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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】熱回収システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 27/02 20060101AFI20220721BHJP
   F01D 25/10 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F01K27/02 D
F01D25/10 Z
F01K27/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018235453
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097899
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】599019269
【氏名又は名称】株式会社トヨタエナジーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】松原 周
(72)【発明者】
【氏名】脇田 恭之
(72)【発明者】
【氏名】森本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】盛 昭雄
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072124(JP,A)
【文献】特開平05-321607(JP,A)
【文献】特開2018-017204(JP,A)
【文献】米国特許第04601173(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 27/02
F01D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から第一流体が流れる一次側流路と、前記一次側流路を流れる前記第一流体から第二流体に熱交換を行う熱交換器と、前記第二流体が流れる二次側流路と、前記二次側流路の前記第二流体により発電を行う発電装置と、前記発電装置を通過した前記第二流体を冷却して凝縮する凝縮器と、を備え、
前記一次側流路は、前記第一流体が通過する内側流路部と、当該内側流路部の周囲に設けられた外側流路部と、を含む多重配管を有し、
前記外側流路部に、前記熱源、別の熱源、及び前記凝縮器の内の少なくとも一つである廃熱出力部から出る熱により得られた温風を供給する、熱回収システム。
【請求項2】
前記一次側流路は、前記熱源から前記熱交換器へ前記第一流体を流すための第一配管を有し、
前記第一配管が前記多重配管を有し、前記廃熱出力部から前記多重配管の前記外側流路部へ、前記温風を供給する接続配管を備えている、請求項1に記載の熱回収システム。
【請求項3】
前記多重配管は、断熱材が外周に設けられ内部が前記内側流路部となる主配管と、前記主配管の外周側に設けられ前記外側流路部となる断面環状の流路を構成する副配管と、を有する、請求項1又は2に記載の熱回収システム。
【請求項4】
前記廃熱出力部は、前記第二流体を冷却して凝縮する凝縮器であり、
前記第二流体の冷却は、ファンによる空冷により行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項5】
前記廃熱出力部と前記多重配管の前記外側流路部とを繋ぎ当該廃熱出力部から前記温風を供給するための接続配管と、
前記接続配管から前記外側流路部への前記温風の流入及び遮断を行うための第一バルブと、
前記外側流路部と繋がり前記温風を排出する排出配管と、
前記外側流路部から前記排出配管への前記温風の流出及び遮断を行うための第二バルブと、
を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項6】
前記多重配管は、断熱材が外周に設けられ内部が前記内側流路部となる主配管と、前記主配管の外周側に設けられ前記外側流路部となる断面環状の流路を構成する副配管と、前記副配管の外周側に設けられ断面環状の真空空間を構成する外配管と、を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温水又は蒸気を熱源として用い、低沸点である熱媒体を加熱し蒸発させ発電するバイナリー発電が知られている。バイナリー発電は、比較的低温の廃熱を有効利用でき、例えば地熱発電などでも活用されている。
【0003】
近年、例えば工場や設備などで出される廃熱をバイナリー発電に用いる試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-129059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は、金属製部品を熱処理(焼入れ処理)するための熱処理装置90に、バイナリー発電ユニット91(以下、「発電ユニット91」と称する。)を適用した設備の説明図である。この設備は、熱処理装置90が備える油槽92と、発電ユニット91とが配管によって接続されている。油槽92には、加熱された処理品を冷却する冷却液99が溜められている。発電ユニット91は、熱交換器(蒸発器)93、膨張器94を有する発電装置95、及び、凝縮器96等を有する。油槽92と熱交換器93とが一次側の配管97により接続され、熱交換器93と膨張器94とが二次側の配管98により接続されている。
【0006】
熱処理装置90によって加熱された処理品は、油槽92の冷却液99に浸されることで冷却され、熱処理(焼入れ処理)が行われる。この熱処理により、冷却液99の温度が上昇する。温度が上昇した冷却液99は一次側の配管97を流れ、この冷却液99の熱が熱交換器93において二次側の熱媒体100に伝えられる(熱交換される)。熱交換により気化した熱媒体100が二次側の配管98を通じて膨張器94に入力され、発電が行われる。膨張器94を通過した熱媒体100は、凝縮器96に流れ、液化し、熱交換器93に戻る。
【0007】
油槽92から熱交換器93へと一次側の配管97を通じて冷却液99が送られる間、温度上昇した冷却液99の熱が周囲へ放出される。熱の放出を抑制するために、一次側の配管97は断熱材により覆われている。一次側の配管97の周囲の外部温度は約20℃(常温)であるのに対して、一次側の配管97を流れる冷却液99の温度は、例えば120~130℃程度であり、これらの温度差は大きい。このため、断熱材が設けられているにしても、一次側の配管97を冷却液99が流れる間に、冷却液99の温度が低下する。つまり、冷却液18の熱エネルギーが、一次側の配管97における放熱によって減少している。
【0008】
一次側の配管97を流れる冷却液(第一流体)99の温度は、発電装置95における発電効率に大きな影響を与える。そこで、本発明は、第一流体の温度低下を抑制し、発電効率を高めることが可能となる熱回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱回収システムは、熱源から第一流体が流れる一次側流路と、前記一次側流路を流れる前記第一流体から第二流体に熱交換を行う熱交換器と、前記第二流体が流れる二次側流路と、前記二次側流路の前記第二流体により発電を行う発電装置と、前記発電装置を通過した前記第二流体を冷却して凝縮する凝縮器と、を備え、前記一次側流路は、前記第一流体が通過する内側流路部と、当該内側流路部の周囲に設けられた外側流路部と、を含む多重配管を有し、前記外側流路部に、前記熱源、別の熱源、及び前記凝縮器の内の少なくとも一つである廃熱出力部から出る熱により得られた温風を供給する。
【0010】
この熱回収システムによれば、従来では廃熱として棄てていたエネルギーを再利用することができる。つまり、前記廃熱出力部から出る熱により得られた温風を、多重配管の外側流路部に供給することで、多重配管の内側流路部を流れる第一流体の温度低下を抑制することができる。この結果、第二流体を用いた発電の効率を高めることが可能となる。
【0011】
また、好ましくは、前記一次側流路は、前記熱源から前記熱交換器へ前記第一流体を流すための第一配管を有し、前記第一配管が前記多重配管を有し、前記廃熱出力部から前記多重配管の前記外側流路部へ、前記温風を供給する接続配管を備えている。
この構成によれば、第一配管を通じて熱交換器へ流れる第一流体の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0012】
また、好ましくは、前記多重配管は、断熱材が外周に設けられ内部が前記内側流路部となる主配管と、前記主配管の外周側に設けられ前記外側流路部となる断面環状の流路を構成する副配管と、を有する。
この構成によれば、第一流体が流れる内側流路部(主配管)の外周側に、温風が流れる外側流路部(副配管)が設けられた二重配管の構成となる。第一流体の温度低下を抑制する機能を高めることが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、前記廃熱出力部は、前記第二流体を冷却して凝縮する凝縮器であり、前記第二流体の冷却は、ファンによる空冷により行われる。
この場合、ファンにより第二流体を凝縮させると共に、流速を有する温風が生成され、温風がそのまま一次側流路に供給される。
【0014】
また、好ましくは、前記熱回収システムは、更に、前記廃熱出力部と前記多重配管の前記外側流路部とを繋ぎ当該廃熱出力部から前記温風を供給するための接続配管と、前記接続配管から前記外側流路部への前記温風の流入及び遮断を行うための第一バルブと、前記外側流路部と繋がり前記温風を排出する排出配管と、前記外側流路部から前記排出配管への前記温風の流出及び遮断を行うための第二バルブと、を備える。
この場合、第二バルブを閉じて排出配管からの温風の流出を遮断すると、外側流路部に温風が滞留し、所定時間について外側流路部の温度をより高くすることが可能となる。
【0015】
また、好ましくは、前記多重配管は、断熱材が外周に設けられ内部が前記内側流路部となる主配管と、前記主配管の外周側に設けられ前記外側流路部となる断面環状の流路を構成する副配管と、前記副配管の外周側に設けられ断面環状の真空空間を構成する外配管と、を有する。
この構成によれば、第一流体が流れる内側流路部(主配管)の外周側に、温風が流れる外側流路部(副配管)が設けられ、更にその外周に真空空間が設けられた三重配管の構成となる。第一流体の温度低下を抑制する機能をより一層高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第一流体の温度低下を抑制し、発電効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】熱回収システムの一例を示す概略構成図である。
図2】多重配管の一例を示す横断面図である。
図3】多重配管の一例を示す縦断面図である。
図4】多重配管の変形例を示す横断面図である。
図5】凝縮器、接続配管、一次側流路、及びその周囲についての概略構成を示す説明図である。
図6】熱処理装置にバイナリー発電ユニットを適用した従来の設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔熱回収システムの構成について〕
図1は、熱回収システムの一例を示す概略構成図である。本実施形態の熱回収システム10の概略を説明する。熱回収システム10は、金属製部品を熱処理するための熱処理装置12の廃熱を利用して、発電ユニット(バイナリー発電ユニット)14によって発電を行うシステムである。前記金属製部品の例としては、転がり軸受の軌道輪、軸、ピンなどの機械部品である。熱処理としては焼入れ処理である。熱処理のために、加熱された金属製部品7(以下、「処理品7」と称する。)は、熱処理装置12が備える油槽16の冷却液(焼入れ油)18に浸され、冷却される。本実施形態では、複数の処理品7がカゴ8に収容され、カゴ8がアクチュエータ9によって上下移動する。カゴ8が降下した状態で、処理品7は冷却液18に浸された状態となり、冷却される。
【0019】
加熱された処理品7が冷却液18に浸されることで、冷却液18の温度が上昇する。そこで、冷却液18の熱が発電ユニット14による発電に用いられる。つまり、油槽16が熱源として機能し、冷却液18が一次側の熱媒体(第一流体)となる。冷却液18の熱が、発電ユニット14の熱交換器20によって二次側の熱媒体(第二流体)19に伝達され、発電装置22が発電を行う。
【0020】
熱回収システム10の具体的構成について説明する。図1に示す熱回収システム10は、処理品7を熱処理(焼入れ処理)するための熱処理装置12に、発電ユニット(バイナリー発電ユニット)14が適用されて構成されている。
【0021】
熱処理装置12は、処理品7の進行方向の上流側(図1では左側)から、第一パージ室81、第一予熱室82、第二予熱室83、浸炭・拡散室84、降温室85、均熱室86、焼入れ室87、及び第二パージ室88を備える。焼入れ室87に油槽16が設けられている。
【0022】
発電ユニット14は、一次側流路31、熱交換器(蒸発器)20、二次側流路32、発電装置22、及び凝縮器24を備える。
【0023】
一次側流路31には、熱源である油槽16側から冷却液18が流れる。具体的に説明すると、一次側流路31は、第一配管40と第二配管42とを有する。第一配管40は、熱源である油槽16と熱交換器20とを接続し、第一配管40には、油槽16から熱交換器20へ冷却液18が流れる。第二配管42は、熱交換器20と油槽16とを接続し、第二配管42には、熱交換器20から油槽16へ冷却液18が流れる。後に説明するが、第一配管40は、複数の独立した流路を長手方向に有する多重配管50を備えている。多重配管50は、第一配管40の一部であってもよいが、本実施形態では、第一配管40の全てが多重配管50により構成されている。このように、一次側流路31は多重配管50を有する。
【0024】
熱交換器20は、一次側流路31(第一配管40)を流れる冷却液18から二次側の熱媒体19に熱交換を行う。第一配管40を流れる冷却液18の温度は、例えば、120~130℃程度である。二次側の熱媒体19は、比較的低沸点であり、様々な流体を採用できるが、その一例として代替フロン(HFC245fa)である。熱交換器20において、冷却液18の熱が二次側の熱媒体19に伝達され、熱媒体19は気化する。なお、冷却液18の熱が熱媒体19に奪われることで、冷却液18は冷却され、油槽16に戻る。
【0025】
熱交換器20において気化した熱媒体19は二次側流路32を流れる。二次側流路32は、ループする配管により構成されている。二次側流路32の各位置に、熱交換器20、発電装置22、凝縮器24等が設けられている。
【0026】
発電装置22は、膨張器(スクロール膨張器)26を有する。熱交換器20から膨張器26に入力された二次側の熱媒体19により発電が行われる。発電装置22(膨張器26)を通過した熱媒体19が凝縮器24に入力される。発電装置22を通過した熱媒体19は、例えば、常温よりも30~40℃程度高く、まだ気体の状態にある。凝縮器24で冷却されることで熱媒体19は液化する。液化した熱媒体19は、熱交換器20へと流れ、冷却液18との間で熱交換が行われる。
【0027】
前記のとおり、凝縮器24において、二次側の熱媒体19は冷却され液化する。熱媒体19は、例えば常温程度に冷却される。本実施形態の凝縮器24による熱媒体19の冷却方式は、ファンによる空冷式である。凝縮器24には、接続配管44の一端45側が接続されている。凝縮器24において、熱媒体19が有していた熱は、周囲のエアに伝達される。周囲のエアは温風となり、接続配管44に取り込まれ、接続配管44の他端46側へと流れる。凝縮器24から出る熱により得られる温風の温度は、一次側流路31の周囲温度(外気:常温)よりも高い。接続配管44の他端46は、一次側流路31が有する多重配管50の(後述する)外側流路部36(図2及び図3参照)に接続されている。
【0028】
多重配管50について説明する。図2は、多重配管50の一例(概略)を示す横断面図である。図3は、多重配管50の一例(概略)を示す縦断面図である。多重配管50は、断熱材54が外周に設けられた主配管52と、主配管52の外周側に設けられている副配管56とを有する。主配管52及び副配管56は例えば金属製のパイプにより構成されている。断熱材54は主配管52をその全周にわたって覆っている。断熱材54の外周面と副配管56との間に横断面環状となる流路が構成されている。本実施形態では、副配管56の外周に第二の断熱材58が設けられている。断熱材54,58は、例えばグラスウールによるものである。
【0029】
主配管52の内部が、冷却液18の流れる内側流路部34となる。図3に示すように、凝縮器24から延びて設けられている接続配管44が外側流路部36と繋がっている。副配管56の内周側である前記横断面環状の流路が、外側流路部36となる。外側流路部36には、接続配管44を通過した前記温風が流れる。多重配管50には、排出配管48が接続されている。排出配管48は外側流路部36と繋がっていて、排出配管48から前記温風が排出される。
【0030】
接続配管44の他端46側には、第一バルブ61が設けられている。第一バルブ61が開状態で接続配管44から外側流路部36へ温風が流入し、閉状態で接続配管44から外側流路部36への温風の流入が遮断される。排出配管48には、第二バルブ62が設けられている。第二バルブ62が、開状態で外側流路部36から外部へ温風が流出し、閉状態で外側流路部36から外部への温風の流出が遮断される。
【0031】
以上のように、多重配管50は、冷却液18が通過する内側流路部34と、内側流路部34の周囲に設けられた外側流路部36とを含む。外側流路部36には、凝縮器24から出る熱により得られ接続配管44を流れた温風が通過する。
【0032】
図4は、多重配管50の変形例を示す横断面図である。図4に示す多重配管50は、断熱材54が外周に設けられている主配管52と、主配管52の外周側に設けられている副配管56と、副配管56の外周側に設けられている外配管60とを有する。図2に示す形態と同様に、主配管52の内部が内側流路部34となる。副配管56は、断熱材54と半径方向に離れて設けられていて、外側流路部36となる横断面環状の流路を構成する。副配管56の外周側に第二の断熱材58が外周に設けられている。外配管60は、第二の断熱材58と半径方向に離れて設けられていて、外配管60と断熱材58との間に横断面環状の密閉空間が構成される。この密閉空間は真空空間59となっている。
【0033】
図5は、凝縮器24、接続配管44、一次側流路31、及びその周囲についての概略構成を示す説明図である。本実施形態では、前記のとおり、一次側流路31の第一配管40が多重配管50を有する。凝縮器24と多重配管50の外側流路部36(図2及び図3参照)とが、接続配管44により接続されている。凝縮器24から供給される温風が、接続配管44を流れ、外側流路部36に供給される。
【0034】
図5に示す接続配管44は、凝縮器24と繋がる主接続管64と、主接続管64から分岐する枝管65,66とを有する。一方の枝管65は、多重配管50の下流側(熱交換器20側)と繋がっていて、他方の枝管66は、多重配管50の上流側(油槽16側)と繋がっている。そして、多重配管50の中央側の途中部に排出配管48が繋がっている。この構成の場合、凝縮器24から主接続管64を通じて流れた温風が、枝管65,66それぞれを通過し、多重配管50の外側流路部36に流入する。外側流路部36に流入した温風は、多重配管50の長手方向に沿って流れ、排出配管48から排出される。
【0035】
接続配管44は図5に示す構成以外であってもよい。例えば、接続配管44は図5に示すような分岐構造を有さず、そのまま多重配管50の上流側(油槽16側)と繋がっていてもよい。この場合、多重配管50の下流側(熱交換器20側)に排出配管48が接続される。または、接続配管44は分岐構造を有さず、そのまま多重配管50の下流側(熱交換器20側)と繋がっていてもよい。この場合、多重配管50の上流側(油槽16側)に排出配管48が接続される。
【0036】
以上のように、本実施形態の熱回収システム10は(図1参照)、熱源である油槽16から冷却液18が流れる一次側流路31と、熱交換器20と、二次側の熱媒体19が流れる二次側流路32と、発電装置22と、凝縮器24とを備える。熱交換器20は、一次側流路31を流れる冷却液18から二次側の熱媒体19に熱交換を行う。発電装置22は、二次側流路32の熱媒体19により発電を行う。発電装置22(膨張器26)を通過した熱媒体19が凝縮器24に入力され、周囲のエアと熱交換が行われる。一次側流路31は、多重配管50を有する。多重配管50は、図2及び図3図4)に示すように、冷却液18が通過する内側流路部34と、内側流路部34の周囲に設けられた外側流路部36とを含む。外側流路部36には、凝縮器24から出る熱により得られた温風が通過する。
【0037】
この熱回収システム10によれば、従来では廃熱として棄てていたエネルギー、つまり、凝縮器24から出る熱エネルギーを再利用することができる。つまり、凝縮器24から出る熱により得られた温風を、多重配管50の外側流路部36に供給することで、多重配管50の内側流路部34を流れる冷却液18の放熱による温度低下を抑制することができる。冷却液18から二次側の熱媒体19へより高い熱効率で熱交換を行うことが可能となる。この結果、熱媒体19を用いた発電(バイナリー発電)の効率を高めることが可能となる。
【0038】
本実施形態では、図5に示すように、一次側流路31は、油槽16から熱交換器20へ冷却液18を流すための第一配管40と、熱交換器20から油槽16へ冷却液18を流すための第二配管42とを有する。第一配管40が多重配管50を有し、凝縮器24と多重配管50の外側流路部36とが接続配管44により接続されている。接続配管44を通じて外側流路部36に供給された温風により、内側流路部34を流れる冷却液18の保温効果を高めることができる。このため、第一配管40を通じて熱交換器20へ流れる冷却液18の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0039】
本実施形態の多重配管50は、図2及び図3に示すように、断熱材54が外周に設けられた主配管52と、その外周側に設けられ内側に外側流路部36となる断面環状の流路を構成する副配管56とを有する。つまり、多重配管50は、冷却液18が流れる内側流路部34(主配管52)の外周側に、温風が流れる外側流路部36(副配管56)が設けられた二重配管の構成(二重管構造)となる。
【0040】
図4に示すように、変形例として多重配管50は三重配管(三重管構造)であってもよい。つまり、多重配管50は、中心側から順に、主配管52と、副配管56と、外配管60とを有する。主配管52は、断熱材54が外周に設けられていて、内部が内側流路部34となる。副配管56は、主配管52の外周側に設けられていて、主配管52との間に外側流路部36となる断面環状の流路を構成する。外配管60は、副配管56の外周側に設けられていて、断面環状の真空空間59を構成する。この変形例によれば、冷却液18が流れる内側流路部34(主配管52)の外周側に、温風が流れる外側流路部36(副配管56)が設けられ、更にその外周に真空空間59が設けられた構成となる。このため、冷却液18の温度低下を抑制する機能をより一層高めることが可能となる。
【0041】
図5に示すように、凝縮器24は、二次側の熱媒体19を冷却して凝縮する。本実施形態では、凝縮器24による熱媒体19の冷却方式は、ファンによる空冷式である。このため、前記ファンにより熱媒体19を凝縮させると共に、流速を有する温風が生成される。このため、この温風がそのまま接続配管44を通じて一次側流路31(第一配管40の多重配管50)に供給される。
【0042】
図5に示すように、本実施形態の熱回収システム10は、更に、接続配管44と、第一バルブ61と、排出配管48と、第二バルブ62とを備える。接続配管44は、凝縮器24と多重配管50の外側流路部36とを繋ぎ、接続配管44には凝縮器24からの温風が流れる。第一バルブ61は、開閉動作することで、接続配管44から外側流路部36への温風の流入及び流入遮断を行う機能を有する。排出配管48は、外側流路部36と繋がり温風を排出する。第二バルブ62は、開閉動作することで、外側流路部36から排出配管48への温風の流出及び流出遮断を行う機能を有する。この構成によれば、第二バルブ62を閉じて排出配管48からの温風の流出を遮断すると、外側流路部36に温風が滞留する。これにより、所定時間について外側流路部36の温度をより高くすることが可能となる。なお、第二バルブ62を閉じると共に第一バルブ61も閉じられていればよい。所定時間経過すると、外側流路部36の温度が低下し始めるので、第二バルブ62(及び第一バルブ61)を開状態とし、新たな温風を外側流路部36に導入する。このようなバルブ61,62の開閉動作を繰り返し行ってもよい。
【0043】
前記実施形態では、発電ユニット14の凝縮器24において得られる廃熱により、その周囲のエアが加熱され、温風が得られる。つまり、温風の生成源は凝縮器24である。温風の生成源は、前記のような凝縮器24以外に、他であってもよい。つまり、他の構成要素で発生した廃熱により温風が得られるように構成されていてもよい。温風を生成するために廃熱を出力する廃熱出力部(生成源)は、凝縮器24以外に、熱処理装置12(図1参照)の油槽16であってもよく、または、高温のガスが発生する浸炭・拡散室84であってもよい。また、発電ユニット14が適用されている熱処理装置12の例えば近傍に設けられている別の熱処理装置の構成要素(油槽、浸炭・拡散室)が、廃熱出力部であってもよい。このように、温風を得るための熱が出力される廃熱出力部は、熱源(油槽16)、別の熱源、及び凝縮器24の内の少なくとも一つであればよい。
【0044】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
熱処理装置12は、図1に示す形態以外であってもよく、連続処理炉ではなく、バッチ式の処理炉であってもよい。バイナリー発電を行うための熱源は、油槽16以外であってもよく、また、熱源を備える装置は、熱処理装置12以外であってよい。例えば、地熱発電用の装置に前記熱回収システム10が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
14:発電ユニット 16:油槽(熱源) 18:冷却液(第一流体)
19:熱媒体(第二流体) 20:熱交換器 22:発電装置
24:凝縮器(廃熱出力部) 31:一次側流路 32:二次側流路
34:内側流路部 36:外側流路部 40:第一配管
42:第二配管 44:接続配管 48:排出配管
50:多重配管 52:主配管 54:断熱材
56:副配管 59:真空空間 60:外配管
61:第一バルブ 62:第二バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6