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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
H02J9/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021507532
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020033952
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 定安
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 清文
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-158101(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021591(WO,A1)
【文献】特開2008-099468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源および負荷の間に接続される無停電電源装置であって、
第1端子が前記交流電源から供給される交流電力を受け、第2端子が前記負荷に接続された第1のスイッチと、
直流電力を交流電力に変換するインバータと、
第1端子が前記インバータから出力される交流電力を受け、第2端子が前記負荷に接続された第2のスイッチと、
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチおよび前記インバータを制御する制御装置とを備え、
前記第1のスイッチは、互いに逆並列に接続された第1および第2のサイリスタを含み、
前記制御装置は、前記第1および第2のサイリスタのゲートに、カソードを基準とした正の電圧を印加することにより前記第1のスイッチをオンする一方で、前記第1および第2のサイリスタの前記ゲートに、前記カソードを基準とした負の電圧を印加することにより前記第1のスイッチをオフするように構成され、
前記無停電電源装置は、前記第1のスイッチをオンするとともに前記第2のスイッチをオフし、前記交流電源からの交流電力を前記負荷に供給する第1の給電モードと、前記第1のスイッチをオフするとともに前記第2のスイッチをオンし、前記インバータから出力される交流電力を前記負荷に供給する第2の給電モードとを有しており、
前記第1の給電モードの実行時において前記交流電源の電圧低下を検出したときには、前記制御装置は、前記第1および第2のサイリスタの前記ゲートに前記負の電圧を印加し、前記第1および第2のサイリスタのゲート-カソード間電圧が接地電圧よりも低くなったときに前記第2のスイッチをオンすることにより、前記無停電電源装置を前記第2の給電モードに切り替える ように構成され、
前記制御装置は、
前記第1のスイッチを駆動するゲート回路と、
前記第1のスイッチの状態を検出する状態検出器とを含み、
前記ゲート回路は、ゲート信号が入力されたときに前記第1および前記第2のサイリスタの前記ゲートに前記正の電圧を印加し、前記ゲート信号が遮断されたときに前記第1および前記第2のサイリスタの前記ゲートに前記負の電圧を印加するように構成され、
前記状態検出器は、前記第1および第2のサイリスタのゲート-カソード間電圧と接地電圧とを比較することにより前記第1のスイッチの状態を検出し、
前記制御装置は、前記ゲート信号が遮断された状態において前記状態検出器により前記第1のスイッチがオフされたと判定されたときに、前記第2のスイッチをオンするように構成され、
前記第1のスイッチに流れる電流を検出する電流検出器をさらに備え、
前記第1の給電モードの実行時、前記制御装置は、前記状態検出器により前記第1のスイッチがオンされていると判定された状態において前記電流検出器による検出値が閾値電流よりも低いときには、前記第1のスイッチの故障を検出する 、無停電電源装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ゲート信号が遮断された状態において前記状態検出器により前記第1のスイッチがオンしていると判定されたときには、前記第2のスイッチをオンしない、請求項に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置においては、交流電源からの交流電力を直流電力に変換するコンバータと、コンバータで生成された直流電力または電力貯蔵装置の直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、交流電源および負荷の間に、コンバータおよびインバータの直列回路と並列に接続されたバイパス回路とを備えた構成が広く採用されている。
【0003】
上記無停電電源装置においては、交流電源から正常に交流電力が供給されている通常時には、コンバータおよびインバータを使用する。交流電源からの交流電力の供給が停止された停電時には、インバータで給電を継続する。このような給電方式は、常時インバータ給電方式とも呼ばれている。常時インバータ給電方式は、交流電源が正常なときも停電のときも直流リンクを介してインバータから負荷へ給電するため、入力電源の品質にかかわらず出力の電源品質を確保しやすく、よって、負荷への給電安定性に優れている。その一方で、常時インバータ給電方式は、通常時にエネルギーがコンバータおよびインバータを通過するために電力損失が発生し、運転効率の向上が課題となっている。
【0004】
近年では、効率化の対策として、バイパス給電モードを備えた無停電電源装置が提案されている(たとえば米国特許第7372177号明細書(特許文献1)参照)。これによれば、無停電電源装置は、通常時は交流電源からバイパス回路である半導体スイッチを経由して負荷に交流電力を供給するバイパス給電を実行する。半導体スイッチには、一対のサイリスタを互いに逆並列に接続して構成されたサイリスタスイッチが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7372177号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記バイパス給電モードを備えた無停電電源装置においては、バイパス給電の実行中に交流電源から供給される交流電圧が低下する電圧低下、または停電が発生した場合に、負荷設備の破損や運転停止を防ぐために、バイパス給電からインバータ給電に無瞬断で切り替えることが求められる。これには、半導体スイッチを高速に遮断するとともに、インバータ給電を開始する必要がある。
【0007】
しかしながら、半導体スイッチを構成するサイリスタは、ゲート信号が遮断された後もサイリスタを流れる電流が所定値(保持電流)以下となるまではオン状態となっている。そのため、交流電源の電圧低下が検出されたときにゲート信号を遮断しても、ゲート信号を遮断するタイミングによっては、半導体スイッチが直ちにオフされずに、無停電電源装置の交流出力端子と交流入力端子とが半導体スイッチを介して電気的に接続されている状態が続く場合が起こり得る。あるいは、サイリスタが正常にオフされない故障が生じている場合においても、同様の現象が起こり得る。
【0008】
この場合、交流電源から交流入力端子に供給される交流電圧に比べて、インバータから交流出力端子に出力される交流電圧の方が高くなることから、インバータから出力された交流電流の一部がサイリスタスイッチを経由して交流入力端子に流れ込む可能性がある。その結果、負荷に供給される電圧の低下または停電の発生を招くことが懸念される。したがって、無停電電源装置の出力の信頼性を高めるためには、バイパス給電からインバータ給電への切り替えに問題がないか(すなわち、サイリスタが正常にオフされているか)を確認することが求められる。
【0009】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バイパス給電からインバータ給電への切り替え時における出力の信頼性を高めることができる無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面によれば、無停電電源装置は、交流電源および負荷の間に接続される。無停電電源装置は、第1端子が交流電源から供給される交流電力を受け、第2端子が負荷に接続された第1のスイッチと、直流電力を交流電力に変換するインバータと、第1端子がインバータから出力される交流電力を受け、第2端子が負荷に接続された第2のスイッチと、第1のスイッチ、第2のスイッチおよびインバータを制御する制御装置とを備える。第1のスイッチは、互いに逆並列に接続された第1および第2のサイリスタを含む。制御装置は、第1および第2のサイリスタのゲートに、カソードを基準とした正の電圧を印加することにより第1のスイッチをオンするように構成される。制御装置は、第1および第2のサイリスタのゲートに、カソードを基準とした負の電圧を印加することにより第1のスイッチをオフするように構成される。無停電電源装置は、第1のスイッチをオンするとともに第2のスイッチをオフし、交流電源からの交流電力を負荷に供給する第1の給電モードと、第1のスイッチをオフするとともに第2のスイッチをオンし、インバータから出力される交流電力を負荷に供給する第2の給電モードとを有する。第1の給電モードの実行時において交流電源の電圧低下を検出したときには、制御装置は、第1および第2のサイリスタのゲートに負の電圧を印加する。制御装置は、第1および第2のサイリスタのゲート-カソード間電圧が接地電圧よりも低くなったときに第2のスイッチをオンすることにより、無停電電源装置を第2の給電モードに切り替える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、バイパス給電からインバータ給電への切り替え時における出力の信頼性を高めることができる無停電電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2】バイパス給電モードにおける電力の流れを説明するための図である。
図3】商用交流電源の電圧低下の発生時における電力の流れを説明するための図である。
図4】半導体スイッチが完全にオフされていないときの電力の流れを説明するための図である。
図5図1に示した制御装置の構成を示すブロック図である。
図6図5に示したゲート回路および状態検出器の構成を示す回路ブロック図である。
図7】状態検出器の動作を説明するための図である。
図8A】比較例に係るゲート回路および状態検出器を説明するための図である。
図8B】比較例に係るゲート回路および状態検出器を説明するための図である。
図9】実施の形態1に係る無停電電源装置の動作を説明する図である。
図10】実施の形態2に係る無停電電源装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
図11】実施の形態2に係る無停電電源装置の動作を説明する図である。
図12】実施の形態に係る無停電電源装置の適用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。無停電電源装置1は、商用交流電源21からの三相交流電力に直流電力に一旦変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して負荷22に供給するものである。図1では、図面および説明の簡単化のため、三相(U相、V相、W相)のうちの一相に対応する部分の回路のみが示されている。
【0015】
図1において、無停電電源装置1は、交流入力端子T1、交流出力端子T2およびバッテリ端子T3を備える。交流入力端子T1は、商用交流電源21から商用周波数の交流電力を受ける。交流出力端子T2は、負荷22に接続される。負荷22は、交流電力によって駆動される。バッテリ端子T3は、バッテリ23に接続される。バッテリ23は直流電力を蓄える。
【0016】
無停電電源装置1は、さらに、電磁接触器(コンタクタ)2,8,14、コンデンサ4,9,13、リアクトル5,12、コンバータ6、双方向チョッパ7、インバータ10、半導体スイッチ15、および制御装置18を備える。
【0017】
コンタクタ2およびリアクトル5は、交流入力端子T1とコンバータ6の入力ノードとの間に直列に接続される。コンデンサ4は、コンタクタ2とリアクトル5の入力ノードとの間のノードN1に接続される。コンタクタ2は、無停電電源装置1の使用時にオン(導通)され、例えば無停電電源装置1のメンテナンス時にオフ(遮断)される。
【0018】
ノードN1に現れる交流入力電圧Viの瞬時値は、制御装置18によって検出される。交流入力電圧Viの瞬時値に基づいて、商用交流電源21の電圧低下および停電の発生の有無などが判別される。
【0019】
コンデンサ4およびリアクトル5は、低域通過フィルタを構成し、商用交流電源21からコンバータ6に商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ6で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源21に通過することを防止する。
【0020】
コンバータ6は、制御装置18によって制御され、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、三相交流電力を直流電力に変換して直流ラインL1に出力する。商用交流電源21からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ6の運転は停止される。コンバータ6の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0021】
コンデンサ9は、直流ラインL1に接続され、直流ラインL1の電圧を平滑化させる。直流ラインL1に現れる直流電圧VDCの瞬時値は、制御装置18によって検出される。直流ラインL1は双方向チョッパ7の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ7の低電圧側ノードはコンタクタ8を介してバッテリ端子T3に接続される。
【0022】
コンタクタ8は、無停電電源装置1の使用時はオンされ、たとえば無停電電源装置1およびバッテリ23のメンテナンス時にオフされる。バッテリ端子T3に現れるバッテリ23の端子間電圧(以下、「バッテリ電圧」とも称する)VBの瞬時値は、制御装置18によって検出される。
【0023】
双方向チョッパ7は、制御装置18によって制御され、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、コンバータ6によって生成された直流電力をバッテリ23に蓄え、停電時は、バッテリ23の直流電力を、直流ラインL1を介してインバータ10に供給する。
【0024】
双方向チョッパ7は、直流電力をバッテリ23に蓄える場合は、直流ラインL1の直流電圧VDCを降圧してバッテリ23に与える。また、双方向チョッパ7は、バッテリ23の直流電力をインバータ10に供給する場合は、バッテリ電圧VBを昇圧して直流ラインL1に出力する。直流ラインL1は、インバータ10の入力ノードに接続されている。
【0025】
インバータ10は、制御装置18によって制御され、コンバータ6または双方向チョッパ7から直流ラインL1を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力する。すなわち、インバータ10は、通常時にはコンバータ6から直流ラインL1を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、停電時にはバッテリ23から双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ10の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0026】
インバータ10の出力ノードはリアクトル12の一方端子に接続され、リアクトル12の他方端子(ノードN2)はコンタクタ14を介して交流出力端子T2に接続される。コンデンサ13は、ノードN2に接続される。
【0027】
リアクトル12およびコンデンサ13は、低域通過フィルタを構成し、インバータ10で生成された商用周波数の交流電力を交流出力端子T2に通過させ、インバータ10で発生するスイッチング周波数の信号が交流出力端子T2に通過することを防止する。
【0028】
コンタクタ14は、制御装置18によって制御され、インバータ10によって生成された交流電力を負荷22に供給するインバータ給電モード時にはオンされ、商用交流電源21からの交流電力を、半導体スイッチ15を介して負荷22に供給するバイパス給電モード時にはオフされる。コンタクタ14は「第2のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0029】
半導体スイッチ15は、互いに逆並列に接続された一対のサイリスタを有するサイリスタスイッチであり、交流入力端子T1と交流出力端子T2との間に接続される。半導体スイッチ15は、制御装置18によって制御され、バイパス給電モード時にはオンされ、インバータ給電モード時にはオフされる。半導体スイッチ15は「第1のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0030】
制御装置18は、例えばマイクロコンピュータなどで構成することが可能である。一例として、制御装置18は、図示しないメモリおよびCPU(Central Processing Unit)を内蔵し、メモリに予め格納されたプログラムをCPUが実行することによるソフトウェア処理によって、後述する制御動作を実行することができる。あるいは、当該制御動作の一部または全部について、ソフトウェア処理に代えて、内蔵された専用の電子回路などを用いたハードウェア処理によって実現することも可能である。
【0031】
制御装置18は、交流入力電圧Vi、直流電圧VDC、バッテリ電圧VB、および交流出力電圧Voなどに基づいて無停電電源装置1全体を制御する。すなわち、制御装置18は、交流入力電圧Viの検出値に基づいて、商用交流電源21の電圧低下および停電の発生の有無を判定するとともに、交流入力電圧Viの位相に同期してコンバータ6およびインバータ10を制御する。
【0032】
さらに制御装置18は、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、直流電圧VDCが所望の参照電圧VDCrになるようにコンバータ6を制御し、商用交流電源21の電圧低下または停電時は、コンバータ6の運転を停止させる。
【0033】
さらに制御装置18は、通常時は、バッテリ電圧VBが所望の参照電圧VBrになるように双方向チョッパ7を制御し、商用交流電源21の電圧低下または停電時は、直流電圧VDCが所望の参照電圧VDCrになるように双方向チョッパ7を制御する。
【0034】
次に、この無停電電源装置1の動作について説明する。商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時において、バイパス給電モードが選択されると、コンタクタ2および半導体スイッチ15がオンされるとともに、コンタクタ14がオフされる。図2は、バイパス給電モードにおける電力の流れを説明するための図である。図2中に矢印で示すように、商用交流電源21から供給される交流電力は、半導体スイッチ15を介して負荷22に供給される。負荷22は、商用交流電源21から供給される交流電力によって駆動される。バイパス給電モードは「第1の給電モード」に対応する。
【0035】
バイパス給電モード中に商用交流電源21の電圧低下または停電が発生すると、無停電電源装置1はインバータ給電モードに切り替えられる。インバータ給電モードが選択されると、半導体スイッチ15がオフされるとともに、コンタクタ14がオンされる。インバータ給電モードは「第2の給電モード」に対応する。
【0036】
図3は、商用交流電源21の電圧低下の発生時における電力の流れを説明するための図である。図3中に矢印で示すように、商用交流電源21の電圧低下が発生すると、バッテリ23の直流電力が双方向チョッパ7によってインバータ10に供給される。インバータ10は、双方向チョッパ7からの直流電力を交流電力に変換して負荷22に供給する。
【0037】
具体的には、制御装置18は、バッテリ電圧VBを昇圧して直流ラインL1に出力するように、双方向チョッパ7を制御する。制御装置18は、さらに、直流ラインL1から供給される直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換するように、インバータ10を制御する。これにより、バッテリ23の直流電力は商用周波数の三相交流電力に変換され、コンタクタ14を介して負荷22に供給される。制御装置18は、バッテリ23の残容量が予め定められた下限値に達したときには、双方向チョッパ7およびインバータ10の運転を停止させる。これにより、バッテリ23に直流電力が蓄えられている期間、負荷22の運転を継続することができる。なお、コンバータ6の運転は停止されている。
【0038】
しかしながら、商用交流電源21の電圧低下の発生時にバイパス給電モードからインバータ給電モードに切り替える場合において、半導体スイッチ15をオフするように動作させても、半導体スイッチ15が完全にオフされていないときには、図3に示す電力の流れが妨げられる可能性がある。
【0039】
図4は、半導体スイッチ15が完全にオフされていないときの電力の流れを説明するための図である。半導体スイッチ15が完全にオフされていない状態においてコンタクタ14がオンされた場合、図4中に矢印で示すように、インバータ10によって生成された三相交流電力は、半導体スイッチ15を経由して交流入力端子T1に戻される。インバータ10の出力電流の一部が半導体スイッチ15を介して交流入力端子T1に導かれることによって、負荷22に供給される電圧の低下または停電が発生する可能性がある。その結果、負荷22において電力不足が生じてしまい、負荷22を駆動できなくなることが懸念される。
【0040】
このような現象は、半導体スイッチ15を構成するサイリスタが、ゲート信号を遮断した後、サイリスタを流れる電流が所定値(保持電流)以下に低下したときにオフされることにより起こり得る。言い換えると、ゲート信号が遮断された後も電流が所定値以下に低下するまではサイリスタはオン状態となっている。そのため、商用交流電源21の電圧低下が検出されたときにゲート信号を遮断しても、ゲート信号を遮断するタイミングによっては、半導体スイッチ15が直ちにオフされずに、交流出力端子T2と交流入力端子T1とが半導体スイッチ15を介して電気的に接続されている状態が続く場合が起こり得る。この状態においてコンタクタ14がオンされると、商用交流電源21から交流入力端子T1に供給される交流電圧に比べて、インバータ10から交流出力端子T2に出力される交流電圧の方が高くなるため、インバータ10から出力された交流電流の一部が半導体スイッチ15を経由して交流入力端子T1に流れ込む。
【0041】
あるいは、上記の現象は半導体スイッチ15がオン状態に固定される故障(オン故障)が生じている状態においてコンタクタ14がオンされた場合においても起こり得る。このような場合にも、負荷22に供給される電圧が低下(または停電)してしまうため、負荷22において電力不足を招くことが懸念される。したがって、バイパス給電モードからインバータ給電モードに切り替えるときに半導体スイッチ15が完全にオフされているか否かを検出する必要がある。
【0042】
本実施の形態に係る無停電電源装置1は、半導体スイッチ15がオン状態であるかオフ状態であるかを検出するための状態検出器を有する。制御装置18は、この状態検出器によって半導体スイッチ15がオフされたことが検出されると、コンタクタ14をオンすることにより、バイパス給電モードからインバータ給電モードに切り替えるように構成される。これにより、バイパス給電モードからインバータ給電モードへの切り替え時における出力の信頼性を向上させる。
【0043】
図5は、図1に示した制御装置18の構成を示すブロック図である。図5を参照して、制御装置18は、ゲート回路30、状態検出器32、XOR(排他的論理和)回路34、およびUPS制御部36を有する。
【0044】
ゲート回路30は、UPS制御部36から与えられるゲート信号GSに従って、半導体スイッチ15を構成するサイリスタを駆動する。半導体スイッチ15は、互いに逆並列に接続された一対のサイリスタ15a,15bを有している。サイリスタ15a,15bの各々は、ゲート回路30によってオンオフが制御される。
【0045】
具合的には、サイリスタ15a,15bの各々は、UPS制御部36から入力(オン)されるゲート信号GSに応答してオンする。サイリスタ15a,15bは、ゲート信号GSが入力されている間、商用交流電源21から供給される交流電圧の極性に従って、交流電圧の正弦波波形における半サイクル期間ごとに交互にオン状態となる。
【0046】
サイリスタは、基本的に、第1のP層、第1のN層、第2のP層、第2のN層の4層からなり、第1のP層をアノード(A)とし、第2のN層をカソード(C)とし、第2のP層をゲート(G)とする。サイリスタは、アノード-カソード間に順方向電流が流れるように電圧を加えた状態で、ゲート信号GSに応答してゲートからカソードにゲート電流を流すことによってオンされる。
【0047】
サイリスタは一旦オンされると、ゲート電流を0にしてもオン状態が続く。サイリスタは、ゲート信号GSを遮断(オフ)した状態において、アノード-カソード間に流れる電流が所定値(保持電流)以下になるのに応じてオフされる。サイリスタのゲート-カソード間に電流が流れている間、ゲート-カソード間電圧VGCが発生する。このゲート-カソード間電圧VGCは、ゲート-カソード間のPN接合による電圧降下(約0.6V程度)に相当する。
【0048】
状態検出器32は、サイリスタ15a,15bの各々のゲート-カソード間電圧VGCを検出し、検出した電圧VGCに基づいて各サイリスタがオン状態であるかオフ状態であるかを判定する。状態検出器32は、予め設定された閾値電圧Vrefを有しており、サイリスタ15aのゲート-カソード間電圧VGCが閾値電圧Vref以上である場合にサイリスタ15aがオン状態であると判定する。一方、状態検出器32は、ゲート-カソード間電圧VGCが閾値電圧Vref未満である場合、サイリスタ15aがオフ状態であると判定する。同様に、状態検出器32は、サイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGCが閾値電圧Vref以上である場合にサイリスタ15bがオン状態であると判定し、ゲート-カソード間電圧VGCが閾値電圧Vref未満である場合にサイリスタ15bがオフ状態であると判定する。ゲート回路30および状態検出器32の詳細な構成については後述する。
【0049】
状態検出器32は、サイリスタ15aおよびサイリスタ15bの少なくとも一方がオン状態である場合、H(論理ハイ)レベルの信号TSを出力する。状態検出器32は、サイリスタ15aおよびサイリスタ15bがともにオフ状態である場合、L(論理ロー)レベルの信号TSを出力する。
【0050】
XOR回路34は、第1入力端子に状態検出器32の出力信号TSを受け、第2入力端子にゲート信号GSを受ける。XOR回路34は、2つの入力信号の排他的論理和を演算し、演算結果を示す信号DET1を出力する。
【0051】
具体的には、XOR回路34は、信号TSがHレベルであり、かつ、ゲート信号GSがHレベルであるとき、または、信号TSがLレベルであり、かつ、ゲート信号GSがLレベルであるときに、Lレベルの信号DET1を出力する。一方、XOR回路34は、信号TSがHレベルであり、かつ、ゲート信号GSがLレベルであるとき、または、信号TSがLレベルであり、かつ、ゲート信号GSがHレベルであるとき、Hレベルの信号DET1を出力する。
【0052】
すなわち、XOR回路34は、サイリスタ15a,15bにゲート信号GSが入力(オン)されている状態においてサイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であるときに、Lレベルの信号DET1を出力する。あるいは、XOR回路34は、サイリスタ15a,15bからゲート信号GSが遮断(オフ)されている状態においてサイリスタ15a,15bがともにオフ状態であるときに、Lレベルの信号DET1を出力する。
【0053】
これに対して、XOR回路34は、サイリスタ15a,15bにゲート信号GSが入力されている状態においてサイリスタ15a,15bがともにオフ状態であるときに、Hレベルの信号DET1を出力する。あるいは、XOR回路34は、サイリスタ15a,15bからゲート信号GSが遮断されている状態においてサイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であるときに、Hレベルの信号DET1を出力する。XOR回路34の出力信号DET1はUSP制御部36に入力される。
【0054】
UPS制御部36は、バイパス給電モード時に商用交流電源21の電圧低下または停電が発生すると、半導体スイッチ15のゲート信号GSを遮断する。そして、UPS制御部36は、ゲート信号GSが遮断されている状態においてXOR回路34から与えられる信号DET1がLレベルであるとき、サイリスタ15a,15bがともにオフ状態であり、半導体スイッチ15がオフされていると判定する。この場合、UPS制御部36は、コンタクタ14をオンすることにより、無停電電源装置1をインバータ給電モードに切り替える。半導体スイッチ15がオフされているため、図3に示したように、インバータ10によって生成された交流電力が負荷22に供給される。
【0055】
これに対して、ゲート信号GSが遮断されている状態においてXOR回路34から与えられる信号DET1がHレベルであるとき、UPS制御部36は、サイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であり、半導体スイッチ15がオフされていないと判定する。この場合、UPS制御部36は、半導体スイッチ15のオン故障が生じていると判断し、コンタクタ14をオフ状態に維持することにより、無停電電源装置1をインバータ給電モードに切り替えない。さらにUPS制御部36は、無停電電源装置1の運転を停止させる。
【0056】
図6は、図5に示したゲート回路30および状態検出器32の構成を示す回路ブロック図である。図6には、ゲート回路30のうちサイリスタ15bを駆動するための回路部分が示される。図示しないサイリスタ15aを駆動するための回路部分は、サイリスタ15bを駆動するための回路部分と同じ構成を有している。
【0057】
図6を参照して、ゲート回路30は、直流端子30a,30bと、トランス31と、ダイオードD1~D5と、コンデンサC1~C3と、トランジスタTr1,Tr2と、抵抗R1,R2とを有する。正側直流端子30aおよび負側直流端子30bの間には、図示しない直流電源の電圧Vが印加される。
【0058】
トランス31は、1次巻線31aおよび2次巻線31bを有する。1次巻線31aは、正側直流端子30aおよび負側直流端子30bの間に接続される。ダイオードD1およびコンデンサC1の各々は、正側直流端子30aおよび負側直流端子30d間に接続される。2次巻線31bの中点は、サイリスタ15bのカソードおよび接地配線GNDに接続される。
【0059】
2次巻線31bの第1端子と中点との間には電圧V1が生じる。2次巻線31bの中点と第2端子との間には電圧V2が生じる。2次巻線31bの中点の電圧(=接地電圧(0V))は、サイリスタ15bのカソードに印加されるとともに、状態検出器32において閾値電圧Vrefとして用いられる。
【0060】
2次巻線31bの第1端子と第2端子との間には、NPNトランジスタTr1およびPNPトランジスタTr2が電気的に直列に接続される。2次巻線31bの第1端子はNPNトランジスタTr1のコレクタと電気的に接続される。2次巻線31bの第2端子はPNPトランジスタTr2のコレクタと電気的に接続される。NPNトランジスタTr1のエミッタとPNPトランジスタTr2のエミッタとの接続点はサイリスタ15bのゲートに電気的に接続される。
【0061】
抵抗R1は、NPNトランジスタTr1およびPNPトランジスタTr2の接続点とサイリスタ15bのゲートとの間に接続される。抵抗R2は、NPNトランジスタTr1およびPNPトランジスタTr2の接続点と2次巻線31bの中点との間に接続される。
【0062】
ダイオードD2は、2次巻線31bの第1端子およびNPNトランジスタTr1のコレクタの間に接続される。ダイオードD3およびコンデンサC2の各々は、2次巻線31bの第1端子および中点の間に接続される。ダイオードD4は、2次巻線31bの第2端子およびPNPトランジスタTr2のコレクタの間に接続される。ダイオードD5およびコンデンサC3の各々は、2次巻線31bの第2端子および中点の間に接続される。
【0063】
NPNトランジスタTr1およびPNPトランジスタTr2のベースには、ゲート信号GSが入力される。ゲート信号GSがHレベルのとき、NPNトランジスタTr1がオンし、PNPトランジスタTr2がオフする。NPNトランジスタTr1がオンすると、2次巻線31bの第1端子がサイリスタ15bのサイリスタ15bのゲートに接続される。これにより、サイリスタ15bのゲートに正の電圧(+V1)が印加される。
【0064】
一方、ゲート信号GSがLレベルのときには、NPNトランジスタTr1がオフし、PNPトランジスタTr2がオンする。PNPトランジスタTr2がオンすると、2次巻線31bの第2端子がサイリスタ15bのサイリスタ15bのゲートに接続される。これにより、サイリスタ15bのゲートに負の電圧(-V2)が印加される。
【0065】
状態検出器32は、比較器40,42と、OR回路44とを有する。比較器40は、サイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGCと閾値電圧Vrefとを比較する。閾値電圧Vrefは接地電圧(0V)に設定されている。
【0066】
サイリスタ15bがオン状態のとき、サイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGC(+V1)が閾値電圧Vrefよりも高いため、比較器40はHレベルの信号を出力する。一方、サイリスタ15bがオフ状態のとき、サイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGC(-V2)が閾値電圧Vrefよりも低いため、比較器40はLレベルの信号を出力する。
【0067】
比較器42は、サイリスタ15aのゲート-カソード間電圧VGCと閾値電圧Vref(0V)とを比較する。サイリスタ15aがオン状態のとき、サイリスタ15aのゲート-カソード間電圧VGC(+V1)が閾値電圧Vrefよりも高いため、比較器42はHレベルの信号を出力する。一方、サイリスタ15aがオフ状態のとき、サイリスタ15aのゲート-カソード間電圧VGC(-V2)が閾値電圧Vrefよりも低いため、比較器42はLレベルの信号を出力する。
【0068】
OR回路44は、比較器40の出力信号および比較器42の出力信号の少なくとも一方がHレベルのときにHレベルの信号TSを出力する。一方、比較器40の出力信号および比較器42の出力信号がともにLレベルのときに、OR回路44はLレベルの信号TSを出力する。すなわち、OR回路44は、サイリスタ15aおよびサイリスタ15bの少なくとも一方がオン状態であるときにHレベルの信号TSを出力し、サイリスタ15aおよびサイリスタ15bがともにオフ状態であるときにLレベルの信号TSを出力する。
【0069】
図7は、状態検出器32の動作を説明するための図である。図7には、サイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGCおよびゲート信号GSの波形が示されている。時刻t1にてゲート信号GSが入力されると、サイリスタ15bがオンされ、サイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGCは正の電圧(+V1)となる。
【0070】
時刻t1より後の時刻t2にてゲート信号GSを遮断しても、サイリスタ15bのアノード-カソード間に流れる電流が保持電流以下になるまでオン状態が続く。ゲート信号GSを遮断した後、ゲート-カソード間電圧VGCはPN接合による電圧降下(約0.6V程度)相当となる。サイリスタ15bがオフすると(時刻t3)、ゲート-カソード間電圧VGCは負の電圧(-V2)となる。
【0071】
状態検出器32は、ゲート-カソード間電圧VGCと閾値電圧Vref(0V)とを比較する。図7に示すように、サイリスタ15bがオフ状態のときのゲート-カソード間電圧VGCは負の電圧(-V2)となり、閾値電圧Vref(0V)に比べて低い。そのため、状態検出器32は、サイリスタ15bがオフ状態であることを検出できる。
【0072】
図8Aには、比較例として、一般的なゲート回路300の構成が示される。比較例に係るゲート回路300は、入力端子300a,300bと、ダイオードD6,D7と、抵抗R3と、コンデンサC4とを有する。入力端子300bは接地配線GNDに接続される。ダイオードD7、抵抗R3およびコンデンサC4の各々は、入力端子300aおよび入力端子300bの間に接続される。
【0073】
図8Bには、図8Aのゲート回路300により生成されるサイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGCの波形が示されている。図8Bに示すように、時刻t1にてゲート信号GSが入力されると、サイリスタ15bがオンされ、サイリスタ15bのゲート-カソード間電圧VGCは正の電圧(0.6~1.5V程度)となる。次に時刻t2にてゲート信号GSを遮断すると、ゲート-カソード間電圧VGCはPN接合による電圧降下(約0.6V程度)相当となる。サイリスタ15bがオフすると(時刻t3)、ゲート-カソード間電圧VGCは接地電圧(0V)となる。
【0074】
サイリスタ15bがオフ状態のとき、ゲート-カソード間電圧VGCは接地電圧(0V)付近で脈動している。そのため、閾値電圧Vrefを接地電圧(0V)に設定し、ゲート-カソード間電圧VGCと閾値電圧Vref(0V)とを比較した場合、ゲート-カソード間電圧VGCの脈動に起因して、サイリスタ15bの状態を誤って検出してしまう可能性がある。
【0075】
これに対して、図7に示したように、本実施の形態に係るゲート回路30は、サイリスタ15bがオフ状態のときのゲート-カソード間電圧VGCが負の電圧(-V2)となるように構成されているため、状態検出器32は、ゲート-カソード間電圧VGCの脈動に影響されることなく、サイリスタ15bの状態を正確に検出することができる。
【0076】
図9は、実施の形態1に係る無停電電源装置1の動作を説明する図である。図9には、ゲート信号GS、サイリスタ15a,15bのゲート-カソード間電圧VGC、状態検出器32の出力信号TS、XOR回路34の出力信号DET1、およびコンタクタ14のオン指令(閉指令)の波形が示される。
【0077】
図9に示すように、時刻t1にてHレベルのゲート信号GSを受けてサイリスタ15a,15bがともにオンすると、バイパス給電モードが開始される。コンタクタ14はオフされている。時刻t1以降、サイリスタ15a,15bの各々のゲート-カソード間電圧VGCは正の電圧(+V1)となるため、状態検出器32の出力信号TSはHレベルとなる。ゲート信号GSがHレベルであり、かつ、信号TSがHレベルであるため、時刻t1以降もXOR回路34の出力信号DET1はLレベルに維持される。
【0078】
バイパス給電モード時に商用交流電源21の電圧低下または停電が発生したことにより、時刻t2にてゲート信号GSを遮断しても、電流が流れているサイリスタには電流が流れ続ける。このときのサイリスタのゲート-カソード間電圧VGCはPN接合の電圧降下(約0.6V)に相当する。アノード-カソード間に流れる電流が所定値以下になり、サイリスタがオフすると、ゲート-カソード間電圧VGCは負の電圧(-V2)になる。サイリスタ15a,15bのゲート-カソード間電圧VGCが閾値電圧Vref(0V)を下回ると(時刻t3)、状態検出器32の出力信号TSはHレベルからLレベルに遷移する。
【0079】
ゲート信号GSを遮断した時点(時刻t2)からサイリスタ15a,15bがオフする時点(時刻t3)までの期間、XOR回路34の出力信号DET1は一時的にHレベルとなる。時刻t3にてXOR回路34の出力信号DET1がLレベルに遷移すると、UPS制御部36は、サイリスタ15a,15bがともにオフ状態であり、半導体スイッチ15がオフされていると判定する。UPS制御部36は、コンタクタ14をオンすることにより、無停電電源装置1をインバータ給電モードに切り替える。
【0080】
これに対して、図中に破線で示すように、時刻t2以降、サイリスタ15bが正常にオフされない場合には、状態検出器32の出力信号TSがHレベルに維持される。そのため、XOR回路34の出力信号DET1も時刻t2以降、Hレベルに維持される。この場合、UPS制御部36は、サイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であり、半導体スイッチ15がオフされていないと判定する。UPS制御部36は、コンタクタ14をオフ状態に維持することにより、無停電電源装置1をインバータ給電モードに切り替えない。
【0081】
以上説明したように、実施の形態1に係る無停電電源装置1は、ゲート信号GSが遮断された状態における、半導体スイッチ15を構成するサイリスタ15a,15bのゲート-カソード間電圧VGCとに基づいて、半導体スイッチ15がオフされていることを検出するように構成される。
【0082】
ここで、半導体スイッチ15がオフされていることを検出するためには、半導体スイッチ15に流れる電流を検出し、電流検出値が予め設定された閾値電流未満である場合に、半導体スイッチ15がオフされていると判定する手法を用いることができる。
【0083】
しかしながら、この手法では、商用交流電源21の電圧低下または停電の発生時に半導体スイッチ15に流れる電流が低下した結果、電流検出値が閾値電流を下回った場合には、半導体スイッチ15がオン状態であるにもかかわらず、半導体スイッチ15がオフされていると誤って判定してしまう可能性がある。また、半導体スイッチ15のオン故障が生じている場合においても、半導体スイッチ15に流れる電流が低下して閾値電流を下回ったことにより、誤って半導体スイッチ15がオフされていると判定してしまう可能性がある。
【0084】
これに対して、実施の形態1に係る無停電電源装置1では、ゲート信号GSが遮断されているサイリスタ15a,15bのゲート-カソード間電圧VGCに基づいて半導体スイッチ15がオフされていることを検出するため、半導体スイッチ15に流れる電流の低下に影響されることなく、半導体スイッチ15のオフを正確に検出することができる。
【0085】
さらに、実施の形態1に係る無停電電源装置1によれば、サイリスタ15a,15bをオフする際に、負の電圧を各サイリスタのゲートに印加する構成を採用したことにより、サイリスタがオフ状態であるときのゲート-カソード間電圧VGCを閾値電圧(0V)よりも低い電圧とすることができる。これによると、ゲート-カソード間電圧VGCの脈動に影響されることなくサイリスタ15a,15bの状態を正確に検出することができる。この結果、バイパス給電からインバータ給電への切り替え時における出力の信頼性を向上させることが可能となる。
【0086】
[実施の形態2]
図10は、実施の形態2に係る無停電電源装置1の制御装置18Aの構成を示すブロック図である。図10を参照して、実施の形態2に係る制御装置18Aは、図5に示した制御装置18に対して、電流センサ50、電流検出器52、比較器54、XOR回路56および、OR回路58を追加したものである。
【0087】
電流センサ50は、半導体スイッチ15に流れる電流を検出する。半導体スイッチ15を構成するサイリスタ15a,15bは、ゲート信号GSが入力されている間、商用交流電源21から供給される交流電圧の極性に従って、交流電圧の半サイクル期間ごとに交互にオン状態となる。電流センサ50は、交流電圧の半サイクル期間ごとにサイリスタ15a,15bに交互に流れる電流を検出する。
【0088】
電流検出器52は、電流センサ50により検出される交流電流の振幅(または実効値)を検出する。比較器54は、電流検出器52による検出値と予め設定された閾値電流Irefとを比較する。閾値電流Irefは0Aに設定されている。電流検出器52による検出値が閾値電流Irefより大きい場合、比較器54はHレベルの信号を出力する。一方、電流検出器52による検出値が閾値電流Iref以下である場合、比較器54はLレベルの信号を出力する。すなわち、比較器54は、半導体スイッチ15に電流が流れているときにHレベルの信号を出力し、半導体スイッチ15に電流が流れていないときにLレベルの信号を出力する。
【0089】
XOR回路56は、第1入力端子に比較器54の出力信号を受け、第2入力端子に状態検出器32の出力信号TSを受ける。XOR回路56は、2つの入力信号の排他的論理和を演算し、演算結果を示す信号DET2を出力する。具体的には、XOR回路56は、比較器54の出力信号がHレベルであり、かつ、信号TSがHレベルであるとき、または、比較器54の出力信号がLレベルであり、かつ、信号TSがLレベルであるときに、Lレベルの信号DET2を出力する。一方、XOR回路56は、比較器54の出力信号がHレベルであり、かつ、信号TSがLレベルであるとき、または、比較器54の出力信号がLレベルであり、かつ、信号TSがHレベルであるとき、Hレベルの信号DET2を出力する。
【0090】
すなわち、XOR回路56は、半導体スイッチ15に電流が流れており、かつ、サイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であるときに、Lレベルの信号DET2を出力する。あるいは、XOR回路56は、半導体スイッチ15に電流が流れておらず、かつ、サイリスタ15a,15bがともにオフ状態であるときに、Lレベルの信号DET2を出力する。
【0091】
これに対して、サイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であるが、半導体スイッチ15に電流が流れていないときに、Hレベルの信号DET1を出力する。
【0092】
XOR回路56の出力信号DET2は、OR回路58の第1入力端子に入力される。OR回路58の第2入力端子には、XOR回路34の出力信号DET1が入力される。OR回路58は、XOR回路34の出力信号DET1およびXOR回路56の出力信号DET2の少なくとも一方がHレベルのときにHレベルの信号DET3を出力する。一方、XOR回路34の出力信号DET1およびXOR回路56の出力信号DET2がともにLレベルのときに、OR回路58はLレベルの信号DET3を出力する。
【0093】
すなわち、OR回路58は、サイリスタ15a,15bにゲート信号GSが入力(オン)されている状態において、サイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であり、かつ、半導体スイッチ15に電流が流れているときに、Lレベルの信号DET3を出力する。あるいは、OR回路58は、サイリスタ15a,15bからゲート信号GSが遮断(オフ)されている状態において、サイリスタ15a,15bがともにオフ状態であり、かつ、半導体スイッチ15に電流が流れていないときに、Lレベルの信号DET3を出力する。
【0094】
これに対して、OR回路58は、サイリスタ15a,15bにゲート信号GSが入力されており、サイリスタ15a,15bの少なくとも一方がオン状態であるが、半導体スイッチ15に電流が流れていないときに、Hレベルの信号DET3を出力する。
【0095】
実施の形態2に係る制御装置18Aによれば、バイパス給電モードの実行中、サイリスタ15a,15bが正常にオンされない故障が生じていることを検出することができる。図11は、実施の形態2に係る無停電電源装置1の動作を説明する図である。図11には、ゲート信号GS、サイリスタ15a,15bのゲート-カソード間電圧VGC、状態検出器32の出力信号TS、XOR回路34の出力信号DET1、コンタクタ14のオン指令(閉指令)、比較器54の出力信号、XOR回路56の出力信号DET2、およびOR回路58の出力信号DET3の波形が示される。
【0096】
図11に示すように、時刻t1にてHレベルのゲート信号GSを受けてサイリスタ15a,15bがともにオンすると、バイパス給電モードが開始される。コンタクタ14はオフされている。時刻t1以降、サイリスタ15a,15bの各々のゲート-カソード間電圧VGCは正の電圧(+V1)となるため、状態検出器32の出力信号TSはHレベルとなる。ゲート信号GSがHレベルであり、かつ、信号TSがHレベルであるため、時刻t1以降もXOR回路34の出力信号DET1はLレベルに維持される。
【0097】
時刻t1以降、サイリスタ15a,15bが交流電圧の半サイクル期間ごとに交互にオンすることにより、半導体スイッチ15に電流が流れる。比較器54の出力信号がHレベルとなるため、XOR回路56の出力信号DET2はLレベルとなる。信号DET1および信号DET2がともにLレベルのため、信号DET3もLレベルとなる。
【0098】
ここで、バイパス給電モードの実行中の時刻t4にて、半導体スイッチ15(サイリスタ15a,15b)に断線が生じた場合を想定する。この場合、半導体スイッチ15に流れる電流が遮断されるため、図中に破線で示すように、XOR回路56の出力信号DET2がHレベルに遷移する。その結果、OR回路58の出力信号DET3もHレベルに遷移する。
【0099】
時刻t4以降、OR回路58の出力信号DET3はHレベルに維持される。この場合、UPS制御部36は、バイパス給電モード中に半導体スイッチ15が正常にオンされない故障が発生したと判定する。UPS制御部36は、コンタクタ14をオフ状態に維持することにより、無停電電源装置1をインバータ給電モードに切り替えない。
【0100】
以上説明したように、実施の形態2に係る無停電電源装置1によれば、実施の形態1による作用効果に加えて、バイパス給電モードの実行中に、半導体スイッチ15を流れる電流の検出値および半導体スイッチ15を構成するサイリスタ15a,15bのゲート-カソード間電圧VGCに基づいて、半導体スイッチ15が正常にオンされない故障を検出することができる。
【0101】
なお、上述した実施の形態1,2では、商用交流電源21および負荷22の間に単一の無停電電源装置1が接続されている構成例を説明したが、図12に示すように、複数の無停電電源装置1が負荷22に対して並列に接続されている構成例においても本実施の形態を適用することができる。
【0102】
図12に示す構成例においては、各無停電電源装置1のUPS制御部36は、バイパス給電モード時または、バイパス給電モードからインバータ給電モードへの移行時に半導体スイッチ15の故障を検出する。複数の無停電電源装置1のうちのいずれか1つの無停電電源装置1において半導体スイッチ15の故障が検出されると、当該無停電電源装置1のUPS制御部36は、自己の無停電電源装置1の運転を停止させるとともに、コンタクタ2,14をオフすることによって自己の無停電電源装置1を解列させる。
【0103】
さらに、UPS制御部36は、通信線20を介して、残りの正常な無停電電源装置1のUPS制御部36に対し、自己の無停電電源装置1の故障を示す信号ERRを出力する。残りの正常な無停電電源装置1のUPS制御部36は、信号ERRを受信すると、正常な無停電電源装置1の台数に基づいて、インバータ10の出力電流の目標値である電流指令値を変更(増加)する。これにより、無停電電源装置1の故障が発生した場合であっても、負荷22に対して安定して電力を供給することができる。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1 無停電電源装置、2,8,14 コンタクタ、4,9,13,C1~C4 コンデンサ、5,12 リアクトル、6 コンバータ、7 双方向チョッパ、10 インバータ、15 半導体スイッチ、15a,15b サイリスタ、18,18A 制御装置、21 商用交流電源、22 負荷、23 バッテリ、30,300 ゲート回路、31 トランス、32 状態検出器、34,56 XOR回路、36 UPS制御部、40,42,54 比較器、44,58 OR回路、50 電流センサ、52 電流検出器、D1~D7 ダイオード、GND 接地配線、GS ゲート信号、L1 直流ライン、R1~R3 抵抗、T1 交流入力端子、T2 交流出力端子、T3 バッテリ端子、Tr1,Tr2 トランジスタ。
【要約】
制御装置は、第1および第2のサイリスタのゲートに、カソードを基準とした正の電圧を印加することにより第1のスイッチをオンする一方で、第1および第2のサイリスタのゲートに、カソードを基準とした負の電圧を印加することにより第1のスイッチをオフするように構成される。無停電電源装置は、第1のスイッチをオンするとともに第2のスイッチをオフし、交流電源からの交流電力を負荷に供給する第1の給電モードと、第1のスイッチをオフするとともに第2のスイッチをオンし、インバータから出力される交流電力を負荷に供給する第2の給電モードとを有する。第1の給電モードの実行時において交流電源の電圧低下を検出したときには、制御装置は、第1および第2のサイリスタのゲートに負の電圧を印加する。制御装置は、第1および第2のサイリスタのゲート-カソード間電圧が接地電圧よりも低くなったときに第2のスイッチをオンすることにより、無停電電源装置を第2の給電モードに切り替える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12