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特許7108239レーザ加工機の制御装置、レーザ加工機、加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法、及びワーク加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】レーザ加工機の制御装置、レーザ加工機、加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法、及びワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20220721BHJP
【FI】
B23K26/38 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018203184
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020069482
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】堀田 佳男
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107335(JP,A)
【文献】特開2016-68144(JP,A)
【文献】特開2016-74007(JP,A)
【文献】特開2017-209726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B23K 7/00 - 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークを切断して製品を形成するレーザ加工機の制御装置において、
前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、第1切込み部と、第2切込み部と、を形成し、
前記第1切込み部は、
前記残部の幅方向の一側の端部に接続する第1接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と反対側に最も近づく第1中間位置に至る第1交差部分と、
前記第1中間位置から、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と同じ側に近づくように延びる第1延長部分と、
を含み、
前記第2切込み部は、
前記残部の幅方向において前記第1交差部分が接続する側と反対側の端部に接続する第2接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と反対側に最も近づく第2中間位置に至る第2交差部分と、
前記第2中間位置から、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と同じ側に近づくように延びる第2延長部分と、
を含み、
前記第1切込み部と前記第2切込み部は、前記残部の幅方向一部においてオーバーラップするように配置されることを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記第1交差部分は、前記残部の幅方向中心線に対して交差しており、
前記第2交差部分は、前記残部の幅方向中心線に対して交差していることを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記第1延長部分は、前記残部の長手方向において前記第2交差部分と前記第2延長部分との間に位置する部分を含み、
前記第2延長部分は、前記残部の長手方向において前記第1交差部分と前記第1延長部分との間に位置する部分を含むことを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記第1切込み部は、前記第1延長部分に接続する第1付加部分を含み、
前記第2切込み部は、前記第2延長部分に接続する第2付加部分を含み、
前記第1付加部分は、前記残部の長手方向において前記第2延長部分と前記第2付加部分との間に位置する部分を含み、
前記第2付加部分は、前記残部の長手方向において前記第1延長部分と前記第1付加部分との間に位置する部分を含むことを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記第1切込み部及び前記第2切込み部は、それぞれ、渦巻き形状を有することを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記第1交差部分及び前記第1延長部分のうち少なくとも何れかは、滑らかな湾曲状部分を含み、
前記第2交差部分及び前記第2延長部分のうち少なくとも何れかは、滑らかな湾曲状部分を含むことを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記第1切込み部の形状と前記第2切込み部の形状とは、前記ワークの厚み方向で見たときに点対称の関係にあることを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記ワークの材質、前記ワークの厚さ、前記残部の長さ、及び前記残部の幅のうち少なくとも1つに基づいて、前記第1切込み部及び前記第2切込み部を形成するか否かを判定する判定部を備えることを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザ加工機の制御装置であって、
前記判定部によって前記第1切込み部及び前記第2切込み部を形成すると判定した場合、先に取得した加工プログラムに対して前記第1切込み部及び前記第2切込み部を追加する、又は加工プログラムの修正を行うことを特徴とするレーザ加工機の制御装置。
【請求項10】
ワークに対して相対的に移動しかつレーザ光を出射して前記ワークの切断を行うレーザヘッドと、
請求項1から9までの何れか一項に記載のレーザ加工機の制御装置と、
を備えることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項11】
ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークの一部を切断して製品を形成するレーザ加工機に対して、加工処理を実行させる加工プログラムを生成する装置において、
前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、第1切込み部と、第2切込み部と、を形成し、
前記第1切込み部は、
前記残部の幅方向の一側の端部に接続する第1接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と反対側に最も近づく第1中間位置に至る第1交差部分と、
前記第1中間位置から、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と同じ側に近づくように延びる第1延長部分と、
を含み、
前記第2切込み部は、
前記残部の幅方向において前記第1交差部分が接続する側と反対側の端部に接続する第2接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と反対側に最も近づく第2中間位置に至る第2交差部分と、
前記第2中間位置から、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と同じ側に近づくように延びる第2延長部分と、
を含み、
前記第1切込み部と前記第2切込み部は、前記残部の幅方向一部においてオーバーラップするように配置される加工プログラムを生成することを特徴とする加工プログラム生成装置。
【請求項12】
ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークの一部を切断して製品を形成するレーザ加工機に対して、加工処理を実行させる加工プログラムを生成する方法において、
前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、第1切込み部と、第2切込み部と、を形成し、
前記第1切込み部は、
前記残部の幅方向の一側の端部に接続する第1接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と反対側に最も近づく第1中間位置に至る第1交差部分と、
前記第1中間位置から、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と同じ側に近づくように延びる第1延長部分と、
を含み、
前記第2切込み部は、
前記残部の幅方向において前記第1交差部分が接続する側と反対側の端部に接続する第2接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と反対側に最も近づく第2中間位置に至る第2交差部分と、
前記第2中間位置から、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と同じ側に近づくように延びる第2延長部分と、
を含み、
前記第1切込み部と前記第2切込み部は、前記残部の幅方向一部においてオーバーラップするように配置される加工プログラムを生成することを特徴とする加工プログラム生成方法。
【請求項13】
ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークの一部を切断して製品を形成するワーク加工方法であって、
前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、第1切込み部と、第2切込み部と、を形成し、
前記第1切込み部は、
前記残部の幅方向の一側の端部に接続する第1接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と反対側に最も近づく第1中間位置に至る第1交差部分と、
前記第1中間位置から、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と同じ側に近づくように延びる第1延長部分と、
を含み、
前記第2切込み部は、
前記残部の幅方向において前記第1交差部分が接続する側と反対側の端部に接続する第2接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と反対側に最も近づく第2中間位置に至る第2交差部分と、
前記第2中間位置から、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と同じ側に近づくように延びる第2延長部分と、
を含み、
前記第1切込み部と前記第2切込み部は、前記残部の幅方向一部においてオーバーラップするように配置されることを特徴とするワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機の制御装置、レーザ加工機、加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法、及びワーク加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光によりワークを切断して製品を形成するレーザ加工機が知られている。この種のレーザ加工機においては、加工対象である板状のワークに対して、レーザ光が、例えば1mm以下の大きさのスポットを形成するように収束されて照射され、ワークが切断される。
【0003】
製品の輪郭を描くようにワークにレーザ光を照射して切断すると、ワークは、製品と、残材と、に分かれる。切断直後の状態では、製品とワークとの間に、レーザ光のスポット径とほぼ同等の狭い隙間が生じる。
【0004】
ワークの切断部分の周囲は、切断時にレーザ光によって熱を受けているので、冷めると収縮する。ワークから複数の製品を切り出す場合、製品の形状及び配置によっては、残材において製品と製品の間に位置する部分(以下、残部という。)が細長くなることがある。残部が細長く形成された場合、当該残部は、その長手方向で特に大きく収縮する。
【0005】
残部が収縮することにより、製品の周りの狭い隙間が消失して、製品が、その周囲に配置される残材によって強く把持されることがある。従って、製品をその周囲に残る残材から離そうとするとき、切断済みのワークにおいて製品が残材に引っ掛かることがあり、製品を残材から分離しにくくなっていた。
【0006】
この点に関し、特許文献1は、残材による製品の把持を効率よく解消又は軽減させて製品を残材から容易に分離することを目的としたレーザ加工機を提案する。このレーザ加工機に関する構成は、切断済みのワークにおいて、製品を残材から容易に切り離すことができるように、2つの製品から延長部分が平行して切り込み、かつ、複数の交差部分が延長部分に沿って交互に位置するように切り込むことにより、バネ状の部分として機能する切り込み部を形成するものとなっている。これにより、残部の収縮発生時にバネ状の部分を伸ばす(バネ状の部分にバネの機能を発揮させる)ことにより残部の収縮を緩和し、残材が製品を把持することを防止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-107335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、バネ状の部分の伸縮ストロークを確保するためには、切り込み部を、ワークに対してレーザ光による切断の一時停止を繰り返しながら1つの延長部分に複数の交差部分をそれぞれ当該延長部分の途中部から切断することにより形成する必要がある。従って、バネ状の部分を形成するための加工に時間と手間が掛かっていた。更に、切り込み部が複数形成されることにより、切り込み部の端部付近に応力集中が発生し易くなり、残部が切れて残材の取扱いに支障が生じる場合もあった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ワークの切断後に残材に対する製品の分離を容易にするとともに、切断の手間を軽減させることができるレーザ加工機の制御装置、レーザ加工機、加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法、及びワーク加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のレーザ加工機の制御装置が提供される。即ち、このレーザ加工機は、ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークを切断して製品を形成する。前記レーザ加工機の制御装置は、前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、第1切込み部と、第2切込み部と、を形成する。前記第1切込み部は、第1交差部分と、第1延長部分と、を含む。前記第1交差部分は、前記残部の幅方向の一側の端部に接続する第1接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と反対側に最も近づく第1中間位置に至る。前記第1延長部分は、前記第1中間位置から、前記残部の幅方向において前記第1接続位置と同じ側に近づくように延びる。前記第2切込み部は、第2交差部分と、第2延長部分と、を含む。前記第2交差部分は、前記残部の幅方向において前記第1交差部分が接続する側と反対側の端部に接続する第2接続位置から、前記残部の長手方向と交差する方向に延びて、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と反対側に最も近づく第2中間位置に至る。前記第2延長部分は、前記第2中間位置から、前記残部の幅方向において前記第2接続位置と同じ側に近づくように延びる。前記第1切込み部と前記第2切込み部は、前記残部の幅方向一部においてオーバーラップするように配置される。
【0012】
これにより、レーザ加工機の制御装置は、第1切込み部及び第2切込み部によってバネ状の部分を残部に形成することが可能となる。そして、レーザ光によって熱を受けた残部が冷めて収縮する場合に、ワークの残材において第1切込み部及び第2切込み部によるバネの機能が効果的に発揮されるように(残部がその長手方向に大きく伸ばされるように)、バネ状の部分のストロークを十分に確保することができる。そのため、残部の収縮量を緩和して、残材による製品の把持を良好に解消又は軽減することができる。従って、残材に対する製品の分離を容易にすることができる。また、第1切込み部における第1交差部分及び第1延長部分と、第2切込み部における第2交差部分及び第2延長部分の形成を、それぞれ、レーザ光によりワークを一筆書きの要領で切断することで実現できる。そのため、第1切込み部及び第2切込み部の各々の形成に必要な時間を短縮することができる。従って、第1切込み部及び第2切込み部についての切断の手間を軽減させることができる。更に、比較的大きな伸縮ストロークを実現するバネ状の部分を2つの切込み部で形成することができるので、切込み部を少なくできる。従って、応力が集中する箇所(特に、切込み部の端部)を減らすことができるので、応力集中部によるバネ部の破断を防止することができる。この結果、例えば、残材を製品の周囲から取り除く際に、当該残材を円滑に取り扱うことができる。
【0013】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1交差部分は、前記残部の幅方向中心線に対して交差している。前記第2交差部分は、前記残部の幅方向中心線に対して交差している。
【0014】
これにより、第1切込み部及び第2切込み部により、柔らかいバネを実現することができるので、残部の収縮量を十分に緩和することができる。従って、残材に対する製品の分離が更に容易になる。
【0015】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1延長部分は、前記残部の長手方向において前記第2交差部分と前記第2延長部分との間に位置する部分を含む。前記第2延長部分は、前記残部の長手方向において前記第1交差部分と前記第1延長部分との間に位置する部分を含む。
【0016】
これにより、第1切込み部と第2切込み部とが互いに近接する部分が増えるので、より柔らかいバネ部を残部に形成することができる。
【0017】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1切込み部は、前記第1延長部分に接続する第1付加部分を含む。前記第2切込み部は、前記第2延長部分に接続する第2付加部分を含む。前記第1付加部分は、前記残部の長手方向において前記第2延長部分と前記第2付加部分との間に位置する部分を含む。前記第2付加部分は、前記残部の長手方向において前記第1延長部分と前記第1付加部分との間に位置する部分を含む。
【0018】
これにより、第1切込み部と第2切込み部とが互いに近接する部分が増えるので、より柔らかいバネ部を残部に形成することができる。
【0019】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1切込み部及び前記第2切込み部は、それぞれ、渦巻き形状を有する。
【0020】
これにより、コンパクトな形状で、伸縮ストロークを大きくし易い柔らかいバネ部を残部に形成することができる。
【0021】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1交差部分及び前記第1延長部分のうち少なくとも何れかは、滑らかな湾曲状部分を含む。前記第2交差部分及び前記第2延長部分のうち少なくとも何れかは、滑らかな湾曲状部分を含む。
【0022】
これにより、応力集中が発生しにくくなるので、残部の破損を防止することができる。
【0023】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1切込み部の形状と前記第2切込み部の形状とは、前記ワークの厚み方向で見たときに点対称の関係にある。
【0024】
これにより、バネ部の弾性変形時に力が均等に掛かり易くなるので、バネ部の破損を防止できる。
【0025】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、このレーザ加工機の制御装置は、判定部を備える。この判定部は、前記ワークの材質、前記ワークの厚さ、前記残部の長さ、及び前記残部の幅のうち少なくとも1つに基づいて、前記第1切込み部及び前記第2切込み部を形成するか否かを判定する。
【0026】
これにより、第1切込み部及び第2切込み部を必要に応じて効率よく形成することができる。
【0027】
前記のレーザ加工機の制御装置においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、このレーザ加工機の制御装置は、前記判定部によって前記第1切込み部及び前記第2切込み部を形成すると判定した場合、先に取得した加工プログラムに対して前記第1切込み部及び前記第2切込み部を追加する、又は加工プログラムの修正を行う。
【0028】
これにより、レーザ加工機において加工プログラムを変更することが可能となる。従って、別の装置等で加工プログラムを変更する必要がなく、オペレータの手間を省くことができる。
【0029】
本発明の第2の観点によれば、以下のようなレーザ加工機が提供される。即ち、このレーザ加工機は、レーザヘッドと、前述のような制御装置と、を備える。このレーザヘッドは、ワークに対して相対的に移動しかつレーザ光を出射して前記ワークの切断を行う。
【0030】
これにより、残材に対する製品の分離が容易なレーザ加工機を提供することができる。
【0031】
本発明の第3の観点によれば、以下のような加工プログラム生成装置が提供される。即ち、この加工プログラム生成装置は、ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークの一部を切断して製品を形成するレーザ加工機に対して、加工処理を実行させる加工プログラムを生成するものである。この加工プログラム生成装置は、前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、前述の第1切込み部と、前述の第2切込み部と、を形成する加工プログラムを生成する。
【0032】
これにより、残材に対する製品の切離し易さを向上させることができる加工プログラムを生成することができる。
【0033】
本発明の第4の観点によれば、以下のような加工プログラム生成方法が提供される。即ち、この加工プログラム生成方法は、ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークの一部を切断して製品を形成するレーザ加工機に対して、加工処理を実行させる加工プログラムを生成する方法である。この方法では、前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、前述の第1切込み部と、前述の第2切込み部と、を形成する加工プログラムを生成する。
【0034】
これにより、残材に対する製品の切離し易さを向上させることができる加工プログラムを生成することができる。
【0035】
本発明の第5の観点によれば、以下のようなワーク加工方法が提供される。即ち、このワーク加工方法は、ワークとレーザヘッドとを相対的に移動させて前記レーザヘッドから出射するレーザ光により前記ワークの一部を切断して製品を形成する。前記ワーク加工方法では、前記製品の切断に伴い、前記ワークのうち前記製品同士の間又は前記製品と前記ワークの外周との間に形成される残部に、前述の第1切込み部と、前述の第2切込み部と、を形成する。
【0036】
これにより、残材に対する製品の分離し易さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工機及びレーザ加工機の制御装置を示す図。
図2】ワークの残部における第1切込み部及び第2切込み部の形状を詳細に示す図。
図3】制御装置の動作を示すフローチャート。
図4】ワーク加工方法を示すフローチャート。
図5】ワーク加工方法を示す図。
図6図6に続く、ワーク加工方法を示す図。
図7図7に続く、ワーク加工方法を示す図。
図8】残部の収縮をキャンセルするように、第1切込み部及び第2切込み部の部分が変形する様子を示す図。
図9】渦巻状の第1切込み部及び第2切込み部に関する他の例を示す図。
図10】第1切込み部及び第2切込み部をJ字状に形成する例を示す図。
図11】第1切込み部及び第2切込み部をV字状に形成する例を示す図。
図12】本発明の一実施形態に係る加工プログラム生成装置を示す機能ブロック図。
図13】本発明の一実施形態に係る加工プログラム生成方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、本発明の一実施形態に係るレーザ加工機1の構成について説明する。
【0039】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機1及びレーザ加工機1の制御装置5を示す図である。レーザ加工機1には、加工対象である矩形板状のワーク30をセットすることができる。レーザ加工機1は、レーザヘッド2からレーザ光8を出射して、セットされたワーク30を切断する。
【0040】
図1に示すように、レーザ加工機1は、レーザヘッド2と、レーザ光源3と、ヘッド移動装置4と、制御装置5と、を備える。
【0041】
レーザヘッド2は、光ファイバ等の光伝送体7を介してレーザ光源3に接続されている。レーザヘッド2は、レーザ光源3から導かれたレーザ光8をノズル2aから下方へ出射する。
【0042】
レーザヘッド2の内部には、図略の光学系が構成されている。この光学系により、レーザヘッド2から照射されたレーザ光8はワーク30上で収束して、適宜の大きさのスポット8Sを形成する。レーザ光8のスポット8Sの径は、ワーク30の切断等に関する加工条件に応じて設定される。スポット8Sの径は、例えば直径0.2mmとすることが考えられる。ワーク30の切断時に、ノズル2aの先端からアシストガスを噴射しても良い。
【0043】
ヘッド移動装置4は、レーザヘッド2を、レーザ加工機1にセットされた矩形板状のワーク30の厚みに垂直な平面に沿って移動させることができる。また、ヘッド移動装置4は、レーザヘッド2を、ワーク30の厚み方向に移動させることもできる。ヘッド移動装置4は、ガントリと、スライダと、昇降部と、を備える公知の構成とすることができる。ただし、ヘッド移動装置4の構成は、これに限定されず、例えばロボットアーム等によりレーザヘッド2を移動させる構成としても良い。
【0044】
制御装置5は、レーザ光源3及びヘッド移動装置4の動作を制御する。制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置と、図略の主記憶装置や補助記憶装置等の記憶装置と、を備える。
【0045】
この記憶装置には、例えば、加工プログラムなどの各種プログラム、及び、ワーク30の加工条件などの各種情報が格納されている。そして、制御装置5は、記憶装置等から加工プログラムを読み込み、この加工プログラムに従ってレーザヘッド2及びヘッド移動装置4を動作させることにより、レーザ光8によってワーク30を切断する。これにより、製品31,32が形成される。
【0046】
加工プログラムは、製品31,32の形状に沿うようにレーザヘッド2を移動させる移動経路及び移動速度を含む。更に、加工プログラムは、例えば、ワーク30の材質や厚さなどに関する加工条件に応じたレーザ光の出力の設定等、様々な情報を含む。また、加工プログラムは、後述する第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成するためのレーザヘッド2の移動経路を含む。移動経路及び移動速度は、例えば、図1に示すようにワーク30の厚み方向をZ軸とするXYZ直交座標系を定義し、この座標系によって表現することができる。
【0047】
本実施形態においては、説明を容易にするため、ワーク30に複数の矩形状の製品31,32を形成する場合を例として説明する。製品31,32の形状は互いに同一である。しかし、この例に限定されず、ワーク30に単一の製品が形成されても良いし、矩形とは異なる形状の製品が形成されても良い。また、互いに異なる形状の複数の製品がワーク30に形成されても良い。
【0048】
レーザ加工機1は、図示しないが、移動可能なパレットを備える。ワーク30は、レーザ加工機1で切断作業を行う加工領域の外側でパレットに置かれ、加工領域へ搬入されて切断作業が行われる。その後、ワーク30は、パレットに置かれたまま加工領域の外部へ搬出される。このパレットとしては、例えば、鋸歯状、波形状、又は剣山状の載置部を有し、この載置部にワーク30を載置した状態で搬送可能なものが用いられる。パレットの動作は、制御装置5によって制御されても良いし、他の装置によって制御されても良い。
【0049】
図1に示すように、ワーク30の切断を行って矩形状の製品31,32を形成することにより、ワーク30において残材35が生じる。残材35には、製品31と製品32との間の部分である残部35aが含まれる。この例では、残部35aは、前述の直交座標系においてX方向に直線状に細長くなるように形成されている。残部35aの形状は、製品の形状、ワークから製品を切り出す位置等に応じて定まる。従って、残部35aが細長く形成される場合、その長手方向の向きは様々に考えられる。
【0050】
切断後の製品31,32は、スポット8Sに対応する幅(例えば約0.2mm程度)の隙間Cによって囲まれた状態となる。隙間Cは、製品31,32の外周に沿って細長く形成される。
【0051】
制御装置5は、レーザヘッド2を制御することにより、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bをワーク30の残部35aに形成することができる。第1切込み部10A及び第2切込み部10Bは、近接して配置されるものの、互いに接続されない。第1切込み部10Aと第2切込み部10Bとは、互いに対をなすように1組形成される。ただし、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bは、2組以上形成されても良い。
【0052】
次に、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの形状について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの形状を詳細に示す図である。
【0053】
第1切込み部10Aは、第1交差部分11Aと、第1延長部分12Aと、第1付加部分13Aと、を含む。
【0054】
第1交差部分11Aは、残部35aの幅方向一側の端部に位置する隙間Cに接続している。第1交差部分11Aは、この接続位置である第1接続位置21aから、残部35aの幅方向で反対側の端部に位置する隙間Cに近づくように延び、やがて、第1中間位置22aに至る。第1交差部分11Aが延びる方向は、残部35aの長手方向(図1の例では、X方向)に交差する方向である。第1交差部分11Aは、直線状部分と、湾曲状部分と、を有している。直線状部分は、第1接続位置21aにおいて残部35aの幅方向一側の端部に接続し、短く形成されている。直線状部分は、残部35aの幅方向(Y方向)に平行に向けられている。湾曲状部分は、直線状部分と第1中間位置22aとを接続しており、概ね半円弧状に形成されている。第1中間位置22aは、残部35aの幅方向において第1接続位置21aと反対側に最も近づいた位置にある。
【0055】
第1延長部分12Aは、第1中間位置22aにおいて、第1交差部分11Aに接続している。第1延長部分12Aは、第1中間位置22aから、残部35aの幅方向において第1接続位置21aと同じ側に近づくように延び、第1経由位置23aに至る。第1延長部分12Aは、湾曲状、具体的には円弧状に形成されている。第1延長部分12Aは、第1交差部分11Aと、残部35aの長手方向(X方向)で向かい合っている。
【0056】
第1付加部分13Aは、第1経由位置23aにおいて、第1延長部分12Aに接続している。第1延長部分12Aは、第1経由位置23aから、残部35aの幅方向において第1接続位置21aとは反対側に近づくように延びた後、延びる向きを変えて第1終端位置24aに至る。
【0057】
第1中間位置22aは、第1切込み部10Aの実質的な変曲点である。第1中間位置22aを境として、第1交差部分11Aと第1延長部分12Aとが、残部35aの幅方向(Y方向)で切込方向を変える。従って、第1切込み部10Aは、第1中間位置22aで折り返した形状となる。同様に、第1切込み部10Aは、第1経由位置23aでも折り返した形状となる。
【0058】
第2切込み部10Bは、第2交差部分11Bと、第2延長部分12Bと、第2付加部分13Bと、を有している。
【0059】
第2交差部分11Bは、残部35aの幅方向において、第1接続位置21aと反対側の端部に位置する隙間Cに接続している。第2交差部分11Bは、この接続位置である第2接続位置21bから、残部35aの幅方向で反対側の端部に位置する隙間Cに近づくように延び、やがて、第2中間位置22bに至る。第2交差部分11Bが延びる方向は、残部35aの長手方向(X方向)に交差する方向である。第2交差部分11Bは、直線状部分と、湾曲状部分と、を有している。直線状部分は、第2接続位置21bにおいて残部35aの幅方向一側の端部に接続し、短く形成されている。直線状部分は、残部35aの幅方向(Y方向)に平行に向けられている。湾曲状部分は、直線状部分と第2中間位置22bとを接続しており、概ね半円弧状に形成されている。第2中間位置22bは、残部35aの幅方向において第2接続位置21bと反対側に最も近づいた位置にある。
【0060】
第2延長部分12Bは、第2中間位置22bにおいて、第2交差部分11Bに接続している。第2延長部分12Bは、第2中間位置22bから、残部35aの幅方向において第2接続位置21bと同じ側に近づくように延び、第2経由位置23bに至る。第2延長部分12Bは、湾曲状、具体的には概ね半円弧状に形成されている。第2延長部分12Bは、第2交差部分11Bと、残部35aの長手方向(X方向)で向かい合っている。
【0061】
第2付加部分13Bは、第2経由位置23bにおいて、第2延長部分12Bに接続している。第2延長部分12Bは、第2経由位置23bから、残部35aの幅方向において第1中間位置22aとは反対側に近づくように延びた後、延びる向きを変えて第2終端位置24bに至る。
【0062】
第2中間位置22bは、第2切込み部10Bの実質的な変曲点である。第2中間位置22bを境として、第2交差部分11Bと第2延長部分12Bとが、残部35aの幅方向(Y方向)で切込方向を変える。従って、第2切込み部10Bは、第2中間位置22bで折り返した形状となる。同様に、第2切込み部10Bは、第2経由位置23bでも折り返した形状となる。
【0063】
第1切込み部10Aは、残部35aの幅方向一部にだけ形成されている。第2切込み部10Bも同様に、残部35aの幅方向一部にだけ形成されている。従って、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの何れによっても、残部35aが長手方向で完全に分断されることはない。
【0064】
第1切込み部10A及び第2切込み部10Bは、残部35aの幅方向一部において互いにオーバーラップするように位置している。このオーバーラップ部分においては、第1切込み部10Aの切込み線と第2切込み部10Bの切込み線とが残部35aの長手方向(X方向)で近接している。この部分において、残部35aに、当該長手方向で伸縮するバネ機能を実質的に発揮させることができる。
【0065】
図2に示すように残部35aを幅方向で2等分する中心線25を考えたときに、第1交差部分11Aは、第1接続位置21aからみて、中心線25よりも遠い側まで形成されている。従って、第1交差部分11Aは、中心線25と交差している。第1中間位置22aは、第1接続位置21aと、中心線25を挟んで反対側に位置している。
【0066】
同様に、第2交差部分11Bは、第2接続位置21bからみて、中心線25よりも遠い側まで形成されている。従って、第2交差部分11Bは、中心線25と交差している。第2中間位置22bは、第2接続位置21bと、中心線25を挟んで反対側に位置している。
【0067】
これにより、中心線25の近傍で、第1切込み部10Aと第2切込み部10Bとが、残部35aの長手方向(X方向)で近接しながら幅方向(Y方向)でオーバーラップする部分を実現している。ただし、残部35aの幅方向での第1交差部分11A及び第2交差部分11Bの各々の長さは、任意に設定することができる。両者がオーバーラップするように、略同じにしても良いし、一方を短くし、かつ、他方を長くしても良い。
【0068】
第1延長部分12Aは、残部35aの長手方向(X方向)において第2交差部分11Bと第2延長部分12Bとの間に位置する。第1延長部分12Aは、第2交差部分11B、第2延長部分12B、及び第2付加部分13Bの何れにも接続しないように適宜離れて位置する。第2延長部分12Bは、残部35aの長手方向(X方向)において第1交差部分11Aと第1延長部分12Aとの間に位置する。第2延長部分12Bは、第1交差部分11A、第1延長部分12A、及び第1付加部分13Aの何れにも接続しないように適宜離れて位置する。
【0069】
本実施形態において、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bは、それぞれ、渦巻形状を有する。第1切込み部10A及び第2切込み部10Bは、ワーク30の厚み方向(Z方向)で見たときに、一方の渦巻が他方の渦巻を巻き込むように、渦巻部分の中心同士を互いに近接させて配置される。また、第1切込み部10Aの形状と第2切込み部10Bの形状とは、ワーク30の厚み方向(Z方向)で見たときに、渦巻部分の中心付近の点に関して点対称の関係にある。ただし、第1切込み部10Aの形状と第2切込み部10Bの形状は、これに限定されず、このような点対称の関係を有するものでなくても良い。
【0070】
図1に示すように、制御装置5は、判定部6を有している。判定部6は、ワーク30に第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成するか否かを判定する。判定部6による判定は、例えばワーク30の材質、ワーク30の厚さ、残部35aの長さ、及び残部35aの幅のうち少なくとも1つに基づいて行われる。また、制御装置5は、判定部6が第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成すると判定する場合、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの形状や寸法について適宜決定する。
【0071】
図3は、制御装置5の動作を示すフローチャートである。図3に示すように、制御装置5は、ワーク30に関する加工プログラムを読み込む(ステップS101)。この加工プログラムは、記憶装置に予め記憶されるものでも良いし、図12に示す後述の上位コントローラから無線又は有線によって送信されるものでも良い。また、加工プログラムは、USBメモリ等の外部記憶媒体に格納されたものを読み出したものでも良い。次に、制御装置5の判定部6が、読み出された加工プログラムに基づいて、ワーク30の材質、ワーク30の厚さ、残部35aの長さ(長手方向の寸法)、及び残部35aの幅(短手方向の寸法)の少なくとも1つに基づいて、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成するか否かを判定する(ステップS102)。
【0072】
例えば、厚さ3mmの鉄からなるワーク30において、残部35aの幅が10mm程度であり、かつ、残部35aの長手方向の長さが200mmより大きいときは、上記のバネ機能が仮にないとすると、残部35aの収縮によって残材35の外枠部分が内側へ大きく引っ張られ、残材35による製品31又は製品32の把持が生じる可能性が高い。なお、残部35aの収縮の詳細は後述する。従って、この場合は、判定部6は、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが必要であると判定する。なお、判定部6によるこの判定の手法は一例であり、他の手法としても良い。また、判定部6により判定を行うか否かは任意であり、制御装置5は、残部35aの形状等について判断することなく、加工プログラムに対して一律に第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを加えるように動作しても良い。
【0073】
制御装置5は、判定部6によって第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが必要であると判定した場合(ステップS102、Yes)、加工プログラムに、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成する工程を追加する(ステップS103)。制御装置5は、例えばワーク30の材質や厚さ、残部35aの幅や長さに基づいて、どのような形状の第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成するかを決定する。制御装置5は、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの形状として、複数種類のテンプレート形状を記憶装置に予め記憶させておき、これら複数種類の形状の中から選択するようにしても良い。また、制御装置5は、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの寸法や形状を演算により求めても良い。また、ステップS103は、加工プログラムに第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを追加するものに限定されない。例えば、製品31等とともに第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成させるべくレーザヘッド2を動作させるように加工プログラムを修正しても良い。
【0074】
制御装置5は、判定部6によって第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが不要であると判定した場合(ステップS102、No)、加工プログラムへの第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの追加、又は加工プログラムの修正は行わない。
【0075】
制御装置5は、設定された加工プログラムを実行し、レーザヘッド2を動作させてワーク30の切断を開始させる(ステップS104)。なお、制御装置5は、レーザ加工機1を統括制御しても良い。この場合、制御装置5は、レーザ加工機1の加工部分に対するワーク30の搬入又は搬出などの動作も併せて制御する。
【0076】
続いて、制御装置5が第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成する必要があると判定し、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを加工プログラムに追加した場合、又は加工プログラムを修正した場合を例として、ワーク30の加工方法について説明する。図4は、ワーク30の加工方法を示すフローチャートである。図5から図7までは、レーザ加工機1によるワーク30の加工過程を示す図である。なお、図4から図7まではワーク30の加工方法の一例を示しており、製品31等の形状や、ワーク30を切断する順序を限定するものではない。
【0077】
先ず、図4のステップS201に示すように、ワーク30のうち製品31の周囲が切断される。ステップS201においては、レーザ加工機1においてレーザ光8がレーザヘッド2から出射し、ワーク30にスポット8Sが形成される。そして、レーザヘッド2の移動によってスポット8Sがワーク30に対して移動させられ、スポット8Sによってワーク30が切断される。
【0078】
具体的には、図5(a)に示すワーク30においてスポット8Sが所定の始点P1に配置され、ピアッシング加工を行うようにレーザ光8の照射が開始される。この始点P1は、製品31の外形である矩形の1辺の中央部から、製品31の外側に斜めに少し離れて位置する。この始点P1は、後に残材35となる部分に配置される。また、始点P1は、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成する予定の位置の近傍に配置される。
【0079】
その後、スポット8Sが始点P1から、製品31の矩形の1辺の中央まで短く斜めに移動した後、矩形を描くように移動する。図5(a)には、スポット8Sが矩形状の経路を移動する途中の状態が示されている。スポット8Sが1周することにより、ワーク30が切断されて製品31が形成される。スポット8Sがループ状の経路を1周して元の位置に到達すると、レーザ光8の照射はいったん停止される。この時点で、製品31の周囲には、4つの直線状の隙間C1,C2,C3,C4が形成される。隙間C1は、後に形成される残部35aの幅方向一側の端部を形成する。
【0080】
次に、図4のステップS202に示すように、第1交差部分11Aの切り込みが行われる。ステップS202においては、制御装置5は、所定の位置にスポット8Sを形成して、ピアッシング加工を行うようにレーザ光8の照射を開始させる。ピアッシング加工が行われる位置は、ステップS201におけるスポット8Sの移動経路の終点の近傍で、かつ、製品31から僅かに外側に離れた位置となっている。このピアッシング加工により、隙間C1と第1交差部分11Aの接続箇所(第1接続位置21a)が形成される。制御装置5は、レーザの照射を継続しながら、スポット8Sを隙間C1から離れる向きに、直線と半円弧とを組み合わせた経路に沿って移動させる。スポット8Sが第1中間位置22aに到達すると、第1交差部分11Aの切込みが完了する。図5(b)には、第1交差部分11Aの切込みが完了した状態が示されている。
【0081】
次に、図4のステップS203に示すように、第1延長部分12Aの切り込みが行われる。ステップS203においては、制御装置5は、レーザ光8の照射を継続しながら、スポット8Sを第1中間位置22aから、隙間C1に近づく向きに、半円弧状の経路に沿って移動させる。スポット8Sが第1経由位置23aに到達すると、第1延長部分12Aの切込みが完了する。
【0082】
次に、図4のステップS204に示すように、第1付加部分13Aの切り込みが行われる。ステップS204においては、制御装置5は、レーザ光8の照射を継続しながら、スポット8Sを第1経由位置23aから、円弧状の経路に沿って移動させる。スポット8Sが第1終端位置24aに到達すると、第1付加部分13Aの切込みが完了し、レーザ光8の照射はいったん停止される。図6(c)には、第1延長部分12A及び第1付加部分13Aの切込みが完了した状態が示されている。
【0083】
第1交差部分11A、第1延長部分12A及び第1付加部分13Aは、レーザ光8を用いて切込みを行う連続加工によって形成される。この連続加工に関しては、スポット8Sを一筆書きの要領で移動させることができるようになっている。図4のステップS202からS204までは、レーザの照射が途切れることなく、かつ、ヘッド移動装置4の動作に切れ目を生じさせることなく、一連の処理として行われる。これにより、第1切込み部10Aを短時間で形成することができる。
【0084】
次に、図4のステップS205に示すように、第2付加部分13Bの切り込みが行われる。ステップS205においては、制御装置5は、第1切込み部10Aの第1終端位置24aの近傍にスポット8Sを形成して、ピアッシング加工を行うようにレーザ光8の照射を開始させる。これにより、第2終端位置24bが形成される。その後、スポット8Sを、第2終端位置24bから、円弧状の経路に沿って移動させる。スポット8Sが第2経由位置23bに到達すると、第2付加部分13Bの切込みが完了する。
【0085】
次に、図4のステップS206に示すように、第2延長部分12Bの切り込みが行われる。ステップS206においては、制御装置5は、レーザ光8の照射を継続しながら、スポット8Sを第2経由位置23bから、後述の隙間C5が将来形成される予定の位置から離れる向きに、半円弧状の経路に沿って移動させる。スポット8Sが第2中間位置22bに到達すると、第2延長部分12Bの切込みが完了する。図6(d)には、第2付加部分13B及び第2延長部分12Bの切込みが完了した状態が示されている。
【0086】
次に、図4のステップS207に示すように、第2交差部分11Bの切り込みが行われる。ステップS207においては、制御装置5は、レーザの照射を継続しながら、スポット8Sを第2中間位置22bから、隙間C5が形成される予定の位置に近づく向きに、半円弧と直線とを組み合わせた経路に沿って移動させる。製品32の外形である矩形の1辺の中央部(隙間C5が形成される予定の位置)にスポット8Sが到達すると、第2交差部分11Bの切り込みが完了する。図7(e)には、第2交差部分11Bの切込みが完了した状態が示されている。
【0087】
第2交差部分11B、第2延長部分12B及び第2付加部分13Bは、レーザ光8を用いて切込みを行う連続加工によって形成される。この連続加工に関しては、スポット8Sを一筆書きの要領で移動させることができるようになっている。図4のステップS205からS207までは、レーザの照射が途切れることなく、かつ、ヘッド移動装置4の動作に切れ目を生じさせることなく、一連の処理として行われる。これにより、第2切込み部10Bを短時間で形成することができる。
【0088】
次に、図4のステップS208に示すように、製品32の周囲が切断される。スポット8Sは、製品32の外形である矩形の1辺の中央部から、矩形を描くように移動する。スポット8Sが1周することにより、ワーク30が切断されて製品32が形成される。更に、ワーク30には、製品31,32が切断された残りの部分である残材35が形成される。スポット8Sがループ状の経路を1周して元の位置に到達すると、レーザの照射は停止される。この時点で、製品32の周囲には、4つの直線状の隙間C5,C6,C7,C8が形成される。隙間C5は、残材35が有する残部35aの幅方向で、前述の隙間C1と反対側の端部を形成する。また、隙間C5と第2交差部分11Bの接続箇所(第2接続位置21b)が形成される。
【0089】
残材35は、矩形の枠状に形成される。この枠のうち、対面する2つの辺の中間部同士が残部35aによって互いに接続される。残部35aは、2つの製品31,32の間に配置され、細長く形成されている。製品31,32は残材35に対して完全に分断されている。従って、切断後のワーク30をパレットとともにレーザ加工機1の加工領域の外側に搬送し、この状態で枠状の残材35の外周部を掴んで持ち上げることで、原則的には、パレットに製品31,32だけを残した状態で残材35を取り去ることができる。
【0090】
ワーク30における製品31,32の外周付近は、レーザ光8による切断時には加熱された状態となっており、切断後は自然冷却される。残部35aは細長く形成されているので、幅方向端部での加熱の影響を受け易い。従って、残部35aが、冷めるのに応じて長手方向に大きく収縮し、残材35の外枠同士を図7(f)で示す太線矢印方向に引っ張ることがある。この結果、残材35の外枠が内側に変形して、製品31,32の周囲に強く押し付けられ、製品31,32の残材35に対する分離が難しくなるおそれがある。
【0091】
この点、本実施形態では、残部35aに第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが形成されており、当該部分にバネの機能を持たせることができる。この結果、残部35aの収縮をキャンセルするようにバネ部が残部35aの長手方向に沿って図8のように伸びるので、残部35aが外枠を引っ張る力が小さくなる。従って、製品31,32は、残材によって強く把持された状態とはならない。
【0092】
しかも、本実施形態では、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bのそれぞれの切込み線が、一方が他方を巻き込むようなほぼ同心の渦巻状に形成されている。従って、切込み形成箇所における残部35aの剛性を2つの切込み線だけで適度に低下させて、十分に柔らかいバネ性を発揮させることができる。切込み線を形成するにはピアッシング加工等が必要になるが、本実施形態では少ない数の切込み線でバネを形成しているので、加工時間が長くなるピアッシング加工を減らすことができる。従って、短い加工時間で、製品31,32の残材35に対する分離性を向上できる。また、滑らかな曲線状の切込み線によって丸い渦巻を形成することでバネを実現しているので、局所的な応力集中が発生しにくい。従って、切込み形成箇所において残部35aが千切れることを防止できるので、残材35の搬送に支障が生じにくくなる。
【0093】
以上に説明したように、本実施形態のレーザ加工機1の制御装置5は、ワーク30とレーザヘッド2とを相対的に移動させてレーザヘッド2から出射するレーザ光8によりワーク30の一部を切断して製品31,32を形成するレーザ加工機に適用される。制御装置5は、製品31,32の切断に伴い、ワーク30のうち製品31,32同士の間に形成される残部35aに、第1切込み部10Aと、第2切込み部10Bと、を形成する。第1切込み部10Aは、第1交差部分11Aと、第1延長部分12Aと、を含む。第1交差部分11Aは、残部35aの幅方向の一側の端部に接続する第1接続位置21aから、残部35aの長手方向と交差する方向に延びて、残部35aの幅方向において第1接続位置21aと反対側に最も近づく第1中間位置22aに至る。第1延長部分12Aは、第1中間位置22aから、残部35aの幅方向において第1接続位置21aと同じ側に近づくように延びる。第2切込み部10Bは、第2交差部分11Bと、第2延長部分12Bと、を含む。第2交差部分11Bは、残部35aの幅方向において第1交差部分11Aが接続する側と反対側の端部に接続する第2接続位置21bから、残部35aの長手方向と交差する方向に延びて、残部35aの幅方向において第2接続位置21bと反対側に最も近づく第2中間位置22bに至る。第2延長部分12Bは、第2中間位置22bから、残部35aの幅方向において第2接続位置21bと同じ側に近づくように延びる。第1切込み部10Aと第2切込み部10Bは、残部35aの幅方向一部においてオーバーラップするように配置される。
【0094】
これにより、レーザ加工機1の制御装置5は、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bによってバネ状の部分を残部35aに形成することが可能となる。そして、レーザ光8によって熱を受けた残部35aが冷めて収縮する場合、ワーク30の残材35において第1切込み部10A及び第2切込み部10Bによるバネの機能が効果的に発揮されるように(残部35aがその長手方向に大きく伸ばされるように)、バネ状の部分のストロークを十分に確保することができる。そのため、残部35aの収縮量を緩和して、残材35による製品31,32の把持を良好に解消又は軽減することができる。従って、残材35に対する製品31,32の分離を容易にすることができる。また、第1切込み部10Aにおける第1交差部分11A及び第1延長部分12Aと、第2切込み部10Bにおける第2交差部分11B及び第2延長部分12Bとの形成を、それぞれ、レーザ光8によりワーク30を一筆書きの要領で切断することで実現できる。そのため、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの各々の形成に必要な時間を短縮することができる。従って、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bについての切断の手間を軽減することができる。更に、比較的大きな伸縮ストロークを実現するバネ状の部分を2つの切込み部で形成することができるので、切込み部を少なくできる。従って、応力が集中する箇所(特に、切込み部の端部)を減らすことができるので、応力集中によるバネ部の破断を防止することができる。この結果、例えば、残材35を製品31,32の周囲から取り除く際に、当該残材35を円滑に取り扱うことができる。
【0095】
また、本実施形態においては、図2に示すように、第1交差部分11Aは、残部35aの幅方向中心線に対して交差している。第2交差部分11Bは、残部35aの幅方向中心線に対して交差している。
【0096】
これにより、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bにより、柔らかいバネを実現することができるので、残部35aの収縮量を十分に緩和することができる。従って、残材35に対する製品31,32の分離が更に容易になる。
【0097】
また、本実施形態においては、第1延長部分12Aは、残部35aの長手方向において第2交差部分11Bと第2延長部分12Bとの間に位置する部分を有する。第2延長部分12Bは、残部35aの長手方向において第1交差部分11Aと第1延長部分12Aとの間に位置する部分を有する。
【0098】
これにより、第1切込み部10Aと第2切込み部10Bとが互いに近接する部分が増えるので、より柔らかいバネ部を残部35aに形成することができる。
【0099】
また、本実施形態において、第1切込み部10Aは、第1延長部分12Aに接続する第1付加部分13Aを含む。第2切込み部10Bは、第2延長部分12Bに接続する第2付加部分13Bを含む。第1付加部分13Aは、残部35aの長手方向において第2延長部分12Bと第2付加部分13Bとの間に位置する部分を含む。第2付加部分13Bは、残部35aの長手方向において第1延長部分12Aと第1付加部分13Aとの間に位置する部分を含む。
【0100】
これにより、第1切込み部10Aと第2切込み部10Bとが互いに近接する部分が増えるので、より柔らかいバネ部を残部35aに形成することができる。
【0101】
また、本実施形態においては、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bは、それぞれ、渦巻き形状を有する。
【0102】
これにより、コンパクトな形状で、伸縮ストロークを大きくし易い柔らかいバネ部を残部35aに形成することができる。
【0103】
また、本実施形態においては、第1交差部分11A及び第1延長部分12Aの何れも、滑らかな湾曲状部分を含む。第2交差部分11B及び第2延長部分12Bの何れも、滑らかな湾曲状部分を含む。
【0104】
これにより、応力集中が発生しにくくなるので、残部の破損を防止することができる。
【0105】
また、本実施形態においては、第1切込み部10Aの形状と第2切込み部10Bの形状とは、ワーク30の厚み方向で見たときに点対称の関係にある。
【0106】
これにより、バネ部の弾性変形時に力が均等に掛かり易くなるので、バネ部の破損を防止できる。
【0107】
また、本実施形態のレーザ加工機1の制御装置5は、判定部6を備える。この判定部6は、ワーク30の材質、ワーク30の厚さ、残部35aの長さ、及び残部35aの幅のうち少なくとも1つに基づいて、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成するか否かを判定する。
【0108】
これにより、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを必要に応じて効率よく形成することができる。
【0109】
また、本実施形態のレーザ加工機1の制御装置5は、判定部6により第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成すると判定した場合、先に取得した加工プログラムに対して第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを追加する、又は加工プログラムの修正を行う。
【0110】
これにより、レーザ加工機1において加工プログラムを変更することが可能となる。従って、レーザ加工機1とは別の装置等で加工プログラムを変更する必要がなく、オペレータの手間を省くことができる。
【0111】
また、本実施形態のレーザ加工機1は、レーザヘッド2と、前述の制御装置5と、を備える。レーザヘッド2は、ワーク30に対して相対的に移動しかつレーザ光8を出射してワーク30の切断を行う。
【0112】
これにより、残材35に対する製品31,32の分離が容易なレーザ加工機1を提供することができる。
【0113】
また、本実施形態のワーク加工方法は、ワーク30とレーザヘッド2とを相対的に移動させてレーザヘッド2から出射するレーザ光8によりワーク30の一部を切断して製品31,32を形成する。このワーク加工方法は、製品31,32の切断に伴い、ワーク30のうち製品31,32同士の間に形成される残部に、第1切込み部10Aと、第2切込み部10Bと、を形成する。
【0114】
これにより、残材35に対する製品31,32の分離し易さを向上させることができる。
【0115】
次に、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの形状に関する種々の変形例を説明する。なお、以降の変形例の説明において、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0116】
図9(a)の変形例に示すように、第1交差部分11A及び第2交差部分11Bにおいて、直線部が省略されても良い。
【0117】
図9(b)の変形例に示すように、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが、ワーク30を厚み方向で見たときに略四角形の渦巻形状となっている部分を含んでも良い。図9(b)の渦巻形状を45°回転させて、菱形の渦巻形状としても良い。渦巻形状を、四角形以外の多角形(例えば、三角形、六角形等)としても良い。
【0118】
図10(a)の変形例では、第1交差部分11Aの大部分が直線状に形成され、第1延長部分12Aの大部分が直線状に形成される。第1交差部分11Aと第1延長部分12Aとが平行に配置されている。第1中間位置22aの近傍において、第1交差部分11Aと第1延長部分12Aとが、小さな円弧状の部分によって互いに接続される。これにより、第1中間位置22aで1回折り返すだけの略J字状の第1切込み部10Aが形成される。
【0119】
同様に、第2交差部分11Bの大部分が直線状に形成され、第2延長部分12Bの大部分が直線状に形成される。第2交差部分11Bと第2延長部分12Bとが平行に配置されている。第2中間位置22bの近傍において、第2交差部分11Bと第2延長部分12Bとが、小さな円弧状の部分によって互いに接続される。これにより、第2中間位置22bで1回折り返すだけの略J字状の第2切込み部10Bが形成される。
【0120】
図10(b)の変形例では、図10(a)の構成に対して、第1延長部分12Aが、第2交差部分11Bと第2延長部分12Bとの間に位置するように変更している。また、第2延長部分12Bが、第1交差部分11Aと第1延長部分12Aとの間に位置するように変更している。
【0121】
また、図11(a)及び図11(b)に示すように、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが、V字状となるように形成しても良い。
【0122】
次に、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成する位置に関する変形例を説明する。
【0123】
第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを、図7(f)において鎖線で囲った場所、即ち、残材35の外枠部分に形成することもできる。この場合、製品31又は製品32と、ワーク30の外周と、の間の部分を残部と考えることができる。
【0124】
残材35において、2つの製品31,32の間の部分だけでなく、外枠部分も、切断後の冷却によって収縮し得る。しかしながら、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを鎖線の部分に形成すれば、製品31,32が残材35に強く把持された状態とはならない。従って、残材35に対する製品31,32の分離を更に容易にすることができる。
【0125】
第1切込み部10A及び第2切込み部10Bによるバネ部を残材35の外枠部分に配置する構成は、ワーク30に製品を1つしか形成せず、残材35が外枠部分だけになる場合にも適用することができる。
【0126】
続いて、本発明を加工プログラム生成装置に適用した場合について、図12を参照して説明する。図12は、本発明の一実施形態に係る加工プログラム生成装置100を示す機能ブロック図である。
【0127】
加工プログラム生成装置100は、レーザ加工機1で用いられる加工プログラムを生成することができる。加工プログラムは、少なくとも1つの製品をワーク30に形成するためにレーザヘッド2などを動作させるプログラムである。加工プログラム生成装置100は、制御部101と、記憶部102と、入力部103と、表示部104と、を有している。加工プログラム生成装置100は、例えば、デスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータや、タブレット型携帯端末などにより実現される。
【0128】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置や、電子情報を送受信するための通信インタフェースを有している。この通信インタフェースは、有線方式及び無線方式のいずれであっても良い。制御部101は、判定部105を有している。判定部105は、例えば上記の判定部6と同様に、レーザ加工機1において加工が施されるワーク30に第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成するか否かを判定する。記憶部102には、例えば制御部101で生成された加工プログラム等の各種プログラムや、加工プログラムを生成する際に必要な生成プログラムなど各種情報が記憶される。また、記憶部102には、例えば、レーザヘッド2の移動に関する情報や、ワーク30の材質や厚さに関する情報等が記憶されても良い。
【0129】
入力部103は、例えば、レーザ加工機1においてワーク30を加工する際に必要な情報を入力することができる。このような情報としては、例えば製品の形状に関する情報等が挙げられる。入力部103としては、例えば、キーボード又はマウス等が用いられる。なお、入力部103として、例えば表示部104と一体的に形成されたタッチパネルが用いられても良い。表示部104は、制御部101における算出結果や、記憶部102に格納されている情報、入力部103によって入力される情報、制御部101が通信インタフェースを介して取得した情報などを表示する。表示部104としては、例えば、液晶ディスプレイ等が用いられる。
【0130】
図12に示すように、加工プログラム生成装置100は、通信回線を介してバス106に接続されている。加工プログラム生成装置100は、同じくバス106に接続されたレーザ加工機1及び上位コントローラ200との間で通信することができる。これにより、生成した加工プログラムをレーザ加工機1や上位コントローラ200に容易に送信することができ、例えばレーザ加工機1から離れた場所で加工プログラムを生成した場合でも迅速にデータを送ることができる。
【0131】
加工プログラム生成装置100は、スタンドアローンの構成であっても良い。この場合、生成した加工プログラムは、持ち運び可能なUSBメモリ等の記憶媒体に格納され、レーザ加工機1や上位コントローラ200に記憶媒体を介して送られる構成とすることができる。
【0132】
次に、上記のように構成された加工プログラム生成装置100を用いて加工プログラムを生成する動作を説明する。図13は、加工プログラム生成装置100における処理の流れを示すフローチャートである。
【0133】
図13に示すように、先ず、レーザ加工機1で形成される製品の形状に関する情報が制御部101に入力される(ステップS301)。ステップS301の製品形状の入力は、入力部103によってオペレータにより入力されるほかに、記憶部102によって記憶されている製品の設計情報を選択して用いても良い。また、製品の設計情報を上位コントローラ200や他の制御装置の記憶部から無線又は有線によりダウンロードして入手しても良い。また、ステップS301において、例えばワーク30の材質や厚さが入力されても良い。
【0134】
次に、制御部101は、入力された製品形状に関する情報に基づいて加工プログラムを生成する(ステップS302)。生成された加工プログラムは、例えば記憶部102に記憶される。
【0135】
次に、判定部105は、記憶部102に記憶された加工プログラムを読み込み、例えばワーク30の材質、ワーク30の厚さ、残部35aの長さ(長手方向の寸法)、残部35aの幅(短手方向の寸法)のうち少なくとも1つに基づいて、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成するか否かを判定する(ステップS303)。この判定は、図3のステップS102で説明した場合と同様に行えば良い。
【0136】
判定部105によって第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが必要であると判定された場合、制御部101は、加工プログラムに第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成する工程を追加する(ステップS304)。この処理は、図3のステップS103と同様に行うことができる。第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを形成する工程が追加された加工プログラムは、例えば記憶部102に記憶される。判定部105によって第1切込み部10A及び第2切込み部10Bが不要であると判定された場合、ステップS304の処理は行われない。
【0137】
こうして、加工プログラムの生成を終了する。生成した加工プログラムは、レーザ加工機1にワーク30の切断を実行させることができるものである。完成した加工プログラムは、オペレータの操作によって、バス106を介してレーザ加工機1又は上位コントローラ200に送られても良いし、持運び可能な記憶媒体に格納されても良い。
【0138】
上記の加工プログラム生成装置100においては、判定部105を省略して、例えば、入力された製品形状に対して一律に第1切込み部10A及び第2切込み部10Bを加えるようにして加工プログラムを生成しても良い。
【0139】
以上に説明したように、本実施形態の加工プログラム生成装置100は、ワーク30とレーザヘッド2とを相対的に移動させてレーザヘッド2から出射するレーザ光8によりワーク30の一部を切断して製品を形成するレーザ加工機1に対して、加工処理を実行させる加工プログラムを生成するものである。加工プログラム生成装置100は、ワーク30の残部35aに、上述の第1切込み部10Aと、第2切込み部10Bと、を形成させる加工プログラムを生成する。
【0140】
これにより、残材に対する製品の分離し易さを向上させることができる加工プログラムを生成することができる。
【0141】
また、本実施形態では、ワーク30とレーザヘッド2とを相対的に移動させてレーザヘッド2から出射するレーザ光8によりワーク30の一部を切断して製品を形成するレーザ加工機1に対して、加工処理を実行させる加工プログラムを、以下のようにして生成する。この加工プログラム生成方法では、ワーク30の残部35aに、上述の第1切込み部10Aと、第2切込み部10Bと、を形成させる加工プログラムを生成する。
【0142】
これにより、残材に対する製品の分離し易さを向上させることができる加工プログラムを生成する方法を得ることができる。
【0143】
なお、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0144】
例えば、第1切込み部10A及び第2切込み部10Bの形状については、上記した実施形態及び変形例に記載の形状に限定されず、直線状部分、湾曲状部分又はこれらを組み合わせたものからなる他の形状であっても良い。また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせて、それらを残部35aに形成させてもよい。
【符号の説明】
【0145】
1 レーザ加工機
2 レーザヘッド
3 レーザ光源
4 ヘッド移動装置
5 制御装置
6 判定部
8 レーザ光
8S スポット
10A 第1切込み部
10B 第2切込み部
11A 第1交差部分
11B 第2交差部分
12A 第1延長部分
12B 第2延長部分
13A 第1付加部分
13B 第2付加部分
30 ワーク
31,32 製品
35a 残部
100 加工プログラム生成装置
101 制御部
102 記憶部
103 入力部
104 表示部
105 判定部
106 バス
200 上位コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13