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特許7108248土木または工業用途用の井戸および穴を扱う掘削プラント用の掘削流体を得るための混合物、およびそのようにして得られた掘削流体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】土木または工業用途用の井戸および穴を扱う掘削プラント用の掘削流体を得るための混合物、およびそのようにして得られた掘削流体
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/22 20060101AFI20220721BHJP
   E21B 21/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C09K8/22
E21B21/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019559414
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2018050167
(87)【国際公開番号】W WO2018130957
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】102017000003218
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519253948
【氏名又は名称】ラビオサ チミカ ミネラリア エスピーエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウンベルト,ラビオサ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ,トラヴェルシ
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-171532(JP,A)
【文献】特開昭58-089983(JP,A)
【文献】特開平01-121396(JP,A)
【文献】米国特許第04332693(US,A)
【文献】特開2004-189936(JP,A)
【文献】特表2003-528205(JP,A)
【文献】米国特許第04201679(US,A)
【文献】特表2001-521560(JP,A)
【文献】武司秀夫 他1名,総説モンモリロナイトの鉱物学的性質と変質,粘土科学,(1980), vol.20, no.3,pp.67-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 8/00- 8/94
E21B 1/00-49/10
B01J13/00
C09K17/00-17/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
該水1m当り0.5kg~2.0kgの、以下の組成:
- 20~80重量%の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、すなわちpH<7を有する酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、および
- 80~20重量%の部分加水分解ポリアクリルアミドを有する混合物
を含む、水性掘削流体
【請求項2】
前記混合物が、以下の組成:
- 30~70重量%の前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、および
- 70~30重量%の前記部分加水分解ポリアクリルアミドを有する、請求項1に記載の水性掘削流体。
【請求項3】
前記混合物が、以下の組成:
- 40~60重量%の前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、および
- 60~40重量%の前記部分加水分解ポリアクリルアミドを有する、請求項1に記載の水性掘削流体。
【請求項4】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土が、以下の重量%組成:
- SiO:60~70%
- Al:10~15%
- Fe:5~15%
- TiO:1~5%
- CaO:1~5%
- MgO:0.5~1%
- NaO:0.01~1%
- KO:0.01~1%
を有する、請求項1~3のいずれかに記載の水性掘削流体。
【請求項5】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土がpH<6である、請求項1~4のいずれかに記載の水性掘削流体。
【請求項6】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土がpH<5である、請求項1~5のいずれかに記載の水性掘削流体。
【請求項7】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土が、本質的にモンモリロナイトスメクタイト粘土酸である、請求項1~6のいずれかに記載の水性掘削流体。
【請求項8】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土が、本質的に酸性ではない、すなわち最初はpH≧7であるモンモリロナイトスメクタイト粘土を少なくとも1種の酸を使用して酸処理することによって得られる、請求項1~7のいずれかに記載の水性掘削流体。
【請求項9】
前記酸が、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、有機酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の水性掘削流体。
【請求項10】
前記有機酸が、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の水性掘削流体。
【請求項11】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は酸性ベントナイトである、請求項1~10のいずれかに記載の水性掘削流体。
【請求項12】
水性掘削流体を得るための方法であって:
- 所定量の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、すなわちpH<7の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土20重量%~80重量%と、80重量%~20重量%の部分加水分解ポリアクリルアミドとを混合し、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土とPHPAとの混合物を得るステップ、および
- 酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土と部分加水分解ポリアクリルアミドとの所定重量の前記混合物を所定量の水に添加するステップ、を含み、前記混合物の前記所定重量は、前記水1m 当り0.5kg~2.0kgである
方法。
【請求項13】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は、本質的にはモンモリロナイトスメクタイト粘土酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土が、本質的に酸性ではない、すなわち最初はpH≧7であるモンモリロナイトスメクタイト粘土を少なくとも1種の酸を使用して酸処理することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記酸が、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、有機酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記有機酸が、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の水性掘削流体を得る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎、杭打ち、構造ダイヤフラムなどのような土木用または工業用の掘削作業および地盤掘削の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、上記の開示された作業中に穴の壁を安定させるのに使用される掘削流体の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、掘削流体は、水、炭化水素、または地熱蒸気用のボアホールの掘削に必要な装置、ならびに基礎、杭打ち、または構造ダイヤフラム用の掘削作業にとって必須要素である。
【0004】
多くの掘削技術が知られており、その中で主なものは「ガイド掘削」、「乾式打撃掘削」、「直接循環回転掘削」、「逆循環回転掘削」、「打撃掘削」である。これらの掘削技術の中から、随時、ボアホールを掘削する必要のある地盤の形態に従って、実行するべき動作の種類(基礎、井戸掘削、水平掘削など)と到達するべき深さを伴ったものが選ばれる。
【0005】
最も一般的な掘削技術は、井戸用の直接的または間接的な循環を伴う杭打ち掘削および回転掘削である。
【0006】
杭打ち掘削では、掘削工具は本質的に複数の掘削ロッドを備え、これらのロッドは一方の端部に掘削システムに基づいて選択された工具を備える。掘削作業用にいくつかの移動式掘削リグが提供されており、これらは、ボアホールを掘削する必要のある土壌の性質と濃度に基づいて選択された掘削工具を備える。杭打ち掘削における装置の数、動力および作動能力は、穴を掘削する必要のある地盤の環境的、岩質的、および水文地質学的条件に基づき、また杭の寸法(長さおよび直径)に基づき、予測される時間スケジュール内に仕事を完了することができるようになっている。掘削ロッドがインコヒーレントな土壌を掘削しなければならないときに一般的に解決されなければならない問題は、その円周上に生じるアーク効果にもかかわらず壁の崩壊を避けるための、穴の壁の支持方法である。上記の問題を解決するために示される主な方法は、掘削中にアルカリ性のベントナイト泥を使用することである。この方法は、穴を掘削するべき土壌がインコヒーレントな土壌である場合に一般的に使用され、この土壌に対して、濾過とチキソトロピー(揺さぶられたり振動を受けたりしたときに流動する性質)をもたらすコロイド層を形成することで、ベントナイト泥のチキソトロピー特性によって穴壁の効果的な支持が実現され、当該コロイド層は泥柱圧によって押されて土壌に十分な横方向圧力をもたらし、これによって崩壊が防止される。たとえば井戸用の直接循環回転掘削技術では、ボアホールは、中空ロッドの端部に取り付けられた掘削工具、一般には掘削ビット、またはコアバレルの回転によって前進する。ロッド、したがって工具の回転運動は、ドリルロッドに接続された駆動ヘッドによって生じる。ドリルビットの回転中に、研削された固体材料は「切削屑」とも呼ばれる破片に砕かれ、それらは掘削流体によって表面に運ばれる。
【0007】
一般に、掘削流体はポンプによって吸引され、駆動ヘッドを通過して、掘削中空ロッドに沿って下方に向かい加圧下でポンピングされ、次いで掘削ビットのポートを出る。
【0008】
次いで、流体は穴壁と掘削中空ロッドとの間の環状空間を上向きに流れて、懸濁液中の切削屑を表面まで運び、そこで切削屑は沈殿タンクに集められ、そこで切削屑は底部に沈む。次いで、泥は第2のタンク内を通ってポンプに送り込まれ、このサイクルを繰り返す。
【0009】
単に破片ではなく、地盤のサンプル、すなわちコアサンプルを採取する必要がある場合には、コアバレルを掘削工具として使用する。
【0010】
杭打ち作業および井戸掘削の両方おいて、また一般に掘削作業において、掘削流体は多くの機能を果たし、その中で主なものは工具を冷却および潤滑化させることによって掘削中に生じる高摩擦による破損を防止し、掘削中に生じる破片を表面まで運ぶ機能である。
【0011】
さらに、掘削流体は油圧ヘッドを形成する機能も果たし、これによって制御不能な漏れを防ぎ、ボアホール壁を支持することができる。
【0012】
上記に加えて、掘削流体は、フィルターケーキとも呼ばれるパネルをボアホール壁に堆積させるという重要な機能も果たす。これは流体の固体分で、最も微細なコロイド画分であり、透過性が非常に低いため、しばしば「保護バリア」と呼ばれる。代わりに、パネルを通過して地層に浸透する流体の液体分は「濾液」と呼ばれる。容易に理解できるように、地層に入る液体の量、すなわち濾液の損失が多いと、掘削用流体の組成が変化し、この変化によって流体の流動学的性質の損失が生じる可能性がある。濾液の制御および薄いパネルの作製の両方が、穴またはボアホールを開いた状態に維持するために不可欠である。
【0013】
砂、玉石、砂利で主に構成されている粒状の、またはインコヒーレントな土壌では、フィルターケーキの形成は非常に重要である。これは、実際には、穴を覆って封止し、穴壁の崩壊を防ぎ、掘削流体特性の安定性に寄与する。
【0014】
しかしながら、濾液(水の損失)を少なくしないと高品質のパネルを得ることはできない。砂中の濾液の量は一定ではなく、パネルの品質に依存する。
【0015】
代わりに、粘土質の場合は、濾液の品質と量が、水和つまり泥の粘土による水の吸収、そしてその結果として生じる膨潤を防ぐために、より重要である。したがって、この場合、防水パネルの形成の重要性は二次的なものとなる。しかしながら、一般に、高品質のパネルなしに最適値の濾液を得ることは不可能である。
【0016】
上記の理由から、掘削屑を除去して輸送するために、粘度、可塑性、およびチキソトロピーの特定の特性を有することに加えて、濾液の損失が少ないことを保証することができる掘削泥水を有することが推奨される。掘削流体は一般に、油相中に懸濁した固体粒子を含有する場合は油性流体に、水相中に懸濁した固体粒子を含有する場合は水性流体に、それらの液相に基づいて分類される。
【0017】
水性掘削流体はさらに、(一般に泥水として知られている)ナトリウムベントナイト性の流体、および場合によっては特定の増粘剤も添加された、特定のポリマーを含有する流体に分類することが可能である。しかしながら、上記の掘削流体の類型は多くの欠点を有する。
【0018】
ナトリウムベントナイト(ベントナイト泥水)を含む水性掘削流体は水溶液に溶解するという利点があり、パネルの形成を可能にし、それによってボアホール壁が被覆され、そのために粒状でインコヒーレントな地盤で高性能となる。しかしながら、それらは、高品質のパネルを形成するために、1mの泥に対して約30~60kgのベントナイトという大量のナトリウムベントナイトを使用する必要があるという欠点を有する。考慮すべきもう1つの点は、ベントナイト泥を使用する場合、たとえばサンドコレクターや遠心分離機などの地盤からベントナイト泥を除去するための機器、より一般的には、掘削された地盤からベントナイト泥を取り除くことが可能なそれらすべての機械的解決策を掘削ヤードに設ける必要があることである。したがって、ベントナイトを含有する掘削流体は、掘削プラントの大幅な複雑化と、取り扱う材料の量(貯蔵量および使用量)および処理後に処分する材料の量の増大を伴うため、実用的ではない。
【0019】
さらに、ベントナイト泥水は、酸性水(pH<6)を使用して調製される場合、有効性を失うことに留意されたい。
【0020】
ポリマー、一般にカルボキシメチルセルロース(CMC)、または部分加水分解ポリアクリルアミド(PHPA)を含有する掘削流体に関しては、低濃度(流体1mに対して1~5kg)からでも高性能であることが示され、そのためにそれらがベントナイト流体に関して経済的な利点があるにも関わらず、それらは上述のパネル、すなわちフィルターケーキを形成することができないという欠点を有し、そのためにそれらは特定の地盤すなわち粘性土、特に、上述のパネルの形成が必須ではない粘土質の地盤でのみ使用可能である。一方、それらは穴の周囲の環境に急速に分散し、穴の壁を同じように支えられなくなるために穴の崩壊を生じる可能性が高いため、インコヒーレントな地盤の掘削の場合には使用できない。提案された組成物はもっぱらベントナイト泥水用のポリマー増量剤として作用し、泥水の消費量を減少させるだけなので、ナトリウムベントナイトと上記のポリマーとを混合する他の解決法は十分なものではない。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、従来技術の掘削流体の上記限界を克服可能な水性掘削流体を得るための混合物の組成物を提供することである。
【0022】
具体的には、本発明の目的は、パネル、すなわち「フィルターケーキ」を非常に効率的に形成することができる、すなわちボアホール側壁での濾液の損失を大幅に減少させることができる水性掘削流体を得るための混合物の組成物を提供することである。
【0023】
また、本発明の目的は、その作製に使用される水の種類とは無関係に高性能である水性掘削流体を得るための混合物の組成物を提供し、したがって、ヤードの周囲の領域で見つけることが可能な任意の種類の水に溶解することができる混合物を提供することである。
【0024】
さらに本発明の目的は、インコヒーレントな土壌の掘削において現在使用されているベントナイト系掘削泥水に対して経済的に有利な掘削流体を得るための混合物を提供することである。
【0025】
上記およびその他の目的は、本発明によれば、水性掘削流体を得るための混合物の組成物によって達成され、その主な特徴は次を備えることである:
- 20~80重量%の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、すなわちpH<7を有する酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土
- 80~20重量%の部分加水分解ポリアクリルアミド、すなわちPHPA。
【0026】
本発明のさらなる特徴は従属請求項に記載されている。
【0027】
具体的には、部分加水分解ポリアクリルアミドは、それが溶解している水溶液の粘度を増加させるので、「増粘剤」として作用する。
【0028】
具体的には、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は、精製および油の漂白において使用される種類の「漂白土」であり得る。
【0029】
有利には、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は、天然の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土であり得、すなわち本質的にpH<7を有する状態で見出されるものであり得る。
【0030】
あるいは、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は、最初は酸性ではない、すなわち最初はpH≧7を有するモンモリロナイトスメクタイト粘土を酸性化することによって得ることができる。この場合、非酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、特に本質的に非酸性である粘土を、所定の温度で所定の時間、所定の酸と接触させる。より具体的には、使用される酸は、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、有機酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される酸であり得る。
【0031】
たとえば、有機酸は、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0032】
知られているように、酸活性化の間、最初に、以下の反応のうちの1つに従って、鉱物粘土の構造中のカチオンの置換が酸中に存在する水素イオン(H)によって起こる:
Me-smectite+H+→H-smectite+Me+ (I)
Me-smectite+2H+→H-smectite+Me2+ (II)
【0033】
それぞれアルカリ金属(Me)の場合、またはアルカリ土類金属(Me++)の場合。したがって、酸とスメクタイト粘土との間の接触は、具体的には、イオンの親和性がより高く、このため粘土の酸性化がもたらされる粘土のラメラ構造の端部において、イオン置換反応を開始する。次いで、酸活性化は、鉱物粘土の比表面積および気孔率を増大させるために、鉄、アルミニウムおよびマグネシウムイオンの浸出およびスメクタイトの層の変化をもたらす鉱物粘土の結晶構造への攻撃を伴って進行する。
【0034】
具体的には、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は、pH<6、有利にはpH<5を有することができる。
【0035】
好ましくは、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は酸性ベントナイトである。
【0036】
酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、特に酸性ベントナイトは、高い表面積を有する。これは、上記に開示された粘土の酸性化工程に使用される酸の攻撃中に得ることが可能であるか、または天然の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土の物理的性質であり得る。具体的には、塩基性粘土とは異なり、表面積が大きいために、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土は完全には水に溶解せず、系に粘性を与える三次元構造を形成しない。これらの理由のために、過去においては、酸性モンモリロナイト粘土は掘削流体には使用されていなかった。本発明は、代わりに、酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、特に酸性ベントナイトと部分加水分解ポリアクリルアミドとを所定の重量比で混合することで混合物を得ることができ、これによって、驚くべきことに掘削泥水が作用する圧力でボアホール(ケーキ)の壁に被覆パネルを形成することが可能となり、すなわち同時に既知の掘削泥水に対して経済的に有利となることを実証しているので、この分野の技術的偏見を克服する。
【0037】
有利には、本発明による混合物中の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土と部分加水分解ポリアクリルアミドとの重量比は、以下の通りである:
- 30~70重量%の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土
- 70~30重量%の部分加水分解ポリアクリルアミド。
【0038】
別の実施形態では、本発明による混合物中の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土、特に酸性ベントナイトと、部分加水分解ポリアクリルアミドとの重量比は、以下の通りである:
- 40~60重量%の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土
- 60~40重量%の部分加水分解ポリアクリルアミド。
【0039】
具体的には、上記に開示された部分加水分解ポリアクリルアミド、すなわちPHPAは、以下の構造式を有する。
【化1】
【0040】
代替実施形態では、上記に開示された酸性ベントナイトは、以下の重量%組成を有する:
- SiO:60~70%
- Al:10~15%
- Fe:5~15%
- TiO:1~5%
- CaO:1~5%
- MgO:0.5~1%
- NaO:0.01~1%
- KO:0.01~1%。
【0041】
有利には、最終掘削流体は、水1m当たり、上記の所定量の酸性ベントナイトと部分加水分解ポリアクリルアミド、すなわちPHPAとからなる混合物0.5kgおよび2.0kgの間に設定された使用濃度を有する。実際、これらの濃度では、本発明による組成物または混合物は、上述の特性、特にフィルターケーキを形成するという上記に開示された特性を示すことが実証されている。したがって、本発明は、従来技術による解決法とは異なり、最適な結果を得るのに少量の生成物で足りるので、従来技術による解決法と比較すると経済的に有利である。
【0042】
本発明の他の態様によれば、掘削流体を得るための方法は、以下のステップを備える:
- 所定量の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土を所定量の部分加水分解ポリアクリルアミドと混合するステップ
- 所定重量の粘土とPHPAとの混合物を所定量の水に添加するステップ。
【0043】
好ましくは、添加ステップでは、水1m当たり、粘土とPHPAとの混合物が0.5kgおよび1.5kgの間で添加される。
【0044】
具体的には、掘削流体は、上記に開示された所定量の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土と部分加水分解ポリアクリルアミド(PHPA)とをin situで混合し、そのようにして得られた混合物を、好ましくは、水1m当たり、上記に開示された混合物0.5kgおよび2.0kgの間の設定で所定量の水に溶解させることで得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明について、添付図面を参照しながら、例示するが限定するものではない例示的実施形態に関する以下の説明を使用して示す。
図1】試験される従来技術による掘削流体における部分加水分解ポリアクリルアミドの濃度に対する流体損失傾向を、ベントナイト泥の濃度を一定に維持しながらグラフ化した図である。
図2】試験される従来技術による掘削流体における部分加水分解ポリアクリルアミドの濃度に対するマーシュ粘度の傾向を、ベントナイト泥の濃度を一定に維持しながらグラフ化した図である。
図3】試験される従来技術による掘削流体におけるベントナイト泥の濃度に対する流体損失傾向を、部分加水分解ポリアクリルアミドの濃度を一定に維持しながらグラフ化した図である。
図4】試験される従来技術による掘削流体におけるベントナイト泥の濃度に対するマーシュ粘度の傾向を、部分加水分解ポリアクリルアミドの濃度を一定に維持しながらグラフ化した図である。
図5】ベントナイト泥をポリマー流体に添加することによって得られる凝集材料を示す図である。
図6】試験される掘削流体における、本発明による混合物の濃度に対する流体損失傾向をグラフ化した図である。
図7】試験される掘削液における、本発明による混合物の濃度に対するマーシュ粘度の傾向をグラフ化した図である。
図8】本発明による掘削流体をフィルタープレス試験にかけて形成されたフィルターケーキを示す図である。
図9】酸性水(pH=4.8)を使用することによって得られた試験される掘削流体における、本発明による混合物の濃度に対する流体損失傾向をグラフ化した図である。
図10】酸性水(pH=4.8)を使用することによって得られた試験される掘削流体における、本発明による混合物の濃度に対するマーシュ粘度の傾向をグラフ化した図である。
図11】塩基性水(pH=8.4)を使用することによって得られた試験される掘削流体における、本発明による混合物の濃度に対する流体損失傾向をグラフ化した図である。
図12】塩基性水(pH8.4)を使用することによって得られた試験される掘削流体における、本発明による混合物の濃度に対するマーシュ粘度の傾向をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実験データ
以下において、フィルタープレス試験中に得られた結果は、7気圧で30分後に試験中にフィルターを通過した流体の体積として意図される濾液を測定するために、API13に従った分析方法論を使用することによって実施される。ただし、より詳細には、以下の場合において試験は停止された:
- 30分前に、流体損失が高値の場合、すなわち150ccの値に達した場合
- 試験開始から2分後に、フィルタープレスからの流体の出口流速が液滴レベルまで減少しなかった場合。
【0047】
この試験により、パネルの存在とその厚さ、および上記に開示した条件で得られた濾液の値が特定された。
【0048】
序文
いくつかの既知の掘削泥水/流体の比較分析が、フィルターケーキを形成する能力、したがって適用に向けて濾液を良好な値となるまで減少させる能力を検証するために実施された。濾液の値は、30mmを下回ると良好、35mlを下回ると許容可能と考えられる。
【実施例
【0049】
例1
0.5kg/mおよび2.0kg/mの濃度の、部分加水分解ポリアクリルアミド、すなわちPHPAを使用して調製した掘削液。結果を以下の表1に示す。
表1
【表1】
【0050】
液体がフィルタープレスを出る速度が速いため、試験は中断され、フィルターを通る流体の損失は測定されなかった。このため、フィルターケーキの形成は観察されておらず、したがって、フィルターケーキの厚さを同じように測定することは不可能であった。
【0051】
試験によって、部分加水分解ポリアクリルアミドについて既に知られていること、すなわちこれらのコポリマーがケーキを形成できないことが確認された。したがって、部分加水分解ポリアクリルアミドは、特定の条件においてのみ、正確には、岩盤や粘土質の土壌に穴を掘削する必要があるときなど、流体が通過するよう壁を保存する必要がない粘性土地盤および/または低透過性の場所に掘削が実施される場合に、流体の調製に使用できる。
【0052】
さらに、同じ量の上記試験において他のポリマーを使用することによって得られたCMC、グアーガム、キサンタンガムのような値は、PHPAを使用して得られた値と同様であることに注目することが適切であると考えられる。PHPAに関するこれらのポリマーのさらなる限界は、PHPAを使用することによって調製される流体の粘度に関するマーシュコーン粘度の最悪値である。
【0053】
例2
pH=3の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土のみを使用して、50kg/mの濃度で調製された掘削泥水。結果を以下の表2に示す。
表2
【表2】
【0054】
試験は中断され、流体がフィルタープレスを出る速度が速いためにフィルターを通る流体損失を評価することは不可能であった。類似的に、フィルターケーキの形成を観察することは不可能であり、したがってその厚さを測定することは不可能であった。
【0055】
したがって、たとえ大量の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土が使用されても、水中での増粘能力もまた壁上にフィルターケーキを形成する能力も観察されていない。このため、安定した粘土がカップの底に得られ、それは適度な方法で、しかし満足のいくものではないが、濾液の出口流速を遅くする。
【0056】
上記の理由から、これらの粘土は掘削泥水として使用されておらず、掘削泥水の調製に使用することもできない。
【0057】
例3
95%のナトリウムモンモリロナイトスメクタイト粘土、および5%のカルボキシメチルセルロースすなわちCMCからなる混合物。掘削泥水は20kg/mの濃度の上記混合物で調製された。結果を以下の表3に示す。
表3
【表3】


【0058】
掘削泥水を得るために、CMCと混合したナトリウムベントナイト、すなわちベントナイト-CMCの混合物を使用することは、当該技術分野において知られている。
【0059】
しかしながら、これらの混合物は一般に20~25kg/m以上の高い使用濃度を有し、したがって非常に高価である。他の増粘性ポリマーは、CMCのような短鎖を有し、これらにはたとえばキサンタンガム、グアーガムなどがあり、この理由は、たとえばPHPAのような長鎖ポリマーは、たとえばスクリーンや遠心分離機のようないくつかのヤード機器に損傷を与える可能性があるからである。
【0060】
実施例4
本発明の結果:部分的に加水分解されたポリアクリルアミドと組み合わせて使用される酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土からなる混合物に基づく泥。
異なる割合の部分加水分解ポリアクリルアミド(PHPA)とpH=3の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土とからなる混合物についていくつかの試験を行った。
【0061】
より正確には以下の組成について、0.5kg/mと1.5kg/m両方の水中濃度で試験を行った。
実施例4A 80%PHPA+20%酸性ベントナイト
実施例4B 80%酸性ベントナイト+20%PHPA
実施例4C 60%PHPA+40%酸性ベントナイト
実施例4D 60%酸性ベントナイト+40%PHPA
実施例4E 50%PHPA+50%酸性ベントナイト
結果を以下の表4に示す。
表4
【表4】
【0062】
上記の表4に示されるように、全ての試験された組成物は、所望の特性を有するフィルターケーキ、具体的には組成物4Bを除く全ての組成物で約0.2mmの厚さのフィルターケーキを形成することができる。組成物4Bについては、フィルターケーキの厚さは0.3mmとなるが、この理由は、この場合において水と混合した酸性粘土の割合が、他の試験した組成物よりもはるかに高いためである。また濃度が0.5kg/mの組成物4Aについては、形成されるケーキは約0.05mmの非常に薄い厚さを有する。
【0063】
全て掘削流体として使用可能な上記の組成物4A~4Eの中で、組成物4Eは、「流体損失」と粘度とのバランスが最も良好であり、その値はそれぞれ20ml、70sである。
【0064】
さらに、0.5kg/mおよび1.5kg/mの間で設定された濃度を使用して得られた結果は、上記の組成物4A~4Eを、2kg/mなどの比較的高い濃度を使用して試験する場合には、上記の開示された特性のみが改善されるため不要であると考えられていたことに注目することは適切である。
【0065】
本発明の有効性を証明するために、以下の組成物について類似の試験を行った:
- 50%のナトリウムモンモリロナイトスメクタイト粘土および50%のPHPAからなる混合物(実施例5A参照)
- 50%の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土および50%のカルボキシメチルセルロースからなる混合物(実施例5B参照)。
【0066】
実施例5A
50%のナトリウムモンモリロナイトスメクタイト粘土および50%のPHPAからなる混合物。掘削泥水は、0.5および1.5kg/mのこの混合物の濃度で調製される。結果を以下の表5Aに示す。
表5A
【表5】
【0067】
この混合物について得られた値は、たとえ1.5kg/mの濃度であっても、ボアホールの安定性を保証するのに十分ではない。
【0068】
これらのナトリウム粘土は水に溶解し、濾液値を減少させることのできる唯一の要素であるフィルターケーキが形成されるのを妨げる。
【0069】
実施例5B
pH=3の50%の酸性モンモリロナイトスメクタイト粘土および50%のカルボキシメチルセルロースからなる混合物。掘削泥水は、0.5および1.5kg/mのこの混合物の濃度で調製される。結果を以下の表5Bに示す。
表5B
【表6】
【0070】
増粘剤としてCMCをその短鎖構造とともに使用することによって得られる低粘度は、漂白土と組み合わせて使用される場合に、フィルターケーキの形成を不可能にする。
【0071】
具体的には、本発明に従って、特定されたポリマー流体と特定のベントナイト泥および掘削流体を混合することによって得られた既知の種類のいくつかの掘削泥水(サンプルA~F)について比較分析が行われた。
【0072】
より正確には、従来技術のサンプルA~Fは、1mの水中に50kgのナトリウムベントナイトを導入することによって得られるベントナイト泥と、異なる量の部分加水分解ポリアクリルアミドを水に溶解することによって得られるいくつかのポリマー流体とを使用して別々に調製された。
【0073】
次に、以下のサンプルを調製した。
サンプル
サンプルAは以下の組成を有する:
- 90%:水1m当たり0.75kgの部分加水分解ポリアクリルアミドを溶解して得られるポリマー流体。
- 10%:上記の溶解したベントナイト泥。
サンプル
サンプルBは以下の組成を有する。
- 90%:水1m当たり1.0kgの部分加水分解ポリアクリルアミドを溶解して得られるポリマー流体。
- 10%:上記の溶解したベントナイト泥。
サンプル
サンプルCは以下の組成を有する。
- 90%:1.5kgの部分加水分解ポリアクリルアミドをそれぞれの水1mに溶解することによって得られるポリマー流体。
- 10%:上記ベントナイト泥。
サンプル
サンプルDは以下の組成を有する。
- 水1m当たり1.0kgの部分加水分解ポリアクリルアミドを溶解して得られる95%のポリマー流体。
- 5%の上記に開示されたベントナイト泥。
サンプル
サンプルEは、サンプルBと同じ組成を有し、したがって、サンプルEは以下の組成を有する。
- 90%:水1m当たり1.0kgの部分加水分解ポリアクリルアミドを溶解して得られるポリマー流体。
- 10%:上記に開示されたベントナイト泥。
サンプル
サンプルFは以下の組成を有する。
- 85%:水1m当たり1.0kgの部分加水分解ポリアクリルアミドを溶解して得られるポリマー流体。
- 15%の上記に開示されたベントナイト泥。
【0074】
言い換えれば、サンプル中の部分加水分解ポリアクリルアミドの濃度は、サンプルAからサンプルCに向かって増加する。
【0075】
その代わりに、最終流体中のベントナイト泥の量は、サンプルDからサンプルFに向かって増加する。
【0076】
上記の試験から得られた値を補間することによって得られた図1および3のグラフに示されるように、流体損失は、サンプルAからサンプルCに向かって(図1)、およびサンプルDからサンプルFに向かって(図3)の両方で減少する傾向がある。
【0077】
図2および4に示されているマーシュ粘度の傾向に関しては、予測可能なように、サンプル中の部分加水分解ポリアクリルアミドの量の増加(0.75kg/mから1.5kg/m)は結果として粘度の大幅な増加をもたらす(55~90秒)。
【0078】
代わりに、最終掘削流体のベントナイト泥の濃度の増加(5体積%から15体積%)は、マーシュ粘度値の有意な増加には反映されない(65秒から66秒)。
【0079】
上記に照らして、ポリマー流体のサンプル中の部分加水分解ポリアクリルアミドの量の増加、および最終的なサンプル中のベントナイト泥の量の増加の両方が、流体損失の減少に積極的に影響を及ぼすように思われる。
【0080】
しかしながら、上記の傾向は実際のバリア作用(フィルターケーキ)によるものではなく、図示されている他の流体損失によって実証されているように、流出口の部分的かつ一時的な障害物、すなわちボアホール壁に自然に存在する漏れおよび空洞によるものであることが観察されている。この閉塞現象は、具体的には、水中に溶解され、ポリマー流体に添加された後のナトリウムベントナイトが凝集プロセスを引き起こすという事実に起因する。
【0081】
従来技術の掘削泥水(サンプルA~F)をフィルタープレス試験にかけることで得られた結果を示す図5に明確に示されているように、実際のフィルターケーキはフィルター上に形成されておらず、その代わりに、凝集したベントナイトを含む滲出泥101がフィルター上に堆積される。
【0082】
したがって、試験された既知の種類の掘削流体(サンプルA~F)は、ボアホール壁に被覆パネルまたは防水保護バリアを形成することができないと結論づけられる。
【0083】
上記のサンプルを試験にかけて得られた値を内挿すると、図6および7が得られ、これらは本発明に基づく掘削流体に関する流体損失の定性的傾向とマーシュ粘度、すなわち酸性ベントナイトおよび部分加水分解ポリアクリルアミド(試験された事例では、2-プロペンアミド、ホモポリマー)の特定の量(50:50)での混合物と濃度との比較を示している。
【0084】
より正確には、流体損失およびマーシュ粘度値は、以下のサンプルについて測定されている。
サンプルI1
サンプルI1の濃度は0.3kg/mである。
サンプルI2
サンプルI2の濃度は0.5kg/mである。
サンプルI3
サンプルI3の濃度は0.7kg/mである。
サンプルI4
サンプルI4の濃度は1.0kg/mである。
サンプルI5
サンプルI5の濃度は1.5kg/mである。
サンプルI6
サンプルI6の濃度は2.0kg/mである。
【0085】
図6に示されるように、本発明に基づく、濾液の大幅な損失を示すサンプル1を除く2~6のすべてのサンプル、すなわち酸性ベントナイトおよび部分加水分解ポリアクリルアミドの混合物の0.5kg/mおよび2kg/mの間の濃度を伴うサンプルは、非常に低い濾液損失を示し、正確にはサンプル2で48cc、サンプル3で35cc、サンプル4で29cc、サンプル5で27cc、サンプル6で25ccを示している。
【0086】
また、マーシュ粘度の値は、使用される濃度の増加とともに急速に増加する(図7)。
【0087】
上述の試験データは、本発明に基づく掘削流体が、上述の従来技術の掘削流体(サンプルA~F)とは異なり、優れた防水特性を有する保護バリア、すなわち被覆パネル(フィルターケーキ)(図8)を形成できることを実証している。実際に、知られているように、特定の特性を有するパネルの形成は、ボアホールの施工時に大量の液体画分がボアホールの壁を通じて濾過される可能性を避けるために、すなわち言い換えれば、流体の大量の漏出を避けるために必要である。
【0088】
結論として、本発明による混合物を使用することによって得られる掘削流体は高性能であり、具体的には実質的に防水性の保護バリア(フィルターケーキ)を形成することができる。
【0089】
本発明に従って、異なるpHを有する水中に混合物を溶解することによって得られた掘削流体のサンプルも試験した。
【0090】
より正確には、上記に開示された混合物I1~I6と同じ濃度を有する混合物を、酸性水(pH4.8)と塩基性水(pH8.4)にそれぞれ溶解することによって得られたサンプルI1‘~I6‘およびI1‘‘~I6‘‘を試験した。これらの試験の結果は図9~12に示されており、これらの図から、本発明に従い酸性水(図9および10参照)および塩基性水(図11および12参照)の両方に混合物を溶解することによって得られた掘削流体は、上記に開示されたその特性、具体的にはフィルターケーキを形成する能力、したがって流体の損失を止める能力の有意な損失を示さないということが導き出される。
【0091】
したがって、本発明に従って、in situで検出され得る(酸性、塩基性両方の)「汚」水を使用することによっても、本発明に基づく掘削流体の高性能の特性を損なうことなく、掘削流体を有利に得ることが可能である。
【0092】
本発明の前述の説明の例示的な実施形態は、概念的観点に従って本発明を完全に明らかにし、そのため他者によって、現在の知識を適用することにより、さらなる研究なしに、このような実施形態を様々な用途に修正および/または適合させ得る。したがって、そのような適合および修正は、特定の実施形態と同等であると見なされる必要があることを理解されたい。本明細書に記載の異なる機能を実現するための手段および材料は、この理由により、本発明の分野から逸脱することなく、異なる性質を有し得る。本明細書で使用される語法または用語は、限定的ではなく説明を目的とするものであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12