(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】樹木表面切削用工具
(51)【国際特許分類】
A01G 7/06 20060101AFI20220720BHJP
B26B 27/00 20060101ALI20220720BHJP
B27F 1/00 20060101ALI20220720BHJP
B27G 17/02 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A01G7/06 Z
B26B27/00 A
B27F1/00 C
B27G17/02 Z
(21)【出願番号】P 2022014283
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2022-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年11月30日に長野県北佐久群立科町牛鹿において販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年1月18日に長野県下高井郡山ノ内町において販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年1月29日に長野県佐久市田口において販売
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591055975
【氏名又は名称】水戸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 恒一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第030579(JP,Z1)
【文献】実開平05-082503(JP,U)
【文献】特開平10-035192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/06
B26B 27/00
B27F 1/00
B27G 17/02
B26B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の表面に溝を形成する切削用の工具であって、
柱状の柄と、
前記柄に対して固定されており、前記柄の軸方向に対して平行でない方向に突出した
V字状の刃と、を備え、
前記刃は、平行でない部分を有する
ことを特徴とする樹木表面切削用工具。
【請求項2】
請求項1
に記載の樹木表面切削用工具において、
前記刃は、前記柄の一方の端部側に形成されており、
前記刃は、前記溝を形成するための刃部が、前記刃が設けられた側の前記柄の端部側とは反対側に形成されている
ことを特徴とする樹木表面切削用工具。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の樹木表面切削用工具において、
前記柄は、前記刃が固定された側とは反対側の端部に、大径部が形成されている
ことを特徴とする樹木表面切削用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木表面切削用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物において、罫書線に沿った切込みの形成及び罫書線の内側部分の削り取りの双方の機能を兼ね備え、この切込みの形成及び削り取りを容易に行うことが可能な電動工具用刃物の一例として、特許文献1には、以下のような記載がある。
【0003】
電動工具用刃物は、電動工具本体の作動部に着脱可能に取り付けられる固定部と、これに連結され、被切削物を切削するための刃部を有する刃物本体とから構成される。刃物本体の先端部は、上面及び下面を有している。これ等の面のうちの少なくとも上面は、作動部の往復運動の方向に対して直交する方向に伸びる先端縁と、これと直交する方向にそれぞれ伸びる一対の側縁と、先端縁の両端を一対の側縁のそれぞれの先端部に連結する一対の円弧状角部とを有して、略T字形状を露呈している。先端縁、側縁及び円弧状角部は、これ等が刃部を形成するように、刃物本体の先端部における下面の周縁にテーパー面を介して連続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、果樹園では、樹木内部への病原菌の侵入を完全に防止することは不可能であり、果物の生産高は、樹木内部に侵入した病原菌を除去するための処置によって大きな影響を受けることになる。
【0006】
例えば、リンゴの樹木は腐らん病に侵され易く、その処置方法の1つとして、樹木の患部を外科的に削り取る方法が採用されている。
【0007】
従来は、上述した患部の除去は、片刃の手工具等が用いられていた。また、このような手工具に変えて、特許文献1に記載されたような電動工具本体の作動部に着脱可能に取り付けられる刃物を用いることが提案されている。
【0008】
手工具を用いた患部の除去の流れは、おおむね以下のような手順である。
【0009】
先ず、手工具の刃先を用いて、樹木の患部の周囲に形成した罫書線に沿って、患部の周囲に切込みを形成する。次いで、刃先及び側刃を用いて、切込みの内側の樹皮部を患部と共に削り取る。このようにして患部を含む樹皮部の必要最小限の部分を除去し、その部分に木質部を露呈させ、露呈した木質部及び樹皮部の端面に、所定の治療剤を塗布して、治療が完了する。
【0010】
ここで、上述した罫書線に沿った切込みの形成に手間を要しており、改善が求められていた。
【0011】
これに対し、手工具の代わりに上述した特許文献1に記載されたような刃物を電動工具に取り付けて罫書線を形成することが考えられる。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されたような刃物では電動工具が必要であり、容易に調達できない、との課題がある。
【0013】
本発明は、樹木の表面に対して溝の形成作業を従来に比べて容易に行うことが可能な樹木表面切削用工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、樹木の表面に溝を形成する切削用の工具であって、柱状の柄と、前記柄に対して固定されており、前記柄の軸方向に対して平行でない方向に突出したV字状の刃と、を備え、前記刃は、平行でない部分を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹木の表面に対して溝の形成作業を従来に比べて容易に行うことができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の樹木表面切削用工具の一実施形態の概略構成を示す側面図である。
【
図2】本発明の樹木表面切削用工具の一実施形態の概略構成を異なる角度から示した様子を示す側面図である。
【
図3】本発明の樹木表面切削用工具の一実施形態の概略構成を更に異なる角度から示した様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の樹木表面切削用工具の実施例について
図1乃至
図3を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0018】
図1は本発明の樹木表面切削用工具の概略構成を示す側面図、
図2は
図1とは異なる角度から見たときの様子を示す側面図、
図3は
図1および
図2とは異なる角度から見たときの様子を示す側面図である。
【0019】
図1乃至
図3に示す樹木表面切削用工具1は、樹木の表面に溝を形成する切削用の工具であり、概ね、柄10および刃20から構成される。
【0020】
図1および
図2に示すように、柄10は木製の円柱状物体であり、その端部の一方に大径部12を、大径部12側とは反対側の端部付近に小径部14が形成されている。なお、柄10の材質は木製に限定されず金属材料等の他の素材を用いることができる。また、形状も円柱状である必要は無く、角柱状などとすることができる。柄10は、金属などの強度のある材質により構成される場合、パイプ状にすることができる。
【0021】
図1に示すように、大径部12は刃20が固定される側とは反対側の端部に設けられており、農作業従事者が柄10を握って本発明の樹木表面切削用工具1を用いて溝を形成する際にストッパとして働き、樹木表面切削用工具1が手から滑り抜けることを妨げる役割を有している。なお、大径部12は径方向一方側に突出している必要は無く、360度いずれの方向にも突出していてもよく、特に限定されない。
【0022】
図2に示すように、小径部14は、後述する刃20の刃土台部22を固定するために円柱状の円弧の一部分が削られた部分であり、柄10の一方の端部側のうち、180度対象の位置に2カ所形成されている。
【0023】
図1および
図3に示すように、刃20は、平行でない部分を有している。具体的には、いわゆる略V字の形状をしており、刃土台部22において円柱状の柄10の一部分に設けられた小径部14に対して2組のボルト30およびナット32により固定されている。そのために、柄10の小径部14には直径方向に貫通した孔が2個設けられている(図示の都合上省略)。
【0024】
なお、刃20は2組のボルト30およびナット32により柄10に対して固定されている必要は無く、1組のボルト30およびナット32により固定されていたり、3組以上のボルト30およびナット32により固定されていたりする形態とできるが、強固に柄10に対して固定するとともに、必要以上に固定する必要がないことから2組であることが望ましい。
【0025】
また、刃20の固定方法はボルト30およびナット32である必要は無く、溶接等の公知の様々な方法で固定することができる。
【0026】
図1および
図2に示すように、刃20は、樹木の表面に溝を形成するための刃部21が、刃20が設けられた側の柄10の端部側とは反対側となる柄10の持ち手部分となる側(すなわち大径部12側)に形成されており、これにより農作業従事者は本実施例の樹木表面切削用工具1を溝を形成したい樹木の表面に押し付けた状態で下に引くことで略V字状の溝を一回の切削作業で形成することができるようになっている。
【0027】
図1に示すように、刃20は、樹木表面切削用工具1を長手方向から見たときに、柄10の軸方向に対して平行でない方向に突出しており、具体的には柄10の軸に対して80度傾けて固定されている。
【0028】
樹木表面切削用工具1を長手方向から見たときの柄10に対する固定角度は80度である必要はなく、0度より大きく90度以下であればよいが、ある程度傾いていること、および直角でないことにより溝が形成しやすい、との効果が得られることから、45度以上85度以下で固定されていることが望ましい。
【0029】
また、刃20は、柄10の直径と略同じ長さだけ柄10の外径部分から突出している。なお、突出する長さもこれに限定されないが、略直径程度突出していることにより、持ち運びの際に刃20が邪魔にならないとともに、必要十分な深さの溝を一回の切削作業で形成できることから、略直径程度突出していることが望ましい。
【0030】
更に、刃20は、
図1に示すように、樹木表面切削用工具1を長手方向から見たときに、柄10の外径部分から突出している部分が略L字状の形状をしている。これにより、開いた部分から樹木の削りカスが樹木表面切削用工具1外にスムーズに排出される。
【0031】
図3に示す刃20の開度θは、本実施例では30度としている。しかしながらV字状の開度θは30度である必要は無く、特に限定されない。
【0032】
なお、刃20は、V字状に限定されず、U字状、略コ字形状などの他の形状とすることができる。また、2枚の直線状、あるいはブーメラン状の片刃を略V字状になるように柄10に対して固定する形態とすることができる。
【0033】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0034】
上述した本実施例の樹木表面切削用工具1は、樹木の表面に溝を形成する切削用の工具であって、柱状の柄10と、柄10に対して固定されており、柄10の軸方向に対して平行でない方向に突出した刃20と、を備え、刃20は、平行でない部分を有する。
【0035】
このように、平行でない部分を有する刃20によって、1回の切り込み作業で溝を形成することができるため、作業効率が大幅に改善し、従来に比べて樹木の表面に対して溝の形成作業が格段に容易となる。特に、腐らん病に侵されたリンゴの樹木の表面などに対する溝の形成に好適な工具といえる。
【0036】
また、刃20はV字状であるため、形状が良好な溝を一回の作業で形成でき、作業性の更なる改善を図ることができる。
【0037】
更に、刃20は、柄10の一方の端部側に形成されており、刃20は、溝を形成するための刃部21が、刃20が設けられた側の柄10の端部側とは反対側に形成されていることで、切削作業時の農作業従事者の負担を軽減することができる。
【0038】
また、柄10は、刃20が固定された側とは反対側の端部に、大径部12が形成されていることにより、樹木表面切削用工具1を把持しやすくなり、また溝の形成の際に樹木表面切削用工具1が抜け落ちることも抑制でき、作業性をさらに改善することができる。
【0039】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1…樹木表面切削用工具
10…柄
12…大径部
14…小径部
20…刃
21…刃部
22…刃土台部
30…ボルト
32…ナット
【要約】
【課題】樹木の表面に対して溝の形成作業を従来に比べて容易に行うことが可能な樹木表面切削用工具を提供する。
【解決手段】樹木表面切削用工具1は、樹木の表面に溝を形成する切削用の工具であって、柱上の柄10と、柄10に対して固定されており、柄10の軸方向に対して平行でない方向に突出した刃20と、を備え、刃20は、平行でない部分を有することを特徴とする。
【選択図】
図1