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特許7108128ストリップ材料、特に熱間ストリップを搬送するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ストリップ材料、特に熱間ストリップを搬送するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 39/14 20060101AFI20220720BHJP
   B21C 47/02 20060101ALI20220720BHJP
   B21C 47/34 20060101ALI20220720BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B21B39/14
B21B39/14 D
B21B39/14 E
B21C47/02 B
B21C47/34 A
B21C51/00 D
B21C51/00 J
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021505966
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2020050970
(87)【国際公開番号】W WO2020169278
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】102019202395.9
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019217682.8
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ホルツハウアー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クラマー・ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】カストナー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】トロイデ・マグヌス
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-082032(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0033757(KR,A)
【文献】実開昭60-195106(JP,U)
【文献】特開平06-047423(JP,A)
【文献】特開平08-281332(JP,A)
【文献】特開平11-216516(JP,A)
【文献】特開昭53-050039(JP,A)
【文献】特開平06-015333(JP,A)
【文献】特開平09-174132(JP,A)
【文献】特開平04-013415(JP,A)
【文献】特開平04-004924(JP,A)
【文献】特開平05-161917(JP,A)
【文献】米国特許第05937688(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 39/14
B21C 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップ材料搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって所定の搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置(1)と、
・搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)と、
・各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの回転式の摩耗体(6)であって、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承されているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置(13)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定されていること、を特徴とする装置。
【請求項2】
ローラテーブル上のストリップ材料の前進速度用あるいはこれに比例したローラ回転速度用のセンサを有し、回転数調整装置の基準値が、前進速度又はローラ回転速度であること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
回転数調整装置(7)は、巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されるように設定されていること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
回転数調整装置(7)は、摩耗体(6)の角速度が、0.5~10rpmのオーダーあるように設定されていること、を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
・少なくとも1つの摩耗体(6)の進出位置を所定の目標位置に調整するための位置調整装置(9)と、
・少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送方向に対して横に目標位置に進出させるための位置決め駆動装置(14)と、
を有すること、を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
位置調整装置(9)は、位置調整装置の基準値が、少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送装置(1)上のストリップ材料に押し付ける力であるように設定されていること、を特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項7】
ストリップ材料(10)の横方向の位置用のセンサを有し、位置調整装置の基準値が、搬送装置上のストリップ材料用の目標位置であること、を特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの摩耗体用の回転駆動装置が、電気モータであること、を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
位置決め駆動装置が、油圧式の駆動装置であること、を特徴とする請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
摩耗体の次の交換を予測するための整備予測装置が、前回の整備日及び現在の圧延プログラムのこれまでの経過等の前回の整備日以降の事象に依存して、予測される次の整備日を示すこと、を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
ストリップ材料(4)用の搬送装置が、ローラ(2)を備えたローラテーブル(1)を有すること、を特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素(5)を備えた搬送装置(1)を介して所定の区間にわたってストリップ材料を搬送するステップと、
・回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸を中心として各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの摩耗体(6)を回転させるステップと、
・回転数調整装置(7)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップと、
・回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいこと、を特徴とする方法。
【請求項13】
回転数調整装置の基準値が、ストリップ材料の前進速度又はローラテーブルのローラ回転速度であること、を特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されること、を特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
摩耗体(6)の角速度が、0.5~10rpmのオーダーあること、を特徴とする請求項1214のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
・位置調整装置(9)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の進出位置を所定の目標位置に調整するステップと、
・位置決め駆動装置(14)によって少なくとも1つの摩耗体を搬送方向に対して横に目標位置に進出させるステップと、
を有すること、を特徴とする請求項1215のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
位置調整装置の基準値が、少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送装置(1)上のストリップ材料に押し付ける力であること、を特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ストリップ材料(10)の横方向の位置が、センサによって検出され、位置調整装置の基準値が、搬送装置上のストリップ材料用の目標位置であること、を特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
摩耗体の次の交換を予測するための整備予測装置が、前回の整備日及び現在の圧延プログラムのこれまでの経過等の前回の整備日以降の事象に依存して、予測される次の整備日を示すこと、を特徴とする請求項1218のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、ストリップ材料、特に熱間ストリップを搬送するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ストリップの製造及び所定の区間にわたる所定の搬送方向の搬送装置によるその搬送は、知られている。ローラテーブルは、金属ストリップを、後加工用の加工機械又は中間貯蔵のための巻取り装置に移送する。ストリップが、ローラテーブルから横に滑落しないように、ローラテーブルは、ローラテーブル上の金属ストリップを保持する側方ガイドが設けられている。特に巻取り時には、コイラ上の金属ストリップの個々の巻物の位置ズレをできるだけ僅かに保ち、均等な側面を達成するために、金属ストリップを正確に、横方向も位置合わせすることが必要である。これにより、横方向のガイドは、金属ストリップを比較的きっちりとガイドする必要がある。
【0003】
ローラテーブル上の金属ストリップの横方向のガイドをするための装置は、通常は、サイドガイドルーラーとも呼ばれる半分の高さの側壁である。これらサイドガイドルーラーは、固定の摩耗プレートを備えている。摩耗プレートは、高い摩耗にさらされているが、それは、ローラテーブル上の走行中の金属ストリップのエッジが、多かれ少なかれ深い溝を刻み付けるからである。この場合、固定の摩耗プレートにおける摩耗は、実質的に常に同じ箇所に生じ、従って、摩耗プレートは、稼働率に依存して繰り返し更新する必要がある。しかしながら、ガイドの交換は、設備の停止状態でしか可能でなく、整備費用は、相応に大きくなる。
【0004】
従って、発展形として、独国実用新案第202014011026号明細書では、金属ストリップ移送装置上を走行する金属ストリップの横方向のガイドをするための装置において、既定された複数の回転位置に制御されつつ回転可能な、摩耗面を備えた少なくとも1つの摩耗体を設けること-摩耗面は、実質的に平坦で、規定された全ての回転位置でガイド平面に対して平行である-が提案された。
【0005】
しかしながら、どのように摩耗部品の回転が行なわれるかに依存せずに、構成要素の摩耗は、摩耗部品の回転によっても完全には除去されず、摩耗部品は、最終的に不均等に負荷を受ける。加えて、この装置は、ストリップが摩耗部品を圧迫しない場合にしか、摩耗部品の回転が可能でないとの欠点を有する。即ち、回転は、連続する2つのストリップの間か、設備の停止時にしか行なうことができない。
【0006】
国際公開第2015/043926号パンフレットから、摩耗ディスクが同様に段階的に回転されるディスクサイドガイドが知られている。摩耗ディスクの回転は、圧延休止中にだけ行なわれる。
【0007】
特開平05-161917号公報は、金属ストリップの損傷を回避するために、サイドルーラーにおいてガイドするための傘状のローラ-これらローラは、液体流によって恒常的な回転運動に保たれる-を使用することを提案する。圧延材との接触時、これらガイドは、摩擦力によって直接的に圧延材速度を受け入れる。
【0008】
特開昭60-195106号公報は、圧延材速度で駆動され、接触面の周速度が圧延材の搬送速度に等しい、連続的に併走するディスクを示す。
【0009】
特開昭53-0500039号公報には、そのディスクが、それぞれ1つのモータを介してストリップ材料の搬送速度と同期して駆動されるディスクサイドガイドが記載されている。
【0010】
従来技術によるこれら全ての公知の解決策の場合、調整可能な固定の摩耗体は、圧延材とガイドの間の限定的な接触領域でのみ摩耗する。ガイド面のこの不均等な摩耗は、機能障害を生じさせる。摩耗体の交換は、短いインターバルで必要である。設備の可用性は、交換時間によって低下する。生産休止中に機械的又はステップモータによって調整されるディスクサイドガイドは、次の調整まで同じ領域が選択的に摩耗する。連続的に回転するディスクによる公知の解決策の場合、これらディスクは、遅くとも圧延材との接触により、摩擦によって圧延材の搬送速度を受け入れる。確かに、これにより摩耗は軽減されるが、ストリップのガイドの品質は損なわれる。何故なら、圧延材と張力を構成する機械、即ちドライバ又はコイラの間の摩擦力が、欠如しているからである。この状態は、熱間圧延機では常に最後の仕上げスタンドからストリップ終端が出る時に生じる。これにより、ストリップの巻き品質は、高い伸縮性及び変化する巻物のためにマイナスの影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国実用新案第202014011026号明細書
【文献】国際公開第2015/043926号パンフレット
【文献】特開平05-161917号公報
【文献】特開昭60-195106号公報
【文献】特開昭53-0500039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記従来技術から出発して、本発明の課題は、熱間ストリップの搬送時のガイド要素の摩耗を更に最小化し、これにより、整備インターバルを拡大することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載のストリップ材料を搬送するための装置と、請求項13に記載のストリップ材料を搬送するための方法によって解決される。好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
【0014】
搬送装置は、例えば移送プレート又はローラテーブルを有し、これらは、金属ストリップを所定の区間にわたって搬送するために使用される。同様に、金属シートは、所定の区間にわたって搬送される。本発明には、同様にシートの搬送にも関するが、単純化のために、以下では、ストリップ材料との用語が、限定されることなく使用される。
【0015】
本発明は、サイドガイド要素に回転式の摩耗体が備えられるとの考察に基づく。摩耗体は、ストリップがコイラに案内される間、連続的に回転される。これにより、少ない及び均等な摩耗が接触面に生じる。同時に、圧延材とガイドの間の接触箇所における利用可能な摩耗面は、調整可能もしくは回転可能でない摩耗体に比して拡大される。摩耗体の回転により、接触面に、ストリップの搬送方向に対抗する摩擦力が生じる。摩耗体の回転速度は、調整可能である。特に、回転する摩耗体の回転速度は、圧延速度に依存して調整されるが、常に、摩耗体の周速度が圧延材の搬送速度よりも小さくなるようにされている。この場合、特に、摩耗体ディスクの角速度は、0.5~10rpm、好ましくは0.5~5rpmのオーダーである。
【0016】
本発明の別の実施形態では、摩耗体の角速度は、ストリップ張力に応じて調整される。特にストリップ張力が例えばロールギャップからストリップが出た後に閾値を下回った場合、角速度は、特別な方法で設定することができるので、摩擦を介してストリップの改善されたガイド及び僅かな心振れが得られる。こうして、周速度は、通常運転時よりも低い値になる。
【0017】
面積当たりの接触時間は、圧延材速度に依存して調整可能な回転速度を介して影響され得る。摩耗体の回転と共に、接触面積は、連続的に変化し、これにより摩耗領域も変化するので、摩耗体は、ガイド時間にわたって効率的に利用される。
【0018】
摩耗体は、横方向に、即ちその回転軸の方向及びその反対に進出可能であるので、圧延材のガイドは、進出装置の位置及び力の制御を介して影響され得る。
【0019】
「進出可能」との用語は、全体として横方向の位置決めであると理解する。この場合、少なくとも1つの摩耗体の個々の位置決めと、サイドガイド要素と作用結合された少なくとも1つの摩耗体の位置決めが、同様に含まれている。
【0020】
従来技術と比較すると、本発明による解決策の場合は、連続的でより少ない摩耗が期待でき、連続的に圧延材速度で回転する公知の、従来技術における装置の場合と同様に、バックテンションの欠如に基づいた不利なガイド特性を有しない。
【0021】
摩耗体の大きさは、特に搬送装置、特にローラテーブルとサイドガイド要素の間のスペースに依存する。
【0022】
本発明の発展形は、特に、ルーラー冷却装置によるルーラーの冷却と、エマルジョンによる回転する摩耗体ディスクの湿潤と、直接的なルーラーでの付加的な力測定と、現在の圧延プログラムのこれまでの経過の分析による摩耗体ディスクの次の交換を予測するための知的ソフトウエアにある。
【0023】
本発明は、特に、摩耗体ディスクの角速度の選択により、摩耗体ディスクとストリップの接触時間を所望の値に設定できるとの利点を有する。加えて、提案した解決策における摩耗体と圧延材の間の相対速度は、従来技術よりも低く、これが、摩耗に対してプラスに作用する。
【0024】
本発明の別の利点は、ガイドの使用時間が、従って設備の可用性が高められる点に見ることができるが、それはまた、均等な摩耗に基づいて、摩耗体は、交換部品の取付け用の修理作業が少なくて済むからである。更に、巻き品質は、特にストリップ終端でのバックテンションによって改善される。これとは、ストリップエッジの損傷の低減も関係する。
【0025】
本発明の別の特徴及び利点は、添付の図面を参照する好ましい実施形他の以下の説明からわかる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の1つの実施形態によるストリップ材料を製造し、特に搬送するための装置の平面図
図2】本発明の1つの実施形態による摩耗体の回転数の制御のブロック図
図3図1による実施形態の斜視図
図4】本発明の1つの実施形態による摩耗体を進出させるための圧力発生の制御のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面は、縮尺通りでなく、幾つかの領域では、機能を強調するために、要素が強調される。特に明記しない限り、同じ又は等しく作用する要素に対して同じ符号が使用される。
【0028】
図1は、その上をストリップ材料4が搬送されるローラ2を備えたローラテーブル1を示す。ローラ2は、モータ3によって駆動されるので、ストリップ材料は、図で左から右に向かって移送される。本発明が搬送装置としてのローラテーブルに限定されているのではなく、ローラテーブルの代わりに例えば移送プレートも搬送装置として使用できることは、当業者には明らかである。しかしながら、以下では、一般性を限定することなく主にローラテーブルを参照する。
【0029】
ローラテーブル1からのストリップ材料4の横への落下を防止するため、ローラテーブルは、サイドガイド要素5を備えており、これらサイドガイド要素は、好ましくはストリップ材料4の両側で、特にその複数のローラ2を備えたローラテーブル1の高さのところに配置されている。しかしながら、導入部で説明したように、これらサイドガイド要素5は、高い摩耗の支配下にある。ストリップ材料4による摩耗を大きい面積に分散させるため、ローラテーブル1の両側のサイドガイド要素5に、複数の回転式の摩耗体6が配置されている。摩耗体6のそれぞれは、ローラテーブルのローラに対して平行に位置するその対称軸を中心として回転可能に支承され、回転駆動装置13によってその対称軸を中心とした回転運動をさせられる。この場合、各摩耗体は、固有の回転駆動装置を備えることができる、又は、1つの回転駆動装置が、複数の又は全ての摩耗体を駆動する。
【0030】
摩耗体6の回転速度は、本発明によればローラテーブル1上のストリップ材料4の前進速度に依存して所定の目標回転数に調整される。このため、装置は、ローラ回転速度用のセンサ8を有する。ローラ回転速度を示すその出力信号は、摩耗体用の回転数調整装置7の基準値として使用される。
【0031】
選択的に、摩耗体6の回転速度は、ストリップ材料との面積当たりの接触時間に依存して所定の目標回転数に調整される。この場合、装置は、摩耗体とストリップ材料の間の接触時間用の図示してないセンサを有する。この接触時間に依存して、摩耗体の速度が選択される。即ち、接触時間は、回転数調整装置の基準値として使用される。
【0032】
しかしながら、両場合で、摩耗体の回転速度は、摩耗体の周速度がローラテーブル上のストリップ材料の前進速度以下であるように調整される。特に、0.5~10rpm、好ましくは0.5~5rpmのオーダーの摩耗体の角速度が最適であるとわかった。
【0033】
摩耗体の回転速度の制御は、図2にまとめられている。調整装置7は、基準値としてローラテーブル1のローラ速度用のセンサ8の出力信号を読み込む。調整装置7は、ローラ速度に依存して調整値信号を摩耗体の回転駆動装置用の電力供給装置11に与える。外乱値もしくはローラテーブル1の実際のローラ速度に応じて、摩耗体の駆動装置用の回転数変化が生じるので、摩耗体の回転数は、常にローラテーブルのローラ速度に適合される。好ましくは、少なくとも1つの摩耗体用の回転駆動装置は、電気モータである。
【0034】
別の実施形態では、摩耗体6の回転速度は、測定されたストリップ張力に依存して所定の好ましくは低減された目標回転数に調整される。例えばストリップが最後のロールスタンドを出たときに、ストリップ張力が規定された閾値を下回った場合、目標回転数は、摩擦によってストリップ張力の増大が生じるように減少される。
【0035】
この制御は、前記一方又は両方の制御と結合又は重ね合わせをすることができる。
【0036】
摩耗体4の回転速度の調整可能な設定に加えて、ローラテーブル1上のストリップ材料4の横方向の位置も、所定の目標位置に調整される。このため、装置は、少なくとも1つの摩耗体の進出位置を調整するための位置調整装置9を有する。図3は、ローラテーブル1上のストリップ材料4の調心をするための調整装置を備えたローラテーブル1の1つの実施形態を示す。ストリップ材料4の調心は、横方向、即ちストリップ材料4の搬送方向に対して横に進出可能な摩耗体6によって行なわれる。ストリップ材料4がローラ2上に可動に裁置されているので、ストリップ材料は、摩耗体の進出によって容易に横方向に移動させ、特にローラテーブル上で調心することができる。このため、装置は、進出位置まで少なくとも1つの摩耗体を進出させるための位置決め駆動装置14を備える。本発明による装置の1つの実施形態では、基準値は、摩耗体6をローラテーブル1上のストリップ材料4に押し付ける力である。力が検出されることによって、ストリップ材料4は、ローラテーブル上の所定の位置に保持することができる。
【0037】
好ましい、特に実用的な実施形態では、サイドガイド要素と作用結合された少なくとも1つの摩耗体が、進出位置に移動される。
【0038】
選択的に、位置決め調整装置9は、基準値として横方向の位置の初期値を読み込むことができる。このため、装置は、ローラテーブル上のストリップ材料の横方向の位置用のセンサ10を有する。
【0039】
位置決め駆動装置として、好ましくは油圧式の駆動装置が使用される。
【0040】
ローラテーブル1上のストリップ材料4の横方向の位置の制御は、図4にまとめられている。調整装置9は、油圧駆動装置用の圧力変換器12の油圧を決定する。これにより、圧力変換器12は、搬送装置上のストリップ材料の搬送方向に対して横に回転式の摩耗体6の位置を調整するためのアクチュエータもしくは制御回路の制御されたシステムである。ローラテーブル上のストリップの実際の横方向の位置は、圧力変換器12によって考慮される。このストリップ位置に応じて、圧力変換器12は、圧力を変更するための補正信号を出力する。
【0041】
装置の制御は、好ましくは図示してない整備予測装置のために拡張されるが、この整備予測装置は、前回の整備日及び前回の整備日以降の事象に依存して予測される次の整備日を示す。
【0042】
ストリップ材料を搬送するための本発明による方法を、以下で図を参照して詳細に説明する:
【0043】
方法は、まず、搬送装置の側面にサイドガイド要素5を備えた搬送装置1を介するストリップ材料の搬送を企図する。好ましくは、サイドガイド要素は、搬送装置の両側に配置されているが、少なくとも搬送装置の一方の側に配置されている。搬送装置上で、ストリップ材料は、所定の区間にわたって、例えばコイラに搬送される。
【0044】
ストリップ材料の摩擦によるサイドガイド要素の摩耗を軽減するため、摩耗体6は、各サイドガイド要素5に設けられ、これら摩耗体は、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転される。このため、サイドガイド要素の摩耗体は、それぞれ1つの回転駆動装置13を備えている。回転駆動装置13の目標回転数は、調整可能であり、回転数調整装置7によって設定される。目標回転数を直接的に設定する代わりに、回転数調整装置7は、目標回転数に到達するために必要な回転数変化を決定することもできる。計算した目標回転数もしくは現在の回転数の変更が、回転駆動装置13において設定される。
【0045】
摩耗体の目標回転数は、搬送装置上のストリップ材料の前進速度に依存する。回転数調整装置7によって回転駆動装置13の目標回転数を設定する際、回転数調整装置の基準値としてストリップの前進速度又はローラテーブルのローラ回転速度を使用することができる。選択的に、回転数調整装置7の基準値として、ストリップ材料との面積当たりの接触時間を使用することができる。これにより、摩耗体6がストリップ材料によって過度に加熱されないことが保証される。別の選択肢として、回転数調整装置7の基準値としてストリップ材料のバックテンションも使用することができる。これにより、特にコイラ上のストリップ終端での巻き品質を監視することができる。
【0046】
摩耗体の目標回転数の調整により、ストリップ材料の搬送時のストリップエッジの損傷も最小化することができる。このため、周速度が搬送装置1上のストリップ材料の前進速度以下になるように、1つもしくは複数の摩耗体6の周速度が、搬送装置1上のストリップ材料の前進速度に依存して調整される。ストリップ材料の前進速度に依存した摩耗体の周速度により、摩耗体の角速度として、0.5~10rpmのオーダーの回転数が得られる。好ましくは、回転数は、0.5~5rpmに調整される。
【0047】
摩耗体6が本発明によりその回転軸の方向及びその反対に進出可能であるので、その進出位置は、位置調整装置9によって所定の目標位置に調整することができる。この場合、目標位置への搬送方向に対して横の摩耗体の進出は、摩耗体6の位置決め駆動装置14によって行なわれる。摩耗体の目標位置の調整時、位置調整装置の基準値として、少なくとも1つの摩耗体6を搬送装置1上のストリップ材料に押し付ける力が検出される。選択的に、ストリップ材料10の横方向の位置は、センサによって検出することができるので、位置調整装置の基準値として、搬送装置上のストリップ材料用の目標位置が使用される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.ストリップ材料、特に熱間ストリップを搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって所定の搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置(1)と、
・搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)と、
・各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの回転式の摩耗体(6)であって、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承されているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置(13)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられていること、を特徴とする装置。
2.ローラテーブル上のストリップ材料の前進速度用あるいはこれに比例したローラ回転速度用のセンサを有し、回転数調整装置の基準値が、前進速度又はローラ回転速度であること、を特徴とする上記1に記載の装置。
3.回転数調整装置(7)の基準値が、ストリップ材料との面積当たりの接触時間であること、を特徴とする上記1に記載の装置。
4.回転数調整装置(7)の基準値が、ストリップ材料のバックテンションであること、を特徴とする上記1に記載の装置。
5.少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度以下であること、を特徴とする上記1~4のいずれか1項に記載の装置。
6.摩耗体(6)の角速度が、0.5~10rpmのオーダー、好ましくは0.5~5rpmのオーダーであること、を特徴とする上記5に記載の装置。
7.
・少なくとも1つの摩耗体(6)の進出位置を所定の目標位置に調整するための位置調整装置(9)と、
・少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送方向に対して横に目標位置に進出させるための位置決め駆動装置(14)と、
を有すること、を特徴とする上記1~6のいずれか1項に記載の装置。
8.位置調整装置の基準値が、少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送装置(1)上のストリップ材料に押し付ける力であること、を特徴とする上記7に記載の装置。
9.ストリップ材料(10)の横方向の位置用のセンサを有し、位置調整装置の基準値が、搬送装置上のストリップ材料用の目標位置であること、を特徴とする上記7に記載の装置。
10.少なくとも1つの摩耗体用の回転駆動装置が、電気モータであること、を特徴とする上記1~9のいずれか1項に記載の装置。
11.位置決め駆動装置が、油圧式の駆動装置であること、を特徴とする上記7~10のいずれか1項に記載の装置。
12.整備予測装置が、前回の整備日及び前回の整備日以降の事象に依存して、予測される次の整備日を示すこと、を特徴とする上記1~11のいずれか1項に記載の装置。
13.ストリップ材料(4)用の搬送装置が、ローラ(2)を備えたローラテーブル(1)を有すること、を特徴とする上記1~12のいずれか1項に記載の装置。
14.ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素(5)を備えた搬送装置(1)を介して所定の区間にわたってストリップ材料を搬送するステップと、
・回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸を中心として各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの摩耗体(6)を回転させるステップと、
・回転数調整装置(7)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップと、
・回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有すること、を特徴とする方法。
15.回転数調整装置の基準値が、ストリップ材料の前進速度又はローラテーブルのローラ回転速度であること、を特徴とする上記14に記載の方法。
16.回転数調整装置(7)の基準値が、ストリップ材料との面積当たりの接触時間であること、を特徴とする上記14に記載の方法。
17.回転数調整装置(7)の基準値が、ストリップ材料のバックテンションであること、を特徴とする上記14に記載の方法。
18.少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度以下であること、を特徴とする上記14~17のいずれか1項に記載の方法。
19.摩耗体(6)の角速度が、0.5~10rpmのオーダー、好ましくは0.5~5rpmのオーダーであること、を特徴とする上記18に記載の方法。
20.
・位置調整装置(9)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の進出位置を所定の目標位置に調整するステップと、
・位置決め駆動装置(14)によって少なくとも1つの摩耗体を搬送方向に対して横に目標位置に進出させるステップと、
を有すること、を特徴とする上記14~19のいずれか1項に記載の方法。
21.位置調整装置の基準値が、少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送装置(1)上のストリップ材料に押し付ける力であること、を特徴とする上記20に記載の方法。
22.ストリップ材料(10)の横方向の位置が、センサによって検出され、位置調整装置の基準値が、搬送装置上のストリップ材料用の目標位置であること、を特徴とする上記20に記載の方法。
23.整備予測装置が、前回の整備日及び前回の整備日以降の事象に依存して、予測される次の整備日を示すこと、を特徴とする上記14~22のいずれか1項に記載の方法。
【符号の説明】
【0048】
1 ローラテーブル
2 ローラ
3 ローラ駆動装置
4 ストリップ材料
5 サイドガイド要素
6 回転式の摩耗体
7 摩耗体用の回転数調整装置
8 ローラ速度用のセンサ
9 摩耗体用の位置調整装置
10 ストリップ材料の目標位置用のセンサ
11 ローラ駆動装置用の電力供給装置
12 油圧駆動装置用の圧力変換器
13 回転駆動装置
14 位置決め駆動装置
図1
図2
図3
図4