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特許7108124難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、ケーブル、光ファイバケーブル及び成形体
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  • 特許-難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、ケーブル、光ファイバケーブル及び成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、ケーブル、光ファイバケーブル及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20220720BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220720BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220720BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220720BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220720BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20220720BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20220720BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L83/04
C08K5/09
C08K3/22
C08K3/26
H01B7/295
H01B7/02 Z
H01B7/18 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021501879
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005216
(87)【国際公開番号】W WO2020170891
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2019027900
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】岩田 誠之
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-007726(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105206323(CN,A)
【文献】中国実用新案第204516424(CN,U)
【文献】中国実用新案第204667912(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105047282(CN,A)
【文献】特開2006-008873(JP,A)
【文献】特開2005-029604(JP,A)
【文献】特開2005-029605(JP,A)
【文献】特開平02-055751(JP,A)
【文献】特開平06-212031(JP,A)
【文献】特開2001-214060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
H01B 7/295
H01B 7/02
H01B 7/18
H01B 3/44
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂と、
シリコーン化合物と、
脂肪酸金属塩と、
二価金属の酸化物からなる第1無機フィラーと
前記二価金属の酸化物とは異なる無機物からなる第2無機フィラーとを含み、
前記ベース樹脂がポリオレフィン樹脂からなり、
前記二価金属の酸化物が酸化マグネシウムであり、
前記無機物が炭酸カルシウムであり、
前記脂肪酸金属塩に対する前記第1無機フィラーの質量比Rが1/10以上である、難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸金属塩に対する前記第1無機フィラーの質量比Rが1以下である、請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂100質量部に対し、
前記シリコーン化合物が1質量部以上の割合で配合されている、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ベース樹脂100質量部に対し、
前記脂肪酸金属塩が2質量部以上の割合で配合されている、請求項1~のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ベース樹脂100質量部に対し、
前記第1無機フィラーが0.05質量部以上の割合で配合されている、請求項1~のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ベース樹脂100質量部に対し、前記第2無機フィラーが1~200質量部の割合で配合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
導体と、
前記導体を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線を備えており、
前記絶縁層が、請求項1~のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる絶縁電線。
【請求項8】
導体、及び、前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、前記絶縁電線を覆うシースとを有し、
前記絶縁層及び前記シースの少なくとも一方が、請求項1~のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を押出成形して得られるケーブル。
【請求項9】
光ファイバと、
前記光ファイバを被覆する被覆部とを備え、
前記被覆部の少なくとも一部が、請求項1~のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる光ファイバケーブル。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、ケーブル、光ファイバケーブル及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルなどにおいては、高度な難燃性が要求される場合がある。その場合には、その被覆において難燃性樹脂組成物が使用される。
【0003】
このような難燃性樹脂組成物として、例えばポリオレフィン樹脂に、炭酸カルシウム粒子、シリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物を配合した難燃性樹脂組成物が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-94969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の難燃性樹脂組成物は優れた難燃性を有しているものの、脂肪酸含有化合物として脂肪酸金属塩を用いた場合、成形時における発泡の抑制の点で改善の余地を有していた。
【0006】
このため、成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する難燃性樹脂組成物が求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、ケーブル、光ファイバケーブル及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため検討を重ねた。まず、本発明者は、脂肪酸金属塩が高い吸湿性を有しているため、周囲の湿度によっては脂肪酸金属塩が水分を吸収している場合があるのではないかと考えた。そして、そのような場合には、以下のことが起こるのではないかと本発明者は考えた。すなわち、ベース樹脂、シリコーン化合物及び脂肪酸金属塩を含む難燃性樹脂組成物を成形する際、脂肪酸金属塩が高温下に置かれる。このため、脂肪酸金属塩から水分が水蒸気として放出され、得られる成形体において発泡が生じる。そこで、本発明者は、このような発泡を十分に抑制するべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、ベース樹脂と、シリコーン化合物と、脂肪酸金属塩と、二価金属の酸化物からなる第1無機フィラーとを含む、難燃性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の難燃性樹脂組成物は、成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する。
【0011】
なお、本発明者は、本発明の難燃性樹脂組成物において、上記の効果が得られる理由については以下のように推察している。
【0012】
すなわち、難燃性樹脂組成物中に脂肪酸金属塩が含まれていると、周囲の湿度によっては脂肪酸金属塩は水分を十分に吸収している場合がある。この場合、難燃性樹脂組成物の成形時に、脂肪酸金属塩が高温下に置かれ、その水分が水蒸気となって放出される。このとき、難燃性樹脂組成物中に二価金属の酸化物からなる第1無機フィラーが含まれていない場合、この水蒸気が発泡を引き起こし得る。これに対し、本発明では、難燃性樹脂組成物中に二価金属の酸化物が含まれており、この二価金属の酸化物が高温下でこの脂肪酸金属塩から放出された水蒸気と反応する。このため、水蒸気による発泡が十分に抑制される。
【0013】
また、難燃性樹脂組成物の燃焼時に、ベース樹脂の表面に、主としてシリコーン化合物、脂肪酸金属塩及びこれらの分解物からなるバリア層がベース樹脂の表面に形成され、ベース樹脂の燃焼が抑制される。そのため、優れた難燃性が確保されるものと考えられる。
【0014】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記二価金属の酸化物が酸化マグネシウムであることが好ましい。
【0015】
この場合、難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体の難燃性の低下を抑制することができる。
【0016】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記脂肪酸金属塩に対する前記第1無機フィラーの質量比Rが1/100以上であることが好ましい。
【0017】
この場合、質量比Rが1/100未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物の成形時における発泡をより十分に抑制することができる。
【0018】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記脂肪酸金属塩に対する前記第1無機フィラーの質量比Rが1以下であることが好ましい。
【0019】
この場合、質量比Rが1を超える場合と比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0020】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記ベース樹脂100質量部に対し、前記シリコーン化合物が1質量部以上の割合で配合されていることが好ましい。
【0021】
この場合、本発明の難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合が1質量部未満である場合に比べて、難燃性をより向上させることができる。
【0022】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記ベース樹脂100質量部に対し、前記脂肪酸金属塩が2質量部以上の割合で配合されていることが好ましい。
【0023】
この場合、本発明の難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が2質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0024】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記ベース樹脂100質量部に対し、前記第1無機フィラーが0.05質量部以上の割合で配合されていることが好ましい。
【0025】
この場合、本発明の難燃性樹脂組成物は、成形時における発泡をより十分に抑制できる。
【0026】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記二価金属の酸化物とは異なる無機物からなる第2無機フィラーをさらに含むことが好ましい。
【0027】
この場合、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0028】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記無機物が炭酸カルシウム及びケイ酸塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
この場合、難燃性樹脂組成物の難燃性を特に効果的に向上させることができる。
【0030】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記ベース樹脂100質量部に対し、前記第2無機フィラーが1~200質量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0031】
この場合、難燃性樹脂組成物の難燃性をより十分に向上させることができるとともに、耐摩耗性をより向上させることもできる。
【0032】
また本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線を備えており、前記絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる絶縁電線である。
【0033】
本発明の絶縁電線によれば、絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる。ここで、本発明の難燃性樹脂組成物は、押出成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する。このため、得られる絶縁層では発泡が少なくなり、絶縁層は優れた難燃性を有する。従って、本発明の絶縁電線は、良好な外観を有しながら、優れた難燃性を有する。
【0034】
また、本発明は、導体、及び、前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、前記絶縁電線を覆うシースとを有し、前記絶縁層及び前記シースの少なくとも一方が、上記難燃性樹脂組成物を押出成形して得られるケーブルである。
【0035】
本発明のケーブルによれば、絶縁層及びシースの少なくとも一方が、上記難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる。ここで、本発明の難燃性樹脂組成物は、押出成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する。このため、得られる絶縁層及びシースの少なくとも一方では発泡が少なくなり、絶縁層及びシースの少なくとも一方は優れた難燃性を有する。従って、本発明のケーブルは、良好な外観を有しながら、優れた難燃性を有する。
【0036】
さらに本発明は、光ファイバと、前記光ファイバを被覆する被覆部とを備え、前記被覆部の少なくとも一部が、上述した難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる光ファイバケーブルである。
【0037】
本発明の光ファイバケーブルによれば、被覆部の少なくとも一部が上記難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる。ここで、本発明の難燃性樹脂組成物は、押出成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する。このため、得られる被覆部の少なくとも一部では発泡が少なくなり、被覆部の少なくとも一部は優れた難燃性を有する。従って、本発明の光ファイバケーブルは、良好な外観を有しながら、優れた難燃性を有する。
【0038】
また本発明は、上記難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体である。
【0039】
本発明の難燃性樹脂組成物は、成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する。このため、得られる成形体では発泡が少なくなり、成形体は優れた難燃性を有する。従って、本発明の成形体は、良好な外観を有しながら、優れた難燃性を有する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、ケーブル及び光ファイバケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明のケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0043】
[ケーブル]
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、ケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するシースとしてのチューブ状の被覆層3とを備えている。そして、絶縁電線4は、導体1と、導体1を被覆するチューブ状の絶縁層2とを有している。
【0044】
ここで、チューブ状の絶縁層2及び被覆層3は難燃性樹脂組成物を押出成形して得られるものであり、この難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂と、シリコーン化合物と、脂肪酸金属塩と、二価金属の酸化物からなる第1無機フィラーとを含む。
【0045】
ケーブル10によれば、絶縁層2及び被覆層3が、上記難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる。ここで、上記難燃性樹脂組成物は、押出成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する。このため、得られる絶縁層2及び被覆層3では発泡が少なくなり、絶縁層2及び被覆層3は優れた難燃性を有する。従って、ケーブル10は、良好な外観を有しながら、優れた難燃性を有する。
【0046】
[ケーブルの製造方法]
次に、上述したケーブル10の製造方法について説明する。
【0047】
<導体>
まず導体1を準備する。導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。導体1の材料としては、例えば、主に銅、アルミニウムやそれらを含む合金が好ましいが、カーボン材料などの導電性物質も適宜使用できる。
【0048】
<難燃性樹脂組成物>
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ベース樹脂と、シリコーン化合物と、脂肪酸金属塩と、二価金属の酸化物からなる第1無機フィラーとを含む。
【0049】
(1)ベース樹脂
ベース樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、及びその変性樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
(A1)ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン樹脂としては、例えばエチレン系重合体、プロピレン系重合体及びオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
エチレン系重合体は、エチレンに由来する構成単位を主とする重合体であり、エチレン系重合体としては、例えばポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレンプロピレンジエン共重合体などが挙げられる。
【0052】
ポリエチレンとしては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、メタロセン超低密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
プロピレン系重合体とは、プロピレンに由来する構成単位を主として含む重合体を言う。プロピレン系重合体としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体が挙げられる。α―オレフィンとしては、例えば1-ブテン、2-ブテン、1-ヘキセン及び2-ヘキセンなどが挙げられる。
【0054】
プロピレン系重合体がコモノマーを含む共重合体である場合、プロピレン系重合体はブロック共重合体でもランダム共重合体でもよいが、ブロック共重合体であることが好ましい。プロピレン-αオレフィン共重合体がブロック共重合体であると、ランダム共重合体である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより向上させることができる。
【0055】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリプロピレン(ハードセグメント)の中に、エチレンプロピレンゴム(EPDM,EPM)および/またはその架橋体をソフトセグメントとして分散させたものなどが挙げられる。
【0056】
(A2)変性樹脂
変性樹脂は、上述したポリオレフィン樹脂又はその前駆体を、グラフト化又は共重合によって変性させた樹脂を言う。変性により導入される官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アクリル基、アセチル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基又はエトキシ基)などが挙げられる。中でも、カルボキシル基及び酸無水物基が好ましい。この場合、変性により導入される官能基がカルボキシル基及び酸無水物基以外の官能基である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより効果的に向上させることができる。グラフト化又は共重合に使用される物質としては、酸、酸無水物、および、その誘導体が挙げられる。酸としては、例えば酢酸、アクリル酸、マレイン酸、及びメタクリル酸などのカルボン酸が挙げられる。酸無水物としては、例えば無水マレイン酸などの無水カルボン酸が挙げられる。
【0057】
変性樹脂としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、マレイン酸変性スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性スチレン系エラストマーなどが挙げられる。
【0058】
(2)シリコーン化合物
シリコーン化合物は、難燃剤として機能するものであり、シリコーン化合物としては、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖に含み側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;ビニル基;及びフェニル基などのアリール基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及びメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、シリコーンガム又はシリコーンレジンの形態で用いられる。中でも、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンガムの形態で用いられることが好ましい。この場合、シリコーン化合物がシリコーンガム以外のシリコーン化合物である場合に比べて、難燃性樹脂組成物においてブルームが起こりにくくなる。
【0059】
ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は、0質量部より大きければ特に制限されるものではないが、1質量部以上であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合が1質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0060】
ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は1.5質量部以上であることがより好ましい。この場合、シリコーン化合物の配合割合が1.5質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより十分に向上させることができる。ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は2質量部以上であることがより一層好ましい。
【0061】
ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は10質量部以下であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより向上させることができる。
【0062】
ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は7質量部以下であることがより好ましい。この場合、シリコーン化合物の配合割合が7質量部を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより一層十分に向上させることができる。ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は5質量部以下であることがより一層好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0063】
(3)脂肪酸金属塩
脂肪酸金属塩は難燃剤として機能するものである。脂肪酸金属塩とは、脂肪酸の金属塩を言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12~28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0064】
脂肪酸の金属塩を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び鉛などが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。この場合、ステアリン酸マグネシウム以外の脂肪酸金属塩を用いる場合に比べて、難燃性樹脂組成物においてより少ない添加量でより優れた難燃性が得られる。
【0065】
ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合は、特に制限されるものではないが、1質量部以上であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が1質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0066】
ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合は、2質量部以上であることがより好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が2質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0067】
ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合は20質量部以下であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が20質量部を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより向上させることができる。
【0068】
ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合は10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがより一層好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が10質量部より大きい場合と比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより一層向上させることができる。
【0069】
(4)第1無機フィラー
第1無機フィラーは二価金属の酸化物である。二価金属の酸化物としては、例えば酸化マグネシウム及び酸化カルシウムが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0070】
中でも、二価金属の酸化物としては、酸化マグネシウムが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物を押出成形して得られる絶縁層2及び被覆層3の難燃性の低下を抑制することができる。
【0071】
ベース樹脂100質量部に対する第1無機フィラーの配合割合は0質量部より多ければよいが、0.05質量部以上であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する第1無機フィラーの配合割合が0.05質量部未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物の成形時における発泡をより十分に抑制することができる。
【0072】
但し、ベース樹脂100質量部に対する第1無機フィラーの配合割合は20質量部以下であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する第1無機フィラーの配合割合が20質量部を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0073】
ベース樹脂100質量部に対する第1無機フィラーの配合割合は10質量部以下であることがより好ましく、7質量部以下であることがより一層好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0074】
脂肪酸金属塩に対する第1無機フィラーの質量比(=第1無機フィラー/脂肪酸金属塩)Rは特に制限されるものではないが、Rは1/100以上であることが好ましい。この場合、Rが1/100未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物の成形時における発泡をより十分に抑制することができる。Rは1/10以上であることがより好ましい。但し、Rは5以下であることが好ましい。この場合、Rが5を超える場合と比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。Rは、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させる観点からは、3以下であることが好ましく、1以下であることがより一層好ましく、6/10以下であることが特に好ましい。
【0075】
(5)第2無機フィラー
第2無機フィラーは、二価金属の酸化物とは異なる無機物からなる。このような無機物は、二価金属の酸化物とは異なる無機物であれば特に限定されないが、このような無機物としては、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸塩化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0076】
中でも、無機物としては、炭酸カルシウム、ケイ酸塩化合物又はこれらの混合物であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0077】
ケイ酸塩化合物としては、例えばクレー及びタルクが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
ベース樹脂100質量部に対する第2無機フィラーの配合割合は1~200質量部であることが好ましい。
【0079】
この場合、ベース樹脂100質量部に対する第2無機フィラーの配合割合が1質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。また、ベース樹脂100質量部に対する第2無機フィラーの配合割合は200質量部を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより向上させることができる。なお、ベース樹脂100質量部に対する第2無機フィラーの配合割合は5~100質量部であることがより好ましい。
【0080】
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤などの充填剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0081】
上記難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂、シリコーン化合物、脂肪酸金属塩、第1無機フィラー、及び、必要に応じて第2無機フィラー等を混練することにより得ることができる。このとき、脂肪酸金属塩は、乾燥した状態で用いることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物に気泡が残ることが抑制されるため、この残った気泡が難燃性樹脂組成物の押出成形で得られる絶縁層2及び被覆層3中に残存することが十分に抑制される。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。このとき、シリコーン化合物の分散性を向上させる観点からは、ベース樹脂の一部とシリコーン化合物とを混練し、得られたマスターバッチ(MB)を、残りのベース樹脂、脂肪酸金属塩、第1無機フィラー及び第2無機フィラー等と混練してもよい。
【0082】
次に、上記難燃性樹脂組成物で導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練して押出成形し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を導体1上に連続的に被覆する。こうして導体1上に絶縁層2が形成されて絶縁電線4が得られる。
【0083】
なお、難燃性樹脂組成物は、導体1に絶縁層2を形成するまでは乾燥状態で保管しておくことが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物中の脂肪酸金属塩が吸湿することが十分に抑制され、難燃性樹脂組成物の押出成形時に脂肪酸金属塩から放出される水分量が少なくなり、その水分による発泡が十分に抑制される。
【0084】
<被覆層>
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を1本用意し、この絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製した絶縁体としての被覆層3で被覆する。被覆層3は、いわゆるシースであり、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
【0085】
以上のようにしてケーブル10が得られる。
【0086】
[成形体]
本発明は、上述した難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体である。
【0087】
上述した難燃性樹脂組成物は、成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有する。このため、得られる成形体では発泡が少なくなり、成形体は優れた難燃性を有する。従って、成形体は、良好な外観を有しながら、優れた難燃性を有する。
【0088】
上記成形体は、射出成形法、押出成形法などの一般的な成形法によって得ることができる。
【0089】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではケーブルとして、1本の絶縁電線4を有するケーブルが用いられているが、本発明のケーブルは1本の絶縁電線4を有するケーブルに限定されるものではなく、被覆層3の内側に絶縁電線4を2本以上有するケーブルであってもよい。また被覆層3と絶縁電線4との間には、ポリプロピレン等からなる樹脂部が設けられていてもよい。
【0090】
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されているが、絶縁層2が上記の難燃性樹脂組成物で構成されずに通常の絶縁樹脂で構成され、被覆層3のみが、上記の難燃性樹脂組成物で構成されてもよく、被覆層3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されずに通常の絶縁樹脂で構成され、絶縁層2のみが上記の難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。さらに被覆層3は必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。
【0091】
さらに、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物は、光ファイバと、光ファイバを被覆する被覆部とを備える光ファイバケーブルの被覆部としても適用可能である。例えば図3は、本発明の光ファイバケーブルの一実施形態としてのインドア型光ファイバケーブルを示す断面図である。図3に示すように、光ファイバケーブル20は、2本のテンションメンバ22,23と、光ファイバ24と、これらを被覆する被覆部25とを備えている。ここで、光ファイバ24は、被覆部25を貫通するように設けられている。被覆部25は、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成される。
【0092】
なお、光ファイバケーブル20においては、被覆部25の全部が絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成されているが、被覆部25の一部のみが絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成されていてもよい。
【実施例
【0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1~10及び比較例1~7)
ベース樹脂、シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)、脂肪酸金属塩、第2無機フィラーを、表1~2に示す配合割合で配合し、160℃に加熱したバンバリーミキサによって15分間混練した後、加圧蓋を開けた状態で5分間脱気(脱水)処理した。さらに第1無機フィラーを添加して5分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。ここで、シリコーンMBはポリエチレン又はポリプロピレンとシリコーンガムとの混合物である。なお、表1~2において、各配合成分の配合割合の単位は質量部である。また表1~2において、ベース樹脂の配合割合の合計が100質量部となっていないが、ベース樹脂は、「ベース樹脂」の欄におけるベース樹脂と、シリコーンMB中のポリエチレン又はポリプロピレンとの混合物で構成されており、「ベース樹脂」の欄におけるベース樹脂の合計配合割合とシリコーンMB中のポリエチレン又はポリプロピレンの配合割合とを合計すれば、その合計は100質量部となる。
【0095】
上記ベース樹脂、シリコーンMB、脂肪酸金属塩、第1無機フィラー及び第2無機フィラーとしては具体的には下記のものを用いた。
【0096】
(A)ベース樹脂
(A-1)ポリエチレン(PE)
商品名「ミラソン50」(三井デュポンポリケミカル製、低密度ポリエチレン(LDPE))
(A-2)ポリプロピレン(PP)
商品名「プライムポリプロ E-150GK」(プライムポリマー社製、ブロックポリプロピレンコポリマー)
(A-3)酸変性ポリオレフィン(酸変性PO)
商品名「タフマーMA8510」(三井化学社製、マレイン酸変性ポリオレフィン)
【0097】
(B)シリコーンMB
(B-1)シリコーンMB1
商品名「X-22-2125H」(信越化学工業社製、50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%ポリエチレン(PE)とを含有)
(B-2)シリコーンMB2
商品名「X-22-2101」(信越化学工業社製、50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%ポリプロピレン(PP)とを含有)
【0098】
(C)脂肪酸金属塩
(C-1)ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸Mg):ADEKA社製
(C-2)ステアリン酸カルシウム(ステアリン酸Ca):堺化学工業社製
【0099】
(D)第1無機フィラー(二価金属の酸化物)
(D-1)酸化マグネシウム
商品名「スターマグCX-150」(神島化学社製、脂肪酸処理品)
(D-2)酸化カルシウム
商品名「HAL-G」(吉沢石灰工業社製)
【0100】
(E)第2無機フィラー
(E-1)炭酸カルシウム
商品名「NCC#410」(日東粉化工業社製、飽和脂肪酸処理炭酸カルシウム)
(E-2)ケイ酸塩化合物
商品名「バーゲス2211」(バーゲス・ピグメント社製、アミノシラン処理クレー)
【0101】
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1~10及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物について、発泡抑制効果及び難燃性の評価を行った。
【0102】
なお、発泡抑制効果及び難燃性は、実施例1~10及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を用いて以下のようにして絶縁電線を作製し、この絶縁電線について評価した。
【0103】
(絶縁電線の作製)
実施例1~10及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を、40℃80%RHの恒温湿槽内に48時間保管して吸湿状態とし、その後、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入して190℃で溶融し、その押出機からチューブ状の押出物を押し出し、断面積2mmの導体上に、厚さが0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を作製した。
【0104】
<発泡抑制効果>
上記実施例1~10及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を用いて作製された絶縁電線について外観を目視にて観察した。また、絶縁電線を切断して絶縁層の切断面をマイクロスコープにて観察し、発泡の有無を確認した。そして、絶縁電線の評価については以下のようにランク付けを行った。結果を表1~2に示す。また合格基準は以下の通りとした。
(評価ランク)
◎:絶縁電線の外観が良好で且つ切断面に発泡が無い
〇:絶縁電線の外観が良好であるが、切断面に微細な発泡が有る
×:絶縁電線の外観が不良で且つ切断面に発泡が有る

(合格基準) 評価ランクが◎又は〇であること
【0105】
<難燃性>
上記実施例1~10及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を用いて作製された絶縁電線について、以下のようにして水平燃焼試験及び60度傾斜燃焼試験を行った。
(1)水平燃焼試験
上記実施例1~10及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を用いて作製された絶縁電線について、JIS C3005に準拠した水平燃焼試験を行った。結果を表1~2に示す。なお、表1~2において、絶縁電線が燃焼するまで接炎した後、燃焼開始から自己消化するまでの時間を測定した。そして、絶縁電線の水平燃焼試験の評価については以下のようにランク付けを行った。結果を表1~2に示す。
(評価ランク)
◎:60秒以内に自己消火した
〇:60秒よりも長い時間で自己消火した
×:自己消火せず全焼した
(2)60度傾斜燃焼試験
上記実施例1~10及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を用いて作製された絶縁電線について、JIS C3005に準拠した60度傾斜燃焼試験を行った。結果を表1~2に示す。なお、表1~2において、絶縁電線が燃焼するまで接炎した後、燃焼開始から自己消化するまでの時間を測定した。そして、絶縁電線の60度傾斜燃焼試験の評価については以下のようにランク付けを行った。結果を表1~2に示す。
(評価ランク)
〇:自己消火した
×:自己消火せず全焼した
(3)合格基準
難燃性は、上記水平燃焼試験によって評価し、水平燃焼試験における評価ランクが◎又は〇である絶縁電線を合格とした。

【表1】
【表2】
【0106】
表1~2に示す結果より、実施例1~10の難燃性樹脂組成物は、発泡抑制効果及び難燃性の点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1~7の難燃性樹脂組成物は、発泡抑制効果及び難燃性のうち少なくとも1つの点で合格基準に達していなかった。
【0107】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物が、成形時における発泡を十分に抑制でき、優れた難燃性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0108】
1…導体
2…絶縁層
3…被覆層(シース)
4…絶縁電線
10…ケーブル
20…光ファイバケーブル
24…光ファイバ
25…被覆部
図1
図2
図3