【0064】
(38)前記不眠症障害が不眠症型アルコール誘発性睡眠障害である、上記(33)に記載の使用。
【0065】
(39)前記不眠症障害が、アルコール使用障害での不眠症である、上記(33)に記載の使用。
【0066】
(40)前記不眠症障害が、アルコール中止に関連する不眠症である、上記(33)に記載の使用。
【0067】
(41)前記不眠症障害が治療される、上記(33)~(40)のいずれか1つに記載の使用。
【0068】
(42)前記不眠症障害が予防される、上記(33)~(40)のいずれか1つに記載の使用。
【0069】
(43)前記医薬品が、経口、非経口、静脈内、筋肉内、眼内、経皮及び経粘膜から選択される少なくとも1つの経路による投与のために製剤化されたものである、上記(33)~(42)のいずれか1つに記載の使用。
【0070】
(44)前記医薬品が、経口投与のために製剤化されたものである、上記(33)~(42)のいずれか1つに記載の使用。
【0071】
(45)前記医薬品が、頬側、歯肉もしくは舌下投与のために製剤化されたものである、または丸ごと飲み込む経口剤形として製剤化されたものである、上記(44)に記載の使用。
【0072】
(46)前記医薬品が、口腔内崩壊錠として製剤化されたものである、上記(44)に記載の使用。
【0073】
(47)前記医薬品が、丸ごと飲み込む経口剤形として製剤化されたものである、上記(44)に記載の使用。
【0074】
(48)単一の医薬品が約0.5mg~約6.0mgの用量の前記化合物またはその溶媒和物を含有する、上記(33)~(47)のいずれか1つに記載の使用。
【0075】
(49)不眠症障害を治療または予防するための医薬組成物であって、約0.16mg~約8.0mgの用量の上記(1)~(4)のいずれか1つに定義される化合物またはその溶媒和物を含む、前記医薬組成物。
【0076】
(50)前記不眠症障害が、成人不眠症、小児不眠症、中途覚醒型不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する不眠症、またはその任意の組合せである、上記(49)に記載の医薬組成物。
【0077】
(51)前記不眠症障害が成人不眠症である、上記(50)に記載の医薬組成物。
【0078】
(52)前記不眠症障害が小児不眠症である、上記(50)に記載の医薬組成物。
【0079】
(53)前記不眠症障害が中途覚醒型不眠症である、上記(50)に記載の医薬組成物。
【0080】
(54)前記不眠症障害が不眠症型アルコール誘発性睡眠障害である、上記(50)に記載の医薬組成物。
【0081】
(55)前記不眠症障害が、アルコール使用障害での不眠症である、上記(50)に記載の医薬組成物。
【0082】
(56)前記不眠症障害が、アルコール中止に関連する不眠症である、上記(50)に記載の医薬組成物。
【0083】
(57)前記不眠症障害が治療される、上記(49)~(56)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0084】
(58)前記不眠症障害が予防される、上記(49)~(56)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0085】
(59)前記組成物が約0.5mg~約6.0mgの用量の前記化合物またはその溶媒和物を含む、上記(49)~(58)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0086】
(60)前記組成物が約0.5mg~約3.0mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(49)~(59)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0087】
(61)前記組成物が約3.0mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(60)に記載の医薬組成物。
【0088】
(62)前記組成物が約0.5mg~約2.0mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(49)~(60)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0089】
(63)前記組成物が約2.0mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(62)に記載の医薬組成物。
【0090】
(64)前記組成物が約1.5mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(62)に記載の医薬組成物。
【0091】
(65)前記組成物が約0.5mg~約1.0mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(49)~(60)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0092】
(66)前記組成物が約1.0mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(65)に記載の医薬組成物。
【0093】
(67)前記組成物が約0.75mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(65)に記載の医薬組成物。
【0094】
(68)前記組成物が約0.5mgの用量の化合物またはその溶媒和物を含む、上記(65)に記載の医薬組成物。
【0095】
(69)前記組成物がさらに、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、上記(49)~(68)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0096】
(70)前記組成物が、経口投与に適した単位剤形にある、上記(49)~(69)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0097】
(71)前記単位剤形が、カプセル剤、ゲルキャップ剤、カプレット剤または錠剤である、上記(70)に記載の医薬組成物。
【0098】
(72)前記単位剤形が口腔内崩壊錠である、上記(70)に記載の医薬組成物。
【0099】
(73)前記単位剤形が、丸ごと飲み込む錠剤である、上記(70)に記載の医薬組成物。
【0100】
(74)不眠症障害を治療または予防する方法に使用するための式(I)の化合物
【化6】
であって、1日用量が約0.5mg~約6.0mgである、前記化合物。
【0101】
(75)アルコール中止に関連する不眠症を治療または予防する方法に使用するための式(I)の化合物
【化7】
【0102】
一実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、動物の中枢神経系(「CNS」)の血液脳関門の透過が最小限に抑えられることを示す。そのような、透過が最小限に抑えられる化合物のことを、「末梢制限されている」という。この組織選択性に関しては、動物の血漿中を循環する化合物の量に対する、動物の血液脳関門を透過してCNS内に入る化合物の(例えば、全脳ホモジネート中の化合物の量から決定される)量の比率としてKpを定義することが役に立つ。
【0103】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、当技術分野で知られている試験管内及び生体内での方法、例えば、国際出願第PCT/IB2017/054506号の実施例11に開示されている生体内での方法などを用いて、CNSに透過する能力に関して試験され得る。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の特定の化合物またはその溶媒和物は、例えばWang el al.(“Evaluation of the MDR-MDCK cell line as a permeability screen for the blood-brain barrier,”Int.J.Pharm.288(2):349-359(2005))に開示されているメイディンダービーイヌ腎臓(「MDCK」)細胞株輸送アッセイによって測定される血液脳関門透過の傾向の減少を呈する。
【0104】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、アルコール使用障害を有する及び/またはアルコール乱用の傾向がある対象に投与され得る。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、アルコールの存在下で、化合物またはエタノールの薬物動態に影響を及ぼすことなく対象に投与され得る。
【0105】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、鎮静薬または催眠薬への嗜癖を含めた1つ以上の嗜癖性障害を有する対象に投与され得る。
【0106】
式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物が呈する嗜癖性は、治療量レベルでは統計的にプラセボよりも大きくはなく、及び/または治療量レベルもしくは治療量を上回るレベル(例えば、治療量の少なくとも5倍の用量)では、不眠症の治療に使用される麻薬取締局(「DEA」)スケジュールIV物質(例えばトリアゾラム)よりも小さい。
【0107】
式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、治療量で投与される場合、運動失調、めまい、しゃっくり、健忘、頭痛、複視、視朦、むかつき及び多幸感から選択される1つ以上の有害事象をプラセボと同じ割合で、及び/または不眠症を治療するために使用され治療量で投与される他の医薬品(例えばトリアゾラム)よりも低い割合で呈する。式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、治療量よりも多く(例えば、治療量の少なくとも5倍の用量で)投与される場合、運動失調、めまい、しゃっくり、健忘、頭痛、複視、視朦、むかつき及び多幸感から選択される1つ以上の有害事象をプラセボと同じ割合で、及び/または不眠症を治療するために使用され治療量で投与される他の医薬品(例えばトリアゾラム)よりも低い割合で呈する。
【0108】
式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、肝臓による代謝が最小限に抑えられる。これは好都合なことである、というのも、アルコール使用障害を有する集団においては肝臓損傷が一般的であるからである。したがって、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、肝機能に悪影響を及ぼさずにアルコール中止に関連する不眠症を治療する医薬品の必要性に対処する。
【0109】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、アルコール摂取に関係する肝疾患を含めた任意の原因によって生じる肝機能障害を有する対象に投与され得る。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、肝機能障害を有すると診断されたヒトに、肝機能障害を有すると診断されていないヒト、例えば肝機能障害を有さないヒトに投与されるのと同じ1日用量で投与され得る。
【0110】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、またはそれを含む組成物は、嗜癖性アルコール使用障害を治療または予防するための1つ以上の付随的療法(複数可)を受けている患者に投与され得る。一実施形態では、アルコール使用障害を治療または予防するための付随的療法は、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、ガバペンチン、トピラマート、ナルメフェン、ナロキソン、フルオキセチン、クエチアピンならびにその組合せから選択される。
【0111】
5.1 睡眠の段階
哺乳動物の睡眠は2つの別個のタイプに分けることができる:非急速眼球運動(「NREM」)睡眠及び急速眼球運動(「REM」)睡眠。NREM睡眠はさらに、一般に段階N1~N3と呼ばれる一連の別個の段階に分けられる。段階N1または浅い睡眠は、概して覚醒時と睡眠時との間の遷移としてみられる。段階N1は、覚醒時から睡眠時へと遷移する間の呼吸及び心拍の減速によって特徴付けられる。段階N2または真睡眠は、段階N1の後に続くのが典型的であり、ベースライン睡眠とみなされ、理想的には、大まかに睡眠時間の少なくとも半分を占める。段階N2は、筋弛緩、眼球運動の減少または制限、及び体の動きの減少または制限によって特徴付けられる。段階N3は「デルタ」または「徐波」睡眠と呼ばれ、概して、最も深く、最も体力回復が認められる睡眠の段階であると認識されている。段階N3は、呼吸及び心拍のさらなる減速によって特徴付けられる。段階N3からの覚醒は困難であり得る。
【0112】
REM睡眠は、時には夢睡眠と呼ばれ、睡眠者が鮮明な夢を見る時に特徴的な急速眼球運動を伴う睡眠の活動段階からなる。REM睡眠は、その筋緊張がより目立って減少すること及び体の動きがないことゆえに、別個の睡眠タイプであると認識されているが、呼吸及び心拍はREM睡眠中に増加すること及び不規則になることがある。
【0113】
これらの睡眠タイプ及び段階の各々は明らかなEEGパターンを有し、一晩にわたる睡眠において睡眠者は大抵、これらのタイプ及び段階を周期的に数回繰り返すことになる。睡眠を通じて各30秒の時間単位を「エポック」と呼ぶことがあり、睡眠中に取得したEEGパターンに基づいて睡眠技術者はそのようなエポックの各々に対して睡眠タイプ及び/または段階を割り当てること(または覚醒割当て)ができる。
【0114】
5.2 睡眠障害
上に記されるとおり、1つの分類体系の下に6つの大部類の睡眠障害が識別される:(i)不眠症、(ii)過眠症、(iii)睡眠時随伴症、(iv)概日リズム睡眠覚醒障害、(v)睡眠関連呼吸障害、及び(vi)睡眠時運動障害。これらの大部類の各々の中で複数の小部類が識別される。各々の部類及び小部類は「障害」として定義される。本明細書中で使用される「不眠症障害」は、入眠または睡眠持続の能力の欠如を伴う。不眠症障害には、不眠症(「成人不眠症」)、すなわち成人が所望の意図する就床時間に入眠する能力の欠如;小児不眠症、すなわち例えば就床を拒むことまたは寝床の傍から親を離れさせないことを原因とする、小児(すなわち12歳以下のヒト)が意図する就床時間に入眠する能力の欠如;ならびに、時として睡眠維持障害不眠症、中途型不眠症、中途覚醒(または「MOTN覚醒」)及び/または夜間覚醒としても知られる中途覚醒型不眠症(または「MOTN不眠症」)、すなわち中途覚醒再入眠困難が含まれる。本明細書中で使用される「成人不眠症」は、時として入眠障害不眠症、不眠症障害、「原発性不眠症」または初期不眠症としても知られ、不眠症という非特異的な用語と区別するために使用される。成人不眠症は、疾患または物質の使用/乱用によって引き起こされない。成人不眠症は、LPSの延長によって評価され得る。MOTN不眠症は、WASOの延長及び/または覚醒回数(「NAW」)の増加によって評価され得る。
【0115】
同じく上に記されるとおり、別の分類体系の下では睡眠障害の10個の主要な大分類が識別されている:(1)不眠症障害、(2)傾眠過剰障害、(3)ナルコレプシー、(4)呼吸関連睡眠障害、(5)概日リズム睡眠覚醒障害、(6)非REM睡眠覚醒障害、(7)悪夢障害、(8)REM睡眠行動障害、(9)むずむず脚症候群、及び(10)物質/医薬品誘発性睡眠障害。これらの大部類の各々の中で複数の小部類が識別される。各々の部類及び小部類は「障害」として定義される。例えば、物質/医薬品誘発性睡眠障害という障害は、独立した臨床上の注意を必要とするほど十分に重篤であり主として物質、例えばアルコール(すなわちエチルアルコール)の薬理作用に関連すると判断される顕著な睡眠障害を伴う。物質/医薬品誘発性睡眠障害という障害には、不眠症型物質/医薬品誘発性睡眠障害、日中眠気型物質/医薬品誘発性睡眠障害、睡眠時随伴症型物質/医薬品誘発性睡眠障害、及び混合型物質/医薬品誘発性睡眠障害が含まれる。混合型は、呈しておりながらどれも支配的でないこれらの睡眠障害関連症候の1つより多くのタイプに関係がある。したがって、治療及び/または予防することができる障害には、アルコール誘発性睡眠障害及びその小部類のいずれか/全て:不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、日中眠気型アルコール誘発性睡眠障害、睡眠時随伴症型アルコール誘発性睡眠障害、及び混合型アルコール誘発性睡眠障害が含まれる。アルコール誘発性睡眠障害においてはアルコールによる中毒または離脱症状の証拠があり、睡眠障害は、それによる中毒、中止または離脱症状に関連がある。治療及び/または予防され得る、他の結び付きのある障害としては、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する睡眠障害、及び/またはアルコール中止に関連する不眠症が挙げられる。したがって、本明細書中で使用される「不眠症障害」には、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、構成要素として不眠症型アルコール誘発性睡眠障害を含む混合型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、及びアルコール中止に関連する不眠症も含まれる。
【0116】
不眠症障害、例えば、成人不眠症、小児不眠症、MOTN不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、及び/またはアルコール中止に関連する不眠症を治療及び/または予防する安全で効果的な医薬品の必要性が満たされないまま残っている。
【0117】
5.2 アルコール中止に関連する不眠症
アルコール使用障害は、複雑に相互作用して節制中の再開の危険性を高める意欲関連の憂鬱-ストレス調整及び睡眠システムの機能不全を引き起こす多量のアルコール摂取によって特徴付けられる。新たに出てきているデータは、過度の慢性的なアルコール使用が睡眠恒常系を崩壊させることを示唆している。加えて、節制時、アルコール使用障害を有する対象は、アルコール中止に関連する不眠症と呼ばれる数週間から数年にわたって続き得る不眠症を経験することが知られている。
【0118】
アルコール関連睡眠障害に関して、DSM-5は、アルコール誘発性睡眠障害も主要な診断として示しており、睡眠障害を4つのタイプに細分している:不眠症、日中眠気、睡眠時随伴症及び混合型。それには、アルコール誘発性睡眠障害が典型的には「不眠症型」として、つまり「入眠困難もしくは睡眠維持困難、頻回夜間覚醒、または体力回復が認められない睡眠」を特徴とする睡眠障害として起こることが開示されている。具体的には、Conroy 2006には、アルコール摂取が夜間の睡眠に対して「2相的」影響を及ぼすことが開示されている。すなわち、夜の早い部分ではアルコール一杯は、LPSがより短い即時の鎮静作用、及び段階N3の睡眠の持続時間増加を生む可能性がある。しかしながら、夜の遅い部分では睡眠の質が悪化し、NAWがより多くなる。さらに別の参考文献では、事実上あらゆるタイプの睡眠問題、典型的には、長いLPS、低いSE、短いTST、段階N3の睡眠の持続時間減少、断片的睡眠パターン、及び甚だしく崩壊した睡眠構造がアルコール依存症患者に起こると結論付けている(Landolt et al.,“Sleep Abnormalities During Abstinence in Alcohol-Dependent Patients:Aetiology and Management,”CNS Drugs 15(5):413-425(2001))。
【0119】
アルコール中止に関連する不眠症は、一般集団における不眠症とは区別される場合がある。アルコール中止に関連する不眠症は、根底にある神経病態生理学の点で不眠症障害とは異なる。脳波図(EEG)スペクトル分析、反復睡眠潜時検査、事象関連脳電位及び神経画像研究からのデータは、不眠症障害が、交感神経系及び視床下部-下垂体-副腎系の活性化、コルチコトロピン放出ホルモン/ノルエピネフリン活性化ならびに脳内のドーパミン作動性経路に関係する過覚醒の24時間障害である可能性があることを示唆している。(例えば、Roehrs,T.,Gumenyuk,V.,Drake,C.,Roth,T.,2014.“Physiological correlates of insomnia.”Curr Top Behav Neurosci.21,277-290、Roehrs,T.A.,Roth,T.,2015.“Sleep Disturbance in Substance Use Disorders.”Psychiatr Clin North Am.38(4),793-803を参照されたい。
【0120】
アルコール中止に関連する不眠症は、アルコール使用障害を有するヒトがアルコール摂取を控えた後に起こる不眠症または不眠症の悪化として特徴付けられ得る。
【0121】
例えば、対象がアルコール乱用前に不眠症を患っていない場合があり、その後に対象は、アルコール使用障害をきたすアルコール乱用に引き込まれ、その後、アルコールを控えた後に対象は、アルコール中止に関連する不眠症を患う。
【0122】
別の例では、対象がアルコール乱用前に不眠症を患っていない場合があり、その後に対象は、アルコール使用障害をきたすアルコール乱用に引き込まれ、そして対象は不眠症型アルコール誘発性睡眠障害を患い始め、その後、アルコールを控えた後に対象は、アルコール中止に関連する不眠症を患う。
【0123】
別の例では、対象がアルコール乱用前に不眠症を患っている場合があり、その後に対象は、アルコール使用障害をきたすアルコール乱用に引き込まれ、そしてアルコールを控えた後に対象は、アルコール使用障害を患う前に対象が患っていた不眠症よりも重篤な、アルコール中止に関連する不眠症を患う。
【0124】
別の例では、対象がアルコール乱用前に不眠症を患っている場合があり、その後、対象が不眠症の悪化を含む不眠症型アルコール誘発性睡眠障害を患い始めるようなアルコール使用障害をきたすアルコール乱用に対象が引き込まれ、そしてアルコールを控えた後に対象は、アルコール使用障害を患う前に対象が患っていた不眠症よりも重篤な、アルコール中止に関連する不眠症を患う。
【0125】
アルコール中止に関連する不眠症は一般に、急性離脱期(1~2週間)、早期回復(解毒から2~8週間後)、及び持続的回復(解毒期から3ヶ月以上後)に起こる。急性離脱期において睡眠障害は変化しやすく、解毒期間を経て改善する可能性がある。早期回復期の間は、睡眠関連障害に気分の変化及びアルコール渇望などの軽度の離脱症候が伴うことがあり、最長で5週間続く可能性がある。持続的回復の間は、睡眠関連障害が最長で3年以上続く可能性がある。(例えば、Chakravorty,S.,Chaudhary,N.S.,Brower,K.J.,2016.“Alcohol Dependence and Its Relationship With Insomnia and Other Sleep Disorders.”Alcohol Clin Exp Res.40(11),2271-2282を参照されたい。)
【0126】
短期間(数週間)か長期間(数年)かのどちらかにわたって節制していたアルコール依存症の者でさえ、LPS増加、頻回MOTN覚醒及び低い睡眠の質などの持続的な睡眠異常を患う可能性がある。複数の研究の結果をまとめてBrower 2001は、2~8週間節制していたアルコール依存症の者が、アルコール依存症でない者に比べてより悪い睡眠を呈したと、つまり、TST、SE及び段階N3の睡眠に費やされる時間量が概して顕著に減少した一方で段階N1の睡眠時間が大抵増加しLPSが顕著に増加したと結論付けている。しかも、睡眠異常は最後のアルコール摂取から1~3年間続く可能性がある。例えば、Brower 2001は、しらふ状態を確立した後に睡眠段階変化の増加、短い覚醒及びREM睡眠障害として表れる睡眠断片化が1~3年間続く可能性があると結論付けている。REM睡眠時間の減少は、好ましくない認知的転帰、例えば手順学習の劣りと関連があると理解されている。
【0127】
しかも、アルコールの摂取は、血液から有害物質を濾別し、ホルモン、タンパク質及び酵素などの身体が要求する様々な物質を生産する必須臓器であるヒトの肝臓に損傷を与えることが認識されている。アルコール関連肝疾患(「ALD」)はアルコールの過剰摂取によって引き起こされる。その最も軽度の形態である脂肪症または脂肪肝は、肝細胞内での過度の脂肪蓄積を特徴としており、肝機能をより困難なものにする。脂肪症から発展し得るALDのより重度の形態は慢性か急性かのどちらかのアルコール性肝炎である。それは肝細胞の破壊を伴って肝臓の炎症または腫脹として現れ、肝機能をよりいっそう困難なものにする。過剰なアルコール摂取から発展し得るALDの最も重度の形態はアルコール性肝硬変である。それは、生きていない瘢痕組織による正常肝組織の置換えを特徴としている。アルコール性肝硬変は、関連する重度の肝機能障害ゆえに生命を脅かす疾患となり得る。
【0128】
多くの研究者は、未治療の睡眠障害が節制期間後のアルコール再開の危険性の原因になり得、その妨げられた睡眠が再開の重要な前兆である、と結論付けた(例えば、Arnedt,J.T.,Conroy,D.A.,Brower,K.J.,2007.“Treatment options for sleep disturbances during alcohol recovery.”J Addict Dis.26(4),41-54、Miller,M.B.,Donahue,M.L.,Carey,K.B.,Scott-Sheldon,L.A.J.,2017.“Insomnia treatment in the context of alcohol use disorder:A systematic review and meta-analysis.”Drug and alcohol dependence.181,200-207、Roehrs,T.,Roth,T.,2008“Sleep and quality of life in medical illnesses,”in:Verster,J.C.,Pandi-Perumal,S.R.,Streiner,D.L.(Eds.),Sleep,alcohol,and quality of life.Humana Press,Totowa,NJ,pp.333-339を参照されたい)。急性節制期間後にアルコール依存症患者において評価される睡眠障害の自覚的及び客観的指標、例えば、入眠困難、総睡眠時間の減少及び睡眠効率低下は、より長い節制期間の間の再開の可能性を予言している。(Arnedt et al.,2007、Koob,G.F.,2008.“A role for brain stress systems in addiction.”Neuron.59(1),11-34.、Roehrs,T.,Roth,T.,2017.“Principles and practice of sleep medicine,”in:Kryger,M.H.,Roth,T.,Dement,W.C.(Eds.),Medication and substance abuse.Elsevier,Philadelphia,PA,pp.1380-1389、Roehrs and Roth,2015)。
【0129】
初期の睡眠ポリグラフ研究においてDrummondら(1998)は、原発性アルコール依存症入院患者における14ヶ月目のREM睡眠及びREM潜時での眼球運動密度の持続的に異常な記録がアルコール再開と関連していることを示した。この試験において再開の他の前兆は入眠潜時の増加、SWSの百分率の低下及び睡眠効率の低下であった。これらの研究者は、5ヶ月の節制の後の持続的不眠症及び睡眠断片化が、14ヶ月の継続的節制を経た再開を予言していると判定した。(Drummond,S.P.,Gillin,J.C.,Smith,T.L.,DeModena,A.,1998.“The sleep of abstinent pure primary alcoholic patients:natural course and relationship to relapse.”Alcohol Clin Exp Res.22(8),1796-1802、Kolla,B.P.,Bostwick,J.M.,2011.Insomnia:The neglected component of alcohol recovery.”J Addict Res Ther.2(0e2).)。
【0130】
このように、アルコール使用障害、アルコール依存症、アルコール誘発性睡眠障害及び/またはアルコール中止に関連する睡眠障害または障害(disturbance)、例えば成人不眠症を治療する安全で効果的な医薬品の必要性が満たされないまま残っている。1つの望ましい実施形態では、そのような医薬品は、肝臓が脂肪症、アルコール性肝炎及び/またはアルコール性肝硬変の形態でのアルコール誘発性損傷を被っている場合であっても効果的に機能するであろう。別の望ましい実施形態では、そのような医薬品は、医薬品への嗜癖の顕著な危険性を伴わずに治療的に有効な投薬量で投与されるであろう。
【0131】
5.3 ORL-1発現
ORL-1受容体を発現させることができる細胞を含む組織の例としては、脳、脊髄、輸精管及び消化管組織が挙げられるがこれらに限定されない。ORL-1受容体を発現させる細胞を検査する方法は当技術分野で知られており、例えば、Shimohigashi et al.,“Sensitivity of Opioid Receptor-like Receptor ORL1 for Chemical Modification on Nociceptin,a Naturally Occurring Nociceptive Peptide,”J.Biol.Chem.271(39):23642-23645(1996)、Narita et al.,“Identification of the G-protein Coupled ORL1 Receptor in the Mouse Spinal Cord by[35S]-GTPγS Binding and Immunohistochemistry,”Brit.J.Pharmacol.128:1300-1306(1999)、Milligan,“Principles:Extending the Utility of[35S]GTPγS Binding Assays,”TIPS 24(2):87-90(2003)、及びLazareno,“Measurement of Agonist-stimulated[35S]GTPγS Binding to Cell Membranes,”Methods in Molecular Biology 106:231-245(1999)を参照されたい。
【0132】
哺乳動物種はORL-1受容体発現に差を呈することが知られている。例えば、側坐核及び新線条体では齧歯動物は比較的低いレベルのORL-1受容体発現を有する(Florin et al.,“Autoradiographic localization of[3H]nociceptin binding sites in the rat brain,”Brain Res.880:11-16(2000)、Neal et al.,“Opioid receptor-like(ORL1)receptor distribution in the rat central nervous system:Comparison of ORL1 receptor mRNA expression with 125I-[14Tyr]-orphanin FQ binding,”J.Compar.Neurol.412(4):563-605(1999))。対照的に、サル及びヒトはこれらの領域に中~高レベルの発現を有する(Bridge et al.,“Autoradiographic localization of 125I[14Tyr]nociceptin/orphanin FQ binding sites in Macaque primate CNS,”Neurosci.118:513-523(2003)、Berthele et al.,“[3H]-Nociceptin ligand-binding and nociception opioid receptor mRNA expression in the human brain,”Neurosci.121:629-640(2003))。別の例では、齧歯動物は小胞皮質に比較的低いレベルのORL-1受容体発現を有するが、その一方でサル及びヒトはこれらの領域に中~高レベルの発現を有する。その上、齧歯動物は前頭前皮質(「PFC」)の第I層及び第II層に比較的低いレベルのORL-1の発現を有するが、その一方でヒトはPFCの第I層及び第II層に中~高レベルの発現を有する。このように、上記のような参考文献には上脊髄の注目すべきORL-1発現及びタンパク質局在化の種による差異が開示されているが、これは生理学的な結果であり得る。
【0133】
脳の視床下部の核の1つであるSCNがヒトの睡眠周期の主制御装置であることはよく知られている(Richardson,“The Human Circadian System in Normal and Disordered Sleep,”J.Clin.Psychiatry 66(Suppl.9):3-9(2005))。SCNは、概日リズムと一緒に発火する神経細胞のネットワークで作られている。ORL-1受容体の内因性リガンドであるノシセプチンは、シリアンハムスターの片側のSCN内に注射されると、SCNニューロンの活性及び光に対する概日時計の応答を調節した(Allen et al.,J.Neurosci.19(6):2152-2160(1999))。ORL-1作動薬(W-212393))は、SCNニューロンの律動的発火の抑制によってラットの概日体温リズムの相前進を誘導した(Teshima et al.,Br.J.Pharmacol.146(1):33-40(2005))。これらの参考文献は、脳内のORL-1受容体の調節が概日関連プロセス、例えば睡眠に影響を与え得ることを示している。
【0134】
視床下部の一部が血液脳関門によって部分的にしか保護されていないことも認識されている(De la Torre,J.Neurol.Sci.12(1):77-93(1971))。理論に拘泥することは望まないが、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、ヒトのSCNまたは他の関連する核に到達すること、その中のORL-1受容体を刺激すること、ならびにSCNニューロンまたは他の関連する核の律動的発火パターンの調節によって倦怠感及び/または眠気を生むことができる可能性がある。
【0135】
本開示によれば、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)のいくつかの化合物またはその溶媒和物はヒトORL-1受容体での部分的な作動薬である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物はヒトORL-1受容体での部分的な作動薬であり、ヒトのミュー、カッパ及び/またはデルタオピオイド受容体での拮抗薬である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物はヒトORL-1受容体での部分的な作動薬であり、ヒトμオピオイド受容体での拮抗薬である。
【0136】
5.4 定義
式(I)、(IA)、(IB)、(IC)の化合物及びその溶媒和物ならびにそれらの使用方法に関連して使用する場合、本明細書中で使用する用語は以下の意味を有する。
【0137】
「就床時間」(「TIB」)という用語は、例えば分単位での、意図する睡眠エピソード全体の最初から最後までの持続時間を指す。TIBは固定の持続時間、例えば480分であることが多い。本明細書における目的のためのTIBの開始は「意図する就床時刻」である。
【0138】
「総睡眠時間」(「TST」)という用語は、例えば分単位での、NREM(段階N1~N3の全てを含む)あるいはREM睡眠に費やされる全ての時間エポックの合計を指す。
【0139】
「睡眠効率」(「SE」)という用語は、不眠症の対象において睡眠ポリグラフ検査によって測定され、REM及びNREM睡眠において眠って費やされるTIBの割合を指し、以下の比率として算出される:TST/TIB。あるいは、この比率に100を乗じることによりSEを百分率として表すことができる。SEは夜全体を通した睡眠維持の尺度であり、それゆえ、SEの評価にはとりわけLPSの延長の評価及び/またはWASOの延長の評価も含まれる。
【0140】
「持続睡眠潜時」(「LPS」)という用語は、TIBの開始から、任意の睡眠段階の中の少なくとも10分の途切れない睡眠エポックの期間の始まりまでの、例えば分単位での時間を指す。LPSは入眠する「速さ」の尺度である。
【0141】
「睡眠中覚醒」(「WDS」)という用語は、TIB中の持続的睡眠(任意の睡眠段階の継続する少なくとも10分の睡眠エポックとして定義される)の開始後、かつ(任意の睡眠段階の)睡眠の最終エポックの開始前に起こる、覚醒して費やされるエポックの例えば分単位での合計時間を指す。
【0142】
「睡眠後覚醒」(「WAS」)という用語は、(任意の睡眠段階の)最終睡眠エポックの終結後にTIBの最後までに覚醒して費やされる時間の、例えば分単位での持続時間を指す。
【0143】
「中途覚醒」(「WASO」)という用語は、WDSとWASとの合計を指す。WASOは夜全体を通した睡眠維持の別の尺度である。
【0144】
「覚醒回数」(「NAW」)という用語は、持続的睡眠の開始後での、30秒を上回る期間にわたる覚醒が起こる回数を指す。
【0145】
「REM潜時」という用語は、TIBの開始からREM睡眠の最初のエポックの開始までの、例えば分単位での時間を指す。
【0146】
「動物」という用語は、限定されないが、ヒト、または非ヒト哺乳動物、例えば伴侶動物もしくは家畜、例えば、ウシ、サル、ヒヒ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギもしくはモルモットを含む。一実施形態では、動物はヒトである。
【0147】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書中で使用される場合、酸と、化合物の窒素基などの塩基性官能基とから形成される塩を含めた、化合物から調製され得る任意の薬学的に許容される塩である。例示的な塩としては、限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucoronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸))塩が挙げられる。「薬学的に許容される塩」という用語には、カルボン酸官能基などの酸性官能基を有する化合物と、薬学的に許容される無機または有機塩基とから調製される塩も含まれる。好適な塩基としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、セシウム及びリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニア及び有機アミン、例えば、無置換またはヒドロキシ置換モノ-、ジ-またはトリアルキルアミン、例えば、N-メチル-N-エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、(tert-ブチルアミノ)メタノール、及びトリス-(ヒドロキシメチル)アミン;ジシクロヘキシルアミン;ピリジン;ピコリン;モノ-、ビス-またはトリス-(2-ヒドロキシ-(C1-C3)アルキルアミン)、例えば、モノ-、ビス-またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、及びN,N-ジ-[(C1-C3)アルキル]-N-(ヒドロキシ-(C1-C3)アルキル)-アミン、例えば、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン;アミノ酸、例えばアルギニン及びリジン;アミノ酸誘導体、例えば、コリン(すなわち、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム)、アミノ酸セリンの誘導体などが挙げられる。一実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩、硫酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩またはフマル酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は塩酸塩または硫酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は塩酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は硫酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩はナトリウム塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩はカリウム塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩はフマル酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩はパラトルエンスルホン酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩はコリン塩である。
【0148】
「付随的療法」という用語は、あらゆる(市販の(OTC))医薬品及び/または処方薬、手順、及び式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物を投与するのに適切な期間中に対象を治療するために用いられる重要な非薬理学的療法を含めたものとして定義される。一実施形態では、付随的療法は、アルコール使用障害を治療または予防するための薬剤を含み得る。
【0149】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、1当量の式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物の遊離塩基、すなわち、パラトルエンスルホン酸が存在しないそれぞれ式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物と、約1.0当量のパラトルエンスルホン酸、例えば、一実施形態において約0.8~約1.2当量のパラトルエンスルホン酸、または他の実施形態において約0.9~約1.1当量、約0.93~約1.07当量、約0.95~約1.05当量、約0.98~約1.02当量もしくは約0.99~約1.01当量のパラトルエンスルホン酸とを含有する。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、1.0当量の式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物の遊離塩基と、1.0当量のパラトルエンスルホン酸とを含有する、つまり、モノトシレート塩である。
【0150】
本明細書において提供される本開示の方法は、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物の任意の溶媒和物の使用も包含する。「溶媒和物」は、当技術分野で一般的に知られており、本明細書では式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物と溶媒分子との組合せ、物理的会合及び/または溶媒和であるとみなされる。この物理的会合は、水素結合を含めたイオン結合及び共有結合の度合いを変化させることを伴い得る。溶媒和物が化学量論型である場合、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物に対する溶媒分子の固定の比率、例えば、[溶媒分子]:[式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物]のモル比が2:1、1:1または1:2であるときにそれぞれ二溶媒和物、一溶媒和物または半溶媒和物が存在する。他の実施形態では、溶媒和物は非化学量論型である。例えば、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物の結晶は、結晶格子の構造空隙、例えばチャネルの中に溶媒分子を含有し得る。場合によっては、溶媒和物は、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶固体の結晶格子の中に組み込まれている場合に、単離され得る。このように、「溶媒和物」は、本明細書中で使用される場合、液相の溶媒和物と単離可能な溶媒和物との両方を包含する。
【0151】
本開示の式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどといった薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態として存在し得、本開示には、式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物の溶媒和及び非溶媒和形態が両方とも含まれることが意図される。「水和物」は、溶媒和物の特定の小群、つまり、溶媒分子が水である場合に関するため、水和物は本開示の溶媒和物のうちに含まれる。一実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、例えば水:[式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物]のモル比が約1:1、例えば一実施形態において0.91:1~1.09:1、または他の実施形態において0.94:1~1.06:1、0.97:1~1.03:1もしくは0.985:1~1.015:1であるときに一水和物として存在し、上記実施形態の各々は、場合によって存在することがある表面水を考慮に入れていない。
【0152】
溶媒和物は、本開示に鑑みて既知の技術に従って作られ得る。例えば、Caira et al.,“Preparation and Crystal Characterization of a Polymorph,a Mono-hydrate,and an Ethyl Acetate Solvate of the Antifungal Fluconazole,”J.Pharmaceut.Sci.,93(3):601-611(2004)には、フルコナゾールの酢酸エチル及び水との溶媒和物の調製について記載されている。類似した溶媒和物、半溶媒和物、水和物などの調製については、Van Tonder et al.,“Preparation and Physicochemical Characterization of 5 Niclosamide Solvates and 1 Hemisolvate,”AAPS Pharm.Sci.Tech.,5(1):Article 12(2004)、及びBingham et al.,“Over one hundred solvates of sulfathiazole,”Chem.Comm.,pp.603-604(2001)によって記載されている。一実施形態では、非限定的なプロセスは、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物を約20℃超~約25℃の温度で所望の量の溶媒(有機、水またはその混合物)に溶解させ、溶液を十分な速度で冷却して結晶を形成し、結晶を既知の方法、例えば濾過によって単離することを伴う。溶媒和物の結晶の中に溶媒が存在することは、分析技術、例えば赤外分光法を用いて示され得る。
【0153】
式(I)、(IA)もしくは(IB)の化合物またはその溶媒和物は、1つ以上の不斉中心を含有し得、したがってエナンチオマー、ジアステレオマー及び他の立体異性体形態を生じさせ得る。特に具体的に示されていない限り、本開示は、あらゆるそのようなあり得る形態を有する化合物ならびにそれらのラセミ体及び分割された形態、ならびにそのあらゆる混合物を包含する。特に具体的に示されていない限り、あらゆる「互変異性体」、例えば、ラクタム-ラクチム、尿素-イソ尿素、ケトン-エノール、アミド-イミド酸、エナミン-イミン、アミン-イミン、及びエナミン-エンイミン互変異性体も本開示に包含することを意図する。
【0154】
本明細書中で使用する場合、「立体異性体」、「立体異性体形態」という用語、及び本明細書中で使用される関連する用語は、空間中の原子の配向のみが異なっている個々の分子のあらゆる異性体に対する一般用語である。それには、互いの鏡像(「ジアステレオマー」)でない、1つより多いキラル中心を有する化合物のエナンチオマー及び異性体が含まれる。
【0155】
「キラル中心」という用語は、4つの異なる基が結合している炭素原子を指す。
【0156】
「エナンチオマー」または「エナンチオマーの」という用語は、鏡像と重ね合わさることができない分子、よって、エナンチオマーが偏光面を一方向に回転させその鏡像が偏光面を反対方向に回転させる場合での光学活性である分子を指す。
【0157】
「ラセミ」という用語は、光学的に不活性である、等しい量でのエナンチオマーの混合物を指す。
【0158】
「分割」という用語は、分子の2つのエナンチオマー形態のうちの1つの分離または濃縮または除去を指す。式(I)、(IA)または(IB)の化合物の光学異性体は、キラルクロマトグラフィー、または光学活性な酸もしくは塩基からのジアステレオマー塩の形成などの既知の技術によって得ることができる。
【0159】
光学純度は、鏡像体過剰率(「%ee」)及び/またはジアステレオマー過剰率(%de)の用語で記され得、これらは各々、以下の適切な式で決定される:
【数1】
【0160】
「有効量」という用語は、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を投与することによって睡眠障害を治療または予防する方法に関連して使用される場合、動物に投与される化合物の、治療的効能をもたらす量を指す。
【0161】
「有効量」という用語は、第2の治療剤に関連して使用される場合、第2の治療剤の治療的効能をもたらすための量を意味する。
【0162】
「調節する」、「調節すること」という用語、及びORL-1受容体に関して本明細書中で使用される関連する用語は、(i)受容体を抑制または活性化すること、または(ii)受容体活性の正常な調整に直接もしくは間接的に影響を及ぼすことによる、動物における薬力学的応答(例えば成人不眠症)の媒介を意味する。受容体活性を調節する化合物としては、作動薬、部分作動薬、拮抗薬、混合作動薬/拮抗薬、混合部分作動薬/拮抗薬、及び受容体活性の調整に直接または間接的に影響を及ぼす化合物が挙げられる。
【0163】
本明細書中で使用する場合、内因性リガンドの調整作用(複数可)を模倣した、受容体に結合する化合物は、「作動薬」として定義される。本明細書中で使用する場合、作動薬として部分的にしか有効でない、受容体に結合する化合物は、「部分作動薬」として定義される。本明細書中で使用する場合、受容体には結合するが、調整作用を生むのではなく別の薬剤が受容体に結合するのを遮断する化合物は、「拮抗薬」として定義される。(Ross et al.,“Pharmacodynamics:Mechanisms of Drug Action and the Relationship Between Drug Concentration and Effect,”in Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics pp.31-43(Goodman et al.,eds.,10th Ed.,McGraw-Hill,New York 2001)を参照のこと)。
【0164】
「の治療」、「治療すること」という用語、及び本明細書中で使用される関連する用語には、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の投与による障害またはその症候の改善、軽減、減速または停止が含まれる。いくつかの実施形態では、治療することには、障害もしくはその症候のエピソードを抑制すること、例えばその全体的な頻度を減少させること、または障害もしくはその症候の重症度を低減することが含まれる。
【0165】
「の予防」、「予防すること」という用語、及び本明細書中で使用される関連する用語には、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の投与による障害またはその症候の発症の回避が含まれる。
【0166】
「障害」は、限定されないが、本明細書中で定義される障害を含む。一実施形態では、障害は、睡眠不足のもしくは睡眠不足に起因する障害もしくは症候、または入眠困難もしくは睡眠持続困難、例えば不眠症障害に関する。
【0167】
投与される「用量」、「投薬量」、及び本明細書中で使用される関連する用語の、重量表示での量は、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物の遊離酸及び遊離塩基の形態、すなわち非塩形態を指す。例えば、式(IC)の化合物すなわちモノトシレート塩(モル表示でパラトルエンスルホン酸:式(IC)の化合物の遊離塩基が1:1である)の10.00mg用量は、実際には13.93mgの上記化合物が投与されることを意味し、この13.93mgは、10.00mgの非塩形態の式(IC)の化合物(0.0229ミリモル)と3.93mgのパラトルエンスルホン酸(0.0229ミリモル)を提供する。同様に、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物の溶媒和物を投与する場合、投与される「用量」、「投薬量」、及び本明細書中で使用される関連する用語の、重量表示での量は、式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物の遊離酸、遊離塩基及び非溶媒和形態を指す。例えば、式(IC)の化合物の二水和物の10.00mg用量は、実際には14.75mgの上記化合物が投与されることを意味し、この14.75mgは、10.00mgの非塩形態の式(IC)の化合物(0.0229ミリモル)と3.93mgのパラトルエンスルホン酸(0.0229ミリモル)と0.82mgの水(0.0458)を提供する。
【0168】
「UI」という用語は尿失禁を意味する。「IBD」という用語は炎症性腸疾患を意味する。「IBS」という用語は過敏性腸症候群を意味する。「ALS」という用語は筋萎縮性側索硬化症を意味する。
【0169】
本明細書中で使用される「SD」という用語は標準偏差を意味する。本明細書中で使用される「LSM」という用語は最小二乗平均を意味する。本明細書中で使用される「STDE」という用語は標準誤差を意味する。
【0170】
本明細書中で使用される「N/A」という用語は、該当なしという意味である。
【0171】
描写される化学構造と化学名との一致に関して疑義が生じる場合は、化学名を優先する。
【0172】
本明細書中で特に具体的に除外されていない限り、明瞭さのために別個の実施形態の文脈の中で記載されている本開示の様々な特徴が単一の実施形態において組み合わさってもたらされることもあることは認識される。反対に、本明細書中で特に具体的に除外されていない限り、簡潔さのために単一の実施形態の文脈の中で記載されている本開示の様々な特徴は、別々に及び/または任意の好適な部分的組合せでもたらされることもある。
【0173】
5.5 式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物の治療的/予防的用途
本開示によれば、式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物は、不眠症障害の治療または予防を必要とする動物に投与される。特定の実施形態では、動物はヒトである。
【0174】
一実施形態では、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を使用して、ORL-1受容体の活性を調節することによる治療または予防が可能な睡眠障害を治療または予防することができる。
【0175】
有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、不眠症、例えば、「成人」不眠症、小児不眠症及び中途覚醒型不眠症;過眠症、例えば睡眠不足症候群;概日リズム睡眠覚醒障害、例えば、睡眠覚醒相後退、睡眠覚醒相前進、不規則型睡眠覚醒リズム、非24時間型睡眠覚醒リズム、交代勤務症候群及び時差ぼけ;またはその任意の組合せを含むがそれらに限定されない睡眠障害を治療または予防するために使用され得る。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物で治療または予防することができる他の睡眠障害としては、この節の中で未だ言及されていないタイプの睡眠異常症、食物アレルギー性不眠症、アルコール依存症型睡眠障害及び/またはアルコール誘発性睡眠障害が挙げられる。
【0176】
一実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物を、アルコール中止に関連する不眠症の治療または予防を必要とする動物に投与する。特定の実施形態では、動物はヒトである。
【0177】
本開示はまた、細胞におけるORL-1受容体機能を活性化させる方法であって、細胞におけるORL-1受容体機能を活性化させるのに有効な量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物に、ORL-1受容体を発現させることができる細胞を接触させることを含む、当該方法に関する。この方法を、睡眠障害を治療または予防するのに有用な化合物を選択するアッセイの一部として試験管内での用途に適合させることができる。あるいは、この方法を、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物に動物の中の細胞を接触させることによって生体内での(すなわち、ヒトなどの動物での)用途に適合させることができる。一実施形態では、方法は、睡眠障害の治療または予防を、そのような治療または予防を必要とする動物において行うのに有用である。
【0178】
5.6 治療的/予防的投与及び本開示の組成物
式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物は、それらの活性ゆえに、ヒト医学及び獣医学において有益に有用である。上記のとおり、式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物は、不眠症障害の治療または予防を、それを必要とする動物において行うのに有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物は、不眠症障害の治療を、それを必要とする動物において行うのに有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物は、不眠症障害の予防を、それを必要とする動物において行うのに有用である。別の実施形態では、本開示の式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物は、オピオイド及び/またはORL-1受容体の調節を必要とする任意の動物に投与され得る。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)及び(IC)の化合物またはその溶媒和物は、アルコール中止に関連する不眠症の治療を、それを必要とする動物において行うのに有用である。
【0179】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、動物に投与される場合、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物の構成成分として投与され得る。
【0180】
投与方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、非経口、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、経粘膜、頬側、歯肉、舌下、眼内、脳内、膣内、(例えばパッチによる)経皮、直腸内、吸入によるもの、または局所、特に、耳、鼻、目もしくは皮膚へのものが挙げられる。別の実施形態では、投与方法は、限定されないが、静脈内、経口または吸入によるものを含む。別の実施形態では、投与方法は、経口、非経口、静脈内、筋肉内、眼内、経皮または経粘膜である。別の実施形態では、投与方法は経口である。別の実施形態では、投与方法は、頬側、歯肉、舌下、または丸ごと飲み込む経口剤形によるものである。別の実施形態では、投与方法は、丸ごと飲み込む経口剤形によるものである。別の実施形態では、投与方法は静脈内である。別の実施形態では、投与方法は、吸入によるものである。投与方法は実施者の裁量に任せられる。ある場合には、投与の結果として式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物が血流中に放出されることになる。他の場合には、投与の結果として式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物が局所にのみ放出されることになる。
【0181】
特定の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を、脳室内、クモ膜下腔内もしくは硬膜外注射または浣腸を含めた任意の好適な経路によって中枢神経系内または消化管内に導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、リザーバー、例えばオンマイヤリザーバーなどの貯留層に取り付けられた脳室カテーテルによって進められ得る。
【0182】
肺投与を、例えば、吸入器もしくはネブライザーの使用、及びエアゾール化剤との製剤化によって、またはフッ化炭素もしくは合成肺用界面活性剤での灌流によって採用することもできる。特定の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、従来の結合剤及び賦形剤、例えばトリグリセライドを使用して坐剤として製剤化され得る。
【0183】
本開示の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を注射(例えば、連続輸注またはボーラス注射)による非経口投与のために組み込む場合、非経口投与用の製剤は、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中の乳剤の形態にあり得る。そのような製剤は、薬学的に必要な添加剤、例えば、1つ以上の安定化剤、懸濁化剤、分散剤、緩衝液などをさらに含み得る。本開示の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、注射製剤としての再構成のための粉末の形態にあることもできる。
【0184】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を小胞、特にリポソームの中に入れて送達することができる(Langer,“New Methods of Drug Delivery,”Science 249:1527-1533(1990)、及びTreat et al.,“Liposome Encapsulated Doxorubicin Preliminary Results of Phase I and Phase II Trials,”pp.317-327 and 353-365 in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer(1989)を参照のこと)。
【0185】
さらに別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を制御放出システムまたは持続放出システムで送達することができる。制御放出性または持続放出性医薬組成物は、薬物療法を、それらの非制御放出性または非持続放出性対応物によって達成されるものに比べて改善する、という共通の目的を有し得る。一実施形態では、制御放出性または持続放出性組成物は、長期の時間において不眠症障害またはその症候を治療または防止するための最小量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む。制御放出性または持続放出性組成物の利点としては、薬物の長期にわたる活性、低減された投薬頻度、及び服薬順守の向上が挙げられる。加えて、制御放出性または持続放出性組成物は、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の作用開始時刻または他の特性、例えば血中レベルに好ましい影響を与えることができ、したがって、有害な副作用の出現を軽減することができる。
【0186】
制御放出性または持続放出性組成物は、最初は、迅速に所望の治療効果または予防効果を生む量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を例えば実に即座に放出することができ、そして徐々に連続的に他の量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を放出して長期間にわたってこのレベルの治療効果または予防効果を維持することができる。体内で式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の定常的なレベルを維持すべく、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、代謝され体から排出される式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の量に取って代わることになる速度で剤形から放出され得る。活性成分の制御放出または持続放出は、pHの変化、温度の変化、酵素の濃度もしくは利用能、水の濃度もしくは利用能または他の生理的条件もしくは化合物を含むがこれらに限定されない様々な条件によって刺激され得る。さらに別の実施形態では、制御または持続放出システムは、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の標的、例えば脊柱または脳の近傍に配置されることができ、それゆえ、全身用量のほんの一部しか必要としない。
【0187】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の投与は、制御放出的もしくは持続放出的手段によるもの、または当業者に知られている送達装置によるものであり得る。例としては、限定されないが、米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号及び第5,733,566号に記載されているものが挙げられ、参照によりそれらの各々を本明細書に援用する。当業者に知られている他の幾多の制御放出性または持続放出性送達装置(例えば、Goodson,“Dental Applications,”in Medical Applications of Controlled Release,Vol.2,Applications and Evaluation,Langer and Wise,eds.,CRC Press,Chapter 6,pp.115-138(1984)、以下「Goodson」を参照されたい)。Langer,Science 249:1527-1533(1990)による総説に考察されている他の制御または持続放出システムを使用することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,Science 249:1527-1533(1990)、Sefton,“Implantable Pumps,”in CRC Crit.Rev.Biomed.Eng.14(3):201-240(1987)、Buchwald et al.,“Long-term,Continuous Intravenous Heparin Administration by an Implantable Infusion Pump in Ambulatory Patients with Recurrent Venous Thrombosis,”Surgery 88:507-516(1980)、及びSaudek et al.,“A Preliminary Trial of the Programmable Implantable Medication System for Insulin Delivery,”New Engl.J.Med.321:574-579(1989))。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Goodson、Smolen et al.,“Drug Product Design and Performance,”Controlled Drug Bioavailability Vol.1,John Wiley and Sons,New York(1984)、Langer et al.,“Chemical and Physical Structure of Polymers as Carriers for Controlled Release of Bioactive Agents:A Review,”J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.C23(1):61-126(1983)、Levy et al.,“Inhibition of Calcification of Bioprosthetic Heart Valves by Local Controlled-Release Diphosphonate,”Science 228:190-192(1985)、During et al.,“Controlled Release of Dopamine from a Polymeric Brain Implant:In Vivo Characterization,”Ann.Neurol.25:351-356(1989)、及びHoward et al.,“Intracerebral drug delivery in rats with lesion-induced memory deficits,”J.Neurosurg.71:105-112(1989)を参照のこと)。
【0188】
そのような剤形は、様々な均衡で所望の放出プロファイルを提供するための例えばヒドロプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、浸透膜、浸透圧システム、多層コーティング、マイクロ粒子、多粒子、リポソーム、マイクロスフェアまたはその組合せを使用して1つ以上の活性成分の制御放出または持続放出を提供するために使用され得る。当業者に知られている好適な制御放出または持続放出製剤は、本明細書に記載のものを含めて、本開示の活性成分と一緒に使用するために容易に選択され得る。したがって、本開示は、限定されないが制御放出または持続放出に適合した錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤及びカプレット剤などの、経口投与に適した単回単位剤形を包含する。
【0189】
組成物は、任意選択ではあるが好ましくは、動物への適切な投与のための形態を提供するための好適な量の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。そのような薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤、懸濁化剤、可溶化剤、結合剤、崩壊剤、保存剤、着色剤、潤滑剤などであり得る。医薬品賦形剤は、液体、例えば、水または油、例えば、石油、動物、植物もしくは合成に由来するもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。医薬品賦形剤は、生理食塩水、アラビアガム、ゼラチン、澱粉ペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。加えて、助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤が使用され得る。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、動物に投与される場合、滅菌されている。水は、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を静脈内に投与する場合に特に有用な賦形剤である。生理食塩水ならびに、デキストロース及びグリセロール水溶液も、液体賦形剤として、特に注射液のために採用され得る。好適な医薬品賦形剤には、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなども含まれる。所望により、組成物はさらに少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有し得る。経口剤形を製剤化するために使用され得る薬学的に許容される担体及び賦形剤の具体例は、参照により本明細書に援用されるHandbook of Pharmaceutical Excipients,(Amer.Pharmaceutical Ass’n,Washington,DC,1986)に記載されている。好適な医薬品賦形剤の他の例は、参照により本明細書に援用されるRadebough et al.,“Preformulation,”pp.1447-1676 in Remington’s Pharmaceutical Sciences Vol.2(Gennaro,ed.,19th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1995)によって記載されている。
【0190】
組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、例えば口腔内崩壊錠(ODT)、舌下錠、または丸ごと飲み込む錠剤、丸剤、小丸剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、持続放出性製剤、坐剤、乳剤、エアゾール剤、スプレー剤、懸濁液、マイクロ粒子、多粒子、即溶性フィルムの形態、または経口もしくは粘膜投与のための他の形態、または使用に適した任意の他の形態をとり得る。一実施形態では、組成物はODTの形態にある(例えば、米国特許第7,749,533号及び第9,241,910号を参照されたい)。別の実施形態では、組成物は舌下錠の形態にある(例えば、米国特許第6,572,891号及び第9,308,175号を参照されたい)。別の実施形態では、組成物はカプセル剤の形態にある(例えば、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。別の実施形態では、組成物は、従来の方法で製剤化された、例えば錠剤、口内錠、ゲル、パッチまたはフィルムとしての、頬側投与に適した形態にある(例えば、Pather et al.,“Current status and the future of buccal drug delivery systems,”Expert Opin.Drug Deliv.5(5):531-542(2008)を参照されたい)。別の実施形態では、組成物は、Padula et al.,“In Vitro Evaluation of Mucoadhesive Films for Gingival Administration of Lidocaine,”AAPS PharmSciTech 14(4):1279-1283(2013)に開示されているような、例えばポリビニルアルコール、キトサン、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルセルロースまたはEudragit S-100を含むポリマーフィルムとしての、歯肉投与に適した形態にある。別の実施形態では、組成物は、丸ごと飲み込む経口剤形の形態にある。別の実施形態では、組成物は、眼内投与に適した形態にある。
【0191】
一実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、慣例的な手順に従って、人間への経口投与に適合する組成物として製剤化される。経口送達される式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、例えば、錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、カプレット剤、口内錠、水性もしくは油性溶液、懸濁液、顆粒剤、マイクロ粒子、多粒子、散剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤の形態にあり得る。経口剤形は、丸ごと飲み込む経口剤形、例えば、錠剤、カプセル剤またはゲルキャップ剤であり得る。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を経口錠剤に組み込む場合、そのような錠剤は、圧縮、湿式打錠、腸溶性コーティング、糖コーティング、フィルムコーティング、多重圧縮または多重積層がなされたものであり得る。固体経口剤形を作るための技術及び組成物は、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Lieberman et al.,eds.,2nd Ed.,Marcel Dekker,Inc.,1989 and 1990)に記載されている。(圧縮及び成型された)錠剤、(硬及び軟ゼラチン)カプセル剤、及び丸剤を作るための技術及び組成物も、King,“Tablets,Capsules,and Pills,”pp.1553-1593 in Remington’s Pharmaceutical Sciences(Osol,ed.,16th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1980)によって記載されている。
【0192】
液体経口剤形としては、1つ以上の好適な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味剤、着色剤、香味剤などを任意選択的に含有する、水溶液及び非水溶液、乳剤、懸濁液、ならびに非発泡性顆粒から再構成される溶液及び/または懸濁液が挙げられる。液体経口剤形を作るための技術及び組成物は、Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems(Lieberman et al.,eds.,2nd Ed.,Marcel Dekker,Inc.,1996 and 1998)に記載されている。
【0193】
経口投与される式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、1つ以上の薬剤、例えば、甘味剤、例えば、フルクトース、アスパルテームまたはサッカリン;香味剤、例えば、ペパーミント、ウィンターグリーンまたはチェリーの油;着色剤;及び保存剤を含有して薬学的嗜好性配合物を提供し得る。さらに、錠剤または丸剤の形態にある場合、組成物をコーティングして消化管内での崩壊及び吸収を遅延させることができ、それによって長期間にわたって持続的作用を提供することができる。浸透圧活性推進化合物を包む選択透過膜も、経口投与される組成物に適している。これらの後者の基盤においては、カプセル剤を取り囲む環境からの流体が推進化合物によって吸収され、これが膨張して開口部から薬剤または薬剤組成物を追い出す。これらの送達基盤は、即放性製剤の急な山形のプロファイルと対照的に本質的にゼロ次の送達プロファイルを提供することができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延物質を使用することもできる。経口組成物は、標準的な賦形剤、例えば、マンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース及び炭酸マグネシウムを含み得る。一実施形態では、賦形剤は医薬品グレードのものである。
【0194】
式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を非経口注射する場合、それは、例えば、等張無菌溶液の形態にあり得る。あるいは、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を吸入されるものとする場合には、それは、乾燥エアゾール剤として製剤化され得るかまたは、水性または部分的に水性の溶液として製剤化され得る。
【0195】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、静脈内投与のために製剤化され得る。特定の実施形態では、静脈内投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝液を含む。必要な場合には、組成物はさらに、可溶化剤を含み得る。静脈内投与のための式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、任意選択的に、注射部位の疼痛を減らすための局所麻酔剤、例えばベンゾカインまたはプリロカインを含み得る。一般に原料は、別個に、あるいは混合されて、単位剤形で、例えば乾燥した凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として、活性剤の量を表示したアンプルまたは小袋などの気密容器に入って供給される。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を輸注によって投与する場合、それは例えば、無菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含有する輸注ボトルによって分注され得る。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を注射によって投与する場合、投与前に原料を混合することができるように無菌注射用水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0196】
不眠症障害の治療または予防に有効な式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の量は、標準的な臨床技法によって決定され得る。加えて、試験管内及び/または生体内でのアッセイを任意選択的に採用して最適な用量範囲の同定に役立てることができる。採用される厳密な用量は、例えば、投与経路、及び不眠症障害の重篤度によっても決まるであろうし、実施者の判断及び/または各動物の状況に応じて決められ得る。他のそれの例では、数ある中でも、治療する動物の体重及び体調(例えば肝及び腎機能)、治療する障害、症候の重症度、投薬間隔の頻度、何らかの有害な副作用の存在、及び使用する特定の化合物に応じて、変更を行う必要があるであろう。
【0197】
一実施形態では、1日用量としてヒトに投与される式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の好適な有効用量は約0.16mg~約8.0mgである。他の実施形態では、1日用量としてヒトに投与される式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の好適な有効用量は、約0.2mg~約8.0mg、約0.2mg~約7.0mg、約0.2mg~約6.0mg、約0.2mg~約5.5mg、約0.2mg~約5.0mg、約0.2mg~約4.5mg、約0.2mg~約4.0mg、約0.2mg~約3.5mg、約0.2mg~約3.0mg、約0.2mg~約2.5mg、約0.2mg~約2.0mg、約0.2mg~約1.8mg、約0.2mg~約1.6mg、約0.2mg~約1.5mg、約0.2mg~約1.4mg、約0.2mg~約1.3mg、約0.2mg~約1.2mg、約0.2mg~約1.1mg、約0.2mg~約1.0mg、0.25mg~約8.0mg、約0.25mg~約7.0mg、約0.25mg~約6.0mg、約0.25mg~約5.5mg、約0.25mg~約5.0mg、約0.25mg~約4.5mg、約0.25mg~約4.0mg、約0.25mg~約3.5mg、約0.25mg~約3.0mg、約0.25mg~約2.5mg、約0.25mg~約2.0mg、約0.25mg~約1.8mg、約0.25mg~約1.6mg、約0.25mg~約1.5mg、約0.25mg~約1.4mg、約0.25mg~約1.3mg、約0.25mg~約1.2mg、約0.25mg~約1.1mg、約0.25mg~約1.0mg、約0.3mg~約8.0mg、約0.3mg~約7.0mg、約0.3mg~約6.0mg、約0.3mg~約5.5mg、約0.3mg~約5.0mg、約0.3mg~約4.5mg、約0.3mg~約4.0mg、約0.3mg~約3.5mg、約0.3mg~約3.0mg、約0.3mg~約2.5mg、約0.3mg~約2.0mg、約0.3mg~約1.8mg、約0.3mg~約1.6mg、約0.3mg~約1.5mg、約0.3mg~約1.4mg、約0.3mg~約1.3mg、約0.3mg~約1.2mg、約0.3mg~約1.1mg、約0.3mg~約1.0mg、約0.33mg~約8.0mg、約0.33mg~約7.0mg、約0.33mg~約6.0mg、約0.33mg~約5.5mg、約0.33mg~約5.0mg、約0.33mg~約4.5mg、約0.33mg~約4.0mg、約0.33mg~約3.5mg、約0.33mg~約3.0mg、約0.33mg~約2.5mg、約0.33mg~約2.0mg、約0.33mg~約1.8mg、約0.33mg~約1.6mg、約0.33mg~約1.5mg、約0.33mg~約1.4mg、約0.33mg~約1.3mg、約0.33mg~約1.2mg、約0.33mg~約1.1mg、約0.33mg~約1.0mg、約0.35mg~約8.0mg、約0.35mg~約7.0mg、約0.35mg~約6.0mg、約0.35mg~約5.5mg、約0.35mg~約5.0mg、約0.35mg~約4.5mg、約0.35mg~約4.0mg、約0.35mg~約3.5mg、約0.35mg~約3.0mg、約0.35mg~約2.5mg、約0.35mg~約2.0mg、約0.35mg~約1.8mg、約0.35mg~約1.6mg、約0.35mg~約1.5mg、約0.35mg~約1.4mg、約0.35mg~約1.3mg、約0.35mg~約1.2mg、約0.35mg~約1.1mg、約0.35mg~約1.0mg、約0.4mg~約8.0mg、約0.4mg~約7.0mg、約0.4mg~約6.0mg、約0.4mg~約5.5mg、約0.4mg~約5.0mg、約0.4mg~約4.5mg、約0.4mg~約4.0mg、約0.4mg~約3.5mg、約0.4mg~約3.0mg、約0.4mg~約2.5mg、約0.4mg~約2.0mg、約0.4mg~約1.8mg、約0.4mg~約1.6mg、約0.4mg~約1.5mg、約0.4mg~約1.4mg、約0.4mg~約1.3mg、約0.4mg~約1.2mg、約0.4mg~約1.1mg、約0.4mg~約1.0mg、約0.45mg~約6.0mg、約0.45mg~約5.5mg、約0.45mg~約5.0mg、約0.45mg~約4.5mg、約0.45mg~約4.0mg、約0.45mg~約3.5mg、約0.45mg~約3.0mg、約0.45mg~約2.5mg、約0.45mg~約2.0mg、約0.45mg~約1.8mg、約0.45mg~約1.6mg、約0.45mg~約1.5mg、約0.45mg~約1.4mg、約0.45mg~約1.3mg、約0.45mg~約1.2mg、約0.45mg~約1.1mg、約0.45mg~約1.0mg、約0.46mg~約6.0mg、約0.46mg~約5.5mg、約0.46mg~約5.0mg、約0.46mg~約4.5mg、約0.46mg~約4.0mg、約0.46mg~約3.5mg、約0.46mg~約3.0mg、約0.46mg~約2.5mg、約0.46mg~約2.0mg、約0.46mg~約1.8mg、約0.46mg~約1.6mg、約0.46mg~約1.5mg、約0.46mg~約1.4mg、約0.46mg~約1.3mg、約0.46mg~約1.2mg、約0.46mg~約1.1mg、約0.46mg~約1.0mg、約0.47mg~約6.0mg、約0.47mg~約5.5mg、約0.47mg~約5.0mg、約0.47mg~約4.5mg、約0.47mg~約4.0mg、約0.47mg~約3.5mg、約0.47mg~約3.0mg、約0.47mg~約2.5mg、約0.47mg~約2.0mg、約0.47mg~約1.8mg、約0.47mg~約1.6mg、約0.47mg~約1.5mg、約0.47mg~約1.4mg、約0.47mg~約1.3mg、約0.47mg~約1.2mg、約0.47mg~約1.1mg、約0.47mg~約1.0mg、約0.48mg~約6.0mg、約0.48mg~約5.5mg、約0.48mg~約5.0mg、約0.48mg~約4.5mg、約0.48mg~約4.0mg、約0.48mg~約3.5mg、約0.48mg~約3.0mg、約0.48mg~約2.5mg、約0.48mg~約2.0mg、約0.48mg~約1.8mg、約0.48mg~約1.6mg、約0.48mg~約1.5mg、約0.48mg~約1.4mg、約0.48mg~約1.3mg、約0.48mg~約1.2mg、約0.48mg~約1.1mg、約0.48mg~約1.0mg、約0.49mg~約6.0mg、約0.49mg~約5.5mg、約0.49mg~約5.0mg、約0.49mg~約4.5mg、約0.49mg~約4.0mg、約0.49mg~約3.5mg、約0.49mg~約3.0mg、約0.49mg~約2.5mg、約0.49mg~約2.0mg、約0.49mg~約1.8mg、約0.49mg~約1.6mg、約0.49mg~約1.5mg、約0.49mg~約1.4mg、約0.49mg~約1.3mg、約0.49mg~約1.2mg、約0.49mg~約1.1mg、約0.49mg~約1.0mg、約0.5mg~約6.0mg、約0.5mg~約5.5mg、約0.5mg~約5.0mg、約0.5mg~約4.5mg、約0.5mg~約4.0mg、約0.5mg~約3.5mg、約0.5mg~約3.0mg、約0.5mg~約2.5mg、約0.5mg~約2.0mg、約0.5mg~約1.8mg、約0.5mg~約1.6mg、約0.5mg~約1.5mg、約0.5mg~約1.4mg、約0.5mg~約1.3mg、約0.5mg~約1.2mg、約0.5mg~約1.1mg、または約0.5mg~約1.0mgである。これらの実施形態のいずれかにおいて、1日用量は、任意選択的に、単回1日用量である。これらの実施形態のいずれかにおいて、1日用量は、任意選択的に、分割1日用量であり、例えば、上記用量のいずれかの67%、60%、50%、40%または33%を、意図する就床時刻の前に投与し、残りのそれぞれ33%、40%、50%、60%または67%を後に1日期間中に、例えば、中途覚醒してその後すぐに入眠することができない時に、投与する。
【0198】
一実施形態では、ヒトに投与される式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の好適な有効1日用量は約0.16mgである。他の実施形態では、ヒトに投与される式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の好適な有効1日用量は、約0.20mg、約0.30mg、約0.33mg、約0.35mg、約0.40mg、約0.45mg、約0.46mg、約0.47mg、約0.48mg、約0.49mg、約0.50mg、約0.525mg、約0.55mg、約0.575mg、約0.60mg、約0.625mg、約0.65mg、約0.675mg、約0.70mg、約0.725mg、約0.75mg、約0.775mg、約0.80mg、約0.825mg、約0.85mg、約0.875mg、約0.90mg、約0.925mg、約0.95mg、約0.975mg、約1.00mg、約1.10mg、約1.20mg、約1.30mg、約1.40mg、約1.50mg、約1.60mg、約1.70mg、約1.80mg、約1.90mg、約2.00mg、約2.10mg、約2.20mg、約2.30mg、約2.40mg、約2.50mg、約2.60mg、約2.70mg、約2.80mg、約2.90mg、約3.00mg、約3.25mg、約3.50mg、約3.75mg、約4.0mg、約4.5mg、約5.0mg、約5.5mg、約6.0mg、約6.5mg、約7.0mg、約7.5mgまたは約8.0mgである。これらの実施形態のいずれかにおいて、1日用量は、任意選択的に、単回1日用量である。これらの実施形態のいずれかにおいて、1日用量は、任意選択的に、分割1日用量であり、例えば、上記用量のいずれかの67%、60%、50%、40%または33%を、意図する就床時刻の前に投与し、残りのそれぞれ33%、40%、50%、60%または67%を後に1日期間中に、例えば、中途覚醒してその後すぐに入眠することができない時に、投与する。
【0199】
「1日」という用語が、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の投与時刻から始まる24時間周期を意味することは理解されるべきである。例えば、通常の一晩の睡眠周期では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を9:30PMに投与する場合、その「日」は暦上の翌日の9:29PMに終了する。別の例において、交代勤務者の睡眠周期では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を8:15AMに投与する場合にその「日」は暦上の翌日の8:14AMに終了する。
【0200】
当業者に知られているとおり、ヒトにおいて1日用量(mg表示)は、mg用量を当技術分野で認められているヒトの平均体重である60kgで割ることによってmg/kg/日の投薬量に変換され得る。例えば、1.25mgの1日ヒト用量をそのように変換すると約0.021mg/kg/日の投薬量になる。
【0201】
本明細書に記載の有効投薬量は、投与される総量を指し、つまり、1つより多くの式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を投与する場合、有効投薬量は、投与される総量に相当する。
【0202】
投与は単回用量または分割用量としてのものであり得る。一実施形態では、有効用量または投薬量を必要な時だけに(必要時に)、例えば、睡眠を容易に成し遂げることができない場合に、または中途覚醒後にすぐに入眠することができない時などに投与する。別の実施形態では、有効用量または投薬量を、不眠症障害が減弱されるまで約24時間毎に、例えば意図する就床時刻の前に投与する。別の実施形態では、不眠症障害を軽減するために有効用量または投薬量を、意図する就床時刻の前に投与する。他の実施形態では、不眠症障害を軽減するために有効用量または投薬量を、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12以下、12、少なくとも12、14以下、14、少なくとも14、21以下、21、少なくとも21、28以下、28、少なくとも28、34以下、34、少なくとも34、40以下、40、少なくとも40、50以下、50、少なくとも50、60以下、60、少なくとも60、75以下、75、少なくとも75、90以下、90、少なくとも90、120以下、120、少なくとも120、150以下、150、少なくとも150、180以下、180、少なくとも180、270以下、270、少なくとも270、360以下、360、または少なくとも360の連続日に、意図する就床時刻の前に投与する。他の実施形態では、有効用量または投薬量は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12以下、12、少なくとも12、16以下、16、少なくとも16、26以下、26、少なくとも26、52以下、52、少なくとも52の週数にわたって毎日、意図する就床時刻の前に投与される。他の実施形態では、有効用量または投薬量は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12以下、12、少なくとも12の月数にわたって毎日、意図する就床時刻の前に投与される。これらの実施形態のいずれかにおいて、1日用量は、任意選択的に、単回1日用量である。
【0203】
一実施形態では、有効用量または投薬量は睡眠に備えて投与され、これは例えば意図する就床時刻の約90分前であり得る。他の実施形態では、有効用量または投薬量は睡眠に備えて投与され、これは、意図する就床時刻の約75分前、約60分前、約45分前、約30分前、約20分前、約20分前以内、約15分前、約15分前以内、約10分前、約10分前以内、約5分前、約5分前以内、約2分前、約2分前以内、もしくは約1分前、または意図する就床時刻であり得る。
【0204】
一実施形態では、有効用量または投薬量は睡眠に備えて投与され、これは例えば意図する就床時刻の約90分前~約30分前であり得る。他の実施形態では、有効用量または投薬量は睡眠に備えて投与され、これは、意図する就床時刻の約90分前~約30分前、約75分前~約30分前、約60分前~約30分前、約45分前~約30分前、約90分前~約20分前、約75分前~約20分前、約60分前~約20分前、約45分前~約20分前、約30分前~約20分前、約90分前~約15分前、約75分前~約15分前、約60分前~約15分前、約45分前~約15分前、約30分前~約15分前、約20分前~約15分前、約90分前~約10分前、約75分前~約10分前、約60分前~約10分前、約45分前~約10分前、約30分前~約10分前、約20分前~約10分前、約15分前~約10分前、約90分前~約5分前、約75分前~約5分前、約60分前~約5分前、約45分前~約5分前、約30分前~約5分前、約20分前~約5分前、約15分前~約5分前、約10分前~約5分前、または意図する就床時刻の約90、75、60、45、30、20、15もしくは10分前から意図する就床時刻のあたりまでであり得る。
【0205】
一実施形態では、有効用量または投薬量は、アルコール中止に関連する不眠症を治療または予防するために毎日投与される。別の実施形態では、有効用量または投薬量は、アルコール中止に関連する不眠症を治療または予防するために、意図する就床時刻の前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投薬量は、アルコール摂取を中止した後(例えば、アルコール使用障害を有する対象がアルコール摂取を控え始めた後)に投与され始める。別の実施形態では、アルコール摂取を中止した後から投与され始める有効用量または投薬量は、アルコールを摂取した後も(例えば、アルコールを控えていた対象がアルコールを摂取した後も)投与され続け得る。別の実施形態では、有効用量または投薬量は、アルコール摂取を中止する前に(例えば、アルコール使用障害を有する対象が摂取し続ける間)投与される。他の実施形態では、有効用量または投薬量は、アルコール摂取中止から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12以下、12、少なくとも12、14以下、14、少なくとも14、21以下、21、少なくとも21、28以下、28、少なくとも28、34以下、34、少なくとも34、40以下、40、少なくとも40、50以下、50、少なくとも50、60以下、60、少なくとも60、75以下、75、少なくとも75、90以下、90、少なくとも90、120以下、120、少なくとも120、150以下、150、少なくとも150、180以下、180、少なくとも180、270以下、270、少なくとも270、360以下、360、または少なくとも360の日数だけ後に投与され始める。他の実施形態では、有効用量または投薬量は、アルコール摂取中止から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12以下、12、少なくとも12、16以下、16、少なくとも16、26以下、26、少なくとも26、52以下、52、少なくとも52の週数だけ後に投与され始める。他の実施形態では、有効用量または投薬量は、アルコール摂取中止から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12以下、12、少なくとも12の月数だけ後に投与され始める。これらの実施形態のいずれかにおいて、1日用量は、任意選択的に、単回1日用量である。
【0206】
式(I)、(IA)、(IB)または(IC)の化合物は、アルコールを取り込んだ対象に投与され得、または対象が化合物の投与の後にアルコールを取り込んでもよい。一実施形態では、取り込むエタノールの量は、約0.05g/kg~約5.0g/kg、約0.05g/kg~約2.0g/kg、約0.05g/kg~約1.0g/kg、約0.05g/kg~約0.5g/kg、約0.05g/kg~約0.2g/kg、約0.2g/kg~約5.0g/kg、約0.2g/kg~約2.0g/kg、約0.2g/kg~約1.0g/kg、約0.2g/kg~約0.8g/kg、約0.2g/kg~約0.5g/kg、約0.5g/kg~約5.0g/kg、約0.5g/kg~約2.0g/kg、約0.5g/kg~約1.0g/kg、または約0.5g/kg~約0.8g/kgである。
【0207】
一実施形態では、本開示に係る式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物を医薬品として使用する。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物であって、上記組成物を含有する医薬品を調製するために使用され得る、当該組成物が開示される。
【0208】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、睡眠障害の治療または予防において医薬品として有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、睡眠障害が不眠症障害、過眠症障害、概日リズム睡眠覚醒障害、アルコール誘発性睡眠障害またはその任意の組合せである場合に、睡眠障害の治療または予防において医薬品として有用である。
【0209】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、睡眠障害の治療において医薬品として有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、睡眠障害が不眠症障害、過眠症障害、概日リズム睡眠覚醒障害、アルコール誘発性睡眠障害またはその任意の組合せである場合に、睡眠障害の治療において医薬品として有用である。
【0210】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、睡眠障害の予防において医薬品として有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、睡眠障害が不眠症障害、過眠症障害、概日リズム睡眠覚醒障害、アルコール誘発性睡眠障害またはその任意の組合せである場合に、睡眠障害の予防において医薬品として有用である。
【0211】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、不眠症障害の治療または予防において医薬品として有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、不眠症障害の治療において医薬品として有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、不眠症障害の予防において医薬品として有用である。
【0212】
別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、アルコール誘発性睡眠障害の治療または予防において医薬品として有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、アルコール誘発性睡眠障害の治療において医薬品として有用である。別の実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は、アルコール誘発性睡眠障害の予防において医薬品として有用である。
【0213】
これらの用途のいずれかにおいて、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を含む組成物は医薬品中にさらに第2の治療剤を含み得る。
【0214】
不眠症障害の治療または予防を、それを必要とする動物において行う方法はさらに、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物(すなわち第1の治療剤)を投与されている動物に第2の治療剤を共投与することを含み得る。一実施形態では、第2の治療剤は、有効量で投与される。
【0215】
第2の治療剤の有効量は、薬剤に応じて当業者に知られているであろう。しかしながら、本開示に鑑みれば、第2の治療剤の最適有効量範囲を決定することは優に当業者の技量の範囲内である。式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物、及び併用される第2の治療剤は、相加的あるいは相乗的に作用して不眠症障害を治療することができ、またはそれらは、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物が不眠症障害を治療または予防し、第2の治療剤が、不眠症障害と同じまたは異なるものであり得る別の障害を治療または予防するように、互いに独立して作用し得る。本開示の一実施形態では、第2の治療剤が障害(例えば睡眠障害)の治療のために動物に共投与される場合、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の最小有効量は、第2の治療剤を投与しない場合でのその最小有効量よりも少なくなり得る。この実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物と、第2の治療剤とが相乗的に作用して不眠症障害を治療または予防することができる。
【0216】
一実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物と有効量の第2の治療剤とを含む単一組成物として第2の治療剤と同時に投与される。あるいは、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物と、有効量の第2の治療剤を含む第2組成物とを同時に投与する。別の実施形態では、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を有効量の第2の治療剤の投与の前または後に投与する。この実施形態では、第2の治療剤がその治療的効能を働かせている間に式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を投与するか、あるいは、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物が、不眠症障害を治療または予防するためのその治療的効能を働かせている間に、第2の治療剤を投与する。
【0217】
第2の治療剤は、限定されないが、オピオイド作動薬、非オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症剤、抗偏頭痛剤、第2の鎮静薬もしくは催眠薬、Cox-II阻害薬、5-リポキシゲナーゼ阻害薬、制吐薬、β-アドレナリン遮断薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、Ca2+チャネル遮断薬、抗がん剤、UIを治療もしくは予防するための薬剤、不安症を治療もしくは予防するための薬剤、記憶障害を治療もしくは予防するための薬剤、肥満を治療もしくは予防するための薬剤、便秘を治療もしくは予防するための薬剤、咳を治療もしくは予防するための薬剤、下痢を治療もしくは予防するための薬剤、高血圧を治療もしくは予防するための薬剤、てんかんを治療もしくは予防するための薬剤、食欲不振/悪液質を治療もしくは予防するための薬剤、薬物乱用を治療もしくは予防するための薬剤、潰瘍を治療もしくは予防するための薬剤、IBDを治療もしくは予防するための薬剤、IBSを治療もしくは予防するための薬剤、嗜癖障害を治療もしくは予防するための薬剤、パーキンソン病及びパーキンソニズムを治療もしくは予防するための薬剤、脳卒中を治療もしくは予防するための薬剤、発作を治療もしくは予防するための薬剤、掻痒症状を治療もしくは予防するための薬剤、精神病を治療もしくは予防するための薬剤、ハンチントン舞踏病を治療もしくは予防するための薬剤、ALSを治療もしくは予防するための薬剤、認知障害を治療もしくは予防するための薬剤、偏頭痛を治療もしくは予防するための薬剤、嘔吐を抑制するための薬剤、ジスキネシアを治療もしくは予防するための薬剤、鬱を治療もしくは予防するための薬剤、アルコール使用障害を治療もしくは予防するための薬剤、またはその任意の混合物であり得る。
【0218】
有用なオピオイド作動薬の例としては、限定されないが、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0219】
特定の実施形態では、オピオイド作動薬は、コデイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、トラマドール、オキシモルホン、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはその任意の混合物である。
【0220】
有用な非オピオイド鎮痛薬の例としては、限定されないが、非ステロイド性抗炎症剤、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、ヨードプロフェン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロキシ酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキシピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルリサル、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。他の好適な非オピオイド鎮痛薬としては、非限定的な鎮痛薬、解熱薬、非ステロイド性抗炎症薬の化学部類である、サリチル酸誘導体、例えば、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、三サリチル酸コリンマグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スルファサラジン及びオルサラジン;パラアミノフェノール誘導体、例えばアセトアミノフェン及びフェナセチン;インドール及びインデン酢酸、例えば、インドメタシン、スリンダク及びエトドラク;ヘテロアリール酢酸、例えば、トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラク;アントラニル酸(フェナメート)、例えばメフェナム酸及びメクロフェナム酸;エノール酸、例えばオキシカム(ピロキシカム、テノキシカム)及びピラゾリジンジオン(フェニルブタゾン、オキシフェンタルタゾン);アルカノン、例えばナブメトン;その薬学的に許容される塩;またはその任意の混合物が挙げられる。NSAIDのより詳しい説明については、Insel,“Analgesic-Antipyretic and Anti-inflammatory Agents and Drugs Employed in the Treatment of Gout,”pp.617-657 in Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(Goodman et al.,eds.,9th Ed.,McGraw-Hill,New York 1996)、及びHanson,“Analgesic,Antipyretic and Anti-Inflammatory Drugs,”pp.1196-1221 in Remington:The Science and Practice of Pharmacy Vol.II(Gennaro,ed.,19th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1995)を参照されたく、これをもって参照によりこれらの全体を援用する。
【0221】
有用な第2の鎮静薬または催眠薬の例としては、限定されないが、ベンゾジアゼピン、例えば、ロラゼパム、テマゼパム及びトリアゾラム;バルビツレート、例えば、フェノバルビタール、ペントバルビタール及びセコバルビタール;いわゆる「z薬」、例えば、ザレプロン、ゾルピデム及びゾピクロン;ラメルテオン;スボレキサント;その薬学的に許容される塩;またはその任意の混合物が挙げられる。
【0222】
有用なCox-II阻害薬及び5-リポキシゲナーゼ阻害薬ならびにその組合せの例は、米国特許第6,136,839号に記載されており、これをもって参照によりその全体を援用する。有用なCox-II阻害薬の例としては、限定されないが、セレコキシブ、DUP-697、フロスリド(flosulide)、メロキシカム、6-MNA、L-745337、ロフェコキシブ、ナブメトン、ニメスリド、NS-398、SC-5766、T-614、L-768277、GR-253035、JTE-522、RS-57067-000、SC-58125、SC-078、PD-138387、NS-398、フロスリド、D-1367、SC-5766、PD-164387、エトリコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0223】
有用な抗偏頭痛剤の例としては、限定されないが、アルピロプリド、ブロモクリプチン、ジヒドロエルゴタミン、ドラセトロン、エルゴコルニン、エルゴコルニニン、エルゴクリプチン、エルゴノビン、麦角、エルゴタミン、酢酸フルメドロキソン、フォナジン、ケタンセリン、リスリド、ロメリジン、メチルエルゴノビン、メチセルジド、メトプロロール、ナラトリプタン、オキセトロン、ピゾチリン、プロプラノロール、リスペリドン、リザトリプタン、スマトリプタン、チモロール、トラゾドン、ゾルミトリプタン、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0224】
有用な抗痙攣薬の例としては、限定されないが、アセチルフェネトライド、アルブトイン、アロキシドン、アミノグルテチミド、4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸、アトロラクトアミド、ベクラミド、ブラマート、臭化カルシウム、カルバマゼピン、シンロミド、クロメチアゾール、クロナゼパム、デシメミド、ジエタジオン、ジメタジオン、ドキセニトロイン、エテロバルブ、エタジオン、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、フルオレソン、ガバペンチン、5-ヒドロキシトリプトファン、ラモトリジン、臭化マグネシウム、硫酸マグネシウム、メフェニトイン、メフォバルビタール、メタルビタール、メテトイン、メトスクシミド、5-メチル-5-(3-フェナントリル)-ヒダントイン、3-メチル-5-フェニルヒダントイン、ナルコバルビタール、ニメタゼパム、ニトラゼパム、オクスカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、フェネタルビタール、フェネツリド、フェノバルビタール、フェンスクシミド、フェニルメチルバルビツール酸、フェニトイン、フェテニラートナトリウム、臭化カリウム、プレガバリン、プリミドン、プロガビド、臭化ナトリウム、ナス属、臭化ストロンチウム、スクロフェニド、スルチアム、テトラントイン、チアガビン、トピラマート、トリメタジオン、バルプロ酸、バルプロミド、ビガバトリン、ゾニサミド、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0225】
有用なCa2+チャネル遮断薬の例としては、限定されないが、ベプリジル、クレンチアゼム、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、セモチアジル、テロジリン、ベラパミル、アムロジピン、アラニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、エホニジピン、エルゴジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン、ロメリジン、ベンシクラン、エタフェノン、ファントファロン、ペルヘキシリン、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0226】
UIを治療または予防するのに有用な治療剤の例としては、限定されないが、プロパンテリン、イミプラミン、ヒヨスチアミン、オキシブチニン、ジシクロミン、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0227】
不安症を治療または予防するのに有用な治療剤の例としては、限定されないが、ベンゾジアゼピン、例えば、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム及びトリアゾラム;非ベンゾジアゼピン剤、例えば、ブスピロン、ゲピロン、イプサピロン、チオスピロン、ゾルピコン、ゾルピデム及びザレプロン;精神安定薬、例えばバルビツレート、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メフォバルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール及びチオペンタール;プロパンジオールカルバメート、例えばメプロバメート及びチバメート;その薬学的に許容される塩;またはその任意の混合物が挙げられる。
【0228】
下痢を治療または予防するのに有用な治療剤の例としては、限定されないが、ジフェノキシレート、ロペラミド、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0229】
てんかんを治療または予防するのに有用な治療剤の例としては、限定されないが、カルバマゼピン、エトスクシミド、ガバペンチン、ラモトリギン、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、バルプロ酸、トリメタジオン、ベンゾジアゼピン、γビニルGABA、アセタゾラミド、フェルバメート、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0230】
薬物乱用を治療または予防するのに有用な治療剤の例としては、限定されないが、メタドン、デシプラミン、アマンタジン、フルオキセチン、ブプレノルフィン、オピエート作動薬、3-フェノキシピリジン、酢酸レボメタジル塩酸塩、セロトニン拮抗薬、その薬学的に許容される塩、またはその任意の混合物が挙げられる。
【0231】
非ステロイド性抗炎症剤、5-リポキシゲナーゼ阻害薬、制吐剤、β-アドレナリン遮断薬、抗鬱薬及び抗がん剤の例は、当技術分野で知られており、当業者によって選択され得る。記憶障害、肥満、便秘、咳、高血圧、食欲不振/悪液質、潰瘍、IBD、IBS、嗜癖障害、パーキンソン病及びパーキンソニズム、脳卒中、発作、掻痒症状、精神病、ハンチントン舞踏病、ALS、認知障害、偏頭痛、ジスキネシア、鬱を治療もしくは予防する及び/または嘔吐を治療、予防もしくは抑制するのに有用な治療剤の例としては、当技術分野で知られているものが挙げられ、当業者によって選択され得る。
【0232】
アルコール使用障害を治療または予防するための薬剤の例は、当技術分野で知られており、当業者によって選択され得る。アルコール使用障害を治療または予防するのに有用な治療剤の例としては、限定されないが、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、ガバペンチン、トピラマート、ナルメフェネム、ナロキソン、フルオキセチン及びクエチアピンが挙げられる。
【0233】
本開示の組成物は、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物を薬学的に許容される担体または賦形剤と混合することを含む方法によって調製される。混合は、化合物(または誘導体)と薬学的に許容される担体または賦形剤とを混合することに関して知られている方法を用いて成し遂げられ得る。一実施形態では、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物は組成物中に有効量で存在する。
【0234】
5.7 キット
本開示はさらに、動物に対しての式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の取扱い及び投与を簡素化することができるキットを提供する。
【0235】
本開示の典型的なキットは、式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の単位剤形を含む。一実施形態では、単位剤形は、経口投与に適したもの、例えば、限定されないが、カプセル剤、ゲルキャップ剤、カプレット剤、または錠剤、例えばODTもしくは丸ごと飲み込む錠剤である。別の実施形態では、単位剤形は、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物と薬学的に許容される担体または賦形剤とが入った、無菌であり得る第1の容器を含む。キットはさらに、睡眠障害を治療または予防するための式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物の用途を指示するラベルまたは印字された説明書きを含み得る。キットはさらに、第2の治療剤の単位剤形、例えば、有効量の第2の治療剤と薬学的に許容される担体または賦形剤とが入った第2の容器を含み得る。別の実施形態では、キットは、有効量の式(I)、(IA)、(IB)もしくは(IC)の化合物またはその溶媒和物と、有効量の第2の治療剤と、薬学的に許容される担体または賦形剤とが入った容器を含む。第2の治療剤の例としては、限定されないが、上に列挙されるものが挙げられる。
【0236】
本開示のキットはさらに、単位剤形を投与するのに有用な装置を含み得る。そのような装置の例としては、限定されないが、シリンジ、ドリップバッグ、パッチ、吸入器及び浣腸バッグが挙げられる。
【0237】
以下の実施例は、本発明の理解の一助となるべく示されており、本明細書において記載され特許請求される本発明を具体的に限定していると解釈されるべきでない。現在知られているまたは後に開発されるあらゆる均等物の代用を含めた、当業者の技量の範囲内となるような本発明の変形形態、及び配合組成の変更または実験デザインの変更は、本明細書に組み込まれる本発明の範囲内に入るとみなされるべきである。
【実施例】
【0238】
6.実施例
以下の特定の実施例は、睡眠障害の治療または予防を、そのような治療を必要とするヒトに式(I)、(IA)、(IB)及び/または(IC)の化合物を投与することにより行う方法に関する。
【0239】
6.1 実施例1:ヒト治験プロトコール
不眠症障害である成人不眠症を患う対象において睡眠効率(「SE」)、総睡眠時間(「TST」)、中途覚醒(「WASO」)、持続睡眠潜時(「LPS」)、及び睡眠段階N2に費やされる時間に対する化合物(1C)の作用を評価する無作為化二重盲検多施設共同5期間クロスオーバー反復投薬試験を実施した。試験は、少なくとも約24名の完遂者(すなわち、5投薬期間全てを完遂した対象)を得るために最大で約30名の対象を無作為化した。対象には、成人不眠症(DSM-5基準で定義される不眠症障害)の既往歴を有し、それ以外には重要な医療歴または精神医療歴がない、端点を含めて18~64歳の年齢の、それがなければ健常である男性及び女性が含まれた。
【0240】
この試験は、長さ約27日の治療期間中、少なくとも5日離隔した5つの別個の投薬期間(投薬期間1~5)に化合物(1C)またはプラセボを経口投与する2連続投薬夜を用いた。化合物(1C)を、薬学的に許容される賦形剤であるクロスカルメロースナトリウム(FMC Health and Nutrition,Philadelphia,PA)、ヒドロキシプロピルセルロース(Ashland Inc.,Covington,KY)、微結晶セルロース(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)及びマンニトール(SPI Pharma,Wilmington,DE)を含む即放性錠剤として経口投与した。0.5mg、1.0mg、3.0mgまたは6.0mgの単回用量の化合物(1C)を各対象に投与したが、各対象への投薬は彼らの習慣的就床時刻中央値の約30分前とした。化合物(1C)錠剤に対応するプラセボ錠剤を同じようにして経口投与した。プラセボ錠剤は、上記の4つの薬学的に許容される賦形剤を含んでいたが、化合物(1C)を含んでいなかった。
【0241】
試験は3つの期間からなっていた:(1)無作為化前(最長28日)、(2)治療(27日)及び(3)追跡調査。
【0242】
(1)無作為化前期間のプロトコールは、スクリーニング訪問(「訪問1」)と好成績の対象に対するその後のベースライン訪問(「訪問2」)からなっており、以下に各々についてより詳しく説明する。
【0243】
スクリーニング訪問中(-28日目~-8日目)、数ある中でも生命兆候、医療歴、睡眠歴及び精神医療歴、臨床実験室検査結果、薬物スクリーニング結果、コロンビア自殺重症度評価尺度(「C-SSRS」)評価ならびにECGを得た。禁止されている薬品の洗い流しが必要な場合、スクリーニング中にこの洗い流しを遂行した。スクリーニング訪問を好成績で完遂した各対象には例えば対象の意図する就床時刻を記録する睡眠習慣日記帳を与え、これに最低でもベースライン訪問前の7連続日にわたる記入をさせてその対象の習慣的就床時刻中央値を見積もることができるようにした。
【0244】
ベースライン訪問中(-7~-6日目)、好成績の対象は-7日目の午後または晩に臨床施設に到着した。その時に彼らは2連続夜の滞在を開始し、この間に適格性基準を評価するため及び覚醒を伴う睡眠時無呼吸または周期性四肢運動を有する対象を選別して除くために第1夜(夜1)に各対象を8時間にわたる連続PSG記録に供した。なおも好結果であった対象を第2夜(夜2)に別の8時間の連続PSG記録に供し、これによって、ベースライン訪問の夜1及び夜2に得たデータの平均に基づいて対象が睡眠適格性基準を満たしているか否かを判定した。ベースライン訪問の間、対象にさらに、この試験に用いる睡眠後検査、すなわち数字符号置換検査(「DSST」)の練習及び受検をさせ、カロリンスカ眠気尺度(「KSS」)評価用紙に慣れさせた。睡眠の「質」及び「量」についての対象の知覚を評価するために、睡眠後質問票を使用して「昨夜就床し消灯してから入眠するまで何分掛かりましたか?」、「夜の間に何回目を覚ましましたか?」、「1を劣るとし10を優れるとした1~10の尺度で昨夜の睡眠の質をいくらに評価しますか?」などの質問をした。ベースライン訪問後に全ての適格性基準を満たした対象はおよそ7日後に戻って治療期間(投薬期間1~5)に入った。
【0245】
用いたPSG記録手順をまとめると以下のとおりである。EEG電極の標準的配置は、睡眠評価のためのAASMマニュアル(Berry et al.,“The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events:Rules,Terminology and Technical Specifications,”Version 2.0.3,American Academy of Sleep Medicine,Darien,IL,(2014))に準拠してA1-A2ラベルをM1-M2に変更したことを除けば国際的な10-20方式に従って導き出された(例えば、Jasper,“The ten-twenty electrode system of the international federation,”Electroencephalography Clin.Neurophys.10:371-375(1958)を参照されたい)。この方式は、重要な解剖学的点との関係性を測って電極を配置することを必要とする。EOG、顎下EMG電極、前脛骨EMG電極及び空気流センサの標準的な配置は睡眠評価のためのAASMマニュアルと一致させた。
【0246】
EEG記録に使用した電極は、EEG記録での使用を意図した標準的な金製または銀製カップ電極であった。これらの電極は、直径がおよそ4~10mmであり、適切なコネクタを有する細線に接続されていた。EOG及びEMG記録に使用した電極は、適切なコネクタを有する細線に電極を接続するのを可能にするスナップ式コネクタを有し直径がおよそ12mmである粘着性電極であった。ECG記録に使用した電極は、適切なコネクタを有する細線に電極を接続するのを可能にするスナップ式コネクタを有し直径がおよそ12mmである粘着性電極(例えば、3M RED DOT電極、またはMEDITRACE電極)であった。
【0247】
綿スワブを使用して頭皮と皮膚との両方の表面に弱い研磨用クレンザーを製造者の推奨に従って塗布することによって、電極との接触点にある頭皮及び皮膚の表面を電極配置前に徹底的に清浄にした。磨いた表面を、イソプロピルアルコールを使用して拭った。その後、少量の導電性EEGペーストを頭皮または皮膚の表面及びカップ電極に塗布した。所望の部位に顔の毛または体毛が存在する場合、要求される電極配置からの重要でない変位が可能であるならば電極を隣接領域に配置し直し、そうでなければ顔の毛または体毛を除去した。
【0248】
全てのEEG、EOG、顎下EMG、四肢EMG及びECG電極の電気インピーダンスは5キロオーム未満であり、市販のインピーダンス計を使用して記録開始前に電気インピーダンスを確認した。「消灯」の45分前に実施する各PSG記録に先立って、デジタルPSGシステムを較正した。較正は、内部で生成された既知電圧の入力信号を用いることを含み、これは、生理学的データを測定及び定量する際の基準点としての役割を果たした。デジタルPSG較正設定は以下のとおりである。
【表1】
EEG信号の取得は、高周波数フィルタ設定のおよそ3倍の最低サンプリング速度で起こった。具体的には、規定の高周波数フィルタ設定を用いて収集されたEEGの最低サンプリング速度は1秒あたり少なくとも100サンプル、すなわち100Hzであった。256Hzより高いサンプリング速度は使用しなかった。全てのPSGデータの最低記憶速度は200Hzであった。
【0249】
生物学的較正または「バイオキャリブレーション」は、仰臥位で就床した対象が、覚醒した状態で静かに横たわり、PSG信号の質が評価され得るように規定の順序で特定の動作または動きを実施する手順である。バイオキャリブレーションは消灯の15分前に実施した。しかしながら、バイオキャリブレーション手順が完了した直後に対象を起こし、上体を起こすよう指示して、消灯前の「落ち着き」のための妥当な時間を経過させた。頭または体の動きによってバイオキャリブレーション信号を不明瞭にするアーチファクトが生じることがないように、バイオキャリブレーション手順を実施している間は頭及び体を不必要に動かさないよう対象に指示した。バイオキャリブレーション手順は、PSGの夜に以下のスケジュールに従って実施した。
【表2】
【0250】
特定の並びで表示される記録の18チャンネルのPSG「スクリーニングモンタージュ」を夜1に用いた。特定の並びで表示される記録の12チャンネルの「治療モンタージュ」を夜2及び治療夜に用いた。以下の電極変位または位置をスクリーニングモンタージュから除外して治療モンタージュを生成した:左前脛骨、右前脛骨、経鼻/経口空気流(サーミスタ)、経鼻空気流(鼻腔圧変換器)、呼吸インダクタンス容積脈波記録法、及び呼吸インダクタンス容積脈波記録法。
【0251】
(2)27日の治療期間は、少なくとも5日離隔した5つの投薬期間(投薬期間1~5)を含んでいた。連続した適格性が確認された時点で対象を治療に関して1日目のチェックイン時に無作為化した。(期間同士の間の最低5日の洗い流しに基づく)投薬期間1(1~6日目)、投薬期間2(7~12日目)、投薬期間3(13~18日目)、投薬期間4(19~24日目)及び投薬期間5(25~27日目)の各々は2連続夜の滞在からなり、その間、対象に、同じ用量の試験薬(化合物(1C)またはプラセボをその投薬期間の両方の晩に与えた。試験無作為化スケジュールに従って各投薬期間に試験薬を各対象の習慣的就床時刻中央値(睡眠日記から判定される最も近い四半時間)の30分前に投与した。非干渉環境下で対象が就床して過ごす時間は8時間(すなわち1エポックあたり30秒の持続期間を960PSGエポック)に固定した。
【0252】
試験薬を晩に投薬することに続いて、対象を8時間の連続PSG記録に供した。DSST及びKSSの評価をその順で収集することを「点灯」のおよそ30分後から始めることによって、翌日の残存作用を見積もった。全ての検査は臨床施設内で実施され、PSG記録の完了に続いて点灯から30分後に開始され、それ以降は周期的に消灯のおよそ16時間後であった。各対象はさらに、彼らの睡眠の「質」及び「量」についての自覚的印象を評価することができるように点灯後の時点で睡眠後質問票に記入した。各投薬期間の第2夜投薬の前に、眠気が残存しているかについて対象を評価した。継続して鎮静を呈した対象については第2夜投薬を差し控えた。残存症候が最小限に抑えられるまで対象を臨床に留めた。
【0253】
スクリーニング訪問中であって投薬期間5(27日目)から解放する前に、顕微鏡観察、化学及び血液学を含む検尿を対象から採取した。
【0254】
各投薬期間の夜1及び夜2の投薬前、各投薬期間の夜1の投薬から15分後、及び各投薬期間の夜2の投与9、10、11、12、14及び16時間後に血液を採取して薬物の血漿中濃度を決定した。
【0255】
(3)追跡調査期間(28~36日目)は、試験薬の最後の投薬から6~9日後に完遂される、有害作用及び前の訪問以来の付随的な医療/療法の利用をモニタリングする電話を含んでいた。
【0256】
6.2 実施例2:統計方法
総じて、部類に関する変数は対象の計数(「N」)及び百分率でまとめた。連続変数は、非欠測観察結果の数(「n」)、平均、標準偏差(「SD」)、標準誤差(「STDE」)、中央値ならびに最小値及び最大値でまとめた。
【0257】
最大の解析対象集団(「FAP」)は、無作為化し試験薬の1つを与えた対象の群であった。試験薬への曝露は各治療群に対して提供した。有効性のための解析対象集団はFAPであった。
【0258】
有効性の重要な表徴は、PSGによって測定されるSEに対する化合物(1C)の作用であった。要約及び解析の目的のために、PSGから得た平均SEを1治療ごとに対象1名ごとに用いた。それは、1治療期間または1ベースラインごとに1日目及び2日目のSEの平均をとることによって導き出された。比較前に、各治療期間においてPSGの2夜を平均した。これらの日のうちの1日のみからのデータが利用可能である場合には、利用可能なデータをその期間の測定結果として採用した。SEのベースライン、ベースライン後及びベースラインの変化を治療群ごとに記述統計学を用いて要約した。化合物(1C)をプラセボと比較する統計解析は、期間、順序、及び固定的影響としての治療、無作為的影響としての順序の中の対象、及び共変量としてのSEのベースライン測定結果を含む混合モデル手法を用いることによって実施された。0.05の両側有意水準を比較に用いた。
【0259】
対象を8時間のPSG記録に供し、PSGを収集し、セントラルリーダーによって採点した。睡眠段階は30秒エポックに基づくAASM標準的判断基準に従って採点した。LPS、REM潜時、NAW、TST、WASO、ならびにN1、N2、N3及びREMの段階の総分数を含む睡眠ポリグラフ検査パラメータを治療期間中にこのように集計した。睡眠後質問票によって測られる自覚的睡眠質及び睡眠深さも治療期間中にこのように集計した。
【0260】
WASOのベースライン、ベースライン後及びベースラインからの変化を治療群ごとに記述統計学を用いて要約した。解析は、期間、順序、及び固定的影響としての治療、無作為的影響としての順序の中の対象、及び共変量としてのWASOのベースライン測定結果を含む混合モデル手法を用いることによって実施された。
【0261】
他の変数(TST;LPS;N1、N2、N3及びREMの段階の総分数;REM潜時;PSGで測定されるNAW;ならびに睡眠後質問票によって測られる睡眠質及び睡眠深さ)は、WASOパラメータについて上に詳しく述べているとおりに要約及び解析された。DSST及びKSSによって測定される翌日の残存作用パラメータを、記述統計学を用いて要約した。
【0262】
欠測データの取扱い-PSG睡眠パラメータについてはそのベースラインを、-7日目及び-6日目に始まる夜:それぞれ夜1及び夜2の評価として定義した。翌日の残存作用パラメータ、例えばDSST及びKSSについては、ベースラインを、夜1及び夜2に続く日(すなわち、それぞれ-6日目及び-5日目)の評価として定義した。欠測データは一覧表に欠測として表示し、要約の中で欠測として取り扱った。データ補完は実施しなかった。
【0263】
安全性-対象の有害作用(「AE」)は、Medical Dictionary for Regulatory Activities(“MedDRA”,version 16.1)を用いて基本語及び関連する器官別大分類(「SOC」)に分類された。治療下で発生したAE(「TEAE」)は、試験薬の最初の投薬の後から始まるまたは重症度が高くなるAEとして定義され、翌日の残存作用があればこれを含む。試験薬の最初の投薬の後に起こるAEをTEAEとみなし、施与された直近の治療に帰した。安全性集団についてSOCの中に収められているMedDRA基本語によって各治療群でのAEの発生を示すことによって、治療下で発生したAEをまとめた。
【0264】
6.3 実施例3:睡眠効率結果
比率TST/TIBに100を乗じることによってSEを百分率として表した。この試験ではTIBは8時間であった。
図1の棒グラフは、ベースライン訪問、化合物(1C)の4回用量の各々を投与した後の期間、及びプラセボ投与後の期間におけるSEのグラフ表示を示す。「夜1」のバーは、投薬期間1~5の第1夜からの、またはベースライン訪問の第1夜からの平均SE結果を表し、「夜2」のバーは、投薬期間1~5の第2夜からの、またはベースライン訪問の第2夜からの平均SE結果を表し、「平均」のバーは、投薬期間1~5またはベースライン訪問の全夜についてのSE評価の平均を表す。
【0265】
以下の表1は、「平均」のバーに関するSE決定結果をまとめたものであり、その統計解析を示す。量「N」は、各用量を投与された対象の数を表す。
表1:睡眠効率(「SE」)及び統計解析(最大の解析対象集団)
【表3】
【0266】
図1及び表1のデータから明らかなように、臨床的にも意味深い有効性の重要な表徴である睡眠効率は全ての治療群において有意に向上し、化合物(1C)の0.5、1.0、3.0及び6.0mgの用量でLSM差がそれぞれ4.1、6.7、9.7及び11.0%であるという望ましい着実な増加を呈した。この実施例の結果から明らかである別の重要な特徴は、SEの向上と化合物(1C)の用量増加とのおおよその比例関係である。
【0267】
6.4 実施例4:総睡眠時間結果
図2の棒グラフは、ベースライン訪問、化合物(1C)の4回用量の各々を投与した後の期間、及びプラセボ投与後の期間におけるTSTのグラフ表示を示す。「夜1」のバーは、投薬期間1~5の第1夜からの、またはベースライン訪問の第1夜からの平均TST結果を表し、「夜2」のバーは、投薬期間1~5の第2夜からの、またはベースライン訪問の第2夜からの平均TST結果を表し、「平均」のバーは、投薬期間1~5またはベースライン訪問の全夜についてのTST評価の平均を表す。
【0268】
以下の表2は、「平均」のバーに関するTST決定結果をまとめたものであり、その統計解析を示す。量「N」は、各用量を投与された対象の数を表す。
表2:総睡眠時間(「TST」)及び統計解析(最大の解析対象集団)
【表4】
【0269】
図2及び表2のデータから明らかなように、臨床的にも意味深い有効性の別の肝要な表徴である総睡眠時間は全ての治療群において有意に増加し、化合物(1C)の0.5、1.0、3.0及び6.0mgの用量でLSM差がそれぞれ19.8、32.3、46.4及び52.9分であるという望ましい着実な増加を呈した。この実施例の結果から明らかであるさらに重要な特徴は、TSTの増加と化合物(1C)の用量増加とのおおよその比例関係である。
【0270】
6.5 実施例5:中途覚醒結果
図3の棒グラフは、ベースライン訪問、化合物(1C)の4回用量の各々を投与した後の期間、及びプラセボ投与後の期間におけるWASOのグラフ表示を示す。「夜1」のバーは、投薬期間1~5の第1夜からの、またはベースライン訪問の第1夜からの平均WASO結果を表し、「夜2」のバーは、投薬期間1~5の第2夜からの、またはベースライン訪問の第2夜からの平均WASO結果を表し、「平均」のバーは、投薬期間1~5またはベースライン訪問の全夜についてのWASO評価の平均を表す。
【0271】
以下の表3は、「平均」のバーに関するWASO決定結果をまとめたものであり、その統計解析を示す。量「N」は、各用量を投与された対象の数を表す。
表3:中途覚醒(「WASO」)及び統計解析(最大の解析対象集団)
【表5】
【0272】
図3及び表3のデータから明らかなように、臨床的にも意味深い有効性の別の肝要な表徴である中途覚醒は全ての治療群において有意に減少し、化合物(1C)の0.5、1.0、3.0及び6.0mgの用量でLSM差がそれぞれ24.3、31.8、46.4及び50.8分であるという望ましい着実な減少を呈した。この実施例の結果から明らかであるさらに重要な特徴は、WASOの減少と化合物(1C)の用量増加とのおおよその比例関係である。
【0273】
6.6 実施例6:持続睡眠潜時結果
図4の棒グラフは、ベースライン訪問、化合物(1C)の4回用量の各々を投与した後の期間、及びプラセボ投与後の期間におけるLPSのグラフ表示を示す。「夜1」のバーは、投薬期間1~5の第1夜からの、またはベースライン訪問の第1夜からの平均LPS結果を表し、「夜2」のバーは、投薬期間1~5の第2夜からの、またはベースライン訪問の第2夜からの平均LPS結果を表し、「平均」のバーは、投薬期間1~5またはベースライン訪問の全夜についてのLPS評価の平均を表す。
【0274】
以下の表4は、「平均」のバーに関するLPS決定結果をまとめたものであり、その統計解析を示す。量「N」は、各用量を投与された対象の数を表す。
表4:持続睡眠潜時(「LPS」)及び統計解析(最大の解析対象集団)
【表6】
【0275】
図4及び表4のデータ、例えばp値から明らかなように、持続睡眠潜時はどの治療群でも有意差がなかった。
【0276】
6.7 実施例7:睡眠段階N2結果
図5の棒グラフは、ベースライン訪問、化合物(1C)の4回用量の各々を投与した後の期間、及びプラセボ投与後の期間における睡眠段階N2に費やされた時間量のグラフ表示を示す。「夜1」のバーは、投薬期間1~5の第1夜からの、またはベースライン訪問の第1夜からの、睡眠段階N2に費やされた平均時間量結果を表し、「夜2」のバーは、投薬期間1~5の第2夜からの、またはベースライン訪問の第2夜からの、睡眠段階N2に費やされた平均時間量結果を表し、「平均」のバーは、投薬期間1~5またはベースライン訪問の全夜についての睡眠段階N2に費やされた時間量の平均を表す。
【0277】
以下の表5は、「平均」のバーに関する、睡眠段階N2に費やされた時間量の決定結果をまとめたものであり、その統計解析を示す。量「N」は、各用量を投与された対象の数を表す。
表5:睡眠段階N2に費やされた時間、及び統計解析(最大の解析対象集団)
【表7】
【0278】
図5及び表5のデータから明らかなように、睡眠段階N2に費やされた時間量は全ての治療群において有意に増加し、化合物(1C)の0.5、1.0、3.0及び6.0mgの用量でLSM差がそれぞれ33.6、45.7、108.5及び122.8分であるという望ましい着実な増加を呈した。この実施例の結果から明らかであるさらに重要な特徴は、睡眠段階N2に費やされた時間量の増加と化合物(1C)の用量増加とのおおよその比例関係である。
【0279】
6.8 実施例8:数字符号置換検査(「DSST」)結果
よく知られているDSSTは、注意及び精神運動速さを調べる紙と鉛筆の神経心理学的検査であり、それゆえ、翌日の残存作用があればその表徴として役立つ。DSSTは、複数の期間で時間を掛けて実施された場合、能力変化の客観的表徴を提供した。
【0280】
各対象は、以下のとおりに符号をそれに対応する数字に合わせることを求められた。対になった数字(1~9)と符号との対応を表示している手がかりの表をページ上部に含む単一のページを提供された各対象は、93個以下の四角い空白を、四角い各空白の上に表示された数字と対をなす符号で埋めた。対象は、許された90秒の時間制限の間にできるだけ多くの四角を埋めた。スコアは、正しい符号の数によって決定した。90秒の時間を開始する前に、時間を測らずに7つの四角い空白で練習する機会を与えた。6つの異なる型の検査を使用して、たった1つの型を使用した場合に起こり得る習熟による影響を回避した。
【0281】
DSSTの実施は、ベースライン訪問(訪問2)の各夜の後及び投薬期間1~5の各夜の後のPSG記録の完了に続いて点灯からおよそ1/2時間後(つまり投薬の約9時間後)及びその約1、3、4、5及び7時間後に開始した。
【0282】
-7日目のスクリーニング/ベースライン訪問中に対象は練習のためのDSSTを受けた。
【0283】
図6のプロットは、(1)ベースライン訪問、(2)化合物(1C)の4回用量の各々を投与した後の点灯期間、及び(3)プラセボ投与後の点灯期間におけるDSST結果のグラフ表示を示す。ベースラインの場合を除き、示されているDSST結果は、示されている用量で投薬期間1~5の全夜の後にDSSTスコアから得られた平均結果である。ベースラインでのDSST結果は、ベースライン訪問の第1及び第2夜の後に得られた平均結果である。
図6において、明瞭に表示する目的のために、各期間での、例えば点灯のおよそ1/2時間後/投薬の9時間後での検査結果の多くを、検査を実施した実際の時間から恣意的に離してずらして配置したことに留意されたい。このため、水平な時間尺度はおよそのものにすぎず、各検査を実際に行った時間を真に指し示していない。
【0284】
図6のデータから明らかなように、0.5mg及び1.0mg用量の化合物(1C)及びプラセボでの平均DSST結果は投薬の約9時間後から約16時間後までの全ての検査時間において互いに近接して追従し合っており、これらの用量の化合物(1C)の投与に起因する翌日の残存作用がなかったことを示唆していた。
図6のデータからは、いくつかの検査時間、例えば約9、10、12及び13時間にのみ、化合物(1C)の3.0mgの用量での平均DSST結果におけるプラセボからの取るに足らない程度に負の、つまり好ましくない変位が明らかになり、この用量での化合物(1C)の投与に起因する最小限の翌日の残存作用があったことが示唆された。
図6のデータからは、各検査時間に化合物(1C)の6.0mgの用量での平均DSST結果におけるプラセボからのさらに負の変位の傾向が明らかになり、この用量での化合物(1C)の投与に起因する翌日の残存作用がいくらかあったことが示唆された。
【0285】
6.9 実施例9:カロリンスカ眠気尺度(「KSS」)結果
よく知られているKSSは、日の特定の時刻における対象の眠気のレベルを主観的に測定するものであり、それゆえ、翌日の残存作用があればその別の表徴として役立つ。KSSは、日の中の特定の時刻の眠気を特徴付ける9段階の尺度(例えば、「極度の覚醒」(1点を割り当てる)から、覚醒(3点を割り当てる)へ、そして「眠くもないし覚醒してもない」(5点を割り当てる)へ、そして「眠い」(7点を割り当てる)へ、そして「極度に眠い」(9点を割り当てる)までの範囲)からなっていた(評価の5分以内)。
【0286】
紙と鉛筆の評価において、各対象は、先行する5分の間に経験した眠気の状態を最もよく特徴付ける目盛り点に対応する四角にチェックを入れた。先の実施例に提示されているスケジュールに従ってベースライン訪問(訪問2)の各夜の後及び投薬期間1~5の各夜の後のDSSTにKSS評価が続いた。
【0287】
スクリーニング/ベースライン訪問の間、KSS評価の練習を行って対象をそれに慣れさせた。
【0288】
図7のプロットは、(1)ベースライン訪問、(2)化合物(1C)の4回用量の各々を投与した後の点灯期間、及び(3)プラセボ投与後の点灯期間におけるKSS評価結果のグラフ表示を示す。ベースラインの場合を除き、示されているKSS評価結果は、示されている用量で投薬期間1~5の全夜の後にKSS評価スコアから得られた平均結果である。ベースラインでのKSS評価結果は、ベースライン訪問の第1及び第2夜の後に得られた平均結果である。
図7において、明瞭に表示する目的のために、各期間での、例えば点灯のおよそ1/2時間後/投薬の9時間後での検査結果の多くを、検査を実施した実際の時間から恣意的に離してずらして配置したことに留意されたい。このため、水平な時間尺度はおよそのものにすぎず、各検査を実際に行った時間を真に指し示していない。
【0289】
図7のデータから明らかなように、0.5mg及び1.0mg用量の化合物(1C)及びプラセボでの平均KSS評価結果は投薬の約9時間後から約16時間後までの全ての検査時間において互いに近接して追従し合っており、これらの用量の化合物(1C)の投与に起因する翌日の残存作用がなかったことを示唆していた。
図7のデータからは、各検査時間に化合物(1C)の3.0mg及び6.0mgの用量での平均KSS評価結果におけるプラセボからの正の、つまり好ましくない変位の傾向が明らかになり、この用量での化合物(1C)の投与に起因する翌日の残存作用がいくらかあったことが示唆された。
【0290】
6.10 実施例10:スボレキサント及び/またはゾルピデムの投与と比較したときの化合物(1C)の投与
化合物(1C)の投与後に現れる睡眠有効性及び残存作用の特定の重要な表徴があればそれらを、睡眠補助として処方されるFDA承認済みの2つの薬物-スボレキサントまたはゾルピデムの投与後に現れるものと比較した。10mg、20mg及び40mgの単回用量のBELSOMRA錠として経口投与されたスボレキサントの投与後の睡眠有効性及び付随する残存作用の表徴に関する文献データが利用可能であった。12.5mgの単回用量のAMBIEN CR錠すなわち酒石酸塩を含む持続放出性錠剤として経口投与されたゾルピデムの投与後の睡眠有効性の表徴に関する文献データも利用可能であった。加えて、10mgの化合物(1C)の経口投与後の睡眠有効性及び付随する残存作用の表徴に関する公開済みまたは未公開のデータも利用可能であった。これらのデータを
図8~
図11のフォレストプロットにまとめる。等しい基準で比較することができるように、0.5、1.0、3.0及び6.0mg用量の化合物(1C)についての最大の解析対象集団の平均夜1データのみをこれらの図に使用した。加えて、プラセボの正味の治療作用についてのデータを
図8~
図11に示す。
【0291】
SEに対する各薬物の作用を
図8に示す。たった1.0mgの化合物(1C)を投与した後のSEの平均向上が、はるかに低い化合物(1C)用量と比較して12.5倍多い重量の12.5mgのゾルピデムを投与した後の平均SE向上よりも大きく、10倍多い重量の10mgのスボレキサントを投与した後の平均SE向上よりも大きかったことに留意されたい。たった0.5mgの化合物(1C)の投与でさえ、SEの向上をもたらした。加えて、たった6.0mgの化合物(1C)を投与した後のSEの平均向上は、はるかに低い化合物(1C)用量と比較して約7倍(40/6=6.7)多い重量の40mgのスボレキサントを投与した後の平均SE向上と同等であった。
【0292】
WASOに対する各薬物の作用を
図9に示す。たった0.5mgの化合物(1C)を投与した後のWASOの平均改善が、はるかに低い化合物(1C)用量と比較して少なくとも20または40倍多い重量のそれぞれ10mgまたは20mgのスボレキサントを投与した後の平均WASO改善とほぼ同等であったことに留意されたい。たった1.0mgの化合物(1C)を投与した後のWASOの平均改善は、40倍多い重量の40mgのスボレキサントを投与した後の平均WASO改善とほぼ同等であった。加えて、たった0.5mgの化合物(1C)を投与した後のWASOの平均改善は、はるかに低い化合物(1C)用量と比較して25倍(12.5/0.5=25)多い重量の12.5mgのゾルピデムを投与した後の平均WASO改善よりもはるかに大きかった。
【0293】
LPSに対する各薬物の作用を
図10に示す。6.0mgまでの化合物(1C)を投与した後のLPSの平均改善は、20mgのスボレキサントまたは12.5mgのゾルピデムによってもたらされる程には大きくなかったが、6.0mgの化合物(1C)を投与した後のLPSの平均改善は、より多い10mg用量のスボレキサントによってもたらされるLPS改善と同等であった。
【0294】
DSSTスコアに対する化合物(1C)及びスボレキサントの作用を
図11に示す。図中の化合物(1C)のDSSTスコアは、投与の約9時間後に得られたものである。図中のスボレキサントのDSSTスコアは、点灯から30~60分以内に得られたものである。0.5mg及び1.0mgの化合物(1C)を投与した後の覚醒後のDSSTスコアの平均変化が小さく、10mg、20mg及び40mgのスボレキサントでの平均DSSTスコア変化と同等であったことに留意されたい。
【0295】
6.11 実施例11:ヒト乱用可能性試験
この試験の目的は、健常な非依存症の娯楽的鎮静剤使用者においてトリアゾラム及びプラセボと比較した単回経口用量の化合物(1C)の乱用可能性を見積もることであった。この試験は無作為化単回用量二重盲検ダブルダミークロスオーバー試験としてデザインされた。試験集団は、中枢神経系(CNS)抑制薬の使用歴を有する健常な非依存症の娯楽的多剤使用者であった。
【0296】
試験デザイン概要
試験デザインを
図12に示す。対象を期間1のチェックインの28日前以内にスクリーニングした。各期間に試験薬を試験無作為化スケジュールに従って投与した。適格性確認中、試験薬投与ごとの合間に24時間の洗い流し期間があった。治療期中、試験薬投与ごとの合間に最低48時間の洗い流し期間があった。各期間中、試験薬投与の前日及びそれに続く少なくとも約24時間にわたって対象を施設に収容した。治療期間の合間に対象が解放される場合、対象は投薬の前日に戻った。
【0297】
対象は、試験薬の最後の投薬から24時間後または試験中断時に実施される治験終了手順(EOS)を受けた。追跡調査電話は試験薬の最後の投薬から7~10日後に行った。試験継続期間は、治療期間中に投薬をいつ対象に行ったかによって様々であった。
【0298】
第1部、適格性確認期
適格性確認期は、自己申告された娯楽的CNS抑制薬/鎮静薬経験を有する多剤乱用対象が忍容すること及び経口投与されるトリアゾラム錠とプラセボとを区別することができること、ならびに管理された実験室環境で薬物の肯定的な自覚作用を報告することができることを確認するためにデザインされた。この期は、「プラセオ応答者」、すなわちプラセボの自覚作用を報告する対象を排除するためにも用いられた。この期はまた、自覚作用を測る様々な尺度及び質問票に対象を慣れさせその使用の訓練をさせるのに役立った。
【0299】
第2部、治療期
乱用可能性試験での対照は典型的には治験薬と同じ薬理学的分類からの規制物質である。しかしながら、化合物(1C)は、比較に利用することができる規制物質/乱用薬物がない新規な薬物部類である。化合物(1C)の治験中に認められる自覚的AEとしては主に眠気及び鎮静が挙げられ、薬物の潜在的鎮静作用を示している。乱用への関心となる他の作用、例えば知覚の撹乱または刺激の証拠はない。加えて、公開されたN/OFQ受容体完全作動薬の薬物判別試験は、ベンゾジアゼピンに対する用量依存的部分汎化を実証し、N/OFQ受容体の完全作動薬と鎮静薬との間にいくらか類似性があることを示した(Saccone PA,Zelenock KA,Lindsey AM,Sulima A,Rice KC,Prinssen EP,Wichmann J,Woods JH.“Characterization of the Discriminative Stimulus Effects of a NOP Receptor Agonist Ro 64-6198 in Rhesus Monkeys.”J Pharmacol Exp Ther.2016 Apr;357(1):17-23))。したがって、化合物(1C)に類似するPKプロファイルを有し適応症が(化合物(1C)の潜在的用途と一致する)不眠症である短時間作用性ベンゾジアゼピンであるトリアゾラムを陽性対照として選択した。経口投与される化合物(1C)錠剤及びトリアゾラム錠は最大濃度になるまでの時間がそれぞれおよそ1.5時間及び1.3時間である。有効な治療の非存在下で起こり得る臨床評価項目における変化の頻度及び大きさを明らかにするとともに対象及び研究員のバイアスを最小限に抑えるために、プラセボ対照を使用した。
【0300】
全ての試験期において、治療を可能な限り最大限に盲検化して、データ収集及び臨床評価項目の評価を行う間に生じ得るバイアスを低減した。試験対象は娯楽的薬物使用者であり、試験される薬物の作用に慣れていたため、治療期にダブルダミー技術を用いて盲検を維持した。対象は各治療期間に錠剤を経口的に受けた。プラセボの大きさ及び形状は各錠剤タイプと一致させ、また、対象を盲検化する方法が採用されることになる。
【0301】
各期において対象は無作為化方式に従って治療を受けた。治療期中に対象を6×6のWilliams方格クロスオーバーデザインの並びの1に無作為化した。
【0302】
1mg(治療量)、6mg(中程度に治療量を上回る用量)または10mg(治療量を上回る最大用量)の化合物(1C)を投与した。化合物(1C)を、薬学的に許容される賦形剤であるクロスカルメロースナトリウム(FMC Health and Nutrition,Philadelphia,PA)、ヒドロキシプロピルセルロース(Ashland Inc.,Covington,KY)、微結晶セルロース(Dupont,Chicago,IL)、マンニトール(SPI Pharma,Wilmington,DE)、ステアリン酸マグネシウム(PlusPharma Inc.,Vista,CA)及びラウリル硫酸ナトリウム(BASF Corp,Upper St.Clair,PA)を含む即放性錠剤として経口投与した。適切な試験用量に到達すべく各対象に0.5mg、1.0mg、3.0mgまたは6.0mgの化合物(1C)を含有する1つ以上の錠剤を投与したが、各対象への投薬は彼らの習慣的就床時刻中央値の約30分前とした。化合物(1C)錠剤に対応するプラセボ錠剤を同じようにして経口投与した。プラセボ錠剤は、上記の薬学的に許容される賦形剤を含んでいたが、化合物(1C)を含んでいなかった。トリアゾラムは0.5または1mgの用量で投与した。治験評価項目を以下に示す。
【0303】
試験参加者は(「現時点での」)薬物嗜好性の視覚的アナログ尺度(「VAS」)のピーク最大作用(E
max)を測定し、100を強い嗜好とし50を好きでも嫌いでもない中立点とし0を強い嫌悪とする100点両極尺度にスコアを示した。結果を
図13に示す。
【0304】
試験参加者は全体的薬物嗜好性VASを測定し、100を強い嗜好とし50を好きでも嫌いでもない中立点とし0を強い嫌悪とする100点両極尺度にスコアを示した。結果を
図14に示す。
【0305】
試験参加者は薬物再使用作用を測定し、100を確実にあるとし50を中立点とし0を確実にないとする100点両極尺度にスコアを示した。結果を
図15に示す。
【0306】
試験参加者は高揚性薬物作用を測定し、100を極度に高揚感を感じるとし0を全くないとして現時点で参加者が高揚感を感じたか否かに関する100点両極尺度にスコアを示した。結果を
図16に示す。
【0307】
試験参加者は良質な薬物作用を測定し、100を極めて良質な薬物作用を感じるとし0を全くないとして現時点で参加者が良質な薬物作用を感じたか否かに関する100点両極尺度にスコアを示した。結果を
図17に示す。
【0308】
試験参加者は任意の薬物作用を測定し、100を極度に薬物作用を感じるとし0を全くないとして現時点で参加者が何らかの薬物作用を感じたか否かに関する100点両極尺度にスコアを示した。結果を
図18に示す。
【0309】
覚醒/眠気結果を
図21に示し、動揺/安定結果を
図22に示す。
【0310】
現在の試験において薬物嗜好性の評価を主要な測定の1つとして選択した、というのも、対象の嗜好性の度合いは乱用可能性についての最も感度のよい指数の1つであると考えられるからである(Balster RL,Bigelow GE.“Guidelines and methodological reviews concerning drug abuse liability assessment.”Drug Alcohol Depend.2003;70(3 Suppl):S13-40、Carter,Lawrence et al.“Relative Abuse Liability of Indiplon and Triazolam in Humans:A Comparison of Psychomotor,Subjective, and Cognitive Effects.”Journal of Biopharmaceutical Statistics.2007;322.749-759)。「現時点での」薬物嗜好性VAS及び全体的薬物嗜好性VASは薬物嗜好性の微妙に異なる側面を評価する。
【0311】
「現時点での」薬物嗜好性VASは、対象の質問された時点での薬物嗜好性を評価する、というのも、それは想起バイアスをあまり受け易くないものであり得、薬物作用の経時変化を理解するのに有用であると予想されるからである。VAS項目は2枚のスクリーン画像上に表示された。対象はマウスを使用してカーソルを小さな縦長四角(「スライダー」)の上に配置し、それをクリックしてそれを左右に0~100の目盛り上に移動させた。応答を登録するために対象はその後、水平な線の下に現れた「OK」ボタンを押した。「0」のスコアが「強い嫌悪」を表し、「100」のスコアが「強い嗜好」を表す一方、50のスコアは「好きでも嫌いでもない」を表す。
【0312】
全体的薬物嗜好性VAS及び薬物再使用VASは、「全般的な」薬物作用、及び薬物を再び使用する対象の願望を評価する(つまり、実験過程全体にわたって何らかの引き継がれる作用を含めた自覚的作用を考慮する)と考えられ、評価時(すなわち日の最後及び/または翌日)までに対象が概してしらふになっているという付加的利点を有する。VAS項目は2枚のスクリーン画像上に表示された。対象はマウスを使用してカーソルを小さな縦長四角(「スライダー」)の上に配置し、それをクリックしてそれを左右に0~100の目盛り上に移動させた。応答を登録するために対象はその後、水平な線の下に現れた「OK」ボタンを押した。これらのVASの大半において、0=全くない、及び100=極度にある、である。薬物再使用VASでは、「0」のスコアが「確実にない」を表し、「100」のスコアが「確実にある」を表す一方、50=中立的(気にならない)を表す。
【0313】
他のVAS項目は、正、負及び他の自覚的作用を測定して試験薬に対する薬理学的応答を評価するものであった。単極の良質作用VAS及び不良作用VASに加えて両極の良質及び悪質作用VASを含めた、というのも、単極の良質作用VAS及び不良作用VASを考慮に入れただけでは所与の時点におけるこれらの2つの相反する作用の相対的特徴がそう簡単に理解され得ないからである。高揚感、覚醒/眠気、動揺/安定、任意の作用は、薬物作用についての追加の意味深い情報を提供するものと予想される。
【0314】
覚醒/眠気VASスコアについては、対象はマウスを使用してカーソルを小さな縦長四角(「スライダー」)の上に配置し、それをクリックしてそれを左右に0~100の目盛り上に移動させた。応答を登録するために対象はその後、水平な線の下に現れた「OK」ボタンを押した。「0」のスコアは「非常に眠い」を表し、50のスコアは「どちらでもない、眠くもないし覚醒してもない」を表し、「100」のスコアは「非常に覚醒している」を表す。
【0315】
動揺/安定VASスコアについては、対象はマウスを使用してカーソルを小さな縦長四角(「スライダー」)の上に配置し、それをクリックしてそれを左右に0~100の目盛り上に移動させた。応答を登録するために対象はその後、水平な線の下に現れた「OK」ボタンを押した。「0」のスコアは「非常に安定している」を表し、50のスコアは「どちらでもない、安定してもないし動揺してもない」を表し、「100」のスコアは「非常に動揺している」を表す。
【0316】
分割的注意検査(DAT)結果を含めた認知及び精神運動作用を
図19に示し、選択反応時間(CRT)結果を
図20に示す。これらの検査は薬理作用の客観的評価を提供するために含めた。
【0317】
選択反応時間は、決断を伴うコンピュータに基づく検査である。「はい」と「いいえ」の2つの単語がコンピュータスクリーン上に現れる。対象は対応するボタンをできる限り素早く押す。CRT課題は、精神運動能力を測定するために用いられる古典的な反応時間の検査である。この検査の間、参加者に、スクリーン上に表示された数値キーパッド等価物を提示する。参加者に、スクリーン上で光ったキーに対応する別のキーパッドのボタンを素早く押すように求めた。CRT課題は、3つの結果可変量を含んでいた:RRT、MRT及びTRT。RRTは、参加者が光に気付くのに掛かる時間(すなわち、刺激開始と、参加者の開始ボタンからの彼または彼女の指の持上げとの間の時間)である。MRTは、この課題の運動成分を示し、参加者の開始ボタンからの彼または彼女の指の持上げと、応答ボタンへの触れとの間の時間である。TRTはRRTとMRTとの合計である。
【0318】
分割的注意検査は、同時視覚的標的検出成分を有する手作業の追跡検査である。参加者に、この測定を実行するための引き金を有する操縦棒を提供した。検査中、参加者に飛行機及び無秩序に曲がりくねった道路の画像を提示した。道路が画面を下へと移動するにつれて参加者は努力して飛行機の画像を道路の中央に配置することになっていた。
【0319】
50名の対象が治療され、以下の評価項目を有する試験を完遂した。試験結果を表6にまとめ、患者の人口統計データを表7にまとめる。
表6:肝要な評価項目の概要(薬物嗜好性E
max)
【表8】
表7:ヒト乱用傾向人口統計
【表9】
【0320】
トリアゾラムを、その治療上指示される0.5mgまたは1.0mgの1日用量で試験対象に投与し、薬物嗜好性視覚的アナログ尺度(「VAS」)結果をプラセボ及びトリアゾラムの両投薬量レベルについて評価した。結果を以下の表8に示す。
表8:薬物嗜好性VAS-EMAXトリアゾラム0.5mg、1mg対プラセボ
【表10】
【0321】
0.5mg及び1mgのトリアゾラムはどちらも有意な(つまり、10より大きいまたは15の点差)プラセボからの平均差を示し、試験実行可能性を示した。トリアゾラム1mgはトリアゾラム0.5mg(20.4点)に比べてプラセボとのより大きな差(23.5点)を呈した。
【0322】
1.0mg、6.0mg及び10.0mgの1日用量の化合物(1C)を試験対象に投与し、4つ全ての投薬量レベルの化合物(1C)について薬物嗜好性VAS結果を評価し、以下の表9及び表10に示すようにトリアゾラム(0.5mg及び1.0mg)及びプラセボと比較した。
表9:薬物嗜好性VAS-0.5mg、1mgのトリアゾラムとのE
MAX比較
【表11】
1mgの化合物(1C)に対する薬物嗜好性は0.5mg及び1mgのトリアゾラムよりも統計学的に小さかった。6mg及び10mgの化合物(1C)に対する薬物嗜好性はどちらも0.5mg及び1mgのトリアゾラムとの統計学的差がなかった。
表10:薬物嗜好性VAS-プラセボとのE
MAX比較(11点差)
【表12】
【0323】
1mgの化合物(1C)に対する薬物嗜好性はプラセボに比べて統計学的にあまり大きくはなかったが、6.0mg及び10.0mgの化合物(1C)はプラセボよりも大きな薬物嗜好性を示した。
【0324】
安全性及び忍容性については、化合物(1C)の投与中に生じる有害事象(「AE」)プロファイルをモニタリングし、トリアゾラム及びプラセボと比較し、結果を以下の表11に示す。
表11:最も頻繁な有害事象
【表13】
有害事象をMedDRA用語にコード化した。AEに関するデータを、治療により発現した兆候及び症状(TESS)の観点を用いて解析した。治療により発現した兆候及び症状は、
治療前には存在せず治療中に発現する;または
治療前に存在していたが治療前には止んでおり治療中に再び発現する;または
AEが継続している場合に治療前の状態に比べて治療中に強さが悪化する、
AEとして定義される。
【0325】
特定の対象についてMedDRA基本語を一度より多く報告する場合があったが、特定のMedDRA基本語の発生数には対象を一度だけ算入した。治療下で発現したAE(「TEAE」)については別個の要約を最大強さ(軽度、中等度、重度)、及び試験薬との関係性(あり、なし)によって示すことになる。研究員が事象を治療との関係が「確実にある、おそらくある、もしかするとある、またはありそうにない」とCRFに報告した場合にTEAEが試験薬に関係していると考察した。
【0326】
各試験群に対して酸素飽和度も測定し、結果を
図25に示す。
【0327】
アッセイ感度は満たされ、したがって試験の妥当性の確証が得られた。0.5mg及び1mgの両方のトリアゾラムに対する薬物嗜好性はプラセボよりも有意に大きく、1mgのトリアゾラムは0.5mgのトリアゾラムに比べてプラセボからの薬物嗜好性がより大きかった。
【0328】
1mgの化合物(1C)に対する薬物嗜好性は0.5mg及び1.0mgのトリアゾラムよりも統計学的に小さかった。6mg及び10mgの化合物(1C)に対する薬物嗜好性は0.5mg及び1mgのトリアゾラムとの統計学的差がなかった。
【0329】
1mgの化合物(1C)に対する薬物嗜好性はプラセボと同程度であった。6mg及び10mgの化合物(1C)に対する薬物嗜好性はプラセボに対する薬物嗜好性よりも有意に大きかった。
【0330】
化合物(1C)は忍容性が良好であった。この試験は、1mgの化合物(1C)のAEプロファイルがトリアゾラムよりも好ましかったこと、及び治療量で投与されるトリアゾラムに比べて6mg及び10mg(すなわち治療量を上回る用量)の化合物(1C)では運動失調、しゃっくり、健忘症及び複視を含めた特定のAEの結果がより優れていたことを実証した。
【0331】
6.12 実施例12:アルコール摂取の存在下及び非存在下での化合物(1C)の薬物動態プロファイル
この試験は、安全性、及び健常対象における化合物(1C)とアルコールとの薬物動態(「PK」)相互作用を評価するためにデザインされた。0.7g/kgのアルコール、及び/または2及び6mgの化合物(1C)錠剤を、実施例11に記載されるのと同じ配合組成を用いて単独で投与したかまたは共投与した。試験は単施設無作為化単回用量二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験としてデザインされ、46名の対象が試験の一部としての治療を完遂した。
【0332】
0.7g/kgのアルコールの用量は、およそ0.08g/dLの血中アルコール濃度につながり得るビンジ飲酒のNIAAA定義と合致していた。米国においてこれは一般に、人の法的信用が損なわれるレベルであると考えられている。加えて、そのような用量レベルは、以前に完了した関係するアルコール相互作用研究において研究されたことがあり、その中で安全性及び忍容性が同様の集団において確立された(Hong Sun et al.“Psychomotor effects,pharmacokinetics and safety of the orexin receptor antagonist suvorexant administered in combination with alcohol in healthy subjects.”Journal of Psychopharmacology 2015,Vol.29(11)1159-1169)。
【0333】
手短に述べると、盲検化されたアルコール飲料またはプラセボ飲料を20~30分間掛けて摂取させた。飲酒速度を制御するために、飲料を3つの部分に分け、10分ごとにおよそ1/3ずつ、10分の時間を掛けて投与した(対象に彼ら自身のペースで最後まで摂取させた)。
【0334】
化合物(1C)の投薬の10分前(「-10分目」)に対象は3つの部分のうちの1つ目を飲み始めた。3つの部分のうちの2つ目を提供した時に時間0(化合物(1C)投与)が始まった。対象にアルコール飲料と一緒に化合物(1C)を飲み込ませ、なお、対象がアルコールを摂取し切るのに十分に速くアルコールを飲むことができない場合には併せて少しの水を必要に応じて摂らせた。化合物(1C)投薬の10分後に最後の部分のアルコールを対象に与えて摂取させた。投薬の前後に水による洗口を提供した。投与した化合物(1C)用量が飲み込まれていることを確認するために口内チェックを実施した。研究員による評価のために生命兆候及び酸素飽和度SpO
2(
図26)を収集した。
【0335】
化合物(1C)の血漿中濃度及びアルコールの全血濃度を決定するための血液試料を、各治療期間中に各対象から得た。各対象について、可能な場合はいつも、化合物(1C)の血漿中濃度及び血中アルコールに基づいて以下のPK測定基準を算出した。
AUC
t 線形台形法によって算出される、時間0から最後の測定可能な血漿中濃度までの血漿中濃度-時間曲線下面積。
AUC
inf 無限に外挿した血漿中濃度-時間曲線下面積:
【数2】
〔式中、Ctは最後の測定可能な血漿中濃度であり、λzは見掛けの終末期速度定数である〕
C
max 観測される最大血漿中濃度
T
max 最大血漿中濃度までの時間
T
1/2 見掛けの終末期半減期:
【数3】
Fe% 0及び48時間目の尿中に排泄される未変化の化合物(1C)の割合
【0336】
単独で投与されるかまたは共投与される0.7g/kgのアルコール及び/または2及び6mgの化合物(1C)のPKプロファイルを
図23及び以下の表12に示す。
表12:アルコールあり及びなしでの化合物(1C)のPKプロファイル
【表14】
【0337】
このデータは、アルコールの存在下で化合物(1C)を投与しても化合物(1C)のPKプロファイルが変化しないことを示している。同様に、
図24に示すように、エタノールと一緒に2mgまたは6mgの化合物(1C)を共投与してもエタノールのPKプロファイルは影響を受けず、エタノールをプラセボと一緒に投与した場合と同じPKプロファイルであった。化合物(1C)とエタノールとのPK相互作用がないことは、アルコール摂取を再開してそれによって化合物(1C)とアルコールとが混ざる可能性がある対象に投与され得る薬物として重要な利点である。
【0338】
6.13 実施例13:ヒト肝臓代謝試験
およそ180名の健常対象及び総合的不眠症を有する50名の対象において化合物(1C)を評価した。健常対象において試験した最高用量は30mg単回用量及び10mg多回用量(14日間にわたって毎晩1回の投薬)であった。不眠症を有する対象において試験した最高用量は10mgであった。
【0339】
化合物(1C)のPKの十分な特性評価を、0.5%w/wメチルセルロース溶液中30mg以下の懸濁液製剤で、及び10mg以下の錠剤製剤で行ったが、この場合、1つより多い錠剤を共投与することによって用量に到達させてもよい。化合物(1C)は急速な吸収に続いて急速な消失を呈し、最大観測血漿中濃度(Tmax)に達するまでの平均時間は約1.5時間であり、平均見掛け終末半減期(t1/2)は2~3時間と決定された。腎排出は化合物(1C)の主要な排出経路であることが示され、未変化薬物の80~100%が48時間以内に尿中に回収された。完了した試験から決定した化合物(1C)の(血漿タンパク結合によって調整した)腎クリアランスは、ヒト糸球体濾過量よりも高いように見受けられ、腎トランスポーターに媒介されている可能性がある有効な分泌が腎クリアランスに関与していることを示唆している。ヒト血漿中に主要な代謝産物は同定されていない。単回経口投与後、化合物(1C)は10mg以下で用量にほぼ比例する曝露を示した。2週間にわたる1日1回の投薬では、化合物(1C)は10mg以下で用量にほぼ比例する曝露を示した。蓄積比は1.2:1と決定され、明らかな蓄積は認められなかった。
【0340】
化合物(1C)は、全ての試験用量レベルで重篤な有害事象(SAE)の報告がなく、安全で忍容性が良好であった。対象が最も頻繁に被った、治療下で発現した有害事象(TEAE)は傾眠であった。化合物(1C)に起因するもので、関係する実験室知見(結晶尿または血尿の発生を含む)、ならびに生命兆候及び心電図(ECG)に関する臨床的に重要な知見は全くなかった。完了した試験からのデータは、健常対象及び不眠症を有する夜間投薬後の対象の両方において覚醒、認知及び運動機能に対する予想される翌日の残存作用を除けば6mgの忍容性が良好であったことを示した。翌日の残存作用は用量依存的であり、用量が2mg以下である場合に投薬の8時間後に(プラセボレベルに)総じて減少した。
表13:化合物(1C)の腎PKパラメータのまとめ
【表15】
表14:尿の化合物(1C)薬物動態測定基準のまとめ
【表16】
【0341】
尿PK結果
用量範囲にわたって、未変化の化合物(1C)の大部分は1日目(単回用量)においても16日目(定常状態)においても用量投与後の最初の8時間の間に尿中に排出された。1日目において、0.6、2及び10mgの化合物(1C)が48時間掛けて未変化で尿中に排泄される用量の割合(Fe48)の平均はそれぞれ96%、100%及び84%であった。16日目において、0.6、2及び10mgの化合物(1C)が24時間掛けて未変化で尿中に排泄される用量の割合(Fe24)の平均はそれぞれ90%、102%及び81%であった。化合物(1C)の平均CL
rは全ての用量レベルで同程度であり1日目及び16日目のどちらの投薬の後も16.43~21.23L/時の範囲であった。
表15:尿の化合物(1C)薬物動態測定基準のまとめ
【表17】
【0342】
6.14 実施例14:動物の生体内での放射標識された化合物(1C)のクリアランス
ラット、イヌ及びサルによる化合物(1C)のクリアランスを、放射標識形態の化合物について動物からの排泄物試料(及び必要に応じて対照)を分析することによって決定した。
【0343】
具体的には、合計の化合物(1C)放射標識物質、すなわち元のまたは親化合物とその代謝産物の決定のために液体シンチレーション計数(「LSC」)を用いた。合成の放射標識された化合物(1C)は分子のキノキサリン骨格のフェニル基炭素原子として14Cを含んでおり、本明細書中で[14C]-化合物(1C)と表記される。14Cを薬物動態試験のための放射標識として使用することは認められている技術であり、放射標識を環構造に組み込むことは化合物(1C)に関係のない分子への放射標識の移動または交換を制限するために行われた。合成の[14C]-化合物(1C)のロットについての固有放射能は2.50MBq/mg(67.6μCi/mg)[物質を遊離塩基形態として表した場合には3.49MBq/mg(94.4μCi/mg)]であり、HPLCで決定される放射化学純度が98.5%超であった。合成の放射標識[14C]-化合物(1C)は使用前に-80℃の温度で遮光下で保存した。
【0344】
実験動物に(適切なビヒクル、例えばメチルセルロース懸濁液の中の)[14C]-化合物(1C)を経口投与した後、特定の時間間隔にわたって排泄物試料を採取した。投薬後に一定間隔で尿試料を採取した。糞便試料を溶解させる前にホモジナイズ及び希釈した。これらの試料のアリコートの計数を、それに液体シンチレーション流体を添加した後に行った。排泄物試料中の放射能の検出限界は、LSCによって決定される(ブランク試料からの)バックグラウンド計数の2倍に設定した。[14C]-化合物(1C)は、尿中で約25℃の温度で約4~5時間にわたって安定であり、4℃での冷蔵を保った場合には最長で15日(ラット尿)及び36日(イヌ尿)にわたって安定であった。ラット尿からの[14C]-化合物(1C)の回収は典型的には約91.6~約99.1%であった。イヌ尿からの[14C]-化合物(1C)の回収は典型的には約100.9~約105.0%であった。
【0345】
ラットに与えた[14C]-化合物(1C)の経口用量は急速に吸収され、広範に分布し、急速に消失した。経口投薬後に[14C]-化合物(1C)負荷が最も高かったラットの臓器は肝臓及び腎臓であった。[14C]-化合物(1C)に由来する放射能は投薬から72時間後のどのラット組織においても痕跡レベル(定量限界未満)でしかみられなかった。
【0346】
検査した全ての種において、検出される[14C]-化合物(1C)の主要な代謝産物はなかった。ほんのわずかな若干の代謝産物が、タンデム型質量分析検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(「HPLC-MS-MS」)で動物の胆汁、尿及び糞便の中に同定された。これらの代謝産物は[14C]-化合物(1C)の6-水酸化物、1-水酸化物、脱炭酸物及び+2形態であった。
【0347】
1週間の試験において、[
14C]-化合物(1C)の排出は、雄のラット及びサルにおいては主に糞便を介するものであったが、イヌにおいては尿と糞便の両方を介するものであり、以下の表16は、[
14C]-化合物(1C)として投与された
14Cの量に対する回収された
14C量の比率の平均から平均消失%を決定した結果の要約を示す。
表16:経口投薬から168時間以内の[
14C]-化合物(1C)由来の放射能の消失%
【表18】
継続期間がより短い試験では、雌のラットは雄のラットよりも多くの化合物(1C)を尿を介して排出した:以下の表17はこれらの結果をまとめる。
表17:経口投薬から48時間以内の化合物(1C)由来放射能の消失%
【表19】
しかしながら、表17中のデータから、消失した合計量が雄及び雌のラットにおいて実質的に同一であったことには留意すべきである。
【0348】
この実施例から気付くことができるように、試験した全ての種において合計の平均消失%は極めて高く、約95%の低値から本質的に100%までの範囲であった。まとめると、この実施例の結果から明らかなように、試験した全ての種において[14C]-化合物(1C)は生体内であまり代謝されなかった。
【0349】
本発明は、本発明の数少ない態様の例示として意図した実施例の中で開示される具体的な実施形態によって範囲を限定されるべきでなく、機能的に等価な任意の実施形態が本発明の範囲に含まれる。実際、本明細書中に示され説明されているものに加えて本発明の様々な改変形態が当業者にとって明らかとなるであろうし、それを別記の特許請求の範囲に含むことを意図する。複数の参考文献を引用しているが、参照によりこれらの開示内容の全てをあらゆる目的のために本明細書に援用する。
なお、本発明は、以下の態様をも含むものである。
<1>
不眠症障害を治療または予防する方法であって、それを必要とするヒトに治療的有効量の式(I)の化合物
【化1】
を約0.5mg~約6.0mgの1日用量で投与することを含む、前記方法。
<2>
前記化合物が式(IA)の化合物
【化2】
である、上記1に記載の方法。
<3>
前記化合物が式(IB)の化合物
【化3】
である、上記1に記載の方法。
<4>
前記化合物が式(IC)の化合物
【化4】
である、上記1に記載の方法。
<5>
前記不眠症障害が、成人不眠症、小児不眠症、中途覚醒型不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する不眠症、またはその任意の組合せである、上記1~4のいずれかに記載の方法。
<6>
前記不眠症障害が成人不眠症である、上記5に記載の方法。
<7>
前記不眠症障害が小児不眠症である、上記5に記載の方法。
<8>
前記不眠症障害が中途覚醒型不眠症である、上記5に記載の方法。
<9>
前記不眠症障害が不眠症型アルコール誘発性睡眠障害である、上記5に記載の方法。
<10>
前記不眠症障害が、アルコール使用障害での不眠症である、上記5に記載の方法。
<11>
前記不眠症障害が、アルコール中止に関連する不眠症である、上記5に記載の方法。
<12>
前記不眠症障害が治療される、上記1~11のいずれかに記載の方法。
<13>
前記不眠症障害が予防される、上記1~11のいずれかに記載の方法。
<14>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの平均睡眠効率が、プラセボを投与されたヒトの平均睡眠効率の少なくとも約1.04倍である、上記1~13のいずれかに記載の方法。
<15>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの平均総睡眠時間が、プラセボを投与されたヒトの平均総睡眠時間よりも少なくとも約15分長い、上記1~13のいずれかに記載の方法。
<16>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの平均中途覚醒(WASO)が、プラセボを投与されたヒトの平均WASOよりも少なくとも約20分短い、上記1~13のいずれかに記載の方法。
<17>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの睡眠段階N2に費やされる平均時間量が、プラセボを投与されたヒトの睡眠段階N2に費やされる平均時間量よりも少なくとも約30分長い、上記1~13のいずれかに記載の方法。
<18>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mg~約3.0mgである、上記1~17のいずれかに記載の方法。
<19>
前記化合物の前記1日用量が約3.0mgである、上記18に記載の方法。
<20>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mg~約2.0mgである、上記1~18のいずれかに記載の方法。
<21>
前記化合物の前記1日用量が約2.0mgである、上記20に記載の方法。
<22>
前記化合物の前記1日用量が約1.5mgである、上記20に記載の方法。
<23>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mg~約1.0mgである、上記1~18のいずれかに記載の方法。
<24>
前記化合物の前記1日用量が約1.0mgである、上記1~18及び上記23のいずれかに記載の方法。
<25>
前記化合物の前記1日用量が約0.75mgである、上記1~18及び上記23のいずれかに記載の方法。
<26>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mgである、上記1~18及び上記23のいずれかに記載の方法。
<27>
前記化合物の投与が、経口、非経口、静脈内、筋肉内、眼内、経皮及び経粘膜から選択される少なくとも1つの経路によるものである、上記1~26のいずれかに記載の方法。
<28>
前記化合物が経口投与される、上記1~27のいずれかに記載の方法。
<29>
前記化合物が、頬側、歯肉もしくは舌下投与される、または丸ごと飲み込む経口剤形の形態で投与される、上記28に記載の方法。
<30>
前記化合物の投与が、丸ごと飲み込む経口剤形によるものである、上記28に記載の方法。
<31>
前記1日用量が、意図する就床時刻の約60分前から意図する就床時刻のあたりまでに投与される、上記1~30のいずれかに記載の方法。
<32>
前記1日用量が単回1日用量である、上記1~31のいずれかに記載の方法。
<33>
不眠症障害の治療または予防のための医薬品の調製における上記1~4のいずれかに定義される化合物の使用であって、単一の医薬品が約0.16mg~約8.0mgの用量の前記化合物を含有する、前記使用。
<34>
前記不眠症障害が、成人不眠症、小児不眠症、中途覚醒型不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する不眠症、またはその任意の組合せである、上記33に記載の使用。
<35>
前記不眠症障害が成人不眠症である、上記33に記載の使用。
<36>
前記不眠症障害が小児不眠症である、上記33に記載の使用。
<37>
前記不眠症障害が中途覚醒型不眠症である、上記33に記載の使用。
<38>
前記不眠症障害が不眠症型アルコール誘発性睡眠障害である、上記33に記載の使用。
<39>
前記不眠症障害が、アルコール使用障害での不眠症である、上記33に記載の使用。
<40>
前記不眠症障害が、アルコール中止に関連する不眠症である、上記33に記載の使用。
<41>
前記不眠症障害が治療される、上記33~40のいずれかに記載の使用。
<42>
前記不眠症障害が予防される、上記33~40のいずれかに記載の使用。
<43>
前記医薬品が、経口、非経口、静脈内、筋肉内、眼内、経皮及び経粘膜から選択される少なくとも1つの経路による投与のために製剤化されたものである、上記33~42のいずれかに記載の使用。
<44>
前記医薬品が、経口投与のために製剤化されたものである、上記33~43のいずれかに記載の使用。
<45>
前記医薬品が、頬側、歯肉もしくは舌下投与のために製剤化されたものである、または丸ごと飲み込む経口剤形として製剤化されたものである、上記44に記載の使用。
<46>
前記医薬品が、口腔内崩壊錠として製剤化されたものである、上記44に記載の使用。
<47>
前記医薬品が、丸ごと飲み込む経口剤形として製剤化されたものである、上記44に記載の使用。
<48>
単一の医薬品が約0.5mg~約6.0mgの用量の前記化合物を含有する、上記33~47のいずれかに記載の使用。
<49>
不眠症障害を治療または予防するための医薬組成物であって、約0.16mg~約8.0mgの用量の上記1~4のいずれかに定義される化合物を含む、前記医薬組成物。
<50>
前記不眠症障害が、成人不眠症、小児不眠症、中途覚醒型不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する不眠症、またはその任意の組合せである、上記49に記載の医薬組成物。
<51>
前記不眠症障害が成人不眠症である、上記50に記載の医薬組成物。
<52>
前記不眠症障害が小児不眠症である、上記50に記載の医薬組成物。
<53>
前記不眠症障害が中途覚醒型不眠症である、上記50に記載の医薬組成物。
<54>
前記不眠症障害が不眠症型アルコール誘発性睡眠障害である、上記50に記載の医薬組成物。
<55>
前記不眠症障害が、アルコール使用障害での不眠症である、上記50に記載の医薬組成物。
<56>
前記不眠症障害が、アルコール中止に関連する不眠症である、上記50に記載の医薬組成物。
<57>
前記不眠症障害が治療される、上記49~56のいずれかに記載の医薬組成物。
<58>
前記不眠症障害が予防される、上記49~56のいずれかに記載の医薬組成物。
<59>
前記組成物が約0.5mg~約6.0mgの用量の前記化合物を含む、上記49~58のいずれかに記載の医薬組成物。
<60>
前記組成物が約0.5mg~約3.0mgの用量の前記化合物を含む、上記49~59のいずれかに記載の医薬組成物。
<61>
前記組成物が約3.0mgの用量の前記化合物を含む、上記60に記載の医薬組成物。
<62>
前記組成物が約0.5mg~約2.0mgの用量の前記化合物を含む、上記49~60のいずれかに記載の医薬組成物。
<63>
前記組成物が約2.0mgの用量の前記化合物を含む、上記49~60及び上記62のいずれかに記載の医薬組成物。
<64>
前記組成物が約1.5mgの用量の前記化合物を含む、上記49~60及び上記62のいずれかに記載の医薬組成物。
<65>
前記組成物が約0.5mg~約1.0mgの用量の前記化合物を含む、上記49~60のいずれかに記載の医薬組成物。
<66>
前記組成物が約1.0mgの用量の前記化合物を含む、上記49~60及び上記65のいずれかに記載の医薬組成物。
<67>
前記組成物が約0.75mgの用量の前記化合物を含む、上記49~60及び上記65のいずれかに記載の医薬組成物。
<68>
前記組成物が約0.5mgの用量の前記化合物を含む、上記49~60及び上記65のいずれかに記載の医薬組成物。
<69>
前記組成物がさらに、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、上記49~68のいずれかに記載の医薬組成物。
<70>
前記組成物が、経口投与に適した単位剤形にある、上記49~69のいずれかに記載の医薬組成物。
<71>
前記単位剤形が、カプセル剤、ゲルキャップ剤、カプレット剤または錠剤である、上記70に記載の医薬組成物。
<72>
前記単位剤形が口腔内崩壊錠である、上記70に記載の医薬組成物。
<73>
前記単位剤形が、丸ごと飲み込む錠剤である、上記70に記載の医薬組成物。
<74>
アルコール中止に関連する不眠症を治療または予防する方法であって、それを必要とするヒトに治療的有効量の式(I)の化合物
【化5】
を投与することを含む、前記方法。
<75>
前記化合物が式(IC)の化合物
【化6】
である、上記74に記載の方法。
<76>
式(IC)の化合物が、約0.5mg~約6.0mgの1日用量で投与される、上記75に記載の方法。
<77>
式(IC)の化合物が、約0.5mg~約2.0mgの1日用量で投与される、上記76に記載の方法。
<78>
式(IC)の化合物を受ける前にアルコール摂取を中止している、アルコール使用障害と診断された対象に、式(IC)の化合物が投与される、上記76に記載の方法。
<79>
式(IC)の化合物を受ける少なくとも7日前にアルコール摂取を中止している、アルコール使用障害と診断されたヒトに、式(IC)の化合物が投与される、上記78に記載の方法。
<80>
式(IC)の化合物を受ける28日前以内にアルコール摂取を中止している、アルコール使用障害と診断されたヒトに、式(IC)の化合物が投与される、上記78に記載の方法。
<81>
アルコールを摂取することを中止していない、アルコール使用障害と診断されたヒトに、式(IC)の化合物が投与される、上記76に記載の方法。
<82>
アルコール使用障害を治療することを狙いとする1つ以上の薬剤と組み合わせて式(IC)の化合物が投与される、上記78に記載の方法。
<83>
式(IC)の化合物が、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、ガバペンチン、トピラマート、ナルメフェネム(nalmefenem)、ナロキソン、フルオキセチン及びクエチアピンから選択される1つ以上の薬剤と付随的に投与される、上記82に記載の方法。
<84>
肝機能障害を有すると診断されたヒトに式(IC)の化合物が、肝機能障害を有すると診断されていないヒトに投与される式(IC)の化合物の1日用量と同じ1日用量で投与される、上記76に記載の方法。
<85>
前記1日用量の式(IC)の化合物が、約0.05g/kg~約5.0g/kgのエタノールを摂取したヒトに投与され、エタノールを摂取した前記ヒトへの式(IC)の化合物の投与の結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
が、エタノールの非存在下で同じ1日用量での前記ヒトへの式(IC)の化合物の投与の結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
と統計的に差がない、上記76に記載の方法。
<86>
前記1日用量の式(IC)の化合物が、約0.05g/kg~約5.0g/kgのエタノールを摂取したヒトに投与され、式(IC)の化合物と共にエタノールを摂取した結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
が、同じ量のエタノールを単独で摂取した結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
と統計的に差がない、上記76に記載の方法。
<87>
不眠症障害を治療または予防する方法に使用するための式(I)の化合物
【化7】
であって、1日用量が約0.5mg~約6.0mgである、前記化合物。
<88>
前記化合物が式(IA)の化合物
【化8】
である、上記87に記載の用途のための化合物。
<89>
前記化合物が式(IB)の化合物
【化9】
である、上記87に記載の用途のための化合物。
<90>
前記化合物が式(IC)
【化10】
の化合物である、上記1に記載の用途のための化合物。
<91>
前記不眠症障害が、成人不眠症、小児不眠症、中途覚醒型不眠症、不眠症型アルコール誘発性睡眠障害、アルコール使用障害での不眠症、アルコール中止に関連する不眠症、またはその任意の組合せである、上記1~4のいずれかに記載の用途のための化合物。
<92>
前記不眠症障害が成人不眠症である、上記91に記載の用途のための化合物。
<93>
前記不眠症障害が小児不眠症である、上記91に記載の用途のための化合物。
<94>
前記不眠症障害が中途覚醒型不眠症である、上記91に記載の用途のための化合物。
<95>
前記不眠症障害が不眠症型アルコール誘発性睡眠障害である、上記91に記載の用途のための化合物。
<96>
前記不眠症障害が、アルコール使用障害での不眠症である、上記91に記載の用途のための化合物。
<97>
前記不眠症障害が、アルコール中止に関連する不眠症である、上記91に記載の用途のための化合物。
<98>
前記不眠症が治療される、上記87~97に記載の用途のための化合物。
<99>
前記不眠症が治療される、上記87~97のいずれかに記載の用途のための化合物。
<100>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの平均睡眠効率が、プラセボを投与されたヒトの平均睡眠効率の少なくとも約1.04倍である、上記87~99のいずれかに記載の用途のための化合物。
<101>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの平均総睡眠時間が、プラセボを投与されたヒトの平均総睡眠時間よりも少なくとも約15分長い、上記87~99のいずれかに記載の用途のための化合物。
<102>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの平均中途覚醒(WASO)が、プラセボを投与されたヒトの平均WASOよりも少なくとも約20分短い、上記87~99のいずれかに記載の用途のための化合物。
<103>
1日用量の前記化合物を2日連続で投与されたヒトの睡眠段階N2に費やされる平均時間量が、プラセボを投与されたヒトの睡眠段階N2に費やされる平均時間量よりも少なくとも約30分長い、上記87~99のいずれかに記載の用途のための化合物。
<104>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mg~約3.0mgである、上記87~103のいずれかに記載の用途のための化合物。
<105>
前記化合物の前記1日用量が約3.0mgである、上記104に記載の用途のための化合物。
<106>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mg~約2.0mgである、上記87~104のいずれかに記載の用途のための化合物。
<107>
前記化合物の前記1日用量が約2.0mgである、上記87~104及び上記106のいずれかに記載の用途のための化合物。
<108>
前記化合物の前記1日用量が約1.5mgである、上記87~104及び上記106のいずれかに記載の用途のための化合物。
<109>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mg~約1.0mgである、上記87~104のいずれかに記載の用途のための化合物。
<110>
前記化合物の前記1日用量が約1.0mgである、上記87~104及び上記109のいずれかに記載の用途のための化合物。
<111>
前記化合物の前記1日用量が約0.75mgである、上記87~104及び上記109のいずれかに記載の用途のための化合物。
<112>
前記化合物の前記1日用量が約0.5mgである、上記87~104及び上記109のいずれかに記載の用途のための化合物。
<113>
前記化合物の投与が、経口、非経口、静脈内、筋肉内、眼内、経皮及び経粘膜から選択される少なくとも1つの経路によるものである、上記87~112のいずれかに記載の用途のための化合物。
<114>
前記化合物が経口投与される、上記87~113のいずれかに記載の用途のための化合物。
<115>
前記化合物が、頬側、歯肉もしくは舌下投与される、または丸ごと飲み込む経口剤形の形態で投与される、上記114に記載の用途のための化合物。
<116>
前記化合物の投与が、丸ごと飲み込む経口剤形によるものである、上記114に記載の用途のための化合物。
<117>
前記1日用量が、意図する就床時刻の約60分前から意図する就床時刻のあたりまでに投与される、上記87~116のいずれかに記載の用途のための化合物。
<118>
前記1日用量が単回1日用量である、上記87~117のいずれかに記載の用途のための化合物。
<119>
アルコール中止に関連する不眠症を治療または予防する方法に使用するための式(I)の化合物
【化11】
<120>
前記化合物が式(IC)の化合物
【化12】
である、上記119に記載の用途のための化合物。
<121>
式(IC)の化合物が約0.5mg~約6.0mgの1日用量で投与される、上記120に記載の用途のための化合物。
<122>
式(IC)の化合物が約0.5mg~約2.0mgの1日用量で投与される、上記121に記載の用途のための化合物。
<123>
式(IC)の化合物を受ける前にアルコール摂取を中止している、アルコール使用障害と診断された対象に、式(IC)の化合物が投与される、上記121に記載の用途のための化合物。
<124>
式(IC)の化合物を受ける少なくとも7日前にアルコール摂取を中止している、アルコール使用障害と診断された対象に、式(IC)の化合物が投与される上記123に記載の用途のための化合物。
<125>
式(IC)の化合物を受ける28日前以内にアルコール摂取を中止している、アルコール使用障害と診断された対象に、式(IC)の化合物が投与される、上記123に記載の用途のための化合物。
<126>
アルコールを摂取することを中止していない、アルコール使用障害と診断された対象に、式(IC)の化合物が投与される、上記121に記載の用途のための化合物。
<127>
アルコール使用障害を治療することを狙いとする1つ以上の薬剤と組み合わせて式(IC)の化合物が投与される、上記123に記載の用途のための化合物。
<128>
式(IC)の化合物が、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、ガバペンチン、トピラマート、ナルメフェネム(nalmefenem)、ナロキソン、フルオキセチン及びクエチアピンから選択される1つ以上の薬剤と付随的に投与される、上記127に記載の用途のための化合物。
<129>
肝機能障害を有すると診断されたヒトに式(IC)の化合物が、肝機能障害を有すると診断されていないヒトに投与される式(IC)の化合物の1日用量と同じ1日用量で投与される、上記121に記載の用途のための化合物。
<130>
前記1日用量の式(IC)の化合物が、約0.05g/kg~約5.0g/kgのエタノールを摂取したヒトに投与され、エタノールを摂取した前記ヒトへの式(IC)の化合物の投与の結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
が、エタノールの非存在下で同じ1日用量での前記ヒトへの式(IC)の化合物の投与の結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
と統計的に差がない、上記121に記載の用途のための化合物。
<131>
前記1日用量の式(IC)の化合物が、約0.05g/kg~約5.0g/kgのエタノールを摂取したヒトに投与され、式(IC)の化合物と共にエタノールを摂取した結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
が、同じ量のエタノールを単独で摂取した結果として得られるT
max
、AUC及びT
1/2
と統計的に差がない、上記121に記載の用途のための化合物。