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特許7108240ガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/02 20060101AFI20220721BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20220721BHJP
   B24B 7/24 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B24B49/02 Z
C03C19/00 Z
B24B7/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019079994
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020175483
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 真澄
(72)【発明者】
【氏名】大野 和宏
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101967(JP,A)
【文献】特開2012-11547(JP,A)
【文献】特開2017-534471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/02
C03C 19/00
B24B 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の端面の位置を検出する位置検出装置を備えたガラス板の製造装置において、
前記位置検出装置が、前記ガラス板の第一辺の端面及び前記第一辺と交差する第二辺の端面とそれぞれ接触するように移動可能な接触子と、前記接触子を前記第一辺の端面側及び前記第二辺の端面側に付勢する付勢部と、前記接触子の位置を検出する検出部と、を備えていることを特徴とするガラス板の製造装置。
【請求項2】
前記接触子が、前記第一辺及び前記第二辺が交差する角部を介して、前記第一辺の端面から前記第二辺の端面に乗り移るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造装置。
【請求項3】
前記接触子が前記ガラス板の主表面に沿った平面内で揺動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項4】
前記付勢部及び前記検出部が、サーボモータによって構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス板の製造装置。
【請求項5】
前記接触子のうち前記ガラス板と接触する部分は、ローラであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス板の製造装置。
【請求項6】
前記位置検出装置で検出された前記第一辺の端面及び前記第二辺の端面のそれぞれの位置に基づいて前記第二辺の端面を加工する砥石を備えていることを請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス板の製造装置。
【請求項7】
ガラス板の端面の位置を検出する位置検出工程を備えたガラス板の製造方法において、
前記位置検出工程は、前記ガラス板の第一辺の端面及び前記第一辺と交差する第二辺の端面とそれぞれ接触するように、接触子を付勢しながら移動させる工程と、前記接触子の位置を検出する工程と、を備えていることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記接触子が、前記第一辺及び前記第二辺が交差する角部を介して、前記第一辺の端面から前記第二辺の端面に乗り移ることを特徴とする請求項7に記載のガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ等の生産効率に対する改善要請に応じるべく、当該ディスプレイ等に使用されるガラス基板の製造効率に対する改善要求が高まっている。ここで、ガラス基板の製造では、大型のガラス原板(成形原板)から一枚又は複数枚のガラス基板を切り出すことが行われている。これにより、所望の寸法のガラス基板が取得できる。
【0003】
一方で、ガラス原板から切り出されたガラス基板の端面は、通常、切断面又は折割面となるため、微小な傷(欠陥)が存在することが多い。ガラス基板の端面に傷があると、その傷から割れ等が発生する。そのため、このような不具合を防止するために、例えばガラス基板の端面に対して研削加工(粗加工)や、研磨加工(仕上げ加工)が施される。
【0004】
この種の端面加工に用いられるガラス板の端面加工装置として、例えば特許文献1には、ガラス板の角部(隅部)を砥石で研削する装置が開示されている。
【0005】
同文献では、先頭側に位置するガラス板の先頭辺(隅部又はその近傍)の端面の位置を検出装置により検出し、その端面の位置に基づいて砥石の位置決めがなされる。検出装置は、水平方向に配置された軸を中心として揺動自在なアームと、アームまでの距離を測定する距離センサと、を備える。ガラス板の搬送に伴って、アームにガラス板の先頭辺の端面が接触すると、アームがガラス板の主表面と垂直な平面内で揺動し、距離センサで測定されるアームまでの距離が変化する。そのため、検出手段は、この距離の変化に基づいてガラス板の先頭辺の端面の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2012/105306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の検出装置では、ガラス板の先頭辺の端面の位置は検出され得るが、側方側に位置する側方辺の端面の位置は直接検出されない。つまり、ガラス板の側方辺の端面の位置は考慮せずに、ガラス板の先頭辺の端面の位置のみに基づいて砥石の位置決めを行っているため、側方辺の端面の位置がずれている場合などには、砥石による加工不良が生じるおそれがある。したがって、砥石による加工不良を防止する観点からは、ガラス板の先頭辺の端面の位置だけではなく、側方辺の端面の位置も検出することが望まれる。
【0008】
本発明は、ガラス板の先頭辺の端面及び側方辺の端面のそれぞれの位置を検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラス板の端面の位置を検出する位置検出装置を備えたガラス板の製造装置において、位置検出装置が、ガラス板の第一辺の端面及び第一辺と交差する第二辺の端面とそれぞれ接触するように移動可能な接触子と、接触子を第一辺の端面側及び第二辺の端面側に付勢する付勢部と、接触子の位置を検出する検出部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、接触子が、付勢部によって付勢されながら移動し、その移動過程でガラス板の第一辺(例えば先頭辺)の端面及び第二辺(例えば側方辺)の端面のそれぞれと接触する。そして、第一辺の端面と接触しているときの接触子の位置及び第二辺の端面と接触しているときの接触子の位置を検出部で検出することにより、第一辺の端面及び第二辺の端面のそれぞれの位置を検出できる。
【0011】
上記の構成において、接触子が、ガラス板の第一辺及び第二辺が交差する角部を介して、第一辺の端面から第二辺の端面に乗り移るように構成されていることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、第一辺の端面の位置を検出した後、第二辺の端面の位置検出を円滑に開始できる。
【0013】
上記の構成において、接触子がガラス板の主表面に沿った平面内で揺動可能であることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、簡単な構成で接触子をガラス板の第一辺の端面及び第二辺の端面に確実に接触させることができる。また、接触子がガラス板から反力を受けた場合に、その荷重を揺動によって簡単に逃がすことができるため、ガラス板の端面に対する接触子の接触状態が安定し、第一辺の端面や第二辺の端面の位置の検出精度が向上する。
【0015】
上記の構成において、付勢部及び検出部が、サーボモータによって構成されていることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、サーボモータが、付勢部と検出部との二つの役割を同時に果たすため、検出装置の構成を簡素化できる。
【0017】
上記の構成において、接触子のうちガラス板と接触する部分が、ローラであることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、接触子が回転可能なローラとなるため、その回転に伴って接触子のうちのガラス板の端面と接触する部分が順に変化し、接触子の摩耗を抑制できる。また、ガラス板の端面が接触子と接触するのに伴い、ガラス板の端面に傷が形成されたり、ガラス粉が発生したりするのも低減できる。
【0019】
上記の構成において、位置検出装置で検出された第一辺の端面及び第二辺の端面の位置に基づいて、第二辺の端面を加工する砥石を備えていることが好ましい。
【0020】
本発明では、交差する第一辺及び第二辺のそれぞれの端面の位置が検出されるため、第第二辺の端面を砥石で加工する場合、第一辺の端面の位置により第二辺の加工開始点が分かり、第二辺の端面の位置により第二辺の端面の加工量(必要切込み量)が分かる。したがって、上記の構成とすれば、砥石で端面を加工する前に、ガラス板を正確に位置決めする必要がなくなるため、ガラス板の位置決め装置を省略又は簡略化できるという利点がある。
【0021】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラス板の端面の位置を検出する位置検出工程を備えたガラス板の製造方法において、位置検出工程は、ガラス板の第一辺の端面及び第一辺と交差する第二辺の端面とそれぞれ接触するように、接触子を付勢しながら移動させる工程と、接触子の位置を検出する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0022】
このようにすれば、上記の対応する構成で説明した同様の理由により、第一辺の端面及び第二辺の端面のそれぞれの位置を正確に検出できる。
【0023】
上記の構成において、接触子は、第一辺及び第二辺が交差する角部を介して、第一辺の端面から第二辺の端面に乗り移ることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、第一辺の端面の位置を検出した後、第二辺の端面の位置検出を円滑に開始できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ガラス板の先頭辺の端面及び側方辺の端面のそれぞれの位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第一実施形態に係るガラス板の製造装置を示す平面図である。
図2】(A)~(C)は、第一実施形態に係るガラス板の製造装置の位置検出装置を示す平面図である。
図3】第一実施形態に係るガラス板の製造装置の端面加工装置を示す平面図である。
図4】第二実施形態に係るガラス板の製造装置の位置検出装置を示す平面図である。
図5】第三実施形態に係るガラス板の製造装置の位置検出装置を示す平面図である。
図6】第四実施形態に係るガラス板の製造装置の位置検出装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、第二実施形態以降においては、その他の実施形態と共通する構成は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0028】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係るガラス板の製造装置1は、位置検出装置2と、端面加工装置3と、を備えている。
【0029】
本実施形態では、矩形状のガラス板Gを所定位置で固定した状態で、位置検出装置2及び端面加工装置3は、送り装置(図示なし)によって図中のX方向に移動可能である。端面加工装置3は、X方向と直交する図中のY方向にも移動可能である。詳細には、2つの位置検出装置2がガラス板Gを挟んでY方向に対向する位置に1つずつ配置されると共に、そのX方向の上流側(図1の左側)に、4つの端面加工装置3が、ガラス板Gを挟んで幅方向(Y方向)に対向する位置に2つずつ配置されている。つまり、ガラス板Gの幅方向の一方側に配置された位置検出装置2及び端面加工装置3に着目すると、X方向への移動に伴って、先に1つの位置検出装置2がガラス板Gと接触し、その後に2つの端面加工装置3がガラス板Gと順番に接触する。
【0030】
なお、図1における上側及び下側の位置検出装置2及び端面加工装置3は、実質的に同じ構成であるため、以下では上側の各装置2,3を例にとって説明する。
【0031】
位置検出装置2は、ガラス板Gの先頭辺(第一辺)Gaの端面Ga1及び側方辺(第二辺)Gbの端面Gb1と接触するように移動可能な接触子21を備える。なお、位置検出装置2及び端面加工装置3がガラス板Gに進入する側の辺を先頭辺Gaとし、位置検出装置2及び端面加工装置3がガラス板Gから離脱する側の辺を後尾辺Gcとする。また、先頭辺Ga及び後尾辺Gcと交差すると共に、幅方向に対向する二辺を側方辺Gbとする。
【0032】
接触子21は、ガラス板Gの先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1と接触するローラ22と、ローラ22を回転自在に支持するレバー部材23と、ローラ22がガラス板Gの端面Ga1,Gb1を押圧する力をレバー部材23に生じさせるサーボモータ24と、を備える。
【0033】
ローラ22は、モータ等を備えた駆動ローラであってもよいが、本実施形態では端面Ga1,Gb1との接触に伴って転動するフリーローラである。ローラ22は、円筒状以外の形状(例えば球状ローラ)であってよいが、本実施形態では円筒状である。ローラ22が円筒状の場合、端面Ga1,Gb1の最突出部の位置を常に検出でき、位置検出精度が向上するという利点がある。
【0034】
サーボモータ24は、正逆方向に回転可能なモータ軸24aを有する。レバー部材23の一端部はローラ22を支持しており、レバー部材23の他端部はサーボモータ24のモータ軸24aに固定されている。そのため、レバー部材23は、モータ軸24aを中心として、ガラス板Gの主表面(厚み方向で対向する面)に沿った平面内で揺動可能である。なお、レバー部材23の揺動軌道上には、レバー部材23の揺動範囲(或いはローラ22の移動範囲)を規制するストッパ25が設けられている。ストッパ25は、ローラ22がガラス板Gと接触している間、レバー部材23から退避可能である。
【0035】
サーボモータ24は、制御部26を備える。
【0036】
制御部26は、検出されたモータ軸24aの速度やトルク、位置(図2(A)~(C)の揺動角度α)を監視し、ローラ22が端面Ga1,Gb1を押圧する力が一定になるように、モータ軸24aの速度やトルク、位置のフィードバック制御を行う。つまり、サーボモータ24は、ローラ22を端面Ga1,Gb1に押し当てる方向に付勢する付勢部として機能する。また、制御部26は、モータ軸24aの位置に基づいてローラ22の位置を演算する。つまり、サーボモータ24は、ローラ22の位置を検出する検出部としても機能する。なお、ローラ22が先頭辺Gaの端面Ga1と接触しているときのローラ22の位置から先頭辺Gaの端面Ga1の位置を検出でき、ローラ22が側方辺Gbの端面Gb1と接触しているときのローラ22の位置から側方辺Gbの端面Gb1の位置を検出できる。
【0037】
端面加工装置3は、位置検出装置2の検出結果(端面Ga1,Gb1の位置)に基づいて、側方辺Gbの端面Gb1のX方向における加工開始位置や、その端面Gb1を加工する際のY方向における基準位置を調整する。
【0038】
端面加工装置3は、加工具としての砥石31を回転駆動するモータ32と、砥石31を回転可能に支持するアーム部材33と、砥石31がガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1を押圧するための駆動力(出力)を発生するアクチュエータ34と、アクチュエータ34の駆動力をアーム部材33に伝達するリンク機構35と、を備える。
【0039】
モータ32には、同期モータ、インダクションモータ、サーボモータ等が使用され得るが、これに限定されない。
【0040】
アーム部材33は、支持軸部材36によって回転自在に支持されており、支持軸部材36を中心として揺動可能である。支持軸部材36は、アーム部材33の中間部分を支持している。アーム部材33の一端部はモータ32を支持しており、このモータ32を介して砥石31が支持されている。アーム部材33の他端部は、リンク機構35に連結されている。なお、図示は省略するが、アーム部材33の揺動軌道上には、アーム部材33の揺動範囲(或いは砥石31の移動範囲)を規制するストッパが設けられている。ストッパは、砥石31がガラス板Gと接触している間、アーム部材33から退避可能である。
【0041】
アクチュエータ34は、本実施形態では、正逆方向に回転可能な回転軸34aを有するサーボモータから構成される。アクチュエータ34は、図示しない制御部を備え、フィードバック制御が行われるようになっている。
【0042】
リンク機構35は、第一リンク部材35aと、第二リンク部材35bと、をそれぞれ揺動可能に備える。第一リンク部材35aは、その一端部がアクチュエータ34の回転軸34aに固定され、その他端部が第一ジョイント35cを介して第二リンク部材35bの一端部に揺動自在に連結されている。つまり、第一リンク部材35aは、回転軸34aの回転により、回転軸34aを中心として揺動する。第二リンク部材35bの他端部は、第二ジョイント35dを介してアーム部材33の他端部に揺動自在に連結されている。本実施形態では、第二ジョイント35dの中心、支持軸部材36の中心及び砥石31の回転軸31aの中心が同一直線上に配列されている。なお、アクチュエータ34とアーム部材33とを直接連結し、リンク機構35を省略してもよい。
【0043】
図3に示すように、アクチュエータ34の回転軸34aが反時計回りに回転すると、リンク機構35によってアーム部材33も支持軸部材36を中心に反時計回りに回転する。これに伴い、砥石31がガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1に押し当てられる方向に移動し、砥石31が端面Gb1を押圧する力が増加する。一方、図3とは反対にアクチュエータ34の回転軸34aが時計回りに回転すると、リンク機構35によってアーム部材33も支持軸部材36を中心に時計回りに回転する。これに伴い、砥石31がガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1から引き離される方向に移動し、砥石31が端面Gb1を押圧する力が減少する。
【0044】
アクチュエータ34の制御部は、フィードバック制御により、アクチュエータ34の回転軸34aの速度、トルク及び位置を監視する。この速度、トルク及び位置に応じてアクチュエータ34の回転軸34aを正逆方向に回転させることにより、砥石31の位置や押圧力を制御する。
【0045】
砥石31は、例えば、端面Gb1の面取りを主たる目的とする研削用の砥石でもよいし、端面Gb1の微小な凹凸を均すことを主たる目的とする研磨用の砥石でもよい。研磨用の砥石における砥粒の粒度は、研削用の砥石における砥粒の粒度と同じか、それよりも大きい。研削用の砥石における砥粒の粒度は、例えば#100~#1000とすることができ、研磨用の砥石における砥粒の粒度は、例えば#200~#1000とすることができる。砥石31の直径は、例えば100~200mmである。
【0046】
端面Gb1を先に加工する下流側(図1の右側)の端面加工装置3の砥石31と、これに追随して端面Gb1を後から加工する上流側(図1の左側)の端面加工装置3の砥石31とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。異なる種類の態様としては、例えば、下流側の端面加工装置3の砥石31を研削用の砥石とし、上流側の端面加工装置3の砥石31を研磨用の砥石とする場合が挙げられる。もちろん、一方側の側方辺Gbに対応する端面加工装置3の配置個数は2つに限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0047】
次に、上記の構成の位置検出装置2及び端面加工装置3を用いたガラス板の製造方法を説明する。
【0048】
本実施形態に係る製造方法は、ガラス板Gを準備する準備工程と、ガラス板Gの先頭辺Ga及び側方辺Gbの端面Ga1,Gb1の位置を検出する位置検出工程と、ガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1を加工する端面加工工程と、を備える。なお、端面加工工程後にガラス板Gの洗浄、検査、梱包等の工程を行ってもよい。
【0049】
準備工程では、所定位置に配置された載置台(例えば定盤)の上に、ガラス板Gを吸着等の任意の方法で固定する。この際、位置検出装置2及び端面加工装置3は、ガラス板Gの先頭辺Gaよりも上流側(図1の左側)で待機している。
【0050】
ガラス板Gは、公知の成形方法によって成形原板を得た後、その成形原板を所定寸法で切り出すことによって得られる。成形方法としては、例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法などのダウンドロー法や、フロート法が利用できる。中でも、オーバーフローダウンドロー法は、両側の表面が火造り面となって高い表面品位を実現できるため好ましい。ガラス板Gは例えば液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板に利用される。
【0051】
ガラス板Gは、矩形の板形状を有している。ガラス板Gの厚み寸法は例えば0.05mm~10mmであることが好ましく、0.2mm~0.7mmであることがより好ましい。もちろん、本発明を適用可能なガラス板Gは上記形態には限定されない。例えば矩形以外の形状(例えば多角形)を有するガラス板や、厚み寸法が0.05mm~10mmを外れるサイズのガラス板に対しても本発明を適用し得る。
【0052】
位置検出工程は、ガラス板Gの先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1と接触するように、接触子21を付勢しながら移動させる移動工程と、接触子21の位置を検出する検出工程と、を備える。
【0053】
図2(A)~(C)に示すように、移動工程では、位置検出装置2をX方向に移動させる。この過程で、まず、図2(A)に示すように、ローラ22がガラス板Gの先頭辺Gaの端面Ga1に接触する。この状態から位置検出装置2が更にX方向に移動すると、図2(B)及び(C)に示すように、レバー部材23の揺動を伴いながら、ローラ22がガラス板Gの先頭辺Gaの端面Ga1を角部Gdに向かって移動した後、角部Gdを介してガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1に乗り移り、側方辺Gbの端面Gb1を後尾側に移動する。この間、サーボモータ24のモータ軸24aは反時計回りに回転し、ローラ22がガラス板Gのそれぞれの端面Ga1,Gb1に押し当てられる方向に付勢される。このようにすれば、ローラ22がガラス板Gの先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1に確実に接触し続ける。
【0054】
検出工程では、上記の態様で移動するローラ22の位置を検出する。ローラ22の位置は、サーボモータ24のモータ軸24aの揺動角度α、つまり、レバー部材23の揺動角度に基づいて演算する。そして、ローラ22がガラス板Gの先頭辺Gaの端面Ga1と接触しているときのローラ22の位置から端面Ga1の位置を検出し、ローラがガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1と接触しているときのローラ22の位置から端面Gb1の位置を検出する。なお、本実施形態では、ローラ22はガラス板Gの角部Gdにも接触するため、このときのローラ22の位置から角部Gdの位置も検出できる。或いは、検出された端面Ga1、Gb1の位置から角部Gdの位置を算出してもよい。また、ローラ22を側方辺Gbの全長にわたって端面Gb1と接触させる場合、ローラ22が角部Geと接触するときのローラ22の位置から角部Geの位置も検出できる。
【0055】
図1及び図3に示すように、端面加工工程では、位置検出装置2に追随するように、端面加工装置3をX方向に移動させる。端面加工装置3は、位置検出装置2で検出された先頭辺Gaの端面Ga1の位置及び/又は角部Gdの位置に基づいて、端面加工装置3による端面Gb1の加工開始位置を決定する。同様に、位置検出装置2で検出された側方辺Gbの端面Gb1の位置に基づいて、端面Gb1を加工する際の端面加工装置3のY方向における基準位置を決定する。つまり、端面加工装置3のY方向における基準位置を調整することで、端面Gb1の位置ずれが補正される。したがって、砥石31で端面Gb1を加工する前に、ガラス板Gを正確に位置決めする必要がなくなるため、ガラス板Gの位置決め装置(位置決め工程)を省略又は簡略化できるという利点がある。
【0056】
端面加工工程では、まず、端面加工装置3全体のY方向移動によって、回転した状態の砥石31を所定の基準位置に配置する。この状態で、端面加工装置3をX方向に移動させ、砥石31をガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1に接触させる。この加工開始時(角部Gd近傍の加工時)に、砥石31とガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1の接触に伴う衝撃により、砥石31がガラス板Gから離れようとする。これに対応するため、制御部がアクチュエータ34の回転軸34aの速度及びトルクのフィードバック制御(例えばPID制御)を行う。具体的には、制御部が、アクチュエータ34の回転軸34aの速度に基づいて砥石31と共に移動するアーム部材33の動きを検出する。この検出結果に応じて、制御部は、アーム部材33の移動を抑制するように、アクチュエータ34の回転軸34aの速度及びトルクを制御する。これにより、砥石31がガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1から離れないように、砥石31の押圧力が調整される。そのため、加工開始時における砥石31のバウンドを防止できる。
【0057】
また、ガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1の中間部分(角部Gdと角部Geの間の部分)の加工でも、アクチュエータ34の回転軸34aの速度及びトルクのフィードバック制御を行う。その際、速度制御とトルク制御の比率を変更し、トルク制御の比率を高くする。この比率の変更は、ゲインの設定を変更することで実施できる。これにより、ガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1の加工量を搬送方向で一定に維持できる。
【0058】
上記の端面加工が終了すると、砥石31とガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1との接触が解除されるので、アクチュエータ34の回転軸34aのトルクが急激に減少する。そのため、加工終了時(角部Ge近傍の加工時)は、砥石31の位置が一定となるようにアクチュエータ34の制御部が回転軸34aの速度及びトルクのフィードバック制御を行う。なお、アクチュエータ34の制御部による上記の制御方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0059】
図3に示すように、端面加工工程では、アクチュエータ34の回転軸34aが反時計回りに回転し、砥石31をガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1に対して押し当てる方向に移動させる場合と、図示は省略するが、アクチュエータ34の回転軸34aが時計回りに回転し、砥石31をガラス板Gの側方辺Gbの端面Gb1に対して引き離す方向に移動させる場合とがある。
【0060】
(第二実施形態)
図4に示すように、第二実施形態に係るガラス板の製造装置1が、第一実施形態に係るガラス板の製造装置1と相違するところは、位置検出装置2の接触子21を付勢する付勢部及びその位置を検出する検出部の構成である。
【0061】
第二実施形態では、付勢部は、ローラ22が先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1に押し当てられる方向にレバー部材23を引き込む引張バネ41を備える。引張バネ41は、その一端部がレバー部材23に固定された受け部42に取り付けられ、その他端部が位置検出装置2のベース部43等に取り付けられている。なお、レバー部材23の一端部は、ローラ22を支持しており、レバー部材23の他端部は、支持軸部材44によって回転自在に支持されている。
【0062】
なお、図示は省略するが、付勢部は、ローラ22が先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1に押し当てられる方向にレバー部材23を押し込む圧縮バネであってもよい。
【0063】
検出部は、ローラ22の位置を検出できる構成であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、サーボモータ24に代えて距離センサ45を備える。距離センサ45は、レバー部材23に固定された反射部材46までの距離を測定可能な光学式センサである。なお、距離センサ45の構成は特に限定されるものではなく、公知のセンサを利用できる。検出部は、例えば、距離センサ45で測定された距離に基づいて支持軸部材44の揺動角度を算出し、その揺動角度からローラ22の位置を検出する。
【0064】
(第三実施形態)
図5に示すように、第三実施形態に係るガラス板の製造装置1が、第二実施形態に係るガラス板の製造装置1と相違するところは、位置検出装置2の接触子21を付勢する付勢部の構成である。
【0065】
第三実施形態では、付勢部は、ローラ22が先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1に押し当てられる方向にレバー部材23を引き込むシリンダ51を備える。
【0066】
シリンダ51は、例えば、空気式シリンダ、油圧式シリンダ、電動シリンダ(リニアサーボモータを含む)などを採用できる。
【0067】
図示は省略するが、付勢部は、ローラ22が先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1に押し当てられる方向にレバー部材23を押し込むシリンダであってもよい。
【0068】
なお、位置検出装置2の接触子21の位置を検出する検出部は、ローラ22の位置を検出できる構成であれば特に限定されるものではないが、第二実施形態と同様に、例えば、シリンダ51の先端側に固定された反射部材46までの距離を測定する距離センサ45を備える。
【0069】
(第四実施形態)
図6に示すように、第四実施形態に係るガラス板の製造装置1が、第一~第三実施形態に係るガラス板の製造装置1と相違するところは、位置検出装置2の接触子21の構成である。
【0070】
第一~第三実施形態では、接触子21が、ローラ22を円弧状の軌道に沿って揺動させる揺動機構(レバー部材23)を備える場合を説明したが、第四実施形態では、接触子21は、ローラ22をガラス板Gの先頭辺Gaの端面Ga1及び側方辺Gbの端面Gb1に接触させるために、ローラ22を直線状の軌道によって往復動させる直動機構を備える。
【0071】
本実施形態では、直動機構は、先端のロッド部61aにローラ22を支持したシリンダ61である。シリンダ61は、ガラス板Gの先頭辺Ga及び側方辺Gbの両方に対して傾斜(例えば45°傾斜)した直線状の軌道に沿って伸縮可能である。
【0072】
シリンダ61は、ローラ22が先頭辺Gaの端面Ga1側及び側方辺Gbの端面Gb1側に押し当てられる方向にローラ22を付勢する付勢部として機能する。シリンダ61の設定ストロークは、ローラ22の移動範囲を規制するストッパとして機能する。
【0073】
シリンダ61は、例えば、空気式シリンダ、油圧式シリンダ、電動シリンダ(リニアサーボモータを含む)などを採用できる。
【0074】
位置検出装置2の接触子21の位置を検出する検出部は、ローラ22の位置を検出できる構成であれば特に限定されるものではないが、第二実施形態と同様に、例えば、反射部材46までの距離を測定する距離センサ45を備える。この場合、反射部材46は、例えばシリンダ61のロッド部61aに固定される。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、もちろん本発明に係るガラス板の製造装置及び製造方法はこの形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の形態をとることが可能である。
【0076】
上記の実施形態では、ガラス板Gが固定され、位置検出装置2及び端面加工装置3が移動する場合を説明したが、搬送装置によりガラス板Gが移動し、位置検出装置2及び端面加工装置3が固定されていてもよい。つまり、両者の間に相対移動があればよい。搬送装置によりガラス板Gを移動させる場合、例えば、ガラス板Gの裏側の主表面をベルト等で吸着しながら搬送してもよいし、その表裏両側の主表面を厚み方向で対向するベルト等で挟んで搬送してもよい。
【0077】
上記の実施形態では、ガラス板Gの幅方向の両側に計2つの位置検出装置2を配置する場合を説明したが、ガラス板Gの幅方向の一方側のみに位置検出装置2を配置してもよい。この場合、例えば、一方側に配置された位置検出装置2によって検出された端面Ga1及び一方の端面Gb1の位置に基づいて、ガラス板Gの幅方向の両側に配置された端面加工装置3の加工条件が調整される。
【0078】
上記の実施形態において、位置検出装置2のローラ22が側方辺Gbの全長にわたって端面Gb1を移動する場合、つまり、位置検出装置2がガラス板Gの側方辺Gbの全長にわたって端面Gb1の位置を検出する場合、検出された端面Gb1の位置に応じて砥石31の位置(端面加工装置3のY方向における基準位置)を順次調整(補正)してもよい。もちろん、ローラ22は、側方辺Gbの端面Gb1の位置が検出された時点、つまり、例えば側方辺Gbの端面Gb1における角部Gdの近傍で、サーボモータ等の働きによって、側方辺Gbの端面Gb1から引き離されるようにしてもよい。
【0079】
上記の実施形態では、位置検出装置2の接触子21のうち、ガラス板Gの端面Ga1,Gb1と接触する部分がローラ22である場合を説明したが、当該部分は端面Ga1,Gb1上を摺動する非転動体(例えば針状部材、板状部材、円筒状部材など)であってもよい。
【0080】
上記の実施形態では、端面加工装置3のアクチュエータ34として回転軸を有するサーボモータを例示したが、アクチュエータ34は、空気圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、電気機械アクチュエータ等、サーボモータ以外の公知のアクチュエータであってもよい。
【0081】
上記の実施形態では、端面加工工程において、端面Gb1に対する砥石31の押圧力を一定の大きさに維持した状態で端面Gb1の加工を行う、いわゆる定圧式の端面加工方法を例示したが、ガラス板Gの幅方向(Y方向)における砥石31の位置を固定した状態で端面Gb1の加工を行う、いわゆる固定式の端面加工方法を採用してもよい。或いは、例えば、下流側の砥石31を固定式とし、上流側の砥石31を定圧式とし、両者を併用してもよい。
【0082】
上記の実施形態では、位置検出装置2によってガラス板Gの端面Ga1及び端面Gb1の位置を検出する位置検出工程を行った後に、端面加工装置3によってガラス板Gの端面Gb1を加工する端面加工工程を行う場合を説明したが、上記の位置検出工程は、後工程が端面加工工程である場合に限定されない。つまり、上記の位置検出工程は、ガラス板Gの位置を検出する必要がある種々の製造関連処理工程(例えば成膜など)の前工程として利用できる。
【0083】
上記の実施形態では、サーボモータ24や引張バネ41、シリンダ51,61により、ローラ22を端面Ga1,Gb1に押し当てる方向に付勢する。この場合、付勢による一時的な振動(例えばローラ22のバウンド)を防止するため、減衰機構を設けてもよい。第一実施形態であれば、加工開始時における砥石31のバウンドを防止と同様に、ローラ22(レバー部材23)の移動を抑制するように、サーボモータ24の回転軸の速度及びトルクを制御することにより、一時的な振動(例えばローラ22のバウンド)を防止することが好ましい。この場合、減衰機構を省略でき、位置検出装置の構成が煩雑化するのを防止しつつ、一時的な振動を防止できる。
【符号の説明】
【0084】
1 製造装置
2 位置検出装置
3 端面加工装置
21 接触子
22 ローラ
23 レバー部材(揺動機構)
24 サーボモータ(付勢部及び検出部)
25 ストッパ
26 制御部
31 砥石
32 モータ
33 アーム部材
34 アクチュエータ
35 リンク機構
36 支持軸部材
41 引張バネ(付勢部)
45 距離センサ(検出部)
51 シリンダ(付勢部)
61 シリンダ(直動機構)
G ガラス板
Ga 先頭辺(第一辺)
Gb 側方辺(第二辺)
図1
図2
図3
図4
図5
図6