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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】液体冷熱回収システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20220721BHJP
   B65D 88/06 20060101ALI20220721BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F17C9/02
B65D88/06 Z
F25D3/10 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017205307
(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公開番号】P2019078319
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100179176
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美和子
(72)【発明者】
【氏名】大塩 章
(72)【発明者】
【氏名】長濱 智彦
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-089164(JP,A)
【文献】特開平11-037623(JP,A)
【文献】特開2015-064050(JP,A)
【文献】米国特許第09261295(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
B65D 88/06
F25D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷熱を回収するために液体貯槽と気化器を接続する液体主配管上に設置される液体冷熱回収システムにおいて、
前記液体主配管から分岐し、液体蒸発器の液体入口に接続される液体第二配管と、
前記液体蒸発器に備えられた液体出口と前記液体主配管を接続する液体第三配管と、
前記液体主配管上であって前記液体第二配管分岐部と前記液体第三配管の接続部の間に備えられた液体第一制御弁と、
前記液体第二配管上に備えられた液体第二制御弁と、
前記液体第三配管上に備えられた液体温度センサと、
前記液体蒸発器に備えられた冷媒出口と冷熱利用設備を接続する冷媒第一配管と、
前記冷熱利用設備と冷媒循環ポンプを接続する冷媒第二配管と、
前記冷媒循環ポンプと前記液体蒸発器の冷媒入口を接続する冷媒第三配管と、
前記冷媒第三配管から分岐し、前記冷媒第二配管を接続する冷媒第四配管と、
前記冷媒第一配管上に備えられた冷媒温度センサと、
前記冷媒第三配管上であって、前記冷媒第四配管の分岐部よりも前記冷媒入口側に備えられた冷媒第一制御弁と、
前記冷媒第四配管上に備えられた冷媒第二制御弁と、
前記液体温度センサおよび前記冷媒温度センサの計測値を基に、前記液体第一制御弁、前記液体第二制御弁、前記冷媒第一制御弁および前記冷媒第二制御弁のそれぞれの弁の開度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限よりも高い場合は、前記冷媒循環ポンプを停止し、前記液体第一制御弁を閉、前記液体第二制御弁および前記冷媒第一制御弁を開、前記冷媒第二制御弁を開度最小とし、前記液体温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限以下となった場合には前記冷媒循環ポンプを起動することを特徴とする液体冷熱回収システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限よりも高い場合には、前記冷媒第一制御弁の開度を絞ると同時に前記冷媒第二制御弁を開ける制御を行い、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限以下になった場合には前記冷媒第二制御弁の開度を絞ると同時に前記冷媒第一制御弁を開ける制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体冷熱回収システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の下限以下となった場合には、前記液体第一制御弁を開くと同時に前記液体第二制御弁の開度を絞る制御を行うことを特徴する請求項1又は請求項2に記載の液体冷熱回収システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記液体温度センサで計測された温度が予め設定された温度の下限以下となった場合には、前記液体第一制御弁を開くと同時に前記液体第二制御弁の開度を絞る制御を行うことを特徴する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体冷熱回収システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の下限よりも高い場合には前記液体第一制御弁を閉め、前記冷媒第二制御弁の開度を最小とすると同時に前記液体第二制御弁と前記冷媒第一制御弁を全開とする制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体冷熱回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温では気体であるが低温で液化されている低温液体を気体にする際に排出される冷熱を回収する液体冷熱回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温液体としては、LNG(液化天然ガス)や液体窒素、液体酸素などがあり、それぞれ通常はNG(天然ガス)、窒素、酸素として気体の状態で利用される。
【0003】
例えばNGの場合、生産地と消費地がパイプラインで輸送できないような遠隔地にある場合には、NGを-162℃程度まで冷却し、液化することでLNGを生成し、体積を約600分の1にまで減容して大型の専用運搬船で運搬することが一般的である。
【0004】
このLNGは専用運搬船で消費地まで運搬され、その後LNGタンクに移され、需要に応じてNGに戻された後、発電プラント等で消費される。
【0005】
またLNGタンクに貯蔵されたLNGの一部は、LNGの状態のままでLNGローリーに移し替えられ各地の工場等のLNG需要家に送られる。
【0006】
LNGローリーで輸送されたLNGは、一般的にはLNG需要家の敷地内あるいは近隣にあるLNGサテライト基地と呼ばれる設備に一時貯蔵され、需要に応じて順次LNGから気体であるNGを生成して消費される。
【0007】
また窒素と酸素の場合、空気から深冷分離法を使用して製造されることが多く、そのためまず窒素と酸素は、液体窒素と液体酸素として製造される場合が多い。しかし液体窒素、液体酸素の場合にも需要家が消費する際には気体にするのが一般的である。
【0008】
この低温液化流体であるLNGや液体窒素と液体酸素を、気体であるNG、窒素、酸素にするには空気加温式の気化器や、温水、スチームといった熱源を使用する気化器が用いられる場合が多い。
【0009】
しかし気化器を持つ低温液化流体の需要家の中にはビルや工場の空調、工場の冷却プロセスなどのシステムに冷熱を必要とする場合もあり、低温液化流体の冷熱を、冷熱を必要とする他のシステムに使用することができれば、気体生成のために燃料として消費されているエネルギーの削減と同時に他のシステム用の冷熱製造エネルギーの削減という二つの省エネルギーを実現することができる。
【0010】
そのため特許文献1にあるように低温液化ガスの冷熱を回収し、冷熱利用設備で利用するための低温液化ガス気化装置およびその運転方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-324761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし特許文献1にある低温液化ガス気化装置およびその運転方法では、低温液化ガスから気体を生成するための熱媒体として主に水の使用を想定しているため、水と常温程度まで加熱が必要な気体とは温度差が小さく熱交換器が大型化してしまうこと、また既存の気化装置とは構成が全く異なるため新規に気化装置を建設する必要があり二重投資になるのでコストが嵩むという課題がある。
【0013】
本発明では上記の課題に鑑み、装置が小型でかつ、既存の気化器も活用できる液体冷熱回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明に係る液体冷熱回収システムは、冷熱を回収するために液体貯槽と液体気化器を接続する液体主配管上に設置される液体冷熱回収システムにおいて、前記液体主配管から分岐し、液体蒸発器の液体入口に接続される液体第二配管と、前記液体蒸発器に備えられた液体出口と前記液体主配管を接続する液体第三配管と、前記液体主配管上であって前記液体第二配管分岐部と前記液体第三配管の接続部の間に備えられた液体第一制御弁と、前記液体第二配管上に備えられた液体第二制御弁と、前記液体第三配管上に備えられた液体温度センサと、前記液体蒸発器に備えられた冷媒出口と冷熱利用設備を接続する冷媒第一配管と、前記冷熱利用設備と冷媒循環ポンプを接続する冷媒第二配管と、前記冷媒循環ポンプと前記液体蒸発器の冷媒入口を接続する冷媒第三配管と、前記冷媒第三配管から分岐し、前記冷媒第二配管を接続する冷媒第四配管と、前記冷媒第一配管上に備えられた冷媒温度センサと、前記冷媒第三配管上であって、前記冷媒第四配管の分岐部よりも前記冷媒入口側に備えられた冷媒第一制御弁と、前記冷媒第四配管上に備えられた冷媒第二制御弁と、前記液体温度センサおよび前記冷媒温度センサの計測値を基に、前記液体第一制御弁、前記液体第二制御弁、前記冷媒第一制御弁および前記冷媒第二制御弁のそれぞれの弁の開度を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
(2) また本発明に係る液体冷熱回収システムは、(1)に記載の液体冷熱回収システムにおいて、前記制御部は、前記液体温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限よりも高い場合は、前記冷媒循環ポンプを停止し、前記液体第一制御弁を閉、前記液体第二制御弁および前記冷媒第一制御弁を開、前記冷媒第二制御弁を開度最小とし、前記液体温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限以下となった場合には前記冷媒循環ポンプを起動することを特徴とする。
【0016】
(3) また本発明に係る液体冷熱回収システムは、(1)又は(2)に記載に液体冷熱回収システムにおいて、前記制御部は、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限よりも高い場合には、前記冷媒第一制御弁の開度を絞ると同時に前記冷媒第二制御弁を開ける制御を行い、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の上限以下になった場合には前記冷媒第二制御弁の開度を絞ると同時に前記冷媒第一制御弁を開ける制御を行うことを特徴とする。
【0017】
(4) また本発明に係る液体冷熱回収システムは、(1)から(3)のいずれかに記載の液体冷熱回収システムにおいて、前記制御部は、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の下限以下となった場合には、前記液体第一制御弁を開くと同時に前記液体第二制御弁の開度を絞る制御を行うことを特徴とする。
【0018】
(5) また本発明に係る液体冷熱回収システムは、(1)から(4)のいずれかに記載の液体冷熱回収システムにおいて、前記制御部は、前記液体温度センサで計測された温度が予め設定された温度の下限以下となった場合には、前記液体第一制御弁を開くと同時に前記液体第二制御弁の開度を絞る制御を行うことを特徴とする。
【0019】
(6) また本発明に係る液体冷熱回収システムは、(1)から(5)のいずれかに記載の液体冷熱回収システムにおいて、前記制御部は、前記冷媒温度センサで計測された温度が予め設定された温度の下限よりも高い場合には前記液体第一制御弁を閉め、前記冷媒第二制御弁の開度を最小とすると同時に前記液体第二制御弁と前記冷媒第一制御弁を全開とする制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
(1)に記載の液体冷熱回収システムによれば、既存の液体サテライト基地に備えられている液体貯槽や液体気化器を接続する液体主配管上に液体冷熱回収システムを追加することができるので、これまでに行った投資を無駄にすることなく、安価に設置することが可能となる。また本発明に係る液体冷熱回収システムは、その他の設備から信号等を受ける必要がなく独立したシステムとして動作可能であるので、その他の設備の信頼性に左右されないという効果を持っている。また、液体温度センサと冷媒温度センサの2つの温度センサからの計測結果を基に4つの制御弁を制御するという簡単な構成で熱回収を行うことが可能となっている。
【0021】
(2)に記載の液体冷熱回収システムによれば、液体蒸発器からの液体出口温度を計測するだけで液体の冷熱量が十分か否かを判定し、冷熱量が十分な場合には熱回収用冷媒ポンプを起動し熱回収を開始することを可能としている。
【0022】
(3)に記載の液体冷熱回収システムによれば、回収した冷熱が不足している場合に冷熱利用設備への悪影響を防ぐため、冷媒を液体冷熱回収システム内で循環させることで冷媒温度を十分に冷却することが可能となる。
【0023】
(4)に記載の液体冷熱回収システムによれば、液体冷熱量が多すぎる場合、冷媒の凍結、閉塞等のトラブルが発生する可能性がある。このような場合、液体冷熱回収システムへ流入する液体量を制限し、液体冷熱回収システムでのトラブル発生を回避することが可能となる。
【0024】
(5)に記載の液体冷熱回収システムによれば、何らかの理由で液体温度が下がりすぎた場合(4)と同じく液体冷熱回収システムに送る液体量を制限することで液体冷熱回収システムでのトラブル発生を回避することが可能となる。
【0025】
(6)に記載の液体冷熱回収システムによれば、液体冷熱を回収できる状態にある場合は可能な限り多くの液体冷熱を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】液体冷熱回収システムの全体を示す模式図である。
図2】LNG冷熱の回収範囲とセンサでの温度計測値を示す模式図である。
図3】液体窒素又は液体酸素の冷熱の回収範囲とセンサでの温度計測値を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。かかる実施形態は発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0028】
なお本明細書および図面において実質的に同一の機能、構成を有する要素については同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0029】
本発明の実施形態の構成について図を参照しながら説明する。
【0030】
第一実施形態として低温液体であるLNGの冷熱を回収する場合について説明する。
【0031】
図1は液体冷熱回収システム100の全体構成(点線で囲まれた部分)と、一般的なLNGサテライト基地に備えられているその他の設備の関連を示す図である。
【0032】
液体冷熱回収システム100はLNGサテライト基地(全体構成は図示せず。)に備えられている液体貯槽110と液体気化器120を接続する液体主配管130上に設置される。
【0033】
液体主配管130から分岐し、液体蒸発器12の液体入口12Aに接続される液体第二配管14と、液体蒸発器12に備えられた液体出口12Bと液体主配管130を接続する液体第三配管16が備えられている。
【0034】
また液体主配管130上であって液体第二配管14との分岐部と液体第三配管16の接続部の間には液体第一制御弁18が備えられており、液体第二配管14には液体第二制御弁20が、液体第三配管16には液体温度センサ22がそれぞれ備えられている。
【0035】
液体蒸発器12は冷媒出口12Cが備えられ、冷媒出口12Cから冷熱利用設備140を接続する冷媒第一配管24と、冷熱利用設備140から冷媒循環ポンプ26を接続する冷媒第二配管28が備えられている。
【0036】
冷媒循環ポンプ26と液体蒸発器12の冷媒入口12Dを接続する冷媒第三配管30と、冷媒第三配管30から分岐し、冷媒第二配管28を接続する冷媒第四配管32が備えられている。この冷媒第四配管は冷熱利用設備140に対するバイパス配管であると同時に冷媒循環ポンプ26のミニマムフローラインとして機能する。
【0037】
冷媒第一配管24上には冷媒温度センサ34が、冷媒第三配管30上であって冷媒第四配管32の分岐部よりも冷媒入口12D側には冷媒第一制御弁36が備えられている。
【0038】
冷媒第四配管32上に冷媒第二制御弁38が備えられている。
【0039】
液体温度センサ22および冷媒温度センサ34の計測値を基に、液体第一制御弁18、液体第二制御弁20、冷媒第一制御弁36および冷媒第二制御弁38のそれぞれの弁の開度を制御する制御部40が備えられている。
【0040】
このように液体冷熱回収システム100は液体主配管130上に設置されているが、液体貯槽110、液体気化器120および冷熱利用設備140からは信号等のやり取りが必要なく、他のシステムから独立した自立型のシステムとなっている。
【0041】
次に図2を参照しながら液体冷熱回収システム100の動作について説明する。
【0042】
図2はそれぞれ、上図がLNG負荷と時間、中図が上図でのLNG負荷変動の時の液体温度センサ22の計測値と時間、下図が上図でのLNG負荷変動時の冷媒温度センサ34の計測値と時間の関係を示した模式図である。
【0043】
図2の上図にあるように、本発明に係る液体冷熱回収システム100は低温液体の持つ冷熱全てを回収することを目的としていない。
【0044】
低温液体の冷熱の全てを敢えて回収せず、主として蒸発潜熱を熱回収の対象とし顕熱部分の一部は熱回収しないことで熱交換器の小型化を実現しコストを抑制すること、および液体冷熱回収システム100は既存の液体気化器120の予熱器としての位置づけとすることで液体から気体を生成するシステム全体としての信頼性を損なわないことが目的である。
【0045】
図2の上図に示すように液体気化器120の液体負荷の設計容量よりも液体冷熱回収システム100の設計容量が小さく設定されており、これは冷熱回収に係るメリットとコストを考慮した結果である。
【0046】
図2はLNGサテライト基地を使用しているLNG需要家(主に工場)のLNG使用量の日常の変動とそれに伴うセンサの計測値を示している。
【0047】
まず図2の上図の左側で冷熱非回収範囲と記載している部分は、これは工場が夜間等で停止状態にあり、LNG負荷が低い状態を示している。
【0048】
LNG負荷が低いということはLNG冷熱を必要とする冷熱利用設備140の負荷も同様に低いため、敢えてコストをかけてまでLNG冷熱を回収する必要性は低い。
【0049】
ここでLNGはメタン、エタン、プロパン等を含む混合物であり、相変化を伴う場合でも温度勾配を有しているため、LNG負荷が低くなればLNGそのものの温度も高くなることになる。
【0050】
図2の中図のD-A間は液体温度センサ22で計測されるLNG温度が高い状態にある、つまりLNGの負荷が低い状態を表している。
【0051】
D-A間では液体温度センサ22で計測されたLNG温度が予め設定された設定温度上限以上となっているので制御部40は冷媒循環ポンプ26を停止する。
【0052】
冷媒循環ポンプ26が停止状態であっても制御部40は、液体第一制御弁18は閉、液体第二制御弁20は開とする制御を行う。これは僅かでも流れるLNGを液体冷熱回収システム100に流入させることでシステムの低温状態を維持し、速やかな再起動に備えるためである。
【0053】
また制御部40は冷媒第一制御弁36を開、冷媒第二制御弁38を開度最小とする制御も同時に行う。これは液体温度センサ22で計測された値が、予め設定された設定温度上限を下回った時(すなわちLNG負荷が増えた状態)にすぐに起動できる状態とするためである。
【0054】
なお冷媒第二制御弁38が備えられている冷媒第四配管32は、冷媒循環ポンプ26のミニマムフロー配管の機能も兼ねているので、冷媒第二制御弁38の開度最小時の開度はミニマムフローで必要な流量を考慮して決定されることになる。
【0055】
図2の中図のA点は液体負荷が増え始めた状態を示している。例えば朝、工場が起動した時にはLNGの負荷が急激に増える。それに伴い、液体温度センサ22で計測されるLNG温度も急激に下がることになる。
【0056】
LNG冷熱を回収するため、液体温度センサ22で計測された温度が予め設定された設定温度上限を下回ったA点で制御部40は冷媒循環ポンプ26を起動し、液体蒸発器12で液体の冷熱を冷媒に熱交換し回収を開始する。
【0057】
なお冷媒はLNGの約-160℃という極低温と熱交換するため、凝固点の低い塩化メチレン等を使用することが好ましい。
【0058】
図2のd-a間の制御について説明する。図2のD-A間では僅かに流れるLNGを液体冷熱回収システム100に流入させることで液体冷熱回収システム100を低温状態に保つとしているが、冷媒は冷熱利用設備140と配管で接続されているのでLNG負荷が低い間に温度が上昇し、冷媒用に予め設定された設定温度上限を超えてしまう可能性がある。その場合、冷媒を冷熱利用設備140に流してしまうと冷熱利用設備140に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0059】
そのため図2のd-a間のように冷媒温度センサ34で計測された温度が設定温度上限を超えている場合には、制御部40は冷媒第一制御弁36の開度を絞ると同時に冷媒第二制御弁38を開ける制御を行う。これにより冷媒の液体冷熱回収システム100内での循環量を増加させ、冷媒温度を低下させる。なおこの制御はD-A間の制御に優先して適用される。
【0060】
冷媒温度センサ34で計測された冷媒の温度が予め設定された設定温度上限以下になった場合には制御部40は冷媒第二制御弁38の開度を絞ると同時に冷媒第一制御弁36を開ける制御を行い、冷媒循環量を削減し、冷媒を冷熱利用設備140に送り、回収した冷熱を冷熱利用設備140利用する。
【0061】
図2のb-c間について説明する。
【0062】
b-c間では冷媒温度センサ34で計測された温度が予め設定された設定温度下限を下回っているので、そのまま放置すれば冷媒の凍結や閉塞を引き起こす可能性がある。これはLNG負荷が液体冷熱回収システム100の設計容量を超えた状態であり、図2上図の液体負荷が高い状態での冷熱非回収範囲に相当する。
【0063】
この場合はシステムの保護のために制御部40は液体第一制御弁18を開くと同時に液体第二制御弁20の開度を絞る制御を行う。これにより液体冷熱回収システム100に流入するLNGの量を制限し、冷媒の凍結等のトラブルを防止する。
【0064】
次にB-C間の制御について説明する。
【0065】
B-C間制御は緊急時の保護システムである。何らかの理由により液体温度センサ22で計測した温度が設定温度下限を下回った場合、システム保護のために制御部40は液体第一制御弁18を開くと同時に液体第二制御弁20の開度を絞る制御を行う。これにより液体冷熱回収システム100に流入するLNGの量を制限し、冷媒の凍結等のトラブルを防止する。
【0066】
次にc-d間の制御について説明する。
【0067】
c-d間では冷媒温度センサで計測した冷媒温度が設定温度上限と下限の間に入っているので、この間であれば可能な限りLNG冷熱を回収する制御を制御部40は行う。具体的には制御部40は液体第一制御弁18を閉め、冷媒第二制御弁38の開度を最小とすると同時に液体第二制御弁20と冷媒第一制御弁36を全開とする制御を行う。
【0068】
なお、液体温度センサ22で計測される温度の設定温度の上限値と下限値および冷媒温度センサ34で計測される温度の設定温度の上限値と下限値が制御部40の制御のトリガーとなっているが、それぞれの上限値と下限値を変更すれば、液体冷熱回収システム100の起動温度や、冷熱の回収量を自由に設定することが可能となる。
【0069】
第一実施形態に係る本発明の効果について説明する。
【0070】
本発明に係る液体冷熱回収システム100は、液体蒸発器12からのLNG出口の温度および冷媒の出口温度をそれぞれセンサで計測し、その計測結果に基づいて4つの制御弁を制御するという簡単な構成で、他の装置から完全に切り離した自立型システムを実現していること、保護システムも実現していること、回収可能な液体冷熱は可能なかぎり回収すること、および液体と冷媒の設定温度の上限値と下限値を変更することでLNG冷熱の回収量を自由に変更可能という効果を有している。
【0071】
次に第二実施形態として液体窒素又は液体酸素の冷熱を回収する場合について第一実施形態と異なる点のみ説明する。
【0072】
図3は液体窒素又は液体酸素を使用している需要家の使用量の日常の変動とそれに伴うセンサの計測値を示している。
【0073】
液体窒素又は液体酸素は他の物質をほとんど含まないので、液体温度センサ22で計測される値は液体窒素又は液体酸素の負荷に関係なく、相変化を伴っている間は一定の温度となる(図3の中図)。しかしその場合であっても冷媒温度センサ34で計測される値は液体窒素又は液体酸素の負荷変動に従って変動する(図3の下図)。
【0074】
しかし第二実施形態の制御部40の制御は基本的に第一実施形態と同じである。
【0075】
以上、第一実施形態および第二実施形態について説明した。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、低温液化流体から気体を生成する際に排出される冷熱を回収することのできる液体冷熱回収システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
100:液体冷熱回収システム、110:液体貯槽、120:液体気化器、130:液体主配管、140:冷熱利用設備、12:液体蒸発器、12A:液体入口、12B:液体出口、12C:冷媒出口、12D:冷媒入口、14:液体第二配管、16:液体第三配管、18:液体第一制御弁、20:液体第二制御弁、22:液体温度センサ、24:冷媒第一配管、26:冷媒循環ポンプ、28:冷媒第二配管、30:冷媒第三配管、32:冷媒第四配管、34:冷媒温度センサ、36:冷媒第一制御弁、38:冷媒第二制御弁、40:制御部
図1
図2
図3