特許 7108120 貸付型ファンド運営システム、貸付型ファンド運営方法及びそのプログラム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-07-19

(45)【発行日】2022-07-27

(54)【発明の名称】貸付型ファンド運営システム、貸付型ファンド運営方法及びそのプログラム

(51)【国際特許分類】

   G06Q 40/06 20120101AFI20220720BHJP

【ＦＩ】

G06Q40/06

【請求項の数】 13

(21)【出願番号】P 2021193546

(22)【出願日】2021-11-29

【審査請求日】2021-11-29

【新規性喪失の例外の表示】特許法第３０条第２項適用 令和３年９月１４日に自社ウェブサイトにて公開 〔刊行物等〕 令和３年９月１４日に自社ウェブサイトにて公開 〔刊行物等〕 令和３年９月１４日に自社ウェブサイトにて公開 〔刊行物等〕 令和３年９月１４日に自社ウェブサイトにて公開

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】521520267

【氏名又は名称】ファンズ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100177220

【弁理士】

【氏名又は名称】小木 智彦

(72)【発明者】

【氏名】藤田 雄一郎

(72)【発明者】

【氏名】▲高▼尾 知達

【審査官】久宗 義明

(56)【参考文献】

【文献】米国特許出願公開第２００８／０２６２９５６（ＵＳ，Ａ１）

【文献】米国特許出願公開第２０１１／００１６０４４（ＵＳ，Ａ１）

【文献】米国特許出願公開第２０１０／０００５０３０（ＵＳ，Ａ１）

【文献】福士信太郎，クラウド・ファンディングにおける信託の 活用について，信託法研究，日本，信託法学会，2014年，第39号，3～19ページ，[令和4年4月5日検索], インターネット<URL: http://shintakuhogakkai.jp/journal/39号.html>

【文献】左光 敦，Ｐ２Ｐレンディングの仕組みと法規制，金融研究，日本，株式会社国際文献社，2018年01月，第37巻、第１号 ，109～152ページ

【文献】高田 恭典，GK-TKスキームとは？投資家が知っておきたい基礎知識を解説，[online]，日本，株式会社ALLアセットパートナーズ，2020年08月17日，[令和4年4月5日検索], インターネット<URL: https://www.maeda.soraichi-fund.jp/crowdfunding/post-14.html>

【文献】高橋 正彦，債権譲渡ファイナンスの法と経済学，横浜経営研究，日本，横浜経営学会，2014年12月，３５巻３号，169～207ページ，[令和4年4月5日検索], インターネット<https://www.cba.ynu.ac.jp/gakkai＼kaisi/pdf/35-3-3.pdf>

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｇ０６Ｑ １０／００－９９／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

借り手企業から、貸付ファンドによる資金調達案件を受け付ける案件受付手段と、
前記資金調達案件に対して、前記貸付ファンドの募集ページを作成するページ作成手段と、
前記募集ページにおいて、投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付ける応募受付手段と、
前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認する入金確認手段と、
ファンド組成企業に対して、前記投資家から募った出資金を送金する送金手段と、
前記投資家と前記ファンド組成企業との間で、匿名組合契約の契約手続を行う第１契約手続手段と、
前記ファンド組成企業から、前記借り手企業に対して、前記投資家から募った出資金を原資とする貸付を行う貸付手段と、
前記借り手企業と前記ファンド組成企業との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行う第２契約手続手段と、
前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位を、前記ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転する移転手続を行う移転手続手段と、
弁済期日までに、前記契約上の地位を移転した前記合同会社に対して、前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされたかどうかを確認する弁済確認手段と、
前記投資家に対して、前記貸付に対する出資金額の比率に応じて、前記弁済された金額を分配する金額分配手段と、
前記投資家から、所望のタイミングで前入金を受け付ける前入金受付手段と、
を備え、
前記募集ページにおいて、前記前入金を行った投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けた場合には、前記前入金を出資金の入金に充当する貸付ファンド運営システム。

【請求項2】

前記受け付けた資金調達案件に対して、審査を行う審査手段と、
を備え、
前記ページ作成手段は、前記審査を通過した資金調達案件にのみ、前記貸付ファンドの募集ページを作成する
請求項１に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項3】

前記送金手段による送金と、前記第１契約手続手段による契約手続とを、同時に行う請求項１又は請求項２に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項4】

前記貸付手段による貸付と、前記第２契約手続手段による契約手続とを、同時に行う請求項１から請求項３の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項5】

前記入金確認手段は、所定期間以内に前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認する請求項１から請求項４の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項6】

前記入金確認手段は、所定期間以内に前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認し、前記所定期間以内に入金がなかった前記投資家については、応募をキャンセルする請求項１から請求項５の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項7】

前記ページ作成手段は、前記資金調達案件の希望資金額を複数回に分割して、複数の募集ページを作成する請求項１から請求項６の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項8】

前記応募受付手段は、前記資金調達案件の希望資金額に対して、ある一定金額までは抽選により受付を行い、ある一定金額以上は応募した順番に応じて受付を行う請求項１から請求項７の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項9】

前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位の移転後に、対抗要件を具備する対抗要件具備手段と、
を備える請求項１から請求項８の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項10】

前記弁済確認手段は、弁済期日までに前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされていない場合には、債権回収業者に債権回収業務を発注する請求項１から請求項９の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項11】

前記金額分配手段は、前記投資家の出資金額の比率に応じて、分配期日までに弁済された金額を分配する時に、分配期日を複数設定し、分配期日に応じて分配の利回りを変動して分配する請求項１から請求項１０の何れか１項に記載の貸付ファンド運営システム。

【請求項12】

貸付ファンド運営システムに、
借り手企業から、貸付ファンドによる資金調達案件を受け付けるステップと、
前記資金調達案件に対して、前記貸付ファンドの募集ページを作成するステップと、
前記募集ページにおいて、投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けるステップと、
前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認するステップと、
ファンド組成企業に対して、前記投資家から募った出資金を送金するステップと、
前記投資家と前記ファンド組成企業との間で、匿名組合契約の契約手続を行うステップと、
前記ファンド組成企業から、前記借り手企業に対して、前記投資家から募った出資金を原資とする貸付を行うステップと、
前記借り手企業と前記ファンド組成企業との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行うステップと、
前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位を、前記ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転する移転手続を行うステップと、
弁済期日までに、前記契約上の地位を移転した前記合同会社に対して、前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされたかどうかを確認するステップと、
前記投資家に対して、前記貸付に対する出資金額の比率に応じて、前記弁済された金額を分配するステップと、
前記投資家から、所望のタイミングで前入金を受け付けるステップと、
を備え、
前記募集ページにおいて、前記前入金を行った投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けた場合には、前記前入金を出資金の入金に充当する貸付ファンド運営方法。

【請求項13】

コンピュータに
借り手企業から、貸付ファンドによる資金調達案件を受け付けるステップ、
前記資金調達案件に対して、前記貸付ファンドの募集ページを作成するステップ、
前記募集ページにおいて、投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けるステップ、
前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認するステップ、
ファンド組成企業に対して、前記投資家から募った出資金を送金するステップ、
前記投資家と前記ファンド組成企業との間で、匿名組合契約の契約手続を行うステップと、
前記ファンド組成企業から、前記借り手企業に対して、前記投資家から募った出資金を原資とする貸付を行うステップ、
前記借り手企業と前記ファンド組成企業との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行うステップ、
前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位を、前記ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転する移転手続を行うステップ、
弁済期日までに、前記契約上の地位を移転した前記合同会社に対して、前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされたかどうかを確認するステップ、
前記投資家に対して、前記貸付に対する出資金額の比率に応じて、前記弁済された金額を分配するステップ、
前記投資家から、所望のタイミングで前入金を受け付けるステップ、
を実行させ、
前記募集ページにおいて、前記前入金を行った投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けた場合には、前記前入金を出資金の入金に充当するステップを実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、企業に資金を貸し出す貸付型ファンドを運営するための、貸付型ファンド運営システムを提供する技術に関する。

【背景技術】

【0002】

投資家の資産運用の1つに、企業に資金を貸し出す貸付型ファンドがある。近年、貸付型ファンドの運営に関する技術が注目されている。

【0003】

例えば、特許文献１では、第１類型のファンドを通じて募集した資金を第２類型のファンドを通じて募集した資金に編入して資金を運用し、第２類型のファンドに資本保護金額を設定して資本保護金額以上の損失が発生する場合に、運用する資金から第１類型のファンドを通じて募集した資金を分離して運用し、資金の運用により発生した収益を既設定した収益分配比率に応じて第１類型のファンド及び第２類型のファンドにそれぞれ分配する技術が提供されている。

【0004】

また、特許文献２では、ＳＰＣ（特別目的会社）など複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理する技術が提供されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】特表２０１５－５３３２３７号

【文献】特開２０１７－０９１２３８号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

貸付型ファンドには、ファンドを組成するファンド組成企業が倒産や破産をしてしまうと、借り手企業から弁済された金額を投資家に分配できないという問題がある。そのため、匿名組合契約における契約上の地位、及び金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転して、貸付型ファンドを運営する技術が求められている。

【0007】

しかしながら、特許文献１及び特許文献２に記載の技術では、匿名組合契約における契約上の地位、及び金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転して、貸付型ファンドを運営することはできない。

【0008】

従って、本発明は、匿名組合契約における契約上の地位、及び金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転して、貸付型ファンドを運営することにより、ファンドを組成するファンド組成企業が倒産や破産をしてしまった場合にも、借り手企業から弁済された金額を投資家に分配することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明では、以下のような解決手段を提供する。

【0010】

第１の特徴に係る発明は、
借り手企業から、貸付型ファンドによる資金調達案件を受け付ける案件受付手段と、
前記資金調達案件に対して、前記貸付型ファンドの募集ページを作成するページ作成手段と、
前記募集ページにおいて、投資家から前記貸付型ファンドへの応募を受け付ける応募受付手段と、
前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認する入金確認手段と、
ファンド組成企業に対して、前記投資家から募った出資金を送金する送金手段と、
前記投資家と前記ファンド組成企業との間で、匿名組合契約の契約手続を行う第１契約手続手段と、
前記ファンド組成企業から、前記借り手企業に対して、前記投資家から募った出資金を原資とする貸付を行う貸付手段と、
前記借り手企業と前記ファンド組成企業との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行う第２契約手続手段と、
前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位を、前記ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転する移転手続を行う移転手続手段と、
弁済期日までに、前記契約上の地位を移転した前記合同会社に対して、前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされたかどうかを確認する弁済確認手段と、
前記投資家に対して、前記貸付に対する出資金額の比率に応じて、前記弁済された金額を分配する金額分配手段と、
前記投資家から、所望のタイミングで前入金を受け付ける前入金受付手段と、
を備え、
前記募集ページにおいて、前記前入金を行った投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けた場合には、前記前入金を出資金の入金に充当する貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0011】

第１の特徴に係る発明によれば、貸付型ファンド運営システムにおいて、借り手企業から、貸付型ファンドによる資金調達案件を受け付ける案件受付手段と、前記資金調達案件に対して、前記貸付型ファンドの募集ページを作成するページ作成手段と、前記募集ページにおいて、投資家から前記貸付型ファンドへの応募を受け付ける応募受付手段と、前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認する入金確認手段と、ファンド組成企業に対して、前記投資家から募った出資金を送金する送金手段と、前記投資家と前記ファンド組成企業との間で、匿名組合契約の契約手続を行う第１契約手続手段と、前記ファンド組成企業から、前記借り手企業に対して、前記投資家から募った出資金を原資とする貸付を行う貸付手段と、前記借り手企業と前記ファンド組成企業との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行う第２契約手続手段と、前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位を、前記ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転する移転手続を行う移転手続手段と、弁済期日までに、前記契約上の地位を移転した前記合同会社に対して、前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされたかどうかを確認する弁済確認手段と、前記投資家に対して、前記貸付に対する出資金額の比率に応じて、前記弁済された金額を分配する金額分配手段と、前記投資家から、所望のタイミングで前入金を受け付ける前入金受付手段と、を備え、前記募集ページにおいて、前記前入金を行った投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けた場合には、前記前入金を出資金の入金に充当する。

【0012】

第１の特徴に係る発明は、貸付型ファンド運営システムのカテゴリであるが、貸付型ファンド運営方法、及びプログラムであっても同様の作用、効果を奏する。

【0013】

第２の特徴に係る発明は、第１の特徴に係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記受け付けた資金調達案件に対して、審査を行う審査手段と、
を備え、
前記ページ作成手段は、前記審査を通過した資金調達案件にのみ、前記貸付型ファンドの募集ページを作成する貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0014】

第２の特徴に係る発明によれば、第１の特徴に係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記受け付けた資金調達案件に対して、審査を行う審査手段と、を備え、前記ページ作成手段は、前記審査を通過した資金調達案件にのみ、前記貸付型ファンドの募集ページを作成する。

【0015】

第３の特徴に係る発明は、第１又は第２の特徴に係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記送金手段による送金と、前記第１契約手続手段による契約手続とを、同時に行う貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0016】

第３の特徴に係る発明によれば、第１又は第２の特徴に係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記送金手段による送金と、前記第１契約手続手段による契約手続とを、同時に行う。

【0017】

第４の特徴に係る発明は、第１の特徴から第３の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記貸付手段による貸付と、前記第２契約手続手段による契約手続とを、同時に行う貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0018】

第４の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第３の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記貸付手段による貸付と、前記第２契約手続手段による契約手続とを、同時に行う。

【0019】

第５の特徴に係る発明は、第１の特徴から第４の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記入金確認手段は、所定期間以内に前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認する貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0020】

第５の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第４の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記入金確認手段は、所定期間以内に前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認する。

【0021】

第６の特徴に係る発明は、第１の特徴から第５の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記入金確認手段は、所定期間以内に前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認し、前記所定期間以内に入金がなかった前記投資家については、応募をキャンセルする貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0022】

第６の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第５の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記入金確認手段は、所定期間以内に前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認し、前記所定期間以内に入金がなかった前記投資家については、応募をキャンセルする。

【0023】

第７の特徴に係る発明は、第１の特徴から第６の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記ページ作成手段は、前記資金調達案件の希望資金額を複数回に分割して、複数の募集ページを作成する貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0024】

第７の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第６の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記ページ作成手段は、前記資金調達案件の希望資金額を複数回に分割して、複数の募集ページを作成する。

【0027】

第８の特徴に係る発明は、第１の特徴から第７の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記応募受付手段は、前記資金調達案件の希望資金額に対して、ある一定金額までは抽選により受付を行い、ある一定金額以上は応募した順番に応じて受付を行う貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0028】

第８の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第７の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記応募受付手段は、前記資金調達案件の希望資金額に対して、ある一定金額までは抽選により受付を行い、ある一定金額以上は応募した順番に応じて受付を行う。

【0029】

第９の特徴に係る発明は、第１の特徴から第８の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位の移転後に、対抗要件を具備する対抗要件具備手段と、
を備える貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0030】

第９の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第８の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位の移転後に、対抗要件を具備する対抗要件具備手段と、を備える。

【0031】

第１０の特徴に係る発明は、第１の特徴から第９の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記弁済確認手段は、弁済期日までに前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされていない場合には、債権回収業者に債権回収業務を発注する貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0032】

第１０の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第９の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記弁済確認手段は、弁済期日までに前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされていない場合には、債権回収業者に債権回収業務を発注する。

【0033】

第１１の特徴に係る発明は、第１の特徴から第１０の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムであって、
前記金額分配手段は、前記投資家の出資金額の比率に応じて、分配期日までに弁済された金額を分配する時に、分配期日を複数設定し、分配期日に応じて分配の利回りを変動して分配する貸付型ファンド運営システムを提供する。

【0034】

第１１の特徴に係る発明によれば、第１の特徴から第１０の特徴のいずれかに係る発明である貸付型ファンド運営システムにおいて、前記金額分配手段は、前記投資家の出資金額の比率に応じて、分配期日までに弁済された金額を分配する時に、分配期日を複数設定し、分配期日に応じて分配の利回りを変動して分配する。

【0035】

第１２の特徴に係る発明は、
貸付型ファンド運営システムに、
借り手企業から、貸付型ファンドによる資金調達案件を受け付けるステップと、
前記資金調達案件に対して、前記貸付型ファンドの募集ページを作成するステップと、
前記募集ページにおいて、投資家から前記貸付型ファンドへの応募を受け付けるステップと、
前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認するステップと、
ファンド組成企業に対して、前記投資家から募った出資金を送金するステップと、
前記投資家と前記ファンド組成企業との間で、匿名組合契約の契約手続を行うステップと、
前記ファンド組成企業から、前記借り手企業に対して、前記投資家から募った出資金を原資とする貸付を行うステップと、
前記借り手企業と前記ファンド組成企業との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行うステップと、
前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位を、前記ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転する移転手続を行うステップと、
弁済期日までに、前記契約上の地位を移転した前記合同会社に対して、前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされたかどうかを確認するステップと、
前記投資家に対して、前記貸付に対する出資金額の比率に応じて、前記弁済された金額を分配するステップと、
前記投資家から、所望のタイミングで前入金を受け付けるステップと、
を備え、
前記募集ページにおいて、前記前入金を行った投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けた場合には、前記前入金を出資金の入金に充当する貸付型ファンド運営方法を提供する。

【0036】

第１３の特徴に係る発明は、
コンピュータに
借り手企業から、貸付型ファンドによる資金調達案件を受け付けるステップ、
前記資金調達案件に対して、前記貸付型ファンドの募集ページを作成するステップ、
前記募集ページにおいて、投資家から前記貸付型ファンドへの応募を受け付けるステップ、
前記投資家から出資金の入金があったかどうかを確認するステップ、
ファンド組成企業に対して、前記投資家から募った出資金を送金するステップ、
前記投資家と前記ファンド組成企業との間で、匿名組合契約の契約手続を行うステップと、
前記ファンド組成企業から、前記借り手企業に対して、前記投資家から募った出資金を原資とする貸付を行うステップ、
前記借り手企業と前記ファンド組成企業との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行うステップ、
前記匿名組合契約における契約上の地位、及び前記金銭消費貸借契約における契約上の地位を、前記ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転する移転手続を行うステップ、
弁済期日までに、前記契約上の地位を移転した前記合同会社に対して、前記借り手企業から前記貸付に対する弁済がされたかどうかを確認するステップ、
前記投資家に対して、前記貸付に対する出資金額の比率に応じて、前記弁済された金額を分配するステップ、
前記投資家から、所望のタイミングで前入金を受け付けるステップ、
を実行させ、
前記募集ページにおいて、前記前入金を行った投資家から前記貸付ファンドへの応募を受け付けた場合には、前記前入金を出資金の入金に充当するステップを実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムを提供する。

【発明の効果】

【0037】

本発明によれば、匿名組合契約における契約上の地位、及び金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業から、一般社団法人の子会社である合同会社に対して移転して、貸付型ファンドを運営する貸付型ファンド運営システム、貸付型ファンド運営方法及びそのプログラムを提供することが可能となる。これにより、ファンドを組成するファンド組成企業が倒産や破産をしてしまった場合にも、借り手企業から弁済された金額を投資家に分配することが可能となり、従来よりも投資家からの投資を集めやすい貸付型ファンドを運営することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【0038】

【図1】貸付型ファンド運営システム１の概要を説明する図である。

【図2】貸付型ファンド運営システム１の機能構成を示す図である。

【図3】貸付型ファンド運営システム１が実行する貸付型ファンド運営処理を示すフローチャート図である。

【図4】貸付型ファンド運営システム１が審査処理を行う場合の機能構成を示す図である。

【図5】貸付型ファンド運営システム１が審査処理を実行する場合のフローチャート図である。

【図6】貸付型ファンド運営システム１が前金入金受付処理を行う場合の機能構成を示す図である。

【図7】貸付型ファンド運営システム１が対抗要件具備処理を行う場合の機能構成を示す図である。

【図8】貸付型ファンド運営システム１が対抗要件具備処理を行う場合のフローチャート図である。

【発明を実施するための形態】

【0039】

以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態（以下、実施形態）について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。

【0040】

［基本概念／基本構成］
図１は、貸付型ファンド運営システム１の概要を説明するための図である。貸付型ファンド運営システム１は、匿名組合契約における契約上の地位、及び金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業４から、一般社団法人の子会社である合同会社５に対して移転して、貸付型ファンドを運営する貸付型ファンド運営システムである。貸付型ファンド運営システム１を制御するコンピュータ１００と、貸付型ファンドによる資金調達を希望する借り手企業２の借り手企業端末２００と、貸付型ファンドへの投資を行う投資家３の投資家端末３００と、ファンド組成企業４のファンド組成企業端末４００と、一般社団法人の子会社である合同会社５の合同会社端末５００とを少なくとも含むシステムである。図１には図示していないが、コンピュータ１００と借り手企業端末２００と投資家端末３００とファンド組成企業端末４００と合同会社端末５００とは、ネットワーク６を介して通信可能であるものとする。本発明において、ファンド組成企業４は、借り手企業２とは全く関係がない企業であるものとする。

【0041】

まず、コンピュータ１００の案件受付部１０１は、借り手企業２から、借り手企業端末２００を介して、貸付型ファンドによる資金調達案件を受け付ける（ステップＳ０１）。

【0042】

次に、コンピュータ１００のページ作成部１０２は、ステップＳ０１で受け付けた資金調達案件に対して、貸付型ファンドの募集ページを作成する（ステップＳ０２）。具体的には、貸付型ファンドのホームページ等に、借り手企業２に対する投資を募集するＷＥＢページを作成する。募集ページの作成に加えて、電子媒体や紙媒体での広告をおこなってもよい。

【0043】

コンピュータ１００の応募受付部１０３は、ステップＳ０２で作成した募集ページにおいて、投資家３から投資家端末３００を介して、貸付型ファンドへの応募を受け付ける（ステップＳ０３）。応募受付部１０３では、投資家３の情報と併せて、出資金の希望額等の情報も取得するものとする。応募受付部１０３は、出資金の希望額を確認することで、希望資金額に達したかどうかを判断することが可能である。

【0044】

次に、コンピュータ１００の入金確認部１０４は、ステップ０３で受け付けた投資家３の投資家端末３００から、出資金の入金があったかどうかを確認する（ステップＳ０４）。

【0045】

次に、コンピュータ１００の送金部１０５は、ファンド組成企業４のファンド組成企業端末４００に対して、投資家３から募った出資金を送金する（ステップＳ０５）。ここでは、ファンド組成企業端末４００に対して出資金を送金するという記載をしたが、具体的には、インターネットバンキング等を利用してコンピュータ１００がファンド組成企業４に対して、電子的に送金処理を行い、ファンド組成企業４はファンド組成企業端末４００を介することで、出資金の送金が確認可能となるということである。本発明において、前述の通り、ファンド組成企業４は、借り手企業２とは全く関係がない企業である。

【0046】

次に、コンピュータ１００の第１契約手続部１０６は、投資家３とファンド組成企業４との間で、匿名組合契約の契約手続を行う（ステップＳ０６）。投資家３が複数である場合、そのそれぞれとファンド組成企業４との間で契約手続を行うものとする。

【0047】

次に、コンピュータ１００の貸付部１０７は、ファンド組成企業４から、借り手企業２に対して、投資家３から募った出資金を原資とする貸付を行う（ステップＳ０７）。

【0048】

次に、コンピュータ１００の第２契約手続部１０８は、借り手企業２とファンド組成企業４との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行う（ステップＳ０８）。

【0049】

次に、コンピュータ１００の移転手続部１０９は、ステップＳ０６の匿名組合契約における契約上の地位、及びステップＳ０８の金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業４から、一般社団法人の子会社である合同会社５に対して移転する移転手続を行う（ステップＳ０９）。

【0050】

次に、コンピュータ１００の弁済確認部１１０は、予め定めた弁済期日までに、契約上の地位を移転した合同会社５に対して、借り手企業２から貸付に対する弁済がされたかどうかを確認する（ステップＳ１０）。具体的には、合同会社５の所定の口座に対して、借り手企業２から弁済金の振り込みがあったかどうか等を確認する。

【0051】

最後に、コンピュータ１００の金額分配部１１１は、投資家３に対して、貸付に対する出資金額の比率に応じて、借り手企業２から弁済された金額を分配する（ステップＳ１１）。

【0052】

このように、本発明によれば、匿名組合契約における契約上の地位、及び金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業４から、一般社団法人の子会社である合同会社５に対して移転して、貸付型ファンドを運営することにより、ファンドを組成するファンド組成企業４が倒産や破産をしてしまった場合にも、合同会社５によって、借り手企業２から弁済された金額を投資家３に分配することが可能な貸付型ファンド運営システムを提供することができる。

【0053】

［機能構成］
図２に基づいて、貸付型ファンド運営システム１の機能構成について説明する。貸付型ファンド運営システム１は、コンピュータ１００と、このコンピュータ１００とネットワーク６を介して通信可能に接続された借り手企業端末２００と、投資家端末３００と、ファンド組成企業端末４００と、合同会社端末５００と、を備える。コンピュータ１００は、実在する装置に限らず、仮想的な装置であってもよい。

【0054】

コンピュータ１００は、貸付型ファンド運営システム１を提供する管理者により管理されるサーバ機能を有するコンピュータやパーソナルコンピュータ等であり、上述した借り手企業端末２００と、投資家端末３００と、ファンド組成企業端末４００と、合同会社端末５００と、公衆回線網等のネットワーク６を介してデータ通信可能に接続されており、必要なデータの送受信や各種処理を実行する。

【0055】

コンピュータ１００は、例えば、１台のコンピュータで実現されてもよいし、クラウドコンピュータのように、複数のコンピュータで実現されてもよい。本明細書におけるクラウドコンピュータとは、ある特定の機能を果たす際に、任意のコンピュータをスケーラブルに用いるものや、あるシステムを実現するために複数の機能構成を含み、その機能を自由に組み合わせて用いるものの何れであってもよい。コンピュータ１００がクラウドコンピュータである場合、借り手企業２、投資家３、ファンド組成企業４、合同会社５の全てがクラウドサービスに参加しているものとする。

【0056】

コンピュータ１００は、制御部（非図示）として、ＣＰＵ（Ｃｅｎｔｒａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ）、ＧＰＵ（Ｇｒａｐｈｉｃｓ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ）、ＲＡＭ（Ｒａｎｄｏｍ Ａｃｃｅｓｓ Ｍｅｍｏｒｙ）、ＲＯＭ（Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）等を備え、通信部（非図示）として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイス、例えば、ＩＥＥＥ８０２．１１に準拠したＷｉ―Ｆｉ（Ｗｉｒｅｌｅｓｓ―Ｆｉｄｅｌｉｔｙ）対応デバイス等を備える。また、コンピュータ１００は、記憶部（非図示）として、ハードディスクや半導体メモリ、記憶媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部を備える。また、コンピュータ１００は、処理部（非図示）として、各種処理を実行する各種デバイス等を備える。

【0057】

コンピュータ１００において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部、記憶部、処理部と協働して、案件受付部１０１、ページ作成部１０２、応募受付部１０３、入金確認部１０４、送金部１０５、第１契約手続部１０６、貸付部１０７、第２契約手続部１０８、移転手続部１０９、弁済確認部１１０、金額分配部１１１、を実現する。

【0058】

借り手企業端末２００は、借り手企業２の所持するコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の電子デバイスであり、上述したコンピュータ１００と、ネットワーク６を介してデータ通信可能に接続されている。借り手企業端末２００は１台である必要はなく、複数台あってもよい。

【0059】

借り手企業端末２００は、端末制御部（非図示）として、上述したコンピュータ１００における制御部と同様に、ＣＰＵ、ＧＰＵ、ＲＡＭ、ＲＯＭ等を備える。借り手企業端末２００は、通信部（非図示）として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイスを備える。また、借り手企業端末２００は、入出力部（非図示）として、データや画像や音声等を入出力する入出力デバイス等を備える。また、借り手企業端末２００は、記憶部（非図示）として、ハードディスクや半導体メモリ、記憶媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部を備える。また、借り手企業端末２００は、処理部（非図示）として、各種処理を実行する各種デバイス等を備える。

【0060】

投資家端末３００は、投資家３の所持するコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の電子デバイスであり、上述したコンピュータ１００と、ネットワーク６を介してデータ通信可能に接続されている。投資家３は複数であってもよい。また、投資家端末３００も１台である必要はなく、複数台あってもよい。

【0061】

投資家端末３００は、端末制御部（非図示）として、上述したコンピュータ１００における制御部と同様に、ＣＰＵ、ＧＰＵ、ＲＡＭ、ＲＯＭ等を備える。投資家端末３００は、通信部（非図示）として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイスを備える。また、投資家端末３００は、入出力部（非図示）として、データや画像や音声等を入出力する入出力デバイス等を備える。また、投資家端末３００は、記憶部（非図示）として、ハードディスクや半導体メモリ、記憶媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部を備える。また、投資家端末３００は、処理部（非図示）として、各種処理を実行する各種デバイス等を備える。

【0062】

ファンド組成企業端末４００は、ファンド組成企業４の所持するコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の電子デバイスであり、上述したコンピュータ１００と、ネットワーク６を介してデータ通信可能に接続されている。ファンド組成企業端末４００は１台である必要はなく、複数台あってもよい。

【0063】

ファンド組成企業端末４００は、端末制御部（非図示）として、上述したコンピュータ１００における制御部と同様に、ＣＰＵ、ＧＰＵ、ＲＡＭ、ＲＯＭ等を備える。ファンド組成企業端末４００は、通信部（非図示）として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイスを備える。また、ファンド組成企業端末４００は、入出力部（非図示）として、データや画像や音声等を入出力する入出力デバイス等を備える。また、ファンド組成企業端末４００は、記憶部（非図示）として、ハードディスクや半導体メモリ、記憶媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部を備える。また、ファンド組成企業端末４００は、処理部（非図示）として、各種処理を実行する各種デバイス等を備える。

【0064】

合同会社端末５００は、合同会社５の所持するコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の電子デバイスであり、上述したコンピュータ１００と、ネットワーク６を介してデータ通信可能に接続されている。合同会社端末５００は１台である必要はなく、複数台あってもよい。

【0065】

合同会社端末５００は、端末制御部（非図示）として、上述したコンピュータ１００における制御部と同様に、ＣＰＵ、ＧＰＵ、ＲＡＭ、ＲＯＭ等を備える。合同会社端末５００は、通信部（非図示）として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイスを備える。また、合同会社端末５００は、入出力部（非図示）として、データや画像や音声等を入出力する入出力デバイス等を備える。また、合同会社端末５００は、記憶部（非図示）として、ハードディスクや半導体メモリ、記憶媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部を備える。また、合同会社端末５００は、処理部（非図示）として、各種処理を実行する各種デバイス等を備える。

【0066】

［貸付型ファンド運営処理］
図３に基づいて、コンピュータ１００が実行する貸付型ファンド運営処理について説明する。図３は、貸付型ファンド運営システム１が実行する貸付型ファンド運営処理を示すフローチャート図である。上述した各部が実行する処理について、本処理にあわせて説明する。

【0067】

初めに、コンピュータ１００の案件受付部１０１は、借り手企業２から、借り手企業端末２００を介して、貸付型ファンドによる資金調達案件を受け付ける（ステップＳ３０１）。

【0068】

次に、コンピュータ１００のページ作成部１０２は、ステップＳ３０１で受け付けた資金調達案件に対して、貸付型ファンドの募集ページを作成する（ステップＳ３０２）。具体的には、貸付型ファンドのホームページ等に、借り手企業２に対する投資を募集するＷＥＢページを作成する。また、募集ページの作成に加えて、電子媒体や紙媒体での広告をおこなってもよい。ページ作成部１０２は、借り手企業２からの資金調達案件の希望資金額を複数回に分割して、複数の募集ページを作成してもよい。例えば、希望資金額が１０億円の場合に、２億円の調達を５回に分割して募集ページを作成してもよい。複数回に分割するかどうかは、借り手企業２からの要望に応じてもよいし、貸付型ファンド運営システム１側で判断してもよい。例えば、希望資金額がある一定額を超えた場合には分割する、借り手企業２の財務状況等のデータに応じて分割する、等があげられる。

【0069】

次に、コンピュータ１００の応募受付部１０３は、ステップＳ３０２で作成した募集ページにおいて、投資家３から投資家端末３００を介して、貸付型ファンドへの応募を受け付ける（ステップＳ３０３）。応募受付部１０３では、投資家３の情報と併せて、出資金の希望額等の情報も取得するものとする。応募受付部１０３は、出資金の希望額を確認することで、希望資金額に達したかどうかを判断することが可能である。応募受付部１０３は、借り手企業２の資金調達案件の希望資金額に対して、すべて応募した順番に応じて受付を行ってもよいし、受付期間を設定して、応募した投資家３が多い場合には抽選により受付を行ってもよい。また、ある一定金額までは抽選により受付を行い、ある一定金額以上は応募した順番に応じて受付を行うこととしてもよい。例えば、希望資金額が１０億円の場合に、７億円までは抽選による受付を行い、抽選で７億円分の投資家３を決定した後に、残りの３億円分は応募した順番に応じて早いもの順で受付を行うこととしてもよい。このようにすることで、抽選で外れた場合であっても、残りの応募を募集開始からできるだけ早く行うことで、投資を行うことが可能となり、結果として、意欲的な投資家３から資金を調達することが可能となる。

【0070】

次に、コンピュータ１００の入金確認部１０４は、ステップ３０３で受け付けた投資家３の投資家端末３００から、出資金の入金があったかどうかを確認する（ステップＳ３０４）。入金確認部１０４は、予め入金を行うことのできる所定期間を設定して投資家３に通知してもよい。所定期間を設定した場合には、所定期間以内に投資家３から出資金の入金があったかどうかを確認することとする。所定期間以内に出資金の入金がなかった投資家３については、ステップＳ３０３で受け付けた応募をキャンセルするものとする。

【0071】

次に、コンピュータ１００の送金部１０５は、ファンド組成企業４のファンド組成企業端末４００に対して、投資家３から募った出資金を送金する（ステップＳ３０５）。ここでは、ファンド組成企業端末４００に対して出資金を送金するという記載をしたが、具体的には、インターネットバンキング等を利用してコンピュータ１００がファンド組成企業４に対して、電子的に送金処理を行い、ファンド組成企業４はファンド組成企業端末４００を介することで、出資金の送金が確認可能となるということである。本発明において、前述の通り、ファンド組成企業４は、借り手企業２とは全く関係がない企業である。

【0072】

次に、コンピュータ１００の第１契約手続部１０６は、投資家３とファンド組成企業４との間で、匿名組合契約の契約手続を行う（ステップＳ３０６）。投資家３が複数である場合、そのそれぞれとファンド組成企業４との間で契約手続を行うものとする。ここでは、ステップＳ３０５の送金部１０５による送金処理を行ってから、ステップＳ３０６の第１契約手続部１０６による契約手続処理を行うという順番で記載したが、送金部１０５による送金処理と第１契約手続部１０６による契約手続処理は同時に行ってもよいものとする。

【0073】

次に、コンピュータ１００の貸付部１０７は、ファンド組成企業４から、借り手企業２に対して、投資家３から募った出資金を原資とする貸付を行う（ステップＳ３０７）。

【0074】

次に、コンピュータ１００の第２契約手続部１０８は、借り手企業２とファンド組成企業４との間で、金銭消費貸借契約の契約手続を行う（ステップＳ３０８）。ここでは、ステップＳ３０７の貸付部１０７による貸付処理を行ってから、ステップＳ３０８の第２契約手続部１０８による契約手続処理を行うという順番で記載したが、貸付部１０７による貸付処理と第２契約手続部１０８による契約手続処理は同時に行ってもよいものとする。

【0075】

次に、コンピュータ１００の移転手続部１０９は、ステップＳ３０６の匿名組合契約における契約上の地位、及びステップＳ３０８の金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業４から、一般社団法人の子会社である合同会社５に対して移転する移転手続を行う（ステップＳ３０９）。

【0076】

次に、コンピュータ１００の弁済確認部１１０は、予め定めた弁済期日までに、契約上の地位を移転した合同会社５に対して、借り手企業２から貸付に対する弁済がされたかどうかを確認する（ステップＳ３１０）。具体的には、合同会社５の所定の口座に対して、借り手企業２から弁済金の振り込みがあったかどうか等を確認する。もし、弁済期日までに借り手企業２から貸付に対する弁済がされていない場合には、債権回収業者に債権回収業務を発注してもよい。

【0077】

最後に、コンピュータ１００の金額分配部１１１は、投資家３に対して、貸付に対する出資金額の比率に応じて、借り手企業２から弁済された金額を分配する（ステップＳ３１１）。金額分配部１１１は、投資家３の出資金額の比率に応じて、分配期日までに弁済された金額を分配する時に、分配期日を複数設定し、分配期日に応じて分配の利回りを変動して分配することとしてもよい。金額分配部１１１は、例えば、直近の分配期日より、遠い未来の分配期日の方が分配の利回りが大きくなるように設定可能とする。投資家３は、分売期日と利回りを確認して、分配期日を選択することが出来るものとする。

【0078】

以上が、貸付型ファンド運営処理である。

【0079】

このような貸付型ファンド運営システム１によれば、匿名組合契約における契約上の地位、及び金銭消費貸借契約における契約上の地位を、ファンド組成企業４から、一般社団法人の子会社である合同会社５に対して移転して、貸付型ファンドを運営することが可能となる。これにより、貸付型ファンドを組成するファンド組成企業４が倒産や破産をしてしまった場合にも、合同会社５によって、借り手企業２から弁済された金額を投資家３に分配することが可能となる。

【0080】

［審査処理］
図４は、貸付型ファンド運営システム１が審査処理を行う場合の機能構成を示す図である。コンピュータ１００は、図２の構成に加えて、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部、記憶部、処理部と協働して、審査部１１２を実現する。

【0081】

図５は、貸付型ファンド運営システム１が審査処理を実行する場合のフローチャート図である。図５のステップＳ５０１は、図３のステップＳ３０１に相当するため、説明を省略する。

【0082】

コンピュータ１００の審査部１１２は、ステップＳ５０１で受け付けた資金調達案件に対して、審査を行う（ステップＳ５０２）。ここでの審査は、例えば借り手企業２の財務状況のデータ等や資金調達案件の計画性や実現可能度を評価することにより行う。審査がＯＫであった場合には、次のステップＳ５０３へと進み、ページ作成部１０２は、貸付型ファンドの募集ページを作成する。審査がＮＧであった場合には借り手企業２に対する出資は行わないため、処理を終了する。ここでの審査結果は、借り手企業２に対して通知をおこなってもよい。また、予め審査基準を公表しておいてもよい。

【0083】

図５のステップＳ５０３からステップＳ５１２は、図３のステップＳ３０２からステップＳ３１１に相当するため、説明を省略する。

【0084】

以上が、審査処理である。審査処理を行うことにより、より安全な資金調達案件に対する投資が募集されることとなり、貸付型ファンドの信頼性を向上することが可能となるという利点がある。

【0085】

［前金入金受付処理］
図６は、貸付型ファンド運営システム１が前金入金受付処理を行う場合の機能構成を示す図である。コンピュータ１００は、図２の構成に加えて、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部、記憶部、処理部と協働して、前金入金受付部１１３を実現する。図６では、審査部１１２を含まない構成を図示しているが、審査部１１２を含む構成であってもよい。ここでは、図３のフローチャートを使用して、前金入金受付処理について説明する。

【0086】

コンピュータ１００の前金入金受付部１１３は、投資家３から、所望のタイミングで前入金を受け付けるものとする。ここでの所望のタイミングとは、図３のフローチャートのステップＳ３０２で募集ページが作成される前のタイミングであってよい。また、前入金の金額についても、投資家３が自由に設定可能とする。

【0087】

前入金のある状態で、投資家３からステップＳ３０２で作成した募集ページにおいて、ステップＳ３０３で貸付型ファンドの応募を受け付けた場合、ステップＳ３０４の入金を確認する際に、前入金を出資金の入金に充当するものとする。前入金が出資金より多い場合には、余剰分は前入金の残金として扱ってよい。また、前入金が出資金より少ない場合には、投資家３に対して追加の入金を行うよう通知をおこなってもよい。さらに、ステップＳ３０３で投資家３から貸付型ファンドの応募を受け付ける際に、前入金の金額を、投資家３に対して情報として提示してもよい。

【0088】

以上が、前金入金受付処理である。前金入金受付処理を行うことにより、投資家３にとっては余剰金を積み立てておくことに相当するため、より貸付型ファンドへの応募をより円滑に行うことができるという利点がある。

【0089】

［対抗要件具備処理］
図７は、貸付型ファンド運営システム１が対抗要件具備処理を行う場合の機能構成を示す図である。コンピュータ１００は、図２の構成に加えて、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部、記憶部、処理部と協働して、対抗要件具備部１１４を実現する。図７では、審査部１１２、前金入金受付部１１３を含まない構成を図示しているが、審査部１１２、前金入金受付部１１３を含む構成であってもよい。

【0090】

図８は、貸付型ファンド運営システム１が対抗要件具備処理を行う場合のフローチャート図である。図８のステップＳ８０１からステップＳ８０９は、図３のステップＳ３０１からステップＳ３０９に相当するため、説明を省略する。

【0091】

コンピュータ１００の対抗要件具備部１１４は、ステップＳ８０６の匿名組合契約における契約上の地位、及びステップＳ８０８の金銭消費貸借契約における契約上の地位をステップＳ８０９で合同会社５に対して移転した後に、対抗要件を具備する（ステップＳ８１０）。ここで、対抗要件を具備するとは、具体的には、合同会社５が権利を主張するために必要な手続きを行うことであり、債権譲渡における通知・承諾等を行うことである。

【0092】

図８のステップＳ８１１からステップＳ８１２は、図３のステップＳ３１０からステップＳ３１１に相当するため、説明を省略する。

【0093】

以上が、対抗要件具備処理である。対抗要件具備処理を行うことにより、合同会社５の権利の主張がより強固なものとなり、ファンド組成企業４が倒産や破産をしてしまった場合に、借り手企業２から弁済された金額を投資家３に分配することが確実になるという利点がある。

【0094】

上述した手段、機能は、コンピュータ（ＣＰＵ、情報処理装置、各種端末を含む）が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。プログラムは、例えば、コンピュータからネットワーク経由で提供される（ＳａａＳ：ソフトウェア・アズ・ア・サービス）形態やクラウドサービスで提供されてよい。また、プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記録装置又は外部記録装置に転送し記録して実行する。また、そのプログラムを、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記録装置（記録媒体）に予め記録しておき、その記録装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。

【0095】

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。

【符号の説明】

【0096】

１ 貸付型ファンド運営システム
２ 借り手企業
３ 投資家
４ ファンド組成企業
５ 合同会社
６ ネットワーク
１００ コンピュータ
１０１ 案件受付部
１０２ ページ作成部
１０３ 応募受付部
１０４ 入金確認部
１０５ 送金部
１０６ 第１契約手続部
１０７ 貸付部
１０８ 第２契約手続部
１０９ 移転手続部
１１０ 弁済確認部
１１１ 金額分配部
１１２ 審査部
１１３ 前金入金受付部
１１４ 対抗要件具備部
２００ 借り手企業端末
３００ 投資家端末
４００ ファンド組成企業端末
５００ 合同会社端末

【要約】      （修正有）

【課題】ファンド組成企業が倒産や破産した場合でも弁済された金額を投資家に分配する。
【解決手段】貸付型ファンド運営システムは、借り手企業から資金調達案件を受け付ける案件受付部と、その貸付型ファンドの募集ページを作成するページ作成部と、投資家からファンドへの応募を受け付ける応募受付部と、出資金の入金を確認する入金確認部と、ファンド組成企業に出資金を送金する送金部と、投資家とファンド組成企業との匿名組合契約を行う第１契約手続部と、ファンド組成企業から借り手企業に対して貸付を行う貸付部と、借り手企業とファンド組成企業との金銭消費貸借契約を行う第２契約手続部と、匿名組合契約における契約上の地位及び金銭消費貸借契約における契約上の地位をファンド組成企業から合同会社に移転する移転手続部と、期日までに弁済がされたか確認する弁済確認部と、出資金額の比率に応じて弁済された金額を分配する金額分配部と、を備える。
【選択図】図１

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】