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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】金を含む薄膜の蒸着
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20220720BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220720BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C23C16/18
C23C16/455
H01L21/285 C
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203479
(22)【出願日】2021-12-15
(62)【分割の表示】P 2019538508の分割
【原出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2022037119
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】15/417,001
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512144771
【氏名又は名称】エーエスエム アイピー ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】マケラ マーリト
(72)【発明者】
【氏名】ハタンパー ティモ
(72)【発明者】
【氏名】リタラ ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】マルック レスケラ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-062544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/205-21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応空間内の基材上に金からなる薄膜を形成するための方法であって、
前記方法が、
前記基材を気相の有機金属金前駆体及び気相の第二の反応物質と順次接触させることを含み、
ここで、前記気相の有機金属金前駆体が、硫黄と有機金属配位子とを含み、
前記気相の有機金属金前駆体及び前記気相の第二の反応物質が反応して、金を含む前記薄膜を形成する
前記基材を前記気相の有機金属金前駆体及び前記気相の第二の反応物質と順次接触させることが、二回以上繰り返す成膜サイクルを含む、方法。
【請求項2】
前記気相の有機金属金前駆体が、少なくとも1つのアルキル配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気相の有機金属金前駆体の金は、酸化状態+IIIを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記成膜サイクルは、前記基材を前記気相の有機金属金前駆体と接触させた後、前記基材を前記気相の第二の反応物質と接触させる前に、前記反応空間から過剰な気相の有機金属金前駆体及び反応副生成物を除去することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記成膜サイクルは、前記基材を前記気相の第二の反応物質と接触させた後に、前記反応空間から過剰な第二の反応物質及び反応副生成物を除去することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
金を含む前記薄膜は、成膜サイクルあたり0.8Å以上の成長速度を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
金を含む前記薄膜は、100成膜サイクル後に連続的である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記気相の有機金属金前駆体が、一つ又は複数の中性付加物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記気相の有機金属金前駆体が、ジエチルジチオカルバマト配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記気相の有機金属金前駆体が、MeAu(SCNEt)を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記気相の第二の反応物質が酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記気相の第二の反応物質が酸素の反応種を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記気相の第二の反応物質がオゾンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、120℃~220℃の成膜温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
金を含む前記薄膜は、20nm~50nmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
金を含む前記薄膜が、連続的である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
金を含む前記薄膜が、20μΩcm未満の抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、原子層成膜(ALD)法である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、周期的化学蒸着(CVD)法である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共同研究協約の当事者
本願で特許請求される発明は、ヘルシンキ大学(the University of Helsinki)とASM Microchemistry Oyとの間の共同研究協約によって、又は共同研究協約のために、及び/又は共同研究協約に関連してなされた。当協約は、特許請求される発明がなされた日及びその日以前に発効しており、特許請求される発明は、当協約の範囲内で取り組まれた活動の結果としてなされたものである。
発明の背景
【0002】
本開示は、概ね、気相成膜、特に金を含む薄膜の周期的な蒸着の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
金を含む薄膜は、光学、MEMSデバイス、電子部品、エレクトロクロミックデバイス、光電池、光触媒などの様々な分野における様々な用途に対して望ましい電子的及びプラズモニック特性を有する。しかしながら、周期的蒸着方法による金を含む薄膜の信頼できる成膜は、金を含む連続的及び導電性薄膜の成膜に関して、特に困難であることが判明している。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態によると、反応空間内で基材上に金を含む薄膜を形成するための方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、基材を気相の金前駆体及び気相の第二の反応物質と交互にかつ順次接触させることを含んでもよく、気相の金前駆体は、硫黄又はセレンを含む少なくとも一つの配位子、及び少なくとも一つのアルキル配位子を含み、ここで金の前駆体及び第二の反応物質は反応することによって金を含む薄膜を形成する。
【0005】
いくつかの実施形態では、基材を気相の金前駆体及び気相の第二の反応物質と交互にかつ順次接触させることは、二回以上繰り返す成膜サイクルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、成膜サイクルは、基材を気相の金前駆体と接触させた後の反応空間から、過剰な気相の金前駆体及び反応副生成物がもしあれば、これらを除去することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、成膜サイクルは、基材を第二の反応物質と接触させた後の反応空間から、過剰な第二の反応物質及び反応副生成物がもしあれば、これらを除去することをさらに含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態によると、金前駆体の金は、+IIIの酸化状態を有する。いくつかの実施形態では、硫黄又はセレンを含む配位子は硫黄を含む。いくつかの実施形態では、硫黄又はセレンを含む配位子はセレンを含む。いくつかの実施形態では、金前駆体は、一つ又は複数の追加的な中性付加物を含む。いくつかの実施形態では、金前駆体は、ジエチルジチオカルバマト配位子を含む。いくつかの実施形態では、金前駆体は、MeAu(SCNEt)を含む。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、酸素の反応種を含む。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、オゾンを含む。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、方法は、約120℃~約220℃の成膜温度を有する。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約20nmの厚さに達すると連続的である。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約20nm~約50nmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約20μΩcm未満の抵抗率を有する。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、成膜サイクル当たり約0.8Åを超える成長速度を有する。いくつかの実施形態では、方法は原子層成膜(ALD)方法である。いくつかの実施形態では、方法は周期的化学蒸着(CVD)方法である。
【0008】
いくつかの実施形態によると、反応空間内で基材上に金を含む薄膜を形成するための原子層成膜(ALD)方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、複数の成膜サイクルを含むことができ、少なくとも一つの成膜サイクルは、基材を気相の金前駆体及び気相の第二の反応物質と交互にかつ順次接触させることを含み、成膜サイクルは二回以上繰り返して金を含む薄膜を形成し、気相の金前駆体の金は、+IIIの酸素状態を有し、気相の金前駆体は、少なくとも一つの硫黄供与体配位子、及び少なくとも一つのアルキル配位子を含む。
【0009】
いくつかの実施形態によると、金前駆体は、MeAu(SCNEt)を含む。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、オゾンを含む。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約20nmの厚さに達すると連続的である。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、100成膜サイクル後に連続的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、発明を実施するための形態から、及び本発明を例示することを意図しており、本発明を限定することを意図するものではない添付図面から、よりよく理解されるであろう。
図1図1は、金を含む薄膜を成膜する周期的蒸着方法を一般的に例示するプロセスフロー図である。
図2図2は、金を含む薄膜を成膜する原子層成膜方法を一般的に例示するプロセスフロー図である。
図3図3は、MeAu(SCNEt)に対する熱重量曲線を図示する。
図4A図4Aは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、成膜される金を含む薄膜に対する薄膜成長速度対成膜温度のプロットである。
図4B図4Bは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、120℃~200℃の温度で成膜される金を含む薄膜に対する反応チャンバ内での金前駆体入口からの薄膜厚対膜距離のプロットである。
図4C図4Cは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、120℃~200℃の温度で成膜される金を含む薄膜に対する薄膜抵抗率対成膜温度のプロットである。
図4D図4Dは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、120℃~200℃の温度で成膜される金を含む薄膜のX線ディフラクトグラムである。
図5A図5Aは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、120℃~200℃の温度で成膜される金を含む薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図5B図5Bは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、120℃~200℃の温度で成膜される金を含む薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図5C図5Cは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、120℃~200℃の温度で成膜される金を含む薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図5D図5Dは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、120℃~200℃の温度で成膜される金を含む薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6A図6Aは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、180℃の温度で成膜される金を含む薄膜に対する薄膜成長速度対金前駆体パルス長のプロットである。
図6B図6Bは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、1秒及び2秒の金前駆体パルス長で成膜される金を含む薄膜に対する反応チャンバ内での金前駆体入口からの薄膜厚対膜距離のプロットである。
図6C図6Cは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、成膜される金を含む薄膜に対する薄膜抵抗率対金前駆体パルス長のプロットである。
図7A図7Aは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、成膜される金を含む薄膜に対する薄膜厚対成膜サイクル数のプロットである。
図7B図7Bは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、50~500サイクルで成膜される金を含む薄膜のSEM画像である。
図7C図7Cは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、50~500サイクルで成膜される金を含む薄膜のSEM画像である。
図7D図7Dは、本明細書で説明した周期的蒸着方法、及びいくつかの実施形態による、50~500サイクルで成膜される金を含む薄膜のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態に従って成膜される、金、特に連続的に金属性金薄膜を含む薄膜は、幅広い可能性のある用途を有する。例えば、プラズモニック感知の分野では、本明細書に記載のいくつかの実施形態によって成膜される金を含む薄膜は、表面強化ラマン分光法(SERS)において有用でありうる。金を含む薄膜のユニークなプラズモニック特性は、多くの次世代電子及び光デバイスにとって非常に望ましいフィルムを作製する。金はまた、非常に効率的な導体であり、他の金属性薄膜と比較して比較的腐食がない一方、非常に小さな電流を運ぶことができる。したがって、本明細書に記載のいくつかの実施形態によって成膜される金を含む薄膜は、例えば、ナノファブリック化半導体デバイスを含む、様々な電子構成要素及び装置用途において有用であり得る。
【0012】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によって成膜される金を含む連続的及び導電性の薄膜は、こうしたフィルムの高い導電率により、無線周波数(RF)MEMS装置などの微小電気機械システム(MEMS)装置における用途も有してもよい。本明細書に記載のいくつかの実施形態によって成膜される金を含む連続的及び導電性の薄膜を含むRF MEMS装置は、ギガヘルツ周波数で動作して大きな帯域幅及び極めて高い信号対雑音比を可能にする。本明細書に記載のいくつかの実施形態によって成膜される金を含む連続薄膜は、加速度計で高感度を達成するための加速度計の質量を増加させる慣性MEMSでも有用であり得る。金を含むこのような薄膜は、可変コンデンサ、化学的センサ及び生物学的センサ、ならびに光学検出器で使用することができる。
【0013】
本明細書に記載の方法に従って成膜される金を含む薄膜は、他の用途の中でも、エレクトロクロミックデバイス、光電池、及び光触媒においても有用であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態によって、金を含む薄膜を形成するための金を含む薄膜及び方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って成膜される金を含む薄膜は、金属性であってもよく、連続的かつ導電性であってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、蒸着方法によって基材上に成膜される。例えば、いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、例えば原子層成膜型方法にあるように、基材上の金前駆体が第二の反応物質と反応して、金を含む膜を形成する表面制御反応を利用する成膜方法により成膜され得る。いくつかの実施形態では、蒸着方法は、熱蒸着方法であってもよい。いくつかの実施形態では、蒸着方法は、プラズマ蒸着方法であってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、蒸着方法はプラズマを利用しない。いくつかの実施形態では、蒸着方法は、周期的成膜方法であってもよく、例えば、原子層成膜(ALD)方法又は周期的化学蒸着(CVD)方法であってもよい。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜を成膜するための方法は、基材を第一の気相の金反応物質及び第二の反応物質と交互にかつ順次接触させることを含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、成膜方法は、有機金属金前駆体及び第二の反応物質を利用し得る。いくつかの実施形態では、有機金属金前駆体の金は、+IIIの酸化状態を有してもよい。いくつかの実施形態では、有機金属金前駆体は、硫黄を含み得る。いくつかの実施形態では、有機金属金前駆体は、硫黄を含む少なくとも一つの配位子及び少なくとも一つのアルキル配位子を含む。例えば、金前駆体が本明細書に記述されるような方法で利用され、該金前駆体が硫黄を含む少なくとも一つの配位子及び少なくとも一つのアルキル配位子を含まない場合、このような方法は金を含む連続膜を成膜しないか、又は高膜厚でのみ連続膜を生成することができる。従って、硫黄を含む少なくとも一つの配位子及び少なくとも一つのアルキル配位子を含む金前駆体、例えばMeAu(SCNEt)を含む金前駆体などを利用することで、比較的低い膜厚で金を含む高品質の薄膜、例えば比較的低い膜厚を有する連続的金薄膜の成膜を可能にすることは予想外であった。いくつかの実施形態では、有機金属金前駆体は、MeAu(SCNEt)を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は酸素を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、酸素、例えばオゾンの反応性形態を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜を成膜するための方法は、硫黄を含む少なくとも一つの配位子、少なくとも一つのアルキル配位子を含む金前駆体を利用することができ、金前駆体の金の酸化状態は+IIIであり、また第二の反応物質はオゾンを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、成膜した薄膜は金を含む。いくつかの実施形態では、金属性金を含む薄膜は成膜することができる。いくつかの実施形態では、成膜された金を含む薄膜は、ある量の酸素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、成膜された金を含む薄膜は、連続的であり得る。いくつかの実施形態では、成膜された金を含む膜は、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、又は約20nm未満、又はより薄い厚さで連続的であり得る。いくつかの実施形態では、金を含む連続膜は、約500成膜サイクル未満、約400成膜サイクル未満、約300成膜サイクル未満、約200成膜サイクル未満、又は約100成膜サイクル未満、又はより少ない成膜サイクルを含む成膜方法により成膜され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、成膜された金を含む膜は、導電膜であり得る。いくつかの実施形態では、成膜された金を含む膜は、約20μΩcm未満、約15μΩcm未満、約10μΩcm未満、約5μΩcm未満、又はより少ない抵抗率を有することができる。
金を含む薄膜の蒸着
【0019】
いくつかの実施形態では、金を含む膜は、原子層成膜型方法によって成膜される。原子層成膜(ALD)型方法は、前駆体化学物質又は反応物質の制御された自己制御表面反応に基づいている。気相反応は、基材を前駆体と交互に順次接触させることによって回避される。気相反応物質は、例えば、過剰な反応物質及び/又は反応物質副生成物を反応物質パルス間に対象の基材の表面から除去することにより、基材の表面上で互いに分離される。いくつかの実施形態では、一つ又は複数の基材の表面は、二つ以上の気相前駆体又は反応物質と交互に順次接触する。基材の表面を気相反応物質と接触させることは、反応物質蒸気が限られた時間、基材の表面と接触することを意味する。換言すれば、基材の表面が各気相の反応物質に限られた時間曝されると理解され得る。
【0020】
要約すると、基材は、一般的に減圧下で、適切な成膜温度に加熱される。成膜温度は、一般的に、反応物質の熱分解温度未満に維持されるが、反応物質の凝縮を回避し、所望の表面反応の活性化エネルギーを提供するのに十分高いレベルに維持される。もちろん、任意の所定のALD反応の適切な温度ウィンドウは、表面終端及び含まれる反応物質種に依存するであろう。ここで、温度は使用される前駆体に応じて変化し、一般的に約700℃以下であり、いくつかの実施形態では、成膜温度は一般的に蒸着方法では約100℃以上であり、いくつかの実施形態では、成膜温度は約100℃~約250℃であり、いくつかの実施形態では、成膜温度は約120℃~約200℃である。いくつかの実施形態では、成膜温度は約500℃未満、約400℃未満又は約300℃未満である。いくつかの例では、例えば、追加の反応物質又は還元剤、例えば水素を含む反応物質若しくは還元剤等、が方法中で使用される場合、成膜温度は約200℃未満、約150℃未満、又は約100℃未満であってもよい。
【0021】
基材の表面は、第一の気相の反応物質又は前駆体と接触する。いくつかの実施形態では、気相の第一の反応物質のパルスが、基材を含む反応空間に供給される(例えば、時間分割ALD内)。いくつかの実施形態では、基材は、気相の第一の反応物質を含む反応空間に移動される(例えば、空間分割ALD内、空間ALDとしても知られる)。第一反応物質の約一層以下の単層又はその種が、自己制御で基材の第一の表面上に吸着されるように条件を選択することができる。しかし、いくつかの構成では、ハイブリッドCVD/ALD方法又は周期的CVD方法は、基材上で異なる相互反応性反応物質の重ね合わせを可能にし、したがって1サイクル当たりで単層より多くの層を生成することができる。適切な接触時間は、特定の状況に基づいて当業者が容易に決定することができる。過剰な第一の反応物質及び反応副生成物がある場合には、不活性ガスでパージすることにより、又は第一の反応物質の存在から基材を移動することにより、それらを基材の表面から除去する。
【0022】
反応物質間の重ね合わせが最小化され又は回避されるALD方法では、例えば、真空ポンプを用いてチャンバを排気することにより、及び/又はパージする(例えば、反応器内のガスをアルゴン若しくは窒素等の不活性ガスで置換する)ことにより、気相前駆体物質及び/又は気相副生成物は基材の表面から除去される。基材の表面への反応物質の供給は、典型的には、除去期間中に停止され、除去期間中に異なるチャンバ又は真空ポンプに分路され得る。典型的な除去時間は、約0.05~20秒、約1~10秒、又は約1~2秒である。しかし、例えば、非常に高いアスペクト比の構造若しくは複雑な表面形態を有する他の構造上で高度な共形ステップカバレッジが必要な場合、必要に応じて他の除去時間が利用され得る。
【0023】
基材の表面は、気相の第二の反応物質又は前駆体と接触する。いくつかの実施形態では、第二の反応物質のパルスが、基材を含む反応空間に供給される。いくつかの実施形態では、基材は、気相の第二の反応物質を含む反応空間に移動される。表面反応の過剰な第二の反応物質及び気体の副生成物がある場合には、これらは基材の表面から除去される。接触及び除去は、所望の厚さの薄膜が基材上に形成されるまで繰り返され、各サイクルはALD又はALD型の方法において約1単分子層以下、又はハイブリッドCVD/ALD、又は周期的CVD方法において一つ又は複数の単分子層を残す。二つ以上の金属を含む合金などのより複雑な材料を形成するため、又は金及びいくつかの他の化合物を含む材料を組成するために、基材の表面を他の反応物質と交互に順次接触させることを含む追加の段階を含んでもよい。
【0024】
上述したように、各サイクルの各段階はALD方法では自己制御することが可能である。過剰の反応物質が各段階において供給され、影響を受けやすい基材表面を飽和させる。表面飽和によって、(例えば、物理的サイズ又は「立体障害」の制限を受け易い)すべての利用可能な反応性部位の反応物質の占有が確実になり、したがって優れたステップカバレージが確実になる。典型的には、各サイクルで材料の1分子層未満が成膜されるが、いくつかの実施形態では、1サイクル中に一層を超える分子層が成膜される。
【0025】
過剰な反応物質の除去は、反応空間の内容物の一部を排気すること、及び/又は反応空間をヘリウム、窒素、アルゴン、又は他の不活性ガスでパージすることを含み得る。いくつかの実施形態では、パージすることは、不活性キャリアガスを反応空間に流し続けながら、反応性ガスの流れを止めることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、前駆体又は反応物質が反応空間に断続的に供給され得る間、不活性キャリアガスは成膜方法全体を通して連続的に流れてもよい。
【0026】
基材は、様々な型の材料を含み得る。集積回路を製造する場合、基材は、典型的には、様々な化学的及び物理的特性を有する多数の薄膜を含む。いくつかの実施形態では、基材は、例えば、自然酸化物又は熱酸化物などのケイ素又は酸化ケイ素を含み得る。いくつかの実施形態では、基材はガラスを含み得る。いくつかの実施形態では、基材は一つ又は複数の酸化物材料、例えば金属酸化物材料を含み得る。いくつかの実施形態では、基材は誘電材料を含み得る。いくつかの実施形態では、基材は、金属、又は金属窒化物、金属炭化物、金属ケイ化物、又はそれらの混合物などの金属性膜を含み得る。いくつかの実施形態では、基材の半導体基材であってもよい。いくつかの実施形態では、基材は一つ又は複数の三次元構造を含み得る。いくつかの実施形態では、一つ又は複数の構造は、1:1~10:1以上のアスペクト比を持ち得る。いくつかの実施形態では、基材は集積回路ワークピースを含み得る。いくつかの実施形態では、基材は半導体基材又はウエハを含まない。
【0027】
蒸着方法で使用される前駆体は、前駆体が基材の表面と接触する前に気相であれば、標準的な条件(室温及び大気圧)下で固体、液体又は気体の材料であってもよい。基材表面を気化した前駆体と接触させることは、前駆体蒸気が所定の時間、基材表面と接触することを意味する。典型的には、接触時間は約0.05~10秒である。しかし、基材の型、その表面積、及び/又はチャンバのサイズに応じて、接触時間は10秒よりも更に長くてもよい。接触時間は、場合によっては、特に複数の基材上のバッチ式成膜方法の場合、数分のオーダーである場合がある。当業者は、特定の状況に基づいて適切な接触時間を決定し得る。
【0028】
当業者は、前駆体の質量流量を決定することもできる。いくつかの実施形態では、単一ウエハ成膜反応容器の場合、前駆体の流量は、制限をしないが約1~1000sccm、より具体的には約100~500sccmである。いくつかの実施形態では、流量は、100sccm未満、75sccm未満、又は50sccm未満であってもよい。
【0029】
反応チャンバ内の圧力は、典型的には約0.01~約20ミリバール、又は約1~約10ミリバールである。いくつかの実施形態では、反応チャンバ圧力は、約0.01ミリバール~およそ大気圧であってもよい。
【0030】
膜の成膜を開始する前に、基材を典型的には適切な成長温度に加熱する。成長温度は、形成される薄膜の種類、前駆体の化学的及び物理的特性等に応じて異なる。成長温度は、アモルファス薄膜が形成されるように成膜材料の結晶化温度未満である場合があり、又は、結晶薄膜が形成されるように結晶化温度を超える場合もある。成膜温度は、多くの因子、例えば、反応物質前駆体、圧力、流速、反応器の配置、成膜された薄膜の結晶化温度、及び成膜される材料の性質を含む基材の組成等、に応じて変化し得るが、これらに限定されない。当業者は、特定の成長温度を選択し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、基材温度は、目的の反応物質についての熱ALDをサポートするのには十分高い。例えば、基材温度は、一般的に、約100℃より高く、約700℃又はそれ未満である。いくつかの実施形態では、基材温度は、約100℃~約250℃であり、いくつかの実施形態では、基材温度は約120℃~約200℃である。いくつかの実施形態では、基材温度は約500℃未満、約400℃未満、又は約300℃未満である。場合によっては、基材温度は約200℃未満、約150℃未満、又は約100℃未満であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、少なくとも一つの成膜サイクルを含む方法で基材上に形成され、この成膜サイクルは、基材を気相の金前駆体及び気相の第二の反応物質と交互に順次接触させることを含む。いくつかの実施形態では、成膜サイクルを二回以上繰り返し得る。いくつかの実施形態では、成膜サイクルは連続して二回以上繰り返し得る。いくつかの実施形態では、基材を気相の金前駆体と接触させた後に、及び基材を気相の第二の反応物質と接触させる前に、過剰な金前駆体及び反応副生成物がある場合には、それを除去することができる。いくつかの実施形態では、基材を気相の金前駆体と接触させた後に、及び別の成膜サイクルを開始する前に、過剰な第二の反応物質及び反応副生成物がある場合、それを除去し得る。いくつかの実施形態では、基材を気相の金前駆体と接触させた後に、及び基材を気相の第二の反応物質と接触させる前に、基材をパージガスと接触させ得る。いくつかの実施形態では、基材を気相の第二の反応物質と接触させた後に、及び別の成膜サイクルを開始する前に、基材をパージガスと接触させ得る。
【0033】
いくつかの実施形態に従って形成される金を含む薄膜は、約20nm~約50nmであるが、選択された実際の厚さは、薄膜の意図された用途に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、標的基材表面のすべて又はほとんどが、金を含む薄膜によって覆われることを確実にすることが望ましい。いくつかの実施形態では、金を含む連続的なフィルムを形成することが望ましい。このような場合、少なくとも約10nmの厚さ、少なくとも約20nmの厚さ、少なくとも約30nmの厚さ、少なくとも約40nmの厚さ、又は少なくとも約50nmの厚さである金を含む膜を形成することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、50nmより大きい厚さ、例えば100nmより大きい、250nmより大きい、又は500nmより大きい、又はそれ以上の厚さが望ましい場合がある。しかし、いくつかの他の実施形態では、金を含む非連続的薄膜、又は金を含む分離したアイランド又はナノ粒子を含む薄膜を形成することが望ましい場合がある。
【0034】
いくつかの実施形態では、例えば、約50サイクルを超える、約100サイクルを超える、約250サイクルを超える、又は約500サイクルを超える、又はそれ以上の特定の数の成膜サイクルを有する金を含む薄膜を形成することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、成膜方法は、任意の数の成膜サイクルを含み得る。
【0035】
薄膜を成長させるために使用することができる反応器を成膜に使用し得る。このような反応器としては、前駆体を供給するための適切な装置及び手段を備えたALD反応器、並びにCVD反応器が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、シャワーヘッド反応器を使用し得る。
【0036】
使用することができる適切な反応器の例としては、アリゾナ州フェニックスのASM America,Inc.、及びオランダアルメアのASM Europe B.V.から入手可能な、市販の単一基材(又は単一ウエハ)成膜装置、例えば、Pulsar(登録商標)反応器(例えば、Pulsar(登録商標)2000、Pulsar(登録商標)3000、及びPulsar(登録商標)XP ALD等)、並びにEmerALD(登録商標)XP及びEmerALD(登録商標)反応器等が挙げられる。他の市販の反応器としては、商品名Eagle(登録商標)XP及びXP8、日本エー・エス・エム(株)(日本、東京)製の反応器が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、バッチ式反応器を使用し得る。適切なバッチ式反応器としては、商品名A400及びA412PLUSでASM Europe B.V(オランダアルメア)から市販のAdvance(登録商標)400シリーズ反応器が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、処理中に反応器内でボートが回転するA412等の垂直バッチ式反応器が利用される。したがって、いくつかの実施形態では、ウエハは処理中に回転する。他の実施形態では、バッチ式反応器は、10枚以下のウエハ、8枚以下のウエハ、6枚以下のウエハ、4枚以下のウエハ、又は2枚のウエハを収容するように構成されたミニバッチ反応器を備える。バッチ式反応器が使用されるいくつかの実施形態では、ウエハ間の均一性は3%(1シグマ)未満、2%未満、1%未満又は更には0.5%未満である。
【0038】
本明細書に記載の成膜方法を、クラスタツールに連結された反応器又は反応空間で任意に行うことができる。クラスタツールでは、各反応空間が一つの型の方法専用であるため、各モジュール内の反応空間の温度を一定に保つことができ、各運転の前に基材を方法温度まで加熱する反応器と比較してスループットが向上する。更に、クラスタツールでは、反応空間を基材間で所望の方法圧力レベルに排気する時間を短縮することが可能である。
【0039】
独立型反応器にはロードロックが装備されている。その場合、各運転と運転との間に反応空間を冷却する必要はない。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜を成膜させる成膜方法は、複数の成膜サイクル、例えばALDサイクルを含み得る。
【0040】
第二の段階では、基材は、例えば、吸着した第一の前駆体を金材料に変換し得るオゾンを含む第二の反応物質などの第二反応物質と接触する。基材を第二の反応物質と接触させ、その後、基材表面からの過剰な第二の反応物質及び反応副生成物がある場合にはそれらを除去することは相と見なされ、第二相、第二の反応物質相、第二の前駆体相等と呼ばれ得る。
【0041】
2、Ar、又はHe等のキャリアガスの助けを用いて一つ又は複数の前駆体を供給してもよい。最終的な膜の組成を調整するために、必要に応じて追加の相を加えてもよく、相を除去してもよい。「第一の」及び「第二の」という用語は、任意の特定の実施形態のシーケンシングに応じて、任意の特定の前駆体又は反応物質に適用されてもよい。例えば、実施形態によっては、第一の反応物質は金前駆体又は第二の反応物質のいずれかであり得る。
【0042】
図1を参照すると、いくつかの実施形態によれば、金を含む薄膜は、
ブロック110で、基材表面を少なくとも一つの硫黄供与体配位子(すなわち、硫黄原子を介して金原子に結合された配位子)及び少なくとも一つのアルキル配位子を含む気相の金前駆体と接触させることと、
ブロック120で、任意の過剰な金前駆体及び反応副生成物がある場合には、これらを表面から除去することと、
ブロック130で、基材表面を気相の第二の反応物質と接触させることと、
ブロック140で、基材表面から、任意の過剰な第二の反応物質及び反応副生成物を除去することと、
所望の厚さの金を含む薄膜を形成するために、ブロック150で、接触する工程及び除去する工程を随意に繰り返すことと、を含む、少なくとも一つの成膜サイクルを含む、周期的蒸着方法100によって反応空間内で基材上に成膜される。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記の周期的成膜方法100は、ALD型の方法であってもよい。いくつかの実施形態では、周期的成膜方法100はALD方法であり得る。いくつかの実施形態では、上記の周期的成膜100は、ハイブリッドALD/CVD又は周期的CVD方法であり得る。
【0044】
例示の成膜サイクルは、基材の表面を気相の金前駆体と接触させることから始まるが、別の実施形態では、成膜サイクルは、基材の表面を第二の反応物質と接触させることから始まり得る。基材表面が第一の前駆体と接触し、前駆体が反応しない場合には、次の前駆体が提供されるときに方法が始まることは、当業者には理解されるであろう。
【0045】
いくつかの実施形態では、ブロック120及び140での前駆体、又は反応物質、及び過剰な反応副生成物を除去することは、反応空間又は反応チャンバをパージすることを含み得る。反応チャンバをパージすることは、パージガスの使用、及び/又は反応空間への真空の適用を含み得る。パージガスが使用される場合、パージガスは連続的に流れてもよく、又は反応物質ガスの流れが停止した後で次の反応物質ガスが反応空間を通って流れ始める前にのみ反応空間を通って流れてもよい。また、様々な反応種のキャリアガスとして非反応性ガスを利用するように、反応チャンバを通してパージ又は非反応性ガスを連続的に流すことも可能である。従って、いくつかの実施形態では、例えば、窒素などのガスは反応空間を通って連続的に流れ、金前駆体及び第二の反応物質は反応チャンバに必要に応じてパルスされる。キャリアガスは連続的に流れるため、過剰な反応物質又は反応副生成物を除去することは、反応空間内への反応物質ガスの流れを単に停止することによって達成される。
【0046】
いくつかの実施形態では、ブロック120及び140で前駆体又は反応物質及び任意の過剰反応副生成物を除去することは、第一の反応チャンバからパージガスを含有する第二の異なる反応チャンバへと基材を移動させることを含み得る。いくつかの実施形態では、ブロック120及び140で前駆体又は反応物質及び任意の過剰反応副生成物を除去することは、第一の反応チャンバから真空下の第二の異なる反応チャンバへと基材を移動させることを含み得る。いくつかの実施形態では、ブロック120及び140で前駆体又は反応物質及び任意の過剰反応副生成物を除去することは、第一の前駆体ゾーンから第二の異なる前駆体ゾーンへと基材を移動させることを含み得る。二つのゾーンは、例えば、パージガス及び/又は真空を含むバッファゾーンによって分離され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、成膜された金を含む薄膜は、成膜後に処理方法を受けることができる。いくつかの実施形態では、この処理方法は、例えば、成膜された金を含む薄膜の導電率又は連続性を高めることができる。いくつかの実施形態では、処理方法は、例えば、アニール方法を含むことができる。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜を、例えば、水素を含むガスなどの一つ又は複数のアニールガスを含む雰囲気中でアニールすることができる。
【0048】
図2を参照すると、いくつかの実施形態によれば、金を含む薄膜は、
ブロック210で、基材の表面を、MeAu(SCNEt)を含むEmを含む気相の金前駆体と接触させることと、
ブロック220で、任意の過剰な金前駆体及び反応副生成物がある場合には、これらを表面から除去することと、
ブロック230で、基材表面を、オゾンを含む気相の第二の反応物質と接触させることと、
ブロック240で、基材表面から、任意の過剰な酸素反応物質及び反応副生成物を除去することと、
所望の厚さの金を含む薄膜を形成するために、ブロック250で、接触する工程及び除去する工程を随意に繰り返すことと、を含む、少なくとも一つの成膜サイクルを含む、原子層成膜方法200によって反応空間内で基材上に成膜される。
【0049】
いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、
基材の表面を、少なくとも一つの硫黄供与体配位子及び少なくとも一つのアルキル配位子を含む気相の金前駆体と接触させて、基材上に金前駆体又はその種の単分子層を最大に形成することと、
過剰な金前駆体及び反応副生成物がある場合には、これらを表面から除去することと、
基材表面を、オゾンを含む気相の第二の反応物質と接触させることと、
任意の過剰な第二の反応物質、及び金前駆体層とオゾンを含む第二の反応物質との間の反応で形成された任意の気体の副生成物を表面から除去することと、を含む少なくとも一つの成膜サイクルを含むALD型方法によって、基材上に形成される。
【0050】
所望の厚さの金を含む薄膜が形成されるまで、接触させる工程及び除去する工程を繰り返すことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、金を含む薄膜の成膜方法は、基材を第一の気相の金前駆体と接触させる前に、基材を前処理方法にさらすことをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、前処理方法は、基材を前処理反応物質にさらすことを含み得る。いくつかの実施形態では、前処理反応物質は、望ましくない汚染物質を除去するか、又は金を含む薄膜のその後の成膜のための表面を準備してもよい。いくつかの実施形態では、前処理反応物質は、HCl、HF、又は例えばプラズマなどの反応種を含んでもよい。
金前駆体
【0052】
いくつかの実施形態では、金を含む薄膜を成膜する蒸着方法で使用される金前駆体は、有機金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は硫黄を含む有機金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は、硫黄供与体配位子などの硫黄を含む少なくとも一つの配位子、及び例えば、少なくとも一つのメチル、又はエチル配位子などの少なくとも一つのアルキル配位子を含み得る。本明細書で使用される場合、硫黄供与体配位子は、硫黄原子を介して結合される配位子である。いくつかの実施形態では、金前駆体の金は、+IIIの酸化状態を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金前駆体は、少なくとも一つの硫黄供与体配位子と二つの独立して選択されたアルキル配位子とを含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は、二座硫黄供与体配位子などの硫黄を含む少なくとも一つの二座配位子を含む。いくつかの実施形態では、二座硫黄供与体配位子は、一つの硫黄原子を含み、又はいくつかの実施形態では二つの硫黄原子を含む。いくつかの実施形態では、二座硫黄供与体配位子は、金に結合された供与体硫黄原子などの一つの硫黄原子、及び金に結合された窒素、セレン、又は酸素原子などの他の原子を含む。いくつかの実施形態では、二座硫黄供与体配位子は、化合物を熱的に安定させる。いくつかの実施形態では、金前駆体は、硫黄供与体配位子などの硫黄を含む少なくとも二つの単座配位子を含む。いくつかの実施形態では、金前駆体は、二つの硫黄供与体配位子及びアルキル配位子などの、硫黄を含む少なくとも二つの単座配位子を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、金前駆体は、セレンを含む有機金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は、セレン供与体配位子などのセレンを含む少なくとも一つの配位子、及び例えば、少なくとも一つのメチル、又はエチル配位子などの少なくとも一つのアルキル配位子を含み得る。本明細書で使用される場合、セレン供与体配位子は、セレン原子を介して結合される配位子である。いくつかの実施形態では、金前駆体の金は、+IIIの酸化状態を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金前駆体は、少なくとも一つのセレン供与体配位子と二つの独立して選択されたアルキル配位子とを含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は、二座セレン供与体配位子などのセレンを含む少なくとも一つの二座配位子を含む。いくつかの実施形態では、二座セレン供与体配位子は、一つのセレン原子を含み、又はいくつかの実施形態では二つのセレン原子を含む。いくつかの実施形態では、二座セレン供与体配位子は、金に結合された供与体セレン原子などの一つのv原子、及び金に結合された窒素、セレン、又は酸素原子などの他の原子を含む。いくつかの実施形態では、二座セレン供与体配位子は、化合物を熱的に安定させる。いくつかの実施形態では、金前駆体は、セレン供与体配位子などのセレンを含む少なくとも二つの単座配位子を含む。いくつかの実施形態では、金前駆体は、二つのセレン供与体配位子及びアルキル配位子などの、セレンを含む少なくとも二つの単座配位子を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、金前駆体は、一つ又は複数の追加的な中性付加物を含み得る。付加物形成配位子は、THF(テトラヒドロフラン)、DME(ジメチルフラン)、ジグリム、ジメチルスルフィド、1,2-ビス(メチルチオ)エタン、テトラヒドロチオフェン、TMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)、ジエン、EtN、ピリジン、キヌクリジン、又は1-メチルピロリジン又はその誘導体などのエーテル、ポリエーテル、チオエーテル、ポリチオエーテル、アミン又はポリアミン又はその誘導体であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、金前駆体は、二つの独立して選択されたアルキル配位子及び硫黄供与体配位子などの硫黄を含む配位子を含み得る。いくつかの実施形態では、硫黄を含む配位子は、ジチオカルバマト配位子を含み得る。いくつかの実施形態では、硫黄を含む配位子は、チオカルバマト配位子を含み得る。いくつかの実施形態では、硫黄を含む配位子は、例えばジアルキルチオカルバマト配位子などのアルキルチオカルバマト配位子を含み得る。いくつかの実施形態では、硫黄を含む配位子は、ジエチルチオカルバマト配位子などのジアルキルチオカルバマト配位子を含み得る。いくつかの実施形態では、硫黄を含む配位子は、ジエチルジチオカルバマト配位子などのジアルキルジチオカルバマト配位子を含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は、ジメチル金(III)(MeAu(SCNEt))のジエチルジチオカルバマトを含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は、チオアミダト(thioamidato)、ベータ・チオジケトナト(thiodiketonato)、ベータ・ジチオジケトナト(dithiodiketonato)、ベータ・チオケトイミナト(thioketoiminato)、チオカルボキシラト(thiocarboksylato)、及び/又はジチオカルボキシラト(dithiocarboxylato)配位子を含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、金前駆体は、硫黄供与体配位子などの硫黄を含む配位子、ならびに、例えば2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト(thd)、ヘキサフルオロアセチルアセトナト(hfac)、及び2,2-ジメチル-6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロオクタン-3,5-ジオナト(fod)のうちの一つから選択される配位子などの二座配位子を含み得る。いくつかの実施形態では、金前駆体は、二つの独立して選択されるアルキル配位子及びカルボキシラト配位子、チオカルボキシラト配位子、又はジチオカルボキシラト配位子を含むことができる。いくつかの実施形態では、金前駆体は、二つの独立して選択されるアルキル配位子などのアルキル配位子、及び式SRを有する配位子を含んでもよく、式中、Rは独立して選択されたアルキル基である。いくつかの実施形態では、金前駆体はまた、式ORを有する配位子を含んでもよく、式中、Rは独立して選択されたアルキル基である。
【0057】
いくつかの実施形態では、金前駆体のアルキル配位子は、5未満、4未満、3未満又は2未満の炭素原子を含み得る。いくつかの実施形態では、アルキル配位子は、Meにあるような一つの炭素原子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アルキル配位子は、Etにあるような二つの炭素原子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アルキル配位子は置換アルキル配位子ではない。
第二の反応物質
【0058】
いくつかの実施形態では、第二の反応物質は酸素を含まない。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、酸素原子、酸素ラジカル、酸素イオン、及び/又は酸素プラズマなどの酸素の反応種を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の反応物質はオゾン (O)を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は分子状酸素(O)及びオゾンを含み得る。いくつかの実施形態では、第二の反応物質はオゾン以外の酸素を含む化合物を含むことができない。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、NO等の窒素を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、H等の過酸化物を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、第二の反応物質はHOを含むことができない。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、例えば酸素プラズマなどのプラズマを含まない。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、第二の反応物質は、酸素を含むガスからプラズマによって生成される反応種を含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、第二の前駆体は、オゾンと、約50%、25%、15%、10%、5%、1%又は0.1%未満の不活性ガス以外の不純物を含む。
薄膜特性
【0061】
本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、金を含む連続薄膜であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約100nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約25nm未満、又は約20nm未満、又は約15nm未満、又は約10nm未満、又は約5nm未満若しくはそれ未満の厚さで、連続的であり得る。言及される連続性は、物理的連続性又は電気的連続性であり得る。いくつかの実施形態では、膜が物理的に連続し得る厚さは、膜が電気的に連続する厚さと同じでなくてもよく、膜が電気的に連続し得る厚さは、膜が物理的に連続している厚さと同じでなくてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、連続的であることができるが、いくつかの実施形態では、金を含む不連続薄膜、又は金属性膜を含む分離したアイランドを含む薄膜若しくは金を含むナノ粒子を含む薄膜を形成することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、金を含む成膜された薄膜は、相互に実質的に物理的にも電気的にも連続していない金を含むナノ粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、金を含む成膜させた薄膜は、金を含む分離したナノ粒子又は分離したアイランドを含むことができる。
【0063】
の実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約100nm未満の厚さで約20μΩcm未満の抵抗率を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約25nm未満、又は約20nm未満若しくはそれ未満の厚さで、約20μΩcm未満の抵抗率を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約25nm未満、又は約20nm未満若しくはそれ未満の厚さで、約15μΩcm未満の抵抗率を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約25nm未満、又は約20nm未満若しくはそれ未満の厚さで、約10μΩcm未満の抵抗率を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約30nm未満、約20nm未満、約15nm未満、約10nm未満、約8nm未満、又は約5nm未満若しくはそれ未満の厚さで、約200μΩcm未満の抵抗率を有することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜された金を含む薄膜は、約100nmの厚さで、約200μΩcm未満、約100μΩcm未満、約50μΩcm未満、約30μΩcm未満、約20μΩcm未満、約18μΩcm未満、約15μΩcm未満、約12μΩcm未満、約10μΩcm未満、約8μΩcm未満、又は約5μΩcm未満若しくはそれ未満の抵抗率を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜された金を含む薄膜は、約50nm未満の厚さで、約20μΩcm未満、約18μΩcm未満、約15μΩcm未満、約12μΩcm未満、約10μΩcm未満、約8μΩcm未満、又は約5μΩcm未満若しくはそれ未満の抵抗率を有することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜された金を含む薄膜は、結晶質又は多結晶質であることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜された金を含む薄膜は、立方晶構造を有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜された金を含む薄膜は、約20nm~約100nmの厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約20nm~約60nmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約20を超える、約30nmを超える、約40nmを超える、約50nmを超える、約60nmを超える、約100nmを超える、約250nmを超える、約500nmを超える又はそれを超える厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って成膜させた金を含む薄膜は、約50nm未満、約30nm未満、約20nm未満、約15nm未満、約10nm未満、約5nm未満の厚さを有することができ、又は、場合によっては金の量は、例えば、金を含む不連続膜又は分離した粒子若しくはアイランドが望ましい場合、約5nm未満、約3nm未満、約2nm未満、又は約1nm未満の厚さに相当する。
【0066】
いくつかの実施形態では、膜の成長速度は、約0.01Å/サイクル~約5Å/サイクル、約0.05Å/サイクル~約2Å/サイクルである。いくつかの実施形態では、膜の成長速度は、約0.1Å/サイクルより大きい、約0.3Å/サイクルより大きい、約0.5Å/サイクルより大きい、約0.7Å/サイクルより大きい、約0.8Å/サイクルより大きい、0.9Å/サイクルより大きい、約1Å/サイクルより大きい、約1.1Å/サイクルより大きい、又は1.2Å/サイクルより大きい、又はそれ以上である。
【0067】
いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約20at%未満、約10at%未満、約7at%未満、約5at%未満、約3at%未満、約2at%未満、又は約1at%未満の不純物、即ち、Au以外の元素を含み得る。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約20at%未満、約10at%未満、約5at%未満、約2at%未満、又は約1at%未満の水素を含み得る。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約10at%未満、約5at%未満、約2at%未満、約1at%未満、又は約0.5at%未満の炭素を含み得る。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約5at%未満、約2at%未満、約1at%未満、約0.5at%未満、又は約0.2at%未満の窒素を含み得る。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約15at%未満、約10at%未満、約5at%未満、約3at%未満、約2at%未満、又は約1at%未満の酸素を含み得る。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、約5at%未満、約1at%未満、約0.5at%未満、約0.2at%未満、又は約0.1at%未満の硫黄を含み得る。いくつかの実施形態では、銅、ニッケル又は金を含む薄膜は、約80at%より多く、約90at%より多く、約93at%より多く、約95at%より多く、約97at%より多く、約99at%より多くの金を含み得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、金を含む薄膜は、三次元構造上に成膜され得る。いくつかの実施形態では、金を含む薄膜のステップカバレッジは、アスペクト比(高さ/幅)が約2より大きい、約5より大きい、約10より大きい、約25より大きい、又は約50より大きい構造において、約50%以上、約80%以上、約90%以上、約95%、約98%、又は約99%若しくはそれより大きい。
【実施例
【0069】
実施例1
ジメチル金のジエチルジチオカルバマトの熱特性(III)(MeAu(SCNEt))を調査した。MeAu(SCNEt)は、室温で固体であることがわかった。加熱時、MeAu(SCNEt)が約40℃~約44℃で溶融することが見いだされた。図3に示す通り、MeAu(SCNEt)(10℃/分の加熱率、10mgサンプルサイズ、1atmでN流量)に対する熱重量分析(TGA)曲線は、約220°C未満のほぼ完全な蒸発を示す。
実施例2
【0070】
金を含む薄膜を、いくつかの実施形態による、及び本明細書に記載のALD型の方法により成膜した。金前駆体とオゾン(O)が第二の反応物質として使用されたようにMeAu(SCNEt)が使用された。金を含むサンプル薄膜を120℃、150℃、180℃、及び200℃の温度で成膜させた。各々の薄膜サンプルを、いくつかの実施形態による。及び本明細書に記載の成膜方法により成膜させ、この方法は500成膜サイクルを含み、各サイクルは、金前駆体パルス時間1秒、金前駆体パージ時間1秒、オゾンパルス時間1秒、及びオゾンパージ時間1秒を有する。
【0071】
図4Aに示すように、Å/サイクルで測定された成長速度は、120℃で約0.4Å/サイクル~200℃で約1.1Å/サイクルまで薄膜成膜温度が上昇するにつれて増加した。
【0072】
図4Bに示すように、サンプル薄膜は均一であることが判明した。金を含む各サンプル薄膜の厚さは、反応空間の前駆体入口に隣接したところから、前駆体入口から4.0 cm離れたとろこまで、基材全体にわたりほぼ均一であった。以前の金を含む薄膜のALD又はCVDなどの化学反応に基づく蒸着方法とは異なり、この均一性は約20nm~約60nmという非常に低い膜厚で達成された。
【0073】
サンプル薄膜の抵抗率を測定し、成膜されたサンプル薄膜のすべてが、図4Cに示すように導電性であることが見出された。抵抗率は、成膜温度120℃で約50μΩcmから、成膜温度150℃で約5μΩcmに減少し、180℃及び200℃で成膜された膜については約10μΩcm未満で維持される。これらの結果は、金に対する以前の蒸着方法とは異なり、金を含む成膜されたサンプル膜は連続的であり、導電性がある。
【0074】
成膜されたサンプル膜の結晶構造を、X線回折により調査した。図4Dに示すように、X線回折図の強度ピークは、サンプル膜がすべての成膜温度で立方晶構造を有していることを示し、これは金属金の成膜を示している。
【0075】
図5A~Dに示すように、サンプル薄膜も走査電子顕微鏡を使用して調査された。SEM画像は、以前の金蒸着法とは異なり、金を含むサンプル薄膜が、約20nm~約60nmの薄さでの120℃~200℃のすべての成膜温度について、均一で連続的であることを示している。金を含む成膜したサンプル薄膜は、120℃~200℃のすべての成膜温度で基材を完全に覆った。
実施例3
【0076】
金を含む薄膜を、いくつかの実施形態に従って、及び本明細書に記載のALD型の方法により成膜した。金前駆体とオゾン(O)が第二の反応物質として使用されたようにMeAu(SCNEt)が使用された。全てのサンプル薄膜に対する成膜温度は180℃であった。各々の薄膜サンプルは、いくつかの実施形態に従って、及び本明細書に記載されるような成膜方法により成膜され、この方法は500成膜サイクルを含む。金前駆体及び第二の反応物質のパルス時間を0.5秒から2秒に変化させ、一方でパージ時間を1秒で一定に保持した。
【0077】
図6Aに示すように、Å/サイクルで測定された成長速度は、1秒の前駆体パルス長で飽和した。この成長速度は約0.9Å/サイクルであることが分かった。成長速度は、調査された前駆体パルス長の範囲の約0.8Å/サイクル~約0.9Å/サイクルで変化する。
【0078】
図6Bに示すように、1秒の前駆体パルス時間で成膜させた金を含むサンプル薄膜は、2秒の前駆体パルス時間で成膜されたサンプル膜よりも均一であることが判明した。両方の場合において、サンプル薄膜は、約43nm~約45nmの非常に低い厚さで均一で連続的であることが分かった。
【0079】
サンプル薄膜の抵抗率を測定し、成膜されたサンプル薄膜のすべてが、図6Cに示すように導電性であることが見出された。抵抗率が、前駆体パルス時間0.5秒を有する成膜方法について約17μΩcmから、前駆体パルス時間2秒を有する成膜方法の約5μΩcmまで減少した。抵抗率は、前駆体パルス時間が1秒から1.5秒に増加したときに約10μΩcm~約12μΩcmにわずかに増加することが見出された。これらの結果は、金を含む成膜したサンプル膜が連続的かつ導電性があることを示した。
実施例4
【0080】
金を含む薄膜を、いくつかの実施形態に従って、及び本明細書に記載のALD型の方法により成膜した。金前駆体とオゾン(O)が第二の反応物質として使用されたようにMeAu(SCNEt)が使用された。サンプル薄膜を180℃の温度で成膜させた。各サンプルフィルムについて成膜サイクル数を50~500サイクルで変化させた。各成膜サイクルは、金前駆体パルス時間1秒、金前駆体パージ時間1秒、オゾンパルス時間1秒、及びオゾンパージ時間1秒を有した。
【0081】
図7Aに示すように、サンプル薄膜厚は、50成膜サイクルを含む成膜方法に対して5nm未満から、500成膜サイクルを含む成膜方法に対して約45nmまでほぼ直線的に増加した。
【0082】
図7B~Dに示すように、サンプル薄膜も走査電子顕微鏡を使用して調査された。SEM画像は、500サイクルによって成膜させたサンプル薄膜が均一で連続的であったことを示している。
実施例5
【0083】
金を含むサンプル薄膜を、一部の実施形態による、及び本明細書に記載のALD型の方法に従って成膜した。金前駆体とオゾン(O)が第二の反応物質として使用されたようにMeAu(SCNEt)が使用された。第一のサンプルを成膜温度120℃で調製し、一方で、第二のサンプルを成膜温度180℃で調製した。どちらの薄膜サンプルもいくつかの実施形態により、及び本明細書に記載の成膜方法によって成膜され、この方法は500成膜サイクルを含み、各サイクルは金前駆体パルス時間10秒、金前駆体パージ時間10秒、オゾンパルス時間10秒、及びオゾンパージ時間10秒を有する。
【0084】
120℃で成膜させた金を含む第一のサンプル薄膜は、約21nmの厚さであることが見いだされた。180℃で成膜させた金を含む第二のサンプル薄膜は、約47nmの厚さであることが見いだされた。薄膜の組成を分析し、以下の表1に示す。いずれのサンプル膜でも硫黄は検出されなかった。
【表1】
表1 120℃及び180℃で成膜された、金を含む二つのサンプル薄膜用の膜組成物
【0085】
本明細書で使用される場合、「およそ」、「約」、「一般的に」及び「実質的に」という用語などの本明細書で使用される度合いの言葉は、依然として所望の機能を実施する、又は所望の結果を達成する、記載された値、量、又は特性に近い値、量、又は特性を表す。例えば、「およそ」、「約」、「一般的に」及び「実質的に」という用語は、記載された量の10%以内、5%以内、1%以内、0.1%以内、0.01%以内の量を意味し得る。記載された量が0(例えば、なし、有さない)である場合、上記の列挙された範囲は特定の範囲であってもよく、特定の値の%内ではない。例えば、記載された量の10重量/容量%以下、5重量/容量%以下、1重量/容量%以下、0.1重量/容量%以下、及び0.01重量/容量%以下など。
【0086】
用語「膜」及び「薄膜」は、本明細書では簡略化のために使用される。「膜」及び「薄膜」は、本明細書に開示された方法により成膜された任意の連続的又は非連続的な構造及び材料を意味することを意図する。「膜」及び「薄膜」としては、例えば、2D材料、ナノロッド、ナノチューブ若しくはナノ粒子、又は平坦な単一の部分的な若しくは完全な分子層、又は部分的な若しくは完全な原子層、又は原子及び/若しくは分子のクラスタ、を挙げることができる。「膜」及び「薄膜」は、ピンホールを有する材料又は層を含み得るが、それでも少なくとも部分的に連続している。
【0087】
当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、多くの様々な変更が可能であることを理解するであろう。記載の特徴、構造、特性及び前駆体は、任意の適切な方法で組み合わせることができる。従って、本発明の形態は例示的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことは明らかである。添付の特許請求の範囲によって規定された通り、すべての修正及び変更は本発明の範囲内に入ることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D