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  • 特許-車両の電源装置及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】車両の電源装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20220720BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20220720BHJP
   B60K 6/28 20071001ALI20220720BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20220720BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20220720BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20220720BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20220720BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20220720BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220720BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220720BHJP
   B60L 58/14 20190101ALI20220720BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220720BHJP
【FI】
B60W20/50 ZHV
B60K6/543
B60K6/28
B60W10/08 900
B60W10/00 900
B60K6/40
B60K6/442
B60K6/485
B60L50/16
B60L3/00 J
B60L58/14
B60L50/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021527539
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2020021631
(87)【国際公開番号】W WO2020255691
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019115815
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西廣 義祐
(72)【発明者】
【氏名】田原 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】望月 政治
(72)【発明者】
【氏名】平野 拓朗
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179311(JP,A)
【文献】特開2012-121570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0095603(US,A1)
【文献】特開2014-202135(JP,A)
【文献】特開2017-099234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
車両に搭載された電装品に電力を供給する第1バッテリと、
前記車両に搭載され前記第1バッテリよりも出力電圧が高い第2バッテリと、
エンジンから回転エネルギーを受けて、前記第1バッテリ及び前記第2バッテリを充電するための電力を発生する回転電機と、
前記第1バッテリと前記第2バッテリとを接続する電気回路上に設けられ、入力された電圧を変換して出力するDC-DCコンバータと、
前記回転電機と、前記第1バッテリ及び前記第2バッテリとの接続を切り替える切替装置と、を備えた車両の電源装置を制御する車両の電源装置の制御方法であって、
前記DC-DCコンバータが正常であるときには、前記切替装置を制御して前記回転電機と前記第1バッテリ及び前記第2バッテリのいずれか一方のバッテリとを接続するとともに、前記DC-DCコンバータを介して前記第1バッテリ及び前記第2バッテリの他方のバッテリを前記回転電機に接続し、
前記DC-DCコンバータに異常や故障が発生したときには、前記切替装置を制御して前記回転電機と前記他方のバッテリとを前記DC-DCコンバータを介さずに接続するとともに、前記回転電機の出力を接続された前記他方のバッテリに合わせて制御する、
車両の電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧バッテリ及び低電圧バッテリを備えた車両の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2013-95246Aには、低電圧バッテリと、高電圧バッテリと、オルタネータと、低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間に設けられ電圧変換を行うDC-DCコンバータと、を備えた車両用電源装置が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
JP2013-95246Aに記載された電源装置では、DC-DCコンバータによって低電圧バッテリの出力電圧や発電機によって発電した電圧を昇圧して高電圧バッテリを充電するようになっている。
【0004】
しかしながら、DC-DCコンバータが故障してしまうと、DC-DCコンバータを介して高電圧バッテリの充電を行うことができなくなってしまう。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、DC-DCコンバータに異常や故障が発生しても、DC-DCコンバータを介して充電されるバッテリの充電を可能にすることを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、車両の電源装置は、車両に搭載された電装品に電力を供給する第1バッテリと、車両に搭載され第1バッテリよりも出力電圧が高い第2バッテリと、エンジンから回転エネルギーを受けて、第1バッテリ及び第2バッテリを充電するための電力を発生する回転電機と、第1バッテリと第2バッテリとを接続する電気回路上に設けられ、入力された電圧を変換して出力するDC-DCコンバータと、回転電機と第1バッテリ及び第2バッテリとの接続を切り替える切替装置と、回転電機、DC-DCコンバータ及び切替装置を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、DC-DCコンバータが正常であるときには、切替装置を制御して回転電機と第1バッテリ及び第2バッテリのいずれか一方のバッテリとを接続するとともに、DC-DCコンバータを介して第1バッテリ及び第2バッテリの他方のバッテリを回転電機に接続し、DC-DCコンバータに異常が発生したときには、切替装置を制御して回転電機と他方のバッテリとをDC-DCコンバータを介さずに接続するとともに、回転電機の出力を接続された他方のバッテリに合わせて制御することを特徴とする。
【0007】
上記態様によれば、DC-DCコンバータに異常や故障が発生しても、DC-DCコンバータを介して充電されるバッテリを充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る車両の概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る電源装置の電気回路図である。
図3図3は、本実施形態に係る切替スイッチの制御の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、変形例に係る切替スイッチの制御の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、本実施形態に係る車両の変形例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る車両100の概略構成である。車両100は、第1バッテリとしての低電圧バッテリ1と、第2バッテリとしての高電圧バッテリ2と、走行用駆動源としてのエンジン3と、エンジン3の始動に用いられるスタータモータ5(以下、「SM5」という。)と、発電とエンジン3のアシスト及び始動とに用いられる回転電機としてのスタータジェネレータ6(以下、「SG6」という。)と、DC-DCコンバータ7と、インバータ8と、油圧発生源としてのメカオイルポンプ9及び電動オイルポンプ10と、パワートレインを構成するトルクコンバータ11、前後進切替機構12、無段変速機13(以下、「CVT13」という。)及びディファレンシャル機構14と、駆動輪18と、制御装置としてのコントローラ20と、切替装置としての切替スイッチ40と、を備える。
【0011】
本実施形態では、低電圧バッテリ1と、高電圧バッテリ2と、SG6と、DC-DCコンバータ7と、インバータ8と、コントローラ20と、切替スイッチ40と、が電源装置Pを構成する(図2参照)。
【0012】
低電圧バッテリ1は、例えば、公称電圧(出力電圧)がDC12Vの鉛酸電池である。低電圧バッテリ1は、車両100に搭載されたDC12Vで動作する電装品15(自動運転用カメラ15a及びセンサ15b、ナビゲーションシステム15c、オーディオ15d、エアコン用ブロア15e等)、SM5、電動オイルポンプ10等に電力を供給する。低電圧バッテリ1は、電装品15、SM5、電動オイルポンプ10とともに低電圧回路16に接続される。なお、低電圧バッテリ1は、リチウムイオン電池であってもよい。
【0013】
高電圧バッテリ2は、低電圧バッテリ1よりも公称電圧(出力電圧)が高いDC48Vのリチウムイオン電池である。高電圧バッテリ2の公称電圧は、これよりも低くても高くてもよく、例えばDC30VやDC100Vであってもよい。高電圧バッテリ2は、SG6、インバータ8等とともに高電圧回路17に接続される。
【0014】
エンジン3は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、コントローラ20からの指令に基づいて回転速度、トルク等が制御される。
【0015】
DC-DCコンバータ7は、低電圧バッテリ1と高電圧バッテリ2とを接続する電気回路上に設けられる。これにより、低電圧回路16と高電圧回路17とは、DC-DCコンバータ7を介して接続される。DC-DCコンバータ7は、入力された電圧を変換して出力する。具体的には、DC-DCコンバータ7は、低電圧回路16のDC12VをDC48Vに昇圧して高電圧回路17にDC48Vを出力する昇圧機能と高電圧回路17のDC48VをDC12Vに降圧して低電圧回路16にDC12Vを出力する降圧機能とを有している。DC-DCコンバータ7は、エンジン3が駆動中か停止中かに関わらず、低電圧回路16にDC12Vの電圧を出力することができる。また、高電圧バッテリ2の残容量が少なくなった場合は低電圧回路16のDC12VをDC48Vに昇圧して高電圧回路17に出力し、高電圧バッテリ2を充電することができる。
【0016】
切替スイッチ40は、インバータ8と低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2との間に設けられる。切替スイッチ40は、SG6と、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2との接続を切り替える。切替スイッチ40は、通常時、インバータ8と高電圧バッテリ2とを接続する位置に保持される。切替スイッチ40の制御については、後述する。
【0017】
トルクコンバータ11は、エンジン3と前後進切替機構12との間の動力伝達経路上に設けられ、流体を介して動力を伝達する。また、トルクコンバータ11は、車両100が所定のロックアップ車速以上で走行している場合にロックアップクラッチ11aを締結することで、エンジン3からの駆動力の動力伝達効率を高めることができる。
【0018】
前後進切替機構12は、トルクコンバータ11とCVT13との間の動力伝達経路上に設けられる。前後進切替機構12は、遊星歯車機構12aと、前進クラッチ12b及び後退ブレーキ12cで構成される。前進クラッチ12bが締結され後退ブレーキ12cが解放されると、トルクコンバータ11を介して前後進切替機構12に入力されるエンジン3の回転が、回転方向を維持したまま前後進切替機構12からCVT13に出力される。逆に、前進クラッチ12bが解放され後退ブレーキ12cが締結されると、トルクコンバータ11を介して前後進切替機構12に入力されるエンジン3の回転が、減速かつ回転方向を反転されて前後進切替機構12からCVT13に出力される。
【0019】
CVT13は、前後進切替機構12とディファレンシャル機構14との間の動力伝達経路上に配置され、車速やアクセルペダルの操作量であるアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更する。CVT13は、プライマリプーリ13aと、セカンダリプーリ13bと、両プーリに巻き掛けられたベルト13cと、を備える。CVT13は、プライマリプーリ13aとセカンダリプーリ13bの溝幅を油圧によって変更し、プーリ13a、13bとベルト13cとの接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更することができる。CVT13で必要とされる油圧は、メカオイルポンプ9又は電動オイルポンプ10が発生した油圧を元圧として図示しない油圧回路によって生成される。
【0020】
SM5は、エンジン3のフライホイール3aの外周ギヤ3bにピニオンギヤ5aを噛み合わせ可能に配置される。エンジン3を冷機状態から初めて始動(以下、「初回始動」という。)する場合は、低電圧バッテリ1からSM5に電力が供給され、ピニオンギヤ5aが外周ギヤ3bに噛み合わされ、フライホイール3a、さらにはクランク軸が回転される。
【0021】
なお、エンジン3を始動するのに必要なトルク、出力は、初回始動時が一番大きく、暖機状態からの始動、すなわち、再始動時は初回始動時よりも小さくなる。これは、初回始動時はエンジンオイルの温度が低く、エンジンオイルの粘性抵抗が大きいのに対し、初回起動後はエンジンオイルの温度が上昇し、エンジンオイルの粘性抵抗が低下するためである。後述するSG6は、ベルトを介して駆動されるため、大きなトルクを伝達することができない。このため、初回始動時には、SM5を用いてエンジン3を駆動する。なお、SM5を高電圧回路17に接続し、高電圧バッテリ2から供給される電力によって駆動するようにしてもよい。
【0022】
SG6は、Vベルト22を介してエンジン3のクランク軸に接続され、エンジン3から回転エネルギーを受ける場合には発電機として機能する。このようにして発電された電力は、インバータ8を通じて高電圧バッテリ2に充電される。さらに、SG6によって発電された電力は、DC-DCコンバータ7によって降圧されて低電圧バッテリ1にも充電される。
【0023】
また、SG6は、高電圧バッテリ2からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作し、エンジン3の駆動をアシストするためのトルクを発生する。さらに、SG6は、アイドリングストップ状態からエンジン3を再始動するときに、エンジン3のクランク軸を回転駆動してエンジン3を再始動するために用いられる。SG6は、Vベルト22によってエンジン3のクランク軸に接続されているので、エンジン3を始動したとき、ギヤの噛み込み音がなく、静かでスムーズな始動が可能となる。このため、再始動時には、SG6を用いてエンジン3を駆動する。
【0024】
メカオイルポンプ9は、エンジン3の回転がチェーン23を介して伝達されることによって動作するオイルポンプである。メカオイルポンプ9は、オイルパンに貯留される作動油を吸い上げ、図示しない油圧回路を介してロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12及びCVT13に油を供給する。
【0025】
電動オイルポンプ10は、低電圧バッテリ1から供給される電力によって動作するオイルポンプである。電動オイルポンプ10は、アイドルストップ状態等、エンジン3が停止してエンジン3でメカオイルポンプ9を駆動できない場合に動作し、メカオイルポンプ9と同様にオイルパンに貯留される作動油を吸い上げ、図示しない油圧回路を介してロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12及びCVT13に油を供給する。特に、CVT13で必要な油圧を確保することで、ベルト13cの滑りを抑制する。電動オイルポンプ10は、高電圧バッテリ2から供給される電力によって動作するオイルポンプであってもよい。
【0026】
コントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。コントローラ20は、制御装置に対応し、ROM又はRAMに格納されたプログラムをCPUによって実行することで、エンジン3、SM5、SG6、DC-DCコンバータ7、インバータ8、電動オイルポンプ10、ロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12、CVT13、切替スイッチ40等を統合的に制御する。
【0027】
また、コントローラ20は、第1残容量検出器31によって検出された低電圧バッテリ1の残容量SOC1と、第2残容量検出器32によって検出された高電圧バッテリ2の残容量SOC2と、に基づいて、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2の充電制御、及びSG6の発電制御を行う。
【0028】
ところで、このように構成された電源装置Pでは、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生してしまうと、低電圧バッテリ1の充電を行うことができなくなってしまう。そこで、本実施形態では、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合に、切替スイッチ40を切り替えることで、低電圧バッテリ1への充電を可能にしている。以下に、図3に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態における切替スイッチ40を用いた充電制御について説明する。なお、本実施形態の充電制御は、コントローラ20にあらかじめ記憶されたプログラムに基づいて実行される。
【0029】
ステップS1では、DC-DCコンバータ7が正常か否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、DC-DCコンバータ7の出力電圧等に基づいて、DC-DCコンバータ7が正常であるか否かを判定する。DC-DCコンバータ7が正常であれば、RETURNに進む。DC-DCコンバータ7が正常でない、つまり、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生していれば、ステップS2に進む。なお、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生していると判断された場合には、車内の表示装置にDC-DCコンバータ7に異常や故障が発生したことを告知する警告が表示される。なお、警告は、アラームなどの警告音であってもよい。
【0030】
ステップS2では、SG6の発電制御を実行する。具体的には、コントローラ20は、SG6の界磁電流を調整して、SG6の出力(発電電力)を低電圧バッテリ1の充電に適した値に調整する。
【0031】
ステップS3では、切替スイッチ40をLOW側に切り替える。具体的には、コントローラ20は、SG6と低電圧バッテリ1が接続する位置に切替スイッチ40を切り替える。これにより、SG6によって発電された電力がDC-DCコンバータ7を介さずに直接低電圧バッテリ1に供給され、低電圧バッテリ1を充電することができる。また、コントローラ20は、第1残容量検出器31によって検出された低電圧バッテリ1の残容量SOC1に基づいて、低電圧バッテリ1の充電制御(SG6の発電制御)を行う。
【0032】
このように、本実施形態では、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合には、切替スイッチ40をLOW側に切り替えるとともに、SG6の発電制御を実行することで、DC-DCコンバータ7を介さずにSG6によって低電圧バッテリ1を充電することができる。
【0033】
また、切替スイッチ40をLOW側に切り替える前に、SG6の出力(発電電力)を低電圧バッテリ1の充電に適した値に調整することにより、低電圧バッテリ1に過電圧や過電流が印加されることを防止できる。
【0034】
なお、上記実施形態では、正常時にSG6と高電圧バッテリ2とが接続される場合を例に説明したが、正常時にSG6と低電圧バッテリ1とが接続されるようにしてもよい。この場合、正常時に、SG6によって発電された電力は、DC-DCコンバータ7を介して高電圧バッテリ2に充電される。また、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合には、切替スイッチ40をHIGH側に切り替えるとともに、SG6の発電制御を実行することで、DC-DCコンバータ7を介さずにSG6によって高電圧バッテリ2を充電することができる。
【0035】
次に、図4を参照して、本実施形態における充電制御の変形例を説明する。図4に示す変形例では、コントローラ20は、図3におけるステップS1からステップS3に加え、ステップS4からステップS6の判定および制御をさらに実行する。
【0036】
ステップS4では、コントローラ20は、残容量SOC2が所定値E1以下であるか否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、第2残容量検出器32によって検出された高電圧バッテリ2の残容量SOC2が所定値E1以下であるか否かを判定する。残容量SOC2が所定値E1以下であれば、ステップS5に進み、残容量SOC2が所定値E1より大きければ、RETURNへ進む。
【0037】
ステップS5では、切替スイッチ40をHIGH側に切り替える。具体的には、コントローラ20は、SG6と高電圧バッテリ2が接続する位置に切替スイッチ40を切り替える。これにより、SG6によって発電された電力が高電圧バッテリ2に供給され、高電圧バッテリ2が充電される。このときコントローラ20は、SG6の界磁電流を調整して、SG6の出力(発電電力)を高電圧バッテリ2の充電に適した値に調整する。
【0038】
ステップS6では、コントローラ20は、高電圧バッテリ2の充電が完了したか否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、第2残容量検出器32によって検出された高電圧バッテリ2の残容量SOC2が所定値E2以上になったか否かを判定する。高電圧バッテリ2の残容量SOC2が所定値E2以上になっていればステップS2に戻って、再び、切替スイッチ40をLOW側に切り替える。これに対し、高電圧バッテリ2の残容量SOC2が所定値E2未満であれば、高電圧バッテリ2の残容量SOC2が所定値E2以上になるまでステップS6の判定を繰り返す。
【0039】
上記変形例によれば、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合に、低電圧バッテリ1の充電を可能にするとともに、高電圧バッテリ2の充電も可能にすることができる。
【0040】
なお、上記実施形態の充電制御は、モータジェネレータを備えたハイブリッド車両にも適用できる。以下に、図5を参照してこの変形例について説明する。
【0041】
図5に示す車両100は、走行用駆動源としてモータジェネレータ4(以下、「MG4」という。)をさらに備える。なお、この変形例では、MG4は、電源装置Pに含まれる。
【0042】
MG4は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型回転電機である。MG4は、MG4の軸に設けられたスプロケットとプライマリプーリ13aの軸に設けられたスプロケットとの間に巻きつけられるチェーン21を介してプライマリプーリ13aの軸に接続される。MG4は、コントローラ20からの指令に基づいてインバータ8により作り出された三相交流を印加することにより制御される。
【0043】
MG4は、高電圧バッテリ2からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作し、車両100を駆動するためのトルクを発生する。また、MG4は、ロータがエンジン3や駆動輪18から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、インバータ8を介して高電圧バッテリ2を充電することができる。
【0044】
MG4の軸に設けられたスプロケットとプライマリプーリ13aの軸に設けられたスプロケットは、後者の歯数が多くなるように構成され(例えば、歯数=1:3)、MG4の出力回転が減速してプライマリプーリ13aに伝達されるようにする。これにより、MG4に要求されるトルクを下げてMG4を小型化し、MG4の配置自由度を向上させる。なお、チェーン21に代えてギヤ列を用いてもよい。
【0045】
このように、この変形例では、MG4によって高電圧バッテリ2を充電することができる。これにより、高電圧バッテリ2の電圧の低下が抑制さえるので、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合に、高電圧バッテリ2を充電するための切替スイッチ40の切り替え頻度を少なくすることができる。
【0046】
以上のように構成された上記実施形態の作用効果をまとめて説明する。
【0047】
本実施形態の電源装置Pは、車両100に搭載された電装品15に電力を供給する低電圧バッテリ1と、車両100に搭載され低電圧バッテリ1よりも出力電圧が高い高電圧バッテリ2と、エンジン3から回転エネルギーを受けて、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2を充電するための電力を発生する回転電機(SG6)と、低電圧バッテリ1と高電圧バッテリ2とを接続する電気回路上に設けられ、入力された電圧を変換して出力するDC-DCコンバータ7と、回転電機(SG6)と低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2との接続を切り替える切替スイッチ40と、回転電機(SG6)、DC-DCコンバータ7及び切替スイッチ40を制御するコントローラ20と、を備え、コントローラ20は、DC-DCコンバータ7が正常であるときには、切替スイッチ40を制御して回転電機(SG6)と低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2のいずれか一方のバッテリとを接続するとともに、DC-DCコンバータ7を介して低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2の他方のバッテリを回転電機(SG6)に接続し、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生したときには、切替スイッチ40を制御して回転電機(SG6)と他方のバッテリとをDC-DCコンバータ7を介さずに接続するとともに、回転電機(SG6)の出力を接続された他方のバッテリに合わせて制御する。
【0048】
この構成によれば、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合に、切替スイッチ40を制御することによって、回転電機(SG6)と他方のバッテリとをDC-DCコンバータ7を介さずに接続することができる。さらに、回転電機(SG6)の出力を接続された他方のバッテリに合わせて制御することによって、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合にも、他方のバッテリを充電することができる。
【0049】
また、回転電機(SG6)は、低電圧バッテリ1または高電圧バッテリ2から電力が供給された場合には、エンジン3を始動、またはエンジン3の駆動をアシストするためのトルクを発生する。
【0050】
回転電機としてSG6を用いることにより、発電だけでなく、エンジン3を始動したとき、ギヤの噛み込み音がなく、静かでスムーズな始動が可能となる。
【0051】
電源装置Pは、駆動輪18またはエンジン3から入力があった場合には、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2を充電するための電力を発生可能であり、高電圧バッテリ2から電力が供給された場合には、駆動輪18を駆動するためのトルクを発生するモータジェネレータ4をさらに備える。
【0052】
電源装置Pは、ハイブリッド車両にも適用することができる。DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合に、モータジェネレータ4によって高電圧バッテリ2を充電することができる。
【0053】
コントローラ20は、DC-DCコンバータ7に異常が発生したときに一方のバッテリの残容量が所定値以下に低下したときには、切替スイッチ40を制御して回転電機(SG6)と一方のバッテリとを接続する。
【0054】
DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生した場合に、他方のバッテリを充電するだけでなく、一方のバッテリを充電することもできる。
【0055】
電源装置Pでは、一方のバッテリは、高電圧バッテリ2であり、他方のバッテリは、低電圧バッテリ1である。
【0056】
この場合には、DC-DCコンバータ7に異常や故障が発生したときに、低電圧バッテリ1を充電するための電力は、高電圧バッテリ2を充電するための電力よりも小さいので、SG6に過度な負荷がかかることを抑制できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0058】
上記実施形態では、回転電機としてSG6を例に説明したが、回転電機は、発電のみを行うものであってもよい。
【0059】
さらに、変速機は、無段変速機に限らず、有段変速機であってもよい。
【0060】
本願は、2019年6月21日に日本国特許庁に出願された特願2019-115815号に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
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