(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】新規メチルキナゾリノン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 403/12 20060101AFI20220720BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220720BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61P35/00
A61K31/517
(21)【出願番号】P 2021566023
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2020084976
(87)【国際公開番号】W WO2021116055
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-12-14
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドレンテ, コジモ
(72)【発明者】
【氏名】ヘウィングス, デーヴィッド スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】フンツィカー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クルメナッハ, ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】ペッタッツォーニ, ピエルジョルジョ フランチェスコ トンマゾ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヒマン, ユルゲン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515570(JP,A)
【文献】国際公開第2012/118492(WO,A1)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2014年,Vol.24, No.8,p.1923-1927
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 403/12
A61P 35/00
A61K 31/517
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
の化合物又はその薬学的に許容さ
れる塩。
【請求項2】
前記化合物が、式(I)の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、式(Ia)
の化合物である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、式(Ib)
の化合物である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の調製のための
方法であって、式(B1)
の化合物と、式(B2)
の化合物との、塩基の存在下での反応を含む、
方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物と、治療的に不活性な担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を含む、がんの処置又は予防に使用するための
医薬。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を含む、甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又は
非小細胞肺がんの処置又は予防に使用するための
医薬。
【請求項9】
甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又は
非小細胞肺がんの処置又は予防のための医薬の調製のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、その製造、それを含有する薬学的組成物、及び治療活性物質としてのその使用を提供する。BRAF阻害剤であり、パラドックス遮断特性を有する本発明の化合物。
【0002】
本発明は、特に、式(I)
の新規化合物、又はその薬学的に許容
される塩を提供する。
【背景技術】
【0003】
急速進行性線維肉腫(RAF)クラスのセリン-トレオニンキナーゼは、MAPキナーゼシグナル伝達経路の最初のノードを構成する3つのメンバー(ARAF、BRAF、RAF1)を含む。MEK1及び2のリン酸化によるシグナル伝播における3つのRAFアイソフォームの明らかな冗長性にもかかわらず、頻繁な発がん性活性化変異は、BRAFについてのみ一般に見出される。特に、V600をグルタミン酸又はリジンで置換すると、キナーゼが高度に活性化され、その結果、外部刺激とは無関係にMAPK経路が過剰刺激される(Cell.2015 Jun 18;161(7):1681-1696)。
【0004】
変異型BRAFは標的化可能な発がん性ドライバーであり、3つのBRAF阻害剤(ベムラフェニブ、ダブラフェニブ及びエンコラフェニブ)が現在まで市場に出回っており、BRAFV600E陽性黒色腫において有効性を示している。しかしながら、薬物耐性の迅速な獲得はほぼ普遍的に観察されており、標的療法に関する治療上の利益の持続期間は依然として限られている。
【0005】
さらに、開発されたBRAF阻害剤は、BRAFV600E駆動性腫瘍においてMAPKシグナル伝達を抑制する予想外の「パラドキシカル」な能力を明らかにしたが、同じ阻害剤がBRAF野生型(WT)モデルにおいてMAPK刺激活性を示した(N Engl J Med 2012;366:271-273;及びBritish Journal of Cancer volume 111,pages640-645(2014))。
【0006】
次いで、RAFパラドックスに関する機構的研究により、発がん性BRAFV600Eがその単量体サイトゾル形態でMEK1/2をリン酸化する一方で、WT BRAF及びRAF1の活性化は、細胞膜移行、並びに活性化RASによって促進されるホモ及び/又はヘテロ二量体化を含む事象の複雑な段階を必要とすることが明らかになった(KRAS、NRAS、HRAS)(Nature Reviews Cancer volume 14,pages455-467(2014))。
【0007】
ベムラフェニブ、ダブラフェニブ又はエンコラフェニブのような阻害剤のWT BRAF又はRAF1プロトマーへの結合は、RAFホモ及び/又はヘテロ二量体化、並びに新たに形成されたRAF二量体の膜会合を迅速に誘導する。二量体型コンフォメーションでは、1つのRAFプロトマーが第2のRAFプロトマーのコンフォメーション変化をアロステリックに誘導してキナーゼ活性状態をもたらし、重要なことに、阻害剤の結合にとって好ましくないコンフォメーションをもたらす。結果として、薬物処置によって誘導された二量体は、経路の過活性化を伴う未結合プロトマーによって操作される触媒作用によりMEKリン酸化を促進する。
【0008】
RAFパラドックスは、2つの臨床的に関連する結果をもたらす:1)BRAFi単剤療法時の二次腫瘍(主に角化細胞腫及び扁平上皮癌腫)の増殖の促進(N Engl J Med 2012;366:271-273)、及び2)BRAFi単剤療法の状況と並んでBRAFi+MEKiの組合せにおける薬物耐性の獲得は、RAS変異、BRAF増幅、二量体作用性BRAFスプライスバリアントの発現を含む遺伝的に駆動される事象による二量体媒介性RAFシグナル伝達の活性化を示す(Nature Reviews Cancer volume 14,pages 455-467(2014))。したがって、このパラドックスを遮断することができるRAF阻害剤が必要とされている。
【0009】
さらに、現在承認されている古典的なBRAF阻害剤であるベムラフェニブ(Mol.Pharmaceutics 2012,9,11,3236-3245)、ダブラフェニブ(J Pharmacol Ex Ther 2013,344(3)655-664)及びエンコラフェニブ(Pharmacol Res.2018;129:414-423)は全て、脳透過性が非常に低い。これは、脳がん又は脳転移の処置の場合、これらの古典的なBRAF阻害剤の使用にとって大きな制限である。したがって、脳透過性が改善されたBRAF阻害剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、式(I)のBRAF阻害剤が、高い効力を保持しつつも、MAPKシグナル伝達経路のパラドックス活性化がかなり少ない、より強力で選択的なBRAF阻害剤であるという驚くべき知見に関する。したがって、この化合物は、RAFパラドックスを誘導する化合物(パラドックス誘導剤又はRAFパラドックス誘導剤と呼ぶことができる)とは対照的に、パラドックス遮断剤又はRAFパラドックス遮断剤と呼ぶことができる。パラドックス遮断剤であることに加えて、式(I)の化合物はまた、非常に強力な脳浸透特性を有し、したがって、脳内のがんの処置のために緊急に必要とされる代替療法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、BRAF変異型細胞株A375において実施例1によって誘導されたP-ERK阻害曲線を開示している。
【
図2】
図2は、BRAF変異型細胞株A375において実施例2によって誘導されたP-ERK阻害曲線を開示している。
【
図3】
図3は、BRAF変異型細胞株A375において参照化合物AR-25によって誘導されたP-ERK阻害曲線を開示している。
【
図4】
図4は、WT BRAF細胞株HCT-116において実施例1によって誘導されたP-ERK活性化曲線を開示している。比較のため、対照化合物ダブラフェニブ(パラドックス誘導剤)及びPLX-8394(パラドックス遮断剤)による処置によって生成されたデータも示す。
【
図5】
図5は、WT BRAF細胞株HCT-116において実施例2によって誘導されたP-ERK活性化曲線を開示している。比較のため、対照化合物ダブラフェニブ(パラドックス誘導剤)及びPLX-8394(パラドックス遮断剤)による処置によって生成されたデータも示す。
【
図6】
図6は、WT BRAF細胞株HCT-116において参照化合物AR-25によって誘導されたP-ERK活性化曲線を開示している。比較のため、対照化合物ダブラフェニブ(パラドックス誘導剤)及びPLX-8394(パラドックス遮断剤)による処置によって生成されたデータも示す。
【
図7】
図7は、第1世代BRAF阻害剤によって誘導されるMAPキナーゼ経路の
パラドキシカル活性化を示す。BRAFはMAPキナーゼシグナル伝達経路の最初のノードの一部であり、変異型BRAFは発がん性ドライバーである(左)。BRAF V600E/K変異腫瘍では、タンパク質が第1世代BRAF阻害剤によって阻害される状態である単量体としてBRAFシグナルが伝達される(中央)。第1世代のBRAF阻害剤は、BRAF WTホモ及び/又はヘテロ二量体化を促進する(上、右)。これに関連して、BRAF阻害剤によって占有されていないプロトマーは、阻害剤結合に好ましくない
コンフォメーションを獲得する(中央、右)。第1世代のBRAF阻害剤による治療の結果は、これに関連して、
パラドキシカル(逆説的)に増加したMAPK活性化及び結果として生じるBRAF WT細胞の腫瘍増殖である(下、右)。
【
図8】
図8は、化合物実施例1が1日1mg/kgから始まる用量依存的な抗腫瘍活性を誘発し、強力な脳透過性媒介有効性を証明することを開示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
国際公開第2012/118492号は、実施例25として化合物AR-25、実施例30としてAR-30、及び実施例31としてAR-31を開示している。
【0013】
「薬学的に許容される塩」という用語は、生物学的に又はその他望ましくないものではない、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持する式(I)の化合物の塩を指す。塩は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸(特に塩酸)等の無機酸と、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等の有機酸で形成される。また、これらの塩は、遊離酸に無機塩基又は有機塩基を添加して調製してもよい。無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム塩等が含まれるがこれらに限定されない。有機塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリイミン樹脂等の塩が含まれるがこれらに限定されない。式(I)の化合物の特に薬学的に許容される塩としては、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。
【0014】
式(I)の化合物は、1つの不斉中心を含有し、光学的に純粋な鏡像異性体又は鏡像異性体の混合物、例えばラセミ体等の形態で存在することができる。
【0015】
Cahn-Ingold-Prelog則によれば、不斉炭素原子は、「R」又は「S」立体配置のものであり得る。
【0016】
また、本発明の一実施形態は、本明細書に記載される式(I)による化合物又はその薬学的に許容される塩、特に本明細書に記載される式(I)による化合物、より具体的には本明細書に記載される式(Ia)又は(Ib)の化合物である。
【0017】
本発明はまた、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩に関し、薬学的に許容される塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びクエン酸塩から選択され得る。
【0018】
また、本発明の一実施形態は、式(Ia)
による化合物である。
【0019】
また、本発明の一実施形態は、式(Ib)
による化合物である。
【0020】
本明細書に記載される式(Ia)及び(Ib)の化合物を製造するための方法も本発明の目的である。
【0021】
本発明の式(I)の化合物の調製は、逐次的又は収束的な合成経路で行うことができる。本発明の合成は、以下の一般的なスキームで示される。得られた生成物の反応及び精製を行うために必要な技能は、当業者に知られている。
【0022】
より
具体的には、式(I)の化合物は、以下に示す方法、実施例に示す方法、又は類似の方法によって製造することができる。個々の反応工程のための適切な反応条件は、当業者に知られている。反応順序は、スキーム1に表示されているものに限定されないが、出発原料及びそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序を自由に変更することができる。出発材料は、市販されているか、又は以下に示す方法に類似する方法、本明細書に引用された参考文献若しくは実施例に記載されている方法、又は当技術分野で知られている方法によって調製することができる。
スキーム1
【0023】
本発明における式(I)の化合物を官能基で誘導体化して、in vivoで親化合物に変換して戻すことができる誘導体を提供できることが、理解されるであろう。
【0024】
したがって、本発明はまた、本発明による化合物の調製のための
方法であって、式(B1)
の化合物と、式(B2)
の化合物との、塩基の存在下での反応を含む、
方法に関する。
【0025】
反応を溶媒中で簡便に行うことができる。溶媒は、例えばDMFであり得る。
【0026】
反応を塩基の存在下で簡便に行うことができる。塩基は、例えば炭酸セシウムであり得る。
【0027】
反応のための簡便な条件は、約30℃~約150℃、特に約50℃~約130℃、より具体的には約70℃~約120℃であり得る。簡便な条件は、およそ100℃で、約1時間~約48時間、特に約2時間~約20時間である。
【0028】
本発明はまた、本発明の方法に従って製造される場合の本発明による化合物に関する。
【0029】
本発明はまた、特に、以下のものに関する:
治療活性物質として使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩;
本明細書に記載される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩と、治療的に不活性な担体と、を含む、薬学的組成物;
がんの処置又は予防に使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩;
甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又は非小細胞肺がん(NSCLC)の処置又は予防に使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩;
甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又はNSCLCを処置又は予防するための、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用;
甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又はNSCLCを治療又は予防するための医薬を調製するための、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用;
がんを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書中に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法;及び
甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又はNSCLCを処置又は予防するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0030】
本発明の特定の実施形態は、がん、特にBRAF変異型駆動性がん、より具体的には甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又はNSCLCの治療的及び/又は予防的処置に使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0031】
本発明の特定の実施形態は、がん、特にBRAF変異型駆動性がん、より具体的には甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又はNSCLCの治療的及び/又は予防的処置のための医薬を製造するための、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0032】
本発明のある特定の実施形態は、本明細書に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物に関する。
【0033】
本発明の特定の実施形態は、がん、特にBRAF変異型駆動性がん、より具体的には甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又は非小細胞肺がん(NSCLC)の治療的及び/又は予防的処置のための方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することによる、方法に関する。
【0034】
本発明の特定の実施形態は、BRAF変異型駆動性がん、特に甲状腺がん、結腸直腸がん、脳がん、黒色腫又はNSCLCを有する患者の治療的及び/又は予防的処置における医薬として使用するための本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩であって、治療的及び/又は予防的処置が、前記患者におけるBRAF変異状態を判定すること、次いで、本明細書に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む、本明細書に記載される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0035】
本発明の特定の実施形態は、脳転移の治療的及び/又は予防的処置における医薬として使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0036】
さらに、本発明は、式(I)の化合物の対応する重水素化形態の置換基を、適用可能な場合は全て含む。
【0037】
さらに、本発明は、式(I)の化合物の対応するトリチウム形態の置換基を、適用可能な場合は全て含む。
【0038】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも1つの置換基が少なくとも1つの放射性同位体を含む、本明細書に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。放射性同位体の特定の例は、2H、3H、13C、14C、及び18Fである。
【0039】
さらに、本発明は、適用可能な場合、式(I)の化合物の全ての光学異性体、すなわち、ジアステレオ異性体、ジアステレオ異性混合物、ラセミ混合物、それらの全ての対応する鏡像異性体、及び/又は互変異性体、並びにそれらの溶媒和物を含む。
【0040】
所望であれば、本発明の化合物のラセミ混合物を分離して、個々の鏡像異性体を単離することができる。分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物にカップリングさせてジアステレオ異性混合物を形成し、続いて、分別再結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的方法によって個々のジアステレオマーを分離するような、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。
【0041】
一実施形態では、光学的に純粋な鏡像異性体が提供される場合、光学的に純粋な鏡像異性体とは、化合物が所望の異性体を90重量%超、特に所望の異性体を95重量%超、又はより具体的には所望の異性体を99重量%超含有することを意味し、該重量パーセントは、化合物の異性体の全重量を基準とする。キラル的に純粋な又はキラル濃縮された化合物は、キラル選択的合成によって、又は鏡像異性体の分離によって調製することができる。鏡像異性体の分離は、最終生成物で、又は代替的に適切な中間体に対して行うことができる。
【0042】
本発明の別の実施形態は、本発明の化合物と、治療的に不活性な担体、希釈剤又は賦形剤とを含有する薬学的組成物又は医薬、並びにこのような組成物及び医薬を調製するために本発明の化合物を使用する方法を提供する。一例では、式(I)の化合物は、生理学的に許容される担体、すなわち、生薬の投与形態に使用される用量及び濃度でレシピエントに対して毒性でない担体と、適切なpHと所望の純度で、周囲温度で混合することによって製剤化されてもよい。製剤のpHは、特定の用途及び化合物の濃度に主に依存するが、好ましくは約3~約8の範囲である。一例では、式(I)の化合物は、pH5の酢酸緩衝剤中で製剤化される。別の実施形態では、式(I)の化合物は無菌である。化合物は、例えば、固体若しくは非晶質組成物として、凍結乾燥製剤として、又は水溶液として保管され得る。
【0043】
組成物は、良質な医学のための原則と一致した様式で製剤化、投薬、及び投与される。これに関連して考慮すべき要因としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。
【0044】
また、本発明の一実施形態は、記載される方法のいずれか1つに従って製造された場合の、本明細書に記載の式(I)の化合物である。
【0045】
アッセイ手順
材料:
L-グルタミンを添加したDMEMフェノールレッド不含培地を(Thermo Fisher Scientific)から購入した。ウシ胎児血清(FBS)をVWRから購入した。Advanced ERK phospho-T202/Y204キット-10,000試験を、Cisbioカタログ番号64AERPEHから購入した。A375及びHCT116細胞を、元々ATCCから入手し、Rocheリポジトリによって保管した。384ウェルマイクロプレートは384ウェル(蓋付き、HiBase、小容量カタログ784-080)でありGreiner Bio-Oneから購入した。
【0046】
A375又はHCT116細胞におけるP-ERK決定のためのHTRFアッセイ
A375は、V600E変異BRAFを発現する細胞がんモデルであり、HCT116は、WT BRAFを発現する細胞がんモデルである。第1世代のBRAF阻害剤、例えばダブラフェニブは、V600E変異BRAF細胞(例えばA375等)の増殖を阻害する一方、WT BRAF細胞(例えば、HCT116等)の増殖を活性化するという点で、腫瘍細胞に対するパラドキシカルな効果を誘導する。ERK1、2リン酸化(MAPK経路のリン酸化カスケードの末端メンバー)は、MAPK経路の活性化状態の主な読み出しとして以後報告されている。アッセイの前に、A375及びHCT116細胞株を、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEM無フェノールレッド培地中で維持する。化合物処置の後、Thr202/Tyr204においてリン酸化されたときのERKタンパク質上の言及されたキット(Cisbioカタログ番号64AERPEH)において提供される2つの抗体の選択的結合によって誘導されるFRET蛍光シグナルを測定することによって、P-ERKレベルを決定する。簡潔に言えば、12μl培地/ウェル中の8000細胞/ウェルを384ウェルプレートに播種し、インキュベーター内に一晩放置し(5%CO2加湿雰囲気下、37℃で)、翌日、プレートを以下の最終薬物濃度で試験化合物、ダブラフェニブ及びPLX8394(後者の2つは対照として)を用いて二連で処置する:10μM-3μM-1μM-0.3μM-0.1μM-0.03μM-0.01μM-0.003μM-0.001μM、全てのウェルをDMSO正規化に供し、薬物インキュベーションを1時間行う。次いで、キットと共に供給された4×溶解緩衝液4μlをウェルに添加し、次いで、プレートを30秒間(300rcf)遠心分離し、プレートシェーカー上で室温で1時間インキュベートする。
【0047】
インキュベーションの最後に、4μL/ウェルの進行したP-ERK抗体溶液(製造者の指示に従って調製)を添加し、続いて4μL/ウェルのcriptate P-ERK抗体溶液(製造者の指示に従って調製)(Cisbioカタログ番号64AERPEH)を試験ウェルに添加する。
【0048】
適切なデータを可能にするために、正規化対照ウェルでは、以下の表に報告されている非薬物処置ウェルが、(製造業者の指示に従って)各プレートに常に含まれる。
【0049】
次いで、プレートを300rcfで30秒間遠心分離し、蒸発を防ぐために密封し、室温の暗所で一晩インキュベートする。
【0050】
次いで、プレートを分析し、蛍光発光値をPherastast FSX(BMG Labtech)装置によって665nM及び620nMで収集する。
【0051】
得られた蛍光値を式 比=シグナル(620nm)/シグナル(625nm)*10000に従って処理し、次いでブランク上の比の平均を全ての値に減算する。
【0052】
A375細胞(BRAF阻害)の場合、DMSOのみで処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を100%とみなし、10μMダブラフェニブで処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を0%とみなして、データを正規化する。正規化された点の平均をシグモイド曲線でフィッティングし、IC50を決定する。結果を表1~2及び
図1~3に示す。
【0053】
HCT116細胞(BRAF活性化)の場合、DMSOのみで処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を0%とみなし、最も高いシグナルを提供する濃度でダブラフェニブ処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を100%とみなして、データを正規化する。個々の点にシグモイド曲線又はベル形状曲線を当てはめ、ダブラフェニブ媒介性の最大活性化と比較した活性化のパーセンテージを決定する。EC50は、ダブラフェニブによって達成される最大値の50%に等しい活性化が得られる濃度である。結果を表2及び
図4~6に示す。
【0054】
活性化がダブラフェニブによって達成される最大値の50%に達しない場合、EC50計算は適用できない。
【0055】
ダブラフェニブからの最大パラドックス誘導効果のパーセンテージは、試験化合物がその最大P-ERKシグナルを誘導するパーセンテージを、試験した用量範囲内でダブラフェニブによって生成された最大シグナルのパーセンテージとして評価することによって決定される。
【0056】
脳浸透電位を評価するためのCSF K
p、uu測定 CSF K
p、uuは、脳脊髄液(CSF)中の濃度:非結合血漿曝露の比であり、K
p、uu値≧1は良好な脳浸透を示す。化合物実施例1について、マウス及びラットにおける単回経口投与試験、連続血漿及びCSF濃度(投与後24時間まで)をLC-MS/MSによって測定してCSF K
p、uuを計算した。ラット及びミニブタにおける複数の経口用量研究のため、Tmax(最後の投与の3時間後)に近似する血漿及びCSF濃度をLC-MS/MSによって測定し、CSF K
p、uuを計算するために使用した。
【0057】
頭蓋内移植A375-Luc
ルシフェラーゼを構成的に発現するA375 BRAF V600Eがん細胞を免疫無防備状態のマウスの頭蓋内に注射した。化合物実施例1による処置を頭蓋内注射から7日目に開始し、2週間継続した。異なる群を、それぞれ1mg/kg、5mg/kg及び20mg/kgの実施例1の毎日の経口投与に供した。結果を
図8に示す。
【0058】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、医薬として(例えば、医薬製剤の形態で)使用することができる。本発明の医薬製剤は、経口投与(例えば、錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠、硬質及び軟質ゼラチンカプセル、溶液、乳剤又は懸濁液の形態)等の内服投与、経鼻投与(例えば、鼻スプレーの形態)、直腸投与(例えば、坐剤の形態)、又は眼局所投与(例えば、溶液、軟膏、ゲル又は水溶性高分子挿入剤の形態)が可能である。しかしながら、投与は、筋肉内、静脈内、眼内等の非経口的に(例えば、滅菌注射液の形態で)行うこともできる。
【0059】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセル、注射液又は外用剤の製造のための薬学的に不活性な、無機又は有機アジュバントを用いて加工することができる。ラクトース、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等を、例えば、錠剤、ドラゼ及び硬質ゼラチンカプセル用のそのようなアジュバントとして、使用することができる。
【0060】
軟質ゼラチンカプセルに適したアジュバントとしては、例として、植物油、ワックス、油脂、半固形物、液体ポリオール等が挙げられる。
【0061】
溶液及びシロップ剤の製造に適したアジュバントは、例として、水、ポリオール、サッカロース、転化糖、グルコース等である。
【0062】
注射溶液のための適切なアジュバントは、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等である。
【0063】
坐剤のための適切なアジュバントは、例として、天然又は硬化した油、ワックス、油脂、半固体又は液体ポリオール等である。
【0064】
眼部外用剤形のための適切なアジュバントは、例として、シクロデキストリン、マンニトール、又は当該技術分野で知られている多くの他の担体及び賦形剤である。
【0065】
さらに、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、粘度増加物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤、又は酸化防止剤を含有することができる。本発明の医薬製剤は更に、他の治療上価値のある物質を含むことができる。
【0066】
投薬量は広範に変化させることができ、当然、各特定の場合における個々の要件に適合させる。一般に、経口投与の場合、体重1kgあたり約0.1mg~約20mg、好ましくは体重1kgあたり約0.5mg~約4mg(例えば、1人あたり約300mg)を1日量として、好ましくは1~3回に分けて個別に投与し、これは、適切であれば、例えば、同量で構成することができる。局所投与の場合、製剤は、0.001重量%~15重量%の医薬を含むことができ、0.1~25mgの間であり得る必要量は、1日あたりの単回投与でも、1週間あたりの単回投与でも、1日あたりの複数回の投与(2~4回)でも、1週間あたりの複数回の投与でもよい。ただし、これが示されている場合は、ここに記載されている上限又は下限を超える可能性があることは明らかである。
【0067】
薬学的組成物
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、例えば医薬製剤の形態で、治療活性物質として使用することができる。医薬製剤は、経口、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセル、溶液、エマルジョン、又は懸濁液の形態で投与することができる。しかしながら、投与はまた、例えば坐剤の形態で直腸に、又は、例えば注射液の形態で非経口的に行うこともできる。
【0068】
式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩を、医薬製剤の製造のために、薬学的に不活性な無機又は有機担体と共に加工することができる。ラクトース、コーンスターチ若しくはその誘導体、タルク、及びステアリン酸又はその塩等は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、及び硬質ゼラチンカプセルの担体として使用することができる。軟質ゼラチンカプセルに好適な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体及び液体ポリオール等である。しかしながら、活性物質の性質にもよるが、軟質ゼラチンカプセルの場合には通常、担体は必要とされない。溶液及びシロップ剤の製造に適した担体材料は例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油等である。坐剤に適した担体は、例えば、天然油又は硬化した油、ワックス、油脂、半液体又は液体ポリオール等である。
【0069】
さらに、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝液、マスキング剤、又は酸化防止剤等の、薬学的に許容される補助物質を含むことができる。本発明の医薬製剤は更に、他の治療上価値のある物質を含むことができる。
【0070】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び治療的に不活性な担体を含有する医薬もまた、本発明により提供され、その製造のための方法は、式(I)の1つ以上の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩、並びに所望により、1つ以上の他の治療上有用な物質を、1つ以上の治療的に不活性な担体と共に生薬投与形態とすることを含む。
【0071】
投与量は、広範囲内で変化させることができ、当然、それぞれの具体的な症例において個々の要件に対して調整されなければならない。経口投与の場合、成人の投与量は、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の対応する量で1日あたり約0.01mg~約1000mgまで変化させることができる。1日投与量は、単回用量又は分割用量で投与することができ、更に、必要であると判明した場合、上限を超えることもできる。
【0072】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するが、本発明の代表例に過ぎない。医薬製剤は、簡便に、約1~500mg、特に1~100mgの式(I)の化合物を含有する。本発明に係る組成物の実施例は、以下の通りである。
【0073】
実施例A
以下の組成の錠剤は、通常の方法で製造される。
【0074】
製造手順
1.材料1、2、3、及び4を混ぜ合わせ、精製水で造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な粉砕装置に通す。
4.材料5を加えて3分間混ぜ、適当なプレス機で圧縮する。
【0075】
【0076】
製造手順
1.材料1、2、及び3を適当なミキサーで30分ほど混ぜる。
2.材料4と5を加えて3分ほど混ぜる。
3.適切なカプセルに充填する。
【0077】
式(I)の化合物、ラクトース、及びコーンスターチを、先ずミキサー中で混合し、次いで粉砕機中で混合する。混合物をミキサーに戻し、そこにタルクを加えてよく混ぜ合わせる。この混合物は、機械によって適当なカプセル、例えば硬質ゼラチンカプセルに充填される。
実施例B-2
【0078】
【0079】
製造手順
式(I)の化合物を他の成分の温かい融解物に溶解し、混合物を適当なサイズの軟質ゼラチンカプセルに充填する。充填した軟質ゼラチンカプセルを、通常の手順に従って処理する。
【0080】
【0081】
製造手順
坐剤練剤をガラス又はスチール容器中で溶融し、充分に混合し、45℃に冷却する。次いで、これに式(I)の微粉末化合物を加え、完全に分散するまで撹拌する。混合物を好適な大きさの坐剤型に注ぎ、冷えるまで放置し、その後、坐剤を型から取り出し、ろう紙又は金属箔で個々に包装する。
【0082】
【0083】
製造手順
式(I)の化合物を、ポリエチレングリコール400と注射用水(一部)との混合物に溶解する。pHは酢酸により5.0に調整する。残量の水を加えて、体積を1.0mLに調整する。溶液を濾過し、適切な過量を用いてバイアルに充填し、滅菌する。
【0084】
実施例E
次の組成のサシェ剤(sachet)を製造する。
【0085】
製造手順
式(I)の化合物を、ラクトース、微結晶セルロース、及びカルボキシルメチルセルロースナトリウムと混合し、水中のポリビニルピロリドンの混合物で顆粒化する。顆粒にステアリン酸マグネシウム及び調味添加剤を混ぜ、サシェに充填する。
【0086】
実施例
略号
DCM=ジクロロメタン;DMF=ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;DRF=用量範囲設定;ESI=エレクトロスプレーイオン化;EtOAc=酢酸エチル;LC-MS/MS=液体クロマトグラフィー-MS/MS;MeOH=メタノール;MS=質量分析;rt=室温;P-gp=P-糖タンパク質;SFC=超臨界流体クロマトグラフィー。
【0087】
参照化合物AR-25、AR-30及びAR-31を、それぞれ、国際公開第2012/118492号に開示されている実施例25、実施例30及び実施例31の合成に従って調製した。
6-ヒドロキシ-3-メチル-キナゾリン-4-オン
【0088】
2-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸(10g、65.3mmol、当量:1.0)及びN-メチルホルムアミド(30g、29.9mL、503mmol、当量:7.7)を145℃で21時間45分間加熱し、次いで、室温に冷却した。反応混合物を50mLのH
2Oで希釈し、室温で20分間撹拌した。得られた沈殿物を
ろ取した。淡褐色固体を20mLの水で3回洗浄した。固体をトルエンに溶解し、
エバポレートした(3回)。固体を高真空下、40℃で一晩
減圧乾燥させて、標題化合物を淡褐色固体として得た(10.3g、収率89%)。MS(ESI)m/z:177.1[M+H]
+
3,6-ジフルオロ-2-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-ベンゾニトリル
【0089】
炭酸セシウム(3.22g、9.79mmol、当量:1.15)を、6-ヒドロキシ-3-メチルキナゾリン-4-オン(1500mg、8.51mmol、当量:1.0)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(35mL)の溶液に室温で加えた。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル(1.47g、1.08mL、9.37mmol、当量:1.1)を添加した。1時間後、反応物を氷上で冷却し、水(120mL)で希釈した。得られた固体を
ろ取し、氷水(100mL)及びヘプタン(100mL)で洗浄し、吸引乾燥した。固体をトルエンに溶解し、
エバポレートした(3回)、次いで、一晩
減圧乾燥させて、標題化合物を淡褐色固体(2.58g、収率97%)として得た。MS(ESI)m/z:314.1[M+H]
+
。
(3R)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド
【0090】
(R)-3-フルオロピロリジン塩酸塩(1.8g、14.3mmol、当量:1.2)を、ジオキサン(10mL)中の硫酸ジアミド(1.148g、11.9mmol、当量:1.0)及びトリエチルアミン(2.42g、3.33mL、23.9mmol、当量:2)の溶液に添加した。反応物を115℃で15.5時間撹拌し、室温に冷却し、
減圧濃縮した。残渣をDCMで希釈し、シリカゲル
と共にエバポレートして、カラムに移した。フラッシュクロマトグラフィ
ー(40gシリカ、80%EtOAc)による精製により標題化合物を白色結晶性固体として得た(1.82g、収率91%)。MS(ESI)m/z:169.1[M+H]
+
。
(3S)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド
【0091】
トリエチルアミン(304mg、419μl、3.01mmol、当量:2.0)を、ジオキサン(1.3mL)中の硫酸ジアミド(146mg、1.5mmol、当量:1.0)及び(S)-3-フルオロピロリジン塩酸塩(234mg、1.8mmol、当量:1.2)の懸濁液に添加した。反応物を密閉管中115℃で16時間35分間撹拌し、次いで、
減圧濃縮した。残渣をMeOHで希釈し、シリカゲル
と共にエバポレートして、カラムに移した。フラッシュクロマトグラフィ
ー(40gシリカ、0~8%MeOH/DCM)による精製で標題化合物を淡黄色固体として得た(193mg、収率75%)。MS(ESI)m/z:169.1[M+H]
+
。
(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド(実施例1)
【0092】
(R)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド(1.26g、7.51mmol、当量:2.1)及び炭酸セシウム(2.56g、7.87mmol、当量:2.2)を、アルゴン雰囲気下、乾燥DMF(10.2mL)に懸濁した。反応混合物を50℃で30分間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、3,6-ジフルオロ-2-((3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)オキシ)ベンゾニトリル(1.12g、3.58mmol、当量:1.0)のDMF(25.5mL)中の溶液を添加した。反応混合物を100℃で15時間撹拌し、次いで、
減圧濃縮した。残渣を飽和NH
4Cl(100mL)及びEtOAc(100mL)の水溶液に取った。相を分離し、水層を100mLのEtOAcで2回更に抽出した。合わせた有機層を水(200mL)及びブライン(200mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、
濾過し、
減圧濃縮した。水層をEtOAc(100mLで3回)で逆抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(200mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、
濾過し、減圧濃縮した。残渣をDCM及びMeOHで希釈し、シリカ上に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ
ー(120g、0.5~2%MeOH/DCM)による精製によって灰白色の固体が得られ、これを超音波処理しながら1:1ヘプタン/DCM(20mL)で
粉砕し、次いで、
減圧乾燥させて、標題化合物を無色固体(1.087g、収率66%)として得た。MS(ESI)m/z:426.2[M+H]
+
。キラルSFC:RT=4.594分[Chiralpak ICカラム、4.6×250mm、粒径5μm(Daicel);8分間にわたり0.2%NHEt
2を含有する20~40%MeOHの勾配;流量:2.5mL/分;140バールの背圧]。
(3S)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド(実施例2)
【0093】
(S)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド(181mg、1.08mmol、当量:2.1)をDMF(1.6ml)に溶解した。室温で、炭酸セシウム(368mg、1.13mmol、当量:2.2)を添加し、反応混合物を50℃で30分間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、3,6-ジフルオロ-2-((3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)オキシ)ベンゾニトリル(160.8mg、513μmol、当量:1.0)を含むDMF(4mL)の溶液を添加した。反応混合物を105℃で2時間50分間撹拌し、次いで、減圧濃縮した。残渣をDCMに取り、飽和NH4Cl水溶液で洗浄した。水層をDCMで2回逆抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣(褐色油)をDCMで希釈し、カラムに移した。フラッシュクロマトグラフィー(80 g、DCM中0~100%EtOAc)による精製によって固体が得られ、これをSFCによって更に精製すると、標題化合物が淡黄色固体(119mg、収率50%)として得られた。MS(ESI)m/z:426.2[M+H]+
。キラルSFC:RT=4.411分[Chiralpak ICカラム、4.6×250mm、粒径5μm(Daicel);8分間にわたり0.2%NHEt2を含有する20~40%MeOHの勾配;流量:2.5mL/分;140バールの背圧]。